JP5835869B2 - 筒状丸編地 - Google Patents
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Description
特に、ショーツ、ガードル、シャツ等のインナーでは、スカート等のアウターにインナーの裁断部の縫製始末部が際立って見えることが無く、着用時の外観の審美性に優れる製品として好評であり、このフリーカットが可能なように、裁断部のホツレやカールが生じない弾性糸や編地の提案がなされている。
例えば、非熱融着弾性糸を含有する丸編地を編成後、筒状になっている編地の耳部を裁断して開反し、190℃前後の乾熱処理により弾性糸を固定して、ホツレやカールを防止する方法や、低融点で熱融着可能な熱融着弾性糸を交編した編地を、190℃前後の乾熱や120℃前後の湿熱による熱処理することにより、熱融着弾性繊維相互を熱融着させ、ホツレやカールの発生を防止する方法が知られている。
しかし、このような筒状編地からなる衣料製品において、裁断部を上述のフリーカット化すると、伸縮性や風合いに悪影響を与えることがある。これは、衣料製品を得るために、筒状丸編地のまま型枠に入れて熱セット処理することが必要であるが、特に製品の幅が30〜50cm程度の筒状丸編地を熱セット処理するときに、非熱融着弾性糸を交編した丸編地では、筒状編地の耳部に型枠の跡が残ったり、十分に弾性糸を固定する熱効果が得られなかったりして、伸縮性や風合いは良好であっても実質的にフリーカット可能な編地は得られない。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]弾性糸が含有された筒状丸編地から構成された開反されていない筒状の部位を有する衣料製品であって、該部位の端部が任意な形状に裁断され、該裁断部の少なくとも一部が裁断された状態のまま該衣料製品は製品化されており、該弾性糸は、熱融着弾性糸と非熱融着弾性糸との組み合わせであり、該熱融着弾性糸と該非熱融着弾性糸はいずれも、非弾性糸によって被覆された被覆弾性糸であり、少なくとも該裁断部を構成する編地組織は、非弾性糸と、該被覆弾性糸とがプレーティングにより同時に編成され、該熱融着弾性糸と該非熱融着弾性糸とが1本交互に天竺組織で編成され、かつ、該熱融着弾性糸が相互に熱融着しないよう配置されたものであり、該熱融着弾性糸の繊度に対する該非熱融着弾性糸の繊度の比が0.5〜1.5であり、そして該裁断部において、該熱融着弾性糸と該非熱融着弾性糸とが固着していることを特徴とする前記衣料製品。
本発明に係る筒状丸編地とは、編地編成後、筒状丸編地の耳部を裁断して開反することなく染色加工を行い、筒状のまま製品化することができる編地をいう。さらに、本発明に係る筒状丸編地は、該筒状丸編地を、衣類のトップス、あるいはボトムス等の必要長で裁断し、かつ、筒状丸編地の上端、下端のどちらか一方、あるいは、両端の裁断部を所望の形状に裁断したままで製品化される筒状丸編である。
天竺以外の組織、例えばタック組織を使用する鹿の子編等の変化組織では、風合いが硬くなり、伸縮性も低下するため、不適である。また、任意な形状で裁断する裁断部以外の編組織については必ずしも天竺である必要は無く、タック組織の使用やウエルト組織の使用、これら両組織の組み合わせ使用も可能で、任意な編組織で、任意な伸縮性、フィット感の編地製造が可能である。
熱融着弾性糸とは、本願の筒状丸編地の状態で、乾熱150℃以上220℃以下で1分間の熱処理、または、湿熱100℃以上130℃以下で30秒間の熱処理で、溶融し弾性糸相互が融着するような弾性糸で、例えば、特許文献2に示される、ポリオール及びジイソシアネートを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマーと、ポリオール、ジイソシアネート及び低分子量ジオールを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマーとから得られるポリマーを溶融紡糸して得られる弾性糸が挙げられる。
すなわち、天竺組織において、熱融着弾性糸と非熱融着弾性糸とを1本交互に編成して熱融着弾性糸が相互に融着しないように配置することにより、熱融着弾性糸のみで編地を形成した場合の欠点である、風合い硬化と伸縮性不良を格段に低減することが可能になり、本発明の課題である、裁断部のホツレやカールの発生が無く、伸縮性に優れ、ソフトな風合いの編地製造が可能となる。
上記繊度比は以下の式:
繊度比=非熱融着弾性糸の繊度(dt)/熱融着弾性糸の繊度(dt)
により求める。
尚、以下の方法により、実施例及び比較例を評価した。
(1)解れ性
実施例及び比較例により製造された製品の裁断部の解れ性は、以下の方法で評価した。
家庭用洗濯機を使用し、浴比1:30で製品を投入し、水温は常温で洗濯5分/回、すすぎ10分/回で、50回繰り返し洗濯した。尚、連続して洗濯を行い、洗濯1回毎の乾燥は省略した。洗濯後自然乾燥を行い、下記評価基準1〜5で評価した。評価基準3以上であれば洗濯後の解れは僅かで製品として問題なく、数値が高いほど好ましい。
5 : 裁断部の解れは全く無い
4 : 裁断部に僅かに解れが発生しているが、製品として問題ない
3 : 裁断部に少し解れが発生しているが、問題ないレベル
2 : 裁断部に解れが発生し、製品として問題のあるレベル
1 : 裁断部に解れが甚だしく発生し、問題である
実施例及び比較例で得られた筒状丸編地の、熱融着弾性糸を含有する部分の風合いと着用感を、実際の着用により、以下の評価基準で評価した。評価基準3以上であればソフトな風合いで、着用感を阻害せず、数値が高いほど好ましい。
5 : ソフトで適度な締め付け感が有り、快適である
4 : ソフトで締め付け感良好で、着用していて快適
3 : やや風合いが硬いが、着用していて不快ではない
2 : 風合いが硬く、締め付け感が強く着用していて不快である
1 : 風合いが硬く、伸縮性に劣るので締め付け感が強く、きわめて不快
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径14インチ、28ゲージの丸編機(SANTONI社製 SM8 TOP1)を使用して、図1に示すノースリーブフィットインナーを製造した。
編成ではフィットインナーの裾部に当たる裾端部(1)より編出し、裾部(2)を編成後、着用時ウエストに当たるウエスト部(3)を編成し、次いで、胸部(3)を少し長く編成し、一着分の編地とした。なお、編成時の組織と糸使いは次の通りである。
裾部(2)は天竺組織で、熱融着弾性糸(商品名モビロンR−LL:日清紡績(株)製)110dtに、ナイロン加工糸13dt/7f(フィラメント、以下同じ記号を使用する)を撚り数600T/mでカバーリングした被覆弾性糸と、非熱融着弾性糸(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製 TMAによる圧縮変形開始温度が150〜180℃の範囲内、180℃50%伸長での熱切断秒数30秒以上であり、非熱融着性であるが熱固着性を有する)78dtに、ナイロン加工糸13dt/7fを撚り数500T/mでカバーリングした被覆弾性糸を1本交互にプレーティングの裏糸として使用し、その際、表糸は、ナイロン加工糸56dt/48fとして編成した。
胸部(4)は、ウエスト部と同じ糸使いで天竺組織により、裾部の非熱融着弾性糸からなる被覆弾性糸を、被覆弾性糸のみを全コース使用して編成した。
編成できた1着分の編地を、金網ネット上にしわを伸ばして置き、オートクレープを使用しほぼ真空状態で120℃10分のスチームセットを行った。次いで、パドル染色機を使用してナイロンの染色を行い、脱水、乾燥後、ボディサイズに模った型枠にセットし、120℃60秒でスチームセットした。こうして得られた編地の裾部を裁断し、また、衿部、袖部をノースリーブ状に裁断し、その端部を3つ折縫製始末して、裾部は裁断したままの製品とした。
得られた製品の解れ性、着用感を評価した結果を以下の表1に示す。
本実施例1の製品は、繰り返し洗濯を行っても裾の裁断部の解れは発生せず、また、裾部の着用感もソフトで適度な締め付け感を有し、快適な製品であった。
実施例1において、裾部に使用する弾性糸の種類、繊度の変更、および、熱融着弾性糸と非熱融着弾性糸の配置条件を、以下の表1に示すように変更した編地を作製し、これらの編地から製品を作製して、解れ性と着用感の評価を行った。結果を以下の表1に示す。
本実施例2〜6、参考例7、実施例8の製品は、比較例1〜3の製品に比較して、解れ性及び/又は着用感に優れていることが分かる。
実施例1において、フィットインナーの裾部の編成を、熱融着弾性糸110dtに、ナイロン加工糸13dt/7fを撚り数600T/mでカバーリングした被覆弾性糸と、非熱融着弾性糸78dtに、ナイロン加工糸13dt/7fを撚り数500T/mでカバーリングした被覆弾性糸を1本交互に編成した以外は、ウエスト部、胸部の編成、染色加工、縫製等は実施例1と同様にして製品を製造した。
得られた製品の解れ性、着用感を評価した結果を以下の表1に示す。
本実施例9の製品は、繰り返し洗濯を行っても裾の裁断部の解れは発生せず、また、裾部の着用感もソフトで適度な締め付け感を有し、快適な製品であった。
同一の給糸口において任意に編み糸の変更が可能な釜径16インチ、32ゲージの丸編機(SANTONI社製 SM8 TOP1)を使用して、図1に示すノースリーブフィットインナーで、裾、衿、袖とも裁断したままとする製品を製造した。
編成ではフィットインナーの裾部に当たる裾端部(1)より編出し、裾部(2)を編成後、着用時ウエストに当たるウエスト部(3)を編成し、次いで、胸部(3)を少し長く編成し、一着分の編地とした。
裾部(2)は天竺組織で、ナイロン加工糸56dt/48fに、熱融着弾性糸(商品名モビロンR−LL:日清紡績(株)製)110dtの裸糸と、非熱融着弾性糸(商品名ロイカSF:旭化成せんい(株)製)78dtの裸糸とを1本交互にプレーティングにより編成した。次いで、この糸使いのままウエスト部(3)は、ウェール方向にニット、タックを交互に編成し、コース方向へは、タックを3回連続するようにして編成して、編地の締め付け感を強くした。さらに、胸部(4)は同じ糸使いの天竺組織により編成した。
編成できた1着分の編地を、金網ネット上にしわを伸ばして置き、オートクレープを使用しほぼ真空状態で120℃10分のスチームセットを行った。次いで、パドル染色機を使用してナイロンの染色を行い、脱水、乾燥後、ボディサイズに模った型枠にセットし、120℃60秒でスチームセットした。こうして得られた編地の裾部を裁断し、また、衿部、袖部もノースリーブ状に裁断し、裁断部は裁断したままの製品とした。
得られた製品の解れ性、着用感を評価した結果を以下の表1に示す。
本参考例10の製品は、繰り返し洗濯を行っても、裾、衿、袖の裁断部の解れは発生せず、また、着用感もソフトで適度な締め付け感を有し、快適な製品であった。
2 裾部
3 ウエスト部
4 胸部
5 衿、袖の端部
Claims (1)
- 弾性糸が含有された筒状丸編地から構成された開反されていない筒状の部位を有する衣料製品であって、該部位の端部が任意な形状に裁断され、該裁断部の少なくとも一部が裁断された状態のまま該衣料製品は製品化されており、該弾性糸は、熱融着弾性糸と非熱融着弾性糸との組み合わせであり、該熱融着弾性糸と該非熱融着弾性糸はいずれも、非弾性糸によって被覆された被覆弾性糸であり、少なくとも該裁断部を構成する編地組織は、非弾性糸と、該被覆弾性糸とがプレーティングにより同時に編成され、該熱融着弾性糸と該非熱融着弾性糸とが1本交互に天竺組織で編成され、かつ、該熱融着弾性糸が相互に熱融着しないよう配置されたものであり、該熱融着弾性糸の繊度に対する該非熱融着弾性糸の繊度の比が0.5〜1.5であり、そして該裁断部において、該熱融着弾性糸と該非熱融着弾性糸とが固着していることを特徴とする前記衣料製品。
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