JP5842636B2 - 圧電磁器組成物および圧電素子 - Google Patents

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本発明は、アクチュエータ、センサーまたはレゾネータなどの分野において広く利用される圧電磁器組成物および圧電素子に関するものである。
現在実用化されている圧電磁器組成物の大部分は、PbZrO(PZ)−PbTiO(PT)からなる固溶体系(PZT系)である。その理由は、菱面晶系のPZと正方晶系のPTの結晶学的な相境界(M.P.B.)付近の組成を用いることで、優れた圧電特性を得ることができるからである。このPZT系圧電材料には、様々な副成分あるいは添加物を加えることにより、多種多様なニーズに応えるものが幅広く開発されている。また、PZT系以外にも圧電材料として実用化されているものはあるが、それもマグネシウム酸ニオブ酸鉛(Pb(Mg、Nb)O:PMN)などの鉛系ペロブスカイト組成を主成分とする固溶体がほとんどである。
ところが、これらの鉛系圧電材料は、主成分として低温でも揮発性の極めて高い酸化鉛(PbO)を60〜70質量%程度と多量に含んでいる。例えば、PZTまたはPMNでは、質量比で約2/3が酸化鉛である。よって、これらの圧電材料を製造する際には、磁器であれば焼成工程、単結晶品であれば溶融工程などの熱処理工程において、工業レベルで極めて多量の酸化鉛が大気中に揮発し拡散してしまう。また、製造段階で放出される酸化鉛については回収することも可能であるが、工業製品として市場に出された圧電製品に含有される酸化鉛については現状では回収が難しく、これらが広く環境中に放出されると、酸性雨による鉛の溶出などが心配される。従って、今後圧電磁器および単結晶の応用分野が広がり、使用量が増大すると、無鉛化の問題が極めて重要な課題となる。
現在、非鉛系の圧電体セラミックスとしては、(Bi0.5Na0.5)TiO(チタン酸ビスマスナトリウム。以下、「BNT」と称する。)が知られている。BNTはPZTと同様にペロブスカイト型の圧電体セラミックスであり、比較的高い電気磁気結合係数を有する。
このBNTをベースにして、種々の改良組成系が検討されている。BNTに、BaTiO(チタン酸バリウム。以下、「BT」と称する。)および(Bi0.50.5)TiO(チタン酸ビスマスカリウム。以下、「BKT」と称する。)を固溶させた圧電磁器組成物が、特許文献1に開示されている。
特開2001−151566号公報
鉛を全く含有しない圧電磁器組成物としては、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)あるいはビスマス層状強誘電体などが知られている。しかし、チタン酸バリウムはキュリー点が130℃と低く、その温度以上では圧電性が消失してしまう。一方、ビスマス層状強誘電体は、通常400℃以上のキュリー点を有しており、熱的安定性に優れているが、結晶異方性が大きいので、分極が困難であり、生産性の点で課題がある。
更に、最近では、新たな材料として、チタン酸ビスマスナトリウム系の材料について研究が進められている。しかし、これらチタン酸ビスマスナトリウム系の材料では、鉛系圧電材料に比べると未だ十分といえる圧電特性が得られておらず、さらなる圧電特性の向上が求められていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、非鉛材料であり、かつ高温においても分極の劣化が少ない圧電磁器組成物を提供することを目的とするものである。また、高温においても特性の劣化が少ない圧電磁器組成物含む圧電素子を提供するものである。
上記目的を達成するため、本発明者らは、圧電材料組成を種々検討した。そして、非鉛材料であり、かつ高温においても分極の劣化が少ない圧電磁器組成物の組成を見出した。
本発明の圧電磁器組成物は、チタン酸ビスマスナトリウムとチタン酸ビスマスカリウムと二チタン酸バリウムのモル比をa:b:cとすると(チタン酸ビスマスナトリウム:チタン酸ビスマスカリウム:二チタン酸バリウム=a:b:c)、前記三成分の組成図上で、(a、b、c)の組成範囲がA(0.61、0.38、0.01)、B(0.41、0.58、0.01)、C(0.51、0.38、0.11)、D(0.31、0.58、0.11)で囲まれる領域内(各点を結ぶ線上を含む。)であることを特徴とする。
この三成分は、チタン酸ビスマスナトリウム(以後BNT)のキュリー温度は320℃と、チタン酸ビスマスカリウム(以後BKT)のキュリー温度は380℃であり、二チタン酸バリウム(以後BT2)のキュリー温度は479℃と、いずれも300℃以上の高いキュリー温度の材料で構成されている。圧電体の誘電率は、温度の上昇と共に増大し、その結果、結晶が不安定となり、ある温度を境に急激に結晶系が変化する。この温度がキュリー温度で、分極を消失する臨界温度を表わし、この温度では圧電性を失う。このキュリー温度の高い成分を用いると、高温まで分極の劣化が抑制され、優れた効果が得られる。さらに結晶系の違う成分を複数用いることにより、単成分よりも高い圧電特性を得られるようになる。
さらに本発明の圧電磁器組成物の三成分の一般化学式が、チタン酸ビスマスナトリウムを(Bi0.5Na0.5TiO、チタン酸ビスマスカリウムを(Bi0.50.5TiO、二チタン酸バリウムをBaTiとしたとき、dが0.9≦d≦1.0、eが0.9≦e≦1.0、fが0.9≦f≦1.1であることを特徴とすることが好ましい。
ここでdが0.9≦d≦1.0、eが0.9≦e≦1.0、fが0.9≦f≦1.1であるときは、焼結性をさらに向上させることが可能となる。
また、本発明では、上記の圧電磁器組成物を含む圧電素子を提供する。このような圧電素子は、上記特徴を有する圧電磁器組成物を含むため、高い温度の環境下で使用しても、優れた性能を得ることができる。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、非鉛材料であり、かつ高温においても圧電特性の劣化が少ない圧電磁器組成物を提供することができる。また、そのような圧電磁器組成物を含むことによって、圧電特性の劣化が少ない圧電素子を提供することができる。
本発明による圧電磁器組成物の好ましい組成を示す三成分組成図である。 本発明の一実施形態に係る圧電磁器組成物を用いた圧電素子の一構成例を表す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る圧電磁器組成物を用いた圧電素子の他の一構成例を表す断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
本発明の実施の形態に係る圧電磁器組成物は、BNTとBKTとBT2の三成分を少なくとも主成分とすることを特徴とする。ここでは、BNTとBKTとBT2とを含む固溶体を含有している。すなわち、3種類の化合物を含んでおり、それらは固溶していてもよい。さらに、完全に固溶せずに、少なくともBT2が残る方が高いキュリー温度を維持する上で好ましい。
BNTは、菱面晶系(Rhombohedral)ペロブスカイト構造ABOを有しており、ナトリウムおよびビスマスはペロブスカイト構造のAサイトに位置し、チタンはペロブスカイト構造のBサイトに位置している。
BNTは、一般化学式(Bi0.5Na0.5TiOで示される。この式中、dは化学量論組成であれば1であるが、化学量論組成からずれていてもよく、0.9以上かつ1以下であれば焼結性を高めることができると共により高い圧電特性を得ることができるので好ましい。ナトリウムとビスマスとの組成、および酸素の組成は化学量論組成から求めたものであり、化学量論組成からずれていてもよい。
BKTは、一般化学式(Bi0.50.5TiOで示される。この式中、eは化学量論組成であれば1であるが、化学量論組成からずれていてもよく、0.9以上かつ1以下であれば焼結性を高めることができると共により高い圧電特性を得ることができるので好ましい。カリウムとビスマスとの組成、および酸素の組成は化学量論組成から求めたものであり、化学量論組成からずれていてもよい。
二チタン酸バリウムは単斜晶系構造(Monoclinic)を有している。
BT2は、一般化学式BaTiで示される。この式中、fは化学量論組成であれば1であるが、化学量論組成からずれていてもよく、0.9以上かつ1.1以下であれば焼結性の安定性を得ることができるので好ましい。バリウムとチタンとの組成、および酸素の組成は化学量論組成から求めたものであり、化学量論組成からずれていてもよい。
本実施形態では、これら300℃以上のキュリー点の高い材料を3種類組み合わせることにより耐熱特性を強化したものであり、例えばBTのようなキュリー点が130℃の材料を加えた三成分のときよりも、良好な圧電歪定数d33と優れた高温下での残留分極Pr特性の維持である耐熱性を兼備した圧電磁器組成物を得ることに特徴がある。
さらに発明者らは、耐熱性の度合いを調べるために、各温度における残留分極値(Pr)を測定し、比較したところ、150℃の温度におけるPrの変化率が大きい場合、耐熱性が悪くなることを見出だした、そこで150℃と室温の残留分極値Prの変化率を比較することにより、耐熱性良否を判断することがわかった。これは150℃以下で何らかの相転移が起こるときに分極P−電界Eのヒステリシスが大きく変化するためであり、これが圧電特性に影響を及ぼすためと考えられる。
本実施形態の圧電磁器組成物は、高いキュリー点をもつ三成分を組み合わせた相乗効果により、高温での圧電歪特性に優れた効果が発現される。特にBT2相が圧電磁器組成物に存在することで、より一層優れた耐熱性を得ることができる。
また、この圧電磁器組成物は、これらBNTとBKTとBT2とを主成分とし、副成分として、遷移金属元素(長周期型周期表における3族〜11族の元素)、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、長周期型周期表における12族元素および長周期型周期表における13族の金属元素のうちの少なくとも1種を含有していてもよい。これにより機械的品質係数を向上させることができるからである。ここでの、主成分とは、材料組成物を構成する成分の全体のモル比に対して90%以上のことを示す。
具体的には、遷移金属元素(希土類元素を除く)であれば、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、タングステン(W)あるいはモリブデン(Mo)などが挙げられる。希土類元素であれば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)あるいはイッテルビウム(Yb)などが挙げられる。
アルカリ金属元素であれば、リチウム(Li)、ルビジウム(Rb)あるいはセシウム(Cs)などが挙げられる。アルカリ土類金属元素であれば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)あるいはストロンチウム(Sr)などが挙げられる。12族元素であれば、亜鉛(Zn)などが挙げられる。13族の金属元素であれば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)あるいはインジウム(In)などが挙げられる。
中でも、Cr、Fe、CoおよびNiは、圧電特性に高い効果を得ることができるので好ましい。これら副成分は、圧電磁器組成物が多結晶組織を有する場合は、主成分で構成される粒の間、つまり、粒界近傍に存在している。或いは、主成分で構成される粒子内に拡散して、粒子を構成する元素の一部になっている。良好な圧電性を確保するために粒界近傍に相が存在することの方が好ましい。
なお、この圧電磁器組成物は不純物としてPbを含んでいてもよいが、その含有量は1質量%以下であることが好ましく、鉛を全く含んでいなければより好ましい。焼成時における鉛の揮発、および圧電部品として市場に流通し廃棄された後における環境中への鉛の放出を最小限に抑制することができ、低公害化、対環境性および生態学的見地から好ましいからである。
また、この圧電磁器組成物の結晶粒子の平均粒径は、圧電特性の発揮や機械的強度の観点から例えば0.5μm〜20μmであることが好ましい。
このような構成を有する圧電磁器組成物は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、主成分の出発原料として、例えば、酸化ビスマス(Bi)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸バリウム(BaCO)および酸化チタン(TiO)の酸化物の粉末を用いることができる。
また、副成分を入れる場合は出発原料として、遷移金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、12族元素および13族の金属元素のうちの少なくとも1種を含む酸化物などの粉末を必要に応じて用いることができる。なお、出発原料には、酸化物に代えて炭酸塩あるいはシュウ酸塩のように焼成により酸化物となるものを用いてもよく、炭酸塩に代えて酸化物あるいは焼成により酸化物となる他のものを用いてもよい。Aサイト成分とBサイト成分などの厳密な調整が必要なため、たとえば、出発原料の調合の際には、組成ずれを無くす工夫が必要である。例えば、出発原料を吸着している水分を十分に排除するために、100℃以上に乾燥させることなどが、有効である。
続いて、例えば、秤量した出発原料をボールミルなどにより有機溶媒中または水中で5時間〜20時間十分に混合したのち、十分乾燥し、プレス成形して、750℃〜950℃で1時間〜20時間程度仮焼する。そして、例えば、この仮焼物をボールミルなどにより有機溶媒中または水中で10時間〜30時間粉砕したのち、再び乾燥し、バインダーを加えて造粒する。造粒したのち、例えば、この造粒粉を一軸プレス成形機あるいは静水圧成形機(CIP)などを用い100MPa〜400MPaの加重を加えてプレス成形しペレット状とする。
ペレット状としたのち、例えば、この成形体を400℃〜800℃で2時間〜4時間程度熱処理してバインダーを揮発させ、950℃〜1140℃で2時間〜4時間程度本焼成する。本焼成の際の昇温速度および降温速度は、共に例えば50℃/時間〜300℃/時間程度とする。本焼成ののち、得られた焼結体を必要に応じて研磨し、電極を設ける。電極形成は電極ペーストを塗布して焼き付けてもよいし、蒸着やスパッタ成膜などで電極膜を形成してもよい。そののち、25℃〜200℃のシリコンオイル中で5MV/m〜10MV/mの電界を5分間〜1時間程度印加して分極処理を行う。これにより、上述した圧電磁器組成物が得られる。
その他の方法として、BNT、BKT、BT2の少なくとも1成分を予め仮焼してから混合し、それ以外の方法は上記に準じて作製してもよい。特にBT2を確実に含ませるために単独で仮焼することはより好ましい。
このように本実施の形態によれば、BNTと、BKTと、BT2とのそれぞれの相を含むようにしたので、またはこれらを含む固溶体を含有するようにしたので、1成分系あるいは2成分系またはBTのようなキュリー点の低い成分を含む3成分に比べて良好な圧電歪定数と耐熱性の両立することが可能となる。
よって、鉛を含有しないまたは鉛の含有量が少ない圧電磁器組成物についても、利用の可能性を高めることができる。すなわち、焼成時における鉛の揮発、および圧電部品として市場に流通し廃棄された後における環境中への鉛の放出を最小限に抑制することができる低公害化、対環境性および生態学的見地から極めて優れた圧電磁器組成物の活用を図ることができる。
図1は、本発明による圧電磁器組成物の好ましい組成を示す三成分組成図である。発明の圧電磁器組成物の三成分は、BNT、BKT、BT2のモル比をそれぞれa、b、cとすると(以下その組成比をaBNT−bBKT−cBT2で表す)、三成分組成図(a、b、c)上で、A(0.61、0.38、0.01)、B(0.41、0.58、0.01)、C(0.51、0.38、0.11)、D(0.31、0.58、0.11)囲まれる領域内(各点を結ぶ線上を含む。)であることを特徴とする。(a+b+c=1)ここで、BNTが多すぎると反強誘電性が強くなり、少なすぎると圧電歪定数が低下しやすい。そして、BKTが多すぎると圧電歪定数が低下しやすく、少なすぎると、耐熱性が低下しやすい。またさらに、BT2が多すぎると圧電歪定数が低下しやすく、少なすぎると、耐熱性が低下しやすい。
図2は、本実施の形態に係る圧電磁器組成物を用いた圧電素子の一構成例を表すものである。この圧電素子は、本実施の形態の圧電磁器組成物よりなる圧電基板1と、この圧電基板1の一対の対向面1a、1bにそれぞれ設けられた一対の電極2、3とを備えている。圧電基板1は、例えば、厚さ方向、すなわち電極2、3の対向方向に分極されており、電極2、3を介して電圧が印加されることにより、厚み方向に縦振動するようになっている。
電極2、3は、例えば、金(Au)などの金属によりそれぞれ構成されており、圧電基板1の対向面1a、1bの全面それぞれ設けられている。これら電極2、3には、例えば、図示しないワイヤなどを介して図示しない外部電源が電気的に接続される。
この圧電素子は、常法により作製することができる。例えば、まず、上述したようにして圧電磁器組成物を作製したのち、それを必要に応じて所定の大きさに加工し、圧電基板1を形成する。次いで、この圧電基板1に電極2、3を例えば蒸着することにより、図2に示した圧電素子が得られる。
また、図3は本実施の形態に係る圧電磁器組成物を用いた圧電素子の他の一構成例を表すものである。この圧電素子は、例えば、本実施の形態の圧電磁器組成物よりなる複数の圧電層11と複数の内部電極12とを交互に積層した積層体10を備えている。圧電層11の一層当たりの厚さは例えば1μm〜100μm程度が好ましく、圧電層11の積層数は目的とする変位量に応じて決定される。
内部電極12は、導電材料を含有している。導電材料は特に限定されないが、例えば、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)およびパラジウム(Pd)からなる群のうちの少なくとも1種、あるいはその合金が好ましい。なお、内部電極12は、これらの他にリン(P)などの各種微量成分を0.1質量%程度以下含有していても良い。内部電極12の厚さは例えば0.5μm〜3μm程度であることが好ましい。
この内部電極12は例えば交互に逆方向に延長されており、その延長方向には内部電極12と電気的に接続された一対の端子電極21、22がそれぞれ設けられている。端子電極21、22は、例えば、端子電極用ペーストを焼き付けることにより形成されたものである。この端子電極用ペーストは、例えば、導電材料と、ガラスフリットと、ビヒクルとを含有している。導電材料は、例えば、銀、金、銅、ニッケル、パラジウムおよび白金からなる群のうちの少なくとも1種を含んでいる。ビヒクルには有機ビヒクルあるいは水系ビヒクルなどがあり、有機ビヒクルはバインダーを有機溶媒に溶解させたもの、水系ビヒクルは水に水溶性バインダーおよび分散剤などを溶解させたものである。
この圧電素子は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、上述した圧電磁器組成物の製造方法と同様にして仮焼成粉を形成し、これにビヒクルを加えて混練して圧電層用ペーストを作製する。次いで、内部電極12を形成するための上述した導電材料または焼成後に上述した導電材料となる各種酸化物、有機金属化合物あるいはレジネートなどをビヒクルと混練し、内部電極用ペーストを作製する。なお、内部電極用ペーストには、必要に応じて分散剤、可塑剤、誘電体材料、絶縁体材料などの添加物を添加してもよい。
続いて、これら圧電層用ペーストと内部電極用ペーストとを用い、例えば、印刷法あるいはシート法により、積層体10の前駆体であるグリーンチップを作製する。そののち、脱バインダー処理を行い、焼成して積層体10を形成する。
積層体10を形成したのち、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、内部電極用ペーストと同様にして作製した端子電極用ペーストを印刷または転写して焼き付け、端子電極21、22を形成する。これにより、図3に示した圧電素子が得られる。
更に、本発明の具体的な実施例について説明する。
(実施例1〜11)
BNTは(Na0.5Bi0.5)dTiO(d=1.0)、BKTは(K0.5Bi0.5)eTiO(e=1.0)、BT2はBaTi(f=1.0)となるように、酸化ビスマス(Bi)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸バリウム(BaCO)および酸化チタン(TiO)を100℃以上で十分に乾燥させたのち、それらを秤量した。そして、秤量した出発原料をボールミルで15時間混合したのち乾燥し、プレス成形して、850℃で4時間仮焼し仮焼物を得た。そして、この仮焼物をボールミルにより5時間粉砕し、BNT、BKT、BT2出発原料を得た。次に出発原料の配合比を、aBNT+bBKT+cBT2(a+b+c=1.0)としたとき、焼成後のモル比による組成比a、bおよびcが表1に示したようになるように秤量し、ボールミルにより10時間粉砕し混合粉を得た。
さらに、得られた混合をバインダーを加えて造粒し、プレス成形機により100MPaの加重を加えてプレス成形しペレット状とした。そして、表1に示すように1050〜1140℃で本焼成し焼成体(圧電磁器組成物組成物)を得た。そして、得られた焼成体を研磨して厚さ0.5mmの平行平板状とし、その両面に銀ペーストを650℃で焼き付けにより電極を形成した。さらに、120℃のシリコンオイル中で3〜10MV/mの電界を15分間印加して分極処理を行った。これにより、表1に示す実施例1〜11の圧電特性評価用の試験片(圧電素子)の圧電磁器組成物を得た。








得られた実施例1〜11の圧電磁器組成物について、圧電歪定数d33、残留分極値Prを測定した。その際、圧電歪定数d33の測定は室温にてPIEZO d33 METER MODEL ZJ−4B(INSTITUTE OF ACOUSTICS ACADEMIA SINICA製)により行い、残留分極値Prの測定はRT6000HVS HIGH VOLTAGE TEST SYSTEM(RADIANT TECHNOLOGIES Inc製)を用いてシリコンオイル中で電圧を3〜5MV/m印加して行った。このときの測定温度を室温と150℃とで行い、室温のPrを基準として150℃のときの変化率をΔPrとした。その式を式1として以下に示す。
ΔPr(%)=[(150℃のPr)−(室温のPr)]/(室温のPr)×100・・・(1)
さらに、得られた結果を表2に示す。
(比較例1〜10)
また、比較例1〜10では、出発原料の配合比のモル比である組成比a、bおよびcが表1に示したようになるように変化させたことを以外、他は上記した実施例1と同一の条件で圧電磁器組成物を作製した。さらに比較例1〜10についても、圧電歪定数d33、残留分極値Prを測定した。それらの結果も表1に示す。
圧電磁器組成物の圧電特性の評価を、○×として表1に示す。この評価では、実用上の圧電特性を確保するためd33値を100pC/N以上を良好とした。また、高温においても圧電性が極端に低下していない、つまり高温においても分極の劣化が少ない効果として、ΔPrが−40%以上を良好とした。これらを共に満足している場合を好適として○、どちらかまたは両方を満足していない場合を不適として×とした。
Figure 0005842636
Figure 0005842636
これらの結果から圧電特性および耐熱性(高温においても圧電特性の劣化が少ない)が良好な領域として、BNTとBKTとBT2の三成分を主成分とする圧電磁器組成物は、その組成が一般式aBNT−bBKT−cBT2のa、b及びcが、図1のBNT−BKT−BT2の三成分系組成図における各組成点A、B、C、Dで囲まれる領域内(各点を結ぶ線上を含む。)(a+b+c=1.0)に含まれるが、良好であることがわかった。ここで、BNTは(Bi0.5Na0.5TiO(d=1.0)を、BKTは(Bi0.50.5TiO(e=1.0を、BT2はBaTi(f=1.0)を、それぞれ示し、前記各組成点は、A(0.61、0.38、0.01)、B(0.41、0.58、0.01)、C(0.51、0.38、0.11)、D(0.31、0.58、0.11)であった。
(実施例12〜17)
実施例12〜17として、aBNT+bBKT+cBT2のa、bおよびcを、a=0.46、b=0.48、c=0.06とした。さらに、BNTである(Na0.5Bi0.5TiOやBKTである(K0.5Bi0.5TiOやBT2であるBaTiの組成比d、e、fを、表3に示したようになるように出発原料の配合比および焼成温度を変化させたことを除き、他は上記した実施例1と同一の条件で圧電磁器組成物を作製した。
実施例12〜17についても同様に、圧電歪定数d33、残留分極値Prを測定した。それらの結果も表4に示す。
Figure 0005842636
Figure 0005842636
これらの結果から、0.9≦d≦1.0、0.9≦e≦1.0、0.9≦f≦1.1の範囲が良好であることが確認された。
(比較例11、12)
さらに、一般式aBNT−bBKT−cBT2の三成分を主成分とする圧電磁器組成物のBT2に換え、BaTiO(BT)を用い、gBNT+hBKT+qBT(g+h+q=1.0)の三成分を主成分とする圧電磁器組成物を、
BNT:(Na0.5Bi0.5)TiOとBKT:(K0.5Bi0.5)TiOとをそれぞれ、表5となるように出発原料の配合比および焼成温度を変化させたことを除き、他は上記した実施例1と同一の条件で圧電磁器組成物を作製した。その圧電歪定数d33と残留分極値Prを測定し、評価した結果を表6に示す。
Figure 0005842636
Figure 0005842636
本発明に係る圧電磁器組成物および圧電素子は、アクチュエータ、センサーまたはレゾネータなどの分野において適用することができる。
1 圧電基板
2、3 電極
1a、1b 対向面
10 積層体
11 圧電層
12 内部電極
21、22 端子電極

Claims (3)

  1. チタン酸ビスマスナトリウムとチタン酸ビスマスカリウムと二チタン酸バリウムとの三成分を少なくとも主成分とし、チタン酸ビスマスナトリウムとチタン酸ビスマスカリウムと二チタン酸バリウムのモル比をa:b:cとすると(チタン酸ビスマスナトリウム:チタン酸ビスマスカリウム:二チタン酸バリウム=a:b:c)、前記三成分の組成図上で、(a、b、c)の組成範囲がA(0.61、0.38、0.01)、B(0.41、0.58、0.01)、C(0.51、0.38、0.11)、D(0.31、0.58、0.11)で囲まれる領域内(各点を結ぶ線上を含む。)であることを特徴とする圧電磁器組成物。
  2. 前記三成分の一般化学式が、チタン酸ビスマスナトリウムを(Bi0.5Na0.5TiO、チタン酸ビスマスカリウムを(Bi0.50.5TiO、二チタン酸バリウムをBaTiとしたとき、dが0.9≦d≦1.0、eが0.9≦e≦1.0、fが0.9≦f≦1.1であることを特徴とする請求項1の記載の圧電磁器組成物。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の圧電磁器組成物を含む圧電素子。
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