JP5834816B2 - 音響構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、音響空間における音響障害を防止する技術に関する。
各々の表面に開口部を設けた複数本のパイプからなる音響構造体を音響空間内に設置した場合、各パイプによる吸音効果及び散乱効果が発生し、フラッターエコー等の音響障害が防止されることが知られている。図6は、従来のこの種の音響構造体90の構成例を示す図である。この音響構造体90では、5本のパイプ25−m(m=1〜5)が両端を揃えて長さ方向と直交する方向に配列されている。パイプ25−m(m=1〜5)の各々は角筒状をなしている。パイプ25−m(m=1〜5)の各々の側面26−mには開口部27−mが設けられている。パイプ25−m(m=1〜5)の開口部27−m(m=1〜5)の面積は同じになっている。パイプ25−m(m=1〜5)の長さ方向における開口部27−m(m=1〜5)の位置はパイプ25−m毎に異なっている。
この音響構造体90における吸音効果及び散乱効果の発生の原理は次の通りである。図7に示すように、パイプ25−mにおける開口部27−mの奥の空洞には、開口部27−mを開口端とし空洞の左側の端部28−mを閉口端とする閉管CPと、開口部27−mを開口端とし空洞の右側の端部28−mを閉口端とする閉管CPが形成されているとみなすことができる。音響空間から開口部27−mを介して空洞内に音波が入射すると、空洞内では、閉管CPの開口端(開口部27−m)から閉口端(端部28−m)に向かう進行波と、閉管CPの開口端(開口部27−m)から閉口端(端部28−m)に向かう進行波とが発生する。そして、前者の進行波は、閉管CPの閉口端において反射され、その反射波が開口部27−mへ戻る。また、後者の進行波は、閉管CPの閉口端において反射され、その反射波が開口部27−mへ戻る。
そして、閉管CPでは、下記式(1)に示す共鳴周波数f−n(n=1,2…)において共鳴が発生し、閉管CP内において進行波と反射波とを合成した音波は、閉管CPの閉口端に粒子速度の節を有し、開口端に粒子速度の腹を有する定在波となる。また、閉管CPでは、下記式(2)に示す共鳴周波数f−n(n=1,2…)において共鳴が発生し、閉管CP内において進行波と反射波とを合成した音波は、閉管CPの閉口端に粒子速度の節を有し、開口端に粒子速度の腹を有する定在波となる。なお、下記式(1)および(2)において、Lは閉管CPの長さ(空洞の左側の端部28−mから開口部27−mまでの長さ)、Lは閉管CPの長さ(空洞の右側の端部28−mから開口部27−mまでの長さ)、cは音波の伝搬速度、nは1以上の整数である。
−n=(2n−1)・(c/(4・L))…(1)
−n=(2n−1)・(c/(4・L))…(2)
ここで、パイプ25−mの開口部27−m及び側面26−mにおける開口部27−mの近傍に入射する音波のうち共鳴周波数f−nの成分に着目すると、閉管CPの閉口端において反射されて開口部27−mから音響空間へと放射される音波は、音響空間から開口部27−mに入射する音波に対して逆相の音波となる。一方、側面26−mにおける開口部27−mの周囲では、音響空間からの入射波が位相回転を伴うことなく反射される。
よって、共鳴周波数f−nの成分を含む音波が開口部27−mを介して空洞に入射した場合、側面26−mにおける開口部27−mの正面(入射方向)では、閉管CPから開口部27−mを介して放射される音波と側面6−mにおける開口部27−mの近傍の各点から反射される音波が逆相となって互いの位相が干渉し合い、吸音効果が発生する。また、側面26−mにおける開口部27−mの周囲では、開口部27−mからの音波と側面26−mからの反射波の位相が不連続となり、位相の不連続を解消しようとする気体分子の流れが発生する。この結果、側面26−mにおける開口部27−mの周囲では、入射方向に対する鏡面反射方向以外の方向への音響エネルギーの流れが発生し、散乱効果が発生する。
同様に、共鳴周波数f−nの成分を含む音波が開口部27−mを介して空洞に入射した場合、側面26−mにおける開口部27−mの正面(入射方向)では、吸音効果が発生する。また、側面26−mにおける開口部27−mの周囲では、散乱効果が発生する。以上が、吸音効果及び散乱効果の発生の原理である。
この種の音響構造体に関わる技術を開示した文献として、特許文献1がある。同文献には、音響構造体における開口部の面積Sをパイプ内の空洞の断面積Sよりも狭くすることによって散乱効果及び吸音効果が高められる旨の記載がある。同文献に記されているように、音響構造体のパイプの開口部からパイプの内部の空洞に音波が入射した場合における開口部の媒質の挙動は、開口部の比音響インピーダンス比ζに依存する。比音響インピーダンス比ζは、音場内のある点の音響インピーダンス比Zとその点の媒質の特性インピーダンス比Zの複素比Z/Zである。各周波数の音波に対する開口部27−mの各点の比音響インピーダンス比ζは次式(3)により表される。式(3)におけるjは虚数単位であり、Lはパイプ内の一方の閉管CPの長さであり、Lはパイプ内の他方の閉管CPの長さであり、kは波数(より具体的には、入射波の角速度2πfを音速cで除算した値2πf/c,fは周波数)である。
Figure 0005834816
ここで、図8に示すように、一般的には、ある媒質の境界面の比音響インピーダンス比ζの絶対値|Im(ζ)|が0である場合、その境界面に入射する入射波と同面において反射される反射波の位相差φは±180度(即ち逆相)となり、|Im(ζ)|<1の範囲(図8のガウス平面におけるハッチングを付した半円の外側の範囲内)では位相差φが±90度より小さくなることが知られている。よって、図6の構成では、パイプの開口面の比音響インピーダンス比ζの虚数部Im(ζ)の絶対値|Im(ζ)|が0である場合に吸音効果及び散乱効果の大きさが最大になり、この絶対値|Im(ζ)|が1を超えると吸音効果及び散乱効果が殆ど発揮されないことになる。そして、図6の構成におけるパイプの開口面と内部の空洞の面積比S/Sと比音響インピーダンス比ζとの関係は前掲式(3)の通りであるから、面積比S/Sが小さいほど共鳴周波数f−n及びf−nの近傍における吸音効果及び散乱効果の発生帯域(すなわち、比音響インピーダンス比ζの虚数部Im(ζ)の絶対値|Im(ζ)|が1未満になる帯域)の帯域幅が広くなる。図9は、このことを確認するために特許文献1の発明の発明者(本願発明者と同一人)らが行った検証の結果を示す図である。この検証では、発明者らは、音響構造体の1つのパイプにおける一方の閉管CPの管長L、他方の閉管CPの管長L、及び開口部の断面の面積Sとパイプ内の空洞における開口部と直交する切断面の面積Sとの比S/Sを表1のようにした場合における0Hz〜1000Hzの各周波数に対する比音響インピーダンス比ζの虚数部Im(ζ)の絶対値|Im(ζ)|を計算した。
Figure 0005834816
この図9において、S/S=0.25、S/S=1、S/S=4とした3つの場合における|Im(ζ)|が1未満となる帯域の帯域幅を比較すると、S/S=0.25とした場合における帯域幅が最も広く、S/S=4とした場合における帯域幅が最も狭くなっている。このことから、面積比S/Sを小さくしたパイプは面積比S/Sを大きくしたパイプよりも広い帯域に渡って吸音効果及び散乱効果を発生させることができる、ということが裏付けられる。開口部の面積Sをパイプ内の空洞の断面積Sよりも狭くした構成によって吸音効果及び散乱効果が高められる理由は以上の通りである。
特開2010−84509号公報
特許文献1に記されているように、音響構造体のパイプにおける吸音効果及び散乱効果の発生帯域の帯域幅は開口部の面積とその奥の空間の断面積の比に依存する。しかしながら、従来の音響構造体では、この面積比を変えることができず、音響構造体を設置した音響空間内における吸音効果及び散乱効果の発生帯域を調整することができなかった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、音響構造体を設置した音響空間内における吸音効果及び散乱効果の発生帯域の帯域幅を調整できるようにすることを目的とする。
本発明は、各々の内部の空洞を囲む側面の少なくとも1つに開口部が設けられた複数の音響管を配列してなり、前記開口部の開口面積を調整し得るように構成されたことを特徴とする音響構造体を提供する。この発明によると、吸音効果及び散乱効果の発生帯域の帯域幅を調整することができる。
本発明の第1実施形態である音響構造体を示す正面図、側面図、及び断面図である。 本発明の第2実施形態である音響構造体を示す正面図、側面図、及び断面図である。 本発明の第3実施形態である音響構造体を示す正面図、側面図、及び断面図である。 本発明の第4実施形態である音響構造体を示す斜視図である。 本発明の他の実施形態である音響構造体の音響管を示す斜視図である。 従来の音響構造体の構成例を示す図である。 同音響構造体のパイプとパイプ内に形成される閉管の縦断面図である。 同音響構造体におけるパイプの開口部から入射する入射波と開口部から放射される反射波との間の位相の関係を示す図である。 同音響構造体におけるパイプの開口部の面積と空洞の断面積の比と比音響インピーダンス比ζの虚数部Im(ζ)の絶対値|Im(ζ)|との関係を示す図である。
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1(A)は、本発明の第1実施形態である音響構造体10の正面図である。図1(B)は、図1(A)を矢印B方向から見た側面図である。図1(C)は、図1(A)のC−C’線断面図である。この音響構造体10は、複数(図1(A)、図1(B)、及び図1(C)の例では5個)の音響管1−i(i=1〜5)および複数(図1(A)、図1(B)、及び図1(C)の例では6個)の板3−i(i=1〜6)を配列したものである。この音響構造体10では、音響管1−iにおける内部の空洞を囲む側面に開口部が設けられており、この開口部の開口面積を調整し得るようになっている。より詳細に説明すると、この音響構造体10の音響管1−iの各々は、各々が開口端OEを有する2本の管体2U−i及び2D−iに分離されている。管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)の各々は、一方に開口端OEを有し他方に閉口端CEを有する角筒状をなしている。各音響管1−iをなす2つの管体2U−i及び2D−iの長さの和(より具体的には、管体2U−1の長さD1Uと管体2D−1の長さD1Dの和、管体2U−2の長さD2Uと管体2D−2の長さD2Dの和、管体2U−3の長さD3Uと管体2D−3の長さD3Dの和、管体2U−4の長さD4Uと管体2D−4の長さD4Dの和、管体2U−5の長さD5Uと管体2D−5の長さD5Dの和)は同じになっている。各管体2U−i及び2D−iの長さは管体毎に異なっている。
この音響構造体10の板3−i(i=1〜6)は、管体2U−i及び2D−iの長さの和と同じ長さを持った幅薄な直方体状をなしている。これらの板3−i(i=1〜6)は、音響管1−i(i=1〜5)における2つの管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)を互いの開口端OE同士が開口部となる穴H−iを間に挟んで向い合い且つ2つの管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)が互いの管軸方向に沿って相対移動し得るように支持している。
さらに詳述すると、この音響構造体10の管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)の各々における左の側面及び右の側面には当該管体の長さ方向に沿って延在する凸部XL及びXRが設けられている。また、板3−2〜3−5の左の側面及び右の側面には当該板の長さ方向に沿って延在する凹部YL及びYRが設けられている。板3−1の右の側面には当該板の長さ方向に沿って延在する凹部YRが設けられている。板3−6の左の側面には当該板の長さ方向に沿って延在する凹部YLが設けられている。管体2U−i及び2D−iの凸部XL及びXRの断面は基端部から離れるに従って幅が拡がる台形状をなしている。板3−iの凹部YR及びYLの断面は底部から離れるに従って幅が狭まる台形状をなしている。そして、この音響構造体10では、板3−i及び3−j(i+1)の凹部YR及びYLに管体2U−i及び2D−iの凸部XL及びXRが嵌め込まれている。
板3−i(i=1〜6)の凹部YR及びYL内における管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)の凸部XL及びXRは、凹部YR及びYL内を摺動し得る程度の摩擦力を持って凹部YR及びYLの壁面に接している。このため、音響管1−iをなす2つの管体2U−i及び2D−iにその管軸方向と平行な方向の力を加えると、管体2U−i及び2D−iは板3−iに沿ってその方向に移動する。
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態によると次の効果が得られる。
第1に、本実施形態では、音響管1−iをなす2つの管体2U−i及び2D−iを離すと、当該音響管1−iの開口部である管体2U−i及び2D−i間の穴H−iの開口面積が大きくなり、音響管1−iをなす2つの管体2U−i及び2D−iを近づけると、当該音響管1−iの開口部である管体2U−i及び2D−i間の穴H−iの開口面積が小さくなる。よって、本実施形態によると、吸音効果及び散乱効果の発生帯域の帯域幅を調整することができる。
第2に、本実施形態では、音響管1−i(i=1〜5)の各々における一方の管体2U−iと他方の管体2D−iの長さの和が同じになっている。このため、本実施形態では、管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)間を開口端OE同士が接するまで縮めた状態における音響構造体10が直方体状になる。よって、音響空間内への搬入や同空間外への搬出、不使用時における収納スペースへの格納を効率よく行うことができる。
第3に、本実施形態では、管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)の長さは管体毎に異なっている。このため、管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)の共鳴周波数は管体毎に異なったものとなる。よって、吸音効果及び散乱効果の発生帯域の偏りを小さくすることができる。
<第2実施形態>
図2(A)は、本発明の第2実施形態である音響構造体10Aの正面図である。図2(B)は、図2(A)を矢印B方向から見た側面図である。図2(C)は、図2(A)のC−C’線断面図である。図2(A)、図2(B)、図2(C)において、図1(A)、図1(B)、図1(C)と同じ要素には同じ符号を付してある。また、図2(B)では、簡便のため、凸部XL及びXRと凹部YR及びYLの符号の図示を割愛している。この音響構造体10Aは、音響構造体10(図1)に、音響管1−i(i=1〜5)の管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)の開口端OE間の穴H−i(i=1〜5)を遮蔽する調整用可動部としての役割を果たすシート部材4−i(i=1〜5)とこの部材4−i(i=1〜5)を管軸方向に移動自在に支持する支持部材5L−i(i=1〜5)及び5R−i(i=1〜5)とを設けたものである。
より詳細に説明すると、シート部材4−i(i=1〜5)の各々は、管体2U−i及び2D−iの幅よりも僅かに小さな幅を持った正方形状をなしている。支持部材5L−i及び5R−iは、管体2U−i及び2D−iの幅よりも十分に小さな幅を持った直方体状をなしている。
支持部材5L−i(i=1〜5)及び5R−i(i=1〜5)の各々は、当該支持部材5L−i及び5R−iと管体2D−iの側面ASとの間にシート部材4−iの左右の端部を挟むようにして側面AS上に固定されている。シート部材4−iの表面及び裏面における左右の端部は、当該端部が表面ASと支持部材5L−i及び5R−i間の隙間を摺動し得る程度の摩擦力を持ってこれらに接している。このため、シート部材4−iに管体2U−iに向かう方向の力を加えると、シート部材4−iが管体2U−iの側に突出し、管体2D−iの端部から突出した部分によって管体2U−i及び2D−i間の穴H−iが遮蔽される。
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態では、音響管1−iにおける管体2U−iと管体2D−iを管体2U−i及び2D−i間に穴H−iができるように離間させた状態においてシート部材4−iを移動させることにより、穴H−iの開口面積が調整される。よって、本実施形態によると、吸音効果及び散乱効果の発生帯域の帯域幅をより精度よく調整することができる。
<第3実施形態>
図3(A)は、本発明の第2実施形態である音響構造体10Bの正面図である。図3(B)は、図3(A)を矢印B方向から見た側面図である。図3(C)は、図3(A)のC−C’線断面図である。この音響構造体10Bは、複数(図3(A)、図3(B)、及び図3(C)の例では5個)の音響管6−j(j=1〜5)を隣り合う音響管6−j間に板8U−j(j=1〜4)及び8D−j(j=1〜4)を2枚ずつ挟んで配列したものである。この音響構造体10Bの音響管6−j(j=1〜6)の各々は、内部の空洞を挟んで対向する3対の側面UW、DW、FW、BW、LW、RWを有する。ここで、図3(A)では、簡便のため、音響管6−1を除く音響管6−2〜6−5の各々における側面UW、DW、FW、BW、LW、RWの符合の図示を割愛する。これらの音響管6−j(j=1〜5)は同じ長さを有している。音響管6−2〜6−4の各々における音響管6−jの配列方向に対向する両側面LW及びRWには開口部7L−j及び7R−jが設けられている。音響管6−1の側面RWには開口部7R−1が設けられている。音響管6−5の側面LWには開口部7L−5が設けられている。
この音響構造体10Bの板8U−j(j=1〜4)及び8D−j(j=1〜4)の各々は、幅薄な直方体状をなしている。これらの板8U−j(j=1〜4)及び8D−j(j=1〜4)のうち板8U−1及び8D−1は、互いの端部同士を向かい合わせて音響管6−1の側面RWと音響管6−2の側面LWの間に介挿されている。板8U−2及び8D−2は、互いの端部同士を向かい合わせて音響管6−2の側面RWと音響管6−3の側面LWの間に介挿されている。板8U−3及び8D−3は、互いの端部同士を向かい合わせて音響管6−3の側面RWと音響管6−4の側面LWの間に介挿されている。板8U−4及び8D−4は、互いの端部同士を向かい合わせて音響管6−4の側面RWと音響管6−5の側面LWの間に介挿されている。
この音響構造体10Bにおける音響管6−j及び6−(j+1)間に介挿された板8U−j及び8D−jは、当該板8U−j及び8D−jがその両側の音響管6−j及び6−(j+1)の管軸方向に沿って相対移動し得るように当該両側の音響管6−j及び6−(j+1)を支持している。さらに詳述すると、この音響構造体10の音響管6−2〜6−4の各々における左の側面LW及び右の側面RWには当該音響管の長さ方向に沿って延在する凸部XL及びXRが設けられている。音響管6−1の右の側面RWには当該音響管の長さ方向に沿って延在する凸部XRが設けられている。音響管6−5の左の側面LWには当該音響管の長さ方向に沿って延在する凸部XLが設けられている。また、板8U−j(j=1〜4)及び8D−j(j=1〜4)の各々の左の側面LW及び右の側面RWには当該板の長さ方向に沿って延在する凹部YL及びYRが設けられている。音響管6−jの凸部XL及びXRの断面は基端部から離れるに従って幅が拡がる台形状をなしている。板8U−j及び8D−jの凹部YR及びYLの断面は底部から離れるに従って幅が狭まる台形状をなしている。そして、この音響構造体10では、板8U−j及び8D−jの凹部YLに音響管6−jの凸部XRが、板8U−j及び8D−jの凹部YRに音響管6−(j+1)の凹部XLが各々嵌め込まれている。
板8U−j(j=1〜4)及び8D−j(j=1〜4)の凹部YR及びYL内における音響管6−j(j=1〜5)の凸部XL及びXRは、凹部YR及びYL内を摺動し得る程度の摩擦力を持って凹部YR及びYLの壁面に接している。このため、音響管6−j及び6−(j+1)間の板8U−j及び8D−jに音響管の管軸方向と平行な方向の力を加えると、板8U−j及び8D−jは音響管6−jの側面RW及び音響管6−(j+1)の側面LWに沿ってその方向に移動する。
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態では、音響管6−j及び6−(j+1)間の板8U−j及び8D−jの端部をつき合わせた状態では、音響管6−jの側面WRにおける開口部7R−jと音響管6−jの側面WLにおける開口部7L−jが板8U−j及び8D−jにより完全に閉塞される。また、板8U−j及び8D−jを相反する方向に移動させると板8U−j及び8D−jの端部間に隙間Z−jができ、この隙間Z−jと開口部7R−j及び7L−(j+1)を介して音響管6−j及び6−(j+1)内の空洞が外部空間と連通する。そして、この隙間Z−jの幅を拡げるほど、開口部7R−j及び7L−(j+1)における板8U−j及び8D−jに遮蔽されていない領域の領域の面積、すなわち、開口面積が広くなる。よって、本実施形態によっても、吸音効果及び散乱効果の発生帯域の帯域幅を調整することができる。
<第4実施形態>
図4は、本発明の第4実施形態である音響構造体10Cの斜視図である。この音響構造体10Cは、調音パネル11と、シート部材12と、巻回装置13とを有する。調音パネル11は、複数(図4の例では5個)の音響管14−k(k=1〜5)を各々の端部を揃えて長さ方向と直交する方向に配列し、隣り合う音響管14−k同士を接合したものである。調音パネル11の音響管14−k(k=1〜5)の各々は角筒状をなしている。調音パネル11の音響管14−k(k=1〜5)の各々の側面には開口部15−k(k=1〜5)が設けられている。音響管14−k(k=1〜5)の長さ方向における開口部15−k(k=1〜5)の位置は音響管毎に異なっている。音響管14−k(k=1〜5)における開口部15−k(k=1〜5)を有する側面は面一なバッフル面16を形成している。シート部材12は、調音パネル11と同じ横幅と調音パネル11よりも十分に長い縦幅とを持った薄い矩形状をなしている。
巻回装置13は、シート部材12を当該シート部材12が調音パネル11のバッフル面16上を移動し得るように支持している。より詳細に説明すると、巻回装置13は、調音パネル11の横幅よりも長い幅を持った中空な円筒状をなしている。巻回装置13の外周面17にはスリット18が設けられている。また、シート部材12は巻回装置13の内部の軸19に巻回されており、シート部材12の一端が巻回装置13の外周面17のスリット18を介して調音パネル11のバッフル面16上に引き出されている。
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態では、巻回装置13内から調音パネル11のバッフル面16上へのシート部材12の引き出し量を大きくしたり小さくすることにより、バッフル面16上の開口部15−k(k=1〜5)におけるシート部材12に遮蔽されていない部分の面積、つまり、開口部15−k(k=1〜5)の開口面積が調整される。よって、本実施形態によっても、吸音効果及び散乱効果の発生帯域の帯域幅を調整することができる。
以上、この発明の第1乃至第4実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば、以下の通りである。
(1)上記第1乃至第4実施形態では、音響構造体10、10A、10B、及び10Cをなす音響管は角筒状をなしていた。しかし、音響構造体の断面を円状や楕円状にしてもよい。
(2)上記第1及び第2実施形態において、音響管1−i(i=1〜5)をなす2つの管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)を支持する板を管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)の横幅の合計よりも長い横幅を持った一枚の板とし、管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)の側面をこの板の表面上に装着するようにしていもよい。この場合において、管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)の側面にその長さ方向に沿って延在する凸部を設けるとともに、板の表面に5個の凹部を設け、板の凹部に管体2U−i(i=1〜5)及び2D−i(i=1〜5)の凸部を埋め込むようにしてもよい。
(3)上記第1乃至第4実施形態では、音響構造体10における管体2U−i及び2D−iの一端部は開口端OEとなっており、他端部は閉口端CEとなっていた。しかし、管体2U−i及び2D−iの一端部と他端部の一方または両方を開口端OEとしてもよい。
(4)上記第1乃至第3実施形態では、5つの音響管により音響構造体10、10A、及び10Bが構成されていた。しかし、音響構造体10、10A、及び10Bを構成する音響管の個数を2〜4個にしてもよいし、6個以上にしてもよい。
(5)上記第2実施形態において、シート部材4を板状の部材に置き換え、この板状の部材の移動によって穴H−iの開口面積を調整するようにしてもよい。
(6)上記第1実施形態では、1つの音響管1−iをなす2つの管体2U−i及び2D−iの断面の寸法は同じであった。しかし、管体2U−i(または管体2D−i)の断面の寸法を管体2D−i(または管体2U−i)の寸法よりも大きくし、管体2U−i及び管体2U−iの一方の内部に他方を収納し得るようにしてもよい。この場合において、図5に示すように、1つの音響管1−i(図5の例では音響管1−1)をなす2つの管体2U−1及び管体2U−1の側面における開口端OE側に切り欠けNTを設けてもよい。また、図5に示すような音響管1−iを長さ方向と直交する方向に複数個配列してパネル状の音響構造体を構成してもよい。
(7)上記第3実施形態では、音響管6−2〜6−4の各々における音響管6−jの配列方向に対向する側面LW及びRWの各々に開口部7L−j及び7R−jが設けられていた。しかし、音響管6−2〜6−4の各々における音響管6−jの配列方向に対向する側面LW及びRWの一方にのみ開口部を設けてもよい。
10,10A,10B,10C…音響構造体、1,6,8…音響管、2…管体、3,8…板、4,15…シート部材、5…支持部材、7,14…開口部、11…調音パネル、13…巻回装置、16…バッフル面、17…外周面、18…スリット、19…軸。

Claims (3)

  1. 各々の内部の空洞を囲む側面の少なくとも1つに開口部が設けられた複数の音響管を配列してなり、
    前記複数の音響管は、各々が開口端を有する2本の管体に分離されており、
    前記各音響管をなす2本の管体を当該2本の管体の開口端同士が向い合い且つ当該2本の管体が互いの管軸方向に沿って相対移動して前記開口部の開口面積を調整し得るように支持する板
    を具備することを特徴とする音響構造体。
  2. 前記複数の音響管の各々は、当該音響管の管軸方向に移動自在に支持され、前記管軸方向の移動により前記開口部を遮蔽する調整可動部を有することを特徴とする請求項1に記載の音響構造体。
  3. 各々の内部の空洞を囲む側面の少なくとも1つに開口部が設けられた複数の音響管を配列してなり、
    前記複数の音響管の各々における配列方向に対向する両側面のうち一方または両方に前記開口部が設けられており、
    隣り合う前記音響管における前記開口部を有する側面間に互いの端部同士を向かい合わせて2枚ずつ介挿された板であって、当該2枚の板がその両側の音響管の管軸方向に沿って相対移動して前記開口部の開口面積を調整し得るように当該両側の音響管を支持する板と
    を具備することを特徴とする音響構造体。
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