JP5663845B2 - 音響構造体 - Google Patents
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Description
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸音し、音を散乱させる周波数帯域を可変にすることである。
まず、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である吸音・散乱ボックス1の外観を示す斜視図である。図2は、吸音・散乱ボックス1が有する箱型部材2の内部の構成を示す図である。
なお、説明の便宜のために、箱型部材2の前面2aの法線方向成分であって、孔3の面に直交する方向成分を「x軸」とし、前面2aに平行な一方向の成分を「y軸」とし、x軸及びy軸に直交する方向成分を「z軸」としたxyz直交座標系を定める。吸音・散乱ボックス1が水平面に平行な面に置かれたときには、z軸は重力方向の成分を表し、x軸及びy軸は水平面に平行な方向の成分を表す。音響管10,20は、それぞれ1方向の延在方向を有しており、その方向はx軸方向に延在するように箱型部材2内において固定されている。
図3は、音響管10の外観を示す斜視図である。図4は、図3に示す矢印VI方向から音響管10を見た様子を表す平面図である。図5は、図3に示す切断線V-Vで音響管10を切断したときの断面を表す図である。
音響管10は、管状部材11と、開口部12と、リードスクリュー13と、隔壁14とを有する。管状部材11は、本発明の筐体の一例であり、金属で管状に形成された部材で、いわゆる一端開口の管状部材である。管状部材11の内部には、x軸方向に延在する柱状の中空空間15が形成されている。管状部材11は、中空空間15を外部空間に通じさせる開口部12を有する。管状部材11の中空空間15のx軸方向の長さはLである。管状部材11の開口部12に対する他端(閉口端)の一部には、リードスクリュー13を外部に通じさせるための貫通孔が開けられている。
f0=(2n−1)・v/4l1 ・・・(1)
図6は、共鳴時における吸音・散乱ボックス1が備える箱型部材2の前面2a周辺の反射波の挙動を説明する図である。同図において、入射波の音圧が極大となる「山」が前面2a及び孔3(すなわち、開口部12)に到達し、それに応じた反射波が生成される様子を示している。また、同図には、反射波を実線と破線とで示しているが、実線は、反射波の音圧が極大となる「山」の位置を表しており、破線は、音圧が極小(「山」とは逆位相)となる「谷」の位置を表している。
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)等を備えた演算装置である。制御装置40は、ケーブル4を介してミキサからの制御情報が与えられると、その制御情報に応じた位置に隔壁14,14a,14bを移動させるための駆動信号を、それぞれ対応するモータ31a,31b,31cに出力する。モータ31a,31b、31cは、制御装置40からの駆動信号に応じて駆動し、この駆動により隔壁14,14a,14bをx軸方向に移動させて、その位置を変更する。ミキサからの制御情報は、隔壁14,14a,14bのそれぞれの位置又は移動量に関するものであり、制御装置40は、制御情報に従って、リードスクリュー13,13a,13bをそれぞれ独立して回転させる。すなわち、制御装置40及びモータ31a〜31cは、本発明の位置変更手段の一例である。なお、ここでは、リードスクリュー毎に1ずつモータを用いているが、クラッチやギア等を用いて、1のモータでリードスクリュー13,13a,13bを回転させるようにしてもよい。また、油圧、水圧、電磁ソレノイド(アクチュエータ)等によって駆動力を発生する、モータ以外の駆動手段を用いてもよい。
音響管10については、隔壁14の位置に応じて、共鳴体の開口端(つまり、開口部12)の位置に対する閉口端の位置が変化するから、部分空間151のx軸方向の長さl1が変化して、音響管10の共鳴周波数f0が変化する。具体的には、開口部12の位置に隔壁14が移動させられたときには、l1は最小値「0」となるし、隔壁14が開口部12の反対側の端部に移動させられたときには、l1は最大値「L−D」となる。よって、音響管10の共鳴周波数f0は、およそ0≦f0≦(2n−1)・v/4(L−D)という関係を満たす。隔壁14が開口部12寄りの位置に移動させられるほど、部分空間151の長さl1が短くなるので共鳴周波数が高くなり、高い周波数帯域で吸音・散乱効果が発現する。一方、隔壁14が閉口端側の位置に移動させられるほど、部分空間151の長さl1が長くなるので共鳴周波数は低くなり、低い周波数帯域で吸音・散乱効果が発現する。
図8に示す例では、隔壁14a,14bによって各音響部の部分空間が他の空間と隔てられている。よって、音響管20の共鳴周波数f0は、音響部20aの部分空間151aの長さl1a、及び音響部20bの部分空間151bの長さl1bによって決まり、式(1)のl1をl1a,l1bに置き換えた共鳴周波数となる。
図10(a)は、図8に示す位置から隔壁14a、14bの位置が移動させられた場合の様子を表したものである。同図(a)に示す位置に隔壁14bがある場合、隔壁14aによって中空空間15cが塞がれて、中空空間15aと、中空空間15b及び15cとが隔てられる一方で、隔壁14bは中空空間15c(つまり、端部162)に接しない位置にあり、音響部20b、20cによって1つの管が形成され、部分空間151bと中空空間15cとにより「L」字型の空間が形成されている。図10(a)に示すように、部分空間151bと中空空間15cとが通じている場合に、これらが分岐しないか、又は、或る許容範囲内で分岐するが実質的に分岐しないとみなせる位置に隔壁14bがあるときには、音響部単体の全長よりも長い1つの管が形成される。これにより、音響部単体により実現可能な共鳴周波数よりも、さらに低い共鳴周波数を実現することができる。開口部12a,12bを開口端とした各共鳴体は、それぞれ隔壁14aを閉口端とする空間に構成される。これにより、音響管20の共鳴周波数f0には、音響部20aの部分空間151aの長さl1aに応じて式(1)により算出される周波数と、部分空間151bと中空空間15cとの合計の長さl1b+lcに応じた周波数とが存在する。音響管20においては部分空間151bと中空空間15cとが連なっているので、音響管20内部に構成された共鳴体の全長を、音響部単体で構成される共鳴体よりも長くすることができる。これにより、低い周波数帯域で吸音・散乱効果が発現する。
f0=n・v/2(l1a+lc+l1b) ・・・(2)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図12は、本発明の第2実施形態に係るパネル型の吸音・散乱体50の外観を示す斜視図である。図13は、吸音・散乱体50を構成する中空部材51−1〜51−5の断面を表す図である。図13(a)は、図12の切断線XI−XIで切断したときの断面を表した図であり、図13(b)は、図12の切断線XII−XIIで切断したときの断面を表した図である。
中空部材51−1〜51−5は、それぞれ本発明の筐体の一例であり、それぞれ同じ延在方向に配列され、それぞれ同じ長さを有している。中空部材51−1〜51−5は、図10に示すように、開口部52−1〜52−5の位置がそれぞれ異なるだけで、その他の構成は略同じである。よって、以下の説明において、中空部材51−1〜51−5のそれぞれを区別する必要のないときには「中空部材51」と総称し、開口部52−1〜52−5のそれぞれを区別する必要のないときには「開口部52」と総称する。また、説明の便宜のために、中空部材51−1〜51−5の延在方向の成分を「x軸」とし、x軸に直交し、中空部材51−1〜51−5が並べられた方向の成分を「y軸」とし、x軸及びy軸に直交する方向の成分を「z軸」としたxyz直交座標系を定める。
なお、ここでは、吸音・散乱体50を構成する中空部材の数を「5」としているが、この数は一例に過ぎず、さらに多くてもよいし、少なくてもよい。
なお、モータ60は、中空部材51−1〜51−5のそれぞれに対して1ずつ設けられており、制御装置70は中空部材51毎に独立して開閉状態を切り替える制御を行う。すなわち、制御装置70及びモータ60は、本発明の切替制御手段の一例である。
図14(a)〜(c)はそれぞれ、中空部材51の開閉状態と、吸音・散乱効果が発現する周波数域との関係を説明する図である。同図(a)〜(c)において、開口部52がハッチングされたものは開閉部材54により塞がれていることを意味し、中空部材51が「閉状態」であることを意味する。一方、開口部52がハッチングされていないものは開閉部材54により塞がれていないことを意味し、中空部材51が「開状態」であることを意味する。また、同図(a)〜(c)に示すグラフの横軸は周波数を表し、縦軸は吸音・散乱効果の程度を表す。横軸については矢印方向に周波数が高くなり、縦軸については矢印方向に吸音・散乱効果が高くなることを意味する。また、吸音・散乱効果が発現する周波数帯域の中心周波数をfcとする。
なお、制御装置70による中空部材51−1〜51−5のどれを「閉状態」とし、又は「開状態」とするかはミキサの操作者の操作内容に依存する。よって、例えば、中空部材51−3のみを「閉状態」とし、それ以外を「開状態」とする構成であってもよく、制御装置70は、各開口部52−1〜52−5に設けられた開閉部材54を個別に開閉状態を制御するものであればよい。
本発明は、上述した実施形態と異なる形態で実施することが可能である。また、以下に示す変形例は、各々を適宜に組み合わせてもよい。
[変形例1]
上述した第1実施形態の吸音・散乱ボックス1は、音響管10,20が1つずつ箱型部材2内に設置された構成を有していたが、音響管10,20の数はそれぞれいくつであってもよい。また、箱型部材2の形状は、例えば球型や、六面体よりも面数の多い多面体状の箱型の部材によって構成されてもよい。また、音響管10,20の一部又は全体が外部空間に露出するように構成されていてもよい。この場合、音響ホールの壁面や天井面を反射面として利用し、その反射面からの反射波と、音響管10,20が放射する反射波との関係が図6の関係を満たすような位置関係になるようにすれば、実施形態と同じように吸音・散乱効果を発現させることができる。
また、音響管10の管状部材11や隔壁14、音響管20の筐体21や隔壁14a,14bの材料は、金属に限らず、合成樹脂や木材等の他の材料により形成されていてもよい。
上述した第1実施形態において、音響管20は音響部20a,20b,20cの3つの音響部により構成されていたが、さらに多くの音響部を有する構成であってもよい。音響部の数に関係なく、隔壁が決められた位置に移動させられたときには、通路に相当する中空空間が塞がれて、複数の音響部の中空空間どうしが隔てられ、隔壁がそれ以外の位置に移動させられたときには複数の音響部の中空空間どうしが連なるようにすれば、共鳴周波数をより広い周波数範囲から設定可能となる。また、音響管20において、音響部20a,20bの内部空間はx軸方向に延在し、音響部20cの内部空間はy軸方向に延在していたが、これらの延在方向はxy平面上、又はxyz空間においてどの方向を向いていてもよい。また、音響管10,20の筐体や、その中空空間をyz平面方向に切断したときの断面形状が円形となるものに限らず、例えば別の形状となるようにしてもよい。ただし、隔壁14,14a、14bは音響管10,20の中空空間を複数に隔てるものであるから、その断面形状に応じた形状、寸法のものが用いられる。また、音響管10や、音響管20の音響部20a,20b,20は、一方向(x方向)に延在する中空空間を有していたが、中空空間に共鳴体が構成されればよく、例えば湾曲状である等の他の形状であってもよい。
上述した第1実施形態の吸音・散乱ボックス1において、音響管10,20の内部に構成される共鳴体の全長が変更されるように構成されていれば、共鳴周波数を可変にすることができる。よって、筐体の開口部を開口端とした共鳴体において、閉口端となる移動部材を設けておき、制御装置が移動部材の位置を移動させて共鳴体の開口端の位置に対する閉口端の位置を変更する構成を有していればよい。すなわち、隔壁14,14a,14bに代えて、中空空間を移動可能な他の形状や他の寸法の部材を用いてもよい。例えば音響管10に代えて、図15に示すような音響管100を用いてもよい。
図15(a)に示すように、音響管100は、第1部材101と、第2部材102により構成され、内部には柱状の中空空間103が形成されている。第1部材101は、内部空間を外部に連通させる開口部120を有する中空状の部材であり、両端開口の管状部材である。第2部材102は、一端開口の管状部材であり、その外周面の直径は、第1部材101の内周面の直径よりも小さい。第2部材102は開口端側が中空空間103内を移動可能に設けられ、開口端に対する他端は閉口端104となっている。このように、音響管100は、第2部材102の外周面が第1部材101の内周面に接するようにして嵌め込まれた構成を有している。
制御装置は、制御情報をミキサから受け取ると、それに応じて第2部材102の位置をx軸方向に移動させる。例えば、制御装置は、第2部材102を開口部120の方向(つまり、図15(b)に示す白抜き矢印方向)へ移動させると、共鳴周波数は高くなるし、その反対側へ移動させると、共鳴周波数は低くなる。この構成によれば、第1部材101と第2部材102との密着度が高く、共鳴周波数に応じて音響管10の寸法や形状が安定する。また、共鳴時に音響管が伸び縮みしにくいので、安定した共鳴現象を発生させることができる。
また、移動部材を移動させるための制御系の構成は前掲のもの以外にも、種々の公知の構成を採ることができる。
上述した第2実施形態の吸音・散乱体50は、吸音・散乱効果が発現する周波数幅(鋭さQ)を可変にする構成を有していたが、さらに第1実施形態で説明した音響管10,20が備える構成を採用することにより、共鳴周波数も可変にする構成を備えるようにしてもよい。例えば中空部材51の中空空間に、第1実施形態と同様にして、隔壁14がx軸方向に対して移動可能なように、リードスクリュー13及び隔壁14を設けておく。この構成において、隔壁14が共鳴体の閉口端となっていれば、隔壁14の位置に応じて共鳴体の閉口端の位置が変化し、共鳴周波数が変わるからである。
図16は、この変形例に係る中空部材51aを例示する断面図である。図16(a)、(b)は、それぞれ図13(b)と同一方向に中空部材51aを切断したときの断面を表した図である。なお、中空部材51と同じ構成については同一の符号を用いて表し、その説明を省略する。
図16(a)に示すように、中空部材51aの側面には内部空間53を外部空間に通じさせる孔55が開けられている。この孔55のx軸方向の寸法Bは、第2実施形態の孔52の例えば3倍程度あり、y軸方向に対する寸法は孔52の寸法と同じである。また、内部空間53には、可動板56が設けられている。可動板56は、板状の基部56aと、基部56aの中央付近に開けられた正方形の孔56bとにより構成される。孔56bのx軸方向に対する寸法Eは、孔55のそれとほぼ同じであり、y軸方向に対する寸法も孔55のそれと同じである。可動板56は、制御装置70の制御の下で、内部空間53において中空部材51aの孔55が開けられた側の内壁に沿って、x軸方向にスライド方式により移動させられる。可動板56のうち基部56aは孔55を塞ぎ、孔56bは孔55と内部空間53とを通じさせる。すなわち、孔56bと孔55とが重なり合った位置で内部空間53は外部空間に通じる。
C+D<A
D≦C
E+F>B
上述した第1実施形態では、音響部20a,20bの中空空間15a,15bの延在方向と、音響部20cの中空空間15cとが直交していた。これに代えて、これらの中空空間が連なったときに1本の管と機能しやすいように、つまり、共鳴体として機能しやすいように、音響部20cの内部空間を中空空間15a,15bに対して直交させる構成に代えて、「U」字型のように湾曲させ、1本の管としての形状が滑らかなものとなるようにすることが好ましい。
また、上述した第1実施形態では、複数の音響部の中空空間を通じさせる場合に、図10に示すように空間が分岐しないように隔壁14a、14bの位置を設定していたが、分岐する位置に設定することを妨げるものではない。かかる位置に設定することにより、実施形態の場合よりも複雑な音響現象が発現し、実施形態とは異なる音響作用が発現すると考えられる。
上述した第1、第2実施形態又は変形例に係る吸音・散乱ボックス、吸音・散乱体は、音響特性を制御する各種の音響室に配置することが可能である。ここで各種音響室は、防音室、ホール、劇場、音響機器のリスニングルーム、会議室等の居室、各種輸送機器の空間、スピーカや楽器などの筐体等である。
Claims (1)
- 第1の中空空間と、第2の中空空間と、前記第1の中空空間と前記第2の中空空間とを通じさせる第3の中空空間とが内部に形成され、前記第1の中空空間及び前記第2の中空空間を、それぞれ異なる開口部を介して外部空間に通じさせる筐体であって、前記開口部のそれぞれが開口端となる共鳴体が内部に構成される筐体と、
前記第1の中空空間内を移動させられる第1の移動部材と、
前記第2の中空空間内を、前記第1の移動部材とは独立して移動させられる第2の移動部材と、
前記第1の移動部材及び前記第2の移動部材をそれぞれ移動させて、前記共鳴体の開口端の位置に対する閉口端の位置を変更する位置変更手段と
を備えることを特徴とする音響構造体。
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