JP5200651B2 - ロールコーターを用いた塗布方法 - Google Patents
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各ロール4,5,6,8の回転方向は、各ロール4,5,6,8間の近接点、あるいは密接点において同方向に回転するナチュラル回転の場合と逆方向に回転するリバース回転の場合がある。これらの回転方向のうち、一般的には、リバース回転の方が被塗布面の凹凸に沿った膜厚均一な塗膜面が得られやすいということから、被塗布材表面に凹凸があり、表面凹凸に沿った均一な膜厚を得たい場合には、特に、アプリケーターロール6と帯状体Sとの間ではリパ−ス回転にする場合が多い。また、アプリケーターロール6は帯状体Sの表面に傷を付けないように鋼ロールにゴムをライニングしたゴムロールが用いられることが多い。
特許文献1には、ライン速度、アプリケーターロールの周速、及びピックアップロールの周速の比率を特定の範囲に制御する技術が開示されている。
また、特許文献2には、塗料(塗布液)の温度を、その塗料の粘度が最小となる温度近傍に保持する技術が開示されている。
また、特許文献3に開示された技術では、アプリケーターロールの周速を上げていくとアプリケーターロール上のローピングのピッチが細かくなり、鋼板上もローピングが目立ちにくくなる。
従って、本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高速で連続的に走行する帯状体に対して、ローピングを発生させることなく、塗膜の外観を損なうことのないロールによる塗布方法を提供することにある。
前記帯状体のライン速度を100mpm以上とし、前記塗布液を水系塗料とし、前記塗布液が塗布された後の前記帯状体の表面の温度を35℃以上、70℃以下とし、前記アプリケーターロールの周速Vaと前記帯状体の走行速度Vsとの速度比Va/Vsを0.7以上、1.4以下とし、前記ピックアップロールの周速Vpと前記アプリケーターロールの周速Vaとの速度比Vp/Vaを0.5以上とし、前記塗布液を前記帯状体に塗布したときの膜厚を8μm以下とし、前記塗布液を乾燥させて前記帯状体上に形成された塗膜の膜厚を0.40μm以下としたことを特徴としている。
また、本発明のうち請求項3に係るロールコーターを用いた塗布方法は、請求項1又は2に記載のロールコーターを用いた塗布方法において、前記帯状体のライン速度が200mpm以上であることを特徴としている。
ピックアップロール4の表面状態は、特に規定されるものではないが、胴部表面に多数の凹部が形成されたグラビアロールを用いている。帯状体Sは、帯状体Sを介してアプリケーターロール6の反対側に設置されたバックアップロール8に巻きつくようにして走行している。
また、アプリケーターロール6における帯状体Sの走行方向の下流側には、帯状体Sの表面に塗布された塗布液を所定の温度で焼き付け、乾燥させて定着させる乾燥炉11が設けられている。
図2は、帯状体S上に塗布された直後にローピングが発生した塗布液3の状態を模式的に示す断面図である。図2に示すように、塗布液3の凹凸形状は、塗布液3の流動と表面張力により時間の経過とともに平滑になろうとする。塗布液3がニュートン流体で、ローピングが正弦波と考えた場合の初期の振幅a0とt秒後の振幅aの解析解は以下の数式(1)で表される。
上記数式(1)によると、塗布液3を塗布した直後から乾燥までの塗膜の振幅比は、塗布液3の粘度ηに反比例し、塗布時における塗布液3のローピングピッチλの4乗に反比例していることがわかる。
ここで、塗布液3の粘度を低下させるために、塗布液3を希釈する方策が考えられる。しかし、希釈には限界があり、塗布液3を希釈しすぎた場合には、塗布液3の濃度の下限は塗布液3の種類や界面活性剤等の添加剤により差はあるものの塗布液3の表面張力が高くなり、帯状体Sへの濡れ性が悪化し、結果として、塗膜の表面にピンポイントに形成される窪み(ハジキ)の発生といった新たな問題が生じるため、好ましくない。
図3は、帯状体の表面の温度と塗布液の粘度との関係を示すグラフである。なお、塗布液3としては、リン酸系の水系塗料(リン酸化合物と、Mg化合物、シリカ、及び4価のバナジウム化合物とを含有、乾燥後膜比重1.0、濃度3.3%(20℃)のときの粘度が3.7mPa・s、表面張力40dyn/cm)を用いた。
ローピングは、塗布液3の粘度が高いほど発生しやすい。また、ロール、特にアプリケーターロール6の周速が高速ほどローピングは発生しやすい傾向にある。ローピングが発生する原因は、帯状体Sに随伴される空気の流れが帯状体Sとアプリケーターロール6との間に架橋するメニスカスに乱れを与えるためである。すなわち、ローピングの発生条件は、主に各ロールの周速、複数のロール間の押し付け圧、塗布液3の物性値(粘度、表面張力)に依存する。特に、ライン速度Vsを高速にした塗布工程(以下、高速塗布と呼ぶ。)では、ライン速度Vsに合わせてアプリケーターロール6の周速Vaも速くなり、必然的に各ロールの周速が速くなるために、ローピングの発生は避け難くなる。
しかし、ピックアップロール4の周速Vpを速くしすぎると、コーターパン2から塗布液3をくみ上げる際に塗布液3の飛散が顕著となったり、ミタリングロール5、あるいはアプリケーターロール6の磨耗の進行が速くなり、実際の操業には好ましくない。
以上の問題点を鑑みて、本発明では、アプリケーターロール6の周速Vaをライン速度Vsの1.4倍以下とした。ライン速度Vsに対するアプリケーターロール6の周速Vaの周速比(Va/Vs)が1.4倍を超えると、帯状体Sとアプリケーターロール6との間の塗布液3の液溜りが振動を起こしやすく、塗布ムラとなりやすいためである。
従って、液膜厚を低下させる必要がある。しかしながら、上述の塗布方法では、液膜状態での膜厚(ウェット膜厚)が3μm未満の場合には、カスレが発生しやすくなる。
カスレが発生する原因としては、塗布する膜厚が3μm未満と薄い場合に、帯状体Sの表面の凹凸の影響により、凸部へ転写される液量が極端に薄くなってしまい、液切れが発生しやすくなることによる。
具体的には、ロールコーター1の上流側の位置に、帯状体Sに塗布液3を予め塗布するプレコート装置を設置し、そのプレコート装置によって塗布された塗布液が乾燥する前にアプリケーターロール6によって塗布液3を転写する。
本実施形態の塗布装置1は、上述のロールコーター1にプレコート装置20を加えてなる。プレコート装置20は、アプリケーターロール6によって帯状体Sに塗布液3を転写する前に、帯状体Sに塗布液3を予め塗布し、帯状体Sの表面にプレコート層を形成する装置である。なお、プレコート装置以外の構成については、上述の通りであるので、その説明を省略し、プレコート装置について、図面を参照して以下に説明する。
図6に示すように、プレコート層の膜厚が厚い場合には、アプリケーターロール6と帯状体Sとの接触部分において、プレコート装置20から供給された塗布液3がすり抜けてしまうため、3ロール塗布後の膜厚がプレコートを実施しない場合に比べ厚くなってしまう。従って、3μm未満の薄膜塗布でカスレの改善を実現させるためには、プレコート層の膜厚を5.0μm未満とすればよいことが明らかとなった。
ここで、第2のヒーター12bを設置し、上述した帯状体Sの表面の温度と塗膜を乾燥させた後の膜厚分布との関係について実験した内容と同様に実験した。この実験によれば、プレコート装置20によって塗布液3が帯状体Sに塗布されたとき、帯状体Sの表面の温度が低下してしまうため、ロールコーター1によって塗布される塗布液3の温度が上昇せず、十分なレベリングが得られず、塗布ムラが確認された。従って、プレコート装置20を有する塗布装置1における第2のヒーター12bの設置範囲としては、帯状体Sの走行方向において、プレコート装置20のアプリケーターロール23からアプリケーターロール6までの間に設けられることが好ましい。
本発明に係る塗布方法の実施例、及び比較例について、詳細に説明する。
板厚0.6mm、板幅1200mmの亜鉛メッキ鋼板の帯状体Sに対して、図1または図5に示した塗布装置1を用いて、表1に記載した塗布条件で塗布を行い、実施例1〜26及び比較例1〜12の塗布済の帯状体Sを得た。この塗布済の帯状体Sについて、乾燥後の塗布外観の評価、塗布時の塗膜の膜厚、及び乾燥後の塗膜の膜厚の測定を行った。
なお、本実施例及び比較例では、図1または図5に示す塗布装置1において、アプリケーターロール6として、ゴムをライニングしたゴムロールを用いた。また、ピックアップロール4として、表面に多数の凹部が形成されたグラビアロールを用いた。また、ミタリングロ−ル5として、ゴムをライニングしたゴムロ−ルを用いた。アプリケーターロール6及びピックアップロール4のロール径は、300mmのものを用いた。ミタリングロール5のロール径は、200mmのものを用いた。ミタリングロール5の周速Vmは、塗膜厚が一定になるように10〜90mpmの範囲で調整した。プレコート装置20の塗布液膜厚は、ロールの周速及びニップ圧力を調整することで所定の膜厚になるように調整した。プレコート装置20のロールは、ロール径が250mm、帯状体Sと接触するアプリケーターロール6はゴムロールを用い、コーターパン2から塗布液3をくみ上げるピックアップロール4には金属ロールを用いた。塗布液3は、前述のリン酸系の水系塗料を適宜水で濃度調整して用いた。コーターパン2に充填された塗布液3の温度は30℃であった。また、表1中、帯状体(鋼板)Sの温度は、第1の温度計13aにおける温度である。
[ローピングの評価基準]
◎:ローピングがない
○:ローピングがほとんどない
△:ローピングが若干ある
×:ローピングが多い
[カスレの評価基準]
◎:カスレがない
○:カスレがほとんどない
△:カスレが若干ある
×:カスレが多い
また、塗布時の膜厚を3.0μm未満とするために、図5に示すプレコート装置20を用いた実施例14〜18は、カスレの発生を防止することが可能となり、塗膜を均一に塗布することが可能となった。特に、実施例9〜13,17〜18,22〜24においては、ライン速度Vsを200mpm以上としても良好な性状の塗膜を形成することができた。
また、比較例5,12では、Va/Vsが0.7未満であるため、カスレは低減されているものの、ローピングの発生が顕著であった。
また、比較例1〜5,7,9では、Vp/Vaが0.5未満であるため、ローピングの発生が顕著であった。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、前記実施例では帯状体として冷延鋼板を用いたが、特に鋼板に限定されることなく、アルミ等の他の金属板を用いてもよい。
2 コーターパン
3 塗布液
4 ピックアップロール
5 ミタリングロール
6 アプリケーターロール
7 ブレード
8 バックアップロール
11 乾燥炉
12 ヒーター
13 温度計
14 温度制御装置
20 プレコート装置
21 コーターパン
22 ピックアップロール
23 アプリケーターロール
S 帯状体
Claims (3)
- コーターパンに充填された塗布液を、回転するピックアップロールの周面に付着させてくみ上げ、前記ピックアップロールに近接し、回転するアプリケーターロールの周面に付着させることによって所定の方向に連続的に走行する帯状体に前記塗布液を転写するロールコーターを用いた塗布方法において、
前記帯状体のライン速度を100mpm以上とし、前記塗布液を水系塗料とし、前記塗布液が塗布された後の前記帯状体の表面の温度を35℃以上、70℃以下とし、前記アプリケーターロールの周速Vaと前記帯状体の走行速度Vsとの速度比Va/Vsを0.7以上、1.4以下とし、前記ピックアップロールの周速Vpと前記アプリケーターロールの周速Vaとの速度比Vp/Vaを0.5以上とし、前記塗布液を前記帯状体に塗布したときの膜厚を8μm以下とし、前記塗布液を乾燥させて前記帯状体上に形成された塗膜の膜厚を0.40μm以下としたことを特徴とするロールコーターを用いた塗布方法。 - 前記帯状体の走行方向の上流側に設けられた少なくとも1つのロールを有するプレコート装置によって、前記塗布液と同一成分の塗布液を塗布し、塗布された塗布液が乾燥する前に前記アプリケーターロールによって前記塗布液が塗布されることを特徴とする請求項1に記載のロールコーターを用いた塗布方法。
- 前記帯状体のライン速度が200mpm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のロールコーターを用いた塗布方法。
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