JP5859305B2 - 大口径の金属管のクリープ部の再生装置及び該再生装置を用いた再生方法 - Google Patents
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Description
特許文献1の再生装置では、図6に示すように、高周波加熱コイル16によって大口径厚肉(例えば、肉厚が50mm以上)の金属管50のクリープ部4を含む領域を加熱する。この加熱によって変態点以上となる領域を加熱領域3とする。加熱領域3の深さは、例えば、肉厚の半分程度の位置まで到達する。このとき、加熱領域3の周囲(以下、非加熱領域という)は温度上昇がなされないため、加熱領域3は非加熱領域によって、その熱膨張が妨げられる結果、圧縮応力が生じる。圧縮応力は、図6中の加熱領域3の左右両側及び下側の非加熱領域からの拘束によって生じる。加熱領域3内に存在するクリープボイド6等は、この圧縮応力によって圧接されることにより消滅する。
かかる技術によれば、前記加熱領域の加熱時に生じる前記クリープ劣化部の熱膨張を加熱前に例えば配管同士を接合する場合に、管端の溶接部を挟んでその配管周方向の溶接位置を挟んで管軸方向を拘束した後に、該クリープ劣化部を加熱することにより発生する熱膨張の内圧力を利用して、クリープボイド・亀裂を圧接、補修して延命化を図ることができると記載されている。
また特許文献2に示す技術は、小口径の高温配管同士の環状溶接、管寄せ、管台等の母材のクリープ劣化部を再生する技術であって、軸方向に沿って延在する溶接部を具えた大口径(口径400〜1000mm程度)の金属管を再生する技術ではない。
即ち特許文献2では、例えば同公報図1に示すように、高温配管同士の環状溶接部のクリープボイドを再生する技術であって、そのことは同公報の段落0031に「高周波加熱コイルは、配管の溶接部に臨んで位置されている。高周波加熱コイルは配管を取り囲む環状となっている」と記載されているように、特許文献2は、環状部位の溶接技術におけるクリープボイド再生技術であって、管軸方向に沿って延在する溶接部を具えた大口径の金属管のクリープボイドを再生する技術ではない。
前記金属管軸方向に延在するクリープ部を跨いで前記金属管の外周面に接触させながら該外周面周方向に円弧状に配置された管外周面接触部と、該管外周面接触部の周方向両端側を、対面する金属管の外周面と一体的に固定して、該固定部位における金属管周方向の熱膨張を拘束する拘束部と、よりなる熱拘束治具と、前記加熱部とを備え、
該加熱部による加熱によって生じる前記クリープ部の周方向の熱膨張を前記熱拘束治具で拘束することを特徴とする。
これにより、薄肉の金属管のクリープ部に生じていたクリープボイド、亀裂を圧接、補修して金属管の延命化を図ることができる。その結果、大口径金属管の寿命を延ばすことができる部位では、定期検査周期を2年から4年に延長することができ、保守費用を大幅に削減することができる。
一方前記拘束部は、該第1の管外周面接触部の残部の金属管外周面を円弧部を覆う第2の円弧状締結体と、該第1及び第2の円弧状の締結体により金属管外周面を囲うように構成された円弧状の締結体の端部同士を夫々締結する締結具とからなり、
前記締結具の締め付けにより前記第1及び第2の円弧状の締結体の内周面が、前記金属管外周面を挟着し、前記クリープ部の周方向の熱膨張を拘束するように構成してもよい。
また、金属管が断熱材等で覆われている場合、再生作業時には断熱材等を一旦除去する必要がある。そして、断熱材等を除去した個所に上記拘束治具を取り付けて再生作業を行うこととなる。上記一対の締結体からなる拘束治具は脱着自在なので、再生作業後、拘束治具を取り外して、再び金属管を断熱材等で覆うことができる。
尚、特許文献2においても、同公報段落0026に「クリープ劣化部の膨張をクランプによって拘束した状態で、該クリープ劣化部を加熱することにより発生する熱膨張の内圧力を利用して、クリープボイド・亀裂を圧接、補修して延命化を図ることができる。」と本発明と同種の技術思想が開示されているが、同公報は前記したように、環状部位の溶接技術におけるクリープボイド再生技術であって、管軸方向に沿って延在する溶接部を具えた大口径の金属管のクリープボイドを再生する技術ではない。このため同公報の段落0031に「再生装置1は、(2つの管軸端を接合する環状溶接部位を挟んでその)左右にクランプ5,6を備えている。…配管2を加圧する必要は必ずしもなく、単に把持するだけでもよい。」と記載されているように大口径管周面を周方向に挟圧してその管周面を拘束しようとする発想はない。
一方前記拘束部は、前記円弧状締結体両端側を溶接又は接合して円弧状締結体の周方向両端側を、対面する金属管の外周面と一体的に固着してなる溶接又は接合部位であるように構成してもよい。
前記軸方向の前記加熱領域の2/3以上の領域が前記拘束治具で拘束されていてもよい。
このように、軸方向の加熱領域の2/3以上の領域を拘束治具で拘束するため、加熱領域の膨張を確実に拘束することができる。
前記拘束治具は前記軸方向に所定間隔で複数配置され、当該所定間隔は前記軸方向の前記加熱領域の長さの1/2以上としてもよい。
このように、複数の拘束治具を用いた場合に、軸方向の加熱領域の長さの1/2以上の間隔で複数の拘束治具を配置することで、加熱領域の膨張を確実に拘束することができる。
前記金属管の肉厚をt1とし、前記拘束治具の板厚をt2とし、前記クリープ部を加熱する深さをthとしたとき、t1+t2<(5×th)の関係が成立することとしてもよい。
このように、拘束治具は金属管よりも熱膨張率の小さい材料からなるため、金属管の肉厚と拘束治具の板厚とを加算した値が、クリープ部を加熱する深さの5倍未満としても十分に加熱領域を拘束することができる。
金属管の軸方向に沿って延在する溶接部に隣接する前記クリープ部を跨ぐように、前記金属管の周方向に沿って拘束治具を前記金属管の外周面に固定した後に、前記クリープ部を変態点以上に加熱して加熱領域を形成し、当該加熱領域の熱膨張に対する前記拘束治具の拘束によって生じる圧縮応力により前記クリープ部を圧接することを特徴とする。
図1〜図3に示すように、再生装置10は、複数の拘束治具12と、高周波加熱コイル16とを備えている。各拘束治具12は再生しようとする、金属管軸方向に沿って延在する溶接部に隣接する位置に、管軸方向に延在するクリープ部4を有する大口径(例えば400〜1000mm程度)の配管1に脱着可能に取り付けられている。大口径の配管1は、薄肉のクロムモリブデン鋼鋼管(例えば、STPA24)であり、溶接部2が配管1の軸方向に沿って形成されている。なお、本明細書では、薄肉の配管1とは肉厚が20mm〜40mm程度のものとする。
一方の締結体13は略円弧形状を有している。締結体13の中央部13aの内周面側には、クリープ部4の表面と締結体13の内周面との間に隙間を形成するための凹部が形成されている。また、中央部13aの外周面側には、径外方向に向かって突出した凸部が形成されている。凸部の突出長さは、凹部の深さと同程度となるように形成されている。また、締結体13の中央部13aを除く曲線部13bの内径は、配管1の外径と同一に形成されている。詳細は後述するが、凹部には、高周波加熱コイル16が挿入される。
さらに、他方の締結体14は略円弧形状を有している。締結体14の両端部はそれぞれ締結体13の両端部に連結されている。締結体13と締結体14は、ボルト18及びナット19にて脱着可能に連結されている。また、締結体14の内径は、配管1の外径と同一に形成されている。各拘束治具12は単に配管1を把持するだけであり、各拘束治具12を配管1に取り付けただけでは拘束圧力は生じない。
図4に示すように、配管1の溶接部2に隣接するクリープ部4では、長期の使用により多くのクリープボイド6が生じることがある。このため、クリープ部4の強度が低下し、溶接部2における破断等の要因となる。そこで、本実施形態では、拘束治具12を配管1に取り付けて、クリープボイド6が生じたクリープ部4を再生する場合について説明する。
配管1のクリープ部4を加熱すると加熱領域3が膨張する。このとき、加熱領域3の左右両側の非加熱領域の拘束によって生じる圧縮応力に加えて、拘束治具12の拘束によって生じる圧縮応力がクリープ部4に作用する。これによって、クリープ部4のクリープボイド6が圧接される。また、急速に加熱することができることから、熱の拡散を防いで効果的に熱膨張力を加熱領域3に作用させることができる。
また、加熱領域3の長さAの1/2以上の間隔で拘束治具12を複数配置することで、加熱領域3の膨張を確実に拘束することができる。
さらに、配管1の板厚t1と拘束治具12の板厚t2とを加算した値を、加熱深さthの5倍未満としても、十分に加熱領域3を拘束することができる。
また、配管1が断熱材等で覆われている場合、再生作業時には断熱材等を一旦除去する必要がある。そして、断熱材等を除去した個所に一対の締結体13、14を取り付けて再生作業を行うこととなる。本発明に係る一対の締結体13、14は、脱着可能なので、再生作業後、一対の締結体13、14を撤去することができる。これにより、再生作業後、再び配管1を断熱材等で覆うことができる。
図5に示すように、本実施形態に係る再生装置30は、複数の拘束治具32と、高周波加熱コイル16とを備えている。各拘束治具32は、クリープ部4を跨ぐように配管1に取り付けられている。各拘束治具32は略U字形状を有しており、当該U字形状の窪み部がクリープ部4と対向する位置に配置されており、当該U字形状の両端がそれぞれ配管1の外周面に溶接にて接続されている。高周波加熱コイル16は、拘束治具32の窪み部内を挿通するように配置されている。
2 溶接部
3 加熱領域
4 クリープ部
6 クリープボイド
10 再生装置
12 拘束治具
13 一方の締結体
13a 中央部
13b 曲線部
14 他方の締結体
16 高周波加熱コイル
18 ボルト
19 ナット
20 水冷管
22 パワーケーブル
30 再生装置
32 拘束治具
50 金属管
Claims (4)
- 金属管の軸方向に沿って延在する溶接部に隣接するクリープ部を変態点以上に加熱する加熱部を具えたクリープ部の再生装置において、
前記金属管軸方向に延在するクリープ部を跨いで前記金属管の外周面に接触させながら該外周面周方向に円弧状に配置された管外周面接触部と、該管外周面接触部の周方向両端側を、対面する金属管の外周面と一体的に固定して、該固定部位における金属管周方向の熱膨張を拘束する拘束部と、よりなる熱拘束治具と、前記加熱部とを備え、
前記管外周面接触部は、前記クリープ部と対面する内周面側に前記クリープ部と対向する位置に配置される空間を形成し、
前記加熱部は前記空間に配置され、
該加熱部による加熱によって生じる前記クリープ部の周方向の熱膨張を前記熱拘束治具で拘束することを特徴とするクリープ部の再生装置。 - 前記管外周面接触部は、前記クリープ部両側に位置する前記金属管の外周面の円弧部を覆う第1の円弧状締結体であり、
前記拘束部は、前記金属管の外周面の円弧部を覆う第2の円弧状締結体と、該第1及び第2の円弧状締結体により前記金属管の外周面を囲うように前記第1及び前記第2の円弧状締結体の端部同士を夫々締結する締結具とからなり、
前記締結具の締め付けにより前記第1及び第2の円弧状締結体の内周面が、前記金属管外周面を挟着し、前記クリープ部の周方向の熱膨張を拘束することを特徴とする請求項1記載のクリープ部の再生装置。 - 前記管外周面接触部は、前記クリープ部両側に位置する前記金属管の外周面の円弧部を覆う円弧状締結体であるとともに、前記金属管外周面と接触する周方向両端側をそれぞれ前記クリープ部に隣接して形成し、
前記拘束部は、前記円弧状締結体の周方向両端側を、対面する金属管の外周面と一体的に溶接又は接合してなる溶接又は接合部位であることを特徴とする請求項1記載のクリープ部の再生装置。 - 請求項1〜3のうち何れか一項に記載のクリープ部の再生装置を用いたクリープ部の再生方法であって、
金属管の軸方向に沿って延在する溶接部に隣接する前記クリープ部に前記空間が対向するように、前記金属管の周方向に沿って前記熱拘束治具の管外面接触部を前記金属管の外周面に固定した後に、前記空間に配置された前記加熱部によって前記クリープ部を変態点以上に加熱して加熱領域を形成し、当該加熱領域の熱膨張に対する前記熱拘束治具の管外面接触部の拘束によって生じる圧縮応力により前記クリープ部を圧接することを特徴とするクリープ部の再生方法。
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