JP5849780B2 - 基材への塗布方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、カーテンコーターの場合、塗布液の塗布液物性(粘度、表面張力)によりカーテンを形成できる最小液流量が決まるため、多層状態で基材へ薄膜塗布するためには基材の搬送速度を速くする必要がある。しかしライン速度を速くすることで空気同伴などに起因する塗布ムラが引き起こされ薄膜塗布は困難となる。
ダイコーター方式を用いた場合、薄膜化させるためには、基材と塗布液を供給するダイコーターとのギャップを所望する膜厚程度まで近接化させる必要があり、ガラス基板等の平滑な基材であれば近接化は可能であるが、連続して走行する鋼板などの場合、幅方向、長手方向とも形状変動が発生するためダイの近接化は困難である。また、連続ラインにおいては鋼板の板厚も常に変更されるため基材とダイとのギャップを一定に保持することは困難である。また、通常スリットダイを適用して基材へ塗布を行う場合、基材のエッジ部の影響を排除するためスリットの幅は基材に比べ狭く設定されるため鋼板への適用を考慮した場合、全幅に亘っての塗布液の塗布困難となるため歩留まり悪化を招く恐れがある。
[1]スリットダイにより、回転する中間ロールへ多層の塗布液を供給し、次いで、前記中間ロールより、回転するアプリケーターロールへ前記多層の塗布液を転写し、次いで、前記アプリケーターロールを連続的に走行する基材と接触させて前記多層の塗布液を基材へ転写するにあたり、前記中間ロールは、アプリケーターロールとの接触部においてアプリケーターロールと逆方向に回転し、前記アプリケーターロールは、基材との接触部において基材と逆方向に回転し、前記スリットダイにより供給する多層の塗布液は、最下層を形成する塗布液のウェット膜厚h1、上層を形成する塗布液のウェット膜厚h2、前記スリットダイと前記中間ロールの間のギャップをGとした場合、0.15≦h1/G≦0.70かつ0.10≦h2/G≦0.60かつ0.60≦h1/G+h2/G≦0.90となることを特徴とする基材への塗布方法。
[2]前記中間ロールの回転速度をV1、前記アプリケーターロールの回転速度をV2とする場合、0.6≦V1/V2≦2.5であることを特徴とする前記[1]に記載の基材への塗布方法。
[3]前記中間ロールは金属ロールを用い、前記アプリケーターロールは金属ロールにゴムをライニングしたゴムロールを用いることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の基材への塗布方法。
本発明は、連続して通板される基材の片面または両面に、スリットダイから供給された多層の塗布液を複数本のロールを介して塗布する方法である。
図1は、本発明の基材への塗布方法の一実施形態を示す。図1において、1は基材、2はスリットダイ、3は中間ロール、4はアプリケーターロール、5はブレード、6は塗布液回収タンク、7は吸引装置、8はバックアップロールである。図1によれば、多層の塗布液は、スリットダイ2から中間ロール3へ供給され、次いで、中間ロール3を介してアプリケーターロール4へ転写され、基材1へと転写、塗布される。中間ロール3は、表面が鏡面加工されたフラット形状のロールを用いている。また、中間ロール3は、アプリケーターロール4との接触部においてアプリケーター4と逆方向に回転し、アプリケーターロール4は、基材1との接触部において基材1と逆方向に回転する。
また、アプリケーターロール4に転写されず中間ロール3に残った塗布液を除去するために、中間ロール3上にはブレード5が設置されている。
h1/G+h2/G<0.60の場合には、スリットダイ2と中間ロール3間のメニスカス部で気泡の巻き込みが顕著に発生し、中間ロール3上での液膜が不均一になっていることを確認した。0.60≦h1/G+h2/G≦0.90の範囲では、スリットダイ2と中間ロール3間のメニスカス部が安定し、中間ロール3上、アプリケーターロール4上および基材1(鋼板)上でそれぞれ均一な液膜状態が確認された。h1/G+h2/G>0.90とした場合には、吸引装置7の回収タンク6への液漏れが発生しスリットダイ2から中間ロール3への塗布液供給が過多となっていることが確認されるとともに、各ロール表面上、基材1(鋼板)表面上の液膜状態が不均一になっていることが確認された。また、0.60≦h1/G+h2/G≦0.90の範囲であっても、0.15>h1/Gの場合には、スリットダイ2と中間ロール3のメニスカス部上流側で空気同伴と呼ばれる塗布欠陥が発生し、各ロール表面上、基材1(鋼板)表面上で気泡の存在が確認された。また、0.60≦h1/G+h2/G≦0.90の範囲で、0.10>h2/Gの場合、上層のウェット膜厚が薄膜化することによりスリットダイ2と中間ロール3に形成されるメニスカス部下流側で空気の巻き込みが発生することによって外観不良となることが確認された。さらに、0.60≦h1/G+h2/G≦0.90の範囲で0.70<h1/Gの場合には、下層の塗布液供給量過多となり、吸引装置7下部に設置した回収タンク6への液漏れが確認されるとともに、各ロール表面上、鋼板表面上で外観不均一が確認された。0.60≦h1/G+h2/G≦0.90の範囲で0.60<h2/Gの場合には、上層の供給量が過多となり、スリットダイ2と中間ロール3間のメニスカス部下流側の塗布液がスリットダイ2の先端部から溢れ出し中間ロール3表面上で不均一な液膜状態となっているのが観察された。
以上の結果から、複数の塗布液をスリットダイ2から中間ロール3へ塗布する際にスリットダイ2と中間ロール3間のメニスカス部を安定化するための条件範囲としては、下層を形成する塗布液のウェット膜厚h1、上層を形成する塗布液のウェット膜厚h2、スリットダイ2と中間ロール3の間のギャップをGとした場合、0.15≦h1/G≦0.70かつ0.10≦h2/G≦0.60かつ0.60≦h1/G+h2/G≦0.90となることが明らかとなった。なお、多層の塗布液が3層以上の場合は、下層とは最下層であり、上層とは最下層の上に形成される層である。
スリットダイから中間ロールへ塗布された多層状態の塗布液が中間ロールとアプリケーターロール間において外観が均一となるロールの回転速度の条件範囲について調査を行った。ここで、ロールコーターにおける代表的な塗布欠陥として、ロールの周方向の筋模様が、基材に転写され、膜厚むらとなり外観劣化となる場合がある。膜厚むらは塗布液体の粘度が高いほど、また、ロール回転速度が高速ほど発生しやすい傾向にある。膜厚むらの発生条件は主に各ロールの回転速度、押し付け圧、塗布液の物性値(粘度、表面張力)に依存されるが、高速塗布では、ライン速度に合わせてアプリケーターロールの回転速度も速くなり、必然的に各ロールの回転速度が速くなるために、膜厚むらの発生は避け難くなる。本発明の塗布方法においても膜厚むらは中間ロールとアプリケーターロールの間で発生する可能性がある。そこで、種々の実験による検討を行った。その結果、中間ロールの回転速度を上げていくと、アプリケーターロール上の膜厚むらの発生が回避され、中間ロールの回転速度をV1、前記アプリケーターロールの回転速度をV2とした場合、0.6≦V1/V2では膜厚むらの発生がなく均一な塗布条件が得られることが明らかとなった。しかし、V1/V2>2.5場合には、膜厚むらの発生が顕著となり多層状態を保ったまま塗布液を基材へ塗布することが困難になるとともに、基材上でスジ状の模様が発生した。また、0.6>V1/V2の場合には中間ロールとアプリケーターロールのメニスカス部で周期的な振動が発生することが確認され、アプリケーターロール上および鋼板表面上で不均一な塗膜状態が確認された。以上より、中間ロールの回転速度をV1、前記アプリケーターロールの回転速度をV2とする場合、0.6≦V1/V2≦2.5が好ましい。
良好な積層状構造を維持し、上層に形成する塗布液の物性の影響を受けずに安定塗布するためには速度比を0.6≦V1/V2≦1.2とすることがさらに好ましい。なお、上記中間ロールの回転速度およびアプリケーターロールの回転速度とはロール周速である。
スリットダイ2への塗布液の供給は、例えば、一定流量を安定して吐出できるポンプにより行うことができる。その際、吸引装置7の負圧、塗布液供給先の中間ロール3やアプリケーターロール4とスリット2先端部とのギャップ等を調整することで中間ロール3上やアプリケーターロール4上に塗布液を安定して供給することができる。
乾燥後の皮膜の付着量(g/m2)は、塗布後の鋼板において幅方向中央部、両エッジ100mm部より測定用サンプルを採取し、直径40mmに打ち抜き、それぞれについて蛍光X線分析装置を用いて皮膜成分の強度を測定し、予め作成した検量線より付着量に換算することにより算出した。尚、表1に記載した全付着量は、幅方向各位置の付着量の平均値である。
なお、図1の塗布装置において、スリットダイコーター2は2層塗布用の塗布液供給部(図示せず)と吸引装置7を有する。各ロールの材質は、中間ロール3が硬質クロム鍍金をほどこした表面フラットな金属ロールであり、アプリケーターロール4がゴムをライニングしたゴムロールである。ゴムライニング厚は20[mm]、ゴムはウレタンゴムで硬度はHs55°である。各ロールのロール径は中間ロール3、アプリケーターロール4共に150[mm]である。使用した塗布液は液温度が20[℃]における粘度が5 [mPa・s]、表面張力40[dyn/cm]である。液膜厚さは、図1では中間ロール3上の上層、下層の塗布液厚さの比を変化させて調整した。
比較例として上層と下層の膜厚やロールの回転速度の変更等をした場合について行い、発明例と同様に、塗布中、乾燥後の液膜の外観評価および付着量の確認を行った。
一方、比較例では、スリットダイ−中間ロール間、中間ロールとアプリケーターロール間およびアプリケーターロールと基材間でのメニスカス部が不安定となり、外観不良が発生した。
2 スリットダイ
2a、2b 塗布液供給部
3 中間ロール
4 アプリケーターロール
5 ブレード
6 塗布液回収タンク
7 吸引装置
8 バックアップロール
9 カーテンコーター
10 コーターパン
11 ピックアップロール
12 ミタリングロール
Claims (3)
- スリットダイにより、回転する中間ロールへ多層の塗布液を供給し、次いで、前記中間ロールより、回転するアプリケーターロールへ前記多層の塗布液を転写し、
次いで、前記アプリケーターロールを連続的に走行する基材と接触させて前記多層の塗布液を基材へ転写するにあたり、
前記中間ロールは、アプリケーターロールとの接触部においてアプリケーターロールと逆方向に回転し、
前記アプリケーターロールは、基材との接触部において基材と逆方向に回転し、
前記スリットダイにより供給する多層の塗布液は、最下層を形成する塗布液のウェット膜厚h1、上層を形成する塗布液のウェット膜厚h2、前記スリットダイと前記中間ロールの間のギャップをGとした場合、0.15≦h1/G≦0.70かつ0.10≦h2/G≦0.60かつ0.60≦h1/G+h2/G≦0.90となることを特徴とする基材への塗布方法。
なお、前記上層とは、最下層の上に形成される全ての層である。 - 前記中間ロールの回転速度をV1、前記アプリケーターロールの回転速度をV2とする場合、0.6≦V1/V2≦2.5であることを特徴とする請求項1に記載の基材への塗布方法。
- 前記中間ロールは金属ロールを用い、
前記アプリケーターロールは金属ロールにゴムをライニングしたゴムロールを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の基材への塗布方法。
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