JP5835616B2 - 玉挙動計測方法および玉挙動計測装置 - Google Patents
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Description
玉軸受を設計したり、玉軸受の使用条件を定めたりするのに当たって、玉の挙動を解析することは重要である。
ところで、玉軸受では玉のすべりが生じることがある。玉のすべりは玉軸受の最適設計に大きく寄与する。
そこで、この発明の目的は、玉軸受における玉のすべりを良好に計測することができる玉挙動計測方法および玉挙動計測装置を提供することである。
この発明の方法によれば、玉が転動状態にある玉軸受を撮像する。そして、撮像画像に含まれる、玉表面におけるリング照明の反射光に基づいて、玉の公転速度を算出する。軌道面の中心軸線上に撮像レンズおよびリング照明の中心が配置されているので、玉が円軌道上のどの位置にあっても、玉の所定位置(中心近傍)でリング照明からの照明光が反射する。したがって、撮像レンズによる撮像画像に基づいて玉の正確な周方向位置を特定することができるので、この周方向位置に基づいて、玉の公転速度を求めることができる。
前記一方の軌道輪の公転速度がわかれば、前記一方の軌道輪の公転速度に基づいて、理論上の玉の公転速度を算出することも可能であるので、その理論上の玉の公転速度と、撮像画像から得られた玉の公転速度とを比較することにより、玉のすべりを算出することができる。撮像画像から得られる前記一方の軌道輪の公転速度に基づいて理論上の玉の公転速度を算出することにより、玉のすべりを精度良く検出することができる。
また、玉が一公転する間の複数の周方向位置における玉のすべりを算出することができる。これにより、玉の周方向位置での局所的なすべりを良好に検出することができる。
請求項4に記載の発明は、前記軌道輪公転速度算出手段は、撮像画像に含まれる、前記第1のマーカの位置と前記内輪および外輪のうち他方の軌道輪の表面の所定位置に付された第2のマーカ(Q)の位置とに基づいて、前記複数の周方向位置における前記一方の軌道輪の公転速度を算出しており、前記すべり算出手段は、算出された複数の周方向位置における玉の公転速度と、算出された複数の周方向位置における前記一方の軌道輪の公転速度と、算出された複数の周方向位置における前記他方の軌道輪の公転速度とに基づいて、複数の周方向位置における玉のすべりを算出する、請求項3に記載の玉挙動計測装置である。
図1は、本発明の一実施形態に係る玉挙動計測装置1の概略構成を示す斜視図である。玉挙動計測装置1は、計測対象である玉軸受10における玉13の挙動を計測するための装置である。
玉挙動計測装置1は、玉軸受10を鉛直姿勢に保持しつつ、その内輪(他方の軌道輪)11および外輪(一方の軌道輪)12の一方を回転させる回転保持機構(図示しない)と、回転保持機構に保持された玉軸受10に対して光を照射するためのリング照明18と、回転保持機構に保持された玉軸受10を撮像するためのカメラ(撮像手段)17と、カメラ17による撮像画像を処理するための画像処理部22とを備えている。
リング照明18は、回転保持機構による回転軸線O上に中心を有する円環状をなしている。リング照明18は、回転保持機構側(すなわち図1で示す右奥側)に向く背面視(図1に示す右奥側から見た)円形の照射面(図示しない)を有し、この照射面からは、回転保持機構に対して均一に光が照射される。この照射面は、回転軸線Oに直交する同一平面に含まれている。リング照明18は、回転保持機構による保持対象の玉軸受10の外輪12(より詳しくは軌道面11A,12A)よりも大径であり、そのため、回転保持機構に保持された玉軸受10の全体に光を照射することができるようになっている。
この画像処理部22は、入力された撮像画像に対して所定の画像処理を施す処理部であり、後述するように、反射光認識部23および玉中心演算部24としてそれぞれ機能する。
玉軸受10は、内輪11と、内輪11と同心に配置された外輪12と、内輪11および外輪12間に介装された複数の転動体としての玉13と、複数の玉13を周方向に間隔を空けて保持するための保持器14とを備えた深溝玉軸受である。内輪11と外輪12とがそれらの中心軸線まわりに相対回転可能である。玉13は、内輪11の深溝型の内輪軌道面11Aと外輪12の深溝型の外輪軌道面(軌道面)12Aとの間に介在されている。
図3および図4は、玉挙動計測装置1に玉軸受10をセットした状態を示す正面図および側面図である。図5は、玉13の表面におけるリング照明18の反射光を示す図である。
図3に示すように、外輪12における正面側の端面の所定位置には、マーカ(第1のマーカ)Pが付されている。マーカPは、図3および図5では矩形で表されているが、たとえば円形をなしており、たとえば黒色である外輪12に対し白色を有している。マーカPの内外の境界部分が、たとえば太い黒ラインで形成されている。マーカPは、塗料やシール等を用いて形成されることが多いが、刻印などで形成されていてもよい。
また、外輪12の回転に際して、リング照明18からの光が玉軸受10に向けて照射されるとともに、カメラ17による撮像が実行される。
カメラ17の撮像レンズ20には、各玉13の表面で反射されたリング照明18の反射光が入射される。
たとえばリング照明18のA点(図3および図4参照)から照射された光は、玉13の表面上におけるa点(図3および図4参照)で反射してカメラ17に入射する。同様に、リング照明18のB点(図4参照)、C点(図3および図4参照)およびD(図3参照)点から照射された光は、それぞれ玉13の表面上におけるb点(図3参照)、c点(図3および図4参照)およびd点(図3参照)で反射してカメラ17に入射する。これにより、図3および図5に示すように、玉13の表面での反射光27は環状の形態で撮像される。
また、カメラ17によって、外輪12の正面側端面に付されたマーカP、および内輪11の正面側端面に付されたマーカQも撮像される。
以下、一連の計測作業で撮像された個々の撮像画像の処理について説明する。
まず、画像処理部22は、カメラ17によって撮像画像の入力を受け付け、メモリに記憶する(S1:画像記憶)。
次いで、画像処理部22は、各玉13の表面の反射光27を認識する(S2:反射光認識。反射光認識部23(図1参照)の機能を実現)。また、画像処理部22はマーカPおよびマーカQも認識する。反射光27の認識のための処理は、たとえば、撮像画像における玉13に対し、所定の輝度値を闇値とする2値化処理を施すことにより、反射光27を抽出する。換言すると、反射光27は、その周囲の玉13の表面よりも輝度が高くなるため、輝度が高い部分と低い部分とを2階調に変換することによって反射光27を抽出することができる。そして、抽出された反射光27を認識する。
また、画像処理部22は、当該撮像画像の前後の撮像画像と、当該撮像画像とにおける玉13の中心位置の位置変化から、玉13の公転速度Vを算出する(ステップS4)。
さらにまた、画像処理部22は、当該撮像画像の前後の撮像画像と、当該撮像画像とにおけるマーカQの位置変化から、内輪11の公転速度Niを算出する(ステップS6)。
ステップS5およびS6の後、画像処理部22は、算出された外輪12の公転速度、算出された内輪11の公転速度、および次式(1)に基づいて、理論上の玉13の公転速度(理論速度)Ncを算出する(ステップS7)。
なお、Dwは玉13の直径であり、Dpwは玉13のセットのピッチ径である。
また、玉軸受10が深溝玉軸受でなく、アンギャラ型玉軸受である場合には、次式(2)に基づいて、理論上の玉13の公転速度Ncが算出される(ステップS7)。
次いで、画像処理部22は、ステップS4で算出された玉13の公転速度V、およびステップS7で算出された理論上の玉13の公転速度Ncに基づいて、玉13のすべり量を算出する(ステップS8)。玉13のすべり量は、公転速度Vを公転速度Ncで序することによって算出される。
図7のグラフの横軸には、基準周方向位置からの玉13の公転角(周方向位置)(°)を示し、縦軸には、外輪12の回転速度Neおよび玉13の公転速度Vを示す。外輪12の回転速度Neは周方向位置に応じて異ならされている(変化している)。この場合、図7に示すように、外輪12の回転速度Neの速度変化は等幅で一様に変化しているが、玉13の公転速度Vは、必ずしも等幅の変化であるとは言えない。
図8のグラフの横軸には、基準周方向位置からの玉13の公転角(周方向位置)(°)を示し、縦軸には、玉13のすべり量を示す。このように、各周方向位置における玉13のすべり量変化を把握することができる。
以上により、この実施形態によれば、玉13が公転状態にある玉軸受10を撮像する。そして、撮像画像に含まれる、計測対象の玉13の表面におけるリング照明18の反射光27に基づいて玉13の位置座標を算出する。玉軸受10の中心軸線(軌道面11A,12Aの中心軸線)と合致する回転軸線O上に、カメラ17の撮像レンズ20およびリング照明18の中心が配置されているので、玉13が周方向のどの位置にあっても、玉の所定位置(中心近傍)でリング照明18からの照明光が反射する。そのため、カメラ17による撮像画像に基づいて玉13の正確な周方向位置を特定でき、これにより、撮像画像に基づいて玉13の公転速度Vを求めることができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
Claims (4)
- 内輪、外輪、玉および保持器を有する玉軸受の玉の挙動を計測するための玉挙動計測方法であって、
前記内輪および外輪のうち回転させる一方の軌道輪の軌道面の中心軸線上に中心を有するリング照明によって、前記玉軸受を照明するリング照明ステップと、
前記中心軸線上に配置された撮像レンズを有する撮像手段が、玉が転動状態にある前記玉軸受を、玉が一公転する間に複数回撮像する撮像ステップと、
前記複数の撮像画像に含まれる、玉表面における前記リング照明の反射光に基づいて、複数の周方向位置における玉の公転速度を算出する玉公転速度算出ステップと、
前記複数の撮像画像に含まれる、前記一方の軌道輪の表面の所定位置に付された第1のマーカの位置に基づいて、前記複数の周方向位置における前記一方の軌道輪の公転速度を算出する軌道輪公転速度算出ステップと、
算出された前記複数の周方向位置における玉の公転速度と、算出された前記複数の周方向位置における前記一方の軌道輪の公転速度とに基づいて、複数の周方向位置における玉のすべりを算出するすべり算出ステップとを含む、玉挙動計測方法。 - 前記軌道輪公転速度算出ステップは、撮像画像に含まれる、前記第1のマーカの位置と前記内輪および外輪のうち他方の軌道輪の表面の所定位置に付された第2のマーカの位置とに基づいて、複数の周方向位置における前記一方の軌道輪の公転速度を算出しており、
前記すべり算出ステップは、算出された複数の周方向位置における玉の公転速度と、算出された複数の周方向位置における前記一方の軌道輪の公転速度と、算出された複数の周方向位置における前記他方の軌道輪の公転速度とに基づいて、複数の周方向位置における玉のすべりを算出する、請求項1に記載の玉挙動計測方法。 - 内輪、外輪、玉および保持器を有する玉軸受の玉の挙動を計測するための玉挙動計測装置であって、
前記内輪および外輪のうち回転させる一方の軌道輪の軌道面の中心軸線上に中心を有し、前記玉軸受を照明するリング照明と、
前記中心軸線上に配置された撮像レンズを有し、玉が転動状態にある前記玉軸受を、玉が一公転する間に複数回撮像する撮像手段と、
前記複数の撮像画像に含まれる、玉表面における前記リング照明の反射光に基づいて、複数の周方向位置における玉の公転速度を算出する玉公転速度算出手段と、
前記複数の撮像画像に含まれる、前記一方の軌道輪の表面の所定位置に付された第1のマーカの位置に基づいて、前記複数の周方向位置における前記一方の軌道輪の公転速度を算出する軌道輪公転速度算出手段と、
算出された前記複数の周方向位置における玉の公転速度と、算出された前記複数の周方向位置における前記一方の軌道輪の公転速度とに基づいて、複数の周方向位置における玉のすべりを算出するすべり算出手段とを含む、玉挙動計測装置。 - 前記軌道輪公転速度算出手段は、撮像画像に含まれる、前記第1のマーカの位置と前記内輪および外輪のうち他方の軌道輪の表面の所定位置に付された第2のマーカの位置とに基づいて、複数の周方向位置における前記一方の軌道輪の公転速度を算出しており、
前記すべり算出手段は、算出された複数の周方向位置における玉の公転速度と、算出された複数の周方向位置における前記一方の軌道輪の公転速度と、算出された複数の周方向位置における前記他方の軌道輪の公転速度とに基づいて、複数の周方向位置における玉のすべりを算出する、請求項3に記載の玉挙動計測装置。
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