以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る眼科装置の外観図である。本装置は、基台2と、基台2に取り付けられた顔支持ユニット4と、基台2上に移動可能に設けられた移動台6と、移動台6に移動可能に設けられ、後述する光学系を収納する測定部8を備える。移動台6は、ジョイスティック12の操作により、基台2上を左右方向(X方向)及び前後方向(Z方向)に移動される。また、測定部8は回転ノブ12aが回転操作されることにより、モーター等からなる駆動機構17により上下方向(Y方向)に移動される。移動台6には被検眼Eの観察像や測定結果等の各種の情報を表示するモニタ70、各種設定を行うためのスイッチが配置された操作部90が設けられている。
図2は本実施形態に係る眼科装置の光学系について示す概略構成図である。本光学系は、眼軸長測定光学系(測定ユニット)10、角膜形状測定用の指標を角膜に投影するケラト投影光学系50、アライメント投影光学系40、前眼部正面像を撮像する前眼部正面撮像光学系30、に大別される。なお、以下の光学系は、測定部8に内蔵されている。
投影光学系50は、測定光軸L1を中心に配置されたリング状の光源51を有し、被検眼角膜にリング指標を投影して角膜形状(曲率、乱視軸角度、等)を測定するために用いられる。なお、光源51には、例えば、赤外光または可視光を発するLEDが使用される。
投影光学系40は、光源51の内側に配置され、赤外光を発する投影光源41(例えば、λ=970nm)を有し、被検者眼角膜にアライメント指標を投影するために用いられる。なお、上記光源51及び光源41は、前眼部照明光源を兼用する。
撮像光学系30は、ダイクロイックミラー33、対物レンズ47、全反射ミラー36、フィルタ34、撮像レンズ37、二次元撮像素子35、を含み、被検眼の前眼部正面像を撮像するために用いられる。撮像素子35は、撮像面が被検眼前眼部と略共役な位置に配置されている。また、撮像光学系30は、眼底反射光によって照明された被検眼瞳孔部における徹照像(瞳孔内画像)を撮像する。また、ダイクロイックミラー33は、測定光の大部分を透過し、測定光の一部を反射すると共に、光源51及び光源41による光を反射する。
前述の投影光学系50、投影光学系40による前眼部反射光は、ダイクロイックミラー33、対物レンズ47、全反射ミラー36、フィルタ34、及び撮像レンズ37を介して二次元撮像素子35に結像される。
眼軸長測定光学系10は、投光光学系10a及び受光光学系10bを有し、被検眼に測定光を投光し、その反射光による干渉光を検出する。投光光学系10aは、測定光源1(本実施例では、固視灯を兼ねる)から出射された光を分割し、分割された光の一方から生成された測定ビームを眼底に向けて投光する。投光光学系10aは、低コヒーレント光を出射する測定光源1から出射された光束を平行光束とするコリメータレンズ3、光源1から出射された光を分割するビームスプリッター(以下、ビームスプリッタ)5、ビームスプリッタ5の透過方向に配置された第1三角プリズム(コーナーキューブ)7、ビームスプリッタ5の反射方向に配置された第2三角プリズム9、偏光ビームスプリッタ11、1/4波長板18、光をランダムに拡散させる光学部材としての拡散板13を有する。
拡散板13は、投光光学系10aの光路中に配置され、徹照像に生じるスペックルノイズを光学的に抑制するスペックル抑制手段として用いられる。本実施例において、拡散板13は撮像光学系30の光路から外れた位置であって、かつ、第1測定光と第2測定光が通過する共通光路に配置されている。すなわち、徹照像のスペックルノイズを除去するため、徹照像撮影時において、光路に挿入され、光軸L1に対して垂直方向に振動される。なお、本実施例においては、拡散板13を光軸L1に対して垂直方向に振動する構成としたが、回転させてもかまわない。
第1駆動部16は、モータ等の駆動源を持ち、拡散板13を光路から挿脱させるために配置されている。第2駆動部15は、モータ等の駆動源を持ち、拡散板13の挿入後、拡散板13を光軸に対して垂直方向に振動させるために配置されている。
受光光学系10bは、眼底で反射された一方の光と他方の光とが合成された光を受光素子21に導く。受光光学系10bは、ダイクロイックミラー33と、1/4波長板18と、偏光ビームスプリッタ11と、集光レンズ19と、受光素子21と、を有する。
光源1から出射された光(直線偏光)は、コリメータレンズ3によってコリメートされた後、ビームスプリッタ5によって第1測定光と第2測定光とに分割される。そして、分割された光は、三角プリズム7(第1測定光)及び三角プリズム9(第2測定光)によって反射されて各々折り返された後、ビームスプリッタ5によって合成される。そして、合成された光は、偏光ビームスプリッタ11によって反射され、1/4波長板18によって円偏光に変換された後、光軸に対して垂直方向に振動する拡散板13、ダイクロイックミラー33を介して、少なくとも被検眼角膜と眼底に照射される。このとき、測定光束は、被検者眼の角膜と眼底にて反射されると、1/2波長分位相が変換される。
角膜反射光及び眼底反射光は、ダイクロイックミラー33(眼底反射光の一部は、反射される)、拡散板13を透過し、1/4波長板18によって直線偏光に変換される。その後、偏光ビームスプリッタ11を透過した反射光は、集光レンズ19によって集光された後、受光素子21によって受光される。
なお、三角プリズム7は、一方の光と他方の光の光路差を調整するために光軸方向に移動可能に配置された光学部材(光路長変更部材)である。三角プリズム7は、、駆動部71(例えば、モータ)の駆動によってビームスプリッタ5に対して光軸方向に直線的に移動される。この場合、光路長変更部材は、三角ミラーであってもよい。また、プリズム7の駆動位置は、位置検出センサ72(例えば、ポテンショメータ、エンコーダ、等)によって検出される。
なお、上記説明においては、角膜反射光と眼底反射光を干渉させる構成としたが、これに限るものではない。すなわち、光源から出射された光を分割するビームスプリッタ(光分割部材)と、サンプルアームと、レファレンスアームと、干渉光を受光するための受光素子と、を有し、サンプルアームを介して被検眼に照射された測定光とレファレンスアームからの参照光とによる干渉光を受光素子により受光する光干渉光学系を備える眼寸法測定装置であってもよい。この場合、サンプルアーム及びレファレンスアームの少なくともいずれかに光路長変更部材が配置される。
また、上記構成においては、プリズム7を直線的に移動させることにより参照光の光路長を変化させるものとしたが、これに限るものではなく、回転反射体による光遅延機構により参照光の光路長を変化させる構成であっても、本発明の適用は可能である(例えば、特開2005−160694号公報参照)。
また、測定光学系10の測定光源1を徹照像撮影用光源として兼用しており、投光光学系10aと同様の光路を経て、被検眼眼底に投光される。そして、その眼底反射光によって被検眼の瞳孔内が後方から照明される。そして、被検眼瞳孔を出射した光は、前述の前眼部反射光と同様の経路を経て、二次元撮像素子35に撮像される。これにより、被検眼瞳孔内の徹照像が取得される。
次に、制御系について説明する。制御部80は、装置全体の制御及び測定結果の算出を行う。制御部80は、光源1、光源51、光源41、駆動機構17、第1駆動部16、第2駆動部15、受光素子21、撮像素子35、モニタ70、メモリ85等と接続されている。また、制御部80には、各種入力操作を行うための操作部90が接続されている。メモリ85には、各種制御プログラムの他、制御部80が眼軸長等を算出するためのソフトウェアプログラム等が記憶されている。
操作部90には、例えば、測定光学系により干渉光を受光して眼軸長を測定する第1モードと、撮像光学系により瞳孔内画像である徹照像画像を撮像する第2モードとを切り換える切換信号を発するためのモード切換手段(モード切換スイッチ90a)が設けられている。また、操作部90には、操作入力部として、マウス等の汎用インターフェースが用いられてもよいし、その他、タッチパネルが用いられてもよい。
制御部80は、モード切換手段からの切換信号に基づいて、第1モードではスペックル抑制手段の作動を停止させ、第2モードではスペックル抑制手段を作動させる。
より具体的に説明すると、制御部80は、第1駆動部16及び第2駆動部15の駆動を制御し、拡散板13の着脱及び振動の作動を制御する。なお、眼軸長の測定時には、拡散板13は、光路上より外され、振動が停止される。
第1モードでは、拡散板13は光路上より外され、第1駆動部16及び第2駆動部15の作動は停止される。また、第2モードへの切り換え時には、制御部80により、第1駆動部16が作動され、拡散板13が光路上に挿入されるとともに、第2駆動部15が作動され、拡散板13が振動される。なお、モード切換スイッチ90aの操作により第2モードから第1モードへ切り換えられると、制御部80は、第2駆動部15の作動を停止し、拡散板13の振動を停止させる。そして、第1駆動部16を作動し、光路上から拡散板13を外す。制御部80は、拡散板13が光路上から外れると、第1駆動部16の作動を停止させる。
以上のような構成を備える装置において、その動作について説明する。まず、第1モードに設定された場合を説明する。検者は、モニタ70に表示される被検眼のアライメント状態を見ながら、ジョイスティック12等の操作手段を用いて、装置を上下左右及び前後方向に移動させ、装置を被検眼Eに対して所定の位置関係に置く。この場合、検者は、固視標を被検眼に固視させる。
図3は撮像素子35によって撮像された前眼部画像が表示された前眼部観察画面を示す図である。アライメントの際には、光源41及び光源51が点灯される。ここで、検者は、図3に示すように、レチクルLTと、光源41によるリング指標R1と、が同心円状になるように上下左右のアライメントを行う。なお、レチクルLTは、本実施形態においては、角膜頂点位置と装置の光軸L1が一致する位置として設定されたアライメント基準位置を電子的に表示したものである。また、検者は、リング指標R1のピントが合うように、前後のアライメントを行う。なお、リング指標R1の外側には、第2光源51によるリング指標R2が表示されている。
<眼軸長の算出>
アライメント完了後、測定開始のトリガ信号が自動又は手動にて出力され、制御部80によって測定光源1が点灯されると、眼軸長測定光学系10によって測定光が被検眼に照射されると共に、測定光による被検眼からの反射光が受光光学系10bの受光素子21に入射される。
また、制御部80は、駆動部71の駆動を制御し、第1三角プリズム7を往復移動させる。そして、制御部80は、受光素子21から出力される受光信号に基づいて、受光素子21によって干渉光(干渉信号)が検出されたタイミングに基づいて、眼軸長を算出する。
取得された被検眼の眼軸長の情報は、メモリ85に記憶される。また、制御部80は、所定回数の測定が完了したら(又は被検者の眼軸長値が所定数得られたら)、プリズム7の往復移動を終了し、プリズム7の移動位置を初期位置に復帰させる。なお、第1モードでは、眼軸長の他、角膜形状が任意に測定可能である。
<徹照像撮影>
検者により、第2モードへのモード切換スイッチ90aが選択されると、制御部80は、第1モードから第2モードへとモード切り換えを行う。なお、制御部80は、第1モードから第2モードへの切り換えを自動的に行うようにしてもよい。第2モードでは、制御部80は、第1駆動部16を作動させ、拡散板13光路上に挿入する。次いで、第2駆動部15を作動させ、光路上にて、拡散板13を振動させる。
そして、光源51及び光源41を消灯させ、光源1を点灯させる。光源1より出射され、拡散板13を通って、眼底に投光される。そして、眼底反射光は被検眼Eの水晶体内を照明した後に、瞳孔から出射される。瞳孔より出射された眼底反射光は、ダイクロイックミラー33により反射され、徹照像として撮像素子35により撮像され、モニタ70上に表示される。これにより、白内障や混濁のある部位Kにおいては、暗い影が確認される(図4参照)。
ここで、投光系より発せられた光の経路を考えると、被検眼眼底のような面は、光の波長と比較してその凹凸が同程度かまたは大きい。そのため、被検眼眼底に向けて照射した光束は、眼底で複雑な位相変化を伴って重なり合い、それらの光束が互いに干渉している場合がある。そして、その反射光により徹照像を撮像すると、徹照画像上に斑点状のムラが発生する。
そのため、徹照像の撮影時に斑点上のムラが発生する光路上において、拡散板13を設置することで、徹照画像上の斑点状のムラを除去した。すなわち、光路上にて、拡散板13を光軸に対して垂直方向に振動させることにより、眼底に向かう測定光に対して位相差を発生させる。これにより、眼底上での測定光の干渉状態が変動され、結果的に、徹照画像上に生じるスペックルパターンが時間的に変動される。そして、受光系の応答速度内での積分効果によりパターンが平均化される。この場合、例えば、撮像素子35において1フレームを取得する時間内にスペックルパターンが幾重にも変動するように、十分な速度で拡散板13を振動させる。
そして、ジョイスティック12に設けられたスイッチ12bが操作されると、徹照像画像が取得され、メモリ85に記憶される。また、このような徹照像画像は、モニタ70やプリンタ等に出力される。なお、本発明においては、撮影スイッチ12bを操作することにより画像の取得が行われるものとしたが、自動的に撮影が行われる構成としてもよい。
以上のように、本発明によれば、徹照像画像のような瞳孔内画像を撮影した際の画像全体の斑点状のムラを除去でき、検者は、白内障による混濁と斑点状のムラを誤認識することなく確認することができる。
また、上記説明においては、徹照像撮影時に拡散板13を作動させることにより、徹照像のスペックルノイズが除去され、白内障の進行状態の確認に適した良好な徹照像が得られる。一方、眼軸長測定時に拡散板13の作動を停止させることにより、眼底反射光と他の光の光干渉性が確保され、眼軸長を正確に測定できる。
なお、本発明においては、スペックルノイズを除去するために用いる光学部材として、拡散板13を用いたが、これに限らない。例えば、プリズムを用いてもよい。プリズムを用いる場合、駆動部により、プリズムを回転運動させ、光束を偏心回転させることにより、眼底上での光束の散乱状態が変化され、スペックルノイズを除去可能となる。また、水晶偏光解消板、バンドルファイバ、フォトニック結晶、液晶プレート等の部材を用いてコヒーレンス性を低下させ、スペックルノイズを除去することも可能である。
なお、上記構成においては、拡散板13を偏光ビームスプリッタ11とダイクロイックミラー33の間に挿入する構成としたがこれに限らず、撮像光学系30の光路から外れた位置であればよい。
さらに、第1測定光と第2測定光との共通光路(例えば、光源1とビームスプリッタ5の間)であることが好ましい。これにより、スペックルノイズ除去用の光学部材によって測定光束全体が作用される。一方、分割光路のいずれかに配置されると、他方の光が変動されないからである。
なお、プリズムを用いた場合には、眼底上での光束を移動させる必要があるため、その配置位置は、撮像光学系30の光路から外れた位置かつ、眼底共役位置から外れた位置とすることで適用可能となる。
なお、本発明においては、測定光源1として、低コヒーレント光を出射する光源であるSLDを用いたが、これに限らず、コヒーレント性を持つ光を出射する光源であればよい。例えば、高コヒーレント光源であるマルチモードレーザダイオードでも適応可能である。波長可変光源を用いたSS(Swept source)−OCTにて、眼軸長を測定する構成でも適応可能である。
なお、上記構成においては、スペックル除去手段として、プリズム等の光束偏向部材を用いる場合、瞳孔共役位置にこれを配置するのであれば、眼軸長測定中に光束偏向部材を作動させても、角膜反射光の移動が軽減され、干渉性の低下は、一定量抑制されるかもしれない。
<測定可能率の向上>
以上のような構成によって、徹照像画像のような瞳孔内画像を撮影した際に、画像全体の斑点状のムラを除去できる。検者は、白内障による混濁を観察しやすくなるため、被検眼測定時の測定可能率(測定の成功率)を向上できる。
例えば、角膜頂点を通る光軸上の位置に混濁部分がある場合、装置の測定光が混濁によって散乱するため、測定に失敗することがある。制御部80は、瞳孔上でのアライメント位置を変更させることによって、測定光が透過する位置を混濁部分から回避させる。その結果、測定光の散乱が抑制され、測定可能率が向上される。
以下、被検眼測定時の測定可能率を向上させる方法について、図5の示したフローチャートを用いて説明する。
初めに、眼軸長の測定が行われる。角膜中心へのアライメントが完了されると、測定開始のトリガ信号が自動又は手動にて出力される。制御部80は、そのトリガ信号に基づいて、眼軸長を算出する。制御部80は、取得された眼軸長の測定結果に基づいて、第1モードから第2モードへの切り換えを行う。
例えば、制御部80は、取得された眼軸長のS/N比が所定値以下であった場合に、モード切り換えを行う。もちろん、制御部80は、眼軸長のS/N比が所定値以下であった場合に、その旨をモニタ70上に表示してもよい。検者は、モードを切り換えるか否かを選択する。
モード切換後、制御部80は、撮像素子35により徹照像を撮像する。制御部80は、撮像された徹照像をモニタ70上に表示する(図4参照)。撮影開始のトリガ信号が自動又は手動にて出力されると、制御部80は、解析用の徹照像(徹照像画像)を取得する。制御部80は、アライメント位置を変更するため、取得された徹照像画像を解析する。
制御部80は、撮像素子35によって取得された徹照像を処理することにより、干渉信号のS/N比が許容値を満たすように設定された角膜頂点を中心とする所定領域での混濁部の二次元分布を求める。制御部80は、求められた二次元分布に基づいて、その所定領域内における光透過領域を特定する。
例えば、制御部80は、徹照像において、干渉信号のS/N比が許容値を満たすように設定された所定領域を複数に分割する。制御部80は、分割された領域毎の混濁率を二次元分布の算出結果を用いて比較する。制御部80は、比較結果に基づいて、混濁率が少ない領域を前記光透過領域として特定する。
以下、具体的に説明する。図6に示されるように、制御部80は、徹照像画像の測定可能領域P内の各分割領域P1〜P4における混濁率に基づいて、アライメント位置を変更する。
被検眼からの反射光におけるS/N比は、角膜頂点位置から遠くなるにつれて小さくなる。S/N比の減少によって干渉信号の取得が困難となるため、眼軸長の測定値が算出されない可能性がある。
測定可能領域Pは、角膜頂点位置から所定の距離離れた領域を示しており、混濁が無い状態下で、測定光を入射した場合に、被検眼からの反射光を含む干渉信号のS/N比を許容値以上取得できる領域である(例えば、φ1.0mmの領域)。
例えば、瞳上の測定可能領域Pにおいて、測定光束(測定光の径がφ1.5mm)が所定面積以上通過することによって、眼軸長を測定可能なS/N比が得られる。光軸L1近傍での光(測定光束の中心部分)に起因する干渉信号のS/N比は最も大きい。測定可能領域Pにおいて光軸L1近傍での光が通過できれば、測定成功率は高くなる。
測定可能領域Pは、実験やシミュレーション等によって予め設定される。例えば、設定者は、角膜頂点から光軸L1を移動させ、干渉信号のS/N比を所定値以上確保できる領域を求める(例えば、角膜頂点からΔD離れた領域)。各分割領域P1〜P4は、測定可能領域Pを所定の領域毎に分割した領域である。制御部80は、各領域のいずれかの位置にアライメント位置を変更する(詳細は後述する)。混濁率は、各分割領域における領域全体に対する混濁部分の割合を示している。
なお、本実施形態では、測定可能領域Pを円領域で設定しているがこれに限定されない。干渉信号のS/N比が所定値以上取得できる位置であればよい。制御部80は、徹照像と共に、測定可能領域Pを示すパターンをモニタ70上に電子的に表示する。パターンは、任意の形状であればよく、例えば、円形、又は正方形にて表示される。
制御部80は、各分割領域P1〜P4において混濁率を算出するため、徹照像画像の測定可能領域P内の輝度情報を取得する。混濁率の算出方法について説明する。例えば、制御部80は、測定可能領域P内の各画素の輝度値を検出していく。制御部80は、検出された輝度値が所定の閾値以下であるか否かを判定することにより,各画素が混濁部分又は混濁の無い部部分のどちらに対応するものであるかを判定する。制御部80は、画素の輝度値が所定の閾値以下である場合には、その画素が混濁部分に対応するものであると判定する。制御部80は、画素の輝度値が所定の閾値より大きい場合には、その画素が混濁の無い部分に対応するものであると判定する。
制御部80は、測定可能領域P内の全画素に対して、上記のような判定処理を行う。制御部80は、各分割領域P1〜P4において、全画素数の内で混濁部分に対応する画素数を算出する。制御部80は、各分割領域において、それぞれ混濁率を算出する。例えば、混濁率は、0〜100のパラメータで表わされる。混濁率のパラメータは、領域内に混濁部分の画素が多いほどパラメータが100に近づき、混濁部分の画素が少ないほどパラメータが0に近づく。混濁率のパラメータが0である場合には、混濁部分が領域内に完全に無いことを示している。混濁率のパラメータが100である場合には、領域の全てが混濁部分であるということを示している。
徹照像は、拡散板13によって、画像全体の斑点状のムラを除去されているため、制御部80は、白内障による混濁と斑点状のムラを誤認識することなく,検出できる。
制御部80は、撮像素子35から出力される撮像信号に基づいて駆動機構17を制御することにより被検眼に対する自動アライメントを作動させ、光透過領域に眼軸長測定光学系10の光軸L1が位置されるようにアライメント位置を変更する。例えば、制御部80は、算出された混濁率に基づいて、アライメント位置を変更する。制御部80は、各分割領域の混濁率のパラメータを比較する。制御部80は、比較結果を用いて、混濁率のパラメータがもっとも小さい分割領域に対して装置の光軸L1が通るように、アライメント位置を変更する。
図7は、各分割領域において混濁率が算出された場合のモニタ70上の画面に表示された徹照像画像の一例を示す図である。
制御部80は、駆動機構17を用いて被検眼に対して眼軸長測定光学系10を駆動し、
特定された光透過領域(例えば、混濁率のパラメータがもっとも小さい分割領域)に眼軸長測定光学系10の光軸L1が位置されるように制御する。
制御部80は、被検眼に対して装置本体を上下左右に移動させることによって、角膜頂点の近傍から光軸L1をずらす。例えば、制御部80は、混濁率のパラメータがもっとも小さい分割領域P1の所定位置(分割領域の重心位置)と装置の光軸L1が一致するようにアライメント位置を変更する(図8参照)。所定位置は、例えば、分割領域の重心位置に設定される。
基準位置Oは、角膜頂点位置と光軸L1を一致させるためのアライメント基準位置である。図8に示すように、制御部80は、アライメント位置を基準位置Oから被検眼に対して左方向にD2、下方向にD3シフトさせたアライメント位置O3に移動させる。シフト量(D2、D3)は、予め、実験やシミュレーション等によって、各分割領域の所定位置を測定光が通過するように算出される。算出されたシフト量(D2、D3)は、メモリ75に記憶される。
制御部80は、アライメント位置をアライメント位置O3に変更した後、光源51及び光源41を点灯させると共に光源1を消灯させ、さらに、モニタ70上を前眼部正面像に切り換える。
制御部80は、変更されたアライメント位置O3にて自動アライメントを実行する。制御部80は、角膜頂点位置(角膜輝点位置)Mo1を検出した後、その検出結果を利用して、アライメント位置O3と角膜頂点位置Mo1との偏位量Δd1を求める。
その結果として、検出されるアライメントずれ量は、変更前のアライメント位置であるアライメント基準位置Oに対してD2とD3分オフセットが掛けられる。
制御部80は、アライメント位置O3を中心と設定された許容範囲A2を偏位量Δd1が入るように、駆動機構17の駆動を制御する(自動アライメントの作動)。制御部80は、偏位量Δdがアライメント完了の許容範囲A2に入り、かつ、その時間が一定時間(例えば、画像処理の10フレーム分又は0.3秒間等)継続しているかにより、XYZ方向のアライメントの適否を判定する。
アライメントが適正と判定されると、制御部80は、駆動機構17の駆動を停止させる。アライメント完了後においても、制御部80は、偏位量Δd1を随時検出しており、偏位量Δd1が許容範囲A2を超えた場合、自動アライメントを再開してもよい。制御部80は、偏位量Δd1が許容範囲A2を満たすように被検者眼に対して測定部8を追尾させる制御(トラッキング)を行ってもよい。
以上のように、制御部80は、自動アライメントを行う。アライメント完了後、測定開始のトリガ信号が自動又は手動にて出力されることによって、制御部80は、眼軸長を算出する。制御部80は、眼軸長の測定結果をモニタ70に表示させ、測定を終了する。
以上のように、アライメント位置を変更することによって、制御部80は、混濁部分の領域が少ない領域に装置の光軸L1の位置を移動させる。
光軸L1の移動により、より多くの測定光が通過できる。例えば、測定光の中心部分に近い光束が混濁部分によって散乱される可能性が低くなる。混濁部での散乱によって干渉信号のS/N比の減少が抑制された結果、測定可能率の向上に繋がる。
眼軸長の干渉信号のS/N比が所定値以下であった場合に、制御部80は、モード切り換えを行う構成としたがこれに限定されない。眼軸長の測定結果に基づいて、モードの切り換えが行われればよい。例えば、制御部80は、所定回数の眼軸長測定を行った結果として、所定数の測定結果が取得されない(例えば、5回の測定の内、2回のみ測定結果が取得された)場合に、モードを切り換えるようにしてもよい。制御部80は、新たに取得された眼軸長の測定値が所定の測定値の範囲を外れた(異常値であった)場合に、制御部80は、モード切り換えを行う構成としてもよい。
なお、上記説明においては、制御部80は、混濁率のパラメータに基づいてアライメント位置の変更を行ったがこれに限定されない。例えば、制御部80は、分割領域毎の平均輝度値を算出し、各分割領域で算出された平均輝度値を比較することによって、アライメント位置を変更する構成でもよい。混濁が多い領域は、混濁によって輝度値が小さくなるため、平均輝度値が小さくなる。このため、制御部80は、分割領域毎の平均輝度値を算出し、分割領域の中で、平均輝度値がもっとも大きい輝度値が算出された分割領域にアライメント位置を移動させればよい。これにより、混濁の少ない領域にアライメント位置を移動させることができる。
なお、上記説明において、制御部80は、取得した徹照像画像の静止画上に混濁率のパラメータを表示したがこれに限定されない。例えば、制御部80は、徹照像画像の解析結果を徹照像の動画像に重畳処理することにより、重畳画像をモニタ70に表示してもよい。例えば、モニタ70上に表示される徹照像の動画像に混濁率のパラメータが重ね合わせ処理される。その後、制御部70は、徹照像の移動を検出することにより、混濁率のパラメータの表示を徹照像の表示にトラッキングさせる。なお、重ね合わせ処理は、例えば、基準画像としてメモリ85に記憶された徹照像画像の瞳孔部と、逐次検出される徹照像の各動画像の瞳孔部を検出し、これらを重ね合わせることによって行われる。
なお、上記説明においては、制御部80が混濁率に基づいて、アライメント位置を変更する構成としたがこれに限定されない。例えば、検者がモニタ70上に表示された混濁率のパラメータを確認する。確認後、検者は、アライメント位置を変更する。
検者によってアライメント位置を変更する場合、例えば、検者は、操作部90(タッチパネルやジョイスティック等)を用いて、モニタ70上の画面上において装置の光軸L1が通る位置(測定光が出射される位置)を選択する。検者によって選択がされると、制御部80は、選択された領域を装置の光軸L1が通るように、アライメント位置を変更する。
検者は、モニタ70上に表示された混濁率のパラメータを用いなくとも、徹照像画像を観察したときの観察結果を利用してアライメント位置を設定してもよい。
なお、上記説明においては、混濁率のパラメータがモニタ70上に表示される構成としたが表示されなくてもよい。例えば、制御部80は、モニタ70上にパラメータを表示せず、混濁率のパラメータをメモリ85等から呼び出し、アライメント位置を変更すればよい。
なお、上記説明においては、混濁率がもっとも小さい分割領域を光透過領域として、光透過領域を装置の光軸L1が通るようにアライメント位置を変更する構成としたがこれに限定されない。本実施形態における光透過領域は、測定光束が所定面積以上通過でき、許容されるS/Nが得られる領域であればよい。例えば、制御部80は、許容されるS/Nが得られる混濁率に対応する領域を特定する。制御部80は、特定された領域上を装置の光軸L1が通るように,アライメント位置を変更すればよい。
なお、上記説明においては、アライメント位置が変更される際の所定位置を分割領域の重心位置を設定したがこれに限定されない。所定位置は、各分割領域内に装置の光軸L1が移動できればよく、分割領域内に装置の光軸L1が収まればよい。例えば、角膜頂点位置から各分割領域に対して所定の距離離れた位置に設定されてもよい。
なお、アライメント位置変更後、眼軸長の測定結果が所定の許容範囲を外れていた場合には、さらに、制御部80は、アライメント位置を再度変更した上で測定を行う。アライメント位置の変更について、同じ分割領域内で所定量だけアライメント位置が変更されてもよいし、異なる分割領域の所定の位置へ変更されてもよい。アライメント位置が異なる分割領域へ変更される場合、変更先の分割領域の選択は、混濁率のパラメータから行われてよいし、近傍の分割領域に変更されてもよい。
制御部80は、アライメント位置の変更を所定回数行っても、測定結果が良好でない又は測定結果が算出されない場合には、測定エラーとして判定すると共に、眼軸長の測定を停止させる。制御部80は、その旨をモニタ70等に表示してもよい。
なお、上記説明においては、取得された眼軸長の測定結果に基づいて、アライメント位置の変更処理に移行する構成としたがこれに限定されない。例えば、初めに、徹照像を撮影し、アライメント位置の変更を行う構成でもよい。
なお、上記説明においては、徹照像画像を静止画像として取得することにより解析を行う構成としたがこれに限定されない。例えば、制御部80は、第1モードから第2モードへモード切り換えが行われた後に徹照像が撮像されると、混濁部分に基づいてアライメント位置を変更するため、モニタ70上に表示された徹照像を解析する。制御部80は、例えば、モニタ70上に表示されている徹照像を逐次解析することにより、徹照像に関連する解析結果をリアルタイム更新する。
上記説明においては、制御部80は、アライメント位置変更後、自動アライメントにてアライメントを完了させたが、これに限定されない。例えば、検者が手動にてアライメントを行ってもよい。アライメント位置の変更後、制御部80は、モニタ70上に表示する画像を前眼部正面像に切り換える。検者は、前眼部正面像を確認してアライメントを行う。
なお、制御部80は、モニタ70上の徹照像又は徹照像画像の表示倍率を変更して表示される構成としてもよい。このようにすることにより、徹照像がより観察しやすくなる。