JP5853826B2 - 希土類元素の金属および合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、希土類元素の金属や合金の製造方法に関する。
希土類元素(ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム、サマリウム、イットリウムなど)は、各種のモータに組み込まれるR−Fe−B系永久磁石(R:希土類元素)をはじめとして、様々な製品に使用されていることは周知の通りであり、今後ますますその使用量が増加するものと見込まれている。そのため、近年、希土類元素の金属や合金の製造方法について注目が集まっている。
希土類元素は非常に高活性であるため、自然界では3価や4価の状態で酸化物やハロゲン化物として存在する。従って、希土類元素の金属や合金は、通常、金属熱還元法や溶融塩電解法によって希土類元素の酸化物やハロゲン化物を還元することで製造されている。
金属熱還元法は、希土類元素よりも高活性な金属(金属カルシウムなど)と希土類元素の酸化物やハロゲン化物を混合して加熱し、酸化還元反応によって希土類元素の金属を得る方法である。希土類元素の酸化物やハロゲン化物に加えて鉄などをさらに混合すれば、希土類元素と鉄の合金などを得ることもできる。しかしながら、金属熱還元法は、副産物として生成する酸化カルシウムやハロゲン化カルシウムの除去方法について技術的課題を有している。
一方、溶融塩電解法は、希土類元素のハロゲン化物を高温で溶融し、浴中に希土類元素の酸化物を添加して電気化学反応によって希土類元素の金属を得る方法である。希土類元素のハロゲン化物としては、塩化物やフッ化物などが挙げられるが、吸湿性が少なくて安定なフッ化物を用いるのが一般的である。しかしながら、希土類元素のフッ化物の融点は非常に高いので(例えばフッ化ネオジムの融点は1373℃である)、通常、希土類元素のフッ化物にフッ化リチウムやフッ化バリウムなどを添加し、800〜1100℃で溶融して電解処理を行う。また、電解処理を工業的に行う場合、浴における電圧降下や過電圧などが起こり得ることを考慮して9.0〜12.0Vの電圧を印加するのが一般的である。電極は、陽極としては炭素製のものが、陰極としてはタングステンやモリブデンなどの希土類元素と合金化しない金属製のものや、鉄やニッケルなどの希土類元素と合金化する鉄族元素製のものが用いられる(陰極として鉄族元素製のものを用いると陰極に希土類元素と鉄族元素の合金が還元析出する)。こうした電解処理条件はエネルギーコストがかかるものであるため、より低い温度で、かつ、より低い印加電圧で電解処理を行うことができる方法が望まれている。また、電解処理中は、希土類元素の酸化物由来の酸素と陽極由来の炭素が反応して陽極から二酸化炭素ガスが発生するが(C+2O2−→CO+4e)、希土類元素の酸化物が消費されると、浴中のフッ素と炭素が反応して陽極から有毒なフッ化炭素ガスが発生する(mC+nF→C+ne)。非特許文献1によれば、希土類元素のフッ化物の理論分解電圧は4.6〜5.0Vであるので、より低い印加電圧で電解処理を行うことができれば、フッ化炭素ガスの発生の抑制も期待できる。このような事情に鑑み、特許文献1では、希土類元素の酸化物のかわりに炭酸塩を浴中に添加して電解処理を行う方法が提案されている。この方法によれば、一般的な電解処理条件よりも低い温度、かつ、低い印加電圧、即ち、浴の温度が750〜950℃で、4.0〜6.5Vの電圧を印加して処理を行うことが可能であり、また、陽極からのフッ化炭素ガスの発生量が少ないという利点がある。しかしながら、希土類元素の炭酸塩は500℃以上になると酸化物に変化する性質を有するため、その実行性は十分なものとは言えない。
特許第3927238号公報
高橋正雄、増子昇著「工業電解の化学」アグネ社、1979年
そこで本発明は、一般的な電解処理条件よりも低い温度、かつ、低い印加電圧で、効率よく電解処理を行うことができる、溶融塩電解法による希土類元素の金属や合金を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記の点に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、希土類元素のフッ化物とフッ化リチウムとフッ化バリウムからなる溶融塩に希土類元素の酸化物を添加して電解処理を行う際、酸化ホウ素を共存させておくと、一般的な電解処理条件よりも低い温度、かつ、低い印加電圧で、希土類元素の金属や合金を還元析出させることができることを見出した。また、この効果は、希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を個別の形態で共存させた場合のみならず、酸化処理を行ったR−Fe−B系永久磁石のような、少なくとも希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を含む複合酸化物の形態で共存させた場合でも得られることを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明の溶融塩電解法による希土類元素の金属の製造方法は、請求項1記載の通り、希土類元素のフッ化物とフッ化リチウムとフッ化バリウムからなる溶融塩に希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を添加し、750〜950℃に加熱して2.5〜4.5Vの電圧を印加することで、希土類元素の金属を、陰極として希土類元素と合金化しない金属製のものを用いて陰極に還元析出させることを特徴とする。
また、請求項2記載の製造方法は、請求項1記載の製造方法において、希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を個別の形態で添加することを特徴とする。
また、請求項3記載の製造方法は、請求項1記載の製造方法において、希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を少なくとも両者を含む複合酸化物の形態で添加することを特徴とする。
また、請求項4記載の製造方法は、請求項3記載の製造方法において、少なくとも希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を含む複合酸化物が、R−Fe−B系永久磁石から調製されたものであることを特徴とする。
また、請求項5記載の製造方法は、請求項4記載の製造方法において、少なくとも希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を含む複合酸化物が、R−Fe−B系永久磁石に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離することによって調製されたものであることを特徴とする。
また、本発明の溶融塩電解法による希土類元素の金属および/または合金の製造方法は、請求項6記載の通り、希土類元素のフッ化物とフッ化リチウムとフッ化バリウムからなる溶融塩に、少なくとも希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を含む複合酸化物として、R−Fe−B系永久磁石に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離することによって調製されたものを添加し、750〜950℃に加熱して2.5〜4.5Vの電圧を印加することで、希土類元素の金属および/または合金を還元析出させることを特徴とする。
また、請求項7記載の製造方法は、請求項記載の製造方法において、陰極として鉄族元素製のものを用いて希土類元素と鉄族元素の合金を陰極に還元析出させることを特徴とする。
また、請求項8記載の製造方法は、請求項1乃至7のいずれかに記載の製造方法において、希土類元素のフッ化物がフッ化ネオジムであることを特徴とする。
本発明によれば、一般的な電解処理条件よりも低い温度、かつ、低い印加電圧で、効率よく電解処理を行うことができる、溶融塩電解法による希土類元素の金属や合金を製造する方法を提供することができる。
実施例1の実験Aにおける電流電圧曲線である。 得られた球状物の外観である。 実施例1の実験Bにおける電流電圧曲線である。 得られた球状物の外観である。 実施例5における電流電圧曲線である。
本発明の溶融塩電解法による希土類元素の金属および/または合金の製造方法は、希土類元素のフッ化物とフッ化リチウムとフッ化バリウムからなる溶融塩に希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を添加し、750〜950℃に加熱して2.5〜4.5Vの電圧を印加することで、希土類元素の金属および/または合金を還元析出させることを特徴とするものである。溶融塩への希土類元素の酸化物と酸化ホウ素の添加は、両者を個別の形態で行ってもよいし、少なくとも両者を含む複合酸化物の形態で行ってもよい。
本発明の溶融塩電解法による希土類元素の金属および/または合金の製造方法における溶融塩は、希土類元素のフッ化物とフッ化リチウムとフッ化バリウムから構成される。希土類元素のフッ化物としてはフッ化ネオジムを例示することができるがこれに限定されるわけではない。また、溶融塩にはアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩などが不純物として含まれていてもよい(不純物の含有量は3.0wt%以下が望ましい)。溶融塩を構成する希土類元素のフッ化物とフッ化リチウムとフッ化バリウムの組成比は、希土類元素のフッ化物50〜70wt%、フッ化リチウム20〜40wt%、フッ化バリウム10〜30wt%が望ましい。この組成比を外れると溶融塩の融点が高くなり、溶融塩を溶融するためのエネルギーコストの上昇や高温による装置の早期劣化などを引き起こす恐れがある。
本発明の溶融塩電解法による希土類元素の金属および/または合金の製造方法における溶融塩に希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を個別の形態で添加して電解処理を行う場合、希土類元素の酸化物の添加量は、溶融塩の重量に対して0.1〜5.0wt%が望ましい。添加量が少なすぎると希土類元素の酸化物がすぐに消費されてフッ化炭素ガスが発生しやすくなる恐れがある一方、添加量が多すぎると希土類元素の酸化物が溶融塩に溶解しきれないことで、還元析出させた希土類元素の金属や合金に含まれる酸素量が増加する恐れがある。酸化ホウ素の添加量は、溶融塩の重量に対して0.05〜0.3wt%が望ましい。添加量が少なすぎると添加することの効果、即ち、一般的な電解処理条件よりも低い温度、かつ、低い印加電圧にて高い電流密度で効率的に処理を行うことができない恐れがある一方、添加量が多すぎると電流が飽和してしまい添加が無駄になる恐れがある。なお、希土類元素の酸化物は、還元析出させたい希土類元素の金属や合金の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば金属ネオジムやネオジム合金を還元析出させたい場合には酸化ネオジムを選択すればよい。また、希土類元素の酸化物は、単一のものを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
本発明の溶融塩電解法による希土類元素の金属および/または合金の製造方法における溶融塩に希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を少なくとも両者を含む複合酸化物の形態で添加して電解処理を行う場合、複合酸化物は、溶融塩の重量に対して希土類元素の酸化物として0.1〜5.0wt%、酸化ホウ素として0.05〜0.5wt%を溶融塩に添加したことに相当するように添加することが望ましい。その理由は前述の通りである。少なくとも希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を含む複合酸化物は、少なくとも希土類元素とホウ素を含む合金、例えばR−Fe−B系永久磁石から調製することができる。その一例としては、磁石に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離することによって調製されたものが挙げられる。磁石に対する酸化処理は、酸素含有雰囲気中で磁石を熱処理したり燃焼処理したりすることによって行うことが簡便である。酸素含有雰囲気は大気雰囲気であってよい。磁石を熱処理する場合、例えば350〜1000℃で1〜5時間行えばよい。磁石を燃焼処理する場合、例えば自然発火や人為的点火により行えばよい。こうした酸化処理を行うと、磁石に含まれる酸素モル濃度は希土類元素のモル濃度の1.5倍以上となり、希土類元素の酸化物への変換をより確実なものにすることができる。磁石に対する酸化処理は、炭素の非存在下で行うことが望ましい。炭素の存在下で磁石に対する酸化処理を行うと、磁石に含まれる希土類元素が炭素と望まざる化学反応を起こして所望する酸化物への変換が阻害される恐れがあるからである(従ってここでは「炭素の非存在下」は磁石に含まれる希土類元素の酸化物への変換が阻害されるに足る化学反応の起因となる炭素が存在しないことを意味する)。酸化処理を行った磁石を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離することができる。これは、希土類元素の酸化物は高温で酸化物のままで溶融するのに対し、鉄族元素は炭素を固溶して合金化して溶融し、また、鉄族元素の酸化物は炭素によって還元された後に炭素を固溶して合金化して溶融し、結果として、希土類元素の酸化物の溶融物と鉄族元素と炭素の合金の溶融物が相溶することなく互いに独立して存在するという現象に基づくものである。酸化処理を行った磁石に対する炭素の供給源は、グラファイト(黒鉛や石墨)、木炭、コークス、ダイヤモンドなど、どのような構造や形状のものであってもよいが、炭素るつぼを用いて熱処理を行えば、炭素るつぼは処理容器としての役割とともにその表面からの炭素供給源としての役割も果たすので都合がよい(もちろん別個の炭素供給源をさらに添加することを妨げるものではない)。なお、少なくとも希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を含む複合酸化物には、酸化されていない希土類元素の他、希土類元素以外の金属やその酸化物などが含まれていることを妨げない。
本発明の溶融塩電解法による希土類元素の金属および/または合金の製造方法において、電解処理を行う浴の温度を750〜950℃と規定するのは、浴の温度が750℃未満であると溶融塩が固化してしまって電解処理が行えなくなる恐れがある一方、浴の温度が950℃を超えると容器成分や電極成分が溶出して浴を汚染したりする恐れがあるからである。印加電圧を2.5〜4.5Vと規定するのは、印加電圧が2.5V未満であると電流密度が低下して処理効率が低下する恐れがある一方、印加電圧が4.5Vを超えると陽極効果が発生して電解処理が行えなくなる恐れがあるからである。電解処理時間は処理の規模などに応じて適宜設定すればよいが、昇温に必要なエネルギーコストを考慮すれば、希土類元素の酸化物と酸化ホウ素の添加を継続的に行うことで長期に亘って連続処理することが望ましい。電極は、陽極としては炭素製のものを用いればよい。陰極としてはタングステンやモリブデンなどの希土類元素と合金化しない金属製のものや、鉄やニッケルなどの希土類元素と合金化する鉄族元素製のものを用いればよい。陰極として希土類元素と合金化しない金属製のものを用いると陰極に希土類元素の金属が還元析出する。一方、陰極として鉄族元素製のものを用いると陰極に希土類元素と鉄族元素の合金が還元析出する。陰極に還元析出した希土類元素の金属や合金は自体公知の方法で回収することができる。
以上、本発明によれば、バージン原料としての希土類元素の酸化物と酸化ホウ素からや、リサイクル原料としての例えばR−Fe−B系永久磁石から調製される少なくとも希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を含む複合酸化物から、溶融塩電解法によって希土類元素の金属や合金を製造することができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実施例1:
実験A:酸化ホウ素を添加せずに希土類元素の酸化物のみ添加して溶融塩電解を行う態様(従来例)
フッ化ネオジム303g、フッ化リチウム120g、フッ化バリウム58gを用いて溶融塩を構成した(フッ化ネオジム63wt%、フッ化リチウム25wt%、フッ化バリウム12wt%)。これらの成分を酸化ネオジム15g(溶融塩の重量に対して3.1wt%)とともに直径110mmφ×高さ150mm×肉厚10mmの炭素製るつぼに入れ、縦型のポット炉を用いてアルゴンガス流気中(流速:2L/min)で950℃に加熱して溶融した。陽極として炭素棒、陰極として鉄棒を用い(いずれも形状は直径8mmφ×長さ100mm)、電極間の距離を50mm、るつぼの底面から電極の下端までの距離を10mmとした。この時、浴中の電極の表面積は約4cmであった。浴の温度を850、900、950℃に設定し、電極間の電圧を0Vから8.0Vまで走査して流れる電流の変化を記録した。結果を図1に示す。図1から明らかなように、浴の温度がいずれの場合においても2.0〜4.0Vあたりで小さな電流が流れた後、5.0Vあたりから大きな電流が流れ始めた。また、こうした電流変化の程度は浴の温度が低下すると減少する傾向を示した。陽極における二酸化炭素ガスの発生に起因すると考えられる電流値の乱れは6.5V以上で顕著であった。大きな電流が流れた6.5Vの印加電圧で、浴の温度を900℃に加熱して1時間処理を行ったところ、陰極の下端からるつぼの底面に球状物が落下した。浴中から取り出した球状物(重量:未測定)の外観を図2に示す。また、この球状物の組成分析の結果を表1に示す(島津製作所社製のICPV−1017を用いたICP分析による。ただしフッ素のみ同社製のEPMA−1610を用いたEPMA分析による)。表1から明らかなように、この球状物は約85wt%のネオジムと約15wt%の鉄を主成分とする合金であった。なお、小さな電流しか流れなかった4.0Vの印加電圧で、浴の温度を900℃に加熱して1時間処理を行った場合、6.5Vの印加電圧で処理を行った場合に得られた球状物は得られず、陰極の表面には付着物が付着しただけであった。なお、ポット炉から排出された排気ガスを0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に導き、排気ガス中に含まれるフッ素含有ガスを溶解して吸光光度法で分析した結果、350mg/mNのフッ素(元素として)が検出された。
実験B:希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を添加して溶融塩電解を行う態様(本発明)
酸化ホウ素1.25g(溶融塩の重量に対して0.3wt%)をさらに添加すること以外は実験Aと同様にして実験を行った。浴の温度を850、900、950℃に設定し、電極間の電圧を0Vから8.0Vまで走査して流れる電流の変化を記録した結果を図3に示す。図3から明らかなように、酸化ホウ素を添加した場合、実験Aの添加しない場合と電流変化の挙動が大きく異なり、2.5Vあたりから電流が流れ始め、4.7〜5.0Vあたりまで流れる電流が増加した後、急激に電流値が低下した。こうした電流変化の程度は浴の温度に依存せずほぼ同じであった。4.7〜5.0Vあたりで急激に電流値が低下したのは、陽極における二酸化炭素ガスの発生に起因する電極間の絶縁(陽極効果)によるものと考えられた。4.0Vの印加電圧で、浴の温度を900℃に加熱して1時間処理を行ったところ、陰極の下端からるつぼの底面に球状物が落下した。浴中から取り出した球状物(重量:2.2g)の外観を図4に示す。また、この球状物の組成分析の結果を表2に示す(分析方法は実験Aと同じ)。表2から明らかなように、この球状物は約83wt%のネオジムと約16wt%の鉄を主成分とする合金であり、実験Aで得られた合金とほぼ同様の組成を有していた。以上の結果から、酸化ホウ素を添加して電解処理を行うことで、従来よりも低い印加電圧でも高い電流密度で効率的にネオジムと鉄を主成分とする合金を得ることができることがわかった。また、実験Aと同様にしてポット炉から排出された排気ガス中に含まれるフッ素含有ガスを吸光光度法で分析した結果、フッ素の検出量は190mg/mNであり(元素として)、酸化ホウ素を添加することによって一般的な電解処理条件よりも低い印加電圧で処理を行えたことで、電解処理時のフッ素含有ガスの発生が抑制されたことがわかった。
実施例2:
3.0Vの印加電圧で、浴の温度を900℃に加熱して1時間処理を行うこと以外は実施例1の実験Bと同様にして実験を行った。その結果、実施例1の実験Bで得られたネオジムと鉄を主成分とする球状物とほぼ同様の組成を有する球状物が得られた。
実施例3:
酸化ホウ素の添加量を0.51g(溶融塩の重量に対して0.1wt%)とすること以外は実施例1の実験Bと同様にして実験を行った。その結果、実施例1の実験Bで得られたネオジムと鉄を主成分とする球状物とほぼ同様の組成を有する球状物が得られた。
実施例4:
陰極として直径8mmφ×長さ100mmのタングステン棒を用いること以外は実施例1の実験Bと同様にして実験を行った。その結果、不純物の含量が少ない金属ネオジムからなる電析物がタングステン棒の表面に付着し、剥離することで回収できた。
実施例5:
R−Fe−B系永久磁石の製造工程中に発生した約10μmの粒径を有する加工屑(自然発火防止のため水中で7日間保管したもの)に対し、吸引ろ過することで脱水してから大気雰囲気中で火をつけて燃焼処理を行うことで酸化処理を行った。次に、酸化処理を行った磁石加工屑2.00gを炭素るつぼに収容した後、工業用アルゴンガス雰囲気中で1450℃で1時間熱処理した。その後、炭素るつぼを室温まで炉冷したところ、炭素るつぼに塊状物が固着して存在した。この塊状物の組成分析の結果を表3に示す(島津製作所社製のICPV−1017を用いたICP分析による。ただし酸素のみ堀場製作所社製のEMGA−550Wを用いたガス分析による)。表3から明らかなように、この塊状物は希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を主成分とする複合酸化物であった。この塊状物15gを酸化ネオジムのかわりに添加すること以外は実施例1の実験Aと同様にして実験を行った(希土類元素の酸化物として13.7g(溶融塩の重量に対して2.8wt%)、酸化ホウ素として1.1g(溶融塩の重量に対して0.2wt%)を溶融塩に添加したことに相当)。浴の温度を850、900、950℃に設定し、電極間の電圧を0Vから8.0Vまで走査して流れる電流の変化を記録した結果を図5に示す。図5から明らかなように、溶融塩に希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を少なくとも両者を含む複合酸化物の形態で添加した場合も、酸化ネオジムと酸化ホウ素を個別の形態で添加した場合と同様に、2.5Vあたりから電流が流れ始め、4.5Vあたりまで流れる電流が増加した後、急激に電流値が低下した。こうした電流変化の程度は浴の温度に依存せずほぼ同じであった。4.0Vの印加電圧で、浴の温度を900℃に加熱して1時間処理を行ったところ、陰極の下端からるつぼの底面に球状物が落下した。浴中から取り出した球状物(重量:3.3g)の組成分析の結果を表4に示す(島津製作所社製のICPV−1017を用いたICP分析による)。表4から明らかなように、この球状物はネオジムを主成分とし、その他の希土類元素としてプラセオジムとジスプロシウムの他、鉄を含む合金であった。
実施例6:
浴の温度を800℃に加熱して1時間処理を行うこと以外は実施例5と同様にして実験を行った。その結果、実施例5で得られた球状物の組成に似通った組成を有する球状物が得られた(表5)。
実施例7:
陰極として直径8mmφ×長さ100mmのタングステン棒を用いること以外は実施例5と同様にして実験を行った。その結果、ネオジムを主成分とし、その他の希土類元素としてプラセオジムとジスプロシウムを含む電析物がタングステン棒の表面に付着し、剥離することで回収できた。
本発明は、一般的な電解処理条件よりも低い温度、かつ、低い印加電圧で、効率よく電解処理を行うことができる、溶融塩電解法による希土類元素の金属や合金を製造する方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (8)

  1. 溶融塩電解法による希土類元素の金属の製造方法であって、希土類元素のフッ化物とフッ化リチウムとフッ化バリウムからなる溶融塩に希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を添加し、750〜950℃に加熱して2.5〜4.5Vの電圧を印加することで、希土類元素の金属を、陰極として希土類元素と合金化しない金属製のものを用いて陰極に還元析出させることを特徴とする製造方法。
  2. 希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を個別の形態で添加することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を少なくとも両者を含む複合酸化物の形態で添加することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  4. 少なくとも希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を含む複合酸化物が、R−Fe−B系永久磁石から調製されたものであることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
  5. 少なくとも希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を含む複合酸化物が、R−Fe−B系永久磁石に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離することによって調製されたものであることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
  6. 溶融塩電解法による希土類元素の金属および/または合金の製造方法であって、希土類元素のフッ化物とフッ化リチウムとフッ化バリウムからなる溶融塩に、少なくとも希土類元素の酸化物と酸化ホウ素を含む複合酸化物として、R−Fe−B系永久磁石に対して酸化処理を行った後、処理環境を炭素の存在下に移し、1150℃以上の温度で熱処理することで、希土類元素を酸化物として鉄族元素から分離することによって調製されたものを添加し、750〜950℃に加熱して2.5〜4.5Vの電圧を印加することで、希土類元素の金属および/または合金を還元析出させることを特徴とする製造方法。
  7. 陰極として鉄族元素製のものを用いて希土類元素と鉄族元素の合金を陰極に還元析出させることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  8. 希土類元素のフッ化物がフッ化ネオジムであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の製造方法。
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