JPH10183256A - 金属材料の熱処理方法 - Google Patents

金属材料の熱処理方法

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JPH10183256A
JPH10183256A JP8353979A JP35397996A JPH10183256A JP H10183256 A JPH10183256 A JP H10183256A JP 8353979 A JP8353979 A JP 8353979A JP 35397996 A JP35397996 A JP 35397996A JP H10183256 A JPH10183256 A JP H10183256A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 加熱能力及び冷却能力が高く、しかも、省設
備、省スペースであり、作業環境に優れたオーステナイ
ト系ステンレス材等の金属材料の熱処理方法を提供す
る。 【構成】 移送中の長尺金属材料を連続的に加熱するに
際し、該金属材料を高周波誘導炉の誘導コイル中を通過
せしめる誘導加熱工程と、前記金属材料に電流を通電す
ることにより発熱せしめる通電加熱工程とを構成し、前
記誘導加熱工程と通電加熱工程を無酸化及び/又は還元
雰囲気中において同時に行わしめる構成である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、線材等の長尺金属
材料を移送しながら熱処理する方法、例えば、軟化処理
するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば、溶接棒を生産するために
は、SUS308等のオーステナイト系ステンレス薄板
により構成された厚さ約0.4mm、幅約4mmの長尺板を
外径約2.3mmφの管状になるように巻込み成形し、内
部にフラックスを充填した素線を形成せしめられる。こ
の素線は外径が約1.4〜1.6mmφになるまで伸線さ
れた後、溶体化処理(鈍し軟化処理)され、最終的に外
径が約0.8〜1.0mmφになるように伸線される。
【0003】従って、前記素線を軟化処理するための熱
処理が実施される。また、前述したような溶接棒に限ら
ず、種々のオーステナイト系ステンレス線材や薄帯板等
(以下総称して長尺金属材料という)においても、軟化
処理、その他の熱処理が行われている。
【0004】ところで、従来技術によれば、長尺金属材
料を熱処理するためには、金属材料を移送しながら、先
ず、トルクロロエタン溶剤等の洗浄剤により処理前の金
属材料に付着した不純物を取除き、次いで、金属材料を
電気ヒータにより加熱した後、間接水冷により冷却する
のが一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術は、洗浄
工程においてトルクロロエタン等の溶剤を用いるため、
臭いが強く作業環境を悪化するばかりか、該溶剤が発癌
原因になるため公害の問題がある。
【0006】しかも、熱処理工程において電気ヒータに
よる熱伝導加熱方法を用いるため、金属材料のラインス
ピードが極度に低下し、生産性の点に問題があると共
に、ライン全長の長大化を強いられることになる。しか
も、加熱炉は、ガイドパイプの寿命を維持するため炉内
温度を常に維持する必要があり、エネルギーロスを生じ
るほか、加熱炉の立上りに際しても長時間を要する。そ
して、昼夜、炉内温度を維持する構成のため、輻射熱に
よる作業環境の悪化を招来し、その間に加熱部で発生す
る燃焼ガスがダイオキシン等の有害ガスを含むという問
題がある。
【0007】更に、冷却工程において間接水冷による冷
却方法を用いるため、金属材料の結晶粒界にクロム炭化
物(Cr1310)を析出し、耐蝕性を劣化するという問
題がある。
【0008】ところで、本発明者は、ネジ部品等の冷間
鍛造品のために提供される金属素線を熱処理する方法と
して、先に、特願平3−328179号を提案し、商業
的成功をおさめているところである。この先願発明は、
無酸化及び/又は還元雰囲気中において金属材料を高周
波誘導炉の誘導コイル中を通過せしめることにより誘導
加熱した後、無酸化及び/又は還元雰囲気中においてガ
ス冷し、その後、油冷する構成である。
【0009】従って、誘導加熱のため、作業環境を悪化
することなく、しかも、省エネルギーの下において、金
属材料を短時間で急速加熱することが可能になり、ライ
ンの短縮化に大きく寄与する。また、ガス冷による予備
冷却と、油冷による急冷のため、光輝性を有しつつ耐蝕
性に優れた金属材料を提供できる。
【0010】然しながら、本発明者が知見したところに
よると、前述の溶接棒のような細線を軟化処理する技術
においては、前記先願発明の技術をそのまま利用するこ
とは適切でなく、更に、多くの課題を解決しなければな
らない。
【0011】即ち、加熱工程で用いられる高周波誘導炉
の誘導コイルは、コイル内径を小さくすることに限度が
あるため、金属材料が細い細線等の場合、満足な誘導加
熱を得られない。
【0012】また、金属材料の機械的性質を得るに際し
軟化処理が必要な場合は、油冷による急激な急冷が好ま
しくないことは云うまでもなく、しかも、前述したよう
な溶接棒の場合、内部のフラックスにオイル等の不純物
が付着してはならないから、油冷手段は禁物である。こ
の点について、油冷手段を用いることなく、先願発明の
ようなガス冷による輻射冷却手段だけで冷却工程を構成
するならば、冷却工程のためのラインが長大化するばか
りか、金属材料の結晶粒界にクロム炭化物を析出し耐蝕
性を劣化するという問題を生じる。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決した金属材料の熱処理方法を提供するものであり、そ
の手段として構成したところは、線材等の長尺金属材料
を移送しながら加熱工程と冷却工程を行う熱処理方法に
おいて、前記加熱工程に際し、金属材料を高周波誘導炉
の誘導コイル中を通過せしめる誘導加熱工程と、前記金
属材料に電流を通電することにより発熱せしめる通電加
熱工程を構成し、前記誘導加熱工程と通電加熱工程を無
酸化及び/又は還元雰囲気中において同時に行う点にあ
り、更に、前記冷却工程に際し、金属材料をガス冷する
輻射冷却工程と、前記金属材料を第一の冷却ドラムに巻
回せしめた後に第二の冷却ドラムに巻回せしめ、前記第
一の冷却ドラムに対する巻回方向と第二の冷却ドラムに
対する巻回方向を相互に反対方向とすることにより金属
材料を両面から冷却せしめる接触冷却工程を構成し、前
記輻射冷却工程と接触冷却工程を無酸化及び/又は還元
雰囲気中において同時に行う点にある。
【0012】
【発明の実施の形態】以下図面に基づいて本発明の1実
施形態を説明する。
【0013】〔全体的構成〕図1(A)に示すように、
線材や細帯板等の長尺の金属材料1は、ボビンに巻回さ
れた未処理ロール1aから繰出される。金属材料1は、
例えば、オーステナイト系ステンレスを素材とする。
【0014】繰出された金属材料1は、第一の段差ロー
ル2を経て、洗浄部3を通過し、その後、加熱部4、第
一の冷却部5、第二の冷却部6、第三の冷却部7を通過
せしめられた後、第二の段差ロール8を経て、ボビンに
巻取られ処理済ロール1bを形成する。未処理ロール1
aから処理済ロール1bに至る金属材料1は、ラインス
ピード約100m/分で連続的に移送せしめられてお
り、従来スピード(約10m/分)の約10倍の速さと
される。
【0015】一対の段差ロール2、8は、加熱工程及び
冷却工程を経ながら連続的に移送される金属材料1が弛
まないようにテンションを付与するものであり、図1
(B)に示すように、間隔をあけてほぼ平行に配置され
た第一ロール9と第二ロール10を有し、両ロール9、
10にかけて金属材料1を数巻(例えば10巻程度)に
相当して巻掛け、一方のロール10をシリンダその他の
アクチュエータにより他方のロール9に対して間隔調節
自在に構成し、これにより金属材料1にテンションを付
与する。ところで、段差ロール2及び/又は8により金
属材料1の移送手段を兼用できるように構成する場合
は、第一及び第二ロール9、10の一方又は両方を回転
駆動する駆動手段を設ければ良く、或いは、移送手段を
別途に設ける場合は、両ロール9、10は遊転自在に構
成される。尚、一対の段差ロール2、8の間において同
様の第三の段差ロールを設けても良い。
【0016】〔洗浄工程〕洗浄部3において、金属材料
1は、高速で移送されながら表面に付着した不純物を除
去される。この際、従来のような有害な溶剤は使用され
ない。
【0017】(洗浄部の第一実施例)図2(A)は、洗
浄部3の第一実施例を示しており、金属材料1は、先
ず、回転ブラシ11により表面を摺擦せしめられる。図
例において、第一回転ブラシ11a、第二回転ブラシ1
1b、第三回転ブラシ11cの三段階とされているよう
に、複数回にわたり金属材料1の表面を回転ブラシで摺
擦するのが好ましい。
【0018】次いで、金属材料1は、ジェット噴射装置
12を通過せしめられ、高圧による噴射水により水洗さ
れる。図例の場合、複数回にわたる噴射を行うため、第
一噴射装置12a、第二噴射装置12b、第三噴射装置
12cが三段階に設けられている。三段階とも水を噴射
することにより金属材料1を洗浄しても良いが、無害な
ものであれば溶剤を用いても良い。例えば、第一噴射装
置12aによりトリクレン溶剤を高圧噴射することによ
り粗い洗浄を行い、第二噴射装置12bによりパークレ
ン溶剤を高圧噴射することにより中間的洗浄を行い、第
三噴射装置12cにより水を高圧噴射することにより仕
上げ洗浄(水洗)を行う構成としても良い。
【0019】(洗浄部の第二実施例)図2(B)は、洗
浄部3の第二実施例を示しており、金属材料1は、先
ず、回転ブラシ11により表面を摺擦せしめられる。複
数の回転ブラシ、即ち、第一回転ブラシ11a、第二回
転ブラシ11b、第三回転ブラシ11cを設けている点
は、前記第一実施例と同様である。
【0020】次いで、金属材料1は、第一掻取り装置1
3を通過せしめられる。第一掻取り装置13は、金属材
料1を摺擦しながら通過せしめるステンレスウール等の
タワシ状の線条材による掻取り材14を装填しており、
通過中、エアー15を噴射せしめられる。これにより金
属材料1の表面から掻落とされたスラッジは、掻取り部
材14から落下し、槽16により受取られる。
【0021】その後、金属材料1は、第二掻取り装置1
7を通過せしめられる。第二掻取り装置17は、アルミ
ナ砥粒等の砥粒材18を装填しており、該砥粒材18に
振動を与えるバイブレータ19を設けることにより、金
属材料1と砥粒材18の接触部に適度の衝撃を与える。
これにより金属材料1の表面から掻落とされたスラッジ
は、該砥粒材18の下方に落下し、槽20により受取ら
れる。
【0022】更に、金属材料1は、払拭装置21によ
り、表面に残存した微粒不純物を払拭される。払拭装置
21は、回転駆動されるエンドレスベルトを構成したフ
ェルト材22と、金属材料1をフェルト材22に押圧す
るための圧胴23を有する。図例のように、二つの払拭
装置21a、21bを直交方向に設け、これにより金属
材料1の全周を拭き取るように構成することが好まし
い。
【0023】(洗浄部の第三実施例)図2(C)は、洗
浄部3の第三実施例を示しており、金属材料1は、先
ず、回転ブラシ11により表面を摺擦せしめられる。複
数の回転ブラシ、即ち、第一回転ブラシ11a、第二回
転ブラシ11b、第三回転ブラシ11cを設けている点
は、前記第一実施例と同様である。
【0024】次いで、金属材料1は、第一洗浄装置24
を通過せしめられる。第一洗浄装置24は、金属材料1
を摺擦しながら通過せしめるフェルト材から成るマット
25を有し、該マット25にはリンゴ酸等の弱酸26が
含浸せしめられている。このため、マット25の両端
は、弱酸26の貯留部27に浸漬され、常時、毛細管現
象により弱酸26を供給されている。貯留部27の弱酸
26が汚損したときは、下方の槽28に排出され、新た
な弱酸26が供給される。尚、リンゴ酸等の弱酸26
は、容易に中和できるので、廃棄公害の虞れがない。
【0025】その後、金属材料1は、第二洗浄装置29
を通過せしめられる。第二洗浄装置29は、金属材料1
を摺擦しながら通過せしめるフェルト材から成るマット
30を有し、該マット30には水31が含浸せしめられ
ている。このため、マット30の両端は、水31の貯留
部32に浸漬され、常時、毛細管現象により水32を供
給されている。従って、第一洗浄装置24により金属材
料1に付着した弱酸26は、第二洗浄装置29を通過す
る際に除去される。尚、水31が汚損したときは、下方
の槽33に排出され、新たな水31が供給される。
【0026】更に、金属材料1は、上記第二実施例と同
様の払拭装置21により、表面に残存した微流不純物や
水を払拭される。払拭装置21は、回転駆動されるエン
ドレスベルトを構成したフェルト材22と、金属材料1
をフェルト材22に押圧するための圧胴23を有する。
図例のように、二つの払拭装置21a、21bを直交方
向に設け、これにより金属材料1の全周を拭き取られ
る。
【0027】〔加熱工程〕洗浄工程を終えた金属材料1
は、加熱部4に導かれ、そこで加熱工程を実施される。
図1及び図3に示すように、加熱工程は、金属材料1を
高周波誘導炉34の誘導コイル35を通過せしめる誘導
加熱工程と、金属材料1に電流を通電することにより発
熱せしめる通電加熱工程を構成し、これらの誘導加熱工
程と通電加熱工程を無酸化及び/又は還元雰囲気中にお
いて同時に行わしめられる。
【0028】(誘導加熱手段)図3に示すように、高周
波誘導炉34は、誘導コイル35を一直線状に配置し、
該コイル35に遊挿された石英管から成るガイド管36
により金属材料1の通路を構成する。尚、図例では一本
の誘導コイル35を示しているが、複数本の誘導コイル
を直列に組合わせて配置しても良い。この際、誘導コイ
ル35は、ほぼ中心部に冷媒通路37を形成した管状に
形成されており、冷媒供給装置38からポンプ等の供給
手段39により供給される冷媒を冷媒通路37に流通せ
しめ循環せしめる。
【0029】そこで、ガイド管36を通過する金属材料
1は、電磁誘導によるジュール熱により数秒で瞬時に加
熱される。因に、金属材料1は、段差ロール2、8によ
り直進性のある直線状となるようにテンションを付与さ
れているので、移送中、ほとんど振れを生じることはな
く、ガイド管36の内面に接触することはない。
【0030】前記ガイド管36の内部には無酸化及び/
又は還元もしくは一部還元ガスが充填されている。この
ガスは、後述する第一の冷却部5の冷却通路40からガ
イド管36に向けて送られる。即ち、冷却通路40の始
端40aにガイド管36の終端36bを挿入せしめてお
り、冷却通路40とガイド管30の間における隙間によ
り形成された排気路41からガスの一部を排出しつつ、
残余のガスをガイド管36に送り込む。従って、ガイド
管36には、金属材料1の走行方向に対向する方向に向
けてガスが送り込まれ、ガスはガイド管36を通過して
該ガイド管の始端36aから排出される。尚、ガスとし
ては、通常AXガスと称されているガス(H2 75%、
2 25%程度のガス)或いは不活性ガス(N2 系ガ
ス)を採用することができる。
【0031】(通電加熱手段)通電加熱工程において、
金属材料1に電流を通電することにより発熱せしめるた
め、通電加熱手段42が設けられている。通電加熱手段
42は、ガイド管36の両端近傍において移送中の金属
材料1に接する一対の通電端子43、44を備え、両端
子43、44を電源45に接続している。従って、ガイ
ド管36の内部を移送される金属材料1は、通電端子4
3、44に接する部分の間において電流を通電せしめら
れ、該金属材料自体の電気抵抗によりジュール熱を生じ
瞬時に発熱し加熱せしめられる。
【0032】図示実施形態において、通電加熱手段42
と誘導コイル35は、同一の電源45から電流を供給さ
れ、金属材料1がガイド管36に供給されているときに
のみ作動するように構成されている。この同時作動手段
は、例えば、誘導コイル35の少なくとも一方の端子
(図示せず)を、通電端子43、44の少なくとも一方
に接続することにより達せられる。従って、電源45の
主スイッチ(図示せず)をONした状態であっても、金
属材料1が一対の通電端子43、44を橋絡するように
接していなければ、通電加熱手段42及び誘導コイル3
5は、何れも作動しない。換言すれば、金属材料1が未
処理ロール1aを全て消費し、目的とする熱処理を完了
することによりガイド管36を通り過ぎると、通電加熱
手段42及び誘導コイル35に対する電流の供給は自動
的に停止される。尚、同時作動手段は、図例の他、種々
の電気回路により構成することができる。
【0033】(加熱工程の作用)上記構成によれば、ガ
イド管36の内部を移送される金属材料1は、誘導コイ
ル35による加熱と、通電加熱手段42による加熱を同
時に行われる。従って、例えば、金属材料1が線径約3
〜5mmφの線材の場合、数秒(例えば4〜6秒)のうち
に摂氏約1000度(例えば摂氏950〜1100度、
実施例においては約1050度)に加熱される。但し、
上述したような外径約1.4〜1.6mmφの溶接棒を構
成するための素線の場合は、摂氏約900度で足りるの
で、電圧及び/又は電流を任意に調節すれば良い。この
際、金属材料1の加熱に寄与する割合は、誘導コイル3
5による電磁誘導加熱が約70%、通電加熱手段42に
よる通電加熱が約30%となるように構成するのが良
い。
【0034】従って、金属材料1は、誘導加熱と通電加
熱の両者による加熱工程を同時に実施されるので、数秒
で瞬時に所定温度まで加熱される。即ち、例えば、誘導
コイル35のコイル径(内径)が10mmφ以上で、金属
材料1が外径約1〜3mmφのように細い細線である場
合、電磁誘導加熱だけでは所期の加熱温度を得られない
のに対して、本発明によれば同時に通電加熱が付加され
るので、所定の短時間のうちに所定の温度まで加熱する
ことが可能になった。また、その結果、例えば、金属材
料1の移送速度が約100m/分のように高速の場合で
も、電磁コイル35の長さと、通電端子43、44の間
の距離は、1m以下で足りる。
【0035】そして、金属材料1は、洗浄工程を経た
後、ガスを充填されたガイド管36により、無酸化及び
/又は還元雰囲気の下で、誘導加熱及び通電加熱を行わ
れるため、該金属材料1にスケールを生じることはな
く、しかも、ガイド管36の内面を常にクリーンな状態
に維持される。
【0036】〔冷却工程〕加熱工程を終えた金属材料1
は、引き続いて順次、第一の冷却部5、第二の冷却部
6、第三の冷却部7に導かれ、そこで冷却工程を実施さ
れる。
【0037】(第一の冷却部)前記加熱された金属材料
1は、直ちに、第一の冷却部5に送られ、そこでガス冷
される。この第一の冷却部5は、図1及び図3に示すよ
うに、前述した冷却通路40にガス充填路46を連通し
て設け、ガス供給手段47から無酸化及び/又は還元も
しくは一部還元ガスを送り込まれる。尚、必要に応じ
て、冷却通路40の外周に冷媒ジャケットを形成し、循
環する冷却水等の冷媒により該冷却通路40を冷却する
構成としても良い。
【0038】(第二の冷却部)第一の冷却部5を通過し
た金属材料1は、第二の冷却部6に導かれ、そこでガス
冷による輻射冷却工程ないし対流冷却工程と(本明細書
において単に輻射冷却工程という)、冷却ドラムによる
接触冷却工程とを同時に実施される。
【0039】即ち、図4に示すように、第二の冷却部6
は、間隔をあけてほぼ平行に配置された第一の冷却ドラ
ム48と第二の冷却ドラム49を設けており、これらの
ドラムと金属材料1の移送経路を包囲するガス冷室50
を設けている。そして、ガス冷室50にはガス充填路5
1が連通して設けられ、ガス供給手段52から無酸化及
び/又は還元もしくは一部還元ガスを送り込まれる。
尚、必要に応じて、ガス冷室50の外周に冷媒ジャケッ
トを形成し、循環する冷却水等の冷媒により該ガス冷室
50を冷却する構成としても良い。
【0040】前記一対の冷却ドラム48、49は、内部
に冷媒流路48a、49aを形成しており、回転軸の一
端から流入する冷却水等の冷媒を冷媒流路48a、49
aに充填すると共に、該冷媒を回転軸の他端から流出
し、循環せしめる。尚、冷却ドラム48、49の一方又
は両方を金属材料1の移送速度に同期して回転駆動する
駆動手段を設けても良いが、該ドラムを金属材料1の移
送により自由に回転するように遊転自在に軸支しても良
い。また、冷却ドラム48、49の一方を他方に対して
進退調節自在に構成し、このドラムにより金属材料1の
テンション付与手段を兼用するように構成しても良い。
更に、必要に応じ、同様の構成とした第三の冷却ドラム
を設ける等、冷却ドラムを増設することにより冷却能力
を高めるように構成しても良い。
【0041】ところで、金属材料1は、第一の冷却ドラ
ム48に巻回された後、第二の冷却ドラム49に巻回さ
れ、この際、第一の冷却ドラム48に対する巻回方向と
第二の冷却ドラム49に対する巻回方向を相互に反対方
向とすることにより、金属材料1を両面から冷却せしめ
る。例えば、図例の場合、金属材料1は、第一の冷却ド
ラム48に対して時計針方向に巻回され、第二の冷却ド
ラム49に対しては反時計針方向に巻回される。この
際、何れのドラム48、49に対しても、金属材料1は
数巻(例えば5巻程度)に相当して巻掛けられる。
【0042】従って、図4(C)に示すように、金属材
料1は、第一の冷却ドラム48に接して一側半部1xを
接触冷却された後、第二の冷却ドラム49に接して他側
半部1yを接触冷却され、これにより両面からの接触冷
却を行われる。そして、第二の冷却部6に導入され、前
記接触冷却工程を経て、該第二の冷却部6から導出され
る間、ガスを充填されたガス冷室50内でガス冷による
輻射冷却工程を同時に実施される。
【0043】このように、金属材料1は、ガス冷による
輻射冷却工程と、ドラムによる両面にわたる接触冷却工
程とを同時に実施されるので、所定の短時間のうちに所
定の低温度まで冷却される。その結果、第二の冷却部6
の全長を短く構成することができる。
【0044】この点について、本発明者の実験の結果に
よれば、金属材料1を冷却するに際して、ガス冷による
輻射冷却のみを行った場合は、結晶粒の大小が混在し
(#5〜2)、しかも、クロム炭化物(Cr1310)が
結晶粒界に析出し、鋭敏化組織となって耐蝕性を劣化せ
しめるのに対して、本発明のようにガス冷による輻射冷
却に加えて、冷却ドラム48、49による接触冷却工程
を同時実施した場合は、金属材料1の結晶粒が均一で小
さく(#6〜7)、しかも、クロム炭化物の析出のない
良好な組織が確認された。
【0045】(第三の冷却部)第二の冷却部5を通過し
た金属材料1は、第三の冷却部7に導かれ、そこでガス
冷される。即ち、図1及び図4(A)に示すように、第
三の冷却部7は、前記第一の冷却部6のガス冷室50の
終端から延びる冷却通路53を構成している。そして、
冷却通路53にはガス充填路54が連通して設けられ、
ガス供給手段55から無酸化及び/又は還元もしくは一
部還元ガスを送り込まれる。尚、必要に応じて、冷却通
路53の外周に冷媒ジャケットを形成し、循環する冷却
水等の冷媒により該冷却通路53を冷却する構成として
も良い。
【0046】尚、前記冷却通路53の終端は開放されて
おり、該終端からガスを排出すると共に、上記の冷却工
程を完了した金属材料1を該終端から導出し、第二の段
差ロール8に導かせる。
【0047】(冷却部の構成)図示実施形態において
は、第一の冷却部5、第二の冷却部6、第三の冷却部7
を構成したが、本発明の重要な特徴は、輻射冷却工程と
接触冷却工程を同時に実施する点にある。従って、加熱
工程を経た後の金属材料1に求められる所定の機械的性
質に応じて、冷却条件を変更することが可能であり、例
えば、第二の冷却部6のようなガス冷による輻射冷却工
程と冷却ドラムによる接触冷却工程を同時に実施する構
成を備えておれば良く、第一の冷却部5及び/又は第三
の冷却部7は省略しても良い。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、線材等の長尺の金属材
料1を移送しながら加熱工程と冷却工程を行う熱処理方
法において、前記加熱工程に際し、金属材料1を高周波
誘導炉34の誘導コイル35中を通過せしめる誘導加熱
工程と、前記金属材料1に対して通電加熱手段42によ
り電流を通電することにより発熱せしめる通電加熱工程
を構成し、前記誘導加熱工程と通電加熱工程をガイド管
36の無酸化及び/又は還元雰囲気中において同時に行
うように構成したものであるから、金属材料1を瞬時に
所定温度まで加熱することができる。
【0049】特に、加熱工程を誘導コイルによる電磁誘
導加熱のみにより行うときは、誘導コイル35のコイル
内径に比して金属材料1が細い細線であるような場合、
所期の加熱温度まで急加熱を行い難いのに対して、本発
明によれば、電磁誘導加熱に加えて通電加熱を同時に行
うものであるから、所定の短時間のうちに所定の温度ま
で急加熱することが可能になる効果があり、また、その
結果、金属材料1の移送速度の高速化による作業効率の
向上を可能にすると共に、ライン全長の短縮化に大きく
寄与できる。
【0050】そして、金属材料1の加熱工程は、ガスを
充填されたガイド管36により無酸化及び/又は還元雰
囲気の下で行われるため、該金属材料1にスケールを生
じることはなく、光輝性に優れた製品を提供することが
でき、しかも、熱処理工程中、外部に熱を放出しないの
で作業環境を改善できるという効果がある。
【0051】更に、本発明によれば、前記冷却工程に際
し、金属材料1をガス冷する輻射冷却工程と、前記金属
材料1を第一の冷却ドラム48に巻回せしめた後に第二
の冷却ドラム49に巻回せしめ、前記第一の冷却ドラム
48に対する巻回方向と第二の冷却ドラム49に対する
巻回方向を相互に反対方向とすることにより金属材料1
の両面1x、1yを冷却せしめる接触冷却工程を構成
し、前記輻射冷却工程と接触冷却工程を無酸化及び/又
は還元雰囲気中において同時に行うように構成したもの
であるから、結晶粒が均一で小さく、しかも、結晶粒界
にクロム炭化物が析出することもなく耐蝕性に優れた熱
処理製品を提供できるという効果がある。そして、冷却
工程には油冷手段を設ける必要がないので、溶接棒等の
熱処理にも好適に適用できる点で有利である。
【0052】以上のように、本発明は、金属材料の熱処
理、特に、軟化処理のために優れた効果を奏し、移送さ
れる長尺の金属材料に対して連続的に加熱冷却を行うこ
とにより、該金属材料の所定の機械的性質を得るための
技術に広く実施できる点において高く評価できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施形態を示し、(A)は全工程
を示す概略図、(B)は段差ロールを示す斜視図であ
る。
【図2】本発明の実施形態における洗浄工程を示し、
(A)は洗浄部の第一実施例を示す概略図、(B)は洗
浄部の第二実施例を示す概略図、(C)は洗浄部の第三
実施例を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態における熱処理工程を実施す
るための誘導加熱手段及び通電加熱手段を示す断面図で
ある。
【図4】本発明の実施形態における冷却理工程を実施す
るための装置を示し、(A)は輻射冷却手段及び接触冷
却手段を示す断面図、(B)はB−B線断面図、(C)
は金属材料の両面に対する接触冷却を説明する説明図で
ある。
【符号の説明】
1 金属材料 2、8 段差ロール 3 洗浄部 4 加熱部 5 第一の冷却部 6 第二の冷却部 7 第三の冷却部 34 高周波誘導炉 35 誘導コイル 36 ガイド管 42 通電加熱手段 43 44 通電端子 48 第一の冷却ドラム 49 第二の冷却ドラム 50 ガス冷室
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C21D 9/62 102 C21D 9/62 102

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 線材等の長尺金属材料を移送しながら加
    熱工程と冷却工程を行う熱処理方法において、前記加熱
    工程に際し、金属材料を高周波誘導炉の誘導コイル中を
    通過せしめる誘導加熱工程と、前記金属材料に電流を通
    電することにより発熱せしめる通電加熱工程を構成し、
    前記誘導加熱工程と通電加熱工程を無酸化及び/又は還
    元雰囲気中において同時に行うことを特徴とする金属材
    料の熱処理方法。
  2. 【請求項2】 線材等の長尺金属材料を移送しながら加
    熱工程と冷却工程を行う熱処理方法において、前記冷却
    工程に際し、金属材料をガス冷する輻射冷却工程と、前
    記金属材料を第一の冷却ドラムに巻回せしめた後に第二
    の冷却ドラムに巻回せしめ、前記第一の冷却ドラムに対
    する巻回方向と第二の冷却ドラムに対する巻回方向を相
    互に反対方向とすることにより金属材料を両面から冷却
    せしめる接触冷却工程を構成し、前記輻射冷却工程と接
    触冷却工程を無酸化及び/又は還元雰囲気中において同
    時に行うことを特徴とする金属材料の熱処理方法。
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