JP5836609B2 - 面発光レーザ、アレイ及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、フォトニック結晶面発光レーザに関する。
近年、フォトニック結晶を半導体レーザに適用した例が多く報告されている。特許文献1には、基板上に形成された、発光材料を含む活性層の近傍に2次元フォトニック結晶(2次元回折格子)層を形成した面発光レーザが開示されている。
これは分布帰還型面発光レーザ(DFB型面発光レーザ)の一種である。この2次元フォトニック結晶層は、半導体層に円柱状の空気孔等が周期的に設けられており、2次元的に周期的な屈折率分布を持っている。
活性層で生成された光は、活性層の面に平行な方向に導波しながら、フォトニック結晶層の周期的な屈折率分布による2次回折を受けて、特定の波長λにおいて共振モードである定在波を形成し、レーザ発振する。
このレーザ発振した光は、フォトニック結晶層による1次回折を受けて、活性層の面に垂直な方向へと伝搬方向を変え、レーザ構造の表面から出射される。
これらの現象は、フォトニック結晶層全域で起こるため、特許文献1に記載の半導体レーザは2次元的にコヒーレントな光を出射する面発光レーザとして動作する。
活性層近傍での光の導波方向と、レーザ構造外への光の出射方向がほぼ垂直方向を向いていることが、このレーザ構造の特徴の一つである。
一方、このレーザ構造とは別に、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)にフォトニック結晶を利用した面発光レーザ構造もよく知られている。
例えば、特許文献2には、フォトニック結晶によって自然放出光を抑制することで、低閾値で低消費電力の動作を可能とするVCSELが開示されている。
このVCSEL型のフォトニック結晶面発光レーザでは、前述したDFB型のフォトニック結晶面発光レーザとは異なり、活性層近傍での光の導波方向と、レーザ構造外への光の出射方向が同じ方向を向いている。
本発明に係るレーザ構造は、このうちのDFB型面発光レーザである。
本明細書中では、フォトニック結晶面発光レーザという場合は、特に断りがない限り活性層の面に平行な方向に共振モードを有するフォトニック結晶を備えた上記DFB型を指すこととする。
特開2000−332351号公報 特開平10−284806号公報
上記のフォトニック結晶面発光レーザを、より低い閾値電流や、より小面積の共振器でレーザ発振させようとする場合など、より一層の特性向上を目指す場合には、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数を大きくすることが有効である。しかしながら、従来の構造では、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数をある程度以上大きくすることについては、以下に説明するような課題を有している。なお、本明細書中では、レーザ素子の基板側を下側、基板と反対側を上側と定義する。
はじめに、光閉じ込め係数について説明する。
ある系に存在する全光エネルギーのうち、ある領域に閉じ込められている光エネルギーの割合を、その領域への光閉じ込め係数と言う。
フォトニック結晶面発光レーザでは、フォトニック結晶層に存在する光エネルギーの割合すなわちフォトニック結晶層への光閉じ込め係数が、レーザ特性を決める重要な要素となっている。
フォトニック結晶面発光レーザ中の積層方向の光分布は、導波モードとして計算することができる。
図4を用いて、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数について具体的に説明する。
図4(a)に、フォトニック結晶面発光レーザ構造の断面模式図の一例を示す。また、図4(b)に、そのレーザ構造について計算した、レーザ発振波長λにおける導波モードの光強度分布を示す。
この導波モードにおける光の導波方向は、活性層の面や基板主面方向に平行な方向である。
光強度は、活性層400付近にピークを持った単峰の分布を有している。光強度分布中に斜線で塗りつぶした部分がフォトニック結晶層410に存在する光に相当する。
光強度分布の曲線を全範囲にわたって積分することで求まる全体の面積のうち、斜線部分の面積の割合がいくらであるかを求めれば、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数が求められる。
この図に示した構造では、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数は約3%である。
つぎに、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数を向上させる利点について説明する。
フォトニック結晶層における光回折の起こりやすさは、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数に比例する。つまり、光閉じ込め係数を向上できれば、より効率的に回折を起こすことができる。
フォトニック結晶面発光レーザにおけるレーザ発振は回折によって引き起こされているので、回折効率を向上させることはレーザ発振閾値を低減したり、共振器を小面積化したりすることに対して有利に働く。
したがって、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数を向上させることはレーザ特性を向上させることにつながる。
つぎに、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数を向上させるための従来の手段について説明する。
単純に考えると、フォトニック結晶層の厚さを増せばフォトニック結晶層への光閉じ込め係数を大きくすることが可能なように思える。しかしながら、実際には必ずしもそうではないということを以下に示す。
図5に、図4に示したフォトニック結晶面発光レーザ構造のフォトニック結晶層への光閉じ込め係数の、フォトニック結晶層の厚さ依存(計算結果)を示す。
図5に示した計算結果からわかるように、ある厚さまではフォトニック結晶層の厚さが増すにつれて光閉じ込め係数が向上するが、その厚さを超えるとフォトニック結晶層の厚さを増しても光閉じ込め係数を向上させることはできない。
したがって、フォトニック結晶層の厚さを増すことによる光閉じ込め係数の向上には限界がある。
また、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数を向上する手段として、光強度分布のピーク付近にフォトニック結晶層を配置することが有効であることが知られている。
ここで、一般的に光強度分布のピークは活性層付近に位置するため、光強度分布のピーク付近にフォトニック結晶層を配置することは、活性層とフォトニック結晶層を近接して配置することと同義である。
しかしながら、製造上の制限から、活性層とフォトニック結晶層は、ある程度以上の距離を保って配置される必要がある。以下、この制限について説明する。フォトニック結晶面発光レーザを形成するためには、半導体材料中に空気孔などの周期配列で構成されるフォトニック結晶層を埋め込む必要がある。
例えば、非特許文献1(Science Vol.319,p.445 (2008))に開示されているAROGを用いてフォトニック結晶層を埋め込む場合を考える。AROGは、横方向成長をうまく利用して半導体中に空気孔を形成する手法である。
活性層とフォトニック結晶層の位置関係は、どちらが上側に位置する場合も採り得るが、それぞれに対して次に説明するような製造上の問題が存在する。
活性層の上側にフォトニック結晶層を設ける場合は、活性層とその上に位置する半導体層を結晶成長させた後に、ドライエッチング等で活性層付近まで半導体層に空気孔を掘る。そして、その後AROGで空気孔上部を覆うように再成長を行うことで半導体内部に空気孔を埋め込むことになる。
その際、孔の底と活性層との距離が近すぎると、ドライエッチング加工時のダメージが活性層にまで及び、発光効率を下げてしまうことがある。
そのため、活性層とフォトニック結晶層の距離をある程度離して配置しておく必要がある。
また、活性層の下側にフォトニック結晶層を設ける場合は、AROGで空気孔を埋め込んだ後に活性層を結晶成長させることになる。
その際、空気孔を埋め込んだ後に表面を平坦化するためには、ある程度の厚さの半導体層を成長させる必要がある。
フォトニック結晶層と活性層の距離が近すぎると、十分に平坦化できていない状態で活性層を成長させることになり、高品質の活性層を得ることが難しくなり、発光効率を下げてしまうことになる。
したがって、既存の製造技術を用いた場合には、活性層とフォトニック結晶層との距離を近づけすぎることは活性層の発光効率低下につながってしまうので、ある程度以上の距離を保つ必要がある。
以上述べた理由から、従来の構造では、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数を大きくすることは難しかった。
本発明は、上記課題に鑑み、製造上の制限に縛られることなくフォトニック結晶層への光閉じ込め係数を向上させることが可能となるフォトニック結晶面発光レーザの提供を目的とする。
本発明は、活性層と、前記活性層に対応して配置されたフォトニック結晶層と、を有し、波長λで発振する面発光レーザであって、前記活性層と前記フォトニック結晶層の間に、隣接する層より屈折率の低い低屈折率層を有し、前記活性層のに平行な方向に導波する前記波長λの光に対して高次の横モードを示す高次導波モードを少なくとも1つ有し、前記波長λで発振する共振モードに係る導波モードとして前記高次導波モードを用い、前記高次導波モードの光強度分布のピークのうち少なくとも1つが、前記フォトニック結晶層と前記低屈折率層との間に位置していることを特徴とする。
本発明によれば、製造上の制限に縛られることなくフォトニック結晶層への光閉じ込め係数を向上させることが可能となるフォトニック結晶面発光レーザを実現することができる。
本発明の実施形態におけるフォトニック結晶面発光レーザの断面図である。 本発明の実施例1におけるフォトニック結晶面発光レーザの断面図と光強度分布を示す図である。 本発明の実施例2におけるフォトニック結晶面発光レーザの層構成を示す図である。 従来のフォトニック結晶面発光レーザ構造を示す断面図と光強度分布を示す図である。 図4に示すフォトニック結晶面発光レーザ構造におけるフォトニック結晶層への光閉じ込め係数を示す図である。 導波路における光導波の様子を説明する図である。 導波路における光分布を説明する図である。
以下に、本発明の実施形態におけるフォトニック結晶面発光レーザの構成例について説明する。
本実施形態では、活性層と、該活性層の近傍に設けられた周期的な屈折率分布を有するフォトニック結晶層とを備える。これにより分布帰還型(DFB型)の面発光レーザの一種である活性層の面に平行な方向に共振モードを有するフォトニック結晶を備えた面発光レーザが構成される。
また、本実施形態のフォトニック結晶面発光レーザでは、レーザ発振の共振モードに係る導波モードとして高次導波モードを使用するように設計されている。
そして、活性層とフォトニック結晶層との間に、隣接する層より屈折率の低い低屈折率層が配置されている。
さらに、高次導波モードの光強度分布のピークのうち少なくとも1つが低屈折率層とフォトニック結晶層との間に位置するように設計されている。
以上のような構成を採る理由について、以下説明する。
これを図6を用いて、導波モードについて、最も単純な構造である三層スラブ導波路を用いて説明する。
三層スラブ導波路は、図6に示したように、光が伝搬するコア層600と、これを囲むクラッド層610からなっている。
コア層の屈折率はクラッド層の屈折率より大きくなっており、コア層とクラッド層の界面で光が全反射されることによって光がコア層に閉じ込められて伝搬する。
このような導波路において、位相整合条件を満足する、とびとびの伝搬角620を有する光線630のみが伝搬可能であることが知られている。
ここで、伝搬角の最も小さいモードは基本導波モードまたは0次導波モードとよばれ、それより大きい伝搬角を有するモードは高次導波モードとよばれる。
なお、本明細書中での高次導波モードとは、光の伝搬方向に対して垂直方向の断面を見た場合の光分布、いわゆる横モードが高次であることを指しており、
光の伝搬方向に対して平行方向の断面を見た場合の光分布、いわゆる縦モードが高次であることを指しているのではない。
基本導波モードおよび高次導波モードの説明のために、図7に、コア層の屈折率1.5、クラッド層の屈折率1.0の三層スラブ導波路に、波長400nmの光を導波させた場合の光強度分布計算結果を示す。
図7(a)はコア層厚さ150nm、図7(b)、図7(c)はコア層厚さ300nm、図7(d)、図7(e)、図7(f)はコア層厚さ450nmの導波路に対する計算結果である。
なお、図中の点線はコア層とクラッド層の上下の境界を示している。
コア層厚さ150nmの導波路では、図7(a)に示した基本導波モードのみが存在する。
コア層厚さ300nmの導波路では、図7(b)に示した基本導波モードの他に、図7(c)に示した1次の高次導波モードが存在する。
コア層厚さ450nmの導波路では、図7(d)に示した基本導波モード、図7(e)に示した1次の高次導波モードに加えて、図7(f)に示した2次の高次導波モードも存在する。
このように、有限の厚さを持つ導波路における導波モード数は有限であり、導波路のコア層が厚くなるほど、より高次の導波モードを存在させることができる。
また、基本導波モードは単峰、高次導波モードは多峰の光強度分布を持ち、モードの次数が大きくなるほど峰の数が増す。
また、コア層の厚さが等しい場合でも、コア層とクラッド層の屈折率差が大きいほど、より高次の導波モードが存在できることが知られている。
導波モードとして基本導波モードだけしか存在できない導波路はシングルモード導波路と呼ばれ、高次導波モードも存在できる導波路はマルチモード導波路と呼ばれる。
一般的な半導体レーザは、単一のモードでのレーザ発振を狙うため、シングルモード導波路となるように設計されている。
本発明で基本導波モードではなく、高次導波モードを使用する意図について説明する。
高次導波モードを使用する利点は、光強度分布のピークをフォトニック結晶層の近くに持ってくることが、基本導波モードに比べて容易になる点である。
基本導波モードを使用した従来構造では、光強度分布の形状は単峰であり、そのピークは活性層付近に位置している。
この場合、フォトニック結晶層を光強度のピークに近づけることはフォトニック結晶層を活性層に近づけることと同義であり、前述の製造上の制限がある。
しかし、本発明では、高次導波モードの複数存在するピークのうち別々のものを活性層とフォトニック結晶層にそれぞれ近づけることができるため、活性層とフォトニック結晶層の距離を近づける必要がない。
そのため、前述の製造上の制限に縛られることなくフォトニック結晶層への光閉じ込め係数の向上を図ることができる。
本発明で活性層とフォトニック結晶層との間に、隣接する層より屈折率の低い低屈折率層を配置する意図について説明する。
低屈折率層を配置する利点は、フォトニック結晶層付近の光強度分布のピークを、よりフォトニック結晶層に近づけられる点である。
フォトニック結晶層は空気孔を含むので、フォトニック結晶層の平均屈折率は周囲の層より低い。一般的に、屈折率の低い層には光が集まりにくいため、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数向上の妨げとなっている。
本発明では、屈折率の低い層を近傍に配置してフォトニック結晶層の屈折率を相対的に高くすることでフォトニック結晶層への光閉じ込め係数の向上を図っている。
フォトニック結晶層に比べて低屈折率層の屈折率がより低い方が、フォトニック結晶層の相対的な屈折率がより高くなるので望ましい。
低屈折率層の具体的な構成としては、例えば、AlGaAs系やAlGaN系の半導体材料を使用する場合には、周囲の層よりAl組成を高くした層を低屈折率層として用いることができる。
また、格子不整合などが原因で材料そのものの屈折率を下げることが難しい場合は、多孔質構造とすることで平均屈折率を下げた層を低屈折率層として用いることもできる。
本発明では、低屈折率層を配置する位置も重要である。
本発明の効果を奏するためには、フォトニック結晶層と光強度分布のピークの距離を縮めることが重要である。したがって、光強度分布のピークをフォトニック結晶層側に寄せるように低屈折率層を配置する必要がある。
そのためには、光強度分布のピークを挟んでフォトニック結晶層と反対側に低屈折率層を配置してやればよい。言い換えると、フォトニック結晶層と低屈折率層の間に少なくとも1つの光強度分布のピークが存在するような配置にしてやればよい。
このような配置になっていない場合は、低屈折率層は光強度分布のピークをフォトニック結晶層から遠ざける働きをしてしまい、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数を低下させてしまう。
つぎの表1に、これまでに述べた本発明の効果を奏する構造を説明するための計算結果の一例を示す。
[表1]
Figure 0005836609
レーザ発振波長λが400nmとなるように設計された、窒化物半導体で構成されたフォトニック結晶面発光レーザについての計算結果である。表の中に示した数字はフォトニック結晶層への光閉じ込め係数(単位%)である。
シングルモード導波路および1次導波モードまで有するマルチモード導波路の2種類のフォトニック結晶面発光レーザ構造について、各導波モードでのフォトニック結晶層への光閉じ込め係数を示している。
また、それぞれの構造について、活性層とフォトニック結晶層の間に低屈折率層を配置しない場合と配置した場合の結果を示している。
従来構造である、シングルモード導波路であり低屈折率層を含まないフォトニック結晶面発光レーザの場合を見てみると、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数は2.9%である。
ここで、フォトニック結晶面発光レーザ中に低屈折率層を配置すると、導波モードが消滅してしまうため、レーザ構造として動作しなくなってしまう。したがって、当然ながら本発明の効果は奏しない。
マルチモード導波路として設計されたフォトニック結晶面発光レーザの基本(0次)導波モードを使用した場合、レーザ構造中に低屈折率層を導入しても導波モードは消滅しない。しかし、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数は低屈折率層を導入しない場合に比べて大幅に小さくなってしまう。つまり、本発明の効果とは逆の、望ましくない効果が発生してしまう。
つまり、シングルモード導波路の場合もマルチモード導波路の場合も、基本導波モードに関しては、活性層とフォトニック結晶層の間に低屈折率層を配置してもフォトニック結晶層への光閉じ込め係数を向上させる効果は生じない。
一方、本実施形態に係る、マルチモード導波路の高次(1次)導波モードを使用した場合は、低屈折率層を配置することによって、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数が3.7%から7%へと大幅に向上することがわかる。
上記したように、低屈折率層を配置する場合、活性層とフォトニック結晶層の間のどこに配置しても本発明の効果を奏するというわけではない。
図1を用いて、低屈折率層を配置する位置による影響を説明する。
図1は、レーザ発振波長λが400nmとなるように設計された、窒化物半導体で構成されたフォトニック結晶面発光レーザの断面模式図と、波長λにおける光強度分布の計算結果である。
図1(a)は適切に、つまりフォトニック結晶層110と低屈折率層120の間に光強度分布のピークが位置するように低屈折率が配置されている例である。
フォトニック結晶面発光レーザ構造の断面模式図の右側に、図4(b)と同様に計算された光強度分布の曲線を示し、フォトニック結晶層110中に存在する光に相当する部分を斜線で塗りつぶして示している。
フォトニック結晶層と低屈折率層の間の距離は200nmである。
図1(b)は、不適切に、つまりフォトニック結晶層111と低屈折率層121の間に光強度分布のピークが位置しないような配置になっている例である。
フォトニック結晶層と低屈折率層の間の距離は50nmである。この構造では、低屈折率層の位置がフォトニック結晶層に近すぎるため、低屈折率層が光強度分布のピークより上側に位置している。
その結果、光強度分布のピークを下側に押し下げてしまい、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数をより小さくしてしまう。
図から明らかなように、図1(a)に比べて図1(b)の斜線部分は非常に小さい。つまり、フォトニック結晶層への光閉じ込め係数が小さい。
具体的な数値としては、図1(a)の構造ではフォトニック結晶層への光閉じ込め係数は7%、図1(b)の構造では1%である。
以上より、高次導波モードを使用し、かつ適切な場所に低屈折率層を配置する事ではじめて本発明の効果が得られるということが確認された。
一般に、半導体レーザの共振器としてマルチモード導波路を使用した場合、単一モードでの発振が難しくなるおそれがある。
しかし本発明では、前述したように、低屈折率層を配置することで基本導波モードのフォトニック結晶層への光閉じ込め係数が小さくなるので、基本導波モードに由来するレーザ発振は起こりにくくなる。その結果、所望の高次導波モードに由来するモードのみでレーザ発振を起こすことができる。
よって、本発明ではマルチモード導波路を使用しても単一モードで発振させることができる。
本実施形態で使用するフォトニック結晶構造は、その屈折率の周期性が1次元的であってもよいし、2次元的であってもよい。2次元的な周期性としては、正方格子、三角格子や、その他一般的に使用されている格子構造を利用することができる。
また、本実施形態のレーザ構造における活性層は、一般の半導体レーザに使用されるものを使用することができる。
例えば、GaAs/AlGaAs、GaInP/AlGaInP、GaN/InGaNなどの材料を用いた多重量子井戸構造である。
また、本実施形態に係る面発光レーザにおいては、光励起方式、あるいは電流注入方式により駆動することができる。
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用したフォトニック結晶面発光レーザの構成例について、図2と表2を用いて説明する。
図2に、本実施例におけるフォトニック結晶面発光レーザ構造の断面模式図と、計算によって求めた光強度分布を示す。
本レーザ構造は電流注入により波長400nmでレーザ発振するように構成されており、図2に示した光強度分布も波長400nmの光に対して計算したものである。
表2に、本発明の活性層とフォトニック結晶層とを含み構成された導波路を備えたフォトニック結晶面発光レーザの構成を適用した、本実施例におけるフォトニック結晶面発光レーザの層構成の具体的内容を示す。
[表2]
Figure 0005836609
表2に示した層構成は、n型基板上に窒化物半導体層を有機金属気層成長法(MOVPE法)によって積層することで形成した。
活性層200は、井戸層として厚さ2.5nmのIn0.09Ga0.91N、バリア層として厚さ7.5nmのGaNが3周期積層された多重量子井戸構造を備える。また、図2と表2では省略しているが、n型基板とp型コンタクト層には、キャリアが注入できる電極を形成する。n型電極は、TiとAlで形成し、p型電極は、AuとNiで形成する。
本実施例における2次元フォトニック結晶層210は、GaN中に円柱状の空気孔を、正方格子状に周期配列して構成される。
円柱状の空気孔の周期は160nm、円柱の直径は64nmである。このとき空気孔の体積充填率は12.6%であり、平均屈折率は2.402となる。
この2次元フォトニック結晶層210は、一般的に使用される半導体リソグラフィとドライエッチングを用いてGaN表面に孔をパターニングした後、再成長法によって孔の上部に蓋を形成することで半導体材料中に埋め込まれた。
低屈折率層220は、Al0.12Ga0.88Nで構成された層であり、その屈折率は2.461である。
低屈折率層220に隣接する層はp−GaNで形成されたスペーサ層240および250であり、その屈折率は2.541であり、低屈折率層220より屈折率が高い。
本実施例におけるフォトニック結晶面発光レーザのフォトニック結晶層210への光閉じ込め係数は5.1%である。
[実施例2]
実施例2として、実施例1とは異なる形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザの構成例を、図3を用いて説明する。
本実施例におけるフォトニック結晶面発光レーザ構造は、一か所を除いて実施例1のレーザ構造と同じである。本実施例と実施例1とは、低屈折率層の構成のみが異なっている。
本実施例における低屈折率層320は、多孔質GaNによって形成されている。多孔質中の空気孔部分の体積充填率は約21%であり、低屈折率層320の平均屈折率は2.3である。
本実施例では、実施例1と同様、フォトニック結晶層310の空気孔の体積充填率は12.6%であり、平均屈折率は2.402とされている。
そのため、低屈折率層の空気孔の体積充填率はフォトニック結晶層の空気孔の体積充填率より大きく、低屈折率層の平均屈折率の方がフォトニック結晶層の平均屈折率より小さくなっている。
本実施例の実施例1に対する利点としては、実施例1のようにAl組成が周囲より大きい層を低屈折率層として使用する場合に比べて、格子不整合による制限が厳しくないということが言える。
つまり、実施例1では、低屈折率層の屈折率を小さくしようとすればAl組成を大きくすることになり、特に窒化物半導体材料などにおいては、隣接する層との組成の違いによる格子不整合の影響が無視できなくなる。
そのため、現実的に使用できるAl組成は限られている。
したがって、実施例1のような構造では、現実的に使用できる低屈折率層の屈折率にも下限がある。
一方、本実施例のように多孔質構造を低屈折率層として使用する場合は、その平均屈折率は空気の充填率によって制御することが可能である。
したがって、隣接する層から大幅に組成を変える必要が無いので、上記の格子不整合を回避することができる。
そのため、実施例1に比べて、現実的に使用できる低屈折率層の屈折率の下限をより小さくすることが可能になる。
本実施例におけるフォトニック結晶面発光レーザのフォトニック結晶層への光閉じ込め係数は6.9%である。
以上、実施例について説明したが、本発明の面発光レーザは記載した実施例に限定されるものではない。
フォトニック結晶層の形状や材料や大きさ、活性層やクラッド層や電極を構成する材料は本発明の範囲内で適宜変更できる。
また、上記実施例では、レーザ発振波長として400nmのものを示したが、適切な材料・構造の選択により、任意の波長での動作も可能である。
また、本発明の面発光レーザを同一平面上に複数配列してアレイ光源として使用してもよい。
以上説明した本発明の面発光レーザは、複写機、レーザプリンタなどの画像形成装置が有する感光ドラムへ描画を行うための光源としても利用することができる。
100:活性層
110:フォトニック結晶層
111:フォトニック結晶層
120:低屈折率層
121:低屈折率層
200:活性層
210:フォトニック結晶層
220:低屈折率層
240、250:低屈折率層に隣接するスペーサ層

Claims (7)

  1. 活性層と、前記活性層に対応して配置されたフォトニック結晶層と、を有し、波長λで発振する面発光レーザであって、
    前記活性層と前記フォトニック結晶層の間に、隣接する層より屈折率の低い低屈折率層を有し、
    前記活性層のに平行な方向に導波する前記波長λの光に対して高次の横モードを示す高次導波モードを少なくとも1つ有し、
    前記波長λで発振する共振モードに係る導波モードとして前記高次導波モードを用い、
    前記高次導波モードの光強度分布のピークのうち少なくとも1つが、前記フォトニック結晶層と前記低屈折率層との間に位置していることを特徴とする面発光レーザ。
  2. 前記低屈折率層を構成する材料の屈折率は前記低屈折率層の平均屈折率が、前記フォトニック結晶層の平均屈折率より小さいことを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
  3. 前記低屈折率層が、多孔質構造で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の面発光レーザ。
  4. 前記フォトニック結晶層が、半導体材料中に空気孔を周期配列して構成されており、
    前記低屈折率層を構成する多孔質構造における空気孔の体積充填率が、前記フォトニック結晶層における空気孔の体積充填率より大きいことを特徴とする請求項3に記載の面発光レーザ。
  5. 前記隣接する層と前記低屈折率層は、Al、Ga、Asを含む半導体材料又はAl、Ga、Nを含む半導体材料で構成され、
    前記低屈折率層のAlの比率が、前記隣接する層のAlの比率よりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の面発光レーザ。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の面発光レーザが複数配列されたアレイ。
  7. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の面発光レーザと、感光ドラムと、を有する画像形成装置。
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