JP5854327B2 - 軸受装置 - Google Patents

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Description

本発明は軸受装置に関し、詳しくは表面が高粗度に加工された第1部材と、表面が低粗度に加工されて上記第1部材に対して回転する第2部材と、上記第1部材と第2部材との間に挟持されたスラスト軸受とを備えた軸受装置に関する。
従来、表面が高粗度に加工された第1部材と、表面が低粗度に加工されて上記第1部材に対して回転する第2部材と、上記第1部材と第2部材との間に挟持されたスラスト軸受とを備えた軸受装置が知られている。
このような軸受装置として例えばデファレンシャルギアが知られており、ハウジングが上記第1部材に、サイドギアが上記第2部材に、デフワッシャが上記スラスト軸受にそれぞれ該当している。
上記構成を有するデファレンシャルギアでは、上記サイドギアが高速回転した状態で、デフワッシャに大きなスラスト荷重が作用すると、これらの間の潤滑油の油膜が薄くなってしまい、焼き付きが発生するという問題があった。
そこで従来のデファレンシャルギアでは、上記デフワッシャに円周方向等間隔に貫通穴を形成し、この貫通穴に潤滑油を貯溜することでサイドギアとスラスト軸受との間に潤滑油の供給を行うものが知られている。
一方、デファレンシャルギア以外の軸受装置としては、金属製のリング状部材を変形させて摺動面側に凹凸を形成して、凸部を相手部材に摺動させるスラスト軸受を備えたものが知られており、上記凸部と凸部との間に形成された凹部に潤滑油を収容して、摺動面に潤滑油を供給するようになっている(特許文献1)。
特開昭63−158316号公報
しかしながら、上記複数の貫通穴の形成されたデフワッシャを備えたデファレンシャルギアの場合、上記貫通穴からサイドギア側の摺動面に潤滑油を供給できるものの、十分に焼き付きを防止できるものとはなっていなかった。
一方、上記特許文献1に記載された上記凸部の形成されたスラスト軸受の場合、大きなスラスト荷重によって凸部が変形してしまうことから、当該特許文献1のスラスト軸受をデファレンシャルギアのような大きなスラスト荷重が作用する軸受装置に用いることができなかった。
このような問題に鑑み、大きなスラスト荷重が作用し、第2部材とスラスト軸受とが高速に摺接しても、可及的に焼付を防止することが可能な軸受装置を提供するものである。
すなわち請求項1の発明にかかる軸受装置は、表面が高粗度に加工された第1部材と、表面が低粗度に加工されて上記第1部材に対して回転する第2部材と、上記第1部材と第2部材との間に挟持したリング状のスラスト軸受とを備えた軸受装置において、
上記スラスト軸受を平板形状とするとともに、第1部材側の第1摺動面に凹部を形成して、当該第1摺動面における上記凹部の開口面積を、該第1摺動面の面積に対して10〜50%の割合で設定し、かつ、上記スラスト軸受における第2部材側の第2摺動面に凹部を形成し、第1摺動面における凹部の開口面積から第2摺動面における凹部の開口面積を引いたときの面積差が、上記第1摺動面における凹部の開口面積の10%以上となるようにし、
スラスト軸受が上記第1部材に対しても回転するようにしたことを特徴としている。
上記発明によれば、スラスト軸受を平板形状としたことで、大きなスラスト荷重が作用してもスラスト軸受自体は変形せず、また第1摺動面に凹部を形成したことで、当該凹部よりスラスト軸受と第1摺動面との間に潤滑油を供給して、これらの間の摩擦力を低減する。
そして、上記第2部材との摺動によってスラスト軸受に回転力が発生すると、この回転力がスラスト軸受と第1部材との摩擦力を超えるため、スラスト軸受が第1部材に対して回転することとなる。
そしてスラスト軸受が第1部材に対して回転すると、相対的に上記第2部材とスラスト軸受との周速が低下することから、スラスト軸受に大きなスラスト荷重が作用している場合であっても、当該第2部材とスラスト軸受との焼付きを防止することが可能となる。
本実施例にかかるデファレンシャルギアの部分断面図。 スラスト軸受の表面および裏面を示す図。 スラスト軸受周辺の拡大断面図。 他の実施例にかかるスラスト軸受の表面および裏面を示す図。 従来の軸受装置の拡大断面図。
以下図示実施例について説明すると、図1は軸受装置としてのデファレンシャルギア1の部分断面図を示しており、複数のギア等を収容する第1部材としてのハウジング2と、該ハウジング2に形成された貫通孔2aに回転可能に軸支された駆動軸3と、ハウジング2内に設けられて上記駆動軸3に連結された第2部材としてのサイドギア4と、上記ハウジング2とサイドギア4との間に挟持されたスラスト軸受としてのデフワッシャ5とを示し、上記ハウジング2の内部には潤滑油が収容されている。
上記ハウジング2は鋳鉄製となっており、当該ハウジング2における上記デフワッシャ5と接触する部分は、切削加工によりその表面が高粗度(約9.0RzJIS)に形成されている。
一方、上記サイドギア4はクロムモリブデン鋼などの鉄系合金製となっており、当該サイドギア4における上記デフワッシャ5と接触する部分は、研磨加工によりその表面が低粗度(約1.0RzJIS)に形成されている。
そして、上記デファレンシャルギア1では、上記デフワッシャ5は上記ハウジング2とサイドギア4とから最大で約14000Nのスラスト荷重を受ける場合があり、その際に上記サイドギア4が上記駆動軸3によって正方向および逆方向に最大で約1500rpmの回転数で回転する場合がある。
上記デフワッシャ5はリング状の部材となっており、いわゆる回り止めは設けられておらず、後述するようにハウジング2に対しても回転可能に設けられている。
また上記デフワッシャ5はプレス加工等による凸部の形成されていない平板形状を有しており、上記ハウジング2と摺接する第1摺動面5aと、上記サイドギア4と摺接する第2摺動面5bとが形成されている。
そして、これら第1、第2摺動面5a、5bの表面にはそれぞれ切削加工等により凹部が形成され、ここでは当該凹部として複数の溝が交差した格子溝6、7が形成されている。
これら格子溝6、7を構成する溝の端部はそれぞれデフワッシャ5の内周縁および外周縁まで形成されており、各溝に対してデフワッシャ5の内周および外周から潤滑油が供給されるようになっている。
そして本実施例ではまず第1に、第1摺動面5aにおける格子溝6の開口面積を、該第1摺動面5aの面積に対して10〜50%の割合となるように形成している。
例えば、上記デフワッシャ5の外径を55mm、内径を36mmとした場合、第1摺動面5aの格子溝6を構成する溝の幅を0.7mm、溝と溝との間隔を4mmに設定することで、当該格子溝6の開口面積は約434mmとなり、第1摺動面5aの面積との割合は約32%となる。
第2に、第1摺動面5aにおける格子溝6の開口面積から第2摺動面5bにおける格子溝7の開口面積を引いたときの面積差が、上記第1摺動面5aにおける格子溝6の開口面積の10%以上となるように形成している。
例えば、第2摺動面5bの格子溝7の溝の幅を0.7mmとし、溝と溝との間隔を8mmに設定することで、第2摺動面5bにおける格子溝7の開口面積は約230mmとなる。
そして第1摺動面5aにおける格子溝6の開口面積から第2摺動面5bにおける格子溝7の開口面積を引いたときの面積差は204mmとなり、上記第1摺動面5aにおける格子溝6の開口面積の10%である43.4mmを超えている。
上記構成を有するデファレンシャルギア1の動作について説明する。図3は上記デフワッシャ5の周辺を拡大した断面図を示しており、ここでは上記ハウジング2およびサイドギア4の表面粗さを誇張して記載したものとなっている。
まず上記駆動軸3によってサイドギア4が回転すると、サイドギア4とデフワッシャ5の第2摺動面5bとが摺動し、その際ハウジング2内部に収容された潤滑油によってサイドギア4と第2摺動面5bとが潤滑される。
ここで、上記デフワッシャ5に大きなスラスト荷重が作用しても、デフワッシャ5は平板形状を有していることから、デフワッシャ5自体は変形しないようになっている。
また、第1摺動面5aにおける格子溝6の開口面積から第2摺動面5bにおける格子溝7の開口面積を引いたときの面積差を、上記第1摺動面5aにおける格子溝6の開口面積の10%以上とする第2の条件を満たすことを条件に、上記第2摺動面5bに格子溝7を形成しているため、大きなスラスト荷重によって潤滑油の油膜が薄くなっても、サイドギア4とデフワッシャ5との間を潤滑することが可能となっている。
そしてサイドギア4と第2摺動面5bとが摺動すると、これらの間に摩擦力が発生するため、デフワッシャ5にはサイドギア4の回転方向と同方向に回転しようとする回転力が発生する。
一方、デフワッシャ5に回転力が発生することで、デフワッシャ5とハウジング2との間にも摩擦力が発生するが、ハウジング2の表面は高粗度であることから静摩擦係数は高くなっている。
これに対し本実施例のデファレンシャルギア1では、上記第1摺動面5aの表面に上記格子溝6を形成していることから、第1摺動面5aとハウジング2との間に潤滑油を供給することができ、これによりこれらの間の静摩擦力を低くすることができる。
そして上記デフワッシャ5に作用する回転力が、上記ハウジング2と第1摺動面5aとの静摩擦力を超えると、デフワッシャ5が上記ハウジング2に対して回転することとなり、デフワッシャ5が回転した後も、上記格子溝6からの潤滑油によって良好な潤滑を得ることが可能となっている。
このように、本実施例のデファレンシャルギア1によれば、デフワッシャ5の第1摺動面5aに凹部としての格子溝6を形成することで、上記デフワッシャ5をハウジング2に対して回転させることができる。
デフワッシャ5がハウジング2に対して回転すると、相対的に上記サイドギア4とデフワッシャ5との回転数が減少して周速が低下することから、上記デフワッシャ5に大きなスラスト荷重が作用した状態において、サイドギア4とデフワッシャ5との焼付きを防止することができる。
上記本実施例にかかるデファレンシャルギア1に対し、図5に示すような従来のデファレンシャルギア1には、上記デフワッシャ5の第1、第2摺動面5a、5bに凹部が形成されていない。
まず、デフワッシャ5における第1摺動面5aには凹部が形成されていないため、これらの間には十分に潤滑油が供給されず、第1摺動面5aとサイドギア4との間の静止摩擦力は大きくなっている。
このため、サイドギア4の回転によってデフワッシャ5に回転力が発生しても、この回転力が第1摺動面5aとサイドギア4との静止摩擦力を超えず、デフワッシャ5はハウジング2に対して停止した状態を維持してしまう。
その結果、サイドギア4とデフワッシャ5との回転数が本実施例のように低下せず、上記デフワッシャ5に大きなスラスト荷重が作用して潤滑油の油膜が薄くなると、これらの焼付きが発生する恐れがある。
なお上記実施例に対し、第1摺動面5aにおける格子溝6の開口面積から第2摺動面5bにおける格子溝7の開口面積を引いたときの面積差が、上記第1摺動面5aにおける格子溝6の開口面積の10%未満となると、上記サイドギア4と第2摺動面5bとの間の摩擦力が低下し、デフワッシャ5が回転しようとする回転力が低くなってしまう。
その結果、デフワッシャの回転力がデフワッシャ5とハウジング2との摩擦力を超えず、デフワッシャ5がハウジング2に対して回転しなくなることから、結局従来のデファレンシャルギア1と同様、サイドギア4とデフワッシャ5との焼付きが発生してしまうこととなる。
図4(a)〜(d)は、上記デフワッシャ5における第1、第2摺動面5a、5bに形成することが可能な凹部の一例を示したものであり、(a)はデフワッシャ5の中心から放射状に複数の溝8を形成した構成を、(b)は複数のディンプル9を形成した構成を、(c)は格子溝ではなく所定の方向に向けて平行に複数の溝10を形成した構成を、(d)はリング状の溝11を同心円状に複数形成した構成をそれぞれ示している。
これら図4(a)〜(d)に示した凹部は、上述した第1、第2の条件を満たせば、上記格子溝6、7からなる凹部とともに、第1、第2摺動面5a、5bのいずれにも利用することが可能である。
なお上記実施例では、軸受装置としてデファレンシャルギア1を説明したが、例えばオートマチックトランスミッション等の軸受装置にも適用することが可能である。
1 デファレンシャルギア(軸受装置) 2 ハウジング(第1部材)
4 サイドギア(第2部材) 5 デフワッシャ(スラスト軸受)
5a 第1摺動面 5b 第2摺動面
6、7 格子溝(凹部)

Claims (3)

  1. 表面が高粗度に加工された第1部材と、表面が低粗度に加工されて上記第1部材に対して回転する第2部材と、上記第1部材と第2部材との間に挟持したリング状のスラスト軸受とを備えた軸受装置において、
    上記スラスト軸受を平板形状とするとともに、第1部材側の第1摺動面に凹部を形成して、当該第1摺動面における上記凹部の開口面積を、該第1摺動面の面積に対して10〜50%の割合で設定し、かつ、上記スラスト軸受における第2部材側の第2摺動面に凹部を形成し、第1摺動面における凹部の開口面積から第2摺動面における凹部の開口面積を引いたときの面積差が、上記第1摺動面における凹部の開口面積の10%以上となるようにし、
    スラスト軸受が上記第1部材に対しても回転するようにしたことを特徴とする軸受装置。
  2. 上記凹部を複数の溝が交差した格子溝とし、当該格子溝における各溝の端部をスラスト軸受の内周縁および外周縁まで形成したことを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
  3. 上記第1部材としてのハウジングと、回転軸によって回転する第2部材としてのサイドギアと、スラスト軸受としてのデフワッシャとを備えたデファレンシャルギアを構成する請求項1または請求項2に記載の軸受装置。
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