以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明の便宜上、本発明の実施形態にかかる自動二輪車を、「本自動二輪車1」と称することがある。また、本自動二輪車1および本自動二輪車1を構成する各部材や装置の「前」「後」「上」「下」「右」「左」の各向きは、本自動二輪車1に搭乗する運転者の向きを基準とする。さらに、本自動二輪車1の「中心側」と「外側」は、それぞれ本自動二輪車1の左右方向(=車幅方向)の中心側と外側をいうものとする。各図においては、「前」を矢印Frで示し、「後」を矢印Rrで示し、「上」を矢印Tpで示し、「下」を矢印Btで示し、「右」を矢印Rで示し、「左」を矢印Lで示し、「中心側」を矢印Cenで示し、「外側」を矢印Outで示す。
まず、図1を参照して、本自動二輪車1の全体構成について説明する。図1は、本自動二輪車1の構成を模式的に示す側面図である。図1に示すように、本自動二輪車1は、操舵装置11と、車体フレーム12と、エンジンユニット13と、後輪懸架装置14と、排気装置(図略)と、燃料タンク81と、着座シート82とを有する。そして、後輪懸架装置14は、動力伝達部材であるドライブチェーン31を収容するチェーンケース5を有する。
車体フレーム12は、ヘッドパイプと、メインチューブと、ボディチューブと、ダウンチューブとを含む。なお、図1においては、ヘッドパイプとメインチューブとボディチューブとは隠れて見えない。ヘッドパイプは、車体フレーム12の前に設けられる部分であり、後傾する管状の部分を有する。メインチューブは、ヘッドパイプの後部から、後方斜め下方に向かって伸びる部分である。ボディチューブは、メインチューブの後方に設けられる部分であり、着座シート82を支持する機能を有する。ダウンチューブは、ヘッドパイプの後部から左右一対のメインチューブの下方に向かって伸びる部分と、この部分の下端から後方に伸びてボディフレームに結合する部分とを有する。
操舵装置11は、ステアリングシャフト(図1においては隠れて見えない)と、ハンドル111と、左右一対のフロントフォーク112と、前輪113とを含み、車体フレーム12の前部に、車体フレーム12に対して回転可能(または揺動可能)に配置される。ステアリングシャフトは、ヘッドパイプに回転可能に支持される。ハンドル111は、ステアリングシャフトの上端に設けられる。左右一対のフロントフォーク112は、それぞれ、ステアリングシャフトの左右に配置される。前輪113は、左右一対のフロントフォーク112の下端に、回転自在に配置される。
ハンドル111は、左右のハンドルグリップを有する。右側のハンドルグリップには、スロットルグリップと、前輪113のブレーキレバーとが設けられる。左側のハンドルグリップには、クラッチを操作するためのクラッチレバーが設けられる。ハンドル111には、これらのほかに、灯火類やクラクションを操作するためのスイッチ類が設けられる。
エンジンユニット13は、シリンダアセンブリ131と、クランクケースアセンブリ132と、クラッチとを含み、車体フレーム12のメインチューブとダウンチューブとボディフレームとにより囲まれる領域に配置される。シリンダアセンブリ131は、シリンダブロックと、シリンダヘッドと、シリンダヘッドカバーとを含む。シリンダブロックの内部には、燃焼室が形成されるとともに、ピストンが往復動可能に配設される。シリンダヘッドは、シリンダブロックの上側に設けられる。シリンダヘッドには、燃焼室とシリンダブロックの外部とを連通するインテークポートおよびエグゾーストポートが形成される。さらに、シリンダヘッドの内部には、インテークポートの開閉を制御する吸気バルブと、エグゾーストポートの開閉を制御する排気バルブとが配置される。吸気バルブは吸気側カムにより駆動され、排気バルブは排気側カムにより駆動される。シリンダヘッドカバーは、シリンダヘッドの蓋となる部材であり、シリンダヘッドの上側に配設される。クランクケースアセンブリ132の内部には、前側にクランク室が形成され、後側にミッション室が形成される。クランク室の内部には、クランクシャフトが回転可能に配設される。ミッション室の内部には、カウンターシャフトとドリブンシャフトとが回転可能に配設されるとともに、変速機が設けられる。クランクケースの左側外部には、ドリブンシャフトの端部が突出している。そして、ドリブンシャフトの端部には、ドライブチェーンスプロケット32が設けられる。ドライブチェーンスプロケット32は、スプロケットカバー86により覆われる。このほか、クランクケースの右側には、クラッチが配設される。さらに、クランクケースの左側であって、ドライブチェーンスプロケット32の前方には、発電機であるマグネトと、エンジンを始動させる始動装置が設けられる。
排気装置は、消音器と排気管とを含む。消音器は、エンジンユニット13の右側後方であって、後輪143の側方に配置される。排気管の一方の端部は、エンジンユニット13のシリンダアセンブリ131のエグゾーストポートに接続される。他方の端部は、消音器の前側に接続される。そして、排気管は、エンジンユニット13のシリンダアセンブリ131の前側から前方に向かい、シリンダアセンブリ131の前方で後方に向かって湾曲し、シリンダアセンブリ131の側方を通過し、消音器の前側に到達する。
エンジンユニット13の上方には、燃料タンク81が配置される。燃料タンク81の後方には、運転者や同乗者が着座する着座シート82が設けられる。着座シート82は、車体フレーム12のボディチューブの上側に、シートレールを介して取り付けられる。このほか、本自動二輪車1の外部には、フロントカバー83、サイドカバー84およびリアサイドカバー85が取り付けられる。
なお、前記の操舵装置11、車体フレーム12、エンジンユニット13、排気装置の構成は一例であり、本発明は前記構成に限定されるものではない。
後輪懸架装置14は、スイングアーム141と、リアクッションユニット142と、駆動輪としての後輪143とを含む。そして、後輪懸架装置14は、ボディフレームの後部に設けられる。スイングアーム141には、ドリブンチェーンスプロケット145およびドライブチェーン31を収容して保護するチェーンケース5が取り付けられる。ここで、後輪懸架装置14の構成について、図2と図3を参照して説明する。図2は、後輪懸架装置14の要部の構成を模式的に示した側面図である。図3は、後輪懸架装置14の要部の構成を模式的に示した側面図であり、チェーンケース5が取り外された状態を示した図である。
スイングアーム141は、駆動輪としての後輪143を支持する部材である。スイングアーム141の前端部は、ボディフレームに上下方向に回転可能(または揺動可能)に結合される。スイングアーム141の後端部には、エンドブラケット15が設けられる。エンドブラケット15は、略平板状に形成されるブラケットであり、溶接などによってスイングアーム141の後端部に一体に接合される。後輪143は、エンドブラケット15に回転可能に支持される。後輪143の左側には、後輪143と一体に回転するドリブンチェーンスプロケット145が設けられる。そして、エンジンユニット13のドライブチェーンスプロケット32と、後輪143のドリブンチェーンスプロケット145に跨って、動力伝達部材としてのドライブチェーン31が巻き掛けられる。そして、ドライブチェーン31が巡回運動することによって、エンジンユニット13のドライブチェーンスプロケット32の回転動力が、後輪143のドリブンチェーンスプロケット145に伝達される。リアクッションユニット142は、後輪143からボディフレームに伝達する振動や衝撃を緩和や吸収する機能を有する。リアクッションユニット142の上端部はボディフレームに回転可能(または揺動可能)に結合され、下端部はエンドブラケット15に回転可能(または揺動可能)に結合される。
スイングアーム141には、チェーンケース5が取り付けられる。チェーンケース5は、ドライブチェーン31およびドリブンチェーンスプロケット145を収容して保護する機能を有する。チェーンケース5は、上ケース51と下ケース52とにより構成され、上下方向に分割可能な半割構造を有する。上ケース51は、スイングアーム141に設けられる上側ブラケット146およびエンドブラケット15に、ネジ502,501などによって着脱可能に取付けられる。下ケース52は、スイングアーム141に設けられる下側ブラケット147に、ネジ501などによって着脱可能に取付けられる。図3に示すように、上側ブラケット146は、スイングアーム141から上側に向かって突起するブラケットである。下側ブラケット147は、スイングアーム141から下側に向かって突起するブラケットである。上側ブラケット146と下側ブラケット147には、上ケース51と下ケース52のそれぞれをネジにより締結するためのネジ孔が形成される。なお、上側ブラケット146および下側ブラケット147の寸法および形状や、設けられる位置は特に限定されない。
次いで、チェーンケース5の構成と、チェーンケース5をエンドブラケット15に固定するための固定具6の構成について、図4〜図8を参照して説明する。図4は、チェーンケース5の構成を模式的に示した分解斜視図であり、チェーンケース5が上ケース51と下ケース52に分割された状態を示す。図5(a)は、固定具6の構成を模式的に示した外観斜視図である。図5(b)は、固定具6を後側から見た平面図である。図5(c)は、固定具6を中心側から見た平面図である。図6(a)は、上ケース51を上側から見た平面図である。図6(b)は、上ケース51を外側から見た側面図である。図6(c)は、上ケース51を後側から見た平面図である。図7(a)は、上ケース51の後部を外側から見た平面図である。図7(b)は、上ケース51の後部を中心側から見た断面図であり、図6(a)のVII‐VII線断面図である。図8は、上ケース51の断面構造を示した断面図であり、図6(b)のVIII‐VIII線断面図である。
図4に示すように、チェーンケース5は、上ケース51と下ケース52とからなり、上下方向に二分割される半割構造を有する。上ケース51と下ケース52は、いずれも内部に空洞が形成される殻状の部材である。上ケース51は下側と前側が開放している。下ケース52は上側と前側とが開放している。上ケース51と下ケース52には、それぞれ、外側に外側壁部511,521が形成され、中心側に中心側壁部512,522が形成される。外側壁部511,521と中心側壁部512,522とは左右方向に所定の間隔をおいて離間しており、それらの間にドライブチェーン31およびドリブンチェーンスプロケット145を収容することができる。そして、上ケース51の外側壁部511の後部には、スイングアーム141のエンドブラケット15に取り付けられる取付部513が形成される。上ケース51の外側壁部511の前部には、上側ブラケット146に固定するためのネジ501を挿通する貫通孔が形成される。下ケース52の外側壁部521の前部と後部のそれぞれの所定の位置には、下側ブラケット147に固定するためのネジを挿通する貫通孔が形成される。なお、上ケース51および下ケース52は、たとえば樹脂材料からなり、射出成形によって形成される。
固定具6は、上ケース51の取付部513をスイングアーム141のエンドブラケット15に着脱可能に取り付けるために用いられる。固定具6には、たとえば、公知の各種スピードナットが適用できる。ここで、固定具6の構成の例を、図5(a)〜(c)を参照して説明する。固定具6は、ナット部61と係止部62とを有する。ナット部61は、ネジ502を締結可能な左右方向に貫通するネジ孔63が形成される部分であり、たとえば、ブロック状や所定の厚さを有する板状に形成される部分である。係止部62は、上ケース51の取付部513に係止する部分である。係止部62は、前側および後側から見て略「U」字形状や略「J」字形状に形成される。係止部62は弾性変形可能である。そして、固定具6が上ケース51に装着されると、係止部62が弾性変形して所定の付勢力をもって取付部513を挟む。このため、固定具6は、上ケース51に装着された状態に維持される。なお、ナット部61は、係止部62の中心側に設けられる。
上ケース51の取付部513の構成について、図6〜図8を参照して説明する。取付部513は、スイングアーム141に設けられるエンドブラケット15の中心側の面に着脱可能に固定される部分である。取付部513は、上ケース51の外側壁部511の後部(たとえば後端部近傍)であって、下辺に沿うように(=下辺の直上に)形成される。図6〜図8においては、取付部513が、外側に向かって張り出す段差面状に形成される構成を示す。ただし、取付部513は、外側壁部511の他の部分から張り出していない構成(=他の部分と連続な平面に形成される構成。換言すると、他の部分と面一な構成)であってもよい。そして、取付部513には、固定具6が装着される固定具装着部516が形成される。固定具装着部516は、固定具6の係止部62が装着される段差面514と、固定のためのネジ502が挿通される貫通孔515とからなる。段差面514は、中心側に向かって窪む部分である。段差面514の寸法および形状は、固定具6の係止部62の寸法および形状に応じて設定される。そして、段差面514の下辺は、取付部513の下辺(=上ケース51の下辺)と一致している。このため、固定具6の係止部62を、下側からスライドさせるようにして固定具装着部516に係止させることができる。そして、固定具6の係止部62は、段差面514に嵌まり込むことによって、上ケース51の取付部513に対して位置決めされる。固定具6が上ケース51に装着されると、固定具装着部516に形成される貫通孔515と、固定具6のナット部61のネジ孔63とが、左右方向に連なる。
次に、チェーンケース5のスイングアーム141への取付け構造について、図9〜図13を参照して説明する。図9は、チェーンケース5およびその近傍を斜め後側から見た斜視図である。図10(a)は、取付部513およびスイングアーム141のエンドブラケット15の側面図である。図10(b)は、取付部513およびスイングアーム141のエンドブラケット15を斜め後側から見た斜視図である。なお、図10においては、リアクッションユニット142を省略してある。図11は、図2のXI‐XI線断面図であり、上ケース51と下ケース52のエンドブラケット15への取付け構造を示した図である。図12は、図2のXII‐XII線断面図であり、上ケース51と下ケース52の上側ブラケット146と下側ブラケット147への取付け構造を示した図である。図13は、ドライブチェーンスプロケット32とドライブチェーン31とチェーンケース5とを中心側から見た断面図であり、図6のVII−VII線断面図に対応する図である。
図9〜図13に示すように、上ケース51は、ドライブチェーン31およびドリブンチェーンスプロケット145の上半分に被せられる。このため、ドライブチェーン31およびドリブンチェーンスプロケット145の上半分は、上ケース51の外側壁部511と中心側壁部512との間に収容される。一方、下ケース52は、ドライブチェーン31およびドリブンチェーンスプロケット145の下半分に被せられる。このため、ドライブチェーン31およびドリブンチェーンスプロケット145の下半分は、下ケース52の外側壁部521と中心側壁部522との間に収容される。したがって、ドライブチェーン31およびドリブンチェーンスプロケット145のほぼ全体が、上ケース51と下ケース52とからなるチェーンケース5に収容されて保護される。
上ケース51の取付部513は、スイングアーム141のエンドブラケット15の中心側の面に、ネジ502などによって着脱可能に固定される。ここで、エンドブラケット15の構成について説明する。エンドブラケット15には、後輪143の車軸が挿通される軸孔152と、リアクッションユニット142の下端部が回転可能に結合されるボス151と、上ケース51の取付部513を着脱可能に固定するためのネジ502を通すための貫通孔153とが形成される。なお、ボス151は、外側に向かって突起する棒状の構造物である。軸孔152とボス151と貫通孔153との位置関係は、次のとおりである。軸孔152は、エンドブラケット15の下部であって、スイングアーム141の中心線上に形成される。ボス151は、エンドブラケット15の上部であって、軸孔152の上方(たとえば、軸孔152の真上)に形成される。貫通孔153は、エンドブラケット15の上部であって、軸孔152の上方で且つボス151の後方に形成される。
取付部513のエンドブラケット15への取付け構造の詳細は、次のとおりである。固定具6が装着された上ケース51が、ドライブチェーン31およびドリブンチェーンスプロケット145の上半分に被せされる。そして、特に図11に示すように、上ケース51の取付部513が、スイングアーム141に設けられるエンドブラケット15と、ドリブンチェーンスプロケット145の間に配設される。すなわち、上ケース51の取付部513は、スイングアーム141に設けられるエンドブラケット15の中心側に配設される。そして、その状態で、エンドブラケット15の外側から、エンドブラケット15に形成される貫通孔153を通じて、固定具6のナット部61にネジ502が締結される。したがって、上ケース51の取付部513は、スイングアーム141に設けられるエンドブラケット15の中心側に、ネジ502によって着脱可能に固定される。そして、上ケース51の取付部513は、スイングアーム141に設けられるエンドブラケット15と、ドリブンチェーンスプロケット145との間に位置する。また、特に図12に示すように、上ケース51の前部は、スイングアーム141に設けられる上側ブラケット146に、外側からネジ501が締結されて固定される。
そして、上ケース51がスイングアーム141に固定されると、図13に示すように、側面視において、固定具6はドリブンチェーンスプロケット145の輪郭(=外形線)の内側に位置する。
上ケース51の取付部513がスイングアーム141のエンドブラケット15の中心側に固定されるため、取付部513が外側壁部511の他の部分から大きく外側に張り出さない。または、取付部513が外側壁部511の他の部分と面一の構成であってもよい。このため、取付部513の剛性を高めることができ、取付部513の破損を防止または抑制できる。すなわち、上ケース51の取付部513が、スイングアーム141のエンドブラケット15の外側に固定される構成であると、取付部513を外側壁部511の他の部分から外側に大きく張り出させる必要がある。そうすると、取付部513に外力が加わった場合などにおいて、取付部513の付け根近傍にかかるモーメントが大きくなる。したがって、取付部513が破損しやすくなる。これに対して、本発明の実施形態によれば、取付部513が外側壁部511の他の部分から張り出す寸法を小さくすることができる(または、張り出さないようにできる)から、取付部513の付け根近傍にかかるモーメントを小さくできる。したがって、取付部513の破損を防止または抑制できる。また、取付部513が外側壁部511の他の部分から大きく張り出すと、取付部513の剛性が低下する。これに対して、本発明の実施形態によれば、取付部513が外側壁部511の他の部分から張り出す寸法を小さくできる(またはゼロにできる)から、取付部513の剛性の低下の防止または剛性の向上を図ることができる。
さらに、取付部513が外側壁部511の他の部分から張り出す寸法を小さくできるから、上ケース51の左右方向の寸法を小さくできるとともに、構造の単純化を図ることができる。このため、上ケース51の成形が容易となり、上ケース51の生産性の向上を図ることができる。
従来のように、上ケース51の取付部513がスイングアーム141に設けられるエンドブラケット15の外側の面に固定される構成であると、上ケース51の取付部513とリアクッションユニット142との干渉を避ける必要がある。このため、スイングアーム141に設けられるエンドブラケット15とリアクッションユニット142との間の左右方向の距離が大きくなる。これに対して、本発明の実施形態によれば、上ケース51の取付部513は、スイングアーム141に設けられるエンドブラケット15の中心側の面に固定されるから、エンドブラケット15とリアクッションユニット142との間に介在しない。そうすると、エンドブラケット15とリアクッションユニット142との間の左右方向の距離を小さくすることによって、ボス151およびエンドブラケット15にかかるモーメントを小さくできる。このため、ボス151およびエンドブラケット15に要求される強度を低くすることができるから、ボス151およびエンドブラケット15を小型化して軽量化を図ることができる。したがって、後輪懸架装置14のバネ下重量を小さくすることができるから、本自動二輪車1の乗り心地の向上を図ることができる。
上ケース51の固定のために、上ケース51とは別個の部材である固定具6が用いられる構成であると、取付部513の耐久性の向上を図ることができる。このため、チェーンケース5を繰り返して着脱した場合であっても、取付部513の破損を防止または抑制できる。そして、固定具6としてスピードナットが適用される構成であると、固定具6の着脱が容易であるから、作業性の向上を図ることができる。さらに、固定具6としてスピードナットが適用される構成であると、たとえば固定具6として圧入型のナットが適用される構成と比較して、固定具6の中心側への突出寸法を小さくできる。したがって、ドライブチェーン31やドリブンチェーンスプロケット145と、上ケース51の外側壁部511とのクリアランスを小さくできるから、チェーンケース5の小型化を図ることができる。また、チェーンケース5の左右方向寸法を小さくできるから、左右のエンドブラケット15の間隔を小さくできる。そうすると、後輪143の車軸の長さを短くできるから、後輪143にかかるモーメントを小さくできる。このように、車軸の小型化を図ることができるとともに、車軸に要求される強度を低くすることができるから、車軸の軽量化を図ることができる。
本自動二輪車1においては、図13に示すように、側面視で、固定具6がドリブンチェーンスプロケット145の輪郭(=外形線)の内側に位置する。このような構成であると、固定具6がドライブチェーン31に接触することが防止される。すなわち、ドライブチェーン31のうち、ドリブンチェーンスプロケット145と噛み合っている部分は、左右方向に振れない。このため、固定具6がドライブチェーン31に接触することを防止しつつ、固定具6とドリブンチェーンスプロケット145との間の左右方向の距離を小さくできる。したがって、チェーンケース5の小型化(特に、左右方向寸法の短縮)を図ることができる。そして、チェーンケース5の小型化を図ることにより、前記作用効果を奏することができる。
さらに、図10(a)(b)などに示すように、上ケース51をエンドブラケット15に固定するネジ502の頭部は、リアクッションユニット142の下端部の後方に位置する。そして、リアクッションユニット142は、前傾姿勢となるように配設される。すなわち、リアクッションユニット142は、ネジ502の頭部から離れるように前傾している。このような構成であると、リアクッションユニット142が作動しても、ネジ502の頭部がリアクッションに干渉しない。したがって、リアクッションユニット142のスムーズな動作が確保される。また、リアクッションユニット142は、ネジ502の頭部から離れるように前傾しているから、上ケース51の着脱作業において、リアクッションユニット142が作業の障碍となることが防止される。したがって、上ケース51の着脱作業の作業性の向上を図ることができる。
さらに、本発明の実施形態によれば、チェーンケース5を固定するネジ502の頭部はエンドブラケット15の外側に位置しているため、チェーンケース5を外側から着脱できる。したがって、チェーンケース5の着脱作業の作業性の向上を図ることができる。
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明したが、前記実施形態は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
たとえば、前記実施形態においては、動力伝達部材としてドライブチェーン31が適用される構成を示したが、動力伝達部材はドライブチェーン31に限定されない。たとえば、動力伝達部材として、歯付のゴムベルトが適用されてもよい。動力伝達部材として歯付のゴムベルトが適用され構成においては、ドライブチェーンスプロケット32とドリブンチェーンスプロケット145の代わりに、プーリが適用される。したがって、前記実施形態の説明において、「ドライブチェーン31」を「歯付ベルト」に、「ドライブチェーンスプロケット32」と「ドリブンチェーンスプロケット145」とを「プーリ」に、「チェーンケース5」を「ベルトケース」に読み替えればよい。このように、動力伝達部材は、閉じたループを構成し、巡回運動することによって駆動輪に動力を伝達することができる部材であればよく、その種類は限定されない。
また、前記実施形態においては、下ケース52には取付部513が形成されない構成を示したが、この構成に限定されない。下ケース52に上ケース51と同様の構成を有する取付部513が形成され、当該取付部513がエンドブラケット15の中心側の面に着脱可能に固定される構成であってもよい。
また、固定具6としてのスピードナットの構成は、前記構成に限定されない。固定具6は、ネジ502を締結可能で、かつ上ケース51に装着可能な構成であればよい。このため、固定具6としては、U型のスピードナット、J型のスピードナット、ワイドレンジ型のスピードナットなど、各種スピードナットが適用できる。
また、上ケース51の固定に固定具6を用いない構成であってもよい。たとえば、上ケース51をタッピングネジによってエンドブラケット15に固定する構成であってもよい。