JP2005120454A - 鉛浴熱処理鋼帯の表面付着物除去方法及びブラッシング装置 - Google Patents

鉛浴熱処理鋼帯の表面付着物除去方法及びブラッシング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】溶融鉛浴で恒温熱処理を施した鋼帯の表面付着異物を効率よく除去する。
【解決手段】加熱帯と、溶融鉛浴を備えた急冷帯と、前記溶融鉛浴の浴温に略等しい雰囲気温度に保持された保持帯とがこの順に連設された恒温熱処理炉に鋼帯を連続通板する恒温熱処理において、保持帯内を通過する鋼帯の上面及び下面のそれぞれに、金属細線からなる刷毛状ブラシ(13)を押付けて撓ませた弾性押圧状態のもとに摺接させる。保持帯を通過する過程の鋼帯の板温は高く、鉛系付着異物の鋼帯表面に対する凝着力は比較的低いので、鋼帯表面に刷毛状ブラシの押圧状態を保持して摺接させると、金属細線の弾性反撥力が鉛系付着異物を鋼帯表面から剥離する払拭力として作用し、効率よく鉛系付着異物を剥離除去することができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、鋼帯連続熱処理ラインにおいて、溶融鉛浴による恒温熱処理を施された鋼帯の表面に付着した鉛系異物を、鋼帯表面から効率よく除去し清浄な表面品質を得る方法及びその除去処理に使用されるブラッシング装置に関する。
溶融鉛浴を冷却媒体とする恒温熱処理は、焼き割れ,熱歪みの発生を回避しながら、鋼組織に恒温変態を生じさせて所要の材料特性を付与する調質熱処理であり、熱処理の目的及び生成する金属組織(例えばベイナイト,ソルバイト,マルテンサイト,焼戻しマルテンサイト等)により、オーステンパー, パテンティング,マルクエンチ,マルテンパー等と称され工業的に広く実施されている。
恒温熱処理炉は、図5に示すように、ラインの上流側から、加熱帯(21)、急冷帯(22)及び保持帯(23)がこの順に連設されている。加熱帯(21)はチューブヒーター等の加熱装置(図示省略)が配設され、急冷帯(22)には冷却媒体として溶融鉛浴(M)が設置されている。また保持帯(23)はチューブヒーター等(図示省略)により溶融鉛浴(M)の浴温とほぼ同じ雰囲気温度に保持されている。上流側のコイル(C)から巻き出される鋼帯(S)は、加熱帯(21)でオーステナイト域温度(例えば900〜950℃)に加熱され、ついで急冷帯(22)の溶融鉛浴(M)に浸漬されて所定温度(例えば350〜450℃)に急冷される。溶融鉛浴(M)を通過して浴外に出た鋼帯は、保持帯(23)を通過する間に所定の恒温変態を完了して炉外に導出されコイル(C)に巻き取られる。
上記恒温熱処理ラインにおいて、溶融鉛浴(M)から浴外に導出された鋼帯(S)の表面にはしばしば鉛浴(M)に由来する異物が付着している。鋼帯と溶融鉛とは本来濡れ性が低く、鋼帯表面は溶融鉛をよくはじくので鉛の付着はないはずであるが、実操業では部分的ないし斑模様状の付着異物による汚染が観察される。この付着異物は、溶滴状に付着した鉛の凝固物、浴の浮遊ドロスに由来する酸化鉛や溶融鉛と浴槽耐火物との夾雑物等である。このような異物の付着は鋼帯の商品価値を著しく損ない、そのまま鋼帯の加工を行なうと鋼帯表面に押し疵等が生じるので、剥離除去することを要する。その除去処理は、恒温熱処理炉の下流側にパッド装置(30)を設置して行われている。パッド(31)は、図6に示すように、アスベスト,スチールウール又はケブラー不織布等からなる払拭材(31)を剛性の芯材(31)のまわりに捲き付けたものであり、これを鋼帯(S)の表裏両面に押付けて付着異物を擦り取るのである。その除去効果を高めるためにパッド(31)にシリンダー(32)を連結して押圧力を制御することも行われている。しかしパッド装置(30)による方法では、鉛系付着異物を十分に除去することができない。
なお、鋼材表面に付着した異物を除去する手段として、ブラッシング装置が使用されることはよく知られている。例えば、鋼板表面の酸化スケールを除去する酸洗処理ラインにおいて酸洗液による洗浄効率を高めるためのブラシロール、あるいは冷延鋼帯表面の圧延油や防錆油等の油脂類及びそれに付着した鉄粉等の付着異物を除去する化学的ないし電気化学的洗浄処理等における洗浄効果を高めるためのブラシロールであり、そのブラシロールとして、耐熱性・耐摩耗性等の合成樹脂でブラシを形成したものや、砥粒(研磨材)を樹脂で固めた棒状の研削チップでブラシを構成したものが使用されている。しかし、これらの装置は、溶融鉛浴で恒温熱処理した鋼帯表面の鉛系付着異物の除去処理とは、処理対象・使用環境及び要求されるブラッシング作用を異にするものであり、鉛系付着異物の除去処理を効果的に遂行し得るものではない。
特開平3−112505号公報 特開平8−145896号公報 特開2003−11053号公報
本発明は、上記に鑑み、溶融鉛浴による恒温熱処理鋼帯を対象とし、鋼帯表面に付着した鉛系付着異物を鋼帯表面から効率よく除去することができる鉛系付着異物の除去方法およびその除去処理に使用されるブラッシング装置を提供するものである。
本発明の鉛浴熱処理鋼帯の表面付着物除去方法は、加熱帯と、溶融鉛浴を備えた急冷帯と、前記溶融鉛浴の浴温に略等しい雰囲気温度に保持された保持帯とがこの順に連設されてなる恒温熱処理炉に鋼帯を連続通板する恒温熱処理工程において、保持帯内を通過する鋼帯の上面及び下面のそれぞれに、金属細線をブラシ毛とする刷毛状ブラシを押付けて金属細線を撓ませた弾性押圧状態のもとに摺接させることにより、鋼帯表面の鉛系付着異物を剥離除去することを特徴としている。
本発明のブラッシング装置は、前記恒温熱処理炉の保持帯内に設置され、溶融鉛浴から導出される鋼帯の鉛系付着異物を保持帯内で鋼帯表面から剥離除去するものであって、
加熱帯と、溶融鉛浴を有する急冷帯と、前記溶融鉛浴の浴温に略等しい雰囲気温度に保持された保持帯とがこの順に連設されてなる恒温熱処理炉における前記溶融鉛浴から導出される鋼帯に付着した鉛系付着異物を除去するための前記保持帯内に設置されたブラッシング装置であって、金属細線(11)をブラシ毛として植設してなる刷毛状ブラシ(13)を有するブラシ本体(15)がブラシホルダー(16)に固定され、該ブラシホルダー(16)は、鋼帯パスラインを挟む上下両側に位置して鋼帯パスラインを横切ると共に、自身の軸心まわりに回動可能なように両側部において支承され、かつブラシホルダーの少なくとも片側端は炉壁を貫通して炉外に突出し、突出した端部に回動用ハンドル(17)が取付けられており、回動用ハンドルにより、鋼帯表面に対するブラシの押付けとその解除、および押付け時の弾性押圧力の調整が行なわれることを特徴としている。
溶融鉛浴を出て保持帯を通過する過程における鋼帯の板温は高く、保持帯(溶融鉛浴の浴温にほぼ等しい雰囲気温度に保持されている)による保温効果として、鉛系付着異物の鋼帯表面に対する凝着力は比較的低い状態にある。この鋼帯表面に金属細線をブラシ毛とする刷毛状ブラシを弾性的に押付け、金属細線を弾性的に撓ませた押圧状態を保持して摺接させると、金属細線の弾性反撥力が鉛系付着異物を鋼帯表面から剥離する払拭力として作用し、効率よく鉛系付着異物の剥離除去が行なわれる。
図1はブラッシング装置を構成するブラシ構造体の例を示している(同図[I]:正面図,[II]:I-I断面図)。11は金属細線(ブラシ毛)、12は金属細線を刷毛状に植設する断面コ字形状の溝型金具であり、金属細線(11)は根元部を溝型金具(12)の溝内に緻密に結束固定されて刷毛状ブラシ(13)を形成している。刷毛状ブラシ(13)は被処理鋼帯(S)の板幅全体を覆うように板幅を超えるブラシ幅を有している。刷毛状ブラシ(13)を基部材(14)に取り付けてブラシ本体(15)となし、これをブラシホルダー(16)に固定してブラシ構造体を形成している。ブラシホルダー(16)の片側端には回動用ハンドル(17)が取り付けられている。
図2は、恒温熱処理炉(20)の保持帯(23)にブラシ構造体を配置してブラッシング装置を構成した例を示している。ブラシ構造体は、鋼帯パスラインを挟む上下両側に位置してそれぞれ鋼帯パスラインを横切る向きをなし、かつブラシホルダー(16)の軸心まわりに回動可能なように設置されている。図では、ブラシホルダー(16)の片側端(16)を炉壁マンホール部(24)の壁面において軸承し、他端側(16)は対向する炉壁マンホール部(24)において軸承すると共に該マンホール部(24)を貫通させて炉外に突出させている。
図3は、恒温熱処理炉の保持帯(23)内を移行(矢符X)している鋼帯(S)に、ブラッシング装置の刷毛状ブラシ(13)を押付けて摺接させている状態を示している。刷毛状ブラシ(13)は鋼帯パスラインと直交する向きをなし、鋼帯(S)の板幅に全体に亘ってその表面に押付けられている。ブラッシング装置は、鋼帯(S)の上面側及び下面側のそれぞれに少なくとも1基ずつ配置され、必要に応じて複数の並列配置とされる。図4-1は上面側及び下面側のそれぞれに2基ずつ設置した例を示している。
鋼帯表面に対する刷毛状ブラシ(13)の押付けと鋼帯表面からの離脱の切替えはハンドル(17)の回動操作(矢符Z)により行なわれる。また刷毛状ブラシ(13)の押付け状態における押圧力の強弱の制御は、ハンドル(17)を回動して刷毛状ブラシ(13)の鋼帯表面に対する傾斜角θ(図4-1)を適宜の値、例えば30〜60゜の範囲で調整することにより行なわれる。
保持帯(23)内を通過する鋼帯の表面に刷毛状ブラシ(13)を押付け、ブラシ毛(金属細線11)を弾性的に撓ませた状態に保持して摺接させると、金属細線(11)の弾性反撥力により鋼帯表面の鉛系付着異物に払拭作用がはたらき、鋼帯表面から鉛系付着異物が剥離される。鋼帯の下面に付着している鉛系付着異物は、刷毛状ブラシ(13)で剥離されると共に鋼帯表面から落下するので、炉底に剥離片回収容器を置いて回収し、適時炉外に取り出すようにすればよい。鋼帯の上面側の鉛系付着異物は、剥離された後も鋼帯上に滞留するが、ライン終端側のコイル(C)に巻き取られる際に、鋼帯表面から滑り落ちて鋼帯表面から除去される。コイル(C)に巻き取られる前に鋼帯表面から掃き落とすようにしてもよい。別法として、図4-2に示すように、刷毛状ブラシ(13)を鋼帯パスラインに対し斜交する向き(例えば斜交角α=1〜45゜)に設置して鋼帯表面に押付けておけば、鋼帯(S)の上面側の鉛系付着異物は剥離された後、刷毛状ブラシ(13)の傾斜に沿って(図の例では矢符a方向に)拭き取られ鋼帯表面から落下させることができる。
刷毛状ブラシ(13)のブラシ毛である金属細線(11)は、恒温熱処理炉の保持帯(23)の加熱雰囲気に対する耐熱性、鋼帯(S)との摺接に対する耐摩耗性、および弾性反発力の作用で鉛系付着異物を鋼帯表面から引き剥がす払拭作用を得るための可撓性等を必要とする。これらの観点から、鋼細線、例えばステンレス鋼(JIS-G4303)、耐熱鋼(JIS-G4311)等が好ましく、好適な具体例としてSUS304ステンレス鋼及びこれに類する材種のものが挙げられる。その線径は例えば0.05〜0.1mmである。
上記SUS304ステンレス鋼からなる線径0.05〜0.1mmの鋼細線を使用して刷毛状ブラシ(13)を構成する場合、そのブラシ長さ(l)(=金具12から突出する部分の長さ,図1[II])参照)およびブラシ厚さ(t)(=金具12で締付けたブラシ毛の根元部の厚さ,図1[II])参照]として、ブラシ長さ(l)約25〜40mm、ブラシ厚さ(t)約3〜8mm、とする例が挙げられる。
図5の恒温熱処理炉(20)の保持帯(23)にブラッシング装置(10)を設置し、急冷帯(22)の溶融鉛浴(M)から導出される鋼帯の鉛系付着異物を除去する。
[1]鋼帯 材種:S55C(JIS-G3311)みがき特殊帯鋼
板幅:約200mm
[2]熱処理条件
(1)加熱帯での加熱温度:約930℃
(2)溶融鉛浴の浴温 :約400℃
(3)保持帯の雰囲気温度:約400℃
(4)ライン速度:5m/分
[3]ブラッシング処理
鋼帯パスラインに直交する向きに配置したブラッシング装置(図1〜3)の刷毛状ブラシ(13)をハンドル操作で鋼帯表面に押付けて摺接させる。
(1)ブラシ毛(金属細線)
材種:SUS304(JIS-G4303)オーステナイト系ステンレス鋼
線径:φ0.06(mm)
ブラシ長さ(l)・厚さ(t):30mm・5mm
(2)刷毛状ブラシ押付け傾斜角(θ):30〜60゜
(3)設置数:鋼帯の上面側及び下面側にそれぞれ2基
[比較例]
上記恒温熱処理においてブラッシング装置(10)に代え、熱処理炉(20)の下流側に設置したパッド装置(30)[図6]による鉛系付着異物の除去処理を行なった。
払拭材(31):スチールウール
押付け強さ :約5kN
パッド設置数:鋼帯の上面側及び下面側にそれぞれ2基
上記工程を経て得られた恒温熱処理鋼帯の表面を目視検査し、発明例および比較例における鉛系異物の付着残留による異常発生率(=異常発生質量/通板総質量×100)について、表1に示す結果を得た。本発明のブラッシング処理による鉛系付着異物の除去効率は高く、異常発生率は大幅に低減している。
(表1)
発 明 例 比 較 例
異常発生率 1.0% 5.5%
本発明によれば、鉛浴熱処理された鋼帯の鉛系付着異物を効率的に除去することができ、付着異物による弊害、特にその後の加工工程における押し疵等の表面欠陥の発生を抑制防止し表面品質を向上安定化することができる。本発明は刷毛状ブラシを使用して鉛系付着異物の除去処理を行うものであり、ロールブラッシング方式のような回転駆動装置等を必要とせず、比較的簡素な構造を有しメンテナンスの負担も少なく、既設の熱処理装置への適用も容易である。本発明が適用される恒温変態熱処理として、前記説明ではオーステンパー等に代表される恒温焼入れ処理を挙げているが、これに限定されず、このほかに溶融鉛浴を用いて行なわれる各種熱処理(例えば恒温焼鈍、恒温焼準等)にも上記と同様に適用して同様の効果を奏するものである。
本発明のブラッシング装置を構成するブラシ構造体の実施例を示す図(図[I]:正面図、図[II]:I-I矢視断面図)である。 恒温熱処理炉内に設置された本発明のブラッシング装置の実施例を示す正面図である。 本発明ブラッシング装置の鋼帯表面に押付けられた刷毛状ブラシの摺接状態を示す斜視説明図でる。 本発明のブラッシング装置の配設態様の例を示す側面説明図である。 本発明のブラッシング装置の配設態様の例を示す平面説明図である 鋼帯の恒温熱処理ラインを示す正面説明図である。 従来の付着異物除去装置であるパッド装置の説明図である。
符号の説明
10:ブラッシング装置
11:金属細線(ブラシ毛)
12:溝型金具
13:刷毛状ブラシ
14:基部材
15:ブラシ本体
16:ブラシホルダー
17:ハンドル
20:恒温熱処理炉
21:加熱帯
22:急冷帯
23:保持帯
24,24:炉壁マンホール
30:パッド装置
31:パッド
31:払拭材
31:芯材
32:シリンダー
,C:鋼帯コイル
S:鋼帯
M:溶融鉛浴

Claims (2)

  1. 加熱帯と、溶融鉛浴を備えた急冷帯と、前記溶融鉛浴の浴温に略等しい雰囲気温度に保持された保持帯とがこの順に連設されてなる恒温熱処理炉に鋼帯を連続通板する恒温熱処理工程において、保持帯内を通過する鋼帯の上面及び下面のそれぞれに、金属細線をブラシ毛とする刷毛状ブラシを押付けて金属細線を撓ませた弾性押圧状態のもとに摺接させることにより、鋼帯表面の鉛系付着異物を剥離除去することを特徴とする鉛浴熱処理鋼帯の表面付着物除去方法。
  2. 加熱帯と、溶融鉛浴を有する急冷帯と、前記溶融鉛浴の浴温に略等しい雰囲気温度に保持された保持帯とがこの順に連設されてなる恒温熱処理炉における前記溶融鉛浴から導出される鋼帯に付着した鉛系付着異物を除去するための前記保持帯内に設置されたブラッシング装置であって、金属細線をブラシ毛として植設してなる刷毛状ブラシを有するブラシ本体がブラシホルダーに固定され、該ブラシホルダーは、鋼帯パスラインを挟む上下両側に位置して鋼帯パスラインを横切ると共に、自身の軸心まわりに回動可能なように両側部において支承され、かつブラシホルダーの少なくとも片側端は炉壁を貫通して炉外に突出し、突出した端部に回動用ハンドルが取付けられており、回動用ハンドルにより、鋼帯表面に対するブラシの押付けとその解除、および押付け時の弾性押圧力の調整が行なわれることを特徴とする鉛浴熱処理鋼帯の表面付着物除去用ブラッシング装置。
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