JP5851950B2 - オキサゾリン化合物とポリテルペン樹脂とを含有する転相インク - Google Patents

オキサゾリン化合物とポリテルペン樹脂とを含有する転相インク Download PDF

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Description

本発明は、オキサゾリン化合物とポリテルペン樹脂とを含有する転相インクに関する。
既知の転相インクは、一般的に、結晶性ワックスや、溶融した液体状態から固体状態に著しく迅速に相転移可能な他の材料のような成分を含有する。しかし、多くの既知の転相インクは、紙基材(コーティング紙基材およびコーティングされていない紙基材を含む)への接着性が悪く、耐引っかき性が悪く、画像の堅牢性が悪く、硬く脆い性質、書類を折りたたむときに「紙の折りたたみ」性能が悪い(例えば、亀裂および折り目が生じる)、書類の裏移りといった欠点を示す。さらに、これらのインク成分は非極性であるため、一般的に市販されている染料および顔料との相溶性に問題があることが多く、インク担持剤への溶解性または分散性を良好にし、着色剤の分解または着色剤の移動を防ぐ長期間熱安定性が良好な特注の着色剤が必要である。
また、顧客は、生物由来であるか、または少なくとも部分的に再生可能な資源に由来する材料の需要を生み出している。エネルギー政策および環境政策、揮発性油の価格上昇、地球の化石資源がみるみる枯渇していることに対する公共/政治的な意識から、生物由来モノマーまたは生物由来ポリマーから誘導される持続可能な材料および化学薬品の必要性がでてきた。農業作物または森林産業から誘導されるような生物系の再生可能な原料を用いることによって、製造業者は、カーボンフットプリントを減らし、カーボンニュートラルフットプリントに移行することができる。生物由来ポリマーは、特定のエネルギーおよび排出量の節約という観点でも非常に魅力的である。生物由来の原料を用いることによって、埋め立てにまわるプラスチックの量を減らし、国内農業の新しい収入源を与え、不安定な領域から輸入される石油に頼ることに関連する経済的な危険および不確実性を減らすことができる。
溶融した液体状態から固体状態に著しく迅速に相転移し、紙基材(コーティング紙基材およびコーティングされていない紙基材を含む)への接着性が良好であり、良好な耐引っかき性、良好な画像堅牢性、書類が折りたたまれたときに良好な「紙の折りたたみ」性能を示し、画像の亀裂および折り目を減らし、市販の着色剤との相溶性が良好であり、種々の条件(例えば、ダイレクト・トゥ−・ペーパー印刷条件)下でインクジェット印刷に適しており、広範囲の紙に低コストで高品質の画像を作成し、生物由来または再生可能な資源に少なくとも部分的に由来する少なくともある種の材料を含み、望ましくは低コストで調製することができる広範囲の紙と適合する転相インクが必要とされる。
本明細書には、(a)結晶性オキサゾリン化合物と、(b)アモルファスポリテルペン樹脂とを含む転相インクが開示される。また、本明細書には、(1)(a)インク担持剤の約20〜約80重量%の量の結晶性オキサゾリン化合物、(b)インク担持剤の約7〜約40重量%の量のアモルファスポリテルペン樹脂、および(c)粘度調整剤を含むインク担持剤と、(2)着色剤とを含む転相インクが開示される。さらに、本明細書には、(a)以下の式の結晶性オキサゾリン化合物
(式中、Rは、(i)置換および非置換のアルキル基を含み、ヘテロ原子が、アルキル基に存在していてもよく、存在していなくてもよいアルキル基;(ii)置換および非置換のアリール基を含み、ヘテロ原子が、アリール基に存在していてもよく、存在していなくてもよいアリール基;(iii)置換および非置換のアリールアルキル基を含み、ヘテロ原子が、アリールアルキル基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよいアリールアルキル基;または(iv)置換および非置換のアルキルアリール基を含み、ヘテロ原子が、アルキルアリール基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよいアルキルアリール基であり;R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、(i)水素原子;(ii)ハロゲン原子;(iii)置換および非置換のアルキル基を含み、ヘテロ原子が、アルキル基に存在していてもよく、存在していなくてもよいアルキル基;(iv)置換および非置換のアリールを含み、ヘテロ原子が、アリール基に存在していてもよく、存在していなくてもよいアリール基;(v)置換および非置換のアリールアルキル基を含み、ヘテロ原子が、アリールアルキル基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよいアリールアルキル基;または(vi)置換および非置換のアルキルアリール基を含み、ヘテロ原子が、アルキルアリール基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよいアルキルアリール基である)と;(b)α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ノルボルネン、ミルセン、フェランドレン、カルボン、カンフェン、2−カレン、3−カレン、ペリリルアルコール、ペリリルアルデヒド、ペリル酸、ペリリルアルコールのアルキルエステル、ペリリルアルコールのアリールエステル、ペリリルアルコールのアリールアルキルエステル、ペリリルアルコールのアルキルアリールエステル、α−イオノン、β−イオノン、γ−テルピネン、β−シトロネレン、β−シトロネロール、シトロネラール、シトロネル酸、β−シトロネロールのアルキルエステル、β−シトロネロールのアリールエステル、β−シトロネロールのアリールアルキルエステル、β−シトロネロールのアルキルアリールエステル、ゲラニオール、ゲラニアール、ゲラニオールのアルキルエステル、ゲラニオールのアリールエステル、ゲラニオールのアリールアルキルエステル、ゲラニオールのアルキルアリールエステル、リナロール、リナロールのアルキルエステル、リナロールのアリールエステル、リナロールのアリールアルキルエステル、リナロールのアルキルアリールエステル、ネロリドール、ネロリドールのアルキルエステル、ネロリドールのアリールエステル、ネロリドールのアリールアルキルエステル、ネロリドールのアルキルアリールエステル、ベルベノール、ベルベノン、ベルベノールのアルキルエステル、ベルベノールのアリールエステル、ベルベノールのアリールアルキルエステル、ベルベノールのアルキルアリールエステル、およびこれらの混合物から選択されるモノマーを含有するアモルファスポリテルペン樹脂と;(c)ソルビタントリステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、またはこれらの混合物から選択される粘度調整剤とを含む(1)インク担持剤;および(2)着色剤を含む転相インクが開示される。
本明細書に開示されているインクは、少なくとも1つ以上のオキサゾリン化合物を含む結晶性成分を含有する。適切なオキサゾリン化合物の例としては、(限定されないが)、以下の式を有するもの
が挙げられ、式中、
は、(1)直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、置換および非置換のアルキルを含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アルキルに存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも1〜5個の炭素を有し、種々の実施形態では、60、36、または25個以下の炭素を有するアルキル、(2)置換および非置換のアリールを含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アリール基に存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも5個または6個の炭素を有し、種々の実施形態では、24、18、または14個以下の炭素を有するアリール、例えば、フェニルなど、(3)置換および非置換のアリールアルキルを含み、アリールアルキルのアルキル部分が、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、および/または環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アリールアルキル基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも6個または7個の炭素を有し、種々の実施形態では、36、24、または18個以下の炭素を有するアリールアルキル、例えば、ベンジルなど、または(4)置換および非置換のアルキルアリールを含み、アルキルアリール基のアルキル部分が、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、および/または環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アルキルアリール基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも6個または7個の炭素を有し、種々の実施形態では、36、24、または18個以下の炭素を有するアルキルアリール、例えば、トリルなどであり;
、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、(1)水素、(2)ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、(3)直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、置換,および非置換のアルキルを含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アルキルに存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも1、2、または3個の炭素を有し、種々の実施形態では、36または30個以下の炭素を有するアルキル、(4)置換および非置換のアリールを含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アリールに存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも5個または6個の炭素を有し、種々の実施形態では、24または18個以下の炭素を有するアリール、例えば、フェニルなど、(5)置換および非置換のアリールアルキルを含み、アリールアルキルのアルキル部分が、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、および/または環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アリールアルキルのアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも6個または7個の炭素を有し、種々の実施形態では、36または24個以下の炭素を有するアリールアルキル、例えば、ベンジルなど、または(6)置換および非置換のアルキルアリールを含み、アルキルアリールのアルキル部分が、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、および/または環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アルキルアリールのアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも6個または7個の炭素を有し、種々の実施形態では、36または24個以下の炭素を有するアルキルアリール、例えば、トリルなどであり、ここで、R、R、R、R,およびRの置換アルキル基、アリール基、アリールアルキル基およびアルキルアリール基の上の置換基は、(限定されないが)ヒドロキシ、ハロゲン、アミン、イミン、アンモニウム、シアノ、ピリジン、ピリジニウム、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、カルボニル、チオカルボニル、サルフェート、スルホネート、スルホン酸、スルフィド、スルホキシド、ホスフィン、ホスホニウム、ホスフェート、ニトリル、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホン、アシル、酸無水物、アジド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、カルボン酸、ウレタン、尿素、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が結合して環を形成していてもよい。
ある特定の実施形態では、Rは、アルキル、例えば、直鎖非置換脂肪族基である。別の特定の実施形態では、Rは、アルキルアリール、例えば、以下の式の基である。
ある特定の実施形態では、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、非置換アルキルまたはヒドロキシアルキル、例えば、式−(CHOHを有するものであってもよく、式中、種々の実施形態では、nは、少なくとも1または2、種々の実施形態では、12以下または10以下の整数であるか、または、アルキルエステル、例えば、式−(CH−OOC(CH−CHを有するものであってもよく、式中、pは、少なくとも1または2、種々の実施形態では、12以下または10以下の整数であり、mは、種々の実施形態では、少なくとも1または2、種々の実施形態では、36以下または24以下の整数であり、ある特定の実施形態では、オキサゾリンは、以下の式を有し、
式中、Rは、本明細書で上に定義されるとおりであり、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、(1)水素、または(2)以下の式を有する基であり、
式中、nは、0であるか、または、1〜36の整数である。
適切なオキサゾリン化合物の特定の例(すべて室温で結晶性である)としては、(限定されないが)以下のもの(示差走査熱量測定によって、10°/分の走査速度で測定された融点および結晶化温度)
など、およびこれらの混合物が挙げられる。
ある特定の実施形態では、オキサゾリンは、生物由来または再生可能な資源から誘導されるように選択される。生成物が石油由来であるか、再生可能な資源由来であるかを14C放射性炭素年代測定法によって調べることができる。石油由来の生成物は、再生可能な資源に由来する生成物では非常に最近または現在の放射性炭素値を有するのに対し、数百万年の実質的に大きな14C放射性炭素年代測定値を有するだろう。適切な生物由来オキサゾリンの例としては、限定されないが、ステアリン酸(安価で「環境に優しい」生物再生可能な原料の化学物質として市販されている)およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ラウリン酸など、およびこれらの混合物の反応から誘導される
が挙げられる。
特定の実施形態では、本明細書に開示する結晶性オキサゾリン化合物は、溶融状態で十分に粘度が低いため、インクジェット印刷用固体インク中、結晶性転相剤として使用するのにきわめて適したものとなる。これらの実施形態では、結晶性オキサゾリン化合物(例えば、本明細書で上に示した特定の化合物)は、110℃より高い温度で測定する場合、種々の実施形態では、複素粘度が少なくとも1cP(センチポイズ、またはmPa−sec)、2cP、または3cP、種々の実施形態では、20cP以下、15cP以下、または13cP以下であってもよい。室温で、本明細書に開示する結晶性オキサゾリン化合物の複素粘度は、1×10cP以上であってもよい。
結晶性オキサゾリン化合物は、インク中、任意の望ましい量または有効な量で、種々の実施形態では、インクの少なくとも10、20、または25重量%、種々の実施形態では、インクの90、80、または75重量%以下の量で存在する。
本明細書に開示されているインクは、アモルファスポリテルペン樹脂も含有している。ポリテルペン樹脂は、不飽和モノテルペン化合物、例えば、α−ピネン、β−ピネン、d−リモネンなど、およびこれらの混合物(これらはすべて再生可能な資源に由来する)の重合によって得られる樹脂である。
モノテルペン化合物は、天然産物のテルペノイド群に属する炭素10個の化合物であり、炭素5個の2種類のビルディングブロック化合物であるイソペンテニルピロホスフェート(IPP)およびジメチルアリルピロホスフェート(DMAPP)から、植物源および動物源中、天然で生合成される。このモノテルペン化合物を産生する生合成経路(メバロン酸経路としても知られる)は、IPPとDMAPPとの「頭部−尾部」カチオン性付加を含み、この反応は、アデノシン三リン酸(ATP)の平衡状態に関与する酵素によって触媒される。IPPとDMAPPとの付加によって作られる生成物は、ゲラニルピロホスフェート(GPP)であり、GPPをさらにIPPおよびDMAPPビルディング単位に付加し、セスキテルペン(C15化合物)、ジテルペン(C20化合物、例えば、アビエチン酸誘導体のロジン群)、セスタテルペン(C25化合物)、およびよく知られているトリテルペン(C30化合物、スクアレン、コレステロール、プロゲステロン、および他のステロールおよびステロイド化合物を含む)のようなもっと大きなテルペノイド化合物を製造してもよい。または、C10ビルディングブロックGPP(ゲラニルピロホスフェート)は、分子内環化を受け、一不飽和ピネン(α、β異性体)、リモネン、カンフェンおよびボルネンを含む機能的で香りのよいモノテルペン化合物を与えることができる。
これらの不飽和化合物を酸化すると、よく知られた香りのよいモノテルペン、例えば、メントール、ゲラニオール、ユーカリプトール、ペリーラアルコールおよびショウノウが導かれる。
特定の実施形態では、ポリテルペン樹脂は、不飽和モノテルペン(例えば、α−ピネン、β−ピネン、d−リモネン、α−ピネン/β−ピネンの混合物など、およびこれらのブレンドした組み合わせ)のホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。他の特定的な実施形態では、ポリテルペン樹脂は、不飽和モノテルペン(例えば、α−ピネン、β−ピネン、d−リモネンなど)と、他の従来の石油由来エチレン性不飽和モノマー(スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、ビニルアルカノエート、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニルなど、エチレンビニルアセテート、スチレン−無水マレイン酸、および同様のモノマー)とのコポリマーであってもよい。
適切なポリテルペン樹脂の例としては、(限定されないが)α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ノルボルネン、ミルセン、フェランドレン、カルボン、カンフェン、2−カレン、3−カレン、ペリリルアルコール、ペリリルアルデヒド、ペリル酸、アルキル、アリール、アリールアルキル、およびペリリルアルコールまたはペリリル酸のアルキルアリールエステル、α−イオノン、β−イオノン、γ−テルピネン、β−シトロネレン、β−シトロネロール、シトロネラール、シトロネル酸、β−シトロネロールまたはシトロネル酸のアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリールエステル、ゲラニオール、ゲラニアール、ゲラニオールのアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリールエステル、例えば、安息香酸ゲラニルなど、リナロール、リナロールのアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリールエステル、ネロリドール、ネロリドールのアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリールエステル、例えば、酢酸ネロリジルなど、ベルベノール、ベルベノン、ベルベノールのアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリールエステルのホモポリマーおよびコポリマー、およびこのホモポリマーまたはコポリマーのブレンドした混合物が挙げられる。アルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリールエステルは、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和、環状、置換および非置換のアルキルを含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アルキルに存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも1個または2個の炭素を有し、種々の実施形態では、20または18個以下の炭素を有するアルキル;置換および非置換のアリールを含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アリールに存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも5個または6個の炭素を有し、種々の実施形態では、24、18または14個以下の炭素を有するアリール、例えば、フェニルなど;置換および非置換のアリールアルキルを含み、アリールアルキルのアルキル部分が、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和および/または環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アリールアルキルのアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも6個または7個の炭素を有し、種々の実施形態では、36、24または18個以下の炭素を有するアリールアルキル、例えば、ベンジルなど;置換および非置換のアルキルアリールを含み、アルキルアリールのアルキル部分が、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和および/または環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リンなど)が、アルキルアリールのアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよく、種々の実施形態では、少なくとも6個または7個の炭素を有し、種々の実施形態では、36、24または18個以下の炭素を有するアルキルアリール、例えば、トリルなどが挙げられ、ここで、置換アルキル基、アリール基、アリールアルキル基およびアルキルアリール基の上の置換基は、(限定されないが)ヒドロキシ、ハロゲン、アミン、イミン、アンモニウム、シアノ、ピリジン、ピリジニウム、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、カルボニル、チオカルボニル、サルフェート、スルホネート、スルホン酸、スルフィド、スルホキシド、ホスフィン、ホスホニウム、ホスフェート、ニトリル、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホン、アシル、酸無水物、アジド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、カルボキシレート、カルボン酸、ウレタン、尿素、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が結合して環を形成していてもよい。適切なポリテルペン化合物の他の例としては、不飽和モノテルペンと、従来の石油由来のエチレン性不飽和モノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸アルキル(この章で定義されているようなアルキルを有する)、メタクリル酸アルキル(この章で定義されているようなアルキルを有する)、ビニルアルカノエート(この章で定義されているようなアルキルを有する)、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニルなど、エチレンビニルアセテート、スチレン−無水マレイン酸、および同様のモノマーとのコポリマーが挙げられる。
本明細書に開示されているインク用のポリテルペン樹脂は、一般的なランダムコポリマーであるが、ブロックコポリマー合成または化学的にグラフト接合した他のコポリマーセグメントに適した方法によって調製されたブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーも含んでいてもよい。特定の実施形態では、ポリテルペン樹脂は、α−ピネン、β−ピネン、β−フェランドレン、および他のエチレン性不飽和モノマー、例えば、ジペンテンまたはイソプレンまたはリモネンの混合物から調製されるランダムコポリマーである。α−ピネンモノマーおよびβ−ピネンモノマーの混合物から調製される実施形態のポリテルペン樹脂において、β−ピネンモノマーに対するα−ピネンモノマーのモル比は、全ピネンモノマー混合物の5%〜80%の範囲であってもよい。さらなる実施形態では、ポリテルペン樹脂を調製するために使用される全α/β−ピネンモノマーの量は、使用する全モノマーの50モル%〜100モル%の範囲であってもよい。
ポリテルペン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特定のインク配合物に有用な任意の適切な数値であってもよい。特定の実施形態では、この値は、高温で9〜12センチポイズの良好な吐出粘度を有するインク組成物を与えるような値である。種々の特定の実施形態では、ポリテルペン樹脂のMw値(ゲル透過クロマトグラフィー法で決定し、ポリスチレン較正標準に対して測定した)は、少なくとも2,000、5,000または7,000、種々の実施形態では、50,000、30,000または20,000以下である。
本明細書に開示されているインクに適したポリテルペン樹脂は、アモルファス材料である。特定の実施形態では、ポリテルペン樹脂は、淡い色を有し、有機溶媒の50wt%溶液として比色分析法(比色計)で測定した場合、Gardnerスケールで5未満の値を有する。ポリテルペン樹脂は、ガラス転移開始温度(Tg)が、一実施形態では、少なくとも10℃、一実施形態では60℃以下であり、終点Tg値が、一実施形態では、少なくとも20℃、一実施形態では、75℃以下である。さらに、ポリテルペン樹脂は、軟化点(リングおよびボールを用いる方法によって測定した)が、種々の実施形態では、少なくとも30℃、40℃または50℃、種々の実施形態では、130℃、125℃または120℃以下である。
ある特定の実施形態では、ある種のポリテルペン樹脂は、以下の表に示すように、アモルファスポリマーのレオロジー特性を示すことがある。示されているPICCOLYTE(登録商標)ポリテルペン樹脂の例は、頻度1Hz、130℃よりも高い温度で測定すると、200cP〜20,000cPの範囲の複素粘度を示す。100℃より低い温度で、これらの樹脂を1Hzで測定した複素粘度は、顕著に大きく、1×10cP〜5×10cPの範囲にある。それに加え、ポリテルペン樹脂は、「ニュートン」レオロジー挙動を示し、130℃を超える温度で測定した複素粘度は、異なるせん断頻度(0.1Hz〜16Hzの範囲)を加えた状態でも顕著に変化することはなかった。これらの粘度特性は、結晶性転相剤または粘度調整成分と組み合わせると、転相インク配合物のアモルファスバインダー樹脂として使用するのに適していることがわかった。
Rheometrics RFS3歪み制御型レオメーターを用いて3種類の適切な市販ポリテルペン樹脂のレオロジープロフィールを測定し、結果を以下の表に示す。Rheometrics RFS3装置に25mm平衡板形状の器具を取り付け、一定頻度1Hzで一定の100%歪みを加えつつ、140℃から75℃まで温度を動的に変えて複素粘度を測定した。
適切なアモルファスポリテルペン樹脂の例としては、Pinova Solutionsから市販されているPICCOLYTE(登録商標)シリーズの樹脂、例えば、PICCOLYTE(登録商標)S25およびS85(β−ピネンから調製したβ−ピネン樹脂)、PICCOLYTE(登録商標)F90およびF105(α−ピネン/β−ピネンモノマー混合物から調製したα−ピネン/β−ピネンコポリマー樹脂)およびPICCOLYTE(登録商標)C105(リモネンモノマーから調製したリモネン樹脂)が挙げられる。他の適切なポリテルペン樹脂としては、Arizona Chemicalから入手可能なSYLVAGUM(商標)TR 90樹脂およびTR 105樹脂およびSYLVARES(商標)ZT106樹脂が挙げられる。
ポリテルペンは、転相印刷インクに適した良好な熱安定性およびエラストマー特性を有し、生物由来または再生可能な供給源から得られるため、特に望ましいインク成分である。
アモルファスポリテルペン樹脂は、インク組成物中に、合計して任意の望ましい量または有効な量で、種々の実施形態では、インクの少なくとも5、7、または10重量%、種々の実施形態では、インクの50、40または35重量%以下の量で存在する。
インク組成物は、場合により着色剤も含んでいてもよい。染料、顔料、これらの混合物などを含め、任意の望ましい着色剤または有効な着色剤をインク組成物に使用してもよい。インク担持剤に分散または溶解させることができ、他のインク成分と相溶性であれば、任意の染料または顔料を選択することができる。
また、インクは、インク組成物中で顔料の湿潤性を制御するといった既知の性質のために、1つ以上の分散剤および/または1つ以上の界面活性剤を含有していてもよい。適切な添加剤の例としては、限定されないが、BYK−UV 3500、BYK−UV 3510(BYK−Chemie);Dow Corning 18、27、57、67 Additives;ZONYL FSO 100(DuPont);MODAFLOW 2100(Solutia);Foam Blast 20F、30、550(Lubrizol);EFKA−1101、−4046、−4047、−2025、−2035、−2040、−2021、−3600、−3232; SOLSPERSE 13000、13240、17000、19200、20000、34750、36000、39000、41000、54000(場合により、個々の分散剤または組み合わせをSOLSPERSE 5000、12000、22000(Lubrizol)を含む共力剤とともに使用してもよい);DISPERBYK−108、−163、−167、182(BYK−Chemie);K−SPERSE 132、XD−A503、XD−A505(King Industries)が挙げられる。任意要素の添加剤が存在する場合、添加剤は、それぞれについて、または組み合わせた状態で、インク中に任意の望ましい量または有効な量で、種々の実施形態では、インクの少なくとも0.1または0.5重量%、種々の実施形態では、インクの15または12重量%以下の量で存在してもよい。
着色剤は、望ましい色または色相を得るのに望ましい任意の量または有効な量で、種々の実施形態では、インクの少なくとも0.5、1、または2重量%、種々の実施形態では、インクの30、20、15、12、または10重量%以下の量で存在する。
さらなる任意成分(例えば、粘度調整剤)がインクに含まれていてもよく、この粘度調整剤は、転相インクがインクジェット印刷のための低粘度になるような低温溶融粘度を有する、適切には低融点化合物、好ましくは結晶性化合物である。結晶性粘度調整剤は、融点が、種々の実施形態では、少なくとも40℃、50℃または55℃、種々の実施形態では、100℃、95℃または90℃以下であってもよい。本明細書に開示されているインク中で使用するのに適した粘度調整剤の溶融粘度は、種々の実施形態では、少なくとも3cP、4cPまたは5cP、種々の実施形態では、12cP、10cPまたは9.5cP以下である。転相インクに適した粘度調整剤の例としては、限定されないが、種々の実施形態では、インク組成物の少なくとも0.5、1または2重量%、種々の実施形態では、15、12または10重量%以下の量のペンタエリスリトールエステル、例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエートなど、ソルビトールエステル(ソルビタントリステアリン酸エステルなどを含む)、ステアリルステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアロン、ショ糖テトラステアレート、桂皮酸直鎖アルキルエステルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
用語「インク担持剤」は、本明細書で使用する場合、着色剤または着色剤混合物以外のインク成分を指す。
インク担持剤内容物の供給源を注意深く選択することによって、インク担持剤は、生物由来の再生可能な内容物(BRC)の量を多くすることができる。種々の実施形態では、インク担持剤(着色剤や、酸化防止剤などのような他の少量添加剤以外のインク部分と定義される)は、BRCを少なくとも10%、12%または15%含む。
ある特定の実施形態では、本明細書に開示する転相インクは、ワックス系化合物を含む主な成分をほとんど含まないか、まったく含まない非ワックス系インクである。「主な」とは、全インク組成物の10重量%以上を意味する。
転相インク組成物の融点および結晶化温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって、TA Instruments Q100装置を用い、加熱および冷却の温度勾配が10℃/分であり、加熱および冷却の第2周期(サンプルの熱履歴を取り除くため)の後、結晶化温度を測定することによって決定することができる。転相インク組成物の融点および結晶化温度は、動的レオロジー(Rheometrics RFS3歪み制御型レオメーターを用い、25mm平衡板形状の器具を用い)、一定の発振頻度1Hzで、歪み100%を加え、インクサンプルを初期温度(例えば、140℃)から40℃まで冷却しつつ、90秒ごとに5℃の温度勾配をもつ工程を行うことによって決定することもできる。
インク組成物は、種々の実施形態では、DSC方法によって測定した場合、60℃、70℃、75℃または80℃以上のピーク融点を有し、種々の実施形態では、120℃、115℃または110℃以下の融点を有する。
インク組成物は、種々の実施形態では、動的レオロジー法によって測定すると、結晶化開始温度が、50℃、55℃または60℃以上であり、結晶化開始温度が、種々の実施形態では、110℃、105℃または100℃以下である。
インク組成物は、一般的に、適切な吐出温度(種々の実施形態では、90℃、95℃または100℃以上、種々の実施形態では、150℃または140℃以下)で、溶融粘度が、種々の実施形態では、20、18または15センチポイズ以下、種々の実施形態では、5、7または9センチポイズ以上である。別の特定の実施形態では、インクは、110、120、および/または130℃の温度で、7〜15センチポイズの粘度を有する。
転相インク組成物は、一般的に、結晶化(固化)相転移の終点で(種々の実施形態では、40℃、50℃または60℃以上、種々の実施形態では、120℃または110℃以下)、ピーク粘度が、種々の実施形態では、1×10または1×10センチポイズ以下、種々の実施形態では、1×10または1×10センチポイズ以上である。以下の表は、4種類の転相着色インクについてRheometrics RFS3装置を用い、25mm平行板形状の器具を用い、一定頻度1Hzで、歪み100%を加え、140℃から60℃の温度範囲で測定した、温度に対する複素粘度のレオロジープロフィールを示し、本明細書に開示した3種類の代表的なインク例と、Xeroxによって固体インクジェットプリンタのPHASER(登録商標)シリーズとして市販されている1種類の比較例の転相インクが含まれている。
転相インクの硬度は、印刷した画像のインク堅牢性の指標として役立ち得る特徴である(例えば、耐引っかき性、折りたたみによる折れ目形成など)。インクの硬度は、針入度装置(例えば、PTC(登録商標)Durometer Model PS 6400−0−29001(Pacific Transducer Corp.から入手可能)に、標準負荷1kgを加えたModel 476 Standを取り付けて測定することができる。このDurometer装置では、成型したインクサンプルの表面に対し、格納式の部分に取り付けられた鋭い先端(または針)を押し付ける。インク表面を下側に押したとき、針の先端が受ける抵抗の程度を測定し、この値は、針の先端が取り付けられている部分の中に引っ込んだ距離と相関関係にある。測定値100は、完全に硬く、透過しない表面(例えば、ガラス)であることを示す。
本明細書に開示されているインクは、PTC(登録商標)Durometerを用いて25℃で測定したとき、硬度の値が、種々の実施形態では、少なくとも60、65、70、75または80である。
(実施例I)
1リットルのParr反応器に二重タービン型アジテーターおよび蒸留装置を取り付け、ドデカン酸(200g)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(92g)、ブチルスズ酸触媒(FASCAT 4100;0.45グラム)をこの順に入れた。内容物を2時間かけて165℃まで加熱し、次いで、2時間かけて温度を205℃まで上げ、この間に留出水を蒸留受け器に集めた。次いで、反応器の圧力を1時間で1〜2mm−Hgまで下げ、次いで、重さをはかった容器に取り出し、室温まで冷却した。この生成物を、酢酸エチル(2.5部)およびヘキサン(10部)の混合物中、穏やかに加熱しつつ溶解し、次いで、室温まで冷却し、純水な生成物を白色顆粒状粉末として結晶化させることによって精製した。ピーク融点(DSCによる)は、97℃であると決定された。
この材料のレオロジー分析は、RFS3 Rheometrics装置(発振頻度1Hz、25mm平衡板形状、加えた歪み200%)を用い、130℃から開始し、40℃まで冷却する温度範囲で測定した。130℃での溶融粘度は8.2cPであり、この材料の結晶化開始は、97℃で起こり、ピーク粘度は4.5×10cPであった。
(実施例II)
1リットルのParr反応器にアジテーター、蒸留装置、底部排出弁を取り付け、ステアリン酸(426g)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(181.5g)、0.75gブチルスズ酸(FASCAT 4100)を入れた。この混合物を165℃まで加熱し、窒素不活性雰囲気下、150rpmで撹拌した。次いで、この混合物を4時間かけて196℃まで加熱し、197〜202℃の温度にさらに2時間維持し、その後、重さをはかった容器に生成物を取りだした。蒸留受け器によって水副生成物(51g)を集めた。この生成物をイソプロパノールから再結晶させ、白色生成物を得て、この生成物は、DSCで測定すると、107℃で融点が著しく増大していた。
この材料のレオロジー分析は、RFS3 Rheometrics装置(発振頻度1Hz、25mm平衡板形状、加えた歪み200%)を用い、130℃から開始し、60℃まで冷却する温度範囲で測定した。130℃での溶融粘度は3cPであり、この材料の結晶化開始は107℃で起こり、ピーク粘度は7.2×10cPであった。
(実施例III)
インク1を以下のように調製した。30mLのガラス容器に、3.13gの実施例Iに記載したように調製した2−ウンデシル−5,5−ビス(ヒドロキシメチル)−4H−オキサゾリン(62.5wt%)、1.3gのペンタ−エリスリトールテトラベンゾエート(26wt%)、0.35gのα−ピネン/β−ピネンコポリマー(PICCOLYTE F90;7wt%)、0.1gのペンタエリスリトールテトラステアレート(2wt%)をこの順で加えた。まず、材料を130℃で1時間かけて溶融させ、その後、溶融した混合物に、0.13gのOrasol Blue GN染料(Ciba;2.5wt%)を加えた。この着色インクの混合物をさらに2.5時間かけて、300rpmで撹拌しつつ、130℃に加熱した。次いで、暗青色の溶融インク(インク1)を型に注ぎ、室温まで冷却して固化させた。
インク2を、2.5wt%のOrasol Blue GN染料を同量のSolvent Yellow 146染料(Orasol Yellow 4GN、BASF)と置き換える以外は、インク1と同じプロセスによって調製した。それに加え、ペンタエリスリトールテトラベンゾエートの量を26wt%から28wt%まで増やし、PICCOLYTE F90の量を7wt%から3.5wt%に減らし、ペンタエリスリトールテトラステアレートの量を2wt%から3.5wt%まで増やした。
インク3を、2.5wt%のOrasol Blue GN染料を同量のSolvent Blue 36染料と置き換える以外は、インク1と同じプロセスによって調製した。それに加え、ペンタエリスリトールテトラベンゾエートの量を26wt%から28wt%まで増やし、PICCOLYTE F90の量を7wt%から3.5wt%まで減らし、ペンタエリスリトールテトラステアレートの量を2wt%から3.5wt%まで増やした。
次いで、これらのインクの特性を測定した。比較のために、XEROX(登録商標)PHASER(登録商標)シアン固体インクについて、同じ特性を測定した。すべてのインクの粘度を、一定の頻度1Hzで、Rheometrics RFS3装置にPeltier温度制御ユニット、25mm平行板形状の器具を取り付け、ギャップ0.2mm、歪みを200%加え、所定の温度範囲で、動的に単位センチポイズで測定した(しかし、インクは、歪みとは独立した粘度を有していた)。以下の表には、実施例1、2、3のインク、また、比較例のインク(XEROX(登録商標)PHASER(登録商標)シアン固体インク)の粘度データ、熱特性(融点、結晶化開始温度)およびインク硬度データを列挙している。
これらのインクを、150ライン/インチ(60ライン/cm)の1個のB型の楔形グラビア板を取り付け、この板の上に、3種類の100%−80%−60%密度領域を有するK−prooferグラビア印刷装置を用い、XEROX(登録商標)Digital Color Elite Glossコーティング紙(120gsmの束)に印刷した。グラビア板の温度を142℃に設定し(実際の板の温度は約135±1℃)、加圧ローラーを低圧に設定した。
データが示すように、本明細書に開示されているインクは、吐出温度130℃で9〜15センチポイズの望ましい粘度範囲を示し、一方、70〜105℃の範囲の中程度の温度では、非常にすばやく結晶化し、インクが固化すると非常に大きな粘度を有する(>10センチポイズ)。このインクは、70〜105℃の広い範囲に良好な結晶化開始温度を示し、典型的にはほぼ90℃を示していた。インクの吐出性を制御し、インクが紙に浸透する程度を制限し、過剰なインク透き通しを防ぐために、インクの結晶化開始温度が70℃よりも高いことが望ましい。また、インクの硬度データから、インク1〜3が、80を超える平均硬度値を有し、比較例のインク硬度値67よりも顕著に硬いことが示されている。インク硬度が高いこと、特に、75よりも大きいことは、インク堅牢性の指標のひとつである。
インク印刷物の画像堅牢度は、引っかき(または摩耗)テスターを用いて評価することができる。上のインクに対し、コインによる引っかき試験および丸い指状物による試験の2種類の異なる引っかき試験を行なった。コインによる引っかき試験は、面取りをした縁をもつ円形の器具(コイン端とも呼ばれる)を表面に対して動かした後、印刷したコーティングまたは画像からどれだけ多くのインクが除去されるかを評価する。この試験に使用する装置は、重さ100グラムの特注の「コイン」引っかき先端を備えるように改変したTaber Industries Linear Abraser(Model 5700)であり、試験印刷サンプルの上に下ろし、印刷表面を25回/分の頻度で3回または9回引っかいた。まず、フラットベッドスキャナを用い、引っかき傷の長さ方向に沿って走査し、次いで、眼に見える紙基材の面積を、引っかいた領域にある元々のインク量と比較して計算するソフトウェアを用いて画像分析を行うことによって、2インチ長の引っかき傷を調べ、印刷サンプルからはずれたインク材料の量を特性決定する。
別の引っかき試験器具は、丸い指状のテスターと呼ばれ、インク印刷サンプル全体を引きずる3個の別個の鋭い指状の先端が備わった特注の装置である。3個の指状物に異なる力の負荷を加え、それぞれ、重い、中程度、軽い力の負荷と表示する。実施例のインクを用いて調製した印刷物には、中程度および重い負荷の丸い指状の器具のみを用いて引っかき試験を行ない、これらが応力試験条件であると考えられる。それぞれの丸い指状の先端について、一定速度で、印刷サンプルの長さ下方向に1回引っかいた。印刷サンプルのうち、引っかいた領域を調べ、上に記載したコイン引っかきテスターの場合と同じ様式で、印刷サンプルからはずれたインクまたはトナー材料の量を特性決定した。市販の画像分析ソフトウェアによって、ピクセル数をユニットレス測定CA(折り目のついた領域)に変換した。引っかいた領域の白い領域(すなわち、引っかき先端によってインクが基材からはずれた領域)を計測した。ピクセル数が多いことは、印刷物からはずれたインクが多いことと対応しており、損傷が大きいことを示す。まったく引っかかれていないインク印刷物は、材料がはずれておらず、したがって、ゼロに近い非常に低いピクセル数(およびCA)を有するだろう。
以下の表のデータは、コインおよび丸い指状物のテスターで作成した、K−Proofインク印刷物の引っかいた領域のCA値(ピクセル数に正比例する)を示す。引っかいた面積を画像分析するときの限界値によるある程度のデータの偏差は避けられないが、3種類の実施例のインクおよび比較例のインクについて示された相対的なCAデータは、明らかに、ポリテルペンおよびオキサゾリン成分から調製された3種類の実施例のインクが、すべて比較例のインクXEROX(登録商標)PHASERシアンインク)よりも顕著に優れた耐引っかき性を示すことを示している。

Claims (7)

  1. (a)結晶性オキサゾリン化合物と、
    (b)アモルファスポリテルペン樹脂とを含み、
    前記オキサゾリン化合物が、

    のいずれか、またはこれらのうちのいずれかの混合物である、転相インク。
  2. 前記オキサゾリン化合物が、インク中、インクの10〜90重量%の量で存在する、請求項1に記載の転相インク。
  3. 前記ポリテルペン樹脂が、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ノルボルネン、ミルセン、フェランドレン、カルボン、カンフェン、2−カレン、3−カレン、ペリリルアルコール、ペリリルアルデヒド、ペリル酸、ペリリルアルコールのアルキルエステル、ペリリルアルコールのアリールエステル、ペリリルアルコールのアリールアルキルエステル、ペリリルアルコールのアルキルアリールエステル、α−イオノン、β−イオノン、γ−テルピネン、β−シトロネレン、β−シトロネロール、シトロネラール、シトロネル酸、β−シトロネロールのアルキルエステル、β−シトロネロールのアリールエステル、β−シトロネロールのアリールアルキルエステル、β−シトロネロールのアルキルアリールエステル、ゲラニオール、ゲラニアール、ゲラニオールのアルキルエステル、ゲラニオールのアリールエステル、ゲラニオールのアリールアルキルエステル、ゲラニオールのアルキルアリールエステル、リナロール、リナロールのアルキルエステル、リナロールのアリールエステル、リナロールのアリールアルキルエステル、リナロールのアルキルアリールエステル、ネロリドール、ネロリドールのアルキルエステル、ネロリドールのアリールエステル、ネロリドールのアリールアルキルエステル、ネロリドールのアルキルアリールエステル、ベルベノール、ベルベノン、ベルベノールのアルキルエステル、ベルベノールのアリールエステル、ベルベノールのアリールアルキルエステル、または、ベルベノールのアルキルアリールエステルのホモポリマーまたはコポリマー、または前記ホモポリマーまたは前記コポリマーのブレンドした混合物を含む、請求項1に記載の転相インク。
  4. 前記ポリテルペン樹脂が、α−ピネン/β−ピネンコポリマー、β−ピネンポリマー、リモネンポリマー、またはこれらの混合物である、請求項1に記載の転相インク。
  5. 前記ポリテルペン樹脂が、インク中、インクの5〜50重量%の量で存在する、請求項1に記載の転相インク。
  6. 25℃で測定された硬度値が少なくとも70である、請求項1に記載の転相インク。
  7. DSCによって測定した場合、ピーク融点が60〜120℃である、請求項1に記載の転相インク。
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