JP5851584B2 - 固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物、固体電解質二次電池および電池パック - Google Patents

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Description

本実施形態は、リチウムイオン伝導性酸化物、固体電解質二次電池および電池パックに係わる。
一般的なリチウムイオン二次電池は、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車などの車載用電源や、電力貯蔵用などの定置用電源など大型機器への応用が検討されている。
大型機器へ応用する際、電池の安全性を高めることが重要となる。一般的なリチウム二次電池は非水電解液を使用しているため、液漏れやガス化などの懸念がある。
このようなことから、特開2010−102929号公報には固体電解質を用いることが記載されている。固体電解質の中でも酸化物固体電解質は硫化物固体電解質と比較して水分との反応性が低いため、工業生産上取り扱い易い。
しかしながら、酸化物固体電解質はリチウムイオン伝導性が低いこと、および固体電解質と正極または負極との界面では接触抵抗が大きいことが課題となっている。特に、酸化物固体電解質では粒界抵抗が大きい課題を有する。
本実施形態は、リチウムイオン伝導性が高いリチウムイオン伝導性酸化物を提供することを目的とする。
本実施形態は、リチウムイオン伝導性酸化物を含む固体電解質層を備え、大電流での入出力特性に優れた固体電解質二次電池およびこの二次電池を組込んだ電池パックを提供することを目的とする。
本実施形態の第1側面によると、ペロブスカイト型構造を有し、式 Li3xLa2/3-xTiO3(0<x<2/3)で表される、固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物であって、
B,NおよびSの元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1質量%以下である固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物が提供される。
本実施形態の第2側面によると、ガーネット型構造を有し、式 Li5+xLa32-xZrx12(Mは、Nb,Taのうち少なくとも1つ、xは0≦x≦2である)で表される、固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物であって、
B,N,FおよびSの元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1質量%以下である固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物が提供される。
本実施形態の第3側面によると、正極と、負極と、固体電解質層とを備える固体電解質二次電池であって、
前記固体電解質層は、前記第1側面または前記2側面に記載のリチウムイオン伝導性酸化物を含有する固体電解質二次電池が提供される。
本実施形態の第側面によると、前記第3側面の固体電解質二次電池を備える電池パックが提供される。
図1は、実施形態に係る扁平型の固体電解質二次電池の断面図である。 図2は、図1のA部の拡大断面図である。 図3は、実施形態に係る電池パックの分解斜視図である。 図4は、図3の電池パックの電気回路を示すブロック図である。
以下、実施形態に係るリチウムイオン伝導性酸化物、固体電解質二次電池および電池パックを詳細に説明する。
実施形態に係る第1のリチウムイオン伝導性酸化物は、B,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1質量%以下である。第2のリチウムイオン伝導性酸化物はHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下である。
ここで、「元素の総含有量」とは単独の元素の場合にはその元素の含有量、2つ以上の元素の場合にはそれら元素を合算した含有量、を意味する。
リチウムイオン伝導性酸化物は、例えばペロブスカイト型構造を有し、式 Li3xLa2/3-xTiO3(0<x<2/3)で表されるもの、ガーネット型構造を有し、式 Li5+xLa32-xZrx12(Mは、Nb,Taのうち少なくとも1つである)表されるものが挙げられる。リチウムイオン伝導性酸化物は、これ以外に、LISICON,LIPON,NASICONと呼ばれる酸化物を挙げることができる。
ペロブスカイト型構造を有するリチウムイオン伝導性酸化物の中でもLi0.35La0.55TiO3はイオン導電性の高いために好ましい。ガーネット型の酸化物は、Li5La3Nb212、Li5La3Ta212、Li7La3Zr212が好ましい。LISICONと呼ばれる酸化物は、Li14ZnGe416が好ましい。NASICONと呼ばれる酸化物は、Li1+xAlxTi2-x(PO43,Li1+xAlxGe2-x(PO43(0<x≦0.5)が好ましい。中でもLi1.5Al0.5Ge1.5(PO43はイオン導電率が高く、還元耐性が高いため好ましい。
第1のリチウムイオン伝導性酸化物に含有されるB、N、FおよびSの総含有量が0.05質量%以上1質量%以下の範囲を外れると、リチウムイオン伝導性を高くすることが困難になる。より好ましい前記元素の総含有量は、0.1質量%以上0.6質量%以下である。
第2のリチウムイオン伝導性酸化物に含有されるHおよびCの総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下の範囲を外れると、リチウムイオン伝導性を高くすることが困難になる。より好ましい前記元素の含有量は、0.05質量%以上0.1質量%以下である。
実施形態に係るリチウムイオン伝導性酸化物は、B,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1質量%以下であること、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であることによって、リチウムイオン伝導性を高めることができる。リチウムイオン伝導性酸化物は、粒界抵抗が大きいことが一般的に知られているが、前記元素を所定量含むことにより、粒界抵抗が小さくなる。詳細は定かではないが、前記元素がリチウムイオン伝導性酸化物粒子の粒界に存在することにより、リチウムイオン伝導性酸化物粒界でのリチウムイオンの動きがスムーズになるためと考えられる。
次に、実施形態に係る固体電解質二次電池を説明する。
固体電解質二次電池は、正極と、負極と、固体電解質層とを備える。固体電解質層は、B,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物を含有するか、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物を含有する。
以下に、固体電解質二次電池を構成する正極、負極および固体電解質層を詳述する。
1)正極
正極は、集電体と、この集電体の少なくとも一方の面に形成され、活物質を含む正極層と、を備える。
集電体は、例えばアルミニウム箔、またはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、CuおよびSiからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むアルミニウム合金箔を用いることができる。
活物質は、種々の酸化物を用いることができる。
酸化物の例は、リチウムコバルト複合酸化物(例えば、LixCoO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えば、LixNiO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えば、LiNi1-yCoy2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えば、LixMnyCo1-y2)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LiNi1-y-zCoyMnz2)、リチウムニッケルコバルトアルミ複合酸化物(例えば、LiNi1-y-zCoyAlz2)、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えば、LixMn24)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えば、LixMn2-yNiy4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えば、LixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4)、またはバナジウム酸化物(例えば、V25)を含む。前記x、y、zは、0<x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1であることが好ましい。
活物質は、前記化合物を単独または混合物の形態で用いることができる。
活物質は、高い正極電圧が得られることがより好ましい。このような例は、リチウムマンガン複合酸化物(LixMn24)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiy4)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNi1-yCoy2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1-y2)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLiNi1-y-zCoyMnz2)及びリチウムリン酸鉄(LixFePO4)が挙げられる。前記x、y、zは、0<x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1であることが好ましい。
活物質の粒径は、1μm以下であることが好ましい。粒径が1μm以下の活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能になる。
活物質の比表面積は、0.5m2/g以上30m2/g以下であることが好ましい。0.5m2/g以上の比表面積を有する活物質は、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保することが可能になる。30m2/g以下の比表面積を有する活物質は、工業生産の上で取り扱い易い。固体電解質二次電池の場合は、有機溶媒を用いた非水電解質二次電池と異なり、電極表面での電解質の分解反応は起こり難い。このため、比表面積の大きい活物質を用いた場合においても、電極界面での抵抗上昇が小さくなる。より好ましい活物質の比表面積は、5m2/g以上20m2/g以下である。
正極層には、活物質の他に導電剤、結着剤、B,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%であるリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物を含有してもよい。
導電剤は、集電性能を高め、かつ活物質と集電体との接触抵抗を低減する。導電剤の例は、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブのような炭素質物を含む。
結着剤は、活物質および導電剤と集電体とを結着させる。結着剤の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系ゴム、またはリチウム塩を含むポリエチレンオキサイドのようなリチウムイオン伝導性ポリマーを含む。
リチウムイオン伝導性酸化物は、正極層と固体電解質層の間におけるリチウムイオン伝導性を高める。
ペロブスカイト型構造を有するリチウムイオン伝導性酸化物を用いる場合には、活物質としてスピネル型リチウムマンガン複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物を用いることが好ましい。これは、熱処理でペロブスカイト型構造を有するリチウムイオン伝導性酸化物と活物質との接触性を向上させる際、不純物が生成し難いためである。例えばLi0.35La0.55TiO3のリチウムイオン伝導性酸化物に用いた場合、活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用いると、熱処理において不純物が生成し易くなる。
ガーネット型構造を有するリチウムイオン伝導性酸化物、例えばLi5LaTa212、Li7La3Zr212を用いる場合には、活物質としてリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物を用いることが好ましい。NASICON型構造を有するリチウムイオン伝導性酸化物、例えばLi1+xAlxGe2-x(PO43(0<x≦0.5)を用いる場合には、活物質としてオリビン型リチウムリン酸化合物を用いることが好ましい。
正極層中の活物質、導電剤、結着剤およびB,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%であるリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物は、それぞれ50質量%以上95質量%以下、2質量%以上30質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び10質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤は、2質量%以上の量にすることにより上述した効果を発揮することができる。導電剤は、30質量%以下の量にすることによりエネルギー密度と高い導電性を両立できる。結着剤は、2質量%以上の量にすることにより十分な正極強度が得られる。結着剤は、20質量%以下の量にすることにより、正極中の絶縁材料である結着剤の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。リチウムイオン伝導性酸化物は10質量%以上の量にすることにより、正極層中のリチウムイオン伝導性を向上できる。30質量%以下の量にすることによりエネルギー密度と高いリチウムイオン伝導性を両立できる。
正極は、例えば次のような方法により作製することができる。まず、活物質、導電剤、結着剤およびB,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%であるリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面または両面に塗布し、乾燥して、正極層を形成する。その後、プレスを施す。また、活物質、導電剤、結着剤およびB,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%であるリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物をペレット状に成型して正極層を形成し、この正極層を集電体の片面または両面に形成して正極を作製することができる。
2)負極
負極は、集電体と、この集電体の片面または両面に形成され、活物質を含む負極層と、を備える。
集電体は、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、または銅箔であることが望ましい。中でもアルミニウム箔またはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、CuおよびSiのような元素を含むアルミニウム合金箔から形成されることが好ましい。
活物質の例は、金属硫化物、金属酸化物、炭素、合金を含む。
金属硫化物は、例えばチタン硫化物、鉄硫化物が挙げられる。金属硫化物は、鉄硫化物が好ましい。
金属酸化物は、例えばチタン複合酸化物、ニオブ複合酸化物、シリコン複合酸化物、鉄酸化物が挙げられる。金属酸化物は、チタン複合酸化物が好ましく、より好ましくはスピネル型チタン酸リチウムである。
炭素は、例えばグラファイト、ハードカーボンが挙げられる。合金は、例えばLiとSi,Al、SnおよびInからなる群から選択される少なくとも1つの金属との合金が好ましい。
負極層は、活物質の他に、導電剤、結着剤、B,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物を含有してもよい。
導電剤は、集電性能を高め、かつ活物質と集電体との接触抵抗を低下させる。導電剤の例は、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノファイバー、またはカーボンナノチューブのような炭素質物を含む。
結着剤は、活物質および導電剤と集電体とを結着させる向上する。結着剤の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系ゴム、またはリチウム塩を含むポリエチレンオキサイドのようなリチウムイオン伝導性ポリマーを含む。
前記元素を所定量含むリチウムイオン伝導性酸化物は、負極層と固体電解質層間にてリチウムイオン伝導性を高める。リチウムイオン伝導性酸化物は、例えば前述した化合物を用いることができる。
活物質、導電剤、結着剤およびB,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物の配合比は、活物質50質量%以上96質量%以下、導電剤2質量%以上30質量%以下、結着剤2質量%以上30質量%以下、リチウムイオン伝導性酸化物10質量%以上30質量%以下の範囲にすることが好ましい。導電剤を2質量%未満にすると、負極層の集電性能が低下し、非水電解質電池の大電流特性が低下する恐れがある。また、結着剤を2質量%未満にすると、活物質層と集電体の結着性が低下し、サイクル特性が低下する恐れがある。一方、高容量化の観点から、導電剤、結着剤およびリチウムイオン伝導性酸化物はそれぞれ30質量%以下にすることが好ましい。
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、導電剤、結着剤およびB,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%であるリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面または両面に塗布し、乾燥して、負極層を形成する。その後、プレスを施す。また、活物質、導電剤、結着剤およびB,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%であるリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物をペレット状に成型して負極層を形成し、この負極層を集電体の片面または両面に形成して負極を作製することができる。
3)固体電解質層
固体電解質は、B,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%以下である第1のリチウムイオン伝導性酸化物を含有するか、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下である第2のリチウムイオン伝導性酸化物を含有する。
リチウムイオン伝導性酸化物は、例えばペロブスカイト型構造を有し、式 Li3xLa2/3-xTiO3(0<x<2/3)で表されるもの、ガーネット型構造を有し、式 Li5+xLa32-xZrx12(Mは、Nb,Taのうち少なくとも1つである)表されるものが挙げられる。リチウムイオン伝導性酸化物は、これ以外に、LISICON,LIPON,NASICONと呼ばれる酸化物を挙げることができる。
ペロブスカイト型構造を有するリチウムイオン伝導性酸化物の中でもLi0.35La0.55TiO3はイオン導電性の高いために好ましい。ガーネット型の酸化物は、Li5La3Nb212、Li5La3Ta212、Li7La3Zr212が好ましい。LISICONと呼ばれる酸化物は、Li14ZnGe416が好ましい。NASICONと呼ばれる酸化物は、Li1+xAlxTi2-x(PO43,Li1+xAlxGe2-x(PO43(0<x≦0.5)が好ましい。中でもLi1.5Al0.5Ge1.5(PO43はイオン導電率が高く、還元耐性が高いため好ましい。
第1のリチウムイオン伝導性酸化物に含有されるB、N、FおよびSの総含有量が0.05質量%以上1質量%以下の範囲を外れると、リチウムイオン伝導性を高くすることが困難になる。より好ましい前記元素の総含有量は、0.1質量%以上0.6質量%以下である。
第2のリチウムイオン伝導性酸化物に含有されるHおよびCの総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下の範囲を外れると、リチウムイオン伝導性を高くすることが困難になる。より好ましい前記元素の総含有量は、0.05質量%以上0.1質量%以下である。
なお、固体電解質層は前記第1のリチウムイオン伝導性酸化物および前記第2のリチウムイオン伝導性酸化物からなる群から選択されるリチウムイオン伝導性酸化物を複数含有してもよい。例えば、固体電解質層はFを所定量含むLi0.35La0.55TiO3とCおよびHを所定量含むLi5La3Ta212とを含んでもよいし、Bを所定量含むLi7La3Zr212とFを所定量含むLi1.5Al0.5Ge1.5(PO43とを含んでもよい。
固体電解質層は、正極層または負極層の上に塗布法などにより作製することができる。例えば、正極層上に固体電解質層を作製する場合、前記元素を所定量含むリチウムイオン伝導性酸化物と結着剤を溶媒に分散させてスラリーを調製した後、このスラリーを正極層上に塗布し、乾燥させて作製することができる。また、前記元素を所定量含むリチウムイオン伝導性酸化物を焼結させて固体電解質層を作製してもよい。
次に、実施形態に係る固体電解質二次電池を図1、図2を参照してより具体的に説明する。図1は、実施形態に係る扁平型の固体電解質二次電池の断面図、図2は図1のA部の拡大断面図を示す。なお、各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる箇所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
扁平状の捲回電極群1は、2枚の樹脂フィルムの間に金属層を介在したラミネートフィルムからなる袋状外装容器2内に収納されている。扁平状の捲回電極群1は、外側から負極3、固体電解質層4、正極5、固体電解質層4の順で積層した積層物を渦巻状に捲回し、プレス成型することにより形成される。
最外殻の負極3は、図2に示すように集電体3aの内面側の片面に活物質として含む負極層3bを形成した構成を有する。その他の負極3は、集電体3aの両面に負極層3bを形成して構成されている。負極層3bは活物質の他に導電剤、結着剤、前記B,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物を含有してもよい。
正極5は、集電体5aの両面に正極層3bを形成して構成されている。前記正極層5bは活物質の他に導電剤、結着剤、B,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1.0質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物を含有してもよい。固体電解質層4は、負極3の負極層3bと正極5の正極層5bの間に介在されている。
捲回電極群1の外周端近傍において、負極端子6は最外殻の負極3の集電体3aに接続され、正極端子7は内側の正極5の集電体5aに接続されている。これらの負極端子6および正極端子7は、袋状外装容器2の開口部から外部に延出されている。袋状外装容器2の開口部を負極端子6および正極端子7を挟んでヒートシールすることにより外装容器2内に捲回電極群1を完全密封している。
負極端子は、銅、ステンレス、アルミニウムなどを使用することができる。好ましくはアルミニウムであり、具体的には、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金、アルミニウムが挙げられる。接触抵抗を低減するために、集電体と同様の材料が好ましい。
正極端子は、リチウム金属に対する電位が3V以上5V以下で電気的安定性と導電性とを備える材料から形成することができる。具体的には、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金、アルミニウムが挙げられる。接触抵抗を低減するために、集電体と同様の材料が好ましい。
実施形態の固体電解質二次電池において、扁平型固体電解質二次電池を例に説明した。しかしながら、電池の形状は扁平型の他に、角型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型等のいずれであってもよい。また、固体電解質二次電池は携帯用電子機器等に積載される小型電池の他、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池であってもよい。
以上説明した固体電解質二次電池は、固体電解質層をB,N、FおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1質量%以下である第1のリチウムイオン伝導性酸化物、またはHおよびCから選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下である第2のリチウムイオン伝導性酸化物を含むことによって、前記リチウムイオン伝導性酸化物の高いリチウムイオン伝導性により大電流での入出力特性の向上を実現できる。
次に、実施形態に係る電池パックを詳細に説明する。
実施形態に係る電池パックは、固体電解質二次電池(単電池)を1個又は複数有する。複数の単電池を含む場合、各単電池は電気的に直列、または並列、または直列および並列に接続される。
このような電池パックを図3および図4を参照して詳細に説明する。単電池には、図1に示す扁平型の固体電解質二次電池を使用することができる。
前述した図1に示す扁平型固体電解質二次電池から構成される複数の単電池21は、外部に延出した負極端子6および正極端子7が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結することにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図4に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板24は、負極端子6および正極端子7が延出する単電池21側面と対向して配置されている。プリント配線基板24には、図4に示すようにサーミスタ25、保護回路26および外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、組電池23と対向する保護回路基板24の面には組電池23の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極端子7に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極端子6に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29,31は、プリント配線基板24に形成された配線32,33を通して保護回路26に接続されている。
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出し、その検出信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34aおよびマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ25の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21もしくは単電池21全体について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図3および図4の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35を接続し、これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
正極端子7および負極端子6が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
組電池23は、各保護シート36およびプリント配線基板24と共に収納容器37内に収納される。すなわち、収納容器37の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート36が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート36およびプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋38は、収納容器37の上面に取り付けられている。
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
図3、図4では単電池21を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続してもよい。組み上がった電池パックを直列、並列に接続することもできる。
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途は、大電流特性でのサイクル特性が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、車載用が好適である。
以下に実施例を説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に記述される実施例に限定されるものでない。
(実施例1)
酢酸リチウムと、酢酸ランタンと、チタニウムテトライソプロポキシドをLi:La:Tiがモル比0.35:0.55:1となるように水とプロパノール混合溶媒に溶解させる。溶媒を除去・乾燥させた後に得られたものを400℃、5時間の熱処理を施した。400℃での熱処理により有機物が除去される。得られたリチウムランタンチタン酸化物(Li0.35La0.55TiO3)とLiFとを重量比200:1の比率で混合した。得られたリチウムランタンチタン酸化物とLiFとの混合物をペレット状にし、1100℃にて12時間の熱処理を行ってFを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるFをICP分析した結果、Fが0.35質量%含むことを確認した。
(実施例2)
リチウムランタンチタン酸化物とLiFとを重量比500:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でFを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるFをICP分析した結果、Fが0.14質量%含むことを確認した。
(実施例3)
リチウムランタンチタン酸化物とLiFとを重量比80:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でFを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるFをICP分析した結果、Fが0.86質量%含むことを確認した。
(実施例4)
リチウムランタンチタン酸化物とLi2Sとを重量比200:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でSを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるSを有機元素分析した結果、Sが0.34質量%含むことを確認した。
(実施例5)
リチウムランタンチタン酸化物とLi2Sとを重量比500:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でSを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるSを有機元素分析した結果、Sが0.13質量%含むことを確認した。
(実施例6)
リチウムランタンチタン酸化物とLi2Sとを重量比80:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でSを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるSを有機元素分析した結果、Sが0.84質量%含むことを確認した。
(実施例7)
リチウムランタンチタン酸化物とLi3Nとを重量比200:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でNを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるNを有機元素分析した結果、Nが0.18質量%含むことを確認した。
(実施例8)
リチウムランタンチタン酸化物とLi3Nとを重量比400:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でNを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるNを有機元素分析した結果、Nが0.09質量%含むことを確認した。
(実施例9)
リチウムランタンチタン酸化物とLi3Nとを重量比50:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でNを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるNを有機元素分析した結果、Nが0.70質量%含むことを確認した。
(実施例10)
リチウムランタンチタン酸化物とLiBO2とを重量比50:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でBを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるBを有機元素分析した結果、Bが0.33質量%含むことを確認した。
(実施例11)
リチウムランタンチタン酸化物とLiBO2とを重量比200:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でBを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるBを有機元素分析した結果、Bが0.09質量%含むことを確認した。
(実施例12)
リチウムランタンチタン酸化物とLiBO2とを重量比25:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でBを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるBを有機元素分析した結果、Bが0.65質量%含むことを確認した。
(実施例13)
酢酸リチウムと、酢酸ランタンと、チタニウムテトライソプロポキシドをLi:La:Tiがモル比0.35:0.55:1となるように水とプロパノール混合溶媒に溶解させる。溶媒を除去、乾燥させた後に得られたものを400℃、5時間の熱処理を施し、リチウムランタンチタン酸化物を得た。得られたリチウムランタンチタン酸化物(Li0.35La0.55TiO3)にボールミル処理を施した。すなわち、ジルコニア容器にリチウムランタンチタン酸化物とジルコニアボール(直径1mm)と、エタノールを体積比で1:1:1となるように入れ、500rpmにて1時間のボールミル処理を行った。ボールミル処理後のリチウムランタンチタン酸化物をペレット状にし、1100℃にて12時間の熱処理を行ってHおよびCを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるHおよびCを有機元素分析した結果、HおよびCがそれぞれ0.05質量%、0.08質量%含むことを確認した。
(比較例1)
LiFを加えない以外、実施例1と同様な方法でリチウムイオン伝導性酸化物(Li0.35La0.55TiO3)のペレットを得た。
(比較例2)
リチウムランタンチタン酸化物とLiFとを重量比50:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でFを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるFをICP分析した結果、Fが1.43質量%含むことを確認した。
(比較例3)
リチウムランタンチタン酸化物とLiFとを重量比2000:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でFを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるFをICP分析した結果、Fが0.03質量%含むことを確認した。
(比較例4)
リチウムランタンチタン酸化物とLi2Sとを重量比1500:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でSを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるSを有機元素分析した結果、Sが0.04質量%含むことを確認した。
(比較例5)
リチウムランタンチタン酸化物とLi2Sとを重量比40:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でSを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるSを有機元素分析した結果、Sが1.62質量%含むことを確認した。
(比較例6)
リチウムランタンチタン酸化物とLi3Nとを重量比1600:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でNを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるNを有機元素分析した結果、Nが0.02質量%含むことを確認した。
(比較例7)
リチウムランタンチタン酸化物とLi3Nとを重量比20:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でNを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるNを有機元素分析した結果、Nが1.73質量%含むことを確認した。
(比較例8)
リチウムランタンチタン酸化物とLiBO2とを重量比1000:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でBを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるBを有機元素分析した結果、Bが0.01質量%含むことを確認した。
(比較例9)
リチウムランタンチタン酸化物とLiBO2とを重量比10:1で混合した以外、実施例1と同様な方法でBを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるBを有機元素分析した結果、Bが1.59質量%含むことを確認した。
(比較例10)
リチウムランタンチタン酸化物とジルコニアボール(直径1mm)と、エタノールを体積比で1:1:5となるように入れ、500rpmにて1時間のボールミル処理を行った以外、実施例13と同様な方法でHおよびCを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるHおよびCを有機元素分析した結果、HおよびCがそれぞれ0.13質量%、0.19質量%含むことを確認した。
得られた実施例1〜13および比較例1〜10のペレットの両面にスパッタリングにより金を施し、電子導電パスを形成し、交流インピーダンス測定法にて25℃でのイオン導電率を算出した。この算出にあたっては、前記測定で高周波数側には結晶バルクのイオン伝導に起因する円弧が観察され、低周波数側には結晶粒界抵抗に起因される円弧が観察されたため、これら全体のイオン導電率として求めた。
実施例1〜13および比較例1〜10で得られたペレットのイオン導電率を下記表1、表2に示す。
Figure 0005851584
Figure 0005851584
前記表1、表2から明らかなようにB,N,F,Sの元素を0.05質量%以上1質量%以下含む実施例1〜12のペロブスカイト型構造を有するリチウム伝導性酸化物(Li0.35La0.55TiO3)は、前記元素を含まないか、含んでも前記範囲を外れる比較例1〜9のリチウムイオン伝導性酸化物に比べてイオン伝導性が向上されることがわかる。
またH、Cを0.03質量%以上0.2質量%以下含む実施例13のペロブスカイト型構造を有するリチウム伝導性酸化物(Li0.35La0.55TiO3)は、前記元素を含まないか、含んでも前記範囲を外れる比較例1および10のリチウムイオン伝導性酸化物に比べてイオン伝導性が向上されることがわかる。
(実施例14)
炭酸リチウムと、水酸化ランタンと、酸化ニオブをLi:La:Nbがモル比5:3:2となるように混合し、900℃、24時間の熱処理を施した。熱処理によりリチウムランタンニオブ酸化物(Li5La3Nb212)を得た。つづいて、リチウムイオン伝導性酸化物とLiFを重量比300:1の比率で混合し、ペレット状にし、900℃にて12時間の熱処理を行ってFを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるFをICP分析した結果、Fが0.24質量%含むことを確認した。
(実施例15)
リチウムランタンニオブ酸化物とLiFを重量比600:1の比率で混合した以外、実施例14と同様な方法でFを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるFをICP分析した結果、Fが0.09質量%含むことを確認した。
(実施例16)
リチウムランタンニオブ酸化物とLiFを重量比100:1の比率で混合した以外、実施例14と同様な方法でFを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるFをICP分析した結果、Fが0.69質量%含むことを確認した。
(実施例17)
リチウムランタンニオブ酸化物とLiBO2を重量比200:1で混合した以外、実施例6と同様な方法でBを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるBをICP分析した結果、Bが0.44質量%含むことを確認した。
(実施例18)
リチウムランタンニオブ酸化物とLiBO2を重量比600:1で混合した以外、実施例6と同様な方法でBを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるBをICP分析した結果、Bが0.11質量%含むことを確認した。
(実施例19)
リチウムランタンニオブ酸化物とLiBO2を重量比100:1で混合した以外、実施例6と同様な方法でBを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるBをICP分析した結果、Bが0.81質量%含むことを確認した。
(比較例11)
炭酸リチウムと、水酸化ランタンと、酸化ニオブをLi:La:Nbがモル比5:3:2となるように混合し、900℃、24時間の熱処理を施した。この熱処理によりリチウムランタンニオブ酸化物(Li5La3Nb212)を得た。このリチウムランタンチタンニオブ酸化物をペレット状にし、900℃にて12時間の熱処理を行ってリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
(比較例12)
リチウムランタンニオブ酸化物とLiFを重量比40:1で混合した以外、実施例6と同様な方法でFを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるFをICP分析した結果、Fが1.75質量%含むことを確認した。
(比較例13)
リチウムランタンニオブ酸化物とLiFを重量比2000:1で混合した以外、実施例6と同様な方法でFを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるFをICP分析した結果、Fが0.03質量%含むことを確認した。
(比較例14)
リチウムランタンニオブ酸化物とLiBO2を重量比50:1で混合した以外、実施例6と同様な方法でBを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるBをICP分析した結果、Bが1.55質量%含むことを確認した。
(比較例15)
リチウムランタンニオブ酸化物とLiBO2を重量比1500:1で混合した以外、実施例6と同様な方法でBを含むリチウムイオン伝導性酸化物のペレットを得た。
得られたリチウムイオン伝導性酸化物のペレットに含まれるBをICP分析した結果、Bが0.03質量%含むことを確認した。
得られた実施例14〜19および比較例11〜15のペレットの両面にスパッタリングにより金を施し、電子導電パスを形成し、交流インピーダンス測定法にて25℃でのイオン導電率を算出した。この算出にあたっては、前記測定で高周波数側には結晶バルクのイオン伝導に起因する円弧が観察され、低周波数側には結晶粒界抵抗に起因される円弧が観察されたため、これら全体のイオン導電率として求めた。
実施例14〜19および比較例11〜15で得られたペレットのイオン導電率を下記表3に示す。
Figure 0005851584
前記表3から明らかなようにB,Fの元素を0.05質量%以上1質量%以下含む実施例14〜19のガーネット型構造を有するリチウムイオン伝導性酸化物(Li5La3Nb212)は、前記元素を含まないか、含んでも前記範囲を外れる比較例11〜15のリチウムイオン伝導性酸化物に比べてイオン伝導性が向上されることがわかる。
(実施例20)
<正極の作製>
まず、LiCoO2とアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンと実施例14で得たFを含むLi5La3Nb212とを50:15:10:25の質量比率で混合した。この混合物をN−メチル−2−ピロリドン溶媒中で混合してスラリーを調製した。このスラリーをアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した後、乾燥し、プレスすることにより、厚さ40μm、密度3.0g/cm3の正極層を有する正極を作製した。
<負極の作製>
まず、Li4Ti512とアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンと実施例14で得たFを含むLi5La3Nb212とを60:10:10:20の質量比率で混合した。この混合物をN−メチル−2−ピロリドン溶媒中で混合してスラリーを調製した。このスラリーをアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した後、乾燥し、プレスすることにより、厚さ36μm、密度2.4g/cm3の負極層を有する負極を作製した。
<固体電解質層の作製>
実施例14で得たFを含むLi5La3Nb212とポリフッ化ビニリデンとを98:2の重量比率でN−メチル−2−ピロリドン溶媒中で混合し、スラリーを調製した。このスラリーを前記正極の正極層上に塗布し、乾燥させた。乾燥後、加温プレスを施すことにより正極層上に固体電解質層を作製した。なお、固体電解質層の厚さは25μmとなるように調整した。
前記正極の固体電解質層上に負極の負極層を重ねた後、80℃で加熱プレスすることにより積層電極群を作製した。このとき、正極と固体電解質層の面積を、負極よりも大きくした。得られた積層電極群をナイロン層/アルミニウム層/ポリエチレン層の3層構造で、厚さが0.1mmのラミネートフィルムからなるパック(外装容器)に収納し、80℃で24時間真空乾燥を施した。その後、パックをヒートシールにより完全密閉して固体電解質二次電池を製造した。
(実施例21)
<正極の作製>
まず、LiFePO4とアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンとFを0.06質量%含むLi1.5Al0.5Ge1.5(PO43とを50:15:10:25の重量比率でN−メチル−2−ピロリドン溶媒中で混合し、スラリーを調製した。このスラリーをアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した後、乾燥し、プレスすることにより、厚さ32μm、密度2.0g/cm3の正極層を有する正極を作製した。
<負極の作製>
まず、Li4Ti512とアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンとFを0.06質量%含むLi1.5Al0.5Ge1.5(PO43とを60:10:10:20の質量比率でN−メチル−2−ピロリドン溶媒中で混合してスラリーを調製した。このスラリーをアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した後、乾燥し、プレスすることにより、厚さ27μm、密度2.4g/cm3の負極層を有する負極を作製した。
<固体電解質層の作製>
Fを0.06質量%含むLi1.5Al0.5Ge1.5(PO43とポリフッ化ビニリデンとを98:2の重量比率でN−メチル−2−ピロリドン溶媒中で混合し、スラリーを調製した。このスラリーを前記正極の正極層上に塗布し、乾燥させた。乾燥後、加温プレスを施すことにより正極層上に固体電解質層を作製した。なお、固体電解質層の厚さは25μmとなるように調整した。
前記正極の固体電解質層上に負極の負極層を重ねた後、80℃で加熱プレスすることにより積層電極群を作製した。このとき、正極と固体電解質層の面積を、負極の面積よりも大きくした。得られた積層電極群をナイロン層/アルミニウム層/ポリエチレン層の3層構造で、厚さが0.1mmのラミネートフィルムからなるパック(外装容器)に収納し、80℃で24時間真空乾燥を施した。その後、パックをヒートシールにより完全密閉して固体電解質二次電池を製造した。
(比較例16)
固体電解質として比較例12で得たFが1.75質量%含むリチウムランタンニオブ酸化物(リチウムイオン伝導性酸化物)を用いた以外、実施例20と同様方法で固体電解質二次電池を製造した。
得られた実施例20および比較例16の固体電解質二次電池を45℃環境下において、次の条件で充放電試験を行った。0.1Cレートの定電流において、2.8Vまで充電し、その後、2.8Vにて定電圧充電を行った。充電時間は15時間とした。放電は電流レートを変化させて測定を行った。0.1Cおよび0.5Cレートの定電流において1.5Vまで行った。
また、実施例21の固体電解質二次電池は充電電圧を2.5Vとした以外、同様の方法で充放電試験を行った。
このような充放電試験において、0.1Cでの放電容量に対する0.5Cでの放電容量の比率[(0.5C放電容量/0.1C放電容量)×100(%)]を求めた。その結果を下記表4に示す。
Figure 0005851584
前記表4から明らかなようにFを0.05質量%以上1質量%以下含むリチウムイオン伝導性酸化物からなる固体電解質層を備えた実施例20,21の固体電解質二次電池は、Fの含有量が前記範囲を外れるリチウムイオン伝導性酸化物からなる固体電解質層を備えた比較例16の固体電解質二次電池に比べて0.1Cでの放電容量に対する0.5Cでの放電容量の比率が高いことがわかる。
本発明のいつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の種々の形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記するします。
[1]B,N、FおよびSの元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物。
[2]前記元素のうち少なくとも1つがリチウムイオン伝導性酸化物の粒界に存在する[1]に記載のリチウムイオン伝導性酸化物。
[3]HおよびCの元素から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.03質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物
[4]前記リチウムイオン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型構造を有し、式 Li 3x La 2/3-x TiO 3 (0<x<2/3)で表される[1]乃至[3]いずれか記載のリチウムイオン伝導性酸化物。
[5]前記リチウムイオン伝導性酸化物は、ガーネット型構造を有し、式 Li 5+x La 3 2-x Zr x 12 (Mは、Nb,Taのうち少なくとも1つである)で表される[1]乃至[3]いずれか項記載のリチウムイオン伝導性酸化物。
[6]正極と、負極と、固体電解質層とを備える固体電解質二次電池であって、
前記固体電解質層は、B,N、FおよびSの元素からなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物を含有する固体電解質二次電池。
[7]正極と、負極と、固体電解質層とを備える固体電解質二次電池であって、
前記固体電解質層は、HおよびCの元素から選択される少なくとも1つを含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上0.2質量%以下であるリチウムイオン伝導性酸化物を含有する固体電解質二次電池。
[8]前記負極の活物質は、チタン複合酸化物である[6]または[7]に記載の固体電解質二次電池。
[9][6]乃至[8]いずれか記載の固体電解質二次電池を含む電池パック。

Claims (7)

  1. ペロブスカイト型構造を有し、式 Li3xLa2/3-xTiO3(0<x<2/3)で表される、固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物であって、
    B,NおよびSの元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1質量%以下である固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物。
  2. ガーネット型構造を有し、式 Li5+xLa32-xZrx12(Mは、Nb,Taのうち少なくとも1つ、xは0≦x≦2である)で表される、固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物であって、
    B,N,FおよびSの元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、前記元素の総含有量が0.05質量%以上1質量%以下である固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物。
  3. 前記元素のうち少なくとも1つがリチウムイオン伝導性酸化物の粒界に存在する請求項1または2記載の固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物。
  4. 前記リチウムイオン伝導性酸化物は、ガーネット型構造を有するLi5La3Nb212、Li5La3Ta212、Li7La3Zr212である請求項2記載の固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物。
  5. 正極と、負極と、固体電解質層とを備える固体電解質二次電池であって、
    前記固体電解質層は、請求項1ないし4いずれか1項記載の固体電解質二次電池用リチウムイオン伝導性酸化物を含有する固体電解質二次電池。
  6. 前記負極の活物質は、チタン複合酸化物である請求項5記載の固体電解質二次電池。
  7. 請求項5または6記載の固体電解質二次電池を含む電池パック。
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