本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。例えば、表層原料に高機能化されたポリエステルフィルムを用いて、効果的に各種の特性の向上を図る目的で、表層と中間層の原料を変えて、3層構成にすることも可能である。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。この中でも、チタン化合物やゲルマニウム化合物は触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能であり、フィルム中に残留する金属量が少ないことから、フィルムの輝度が高くなるため好ましい。さらに、ゲルマニウム化合物は高価であることから、チタン化合物を用いることがより好ましい。
本発明においては、熱処理後のエステル環状三量体の析出量を抑えるために、エステル環状三量体の含有量が少ないポリエステルを使用することも可能である。エステル環状三量体の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、ポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能であるが、透明性の観点から粒子を配合しないものであることも可能である。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
また、粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01〜3μm、より好ましくは0.05〜2μmの範囲である。平均粒径が5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、透明性の悪化等の原因になる。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常5重量%未満、好ましくは0.0003〜3重量%の範囲である。粒子が無い場合、あるいは少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、良好なフィルムとなるが、滑り性が不十分となる場合があるため、塗布層中に粒子を入れることにより、滑り性を向上させる等の工夫が必要な場合がある。また、粒子含有量が5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
本発明のポリエステルフィルム中にはフィルムの耐候性の向上、例えば、タッチパネル等に用いられる液晶ディスプレイの液晶等の劣化防止のために、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子や紫外線吸収剤以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜300μm、好ましくは20〜250μmの範囲である。
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する場合、まず先に述べたポリエステル原料を押出機を用いて、ダイから溶融押し出しし、溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に、通常70〜170℃で、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍で延伸する。引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る方法が挙げられる。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸フィルム、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸を行う場合、本発明における好ましい例としては、未延伸フィルムにアンモニウム基を有する化合物を含有する塗布液から形成された塗布層を形成し、次に長手方向(縦方向)に延伸し、一軸延伸フィルムとし、その上に不揮発成分に対して30重量%以上の架橋剤を含有する塗布液を塗布した後に横方向に延伸する方法がある。かかる方法によれば、製膜と塗布層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、延伸前にフィルム上に塗布層を設けることにより、塗布層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより塗布層を基材フィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、塗布層と基材フィルムをより強固に密着させることができる。
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アンモニウム基を有する化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(以下、第1塗布層と略記することがある)を有し、さらに当該塗布層上に不揮発成分に対して30重量%以上の架橋剤を含有する塗布液から形成された塗布層(以下、第2塗布層と略記することがある)を有することを必須の要件とするものである。
本発明の塗布層は、熱処理により、ポリエステルフィルム中に存在するエステル環状三量体がフィルム表面に析出するのを防止するために設けるものである。第1塗布層あるいは第2塗布層のみでも、塗布層の組成によっては良好なエステル環状三量体の析出防止性能を有するフィルムを作成することができる。しかし、今般の透明導電層のより低抵抗化を目指す流れの中で行われる、より高温で長時間の熱処理(例えば、180℃で1時間以上)においても、極度にエステル環状三量体が析出しないような設計にすることは、単一の塗布層では実現が困難であった。
ところが、種々検討の結果、アンモニウム基を有する化合物を含有する塗布液から形成された第1塗布層および不揮発成分に対して30重量%以上の架橋剤を含有する塗布液から形成された第2塗布層の2層塗布層構成にすることにより、高度にエステル環状三量体の析出防止性能を向上させることができることを見出した。
本発明の第1塗布層の形成に用いられるアンモニウム基を有する化合物とは、分子内にアンモニウム基を有する化合物であり、脂肪族アミン、脂環族アミンや芳香族アミンのアンモニウム化物等が挙げられる。アンモニウム基を有する化合物は高分子化合物であることが好ましく、例えば、付加重合性のアンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体を含有するモノマーを重合した重合体からアンモニウム基を有する高分子化合物とするものが挙げられ、好適に用いられる。重合体としては、付加重合性のアンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体を含有するモノマーを単独で重合しても良いし、これらを含有するモノマーと他のモノマーとの共重合体であっても良い。
アンモニウム基を有する化合物の重合体の具体的な例としては、下記に限定するものではないが、例えば、下記式(1)または下記式(2)で示される構成要素を含有する重合体が挙げられる。単独の重合体や共重合体、さらには、その他の複数の成分を共重合していても良い。
上記式(1)中、R2は−O− 、−NH−または−S−、R3はアルキレン基、または式(1)の構造を成立しうるその他の構造、R1、R4、R5、R6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ基、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲンである。
上記式(2)中、R1、R2はそれぞれ独立してアルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ基、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲンである。また、R1およびR2は化学的に結合していてもよく、例えば、−(CH2)m−(m=2〜5の整数)、−CH(CH3)CH(CH3)−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=N−、−CH=CH−N=C−、−CH2OCH2−、−(CH2)2O(CH2)2−などが挙げられる。
上記式(1)および(2)中のX−は本発明の要旨を損なわない範囲で適宜選択することができる。例えば、アルキル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、ハロゲンイオン、ホスファート、ニトラート、カルボキシラート等が挙げられる。
式1で示される構成要素を持つ重合体は、得られる塗布層の透明性に優れ好ましい。た耐熱性や環境面を考慮すると、X−はハロゲンでないことが好ましい。
式2で示される構成要素や、その他のアンモニウム塩基が高分子主骨格内にある化合物は、耐熱性に優れており好ましい。
また、アンモニウム基を有する化合物の数平均分子量は1000〜500000、好ましくは2000〜350000、さらに好ましくは5000〜200000である。分子量が1000未満の場合は塗膜の強度が弱くなる場合や、耐熱安定性が劣る場合がある。また分子量が500000を超える場合は、塗布液の粘度が高くなり、取扱い性や塗布性が悪化する場合がある。
上述したアンモニウム基を有する化合物を第1塗布層の形成に用いるメリットとしては、熱処理によるエステル環状三量体のフィルム表面への析出量が抑えられること以外に、使用する方法によっては、帯電防止性能も付与することができ、塵埃防止性に優れたより高性能なフィルムとすることも可能である。
また、第1塗布層の形成において、塗布外観の向上や透明性の向上、各種の層との密着性を向上させるために、ポリマーを併用することも可能である。ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。第1塗布層において好ましいポリマーとしては、熱処理によるエステル環状三量体のフィルム表面への析出量が抑えられることから、ポリビニルアルコールやアクリル樹脂が好適に用いられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。また、塗布性や密着性の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好適に使用されるが、塗布層の組成によっては、熱処理によるエステル環状三量体のフィルム表面への析出量が多くなる場合もあるため注意した取り進めが必要である。
第1塗布層を強固にするために架橋剤を併用することも可能である。架橋剤としては種々公知の架橋剤を使用することができるが、例えば、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、アジリジン化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これら架橋剤の中でも特に、熱処理によるエステル環状三量体のフィルム表面への析出量が抑えられることから、メラミン化合物が好適に用いられる。
さらに、熱処理によるエステル環状三量体のフィルム表面への析出量を効果的に抑えられることから、第1塗布層の形成には、多価アルデヒド系化合物を併用することも可能である。
多価アルデヒド系化合物とは、1分子内に2つ以上のアルデヒド基、またはアルデヒド基から誘導される官能基を有する化合物のことであり、例えば、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、シクロヘキサンジアルデヒド、トリシクロデカンジアルデヒド、ノルボルナンジアルデヒド、スベルアルデヒド等の多価アルデヒド化合物や、それらのアルデヒド基が反応して(保護されて)アセタール化した化合物、チオアセタール化した化合物、シリルエーテル化した化合物、イミン、イミニウム塩やエナミン等の窒素化した化合物等が挙げられる。
多価アルデヒド系化合物は不安定な場合があり、アルデヒド基を反応させた(保護した)形態で用いることが好ましい。コーティングする場合における安定性や反応性を考慮して、水酸基含有化合物と反応させた形態、特に多価アルコール化合物が好ましく、その中でもアルデヒド基と反応したときに環状構造を形成するタイプがより好ましい。
多価アルコール化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン等の多価アルコール類、グルコースやガラクトース等の糖類等が挙げられ、その中でも塗布性を考慮すると糖類が好ましい。
また、多価アルデヒド系化合物としては、塗布層の強度や塗布外観を考慮すると、脂肪族多価アルデヒド化合物、またはその誘導体が好ましく、その中でも特に分子量のわりにアルデヒド官能基量が多くなるグリオキサールがより好ましい。
本発明の第2塗布層の形成に用いられる架橋剤とは、種々公知の架橋剤を使用することができるが、例えば、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、アジリジン化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これらの中でもより高度にエステル環状三量体の析出防止性能を向上させることができるという点において、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド系化合物を使用することが好ましく、特にメラミン化合物が好ましい。また、これら架橋剤はいずれか1種を使用しても良いし、2種類以上の架橋剤を併用することも可能である。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エステル環状三量体の析出防止の観点から、より多くの水酸基等の架橋性反応基を有することが好ましく、4つ以上有することがより好ましい。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
オキサゾリン化合物に含有されるオキサゾリン基の含有量は、オキサゾリン基量で、通常0.5〜10mmol/g、好ましくは1〜10mmol/g、より好ましくは3〜9mmol/g、さらに好ましくは5〜8mmol/gの範囲である。上記範囲での使用が、エステル環状三量体の析出防止に好ましい。
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
カルボジイミド系化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、塗布層上に形成され得る各種の表面機能層との密着性の向上や、塗布層の耐湿熱性の向上のために用いられるものである。カルボジイミド系化合物は、分子内にカルボジイミド、あるいはカルボジイミド誘導体構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
カルボジイミド系化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
さらに本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド系化合物の水溶性や水分散性を向上させるために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
カルボジイミド系化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、通常100〜1000、好ましくは250〜800、より好ましくは300〜700の範囲である。上記範囲での使用が、エステル環状三量体の析出防止に好ましい。
イソシアネート系化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等が例示される。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
ブロックイソシアネートの状態で使用する場合、そのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
また、本発明におけるイソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましい。
なお、これら架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
また、第2塗布層の形成において、第1塗布層の形成と同様に、塗布外観の向上や透明性の向上、各種の層との密着性を向上させるために、ポリマーを併用することも可能である。これらの中でも塗布性や密着性の観点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好適に使用される。ただし、塗布層の組成によっては、熱処理によるエステル環状三量体のフィルム表面への析出量が多くなる場合もあるため注意した取り進めが必要である。
また、第1塗布層および第2塗布層の形成にはブロッキング、滑り性改良を目的として粒子を併用することも可能である。その平均粒径はフィルムの透明性の観点から好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.2μm以下の範囲である。また、下限は滑り性をより効果的に向上させるために、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上の範囲である。粒子の具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機粒子等が挙げられる。その中でも塗布液の安定性や透明性の観点からシリカやアルミナ変性シリカが好ましい。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層の形成には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用することも可能である。
本発明のフィルムにおける第1塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、アンモニウム基を有する化合物は、通常10〜90重量%の範囲、好ましくは15〜80重量%の範囲、より好ましくは20〜60重量%の範囲である。上記範囲を外れる場合、エステル環状三量体の析出を防止する効果が小さくなる場合や、塗布外観が悪化する場合がある。
本発明のフィルムにおける第1塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、ポリビニルアルコールやアクリル樹脂は、通常90重量%以下の範囲、好ましくは5〜70重量%の範囲、より好ましくは10〜50重量%の範囲である。上記範囲での使用が、エステル環状三量体の析出防止に好ましい。
本発明のフィルムにおける第1塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、架橋剤は、通常90重量%以下の範囲、好ましくは5〜70重量%の範囲、より好ましくは10〜60重量%の範囲である。上記範囲での使用が、エステル環状三量体の析出防止に好ましい。特に、エステル環状三量体の析出防止の観点から、架橋剤としてメラミン化合物が10〜60重量%の範囲であることが好ましい。
本発明のフィルムにおける第1塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、多価アルデヒド系化合物は、通常50重量%以下の範囲、好ましくは2〜30重量%の範囲である。上記範囲での使用が、エステル環状三量体の析出防止に好ましい。
本発明のフィルムにおける第2塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、架橋剤は、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上の範囲である。架橋剤の量が多いほど、塗布層中の架橋度が向上し、より高度にエステル環状三量体の析出を防止することが可能となる。特に、ポリマーを使用せず、滑り性の付与等に使用する粒子等の少量成分を除いたすべての成分を架橋剤とすることで、性能を向上させやすい。また、架橋剤としては、メラミン化合物を使用することが最も好ましく、その量が70重量%以上の範囲がより効果的である。
塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の塗布量(乾燥・延伸後の最終フィルムとして)は、第1塗布層、第2塗布層それぞれで、通常0.001〜1g/m2の範囲、好ましくは0.01〜0.5g/m2の範囲、より好ましくは0.02〜0.2g/m2の範囲である。塗布量が上記範囲より外れる場合は、エステル環状三量体の析出防止性能が悪い場合、塗布層のブロッキングが悪化する場合や塗布外観が悪化する場合がある。
本発明のフィルムにおいて、塗布層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、例えば、タッチパネル用等、長時間、高温雰囲気下にさらされた後であっても、高度な透明性が要求される場合がある。かかる観点より、高度な透明性に対応するためには、熱処理(180℃、90分間)におけるフィルムヘーズ変化量(ΔHz)は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。ΔHzが1.0%を超える場合には、エステル環状三量体の析出によるフィルムヘーズ上昇に伴い、視認性が低下し、例えば、タッチパネル用等、高度な視認性が必要とされる用途に不適当となる場合がある。
また、エステル環状三量体の析出量の観点では、本発明における積層ポリエステルフィルムを熱処理(180℃、90分間)により、フィルム表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるエステル環状三量体量は、好ましくは1.0mg/m2以下であり、より好ましくは0.7mg/m2以下、さらに好ましくは0.5mg/m2以下である。1.0mg/m2を超える場合、後工程において、例えば、180℃、90分間等、高温雰囲気下で長時間の加熱処理に伴い、エステル環状三量体の析出量が多くなり、フィルムの透明性が低下する場合や、工程の汚染の懸念がある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)ヘーズの測定方法
株式会社村上色彩技術研究所製ヘーズメーター HM−150を使用して、JIS K 7136で測定した。
(3)加熱処理によるフィルムヘーズ上昇(ΔHz)の測定方法
本発明の(第2)塗布層が設けられた面とは反対側の面に紫光7600Bを100重量部(日本合成化学工業株式会社製)とIrgacure651を5重量部(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製)をメチルエチルケトンで濃度30重量%に希釈した塗布液を、硬化後の厚さが3μmになるように塗布し、80℃に設定した熱風乾燥式オーブンにて1分間乾燥させた。次いで、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約7秒間照射し、110mJ/cm2で硬化を行って、フィルム上に活性エネルギー線硬化樹脂層を設けた積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを、(第2)塗布層面がむき出しとなる状態でケント紙と重ねて固定し、窒素雰囲気下で、180℃で90分間放置して熱処理を行った。熱処理を行った積層フィルムを(2)の方法でヘーズを測定した(ヘーズ1)。活性エネルギー線硬化樹脂層を設ける前のフィルム(本発明の未処理の積層ポリエステルフィルム)を(2)の方法で測定したヘーズ(ヘーズ2)との差(ΔHz=(ヘーズ1)−(ヘーズ2))を求めた。ΔHzが低いほど、高温処理による比較的大きなサイズのエステル環状三量体の析出が少ないことを示し、良好である。
(4)(第2)塗布層表面に析出するエステル環状三量体(エチレンテレフタレート環状三量体)析出量の測定方法
ポリエステルフィルムを空気中、180℃で90分間加熱する。その後、熱処理をした当該フィルムを上部が開いている縦横10cm、高さ3cmになるように、測定面((第2)塗布層)を内面として箱形の形状を作成する。次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF(ジメチルホルムアミド)4mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収し、液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製:LC−7A 移動相A:アセトニトリル、移動相B:2%酢酸水溶液、カラム:三菱化学株式会社製「MCI GEL ODS 1HU」、カラム温度:40℃、流速:1ml/分、検出波長:254nm)に供給して、DMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m2)とした。DMF中のエステル環状三量体量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。なお、標準試料の作成は、予め分取したエステル環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、エチルアシッドフォスフェートを生成ポリエステルに対して30ppm、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して100ppmを窒素雰囲気下、260℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、テトラブチルチタネートを生成ポリエステルに対して50ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.3kPaまで減圧し、さらに80分、溶融重縮合させ、極限粘度0.63のポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して900ppmを窒素雰囲気下、225℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、正リン酸を生成ポリエステルに対して3500ppm、二酸化ゲルマニウムを生成ポリエステルに対して70ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.4kPaまで減圧し、さらに85分、溶融重縮合させ、極限粘度0.64のポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、溶融重合前に平均粒径1.6μmのシリカ粒子を0.2重量部添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。
各塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・アンモニウム基を含有する化合物:(I)下記組成の水分散体
2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/エチルメタクリレート=75/15/10(重量%)、対イオンがモノメチル硫酸イオンであり、数平均分子量が150000の共重合体。
・メラミン化合物:(IIA)ヘキサメトキシメチロールメラミン
・オキサゾリン化合物:(IIB)
オキサゾリン基含有アクリルポリマー エポクロス(登録商標)(オキサゾリン基量=7.7mmol/g、株式会社日本触媒製)
・エポキシ化合物:(IIC)ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
・ポリビニルアルコール:(IIIA)
ケン化度88mol%、重合度500のポリビニルアルコール
・アクリル樹脂:(IIIB)
エチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=88/10/1/1(重量%)の乳化重合体(乳化剤:ノニオン系界面活性剤)
・ポリエステル樹脂:(IIIC)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・多価アルデヒド系化合物:(IV)
グリオキサールに無水グルコースを反応させた多価アルデヒド系化合物。
・粒子:(VA)平均粒径0.07μmのシリカ粒子
・粒子:(VB)平均粒径0.02μmのアルミナ変性シリカ粒子
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)、(C)をそれぞれ87%、3%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸フィルムを得た。その後、下記表1に示す水系の塗布液A1を未延伸フィルムの片面に塗布、乾燥し、塗布量が(乾燥・延伸後の最終フィルムとして)、0.03g/m2となる第1塗布層を有するフィルムを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの第1塗布層側に、下記表1に示す水系の塗布液B1を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗布層の塗布量(乾燥・延伸後の最終フィルムとして)が、0.10g/m2となる第2塗布層を有する厚さ125μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、熱処理によるフィルムヘーズ上昇(ΔHz)は小さく、エステル環状三量体の析出量も少なく良好であった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
実施例2〜7:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは下記表2に示すとおり、熱処理によるヘーズ上昇は小さく、エステル環状三量体の析出量も少なく良好であった。
比較例1:
実施例1において、未延伸フィルムに第1塗布層および第2塗布層を設けないこと以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムを評価したところ、下記表2に示すとおり、熱処理によるヘーズ上昇は大きく、エステル環状三量体の析出量も多いものであり、視認性や工程汚染が懸念されるものであった。
比較例2〜5:
実施例1において、塗布剤組成を下記表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおり、熱処理によるヘーズ上昇が大きい場合や、エステル環状三量体の析出量が多い場合が見られた。