JP5858333B2 - 金属線材の熱処理装置 - Google Patents
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また、特許文献1で開示される洗浄装置を用いる場合には、金属線材の表面を長時間洗浄槽に浸漬して洗浄し続けなければ伸線潤滑剤を落とすことができず、装置の長大化や工数の増加が重なり経済的に不利である。
本発明の目的は、コンパクトな構成で且つ少ない工数で金属線材表面に付着した伸線潤滑剤を除去でき、伸線潤滑剤の炉内への持ち込みの問題を解決し、金属線材の表面疵を防止できる金属線材の熱処理装置を提供することである。
また、前記研磨機は、並列した前記金属線材に駆動可能な回転軸を有する円筒体を接触させながら研磨するものであることが好ましい。
また、前記研磨機においては、前記円筒体が前記金属線材の通線方向に千鳥状に複数本配置されることが好ましく、前記円筒体が回転軸方向に揺動することがより好ましい。
また、本発明においては、前記研磨機と前記拭取り機との間に、前記金属線材の表面を溶媒により洗浄する洗浄機を配置することが好ましい。
また、前記溶媒は、酸性水を用いることが好ましい。
また、前記溶媒に超音波を印加することが好ましい。
例えば、前工程で金属線材の表面に付着したステアリン酸カルシウム等の金属石鹸系を主成分とする伸線潤滑剤は、金属線材表面に塊状として固着しているものや、金属線材表面に薄く膜をつくるように付着しているものがある。上記で説明したように、この伸線潤滑剤の塊や薄い膜を除去するために、特許文献1に記載されるような洗浄装置を用いる場合は、金属線材の全面を長時間洗浄槽に浸漬して洗浄し続けなければ完全に落とすことができず、装置の長大化や工数の増加が重なり経済的に不利である。
本発明の金属線材の熱処理装置は、複数本の金属線材を並列で同時に熱処理することにより、生産性を大幅に向上することができる。
また、本発明で適用する研磨機は、ブラシの代わりに砥石を用いることができる。また、研磨機2は、研磨布等で金属線材1を挟み込んで研磨する構造のものであってもよい。
研磨機2としては、図3に示すように、円筒体7を用いることが好ましい。その理由は、円筒体7を回転させることにより、並列した金属線材1の表面に研磨力を付与することができる。円筒体7としては、研磨ブラシの他に、砥石を用いることができる。
本発明の研磨機の好ましい形態としては、金属線材1よりも柔らかい材質であるナイロン毛のブラシを使用することで、金属線材1の表面に疵を付けずに研磨することができる。このとき、円筒体7の研磨ブラシを金属線材1の通線方向と同方向または反対方向に回転させて、金属線材1の通線速度と相対速度差を持たせて金属線材1の表面を研磨することにより、金属線材1の表面に塊状や薄い膜となって固着した伸線潤滑剤を容易に引き剥がすことができる。
また、本発明の研磨機のより好ましい形態としては、複数(例えば3本)の円筒体7の研磨ブラシを回転させながら、それぞれの位相を替えて回転軸方向に揺動させることにより、金属線材1の上下面だけでなく、幅方向にも研磨力を加えることができ、金属線材1の表面全周を清浄にすることが可能となる。
本発明で適用できる金属線材の表面を拭取る拭取り機の一例を模式的に図4に示す。図4に示すように、本発明の拭取り機3は、複数(例えば6本)の金属線材1を並列で同時に通線させながら、それぞれの金属線材1の上下面および/または左右面に拭取り布8aまたは紙8aを固定治具8bで挟持する。そして、金属線材1の表面に拭取り布8aまたは紙8aを押し当て、押圧しながら金属線材1を通線することで、再付着した伸線潤滑剤の滓や研磨粉を拭取ることができる。なお、拭取り布8aまたは紙8aと固定治具8bは、金属線材1を通線したときに、金属線材1とともに移動してしまうのを防ぐために、スリット9で固定することが好ましい。
また、拭取り機3の後段にエアーワイパー(図示しない)を設置することがより好ましく、これにより拭取り布で除去しきれなかった伸線潤滑剤の滓や研磨粉をより確実に除去することができる。
本発明の金属線材の熱処理装置は、より細かな伸線潤滑剤の滓や研磨粉を完全に除去するために、図2に示す研磨機2と拭取り機3の間に、溶媒により金属線材1の表面を洗浄する洗浄機6を配置することが好ましい。
溶媒としては、溶剤以外に水、温水(典型的には30℃以上)を用いることができ、伸線潤滑剤の成分に応じて適宜選択できる。中でも、酸性水(典型的にはpH5以下)は、例えばステアリン酸カルシウム等の金属石鹸系を主成分とする伸線潤滑剤を金属線材表面から落としやすいという性質を有する。したがって、金属線材の表面にステアリン酸カルシウム等の金属石鹸系を主成分とする伸線潤滑剤が付着している場合は、溶媒として酸性水を用いることが好ましい。このとき、金属線材表面の付着物の組成に応じてpHを適宜選択することができる。
ここで、伸線工程を経た金属線材の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果の一例を図6(a)に示す。伸線工程を経た金属線材の表面は、濃灰色で示されるステアリン酸カルシウムを主成分とする伸線潤滑剤が全長に亘って付着している。この金属線材を、図3に示す研磨機2で研磨を行ない、次いで図5に示す洗浄機6で、溶媒としてpH3の酸性水を30℃で用いて、溶媒に後述する超音波振動を印加して金属線材の表面を洗浄すると、図6(b)に示すように、図6(a)にあった濃灰色で示される伸線潤滑剤が除去されたことがわかる。
図5に示す洗浄機6は、洗浄タンク11の前面と背面の一部に金属線材1が通過するためのスリット9を設けている。洗浄タンク11のスリット9の隙間から流れ出た溶媒は、戻り配管14を通り、リザーブタンク12に溜まり、ポンプ13によって再び洗浄タンク11に戻る構造となっている。ここで、本発明で適用する洗浄機としては、洗浄タンク11を通過した金属線材1の表面に溶媒をシャワー状に散水することが好ましい。これにより、本発明は、金属線材1の表面の伸線潤滑剤の滓や研磨粉を効果的に除去することもできる。
また、洗浄効果を促進させる補助機構として、洗浄タンク11内の底面には、超音波振動子10を設置し、溶媒に超音波振動を印加できるようにしておくことが好ましい。本発明で適用する洗浄機は、溶媒を振動させることで洗浄効果をより高めることができる。
また、図5に示す洗浄機6の入口および出口には、図4に示す拭取り機3をそれぞれ配置し、金属線材表面に付着している伸線潤滑剤の滓、研磨粉や溶媒を拭取ることがより好ましい。
Claims (6)
- 加熱炉と冷却装置とを有し、前記加熱炉と前記冷却装置とに複数の金属線材を並列で連続的に挿入しながら該金属線材を熱処理する金属線材の熱処理装置において、前記加熱炉の前段に前工程で前記金属線材の表面に付着した伸線潤滑剤を研磨して除去する研磨機と、前記金属線材の表面を超音波が印加された溶媒により洗浄する洗浄機と、前記金属線材の表面を拭取る拭取り機とが順に配置され、前記金属線材は前記研磨機、前記洗浄機、前記拭取り機、前記加熱炉、および前記冷却装置の順で通線されることを特徴とする金属線材の熱処理装置。
- 前記研磨機は、並列した複数の前記金属線材に駆動可能な回転軸を有する円筒体を接触させながら研磨するものであることを特徴とする請求項1に記載の金属線材の熱処理装置。
- 前記円筒体が前記金属線材の通線方向に千鳥状に複数本配置されることを特徴とする請求項2に記載の金属線材の熱処理装置。
- 前記円筒体が回転軸方向に揺動することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の金属線材の熱処理装置。
- 前記拭取り機は、通線方向に固定された拭取り布または紙で前記金属線材の表面に押圧しながら前記金属線材を通線して拭取るものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の金属線材の熱処理装置。
- 前記溶媒は、酸性水であることを特徴とする請求項1に記載の金属線材の熱処理装置。
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