JP5843612B2 - 肺炎連鎖球菌(Streptococcuspneumoniae)血清型19A多糖の分子量を制御するための方法 - Google Patents

肺炎連鎖球菌(Streptococcuspneumoniae)血清型19A多糖の分子量を制御するための方法 Download PDF

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Description

本発明は、回収時間を制御することによって、単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖の分子量を増大させる方法に関する。
生物の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(肺炎球菌としても知られている)を原因とする侵襲性疾患の予防を対象とする多価結合型肺炎球菌ワクチンの調製では、選択された肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型を、ワクチンを生成するのに必要とされる多糖を供給するために増殖させる。細胞は、発酵槽で増殖させ、デオキシコール酸ナトリウムまたは代わりの溶解剤の添加によって発酵の終わりに溶解が誘導される。次いで、溶解物ブロスは、下流の精製および細菌細胞を取り囲む莢膜多糖の回収のために集められる。担体タンパク質との抱合後、多糖は最終ワクチン産物に含められ、選択された肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型に対する免疫を、ワクチンの標的集団に与える。
多糖のサイズは、各調製バッチ中で分析した品質特性であり、適切に制御しなければならない。肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A多糖に関して、多糖のサイズは、発酵pH、発酵温度、および保持温度などのパラメーターによって影響を受ける可能性がある。さらに、19A多糖の熱分解は、発酵/回収および精製プロセスの両方にわたって起こり、これは、19A多糖の大規模製造のために生成プロセスをスケールアップさせるとき、種々のパラメーターをうまく処理および制御することに関して別の課題をもたらす。
したがって、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細胞溶解物から高分子量の血清型19A莢膜多糖を回収するための改善された方法が必要とされている。
細胞性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)溶解物から高分子量の血清型19A莢膜多糖を回収するための改善された方法を提供する。一方法では、血清型19A莢膜多糖を生成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞の発酵培養物を、6時間未満発酵させた後に細菌細胞を溶解させ、莢膜多糖を集める。したがって、本発明の一実施形態において、この方法には、血清型19A莢膜多糖を生成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞の発酵培養物を調製するステップと、2)発酵培養物を6時間未満発酵させるステップと、3)発酵培養物中で細菌細胞を溶解するステップと、4)発酵培養物から肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を単離するステップとが含まれ、それによって、高分子量の単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を含有する溶液が生成される。特定の実施形態では、発酵培養物は、5時間未満発酵させる。他の実施形態では、発酵培養物は、4時間未満発酵させる。別の実施形態では、発酵培養物は、3時間〜6時間発酵させる。別の実施形態では、単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)莢膜多糖の分子量は、少なくとも480kDaである。
本発明の別の実施形態では、方法は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A多糖を生成する細菌細胞の発酵培養物にCOを供給することも伴う。したがって、一実施形態では、本発明の方法には、1)血清型19A莢膜多糖を生成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞の発酵培養物を調製するステップと、2)発酵培養物にCOを供給するステップと、3)発酵培養物を6時間未満発酵させるステップと、4)発酵培養物中で細菌細胞を溶解するステップと、5)発酵培養物から肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を単離するステップとが含まれ、それによって高分子量の単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を含有する溶液が生成される。特定の実施形態では、発酵培養物にCOを供給するステップは、発酵培養物に重炭酸イオン(HCO )を加えるステップ、例えば、発酵培養物にNaHCO(重炭酸ナトリウム)を加えるステップを含む。他の実施形態では、発酵培養物にCOを供給するステップは、発酵培養物に炭酸イオン(CO 2−)を加えるステップ、例えば、発酵培養物にNaCO(炭酸ナトリウム)を加えるステップを含む。別の実施形態では、発酵培養物にCOを供給するステップは、NaHCOの第1の添加およびNaCOの第2の添加を含む。さらに別の実施形態では、発酵培養物にCOを供給するステップは、発酵培養物の上部にCOを通気するステップを含む。別の実施形態では、単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)莢膜多糖の分子量が少なくとも480kDaである。
別の実施形態では、本発明は、高分子量の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を含有する溶液に関し、この場合、溶液は上記の方法のいずれかによって生成される。
3Lスケールにおける実験室試験の、滴定塩基としてNaCOを用いた発酵段階中の光学密度(OD)、塩基およびグルコースレベルを示す図である。グラム単位の塩基をプロット目的のために10で割っている。 3Lスケールにおける実験室試験の、滴定塩基としてNaOHを用いた発酵段階中の光学密度(OD)、塩基およびグルコースレベルを示す図である。グラム単位の塩基をプロット目的のために10で割っている。 NaCOまたはNaOHの代わりの塩基供給に関する、異なるpH調節における合計タンパク質および多糖の結果を示す図である。 19A多糖の生成において分子量を発酵回収時間の関数として示す図である。 19A多糖の生成において光学密度(OD)当たりの時間当たりの特定の塩基消費を回収時間の関数として示す図である。グラム単位の塩基をプロット目的のために10で割っている。 19A多糖の生成において分子量を特定の塩基利用の関数として示す図である。
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)は、通常2個ずつ対になっている(双球菌)が、短連鎖または単一細胞としても見られる、グラム陽性、ランセット型の球菌である。これらは血液寒天培地プレート上で容易に増殖して光沢のあるコロニーを作り、β溶血を示す嫌気的環境で増殖させない限りα溶血を示す。ほとんどの肺炎球菌血清型の細胞は、各細胞を取り囲む多糖コーティングである莢膜を有する。この莢膜は、抗体が細菌細胞に付着するのを防ぐことによって食作用を妨害するので、ヒトにおける病原性の決定因子である。現在、90種以上の既知の肺炎球菌莢膜血清型が確認されており、その23種の最も一般的な血清型が世界中の侵襲性疾患の約90%を占めている。
ワクチンとして、肺炎球菌多糖被膜は、発達したまたは損なわれていない免疫系を持った個体において、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に対して妥当な程度の免疫を与えることができるが、多糖と抱合したタンパク質は、幼児および最も肺炎球菌感染の危険性がある高齢者にも免疫反応をもたらす。肺炎球菌細胞は、発酵槽で増殖させ、発酵の終わりに溶解を誘導する。次いで、下流の精製および莢膜多糖の回収のために溶解物ブロスを集める。
多糖のサイズは、各調製バッチ中で分析した品質特性であり、適切に制御しなければならない。血清型19A莢膜多糖の分子量は、発酵プロセスのパラメーターによって影響を受ける。本発明の方法は、細胞性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)溶解物からの高分子量の血清型19A莢膜多糖の回収を可能にする。
本方法の開発において、多糖の最終収量および分子量を変更しようとして、HySoyの濃度および塩基滴定液の選択を変更した。4つの発酵スキームを試験した。第1では、28g/L HySoyでベースラインNaOHプロセスを使用した。第2では、塩基滴定液として20%炭酸ナトリウムおよび20g/L HySoyを使用した。第3では、重炭酸ナトリウムの回分処理によって炭酸塩を導入することおよび混合NaOH/炭酸塩の塩基滴定液を用いることによって最初の2つの手法の利点を組合せた。第4の手法では、塩基滴定液として炭酸塩を使用し、増殖を強めるために10mM重炭酸塩を添加した。
発酵中に塩基滴定液としてNaOHを用いることは、タンパク質を取り除き、ろ過を向上させるために、発泡させることなくデオキシコレート溶解物をpH5.0に下げることができるという利点があったが、より低い分子量の多糖(<450kDa)をもたらした。NaCOでは、より高い分子量が得られたが、デオキシコレート溶解物のpHを下げた場合に発泡の問題点があった。高pH保持ステップの6.6では、NaCOを用いた発酵によりゲル様物質が形成し、その後のろ過問題が生じた。pH滴定液としてNaOHとNaCOのブレンドを用いることによってNaCOの量を最小限に抑えることにより、大量のCOの突然の放出が原因の発泡およびろ過問題を解消しながら、NaCOの分子量サイズの利益が得られた。増殖を強めるために10mM NaHCOを添加した塩基滴定液としての20%NaCO(w/v)の使用(第4の手法)は、安定した、高分子量の多糖を高収量でもたらした。
HySoy濃度および塩基滴定液に加えて、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖分子量に対する回収時間の影響も調べた。発酵培養物を6時間未満発酵させた後に細菌細胞を溶解させると、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細胞溶解物から高分子量の血清型19A莢膜多糖が生成することが判明した。
本発明はこのように、細胞性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)溶解物から高分子量の血清型19A莢膜多糖を回収するための改善された方法を提供する。1つの方法では、高分子量の単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を含有する溶液を生成するための方法が提供され、この方法には、1)血清型19A莢膜多糖を生成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞の発酵培養物を調製するステップと、2)発酵培養物を6時間未満発酵させるステップと、3)発酵培養物中で細菌細胞を溶解するステップと、4)発酵培養物から肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を単離するステップとが含まれ、これによって、高分子量の単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を含有する溶液が生成する。特定の実施形態では、発酵培養物は、約7時間未満、約6.5時間未満、約6時間未満、約5.5時間未満、約5時間未満、約4.5時間未満、約4時間未満、または約3.5時間未満発酵させる。別の実施形態では、発酵培養物は、3時間〜7時間、3時間〜6.5時間、3時間〜6時間、3時間〜5.5時間、3時間〜5時間、3時間〜4.5時間、3時間〜4時間、または3時間〜3.5時間発酵させる。別の実施形態では、本発明は、高分子量の単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を含有する溶液に関し、この場合、溶液は上記の方法によって生成する。
別の実施形態では、本発明の方法は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A多糖を生成する細菌細胞の発酵培養物にCOを供給することも伴い、これには1)血清型19A莢膜多糖を生成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞の発酵培養物を調製するステップと、2)発酵培養物にCOを供給するステップと、3)発酵培養物を6時間未満発酵させるステップと、4)発酵培養物中で細菌細胞を溶解するステップと、5)発酵培養物から肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を単離するステップとが含まれ、それによって高分子量の単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を含有する溶液が生成される。別の実施形態では、本発明は、高分子量の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を含有する溶液に関し、この溶液は、上記の方法によって生成される。
本発明の方法は、高分子量の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を生成する。本明細書では、「高分子量」は、少なくとも約480kDa、約490kDa、約500kDa、約510kDa、約520kDa、約525kDa、約550kDa、約575kDa、約600kDa、約625kDa、約650kDa、約675kDa、約700kDa、約725kDa、約750kDa、約775kDa、約800kDa、約825kDa、約850kDa、約875kDa、約900kDa、約925kDa、約950kDa、約975kDa、または約1000kDaの分子量を意味する。
特定の方法では、発酵培養物にCOを供給するステップには、発酵培養物に重炭酸イオン(HCO )を加えるステップ、例えば、発酵培養物にNaHCOを加えるステップが含まれる。5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、または50mMなど、5〜50mMのNaHCOの添加を利用することができる。他の方法では、発酵培養物にCOを供給するステップには、発酵培養物に炭酸イオン(CO 2−)を加えるステップ、例えば、発酵培養物にNaCOを加えるステップが含まれる。0.1M、0.2M、0.4M、0.6M、0.7M、0.9M、1.0M、1.5M、1.8M、または2.0Mなど、0.1M〜2.0MのNaCOの添加を利用することができる。5%(w/v)NaCO、10%(w/v)NaCOまたは20%(w/v)NaCOなどの重量/体積(w/v)当量を利用することもできる。さらに他の方法では、発酵培養物にCOを供給するステップには、発酵培養物へのNaHCOの第1の添加およびNaCOの第2の添加が含まれる。さらなる方法では、発酵培養物にCOを供給するステップには、発酵培養物の上部にCOを通気するステップが含まれる。5%〜100%、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のCO通気を使用してもよい。
本発明の方法の範囲内では、細菌細胞は、任意の溶菌剤を使って溶解させることができる。「溶菌剤」は、例えば、洗浄剤を含む、細胞壁破壊および細胞溶解を引き起こす自己溶解素の放出を促進する任意の薬剤である。本明細書では、「洗浄剤」という用語は、細菌細胞の溶解を誘導することができる任意の陰イオンまたは陽イオン洗浄剤を意味する。本発明の方法の範囲内で使用するこのような洗浄剤の代表例には、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、N−ラウリルサルコシン(NLS)、ケノデオキシコール酸ナトリウム、およびサポニンがある。
本発明の一実施形態では、細菌細胞を溶解するのに使用する溶菌剤は、DOCである。DOCは、胆汁酸デオキシコール酸のナトリウム塩であり、一般に雌ウシまたは雄ウシなどの生物学的供給源に由来する。DOCは、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)における細胞壁成長および分裂に関与する自己溶解素であるLytAタンパク質を活性化する。LytAタンパク質は、そのC末端部分にコリン結合領域を有しており、lytA遺伝子の変異は、DOCによる溶解に耐性があるLytA変異体を生じることが知られている。
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)多糖精製中のDOCの使用が健康上のリスクを招くという証拠はないが、このような生物学的に由来する試薬の使用は、潜在的な規制問題を引き起こす可能性がある。したがって、本発明の一実施形態では、細菌細胞を溶解するために使用する溶菌剤は、非動物由来溶菌剤である。本発明の方法の範囲内で使用する非動物由来溶菌剤には、DOCの作用機構(すなわち、LytA機能に影響を及ぼし、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細胞の溶解をもたらす)に類似する作用機構を有する非動物供給源由来の薬剤が含まれる。このような非動物由来溶菌剤には、DOCの類似体、界面活性剤、洗浄剤、およびコリンの構造類似体があるが、それだけには限定されず、本明細書の以下の実験の項に記載されている手順を用いて決定することができる。一実施形態では、非動物由来溶菌剤は、デカンスルホン酸、tert−オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノール(例えばIgepal(登録商標)CA−630、CAS#:9002−93−1、Sigma Aldrich、米国ミズーリ州St.Louisより入手可能)、オクチルフェノールエチレンオキシド縮合物(例えばTriton(登録商標)X−100、Sigma Aldrich、米国ミズーリ州St.Louisより入手可能)、N−ラウリルサルコシンナトリウム(NLS)、ラウリルイミノジプロピオネート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケノデオキシコレート、ヒオデオキシコレート、グリコデオキシコレート、タウロデオキシコレート、タウロケノデオキシコレート、およびコール酸塩からなる群から選択される。別の実施形態では、非動物由来溶菌剤は、NLSである。
本発明の方法の範囲内で、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)莢膜多糖を、当業者に既知の標準的な技術を用いて単離する。例えば、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を生成する細菌細胞の発酵後に、細菌細胞を溶解して細胞溶解物を生成する。次いで莢膜多糖を、遠心分離、沈殿、限外ろ過、およびカラムクロマトグラフィーの使用(例えば、米国特許出願公開第20060228380号、第20060228381号、第20070184071号、第20070184072号、第20070231340号、および第20080102498号を参照のこと)を含む当技術分野で既知の精製技術を用いて、細胞溶解物から単離することができる。
上記のプロセス変更は、細胞性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)溶解物からの高分子量の血清型19A莢膜多糖の回収を可能にする。これは、肺炎球菌多糖の生成を大きく増進させることができる発酵/回収プロセスの強力な改善である。
以下の実施例は、例示のために示しており、限定するためではない。
血清型19Aを生成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞を、ワクチンに含まれる莢膜血清型による肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)を原因とする侵襲性疾患に対する能動免疫化のためのワクチンを生成するのに必要とされる多糖を供給するために増殖させた。細胞を発酵槽で増殖させ、発酵の終わりに溶解を誘導した。次いで溶解物ブロスを、下流の精製および莢膜多糖の回収のために集めた。多糖サイズは各調製バッチ中で分析される品質特性なので、多糖サイズは適切に制御しなければならない。血清型19A莢膜多糖の分子量は、発酵プロセスのパラメーターによって影響を受けていることがわかった。以下の実施例は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19Aの発酵中の回収時間およびCOの供給に関する試験について記載している。
(実施例1)
多糖分子量に対する二酸化炭素供給効果
発酵
3LのBraun Biostat B発酵槽(B. Braun Biotech、米国ペンシルベニア州Allentown)で実験室での実験を行った。発酵槽にHYS培地(20g/L HySoy、2.5g/L NaCl、0.5g/L KHPO、0.013g/L CaCl・2HO、0.15g/L L−システインHCl)1.8Lを充填した。次いで発酵槽を、121℃で60分間加圧滅菌した。冷却した後、各ユニットに50%グルコース+1%硫酸マグネシウム(w/v)(DMS)溶液40または60mL/Lを加えた。必要に応じて、接種の前に重炭酸ナトリウムを加えた。
HYS培地1Lを含有する2L種ボトルに、19A型の凍結保存種菌を接種し、撹拌せずに36℃で約6〜8時間インキュベートした。発酵槽の接種は、OD600が0.3〜0.9、pHが4.75〜5.60のボトルから小分けにした100mL(約5.2% v/v)の体積量で行った。発酵温度およびpHは、所望の設定値で制御した。36℃、1L/分の空気通気、7に制御したpHおよび75rpmの撹拌の標準条件を使用した。2枚のインペラーを、撹拌シャフト上の低位置および中央位置に配置した。適切な塩基滴定液(3N NaOH、種々の濃度のNaHCOとブレンドした3N NaOH、種々の濃度のNaCOおよびNaHCOとブレンドした3N NaOH、ならびに20%NaCO)を含有するボトルを、自動pH制御のために接続した。発酵槽を、外部pH、OD600、グルコース、多糖、およびタンパク質について種々の時点でサンプリングした。グルコース濃度がほとんど枯渇したら、あるいは時間が経つにつれてODの増加が認められなくなったら、実験を終了した。
光学密度(OD600)測定
Shimadzu(米国メリーランド州Columbia)UV−1601(2nm帯域幅)またはSpectronics(米国ニューヨーク州Westbury)Genesys 5分光光度計(5nm帯域幅)を用いて600nmで試料の吸光度を読み取ることによって、発酵ブロスの細胞密度を決定した。ユニットは、試料の要求される希釈度に合うように脱イオン(DI)水で希釈したHYS培地で対照をとった。吸光度の数値を、十分に分光光度計の直線領域の範囲内である0.4未満に維持するために試料を希釈した。
グルコース濃度
細胞を遠心分離機で分離し、その上清をそのまま、もしくはDI水で3倍希釈することによって、グルコースレベルを決定した。試料をNova Biomedical(米国マサチューセッツ州Waltham)BioProfile 400で分析した。
多糖分析
試料を最終発酵読み取り値で採取し、0.13%(w/v)の濃度まで12%デオキシコール酸ナトリウム(DOC)で処理し、穏やかに撹拌した。それらを5℃で8〜24時間保持し、次いで50%酢酸でpHを5.0に調節して、大部分のDOCおよびタンパク質を沈殿させた。5℃でのさらに12〜24時間の保持間隔の後、試料を遠心分離した(14000rpm、Sorvall(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州Waltham)SS34ローター、15℃で10分)。上清のpHを6.0に調節した。次いで、上清を0.45μm Pall(米国ニューヨーク州East Hills)HT Tuffryn膜シリンジフィルター(低タンパク質結合)に通してろ過した。ろ過した生成物を、当技術分野でよく知られている標準的な方法を用いて高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPLC−SEC)によって分析した(例えば、Aquilar、M.「HPLC of Peptides and Proteins: Methods and Protocols」 Totowa、NJ: Humana Press(2004)を参照のこと)。
タンパク質分析
タンパク質レベルを、当技術分野でよく知られているドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)法によって分析した(例えば、Walker、J.M.「The Protein Protocols Handbook」 Totowa、NJ: Humana Press(2002)を参照のこと)。上記で調製したろ過した細胞溶解物(上清)をアリコートにして65μL/チューブでマイクロチューブ中に入れた。還元剤(10μLジチオスレイトール(DTT))およびNuPAGE(登録商標)(Invitrogen、米国カリフォルニア州Carlsbad)4倍ドデシル硫酸リチウム(LDS)試料バッファー(25μL)の添加を各試料に行った。試料をボルテックスにかけて10分間加熱してからNuPAGE(登録商標)4〜12%Bis−Tris12ウェルゲルに10μL/レーンを導入した。ゲルをNuPAGE(登録商標)MES−SDSバッファー中150Vで約60分間に限定して泳動し、続いてZoion染色プロトコル(Zoion Biotech、米国マサチューセッツ州Worcester)を用いて染色した。LabWorks(商標)(UVP Inc.)V.3ソフトウェアを備えたUVP Imager(UVP Inc.、米国カリフォルニア州Upland)を用いて試料分析を行って、目的とする特定のタンパク質バンドのおおよその濃度を得た。ウシ血清アルブミン(BSA)フラクションVを使用してタンパク質の標準曲線を作って、試料(溶解した細胞ブロス中)のおおよそのタンパク質値を計算した。
分子量分析
発酵試料1〜2リットルを、200rpmで撹拌しながら12%ナトリウムDOCで処理して0.13%(w/v)の濃度にした。試料を5℃または20℃のいずれかで8〜24時間保持した。次いで、50%酢酸で試料のpHを5.0または6.6に調節して、大部分のDOCおよびタンパク質を沈殿させた。5℃での12〜24時間の別の保持間隔の後、試料を遠心分離した(11000rpm、Sorvall(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州Waltham)SLA−3000ローター、10℃で15分)。次いで、3N NaOHで上清試料のpHを6.0に調節し、0.45μm Millipore(米国マサチューセッツ州Billerica)MP60フィルターを用いてろ過した。次いで、試料を、100K分子量カットオフ(MWCO)ダイアフィルトレーション(5倍濃度、続いてDI水を用いた7.5倍ダイアフィルトレーション)、0.1%HB沈殿、および炭素ろ過で構成される改変精製プロセスにかけた。次いで、精製した物質を多角度光散乱(MALLS)分析にかけた。
発酵プロセス試験
これまでの試験に基づいて、塩基滴定液としてNaCOからNaOHに切り換えることによって発酵プロセスを最適化した。NaOHの使用により、回収pHを5.0に下げることが可能になり、顕著なタンパク質沈殿が得られた。NaCOは、COを低pH(<6.6)で放出し、発泡体の形成をもたらす。19A型多糖およびタンパク質レベルに対する塩基滴定液の影響を調べた。3L発酵槽2台を設置し、1台の発酵槽は、塩基供給として20%NaCO溶液(w/v)を用いて元のプロセスの対照とした。他の発酵槽は、塩基供給として3N NaOHを使用した。
回収段階の間に、発酵槽を36℃で30分間保持しながら、発酵槽中で細胞をDOC(最終濃度0.13%(w/v))で溶解した。このステップに続いて、溶解物を周囲温度(22℃)で撹拌しながら終夜保持した。溶解物保持の後、試料を種々のpH設定値で取り出しながら、溶解物を未調整から4.5までの範囲にわたってpH滴定した。これらの試料を周囲温度で終夜保持してからプロセスにかけ、多糖およびタンパク質濃度について分析した。発酵段階中のOD、塩基およびグルコースレベルを図1および図2に示す。主な違いは、炭酸塩実験についての高い最終ODであった。
全タンパク質レベルに対するDOC溶解物pH調整後の影響も調べ、図3に示した。より低いpHレベルでは、NaOH実験でもNaCO実験でも細胞を含まないブロスでタンパク質量が低減した。より低いpH(<6.6)は、多糖の収量に悪影響を与えなかった。発酵分析結果は、NaOH塩基供給が、発酵中にNaCO塩基供給を用いるプロセスの許容できる代替法であったが、NaCO供給で得られたものよりも低い収量をもたらしたという指標となった。
19A分子量に対する塩基滴定液の影響
3Lスケールでの一連の発酵を行って、塩基滴定液、HySoy濃度およびpH保持ステップが血清型19A分子量に影響を及ぼしたかどうかを決定した。改変精製プロセスとその後のMALLSアッセイを用いて分子量決定を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005843612
重炭酸塩および混合塩基pH滴定液の影響
第1の試験(実験L29331−122および−139)では、DOC保持ステップ後にpH5.0保持ステップと共に異なるレベルの初期重炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムの塩基ブレンドを使用した。初期の重炭酸塩添加は、10〜50mMの範囲であり、塩基滴定液用の3N水酸化ナトリウムに加えた炭酸ナトリウムは、0.2〜1.8Mの範囲であった。1つの実験は、50mM初期重炭酸塩を含有しており、塩基滴定液としてNaOHを使用した。これらの発酵の終わりの炭酸塩レベルは、14〜111mMの範囲であった。血清型19A分子量は、520〜713kDaの範囲であった。実験パラメーターおよび結果を表2に示す。
Figure 0005843612
第2の試験(L29331−159および−185)は、15〜30mMの初期重炭酸塩添加を使用し、塩基ブレンドは、0.4〜1.0M NaCOを使用した。発酵の終わりの炭酸塩レベルは、24〜62mMの範囲であった。血清型19A分子量は、502〜763kDaの範囲であった。実験パラメーターおよび結果を表3に示す。
Figure 0005843612
混合されたおよび純粋な炭酸塩滴定塩基発酵プロセスの比較
塩基ブレンドプロセス(0.7M NaCO/3N NaOH)と炭酸塩滴定液プロセス(20%NaCO溶液、w/v)を比較するために実験を行った。結果(表4)は、炭酸塩滴定液プロセスの分子量が、塩基ブレンドプロセス(561−671kDa)の分子量よりも高く、より安定(778、781kDa)していたことを立証した。多糖収量も、NaCOプロセスでより高かった。
Figure 0005843612
パイロットスケール実験
種々の塩基滴定液を用いたいくつかの血清型19Aパイロットスケール(100L)実験を行った。完全な精製プロセスとその後のMALLSアッセイを用いて分子量決定を行い、最終精製バッチのものを報告している。結果を表5示す。
Figure 0005843612
19A分子量に対する塩基滴定液および通気の影響
3Lスケールでの一連の発酵を行って、塩基滴定液および大気通気が分子量に影響を及ぼしたかどうかを決定した。改変精製プロセスとその後のMALLSアッセイを用いて分子量決定を行った。結果を表6示す。
Figure 0005843612
19A分子量に対する回収時間の影響
血清型19A多糖の分子量に対する回収時間の影響力も調べた。表7は、MWの減少を発酵ODおよび回収時間の関数として示す一実験のデータをまとめて示している。
Figure 0005843612
いくつかの実験実施によるさらなる試験によっても、発酵ODおよび回収時間の関数としてのMWの減少が示された。図4は、19A多糖の生成における分子量を発酵光学密度(OD)および回収時間の関数として示す。図5は、19A多糖の生成における光学密度(OD)当たりの時間当たりの特定の塩基消費を回収時間の関数として示す。図6は、19A多糖の生成における分子量を特定の塩基利用の関数として示す。
冠詞「a」および「an」は、本明細書において、1個または2個以上(すなわち、少なくとも1個)の文法上の目的語の冠詞を意味するように使用している。一例として、「an element」は、1個または2個以上の要素を表す。
本明細書に記載した全ての刊行物および特許出願は、本発明に関連する当業者のレベルを示すものである。全ての刊行物および特許出願は、それぞれ単独の刊行物または特許出願が具体的にかつ単独で参照により組み込まれるように示されている場合と同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
前述の発明は、理解を明確にするために例示および実施例によって多少詳しく記載されているが、特定の変形形態および変更形態を添付の特許請求の範囲内で実施してもよい。

Claims (10)

  1. 高分子量の単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を含有する溶液を生成するための方法であって、
    a)血清型19A莢膜多糖を生成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞の培養物を調製するステップと、
    b)前記培養物を3時間〜6時間発酵させるステップと、
    c)前記発酵培養物中で細菌細胞を溶解するステップと、
    d)前記発酵培養物から肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を単離するステップとを含む、方法。
  2. 前記高分子量の単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖が少なくとも480kDの分子量を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 高分子量の単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を含有する溶液を生成するための方法であって、
    a)血清型19A莢膜多糖を生成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)細菌細胞の培養物を調製するステップと、
    b)前記培養物にCOを供給するステップと、
    c)前記培養物を3時間〜6時間発酵させるステップと、
    d)前記発酵培養物中で細菌細胞を溶解するステップと、
    e)前記発酵培養物から肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖を単離するステップとを含む、方法。
  4. 前記高分子量の単離肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A莢膜多糖の分子量が少なくとも480kDである、請求項に記載の方法。
  5. 前記培養物にCOを供給するステップが、培養物に重炭酸イオン(HCO )を加えるステップを含む、請求項または請求項に記載の方法。
  6. 培養物にHCO を加えるステップが、NaHCOを加えるステップを含む、請求項に記載の方法。
  7. 前記培養物にCOを供給するステップが、培養物に炭酸イオン(CO 2−)を加えるステップを含む、請求項または請求項に記載の方法。
  8. 培養物にCO 2−を加えるステップが、NaCOを加えるステップを含む、請求項に記載の方法。
  9. 前記培養物にCOを供給するステップが、NaHCOの第1の添加およびNaCOの第2の添加を含む、請求項または請求項に記載の方法。
  10. 前記培養物にCOを供給するステップが、培養物の上部にCOを通気するステップを含む、請求項または請求項に記載の方法。
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