JP5851088B2 - 場所打ちコンクリートブロック用型枠と擁壁の構築工法 - Google Patents
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このようなコンクリートブロックを積み上げた擁壁の構築では、コンクリートD工場で製造したブロックを現場まで運搬し、作業のほとんどを人力に頼って積み上げてゆくものである。
<1> コンクリートブロックの重量は一般に50kg前後もあるので、一部に機械力を借りるとはいえ、人力を主力として積み上げて行くには過酷な労働であり、危険でもある。
<2> 擁壁の構築場所は平坦で直線状態の場所に限らず、地盤に高低差があり、湾曲している道路に沿った擁壁が少なくない。そのような変化に富んだ擁壁をコンクリートブロックで構築してゆくには熟練を要するが、石積み職人の減少、高齢化によって工事が困難になっている。
<3> 上記のような原因から工期が長期にわたり、その間は交通規制が行われるなど、周囲の住民への影響が大きい。
<4> 従来のコンクリート擁壁やブロック積み擁壁では、地震時の崩壊や二次災害の発生の問題がある。
また本願発明の構築方法は、上記のコンクリートブロック用型枠を使用し、型枠の背面には排水部材を設置し、型枠内へ天井金網または天井合成樹脂板の上面からコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に、その上に前記のコンクリートブロック用型枠を並べ、その内部にコンクリートを打設し、
上記の順序で構築してゆく、場所打ちコンクリートブロック擁壁の構築方法を特徴とするものである。
<1> 型枠の主要部が金網であるから、全体に軽量であり、足場の悪い斜面での作業でも運搬設置が容易であって危険性がない。
<2> 軽量な型枠を並べてその内部にコンクリートを打設するだけだから、石積み工のような特別な熟練工を必要とせず経済的である。
<3> 天井面も、最大骨材の寸法よりも大きい間隔の金網が配置してあるから、この天井金網も前面金網と背面金網との間を緊張するセパレータの役割を果たす。そのために打設したコンクリートの圧力による型枠の変形を阻止することができ、金網による型枠であるにも関わらず整然とした形状のコンクリートブロックを得ることができる。
<4> 従来から場所打ちコンクリートによる擁壁の構築方法は広く採用されているが、その工法では擁壁天端までの作業足場の組み立て、型枠間のセパレータの設置など多くの作業が必要となる。しかし本願発明の工法であれば、単純な矩形の型枠を順次並べて行くだけであるから、規模の大きい作業足場も不要であり、きわめて経済的である。
<5> 型枠の上下間に、地震時の衝撃を吸収するマットを敷設すれば、地震時に安全なコンクリート擁壁を提供することができる。
<6> 上記のような効果の結果、総合的に大幅に工期を短縮することができ、経済効果が大きい。
まず本発明の擁壁の構築に使用する場所打ちコンクリートブロック用型枠の構成を説明する。
型枠Aは直方体、立方体のような矩形の容器である。
型枠Aの骨組みは、アングル材のような鋼材、あるいは鉄筋や鋼線のような棒状体を枠材1として利用し、その枠材1を矩形に組み立てて構成する。
想定している型枠Aの寸法は、例えば横100cm、縦と奥行きが50cm程度の矩形であるが、その寸法に限定されるものではない。
骨組みを構成する枠材1は、相互に折り畳みが可能であるように構成すれば、ヤードでの積み上げ、トラックでの運搬、斜面への人力による担ぎあげなどが容易である。
この枠材1を骨組みとして矩形に形成したその前面、側面、底面、および背面に金網を取り付ける。
すなわち前面金網2、側面金網5、底面金網7、背面金網3である。
ここに「金網」とは、孔を開口した平面部材を言い、鋼線を織り込んだ金網、溶接金網、鉄板に切れ目を入れて引き延ばしたエキスパンドメタル、鋼板に多数の穴を打ち抜いた打ち抜き鋼板、開口した合成樹脂板などを含む意味である。
これらの金網は、コンクリートの打設後には解体する必要がなく、したがって型枠Aはいわゆる「埋め殺し型枠」として使用する。
想定している金網は、例えば網目が10cm程度の間隔の溶接金網であるが、その網目に限定されるものではない。
型枠Aの前面は、側面、裏面、上下面と異なり外側が開放状態である。
そこで、前面金網2の網目は、エキスパンドメタルを使用し、打設するコンクリートの骨材の最大径よりも小さい寸法、すなわち型枠Aの内部に打設したコンクリートのモルタル成分がにじみ出る程度の網目の金網を採用する。
あるいは後述する図4の実施例のように、開口の幅は骨材の最大径よりも大きい寸法であっても、コンクリートが露出はするが流出はしない形状のものを採用する。
さらに前面金網2は、擁壁の外観を構成することになる。
そこで平面的な金網ではなく、金網の多少の凹凸を形成した変形金網を採用することができる。
あえて凹凸を形成した変形金網は、「デコメッシュ」などの商標で知られている。
前面金網2として、図4に示すような、鋼製の矩形の平板に、コンクリートを保持可能な開口部21を複数設け、多孔性の板体に形成したものを採用することができる。
この金網の開口部21は、傾斜部23及び連結部22で包囲する。
傾斜部23は、平板から外側へ張り出し、かつ上方にゆくに従って次第に平板から距離が離れるように傾斜させて形成した部分である。
連結部22は、これらの隣接する傾斜部23群を前後にずらしてそれぞれ連結する部分である。
このような傾斜部23及び連結部22により包囲した開口部21を、外向きの受け口状かつ多段的に開口すると、型枠Aの内部に打設したコンクリートが開口部21に露出してくるが、しかし流出することがない。
したがって開口部21は外向きの受け口状に配置することが大切であって、下向きに配置してはコンクリートが流出してしまう。
ここで「受け口状」とは開口部21の下側の縁が開口部21の上の縁よりも外側に出ている状態を意味している。
このような形状の開口部21は、鋼板に同一方向の多数のスリットを入れて伸ばした後、傾斜部23をプレスして起こして作製することができる。
また、平板にプレス加工等により表面になだらかな凹部と凸部とを設けて、自然石様な形態とすることもできる。
背面金網3は例えば10cm×10cm程度の網目のものを使用する。
この金網に重ねて、その外側に柔軟性のある繊維や合成樹脂のシート、薄い鋼板、などで構成した可撓性面材4を取り付ける。
柔軟性のある可撓性面材4を取り付ける理由は、コンクリートブロックを使用して擁壁を構築する場合に、擁壁の背面は砕石などの排水材に接するために、コンクリートの打設時にコンクリートと背面の排水材を絶縁して排水材の排水効果を維持するためである。
また背面の形状になじんだ状態でコンクリートを打設し、硬化させるためである。
特に現場の背面の法面が土砂等の崩れやすい土質の場合には、型枠Aの背面を薄い鋼板、あるいは薄い鋼板と溶接金網の組み合わせで構成することも可能である。
本発明の型枠Aは順次並べて設置するから、側面の金網5は必ずしも両側に設置する必要はなく、片側にだけ設置する構成を採用することもできる。
その際にも最終端に並べる型枠Aだけは両側面に側面金網5を設置することが必要である。
型枠Aを並べてコンクリートを打設したときに側面の金網5の外側にも、隣接した型枠Aのコンクリートが充填される。
したがって側面の金網5の網目は、打設するコンクリートの骨材の最大径よりも大きい寸法で開口しても問題はない。
側面型枠5を折り畳み自在とすることもできる。
すなわち図8に示すように側面型枠5の中間、および側面型枠5と前面型枠2の取り付け部、および側面型枠5と背面型枠3との取り付け部に鉛直方向のヒンジhを介在させて、内側への折り込み、あるいは外側への張り出しを自在に構成しておけば、折り畳み自在となり運搬、貯蔵に便利である。
さらに平面的に見て台形のブロックを形成することができ、擁壁を曲線状態に構築する場合に有効である。
あるいは側面金網5の上側を内側に折り込み自在に構築しておけば、正面から見て台形のブロックを形成することができ、上方が徐々に狭くなる擁壁を構築する場合に便利である。
上記したように周囲の5面、あるいは一側面を省略した4面を金網で包囲するが、天井面にも天井金網6を設けることもできる。
この天井金網6はその網目の間隔が、容器内へ打設するコンクリートの最大骨材の寸法よりも大きく形成したものを採用する。
そのために、天井面に天井金網6が設置してあっても、上から型枠Aの内部にコンクリートを打設することができる。
さらにこの天井金網6は、骨組みを構成する前面の枠材1と背面の枠材1との間を緊張するセパレータの役割を果たす。
そのために打設したコンクリートの圧力による型枠Aの変形を阻止することができ、金網で構成した型枠Aであるにも関わらず整然とした形状のコンクリートブロックを得ることができる。
型枠Aの底面にも金網を、底面金網7として配置する。
型枠Aを設置する場合に、通常はその下にはコンクリート面が存在するから、底面金網の用途も、主に骨組みを構成する前面の枠材1と背面の枠材1との間を緊張するセパレータの役割を果たす。
後述するように、天井金網6と底面金網7の網目の寸法を、最大骨材の直径よりも大きくしておけば、型枠Aを複数段、積み上げた後に上からコンクリートを打設して、複数段にわたるブロックを一度に形成する方法を採用することもできる。
型枠Aの内部に鉄筋を配筋する場合もある。
その際には周囲の金網に鉄筋を取り付ければその位置を固定できるから、配筋作業はきわめて容易である。
配筋する鉄筋自体も、工場において折り畳み可能に構成しておけば、それを広げて型枠Aの内部に設置するだけで配筋が完了する。
あるいは周囲の金網と、内部に配筋する鉄筋とをヒンジで連結しておき、飛び出し絵本のような状態で、金網を広げた段階で配筋した鉄筋が立ち上がるように構成することもできる。
型枠Aの内部に、排水筒を敷設することもできる。
排水筒を底面金網7の上に設置し、排水筒の後端は背面金網3を貫通させ、その先端は前面金網2を貫通させて開口しておく。
するとコンクリートを打設してブロックが完成した時に、ブロックの前後を貫通した排水路を形成することができる。
上記したように、前面金網2に受け口状の開口部21を開設した金網を採用する場合には、その上下関係が重要である。
すなわち、型枠Aの内部に打設したコンクリートが開口部21に露出してくるが、しかし流出することがないように機能させるためには、開口部21が外向きの受け口状に配置することが大切であって、下向きに配置してはコンクリートが流出してしまう。
そこで多忙な現場でも型枠Aの上下を間違えないように、図5に示すように、型枠Aの枠材に係合突起24と、係合穴25を開口した構成を採用することもできる。
すなわち型枠Aの前面金網2の上面には、鉛直方向に契合突起24を突設しておく。
一方、前面金網2の下面には、係合突起24の挿入が可能な位置に、係合穴25を開口しておく。
すると最下段での型枠Aの配置さえ間違えなければ、機械的に係合突起24を係合穴25に挿入して積み重ねてゆくことで、開口部21を上向きの受け口状に配置することができる。
このように、型枠Aの上下を正確に積み上げることができればよいのだから、係合突起24、係合穴25は、前面金網2の枠材1に設けるだけでなく、側面金網5の枠材1、あるいは背面金網3の枠材1に設けることができる。
次に、前記のコンクリートブロック用型枠Aを使用した擁壁の構築方法について説明する。
擁壁は盛土法面、切土法面の前面に設置することが多いが、その他の場合にも採用することができる。
まず基礎として、ブロック積み、コンクリート擁壁の構築予定個所に基礎コンクリートBを打設する。
基礎コンクリートBの上面は、擁壁の勾配に沿った傾斜面として構築する。
基礎コンクリートBの上に、上記で説明した本願発明の型枠Aを平面的に一段にならべる。
その場合に、隣接する型枠Aの側面金網5は二重になるので、前記したように側面金網5は片側だけに設けておくこともできる。
隣接する型枠Aの間は、結束線などで一体化してコンクリートの打設中の移動を阻止する。
本発明の型枠Aは前記したように主要部材が金網であるから軽量であり、コンクリートブロックを積み上げるような工法とは異なり、足場の悪い現場であっても、人力だけで容易に運搬し、組み立てを行うことができる。
しかも単純な形状の型枠Aを並べるだけであるから、場所打ちのコンクリート擁壁のような、足場の設置、型枠の組み立て、セパレータでの緊結などの作業が一切不要であって、迅速に作業を行うことができる。
背面の地山と型枠Aの背面との間に砕石などの排水材Cを設ける。
切り土のり面では 裏込め材の砕石を利用しないで、繊維等の排水材Cをのり面に貼り付ける場合もあるから、本発明においては、砕石の充填が不可欠の要件ではない。
型枠Aの内部に鉄筋を配筋する場合もあるが、前記したように周囲の金網に鉄筋を取り付ければその位置を固定できるから、配筋作業はきわめて容易である。
配筋する鉄筋自体も、工場において折り畳み可能に構成しておけば、それを広げて型枠Aの内部に設置するだけで配筋が完了する。
あるいは前記したように、周囲の金網と、内部に配筋する鉄筋とをヒンジで連結しておき、飛び出し絵本のような状態で、金網を広げた段階で配筋した鉄筋が立ち上がるように構成してあれば、現場で金網を広げるだけで配筋作業が完了するから作業がきわめて迅速である。
型枠Aの底網の上に、排水筒を敷設した型枠Aを使用すれば、コンクリートを打設してブロックが完成した時に、ブロックの前後を貫通した排水路を形成することができる。
型枠A内へ上面からコンクリートDを打設してブロックEを形成する。
型枠Aに天井金網6が取り付けてある場合にも、上記したようにその網目の間隔は打設するコンクリートDの最大骨材の径よりも大きく構成してあるから、上部からコンクリートDを打設することができる。
こうして最下段のコンクリートブロックE群、すなわちコンクリート擁壁の最下段が完成する。
型枠Aの周囲は網目であって開口しているが、スランプの小さい、流動性の低いコンクリートDを打設すれば、網目から外部へ多少の量だけ膨出したとしても、流れ出してしまうことがない。
網目から多少膨出したコンクリートDは、型枠Aの外から左官鏝でならして仕上げる。
型枠Aは解体する必要がなく、設置した位置に残したままでコンクリートDの硬化を待つから、解体のための足場や、解体作業の時間が不要で迅速な構築を行うことができる。
最下段の型枠A内のコンクリートDが硬化して第一段のブロックEが完成たら、その上に上記で説明した本願発明の型枠Aを並べて設置する。
その内部にコンクリートDを打設し、硬化させて第二段のブロックEを完成させる。
その後は上記の順序で構築してゆく。
底面金網7の網目の間隔を、打設するコンクリートDの最大骨材の直径より大きくしておけば、二段あるいは複数段に型枠Aを積み上げた後に、その上部からコンクリートDを打設して一度に複数段のコンクリートブロックEを形成することができる。
こうして、極めて少ない現場作業のもとで、複数段にコンクリートブロックEを積み上げて、目的とする擁壁が完成する。
下段の型枠Aと、その上段の型枠Aの間に、地震の衝撃を吸収する弾性材のマットを敷設することもできる。
このようの状態で型枠A内にコンクリートを打設して、下段のブロックEと上段のブロックEとの間に弾性マットが介在した擁壁とすると、耐震性の高い擁壁を構築することができる。
さらに弾性マットを上下に貫通してせん断補強筋を配置すれば、より耐震性の高い擁壁を構築することができる。
その際には、下段のブロックEのコンクリートD打設前に、型枠A内に鉛直方向のせん断補強筋を取り付けておき、その後にコンクリートDを打設すれば、下半分をコンクリートD内に埋設し、上半分がコンクリートDから露出したせん断補強筋を得ることができる。
弾性マットには、このせん断補強筋を貫通する孔を開口しておくか、強く押し付けることでせん断補強筋を貫通させて、下段のコンクリートD面に弾性マットを敷設する。
1:枠材
2:前面金網
3:背面金網
4:可撓性面材
5:側面金網
6:天井金網
7:底面金網
Claims (5)
- ほぼ矩形の容器であり、
その前面、側面、底面、および背面を、孔を開口した合成樹脂板または金網で構成し、
背面はさらに可撓性面材を取り付けてあり、
前面金網または前面合成樹脂板と、背面金網または背面合成樹脂板の間を緊張するセパレーターの役目を果たすように、天井面にも天井金網または天井合成樹脂板を設け、
その金網の網目の間隔または合成樹脂板の孔の間隔を、容器内へ打設するコンクリートの最大骨材の寸法よりも大きく形成してあり、
型枠内へ天井金網または天井合成樹脂板の上面からコンクリートを打設してブロックを形成しうるように構成した、
場所打ちコンクリートブロック用型枠。 - 請求項1記載の型枠であって、
前面の金網を、外向きに受け口状に開口した開口部を形成した金網によって構成してある、
場所打ちコンクリートブロック用型枠。 - 請求項1または2記載のコンクリートブロック用型枠を使用し、
その型枠を平面的に一段にならべ、
型枠の背面には排水部材を設置し、
型枠内へ天井金網または天井合成樹脂板の上面からコンクリートを打設し、
コンクリートの硬化後に、その上に前記のコンクリートブロック用型枠を並べ、その内部にコンクリートを打設し、
上記の順序で構築してゆく、
場所打ちコンクリートブロック擁壁の構築方法。 - 請求項3記載の構築方法であって、
平面的に一段にならべた型枠内のコンクリートの硬化後に、
その上に弾性マットを敷設し、
弾性マットの上に、前記のコンクリートブロック用型枠を並べ、天井金網または天井合成樹脂板の上からその内部にコンクリートを打設し、
上記の順序で構築してゆく、
場所打ちコンクリートブロック擁壁の構築方法。 - 請求項4記載の構築方法であって、
平面的に一段にならべた型枠内のコンクリートの硬化後に、
その上に弾性マットを敷設し、
その弾性マットを貫通してせん断補強筋を設置し、
弾性マットの上に、前記のコンクリートブロック用型枠を並べ、天井金網または天井合成樹脂板の上からその内部にコンクリートを打設し、
上記の順序で構築してゆく、
場所打ちコンクリートブロック擁壁の構築方法。
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