以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の参考技術1》
本発明の参考技術1について説明する。参考技術1は、本発明に係る冷凍装置(10)である。
〈空気調和装置の全体構成〉
図1に示すように、本参考技術1の冷凍装置(10)は、冷房運転と暖房運転を行う空気調和装置により構成されている。冷凍装置(10)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備えている。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素が充填されている。また、冷媒回路(11)には、圧縮機(30)、四路切換弁(12)、室外熱交換器(14)、室内熱交換器(15)、第1膨張弁(16)、第2膨張弁(17)及び気液分離器(18)が接続されている。
圧縮機(30)は、密閉容器状のケーシング(40)を備えている。ケーシング(40)内には、第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)と電動機(47)とが収容されている。冷媒回路(11)では、第1圧縮機構(41)が低段側圧縮機構となって第2圧縮機構(42)が高段側圧縮機構になる二段圧縮冷凍サイクルが行われる。
また、ケーシング(40)には、低段吸入管(31)、低段吐出管(32)、第1高段吸入管(33)、第2高段吸入管(34)、連絡吐出管(35)、連絡吸入管(36)、及び高段吐出管(37)が接続されている。本参考技術1では、低段吐出管(32)の入口から第1高段吸入管(33)の出口及び第2高段吸入管(34)の出口に至るまでの通路が、第1圧縮機構(41)から第2圧縮機構(42)へ向かう冷媒が流れる中間通路(93)を構成している。
低段吸入管(31)は、一端が四路切換弁(12)の第3ポート(P3)に接続され、他端が第1圧縮機構(41)の吸入側に接続されている。低段吐出管(32)は、一端が第1圧縮機構(41)の吐出側に接続され、他端が第1高段吸入管(33)と第2高段吸入管(34)に分岐している。低段吐出管(32)には、密閉容器状のマフラー(28)が設けられている。また、第1高段吸入管(33)は、第2圧縮機構(42)の第1圧縮部(43)の吸入側に接続され、第2高段吸入管(34)は、第2圧縮機構(42)の第2圧縮部(44)の吸入側に接続されている。また、連絡吐出管(35)は、一端が第1圧縮部(43)の吐出側に接続され、他端が連絡吸入管(36)に接続されている。また、連絡吸入管(36)は、ケーシング(40)内における第2圧縮機構(42)と電動機(47)との間の第1空間(45)に開口している。高段吐出管(37)は、一端がケーシング(40)内における第1圧縮機構(41)と電動機(47)との間の第2空間(46)に開口し、他端が四路切換弁(12)の第1ポート(P1)に接続されている。なお、圧縮機(30)におけるケーシング(40)の内部の詳細については後述する。
室外熱交換器(14)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器により構成されている。室外熱交換器(14)の近傍には、室外ファン(24)が配置されている。室外熱交換器(14)では、室外ファン(24)によって送られる室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室外熱交換器(14)の一端から延びる冷媒配管は、四路切換弁(12)の第2ポート(P2)に接続されている。室外熱交換器(14)の他端から延びる冷媒配管は、気液分離器(18)内の底部に開口している。この冷媒配管には、開度可変の電子膨張弁により構成された第1膨張弁(16)が設けられている。
室内熱交換器(15)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器により構成されている。室内熱交換器(15)の近傍には、室内ファン(25)が配置されている。室内熱交換器(15)では、室内ファン(25)によって送られる室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室内熱交換器(15)の一端から延びる冷媒配管は、四路切換弁(12)の第4ポート(P4)に接続されている。室内熱交換器(15)の他端から延びる冷媒配管は、気液分離器(18)内の底部に開口している。この冷媒配管には、開度可変の電子膨張弁により構成された第2膨張弁(17)が設けられている。
気液分離器(18)には、インジェクション通路(26)を構成するインジェクション管(26)の一端が接続されている。インジェクション管(26)は、気液分離器(18)内の上部に開口している。インジェクション管(26)の他端は低段吐出管(32)の第1マフラー(28)に接続されている。つまり、インジェクション管(26)は、第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)との間の中間通路(93)に接続されている。インジェクション管(26)には、開閉自在の第4電磁弁(27)が設けられている。
四路切換弁(12)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し且つ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する第1連通状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し且つ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する第2連通状態(図1に破線で示す状態)とが切換自在に構成されている。
〈圧縮機の構成〉
図2に示すように、圧縮機(30)は、縦長で密閉容器状のケーシング(40)を備えている。ケーシング(40)内には、上述したように、第1圧縮機構(41)と、第2圧縮機構(42)と、第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)を駆動する電動機(47)とが収容されている。第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)は、1本の駆動軸(50)で機械的に連結されている。
第1圧縮機構(41)は、図2における電動機(47)の上側に配置されている。第2圧縮機構(42)は、電動機(47)の下側に配置されている。第2圧縮機構(42)は、第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)を備えている。第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)は、第1圧縮部(43)が下側に位置するように、上下二段に重ねられている。
ケーシング(40)の頂部には、低段吸入管(31)及び低段吐出管(32)が貫通している。上述したように、低段吸入管(31)は第1圧縮機構(41)の吸入側に接続され、低段吐出管(32)は第1圧縮機構(41)の吐出側に接続されている。また、ケーシング(40)の胴部には、第1高段吸入管(33)、第2高段吸入管(34)、連絡吐出管(35)、連絡吸入管(36)、及び高段吐出管(37)が貫通している。上述したように、第1高段吸入管(33)は第1圧縮部(43)の吸入側に接続され、第2高段吸入管(34)は第2圧縮部(44)の吸入側に接続されている。また、連絡吐出管(35)は第1圧縮部(43)の吐出側に接続され、連絡吸入管(36)は第2圧縮機構(42)と電動機(47)との間の第1空間(45)に開口している。また、高段吐出管(37)は第1圧縮機構(41)と電動機(47)との間の第2空間(46)に開口している。
電動機(47)は、ブラシレスDCモータにより構成されている。電動機(47)は、ステータ(48)とロータ(49)とを備えている。ステータ(48)は、ケーシング(40)の胴部に固定されている。一方、ロータ(49)は、ステータ(48)の内側に配置され、駆動軸(50)の主軸部(50a)に連結されている。なお、電動機(47)の回転速度は、インバータ制御によって調節可能となっている。
駆動軸(50)は、上述の主軸部(50a)と、第1偏心部(50b)と、第2偏心部(50c)と、第3偏心部(50d)とを備えている。第1偏心部(50b)は、主軸部(50a)よりも小径の円柱状に形成され、主軸部(50a)の上端面に立設されている。第1偏心部(50b)の軸心は、主軸部(50a)の軸心に対して偏心している。また、第2偏心部(50c)と第3偏心部(50d)は、駆動軸(50)の下部寄りの位置にそれぞれ設けられている。第2偏心部(50c)と第3偏心部(50d)は、共に主軸部(50a)よりも大径に形成されている。第2偏心部(50c)の軸心と第3偏心部(50d)の軸心は、それぞれ主軸部(50a)の軸心に対して偏心している。第2偏心部(50c)と第3偏心部(50d)とは、駆動軸(50)の軸心を中心として互いに180°位相がずれている。
駆動軸(50)の下端部には、油溜まりに浸漬する給油ポンプ(66)が設けられている。また、駆動軸(50)には、給油ポンプ(66)が吸い上げた冷凍機油が流通する給油通路(64)が形成されている。給油通路(64)は、駆動軸(50)の内部を軸方向に沿って延びている。この圧縮機(30)では、駆動軸(50)の回転に伴って、給油ポンプ(66)が吸い上げた冷凍機油が給油通路(64)を通じて各圧縮機構(41,42)の摺動部及び駆動軸(50)の軸受部に供給される。
第1圧縮機構(41)は、容積型の流体機械により構成されている。第1圧縮機構(41)は、容積型の流体機械の中でも固有圧縮比型の流体機械により構成されている。具体的に、第1圧縮機構(41)は、スクロール式の流体機械により構成されている。第1圧縮機構(41)は、図2及び図3に示すように、固定スクロール(51)と可動スクロール(52)とを備えている。
固定スクロール(51)は、渦巻き状の固定側ラップ(51a)と、略円板状の固定側鏡板部(51b)とを備えている。固定側ラップ(51a)は、固定側鏡板部(51b)の前面(図2における下面)に立設されている。
可動スクロール(52)は、渦巻き状の可動側ラップ(52a)と、略円板状の可動側鏡板部(52b)と、筒状の突出部(52c)とを備えている。可動スクロール(52)は、オルダムリング(54)を介して、駆動軸(50)の軸受部が形成されたハウジング部材(38)の上面に載置されている。なお、オルダムリング(54)は、偏心回転運動中の可動スクロール(52)が自転することを阻止する。
可動側ラップ(52a)は、可動側鏡板部(52b)の前面(図2における上面)に立設されている。可動側ラップ(52a)は、固定側ラップ(51a)に噛み合わされている。
本参考技術1の第1圧縮機構(41)は、可動側ラップ(52a)と固定側ラップ(51a)とが非対称に形成された非対称渦巻き構造になっている。固定側ラップ(51a)の巻き数(渦巻きの長さ)は、可動側ラップ(52a)の巻き数(渦巻きの長さ)よりも多くなっている。なお、固定側ラップ(51a)の巻数は、固定側ラップ(51a)の渦巻きが後述する吸入ポート(55)の外側の位置まで延びているものとして数えている。
また、突出部(52c)は、可動側鏡板部(52b)の背面(図2における下面)に立設されている。突出部(52c)には、駆動軸(50)の第1偏心部(50b)が挿入されている。
第1圧縮機構(41)では、図3に示すように、固定側ラップ(51a)と可動側ラップ(52a)との間に、低段側圧縮室(53)を構成する複数の圧縮室(53)が形成されている。複数の圧縮室(53)は、固定側ラップ(51a)の内側面と可動側ラップ(52a)の外側面との間の可動外側室(53a)と、固定側ラップ(51a)の外側面と可動側ラップ(52a)の内側面との間の可動内側室(53b)とから構成されている。
また、第1圧縮機構(41)では、固定スクロール(51)に吸入ポート(55)が形成されている。吸入ポート(55)は、固定側鏡板部(51b)の前面から突出する外縁部(51c)に形成されている。吸入ポート(55)には低段吸入管(31)が接続されている。吸入ポート(55)には、圧縮室(53)から低段吸入管(31)へ戻る冷媒の流れを禁止する吸入逆止弁が設けられている(図示省略)。
吸入ポート(55)は、可動スクロール(52)の偏心回転運動に伴って、可動外側室(53a)と可動内側室(53b)のそれぞれに間欠的に連通する。第1圧縮機構(41)では、可動外側室(53a)に可動側ラップ(52a)の外周側端部の外側から冷媒が流入し、可動内側室(53b)に可動側ラップ(52a)の外周側端部の内側から冷媒が流入する。
また、固定スクロール(51)の固定側鏡板部(51b)には吐出ポート(57)が形成されている。吐出ポート(57)は、固定側鏡板部(51b)の中央部に形成された貫通孔により構成されている。吐出ポート(57)の出口は、固定スクロール(51)の上側の吐出室(56)に開口している。吐出ポート(57)は、可動スクロール(52)の偏心回転運動に伴って、可動外側室(53a)と可動内側室(53b)のそれぞれに間欠的に連通する。
また、固定側鏡板部(51b)には、リリーフポート(58)も形成されている。リリーフポート(58)は、一端が圧縮途中の圧縮室(53)に開口し、他端が吐出室(56)に開口している。固定側鏡板部(51b)には、リリーフポート(58)を開閉するリリーフバルブ(59)が設けられている。リリーフバルブ(59)は、リード弁により構成されている。リリーフポート(58)及びリリーフバルブ(59)は、圧縮過程の冷媒を圧縮室から逃がすためのリリーフ機構(58,59)を構成している。リリーフ機構(58,59)によれば、圧縮機(30)の始動時や、インジェクション管(26)から導入されるガス冷媒の流量が少なくなった時の過圧縮損失が緩和される。
なお、ケーシング(40)内における第1圧縮機構(41)の上側の空間(65)は、吸入ポート(55)に連通している。なお、この空間(65)が、吐出ポート(57)に連通するようにしてもよい。
以上の構成により、第1圧縮機構(41)では、駆動軸(50)が回転すると、可動スクロール(52)が、図4の(A)から(D)の順に偏心回転する。そして、その偏心回転に伴って、可動外側室(53a)及び可動内側室(53b)では、低段吸入管(31)を通じて導入された冷媒が圧縮される。可動外側室(53a)及び可動内側室(53b)で圧縮された冷媒は、吐出ポート(57)を通じて吐出室(56)に吐出されて、低段吐出管(32)に流入する。
続いて、第2圧縮機構(42)について説明する。第2圧縮機構(42)は、上述したように、第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)を備えている。第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)は、共に容積型の流体機械により構成されている。第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)は、容積型の流体機械の中でも可変圧縮比型の流体機械により構成されている。具体的に、第1圧縮部(43)及び第2圧縮部(44)は、共にロータリ式の流体機械により構成されている。
第1圧縮部(43)は、図2及び図5に示すように、共に円環状に形成された第1シリンダ(71)及び第1ロータリピストン(72)を備えている。なお、図5において括弧付きの符号が併記されている部材は、括弧の前に記載されている符号が第1圧縮部(43)の符号を表し、括弧内の符号が第2圧縮部(44)の符号を表している。この点は、図6についても同様である。
第1シリンダ(71)は、下側のリヤヘッド(68)と上側のミドルプレート(69)とによって挟み込まれている。第1シリンダ(71)の両端は、リヤヘッド(68)とミドルプレート(69)とによって閉塞されている。また、第1ロータリピストン(72)は、第1シリンダ(71)内に配置されている。第1ロータリピストン(72)の外径は、第1シリンダ(71)の内径よりも小さくなっている。第1シリンダ(71)の内周面と第1ロータリピストン(72)の外周面との間には、第1高段側圧縮室(73)が形成されている。第1ロータリピストン(72)の内側には、駆動軸(50)の第2偏心部(50c)が回転自在に嵌め込まれている。なお、リヤヘッド(68)には、駆動軸(50)を支持する第1軸受部(68a)が形成されている。
図5に示すように、第1ロータリピストン(72)の外周面には、平板状の第1ブレード(74)が突設されている。第1ブレード(74)は、区画部材(74)を構成し、第1吸入ポート(76)が開口する低圧側の第1室(73a)と、第1吐出ポート(77)が開口する高圧側の第2室(73b)とに、第1高段側圧縮室(73)を区画している。
第1ブレード(74)は、第1シリンダ(71)に対して揺動可能に設けられた一対の第1揺動ブッシュ(75)に対して、摺動自在に挟み込まれている。第1ロータリピストン(72)は、第1ブレード(74)と共に、第1シリンダ(71)に対して揺動可能になっている。
第1吸入ポート(76)は、第1シリンダ(71)に形成されている。第1吸入ポート(76)の入口側には、第1高段吸入管(33)が接続されている。第1吸入ポート(76)の出口は、一対の第1揺動ブッシュ(75)の一方の揺動ブッシュ(図5における右側の揺動ブッシュ)の近傍に開口している。
一方、第1吐出ポート(77)は、リヤヘッド(68)に形成されている。第1吐出ポート(77)の入口は、一対の第1揺動ブッシュ(75)の他方の揺動ブッシュ(図5における左側の揺動ブッシュ)の近傍に開口している。第1吐出ポート(77)の出口は、リヤヘッド(68)に形成された第1吐出室(78)に開口している。第1吐出室(78)には、連絡吐出管(35)が開口している。また、第1吐出室(78)には、第1高段側圧縮室(73)の内圧に応じて第1吐出ポート(77)を開閉する第1吐出弁(79)が設けられている。第1吐出弁(79)はリード弁により構成されている。第1吐出室(78)には、第1吐出弁(79)のリフト量を制限する第1弁押さえが設けられている(図示省略)。
第2圧縮部(44)は、第1圧縮部(43)と同じ機械要素により構成されている。第2圧縮部(44)は、共に円環状に形成された第2シリンダ(81)及び第2ロータリピストン(82)を備えている。
第2シリンダ(81)は、上側のフロントヘッド(67)と下側のミドルプレート(69)とによって挟み込まれている。第2シリンダ(81)の両端は、フロントヘッド(67)とミドルプレート(69)とによって閉塞されている。また、第2ロータリピストン(82)は、第2シリンダ(81)内に配置されている。第2ロータリピストン(82)の外径は、第2シリンダ(81)の内径よりも小さくなっている。第2シリンダ(81)の内周面と第2ロータリピストン(82)の外周面との間には、第2高段側圧縮室(83)が形成されている。第2ロータリピストン(82)の内側には、駆動軸(50)の第3偏心部(50d)が回転自在に嵌め込まれている。なお、フロントヘッド(67)には、駆動軸(50)を支持する第2軸受部(67a)が形成されている。
図5に示すように、第2ロータリピストン(82)の外周面には、平板状の第2ブレード(84)が突設されている。第2ブレード(84)は、区画部材(84)を構成し、第2吸入ポート(86)が開口する低圧側の第1室(83a)と、第2吐出ポート(87)が開口する高圧側の第2室(83b)とに、第2高段側圧縮室(83)を区画している。
第2ブレード(84)は、第2シリンダ(81)に対して揺動可能に設けられた一対の第2揺動ブッシュ(85)に対して、摺動自在に挟み込まれている。第2ロータリピストン(82)は、第2ブレード(84)と共に、第2シリンダ(81)に対して揺動可能になっている。
第2吸入ポート(86)は、第2シリンダ(81)に形成されている。第2吸入ポート(86)の入口側には、第2高段吸入管(34)が接続されている。第2吸入ポート(86)の出口は、一対の第2揺動ブッシュ(85)の一方の揺動ブッシュ(図5における右側の揺動ブッシュ)の近傍に開口している。
一方、第2吐出ポート(87)は、フロントヘッド(67)に形成されている。第2吐出ポート(87)の入口は、一対の第2揺動ブッシュ(85)の他方の揺動ブッシュ(図5における左側の揺動ブッシュ)の近傍に開口している。第2吐出ポート(87)の出口は、フロントヘッド(67)に形成された第2吐出室(88)に開口している。第2吐出室(88)は、第1空間(45)及び第2空間(46)を介して、高段吐出管(37)に連通している。また、第2吐出室(88)には、第2高段側圧縮室(83)の内圧に応じて第2吐出ポート(87)を開閉する第2吐出弁(89)が設けられている。第2吐出弁(89)はリード弁により構成されている。第2吐出室(88)には、第2吐出弁(89)のリフト量を制限する第2弁押さえが設けられている(図示省略)。
以上の構成により、各圧縮部(43,44)では、駆動軸(50)が回転すると、ロータリピストン(72,82)が、図6の(A)から(H)の順に偏心回転する。ロータリピストン(72,82)は、その内周面が偏心部(50c,50d)の外周面と油膜を介して摺接し、その外周面がシリンダ(71,81)の内周面と油膜を介して摺接しながら、偏心回転する。
第1圧縮部(43)では、駆動軸(50)の回転角が0°の状態から僅かに回転して、第1ロータリピストン(72)と第1シリンダ(71)の接触位置が第1吸入ポート(76)の出口を通過すると、第1吸入ポート(76)から第1高段側圧縮室(73)へ冷媒が流入し始める。そして、第1高段側圧縮室(73)へは、駆動軸(50)の回転角が360°になるまで冷媒が流入し続ける。そして、この状態から駆動軸(50)がさらに回転すると、冷媒の圧縮が開始される。第1高段側圧縮室(73)の冷媒は、第1高段側圧縮室(73)の内力が第1吐出室(78)の内圧を上回って、第1吐出弁(79)が開状態になると、第1吐出ポート(77)を通って、第1吐出室(78)へ吐出される。冷媒の吐出は、駆動軸(50)の回転角が360°になるまで続く。
一方、第2圧縮部(44)では、駆動軸(50)の回転角が0°の状態から僅かに回転して、第2ロータリピストン(82)と第2シリンダ(81)の接触位置が第2吸入ポート(86)の出口を通過すると、第2吸入ポート(86)から第2高段側圧縮室(83)へ冷媒が流入し始める。そして、第2高段側圧縮室(83)へは、駆動軸(50)の回転角が360°になるまで冷媒が流入し続ける。そして、この状態から駆動軸(50)がさらに回転すると、冷媒の圧縮が開始される。第2高段側圧縮室(83)の冷媒は、第2高段側圧縮室(83)の内力が第2吐出室(88)の内圧を上回って、第2吐出弁(89)が開状態になると、第2吐出ポート(87)を通って、第2吐出室(88)へ吐出される。冷媒の吐出は、駆動軸(50)の回転角が360°になるまで続く。なお、第2偏心部(50c)と第3偏心部(50d)とは、駆動軸(50)の軸心を中心として互いに180°位相がずれているので、第1圧縮部(43)の動作状態が図6(A)のとき、第2圧縮部(44)の動作状態は図6(E)となる。
また、本参考技術1では、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吸入容積V1(可動スクロール(52)の押しのけ容積)と、第1圧縮部(43)の第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2(第1ロータリピストン(72)の押しのけ容積)と、第2圧縮部(44)の第2高段側圧縮室(83)の吸入容積V3(第2ロータリピストン(82)の押しのけ容積)との比率が、下記の式1の値に設定されている。
V1:V2:V3=1.0:0.35:0.35 (式1)
なお、本参考技術1では、可動外側室(53a)の吸入容積と可動内側室(53b)の吸入容積とが等しくなっているが、可動外側室(53a)の吸入容積と可動内側室(53b)の吸入容積とが互いに相違する場合には、可動外側室(53a)の吸入容積と可動内側室(53b)の吸入容積の平均値が圧縮室(53)の吸入容積となる。
また、本参考技術1では、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4(吐出ポート(57)が連通した時点の圧縮室(53)の容積)と、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2と第2高段側圧縮室(83)の吸入容積V3の合計値(V2+V3)との間に、下記の式2に示す関係が成立している。つまり、第1圧縮機構(41)の吐出容積は、第2圧縮機構(42)の吸入容積よりも小さくなっている。従って、駆動軸(50)の1回転中に第1圧縮機構(41)から吐出される冷媒の体積は、駆動軸(50)の1回転中に第2圧縮機構(42)に吸入される冷媒の体積よりも小さくなる。
V4:V2+V3=0.5:0.7 (式2)
−運転動作−
次に、冷凍装置(10)の運転動作について説明する。この冷凍装置(10)は、冷房運転と暖房運転とに切り換え可能となっている。
〈冷房運転〉
冷房運転では、四路切換弁(12)が第1連通状態に設定された状態で、圧縮機(30)の運転が行われる。冷媒回路(11)では、室内熱交換器(15)が蒸発器となって室外熱交換器(14)が放熱器となる冷凍サイクルが行われる。この冷凍サイクルでは、冷凍サイクルの高圧圧力が二酸化炭素の臨界圧力よりも高くなる。この点は、後述する暖房運転でも同じである。
具体的に、圧縮機(30)の高段吐出管(37)から吐出された高圧冷媒は、四路切換弁(12)を経由して室外熱交換器(14)へ流入する。室外熱交換器(14)では、室外ファン(24)によって送られる室外空気へ冷媒が放熱する。室外熱交換器(14)で冷却された冷媒は、第1膨張弁(16)で中間圧力に減圧された後に、気液分離器(18)で液冷媒とガス冷媒とに分離される。このうち、ガス冷媒は、インジェクション管(26)を通じて第2圧縮機構(42)へ送られる。一方、液冷媒は、第2膨張弁(17)で低圧圧力まで減圧された後に、室内熱交換器(15)に流入する。
室内熱交換器(15)では、室内ファン(25)によって送られる室内空気から冷媒が吸熱して蒸発する。その結果、室内空気は冷却されて室内へ供給される。室内熱交換器(15)で蒸発した冷媒は、低段吸入管(31)を通って圧縮機(30)に吸入される。
圧縮機(30)では、低段吸入管(31)を流通した冷媒が第1圧縮機構(41)で圧縮される。第1圧縮機構(41)で圧縮された冷媒は、マフラー(28)に流入し、そこでインジェクション管(26)から供給される冷媒と合流する。そして、マフラー(28)から流出した冷媒は、第1圧縮部(43)と第2圧縮部(44)に分配される。
第1圧縮部(43)に分配された冷媒は、第1高段側圧縮室(73)で圧縮された後に、連絡吐出管(35)及び連絡吸入管(36)を通じて、第1空間(45)に流入する。一方、第2圧縮部(44)に分配された冷媒は、第2高段側圧縮室(83)で圧縮された後に、第1空間(45)に流入して、そこで第1圧縮部(43)で圧縮された冷媒と合流する。そして、第1空間(45)で合流した冷媒は、電動機(47)のコアカットやエアギャップを通って、第2空間(46)に流入して、高段吐出管(37)から吐出される。なお、低段吸入管(31)から圧縮機(30)に吸入された冷媒が高段吐出管(37)から吐出されるまでの過程は、後述する暖房運転でも同じである。
〈暖房運転〉
暖房運転では、四路切換弁(12)が第2連通状態に設定された状態で、圧縮機(30)の運転が行われる。冷媒回路(11)では室内熱交換器(15)が放熱器となって室外熱交換器(14)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
具体的に、圧縮機(30)の高段吐出管(37)から吐出された高圧冷媒は、四路切換弁(12)を経由して室内熱交換器(15)に供給される。室内熱交換器(15)では、室内ファン(25)によって送られる室内空気へ冷媒が放熱する。その結果、室内空気は加熱されて室内へ供給される。
室内熱交換器(15)で冷却された冷媒は、第2膨張弁(17)で中間圧力に減圧された後に、気液分離器(18)で液冷媒とガス冷媒とに分離される。このうち、ガス冷媒は、インジェクション管(26)を通じて第2圧縮機構(42)へ送られる。一方、液冷媒は、第1膨張弁(16)で低圧圧力まで減圧された後に、室外熱交換器(14)へ流入する。室外熱交換器(14)では、室外ファン(24)によって送られる室外空気から冷媒が吸熱して蒸発する。室外熱交換器(14)で蒸発した冷媒は、低段吸入管(31)を通って圧縮機(30)に吸入される。そして、圧縮機(30)では、第1圧縮機構(41)、第2圧縮機構(42)の順番で冷媒が圧縮されて、再び高段吐出管(37)から吐出される。
−参考技術1の効果−
本参考技術1では、第1圧縮機構(41)の吐出冷媒だけでなくインジェクション通路(26)からの供給冷媒も、第2圧縮機構(42)が吸入することを考慮して、駆動軸(50)の1回転中に第1圧縮機構(41)から吐出される冷媒の体積が、駆動軸(50)の1回転中に第2圧縮機構(42)に吸入される冷媒の体積よりも小さくなるようにしている。従って、第1圧縮機構(41)の吐出冷媒の多くが逆流することなく、第2圧縮機構(42)に吸入されるので、第1圧縮機構(41)における逆流損失を抑制することができる。
また、本参考技術1では、インジェクション通路(26)からの供給冷媒によって中間圧が高くなりすぎることが抑制される。従って、中間圧が目標とする値よりも高くなって最適中間圧から離れることが抑制される。また、中間圧が高くなることが原因で、インジェクション通路(26)から供給される冷媒流量が減少して圧縮機(30)の入力が増大することが抑制される。
また、本参考技術1では、第1圧縮機構(41)にリリーフ機構(58,59)が設けられているので、過圧縮が生じる場合に、吐出ポート(57)が圧縮室(53)に連通する前に、圧縮過程の冷媒が圧縮室(53)から吐出される。従って、第1圧縮機構(41)における過圧縮損失を抑制することができる。
また、本参考技術1では、高段側圧縮機構となる第2圧縮機構(42)に、冷凍サイクルの高圧圧力が変動しても吐出容積が変動する可変圧縮比型の流体機械が用いられている。従って、第2圧縮機構(42)では、吐出弁(39)による過圧縮損失が生じるだけであるため、過圧縮損失が小さく、さらに逆流損失は生じない。つまり、本参考技術1によれば、第2圧縮機構(42)における過圧縮損失を小さくすることができると共に、第2圧縮機構(42)において逆流損失が生じることを阻止することができる。
また、スクロール式の圧縮機構は、一般的に隙間が多く、冷媒の漏れ量が多くなりやすい。このため、押し退け容積の小さい高段側にスクロール式の第1圧縮機構(41)を適用すると、冷媒の漏れの影響が大きく、運転効率が大きく低下してしまう。これに対して、本参考技術1では、第1圧縮機構(41)が低段側に用いられている。このため、第1圧縮機構(41)における冷媒の漏れの影響が比較的小さく、冷媒漏れによる運転効率の低下を抑制することができる。
また、第2圧縮機構(42)は、各圧縮室(73,83)の吐出ポート(77,87)に対して吐出弁(79,89)が設けられており、第1圧縮機構(41)に比べて吐出時間が短くなる。このため、押し退け容積の大きい低段側に第2圧縮機構(42)を適用すると、吐出抵抗が大きくなってしまう。これに対して、本参考技術1では、第2圧縮機構(42)が高段側に用いられている。このため、吐出ポート(77,87)から吐出される冷媒流量が、低段側に用いられる場合に比べて少なくなるので、吐出弁(79,89)による吐出抵抗を抑制することができる。
−参考技術1の変形例1−
この変形例1では、第2圧縮機構(42)の吸入容積が第1の容積値になる低容積状態と、第2圧縮機構(42)の吸入容積が上記第1の容積値よりも大きい第2の容積値になる高容積状態との間の切り換えを行う吸入容積切換手段(60)が設けられている。
具体的に、この変形例1では、図7に示すように、第2高段吸入管(34)に開閉自在の第1電磁弁(21)が設けられている。また、連絡吐出管(35)から延びる冷媒配管は、第2高段吸入管(34)における第1電磁弁(21)と第2圧縮部(44)との間に接続する第1分岐配管(91)と、連絡吸入管(36)に接続する第2分岐配管(92)とに分岐している。第1分岐配管(91)には、開閉自在の第2電磁弁(22)と、密閉容器状のマフラー(29)とが設けられている。第2分岐配管(92)には、開閉自在の第3電磁弁(23)が設けられている。上述の吸入容積切換手段(60)は、これらの第1電磁弁(21)、第2電磁弁(22)及び第3電磁弁(23)により構成されている。
この変形例1では、図7に示すように、第1電磁弁(21)が開状態に、第2電磁弁(22)が閉状態に、第3電磁弁(23)が開状態に設定されると、高容積状態になる。高容積状態では、第1高段側圧縮室(73)と第2高段側圧縮室(83)が互いに並列になっており、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2と第2高段側圧縮室(83)の吸入容積V3の合計値が、第2の容積値に相当して、第2圧縮機構(42)の吸入容積となる。冷房運転時に高容積状態に切り換えられる。
一方、図8に示すように、第1電磁弁(21)が閉状態に、第2電磁弁(22)が開状態に、第3電磁弁(23)が閉状態に設定されると、低容積状態になる。低容積状態では、第1高段側圧縮室(73)と第2高段側圧縮室(83)が互いに直列になっており、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2が、第1の容積値に相当して、第2圧縮機構(42)の吸入容積となる。暖房運転時に低容積状態に切り換えられる。
また、この変形例1では、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4が、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2以下になっている。つまり、第1圧縮機構(41)の吐出容積は、第1の容積値と第2の容積値のうち小さい方の第1の容積値よりも小さい。従って、第2圧縮機構(42)の吸入容積が第1の容積値と第2の容積値の何れに切り換えられている場合であっても、第1圧縮機構(41)における逆流損失を抑制することができる。
なお、吸入容積切換手段(60)が、インジェクション管(26)からの冷媒を第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)の間に注入する注入動作が停止される非注入状態では、上記低容積状態に切り換え、その注入動作が実行される注入状態では、上記高容積状態に切り換えるように構成されていてもよい。なお、冷媒回路(11)は、第4電磁弁(27)が閉状態になると非注入状態に設定され、第4電磁弁(27)が開状態になると注入状態に設定される。第4電磁弁(27)は注入切換手段(61)を構成している。
この場合、第2圧縮機構(42)の吸入容積が、非注入状態では第1の容積値と第2の容積値のうち小さい方の第1の容積値に切り換えられ、注入状態では第1の容積値と第2の容積値のうち大きい方の第2の容積値に切り換えられることになる。従って、非注入状態では、第2圧縮機構(42)の吸入容積が大きすぎることが原因で生じる第1圧縮機構(41)における過圧縮損失を抑制することができ、注入状態では、第2圧縮機構(42)の吸入容積が小さすぎることが原因で生じる第1圧縮機構(41)における逆流損失を抑制することができる。なお、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4を、第1の容積値に等しくしてもよい。そのようにすれば、非注入状態では、第1圧縮機構(41)における過圧縮損失及び逆流損失の両方を抑制することができる。
また、吸入容積切換手段(60)は、後述する参考技術2のように、第1高段側圧縮室(73)と第2高段側圧縮室(83)の両方で冷媒の圧縮行程を行う場合が高容積状態になって、第1高段側圧縮室(73)と第2高段側圧縮室(83)のうち片方だけで冷媒の圧縮行程を行う場合が低容積状態になるように構成されていてもよい。
この変形例1では、第1圧縮機構(41)及び第2圧縮機構(42)が1本の駆動軸(50)で機械的に連結されているが、吸入容積切換手段(60)によって、中間圧を変化させることが可能である。具体的に、高段側となる第2圧縮機構(42)の2つの圧縮室(73,83)に対して、並列状態と直列状態との間の切り換えを行うことによって、中間圧を変化させることが可能である。従って、運転条件等によって中間圧の値が最適な値に近づくように、中間圧を調節することが可能になるので、COPの向上を図ることができる。
また、変形例1では、アンロードで吸入容積比を変更するような損失が生じることがないので、効率的に吸入容積比を変更することができる。
また、変形例1では、中間圧の調節に伴って、各圧縮機構(41,42)のトルクが均一化されるので、振動を抑制することもできる。また、第2圧縮機構(42)が圧縮タイミングの異なる2つの圧縮部(43,44)により構成されているので、第2圧縮機構(42)の振動が比較的小さくなる。
−参考技術1の変形例2−
この変形例2では、図9に示すように、冷媒回路(11)において、上流側から第1高段側圧縮室(73)、第2高段側圧縮室(83)の順番で第1高段側圧縮室(73)と第2高段側圧縮室(83)とが互いに直列に接続されている。そして、インジェクション管(26)の冷媒を第1圧縮機構(41)と第1高段側圧縮室(73)との間に注入する第1状態(注入状態)と、インジェクション管(26)の冷媒を第1高段側圧縮室(73)と第2高段側圧縮室(83)との間に注入する第2状態(非注入状態)との間の切り換えを行う三路切換弁(61)が設けられている。三路切換弁(61)は、注入切換手段(61)を構成している。
三路切換弁(61)は、第1ポート(P1)にインジェクション管(26)が接続され、第2ポート(P2)に第1マフラー(28)から延びる冷媒配管が接続され、第3ポート(P3)に第2マフラー(29)から延びる冷媒配管が接続されている。三路切換弁(61)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通する第1連通状態と、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通する第2連通状態とが切換自在に構成されている。
三路切換弁(61)が第1連通状態に設定されると、第1状態になり、図9の実線の矢印の向きに冷媒が流通する。一方、三路切換弁(61)が第2連通状態に設定されると、第2状態になり、図9の破線の矢印の向きに冷媒が流通する。
また、第1圧縮機構(41)には、圧縮室(53)の内圧に応じて吐出ポート(57)を開閉する吐出弁(39)が設けられている。吐出弁(39)は、リード弁により構成されている。吐出弁(39)は、圧縮室(53)の内圧に応じて吐出ポート(57)を開閉する。吐出弁(39)に対しては、そのリフト量を制限する弁押さえが設けられている(図示省略)。なお、リリーフ機構(58,59)は設けられていない。
また、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4は、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2に等しくなっている。この変形例2では、非注入状態を考慮して、第1圧縮機構(41)の吐出容積が第2圧縮機構(42)の吸入容積に等しくなるようにして、注入状態を考慮して、第1圧縮機構(41)に吐出弁(39)が設けられている。従って、非注入状態では、第1圧縮機構(41)の吐出容積と第2圧縮機構(42)の吸入容積との容積関係によって過圧縮損失及び逆流損失の両方を抑制することができ、注入状態では、吐出弁(39)によって逆流損失を抑制することができる。
なお、吐出弁(39)を設けずにリリーフ機構(58,59)を設ける場合には、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4が、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2よりも小さくなるようにする。この場合は、非注入状態を考慮して、第1圧縮機構(41)にリリーフ機構(58,59)が設けられ、注入状態を考慮して、第1圧縮機構(41)の吐出容積が第2圧縮機構(42)の吸入容積よりも小さくなるようにしていることになる。従って、非注入状態では、リリーフ機構(58,59)によって過圧縮損失を抑制することができ、注入状態では、第1圧縮機構(41)の吐出容積と第2圧縮機構(42)の吸入容積との容積関係によって逆流損失を抑制することができる。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。以下では、参考技術1と異なる点について説明する。
実施形態1では、図10に示すように、第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)との間に、中間冷却器(19)が設けられている。中間冷却器(19)の近傍には、冷却用ファン(20)が設置されている。中間冷却器(19)では、冷却用ファン(20)によって送られる室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。実施形態1では、第1圧縮機構(41)から第2圧縮機構(42)へ向かう冷媒が、中間冷却器(19)によって冷却される。
なお、第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)との間には、インジェクション管(26)は接続されていない。従って、第2圧縮機構(42)は、第1圧縮機構(41)で圧縮された冷媒のみを吸入して圧縮する。
また、第1圧縮機構(41)には、吐出ポート(57)を開閉する吐出弁(39)が設けられている。吐出弁(39)は、リード弁により構成されている。吐出弁(39)に対しては、そのリフト量を制限する弁押さえが設けられている(図示省略)。なお、吐出弁(39)を省略することも可能である。また、リリーフ機構(58,59)は設けられていない。
また、実施形態1では、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4と、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2と第2高段側圧縮室(83)の吸入容積V3の合計値(V2+V3)との間に、下記の式3に示す関係が成立している。つまり、第1圧縮機構(41)の吐出容積は、第2圧縮機構(42)の吸入容積よりも大きくなっている。
V4>V2+V3 (式3)
−実施形態1の効果−
本実施形態1では、第1圧縮機構(41)から第2圧縮機構(42)へ向かう冷媒の体積が中間冷却器(19)による冷却によって小さくなることを考慮して、第1圧縮機構(41)の吐出容積が第2圧縮機構(42)の吸入容積よりも大きくなるようにしている。このため、駆動軸(50)の1回転中に第1圧縮機構(41)から吐出される冷媒の体積は、駆動軸(50)の1回転中に第2圧縮機構(42)に吸入される冷媒の体積よりも大きくなる。従って、第1圧縮機構(41)にとって、第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)との間の中間圧が低くなりすぎることを抑制することができ、第1圧縮機構(41)で生じる過圧縮損失を抑制することができる。
また、本実施形態1では、中間冷却器(19)によって中間圧が必要以上に低くなりすぎることが抑制される。従って、中間圧が目標とする値よりも低くなって最適中間圧から離れることが抑制される。また、中間圧が低くなることが原因で、中間冷却器(19)による熱交換量が低下して圧縮機(30)の入力が増大することが抑制される。
また、本実施形態1では、第1圧縮機構(41)に吐出弁(39)が設けられているので、圧縮不足が生じる場合に、吐出ポート(57)の外側から圧縮室(53)への冷媒の逆流が、吐出弁(39)によって阻止される。従って、第1圧縮機構(41)で逆流損失が生じることを阻止することができる。
−実施形態1の変形例1−
この変形例1では、図11に示すように、上記参考技術1の変形例1と同様に、第1電磁弁(21)、第2電磁弁(22)及び第3電磁弁(23)により構成された吸入容積切換手段(60)が設けられている。吸入容積切換手段(60)の制御は、上記参考技術1の変形例1と同じである。
また、この変形例1では、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4が、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2と第2高段側圧縮室(83)の吸入容積V3の合計値(V2+V3)以上になっている。つまり、第1圧縮機構(41)の吐出容積は、第1の容積値と第2の容積値のうち大きい方の第2の容積値以上になっている。従って、第2圧縮機構(42)の吸入容積が第1の容積値と第2の容積値の何れに切り換えられている場合であっても、第1圧縮機構(41)における過圧縮損失を抑制することができる。
なお、第1圧縮機構(41)から第2圧縮機構(42)へ向かう冷媒が中間冷却器(19)で冷却される冷却状態と、第1圧縮機構(41)から第2圧縮機構(42)へ向かう冷媒が中間冷却器(19)で冷却されない非冷却状態との間の切り換えを行う冷却切換手段(62)を設けてもよい。冷却切換手段(62)は、後述する実施形態1の変形例2の第2四路切換弁(111)及び第3四路切換弁(112)により構成することができる。
この場合、吸入容積切換手段(60)は、非冷却状態では高容積状態に切り換え、冷却状態では低容積状態に切り換えるように構成する。従って、非冷却状態では、第2圧縮機構(42)の吸入容積が小さすぎることが原因で生じる第1圧縮機構(41)における逆流損失を抑制することができ、冷却状態では、第2圧縮機構(42)の吸入容積が大きすぎることが原因で生じる第1圧縮機構(41)における過圧縮損失を抑制することができる。なお、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4を、第2の容積値に等しくしてもよい。そのようにすれば、非冷却状態では、第1圧縮機構(41)における過圧縮損失及び逆流損失の両方を抑制することができる。
−実施形態1の変形例2−
この変形例2では、冷媒回路(11)において、上流側から第1高段側圧縮室(73)、第2高段側圧縮室(83)の順番で第1高段側圧縮室(73)と第2高段側圧縮室(83)とが互いに直列に接続されている。そして、冷媒回路(11)には、第1圧縮機構(41)から第1高段側圧縮室(73)へ向かう冷媒が中間冷却器(19)で冷却される第1状態(冷却状態)と、第1高段側圧縮室(73)から第2高段側圧縮室(83)へ向かう冷媒が中間冷却器(19)で冷却される第2状態(非冷却状態)とを切り換える冷却切換手段(62)が設けられている。冷却切換手段(62)は、図12に示すように、第2四路切換弁(111)と第3四路切換弁(112)により構成されている。
各四路切換弁(111,112)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通し且つ第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とが連通する第1連通状態と、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通し且つ第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する第2連通状態とが切換自在に構成されている。なお、各四路切換弁(111,112)は複数の電磁弁を代用することができる。
この変形例2では、第2四路切換弁(111)と第3四路切換弁(112)が共に第1連通状態に設定されると第1状態になり、第2四路切換弁(111)と第3四路切換弁(112)が共に第2連通状態に設定されると第2状態になる。
また、この変形例2では、第1圧縮機構(41)にリリーフ機構(58,59)が設けられている。第1圧縮機構(41)には、吐出弁(39)は設けられていない。また、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4は、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2に等しくなっている。この変形例2では、非冷却状態を考慮して、第1圧縮機構(41)の吐出容積が第2圧縮機構(42)の吸入容積に等しくなるようにして、冷却状態を考慮して、第1圧縮機構(41)にはリリーフ機構(58,59)が設けられている。従って、非冷却状態では、第1圧縮機構(41)の吐出容積と第2圧縮機構(42)の吸入容積との容積関係によって過圧縮損失及び逆流損失の両方を抑制することができ、冷却状態では、リリーフ機構(58,59)によって過圧縮損失を抑制することができる。
なお、リリーフ機構(58,59)を設けずに吐出弁(39)を設ける場合には、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4が、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2よりも大きくなるようにする。この場合は、冷却状態を考慮して、第1圧縮機構(41)の吐出容積を第2圧縮機構(42)の吸入容積よりも大きくして、非冷却状態を考慮して、第1圧縮機構(41)に吐出弁(39)を設けていることになる。従って、非冷却状態では、吐出弁(39)によって逆流損失が生じることを阻止することができ、冷却状態では、第1圧縮機構(41)の吐出容積と第2圧縮機構(42)の吸入容積との容積関係によって過圧縮損失を抑制することができる。
《発明の参考技術2》
本発明の参考技術2について説明する。以下では、参考技術1と異なる点について説明する。
この参考技術2では、図13に示すように、第1圧縮機構(41)と第2圧縮機構(42)との間に、中間冷却器(19)が設けられている。中間冷却器(19)は、インジェクション管(26)の接続箇所の上流に配置されている。中間冷却器(19)の近傍には、冷却用ファン(20)が設置されている。中間冷却器(19)では、冷却用ファン(20)によって送られる室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。参考技術2では、第1圧縮機構(41)から第2圧縮機構(42)へ向かう冷媒が、中間冷却器(19)によって冷却される。そして、中間冷却器(19)によって冷却された冷媒が、第2圧縮機構(42)で圧縮される。
また、この参考技術2では、第1圧縮機構(41)の圧縮室(53)の吐出容積V4が、第1の容積値よりも大きく第2の容積値よりも小さい値になっている。
また、この参考技術2では、第2圧縮機構(42)の吸入容積を切り換える吸入容積切換手段(60)として、三路切換弁(60)が設けられている。三路切換弁(60)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)とが連通する第1連通状態と、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通する第2連通状態とが切換自在に構成されている。
三路切換弁(61)が第1連通状態に設定されると、高容積状態になり、図13に示すように冷媒が流通する。高容積状態では、第1高段側圧縮室(73)の吸入容積V2と第2高段側圧縮室(83)の吸入容積V3の合計値が、第2の容積値に相当して、第2圧縮機構(42)の吸入容積になる。一方、三路切換弁(61)が第2連通状態に設定されると、低容積状態になり、図14に示すように冷媒が流通する。低容積状態では、第1高段側圧縮室(73)の吐出側がその吸入側と連通するので、第1高段側圧縮室(73)では冷媒が圧縮されない。第2高段側圧縮室(83)の吸入容積V3が、第1の容積値に相当して、第2圧縮機構(42)の吸入容積になる。
三路切換弁(61)は、注入切換手段(61)を構成する第4電磁弁(27)が閉状態に設定される非注入状態では、第2圧縮機構(42)の吸入容積を第1の容積値に切り換え、第4電磁弁(27)が開状態に設定される注入状態では、第2圧縮機構(42)の吸入容積を第2の容積値に切り換えるように、制御される。
−参考技術2の効果−
本参考技術2では、第2圧縮機構(42)の吸入容積が、非注入状態では、中間冷却器(19)による冷媒の体積の縮小だけを考慮して、第1圧縮機構(41)の吐出容積よりも小さい第1の容積値に切り換えられ、注入状態では、中間冷却器(19)による冷媒の体積の減少量よりもインジェクション管による冷媒の体積の増加量の方が大きくなるものと想定して、第1圧縮機構(41)の吐出容積よりも大きい第2の容積値に切り換えられる。従って、非注入状態では、第1圧縮機構(41)の吐出容積と第2圧縮機構(42)の吸入容積との容積関係によって過圧縮損失を抑制することができ、注入状態では、第1圧縮機構(41)の吐出容積と第2圧縮機構(42)の吸入容積との容積関係によって逆流損失を抑制することができる。
《その他の実施形態》
上述した各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態について、冷媒回路(11)に充填される冷媒が二酸化炭素以外の冷媒(例えばフロン冷媒)であってもよい。
また、上記実施形態について、第1圧縮機構(41)が、固定側ラップ(51a)の巻き数と可動側ラップ(52a)の巻き数とが等しい対称渦巻き構造のスクロール式の流体機械であってもよい。
また、上記実施形態について、第1圧縮機構(41)が、スクリュー式の流体機械などの他の固有圧縮比型の流体機械により構成されていてもよい。
また、上記実施形態について、第2圧縮機構(42)が、図15及び図16に示す各圧縮部(43,44)のような他の可変圧縮比型の流体機械により構成されていてもよい。第2圧縮機構(42)の各圧縮部(43,44)は、環状のシリンダ室(104)を有するシリンダ(101)と、該シリンダ(101)に対して偏心して該シリンダ室(104)に収納されてシリンダ室(104)を外側圧縮室(105)と内側圧縮室(106)とに区画する環状のピストン(102)と、該シリンダ室(104)に配置されて各圧縮室(105,106)を低圧側と高圧側とに区画するブレード(100)とを備えて、ピストン(102)が偏心回転運動することによって各圧縮室(105,106)で冷媒を圧縮するように構成されている。各圧縮部(43,44)には、外側圧縮室(105)から冷媒を吐出させる外側吐出ポート(109)と、内側圧縮室(106)から冷媒を吐出させる内側吐出ポート(110)とが形成されている。各吐出ポート(109,110)には、リード弁により構成された吐出弁(115)が設けられている。
シリンダ(101)は、内側シリンダ部(101b)と外側シリンダ部(101c)とを備えている。シリンダ(101)では、内側シリンダ部(101b)の外周面と外側シリンダ部(101c)の内周面との間に、環状のシリンダ室(104)が形成されている。また、ピストン(102)は、駆動軸(50)によって駆動される可動部材(103)の一部となっている。ピストン(102)は、環状の一部が分断されたC型形状をしている。また、ピストン(102)の分断箇所には、ブレード(100)を挟むように、一対のブッシュ(107a,107b)が嵌合している。ピストン(102)は、ブレード(100)の延伸方向に進退可能であり、さらに一対の揺動ブッシュ(107a,107b)の中心点を揺動中心として揺動ブッシュ(107a,107b)と共に揺動可能になっている。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。