JP5511146B2 - 成型編地 - Google Patents
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Description
成型編地で無い場合、例えば、緯編地を染色加工する場合、通常、その緯編地の両端を縫製して、染色加工機の中で回転させながら染色する。したがって、工程中にその編地端からほつれや磨耗が生じるという問題は無い。
一方、成型編地の場合には、製品形状を有する編地をそのまま染色加工することとなるため、染色機中で染色されている間に、その成型編地の編み終わり側の端から「ほつれ」を生じてしまうことがあり、そのほつれがひどい場合には、染色機や乾燥機内でほつれた糸が製品に絡まり、染め斑を起こすことがあり、また製品として使用できない事態にもなっていた。
また、成型編地の編み終わり部については、袋編または擬似リブ編を編成して裾部やウエスト部を形成した後、ほつれ止め処理として縫製をする必要があり、その際に生地を折り返して縫製するため、着用時にごろつくという欠点があった。
また、特許文献2には、シングル丸編機にて編地端を、特殊な編組織に編成することにより、裾始末不要のヘムを形成する方法が開示されている。更に、特許文献3には、ショーツの足回りヘム部等の端末編の止め編で、一定のカバーファクターを持った糸を使用して、ほつれを防止しつつカールを防止する編成方法が開示されている。
しかしながら、いずれも特殊な編成方法を用いることによって効果が得られるものであり、高度な編成技術を必要とするものであった。
1.融点が120℃以下の超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維が、1コース目から2〜200コースまでの編地端のみに使用されてなる編地が、熱処理されることにより前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維相互が熱融着してなることを特徴とする成型編地。
2.前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維が、その回りに非弾性繊維を被覆された複合糸であることを特徴とする1.記載の成型編地。
3.前記複合糸が、芯糸に前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を、鞘糸に非弾性繊維を使用したシングルカバリングヤーンであることを特徴とする2.記載の成型編地。
4.前記シングルカバリングヤーンが、芯糸として、繊度が11〜470dtexの前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を使用し、鞘糸として、繊度が5〜78dtexの前記非弾性繊維を使用したものであって、シングルカバリングヤーンを作製する際の撚り数が100〜2200T/mであることを特徴とする3.記載の成型編地。
5.前記シングルカバリングヤーンが、芯糸として、繊度が33〜156dtexの前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を使用し、鞘糸として、繊度が5〜56dtexの前記非弾性繊維を使用したものであって、シングルカバリングヤーンを作製する際の撚り数が100〜1800T/mであることを特徴とする4.記載の成型編地。
6.前記編地端が、少なくとも一種類の非弾性繊維と、前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維、又は前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を含む複合糸とによるプレーティング編で形成されることを特徴とする1.乃至5.のいずれか1項記載の成型編地。
7.前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維の熱融着力が、3.5cN以上であることを特徴とする1.乃至6.のいずれか1項記載の成型編地。
8.前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維の耐熱強力保持率が、2倍伸長下、110℃で45秒間乾熱処理をした場合に、50%以上であることを特徴とする1.乃至7.のいずれか1項記載の成型編地。
なお、ここにいう超低温熱融着性弾性繊維の融点については、特に超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を用いる場合、120℃以下であることが好ましく、より好ましくは、60〜120℃、さらに好ましくは80〜100℃である。特に、プリセット工程、染色工程中の沸水によっても、適度な融着性を示す繊維であることが好ましい。融点とは、一視野式微量融点測定装置(mitamura riken製)を用いて測定したものであり、昇温速度を3℃/分、電圧を90Vとして、目視にて繊維が溶融し始める温度を確認し、その温度を融点とする。
C=(0.012×√D×T/(1000/DR))×100 (1)式
ここで、Cは被覆度(%)を、Dは超低温熱融着性弾性繊維の周囲に被覆される非弾性繊維の繊度(デシテックス)を、Tは撚糸時の撚り数(T/m)(ダブルカバリング糸の場合は上下撚り数の和)を、DRはカバリング又は撚糸時の超低温熱融着性弾性繊維のドラフトを示す。
C=(K×KL/1000)×100 (2)式
ここで、Kはエア交絡時の交絡数(個/m)を、KLは平均交絡長(mm)を示す。
主として、その編地端に超低温熱融着性弾性繊維を単独、または超低温熱融着性弾性繊維を含む複合糸を単独で使用する。場合により、表糸として非弾性繊維を使用し、裏糸として超低温熱融着性弾性繊維単独または超低温熱融着性弾性繊維を含む複合糸とを用いたプレーティング編地とすることもできる。
編地端とは、成型編地の裾、袖、襟、ウエストなどの編地の開口部を指し、その開口部から内部に向かって、2〜30コース程度に超低温熱融着性弾性繊維を用いるものである。熱処理によって熱融着性弾性繊維相互が熱融着することでほつれ止め効果を得ることから、2コース以上に超低温熱融着性弾性繊維を編み込めば、超低温熱融着弾性繊維同士の接着点が得られることから、ほつれ防止機能を施すことができる。より強固なほつれ止め効果を得るためには、3〜30コースに用いることが好ましく、より好ましくは5〜15コースである。30コース以上使用すると、編み終わり部の審美性が悪いこと、着用時にごろつく等の欠点があることから好ましくない。
なお、使用する編地端は、編地の開口部全てに使用することもできるし、例えば、裾のみに使用することもできる。開口部のいずれに超低温熱融着性弾性繊維を使用するかについては、その成型編地の工程上の諸条件により、適宜定めることができる。
図1は成型編地の一例である。編成時に編地の両側が袋編となって編成が完了する場合、図2のように編み終わりの編地端に超低温熱融着性弾性繊維を編成することで、上述の効果が得られる。
この目的を達成するために、当該編地端について、超低温熱融着性弾性繊維を次のいずれかの方法で編成する。
(1)少なくとも1種類の非弾性繊維と、超低温熱融着性弾性繊維とを使用してプレーティング編とする。
(2)少なくとも1種類の非弾性繊維と、超低温熱融着性弾性繊維を含む複合糸とを使用してプレーティング編とする。
(3)超低温熱融着性弾性繊維を含む複合糸のみで編成する。
編み込む部位は、1cmから6cmの幅、コース数は度目設定によるが、30コースから200コース程度である。超低温熱融着性弾性繊維を用いて平編、ゴム編、擬似リブ編(ニットミスの平編)をこの幅で編成することで、この部位を裁断したままの状態で製品として用いることができ、編み終わり部を折り返して縫製することなく、切りっぱなしで使用することができる。また止め編のまま、折り返し縫製せずとも、編地端がカールしないため、未処理のまま使用することも可能である。
裾部や袖口部、身頃部の編地端の編成には、上記(1)から(3)のいずれかの方法で、超低温熱融着性弾性繊維を編成する、または捨て糸を挟んで2コース以上20コース以内に超低温熱融着性弾性繊維単独、または超低温熱融着性を含む複合糸を使用することで、捨て糸コースの糸抜きを行った後もほつれることなく縫製が容易である。または超低温熱融着性繊維により編目間が接着されることで、編目が固定化されることから、裁断部のカールが抑えられ、また、縫製せずに切りっぱなしのまま使用することもできる。
プリセットした後、製品が各部位の成型編地からなる場合は、必要に応じてミシンにより各成型編地を縫製し、編地製品の形体とする。更には必要に応じて染色加工等を施す。これらは公知の条件、工程で行なうことができる。
このプリセットが行われる場合には、この熱処理により超低温熱融着性弾性繊維が適度に融解し、繊維相互が熱融着する。
このように熱融着させることで、成型編地の各処理工程(特に染色工程)における編地端からのほつれを防止することが可能となる。
前述のとおり、この場合の染色加工は、製品形状を有する編地を染料中にそのまま投入し、攪拌することにより染色を施すものであるが、編地端に用いられた超低温熱融着性弾性繊維がプリセット工程で融着されているため、その端部が固定化され、激しい攪拌に曝されても、端からほつれてしまうことは無かった。
また、場合によっては、プリセット工程を経る事無く、直接染色加工されることもあるが、その場合には、染色工程時にかかる「熱」により編地端が固定されることになり、この場合にも、ほつれが生じる可能性を低減することができる。
超低温熱融着性弾性繊維としては、超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を用いるのが好ましい。超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を用いることで、耐久性の高い編地を得ることができ、また、伸度の求められる部位に対して、好ましく用いることができる。また、成型編地に使用された超低温熱融着性弾性繊維の熱融着力は、3.5cN以上であることが好ましい。
(1)測定対象となる成型編地の編み終わりから解編し、編込まれている口数分の超低温熱融着性弾性繊維を取り出す。
(2)熱融着力を以下の方法で測定する。
引張試験機[島津製作所(製)精密万能試験機]上部チャックに把持した編地の端から取り出された超低温熱融着性弾性繊維1本を0.1cNの荷重下で下部チャックに把持し、つかみ間隔(チャック間隔)100mm、引張速度100mm/分で引張り、編地から弾性繊維を解編する時の張力を測定する。
次いで、熱融着部位が解離する度に計測される解編張力のピーク点について、解編応力が安定する伸長量100mmから200mmの間で値が大きい3番目までのピーク点を平均して、ピーク平均解編張力(cN)を求める。
同様にして、別に取り出された超低温熱融着性弾性繊維のピーク平均解編張力をそれぞれ測定し、それらのピーク平均解編張力の平均値を算出し、熱融着力(cN)とする。
即ち、2倍伸長下、110℃で45秒間乾熱処理したときの耐熱強力保持率の値が50%以上、特に70%以上であることが好ましい。耐熱強力保持率が50%未満では、ランやほつれ防止効果があっても超低温熱融着性弾性繊維の伸長回復性が低下したり、物性低下が大きくなるので好ましくない。耐熱強力保持率の上限は特に制限されないが、通常110%以下、特に100%以下である。
超低温熱融着性弾性繊維を把握長8cmで保持し、16cmに伸長する。伸長した状態で所定温度に保った熱風乾燥機中に45秒間入れ、乾熱処理を行う。熱処理後の超低温熱融着性弾性繊維の破断時強力を、定伸長の引っ張り試験機を使用し、把握長5cm、伸長速度500m/分で測定する。測定時の環境は温度20℃、相対湿度65%とする。熱処理前の繊維に対する耐熱強力保持率を表示する。
超低温熱融着性弾性繊維を把握長8cmで保持し、16cmに伸長する。伸長した状態で所定温度に保った熱風乾燥機中に45秒間入れ、乾熱処理を行う。熱処理終了より30秒後に把握長を4cmまで狭くして、糸を弛ませた状態にする。熱処理終了より5分30秒後、把握長を大きくし、やや伸長した状態にした後、1mmずつ把握長を狭くしていく。全糸に注目し、糸が弛み始めたところの長さを測定する。測定時の環境は温度20℃、相対湿度65%とする。
次の式で熱セット率を求める。
熱セット率(%)=[(16cm−測定値cm)/8cm]×100
残留歪み=(残留伸び、cm/4)×100(%)
1.編地端処理用糸の作成
カバリング糸の芯糸として超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維(日清紡績(株)製 モビロンRLL)110デシテックスを、鞘糸として東レ(株)製ナイロン仮撚加工糸13デシテックス5フィラメントZ撚を用いて、カバリング機を使用し、該芯糸をドラフト2.3倍で延伸しつつ、該芯糸に撚り数600T/m、ドラフト2.3倍でZ撚に該鞘糸を巻付け、シングルカバリング糸を得た。
なお、芯糸として用いたモビロンRLLは、融点が86℃、2倍伸長下110℃で45秒間乾熱処理した場合の耐熱強力保持率が70%、2倍伸長下120℃で45秒間乾熱処理した場合の耐熱強力保持率が50%であった。
カバリング糸の芯糸として非熱融着ポリウレタン弾性繊維(日清紡績(株)製 モビロンK)22デシテックスを、鞘糸として東レ(株)製ナイロン仮撚加工糸78デシテックスを用いて、カバリング機を使用し、該芯糸をドラフト2.3倍で延伸しつつ、該芯糸に撚り数600T/m、ドラフト3.4倍でS、Z撚に該鞘糸を巻付け、シングルカバリング糸を得た。
大竹製作所製の積極糸送り装置が設置されている針本数360本、4口編ストッキング編機(永田精機製 KT4−4)を使用した。身生地用の糸をS、Z交互に使用して、まずウエストゴムを袋編にて編成し、次いでパンツ部を平編にて編成、さらにレッグ部を平編にて編成し、6分丈の編地を得た。そのまま続けてふくらはぎ部の袋編を編成し、袋編の編み終り部10コースに編地端処理用糸を平編にて編成した。
80℃で15分の蒸気加熱でプリセットした後、3.で編成した2枚の編地を縫製してレギンスの形状にした後、ポット染色型染色試験機を使用し、浴比1:20、95℃、50分で染色処理した。仕上げとして、湿熱セット処理(株)芦田製作所製のスチームセッターを使用し、縫製後の編地を幅11cmのアルミ製型板(足型)に入れた状態で、該編地を110で10秒間湿熱処理し、レギンスを作製した。
仕上がったレギンスの編地端に使用した超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維の熱融着力は、編地端から解編できない程度に融着しており、「完全熱融着」と評価した。
1.身生地用糸の作成
カバリング糸の芯糸として非熱融着ポリウレタン弾性繊維(日清紡績(株)製 モビロンK)22デシテックスを、鞘糸として東レ(株)製ナイロン糸22デシテックスを用いて、カバリング機を使用し、該芯糸をドラフト3.0倍で延伸しつつ、該芯糸に撚り数1200T/m、ドラフト3.0倍でS、Z撚に該鞘糸を巻付け、シングルカバリング糸を得た。
成型編機(サントニー社製)を使用してパンツを作製した。身生地用の糸をS、Z交互に使用して、まずウエスト部を袋編にて編成し、次いで身生地部を平編にて編成し、さらに裾部の袋編を編成した。連続した、抜き糸の手前5コースに、超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維(日清紡績(株)製 モビロンRLL)56デシテックスを用いて、平編にて編成した。抜き糸を編成した後、同様にウエスト部の袋編、身生地部の平編、裾部の袋編、超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を編成し、抜き糸を編成する、という順で繰り返し、連続したパンツ型の編地を得た。
抜き糸を外した後、編目を安定化するために、編成されたパンツを蒸気で100℃20分放縮処理した。これにより、超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維相互が熱融着し、ほつれ止め効果を得た。超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維の熱融着力は編地端から解編できないほどであり「完全熱融着」と評価した。
実施例1と同様に染色した後、パンツのウエストゴム部、裾部を袋状に縫製し、仕上げセットを行った。
染色中に編地端にから糸がほつれることなく、製品収率は向上した。また、編地端にカバーステッチ等のほつれ止め縫製をする必要がなく、生産性は向上した。
実施例1、2と同様にして、表1に記載した条件のとおり、編地端部分、及び身生地部分を編成し、成型編地を作製した。
2 身生地
3 超低温熱融着性弾性繊維
4 ウエストゴム部
5 裾ゴム部
6 抜き糸部
Claims (8)
- 融点が120℃以下の超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維が、1コース目から2〜200コースまでの編地端のみに使用されてなる編地が、熱処理されることにより前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維相互が熱融着してなることを特徴とする成型編地。
- 前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維が、その回りに非弾性繊維を被覆された複合糸であることを特徴とする請求項1記載の成型編地。
- 前記複合糸が、芯糸に前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を、鞘糸に非弾性繊維を使用したシングルカバリングヤーンであることを特徴とする請求項2記載の成型編地。
- 前記シングルカバリングヤーンが、芯糸として、繊度が11〜470dtexの前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を使用し、鞘糸として、繊度が5〜78dtexの前記非弾性繊維を使用したものであって、シングルカバリングヤーンを作製する際の撚り数が100〜2200T/mであることを特徴とする請求項3記載の成型編地。
- 前記シングルカバリングヤーンが、芯糸として、繊度が33〜156dtexの前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を使用し、鞘糸として、繊度が5〜56dtexの前記非弾性繊維を使用したものであって、シングルカバリングヤーンを作製する際の撚り数が100〜1800T/mであることを特徴とする請求項4記載の成型編地。
- 前記編地端が、少なくとも一種類の非弾性繊維と、前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維、又は前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維を含む複合糸とによるプレーティング編で形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の成型編地。
- 前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維の熱融着力が、3.5cN以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の成型編地。
- 前記超低温熱融着性ポリウレタン弾性繊維の耐熱強力保持率が、2倍伸長下、110℃で45秒間乾熱処理をした場合に、50%以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の成型編地。
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