以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る発泡性アルコール飲料の製造方法(以下、「本製造方法」という。)の一例に含まれる主な工程を示す説明図である。図1に示すように、本製造方法は、ラッカーゼを使用して発酵前液を調製する発酵前工程10と、当該発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う発酵工程20と、を含む。
なお、本発明でいうアルコール飲料とは、例えば、エタノールを1体積%以上の濃度で含有する飲料である。そして、本発明でいう発泡性アルコール飲料とは、ビールや発泡酒等、炭酸ガスを含有するアルコール飲料であって、例えば、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性と、を有するアルコール飲料である。具体的に、この発泡性アルコール飲料は、例えば、EBC(European Brewery Convention:欧州醸造協会)法によるNIBEM値(泡持ち特性を表す単位)で50以上を示すアルコール飲料である。
発酵前工程10においては、窒素源及び炭素源を含む原料と水とを使用して発酵前液を調製する。窒素源は、酵母がアルコール発酵に利用できる窒素含有化合物であれば特に限られず任意の1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。炭素源は、酵母がアルコール発酵に利用できる炭素含有化合物であれば特に限られず任意の1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
より具体的に、原料の一部として、麦芽を使用することができる。麦芽は、窒素源及び炭素源を含有する。麦芽は、適切な温度で、酸素の存在下、大麦に適切な量の水分を浸み込ませ、発芽させることにより、調製することができる。
麦芽に含まれる窒素源及び炭素源の量は、発芽条件(例えば、発芽の進行の程度)により調節することができる。麦芽を使用する場合、発酵前工程10は、上述のように大麦を発芽させて当該麦芽を調製する工程を含むこともできる。
麦芽は、大麦を発芽させて調製されたものであれば特に限られないが、例えば、大麦リポキシゲナーゼ−1(LOX−1)欠失大麦(以下、「LOXレス大麦」という。)から調製された麦芽(以下、「LOXレス麦芽」という。)を使用することができる。LOXレス大麦は、LOX遺伝子に変異を有する大麦である(例えば、特開2008−043348号公報を参照)。LOXレス麦芽は、通常の麦芽と同様に、LOXレス大麦を発芽させることにより調製することができる。
また、原料の一部として、穀物由来のタンパク質又はペプチドの分解物(以下、「タンパク分解物」という。)を使用することができる。タンパク分解物は、主に窒素源を含有する。タンパク分解物は、穀物から抽出されたタンパク質やペプチドをプロテアーゼ等の分解酵素や酸を用いて分解(低分子化)することにより調製することができる。したがって、タンパク分解物は、酵母が利用可能なアミノ酸を含有する。なお、タンパク分解物は、穀物に由来するタンパク質又はペプチドを含有してもよい。
タンパク分解物の原料となる穀物は、タンパク質やペプチドを含有するものであれば特に限られず任意の1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。すなわち、例えば、豆類や穀類を使用することができる。
豆類としては、例えば、エンドウ、大豆、小豆、黒豆、緑豆、大正金時、トラ豆、ヒヨコ豆、ソラ豆、ウズラ豆、ハナ豆、ヒラ豆、ヒタシ豆を使用することができる。穀類としては、例えば、コーン(トウモロコシ)、米、馬鈴薯を使用することができる。
より具体的に、例えば、エンドウ由来のタンパク質又はペプチドの分解物、大豆由来のタンパク質又はペプチドの分解物、及びコーン由来のタンパク質又はペプチドの分解物からなる群より選択される少なくとも一つを好ましく使用することができる。
タンパク分解物を使用する場合、発酵前工程10は、穀物から抽出されたタンパク質やペプチドにプロテアーゼやペプチダーゼ等の分解酵素を作用させて当該タンパク分解物を調製する工程を含むこともできる。
また、原料の一部として、穀物由来のデンプンの分解物(以下、「デンプン分解物」という。)を使用することができる。デンプン分解物は、主に炭素源を含有する。デンプン分解物は、穀物から抽出されたデンプンをアミラーゼ等の分解酵素や酸を用いて分解することにより調製することができる。したがって、デンプン分解物は、酵母が利用可能な糖類(いわゆる発酵性糖)を含有する。発酵性糖としては、例えば、グルコースやフルクトース等の単糖類や、マルトースやシュクロース等の二糖類、マルトトリオース等の三糖類を挙げることができる。
デンプン分解物の原料となる穀物としては、デンプンを含有するものであれば特に限られず任意の1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。すなわち、例えば、コーン、馬鈴薯、米、小麦、大麦を使用することができる。より具体的に、例えば、コーン等の穀類を原料として製造された液状の糖類(いわゆる液糖)を使用することができる。
また、原料の一部として、酵母エキスを使用することができる。酵母エキスは、主に窒素源を含有する。すなわち、酵母エキスは、酵母から抽出されたタンパク質、ペプチド及びアミノ酸を含有する。また、酵母エキスは、酵母に含有されているタンパク質又はペプチドを分解酵素や酸を用いて分解することにより調製された、より分子量の小さいペプチドやアミノ酸を含有することもできる。
また、原料の一部として、ホップを使用することができる。ホップは、特に限られず任意の1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。ホップの形態は特に限られず、保存や輸送等の目的に応じて適切に加工された任意の形態のものを使用することができる。すなわち、例えば、乾燥させたホップの毬花を圧縮して得られるプレスホップ、乾燥させたホップの毬花を粉砕して得られるホップパウダー、当該ホップパウダーをペレット状に圧縮成形して得られるホップペレットを使用することができる。
また、原料の一部としてホップを使用しないこととしてもよい。この場合、ホップの代わりに、原料の一部としてハーブ類を使用することができる。ハーブとしては、任意のものを使用でき、例えば、ローズマリー、コリアンダー、カモミールを使用することができる。
また、原料の一部として、着色、香味の付与、泡持ちの向上、発酵効率の向上等、本製造方法により製造される発泡性アルコール飲料に所望の特性を付与し、又は本製造方法の生産性を向上させるために有効な他の材料をさらに使用することができる。
例えば、発泡性アルコール飲料の泡立ちや泡持ち等の泡特性を向上させる材料を使用することができる。すなわち、例えば、タンパク質を使用することができる。タンパク質としては、例えば、上述のタンパク分解物の原料となるものと同様の穀物由来のタンパク質を使用することができる。より具体的に、例えば、エンドウ由来のタンパク質、大豆由来のタンパク質、コーン由来のタンパク質を使用することができる。
また、例えば、酵母によるアルコール発酵を促進する酵母活性化剤を使用することができる。酵母活性化剤としては、例えば、ビタミン類、イノシトール、ミネラルを使用することができる。
また、例えば、カラメル色素等の色素を使用することができる。また、例えば、ビールの副原料としても使用される、米、コーン、こうりゃん、馬鈴薯、デンプンを使用することができる。
そして、本製造方法において特徴的なことの一つは、発酵前液の原料がラッカーゼを含むことである。ラッカーゼは、EC(Enzyme Commission)番号が「1.10.3.2」の酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼとも呼ばれる。ラッカーゼは、例えば、種々のフェノール系化合物及びアニリン系化合物を基質とした酸化反応を触媒する。
使用するラッカーゼの量は、本製造方法における製造スケールや、製造される発泡性アルコール飲料が備えるべき特性等の条件に応じて適宜決定することができる。すなわち、原料の単位重量(g)あたりに含まれるラッカーゼの量(U)は、例えば、550U/g以下とすることができ、より好ましくは、1U/g以上、550U/g以下とすることができる。
ここで、ラッカーゼの量を示す単位「U」は、所定の酸化反応に必要な当該ラッカーゼの量から算出することができる。すなわち、例えば、至適条件下(至適温度、至適pH)で、1分間に1μmolの基質を酸化することのできるラッカーゼの量を「1U」とする。より具体的に、例えば、ラッカーゼを4−アミノアンチピリンとフェノールにpH4.5、30℃で作用させた場合に、酸化縮合反応により生成するキノンイミン色素の505nmにおける吸光度を反応初期1分間に0.1増加させるのに必要な当該ラッカーゼの量を「1U」とすることができる。
なお、原料に液状の材料が含まれる場合には、当該原料の重量は、当該液状の材料に含まれる固形分の重量を使用して算出してもよい。すなわち、例えば、原料の一部に液糖を使用する場合、当該液糖のうち固形分の重量を使用して当該原料の重量を算出する。そして、原料におけるラッカーゼの含有量(U/g)は、当該原料に含まれる固形分の重量(g)あたりの当該ラッカーゼの量(U)として算出することができる。
また、原料におけるラッカーゼの含有量は、例えば、1U/g以上、60U/g以下とすることが好ましく、1U/g以上、50U/g以下とすることがより好ましく、1U/g以上、40U/g以下とすることがさらに好ましい。
ラッカーゼの含有量をこのような範囲内とすることにより、発泡性アルコール飲料のドリンカビリティを確実に向上させることができる。また、発泡性アルコール飲料の香味及び泡特性を向上させることもできる。
さらに、原料におけるラッカーゼの含有量は、例えば、2U/g以上、60U/g以下とすることもでき、2U/g以上、50U/g以下とすることがより好ましく、2U/g以上、40U/g以下とすることがさらに好ましい。
ラッカーゼの含有量をこのような範囲内とすることにより、発泡性アルコール飲料のドリンカビリティをより確実に向上させることができる。また、発泡性アルコール飲料の香味及び泡特性を確実に向上させることもできる。
また、上述した原料の一部として、予めラッカーゼによる酵素処理を施したものを使用することもできる。すなわち、例えば、原料の一部としてホップを使用する場合、予めラッカーゼによる酵素処理を施したホップを使用することができる。この酵素処理は、例えば、ラッカーゼとホップとを含有する反応溶液を調製し、当該反応溶液をラッカーゼによる酵素反応に適した条件(温度やpH)で所定時間維持することにより実施することができる。そして、酵素処理後のホップを回収し、原料の一部として使用する。
酵素処理における反応温度は、ラッカーゼが基質に作用し得る範囲であれば特に限られず、例えば、30℃〜80℃とすることができ、40℃〜70℃とすることが好ましく、60℃前後とすることがより好ましい。また、反応時間は、ラッカーゼの使用による効果が得られる範囲であれば特に限られない。反応溶液におけるラッカーゼの濃度は、処理すべきホップの量等の条件に応じて適宜決定することができる。
また、ホップ以外にも、麦芽、タンパク分解物、デンプン分解物、酵母エキス、タンパク質、酵母活性化剤、色素、米、コーン、こうりゃん、馬鈴薯、デンプン等、原料の一部として使用される他の任意の材料についても同様に、予めラッカーゼによる酵素処理を施すことができる。
また、発酵前液の単位体積(L)あたりに使用されるラッカーゼの量(U)を規定することもできる。すなわち、この場合、1Lの発酵前液を調製するのに使用されるラッカーゼの量は、例えば、50U/L以上とすることができ、100U/L以上とすることが好ましい。より具体的に、ラッカーゼの濃度は、50U/L以上、200000U/L以下とすることができ、100U/L以上、200000U/L以下とすることが好ましい。
発酵前液の原料は、酵母によるアルコール発酵が可能な範囲で、上述の材料を任意の組み合わせで含むことができる。すなわち、例えば、麦芽及びラッカーゼを含む原料を使用することができる。この場合、麦芽、ホップ及びラッカーゼを含む原料を使用することもできる。
また、例えば、麦芽を含まず、窒素源、炭素源及びラッカーゼを含む原料を使用することもできる。この場合、例えば、麦芽を含まず、窒素源、炭素源、ホップ及びラッカーゼを含む原料を使用することもできる。また、例えば、麦芽及びホップを含まず、窒素源、炭素源及びラッカーゼを含む原料を使用することもできる。これら原料が麦芽を含まない場合、窒素源としてはタンパク分解物を好ましく使用することができ、炭素源としてはデンプン分解物を好ましく使用することができる。
そして、発酵前工程10においては、上述の窒素源、炭素源及びラッカーゼを含む原料と水とを使用して発酵前液を調製する。すなわち、例えば、まず、原料の全部又は一部と水とを混合することにより原料液を調製する。次いで原料液に後述するような所定の処理を施す。その過程で、残りの原料を添加することができる。そして、最終的に、酵母の添加に適した発酵前液を得る。水としては、醸造用水を好ましく使用することができる。水の温度は、例えば、25〜80℃の範囲とすることができる。
さらに、発酵前工程10においては、ラッカーゼによる酵素反応を行う。この酵素反応は、ラッカーゼを含有する原料液を所定の温度で所定の時間維持することにより行うことができる。
反応温度は、ラッカーゼが基質に作用し得る範囲であれば特に限られず、例えば、30℃〜80℃とすることができ、40℃〜70℃とすることが好ましく、60℃前後とすることがより好ましい。反応時間は、ラッカーゼの使用による効果が得られる範囲であれば特に限られず、例えば、1分〜180分とすることができ、30分〜120分とすることが好ましい。
また、原料液がラッカーゼ以外の酵素を含有し、発酵前工程10において当該酵素による反応を行う場合には、ラッカーゼによる反応と、当該酵素による反応とを、並行して(同時に)又は連続して(順次)行うこともできる。
例えば、原料が麦芽を含む場合には、当該麦芽に含まれる分解酵素を作用させる処理(いわゆる糖化処理)とともに、ラッカーゼによる酵素処理を行うことができる。すなわち、糖化処理で作用させるペプチダーゼやアミラーゼの至適温度と、ラッカーゼの至適温度と、は近いため、発酵前工程10において糖化処理を実施することにより、ラッカーゼによる酵素処理も実施することができる。
原料がホップを含む場合、発酵前工程10においては、原料液を煮沸させる処理を実施することができる。すなわち、この場合、例えば、まず、ホップを含まずラッカーゼを含む原料の一部と水とを混合して原料液を調製する。次いで、原料液を上述のような反応温度で所定時間維持することでラッカーゼによる酵素処理を実施する。このとき、原料に麦芽が含まれる場合には、糖化処理も並行して実施する。そして、酵素処理後の原料液にホップを添加し、さらに加熱して当該原料液を煮沸させる。この煮沸処理により、ホップに含有される成分を原料液中に抽出するとともに、原料液に含有されるラッカーゼ等の酵素を失活させる。
このように、発酵前工程10で原料液を煮沸させる場合、ラッカーゼは、当該煮沸前に添加し、ラッカーゼによる酵素処理も当該煮沸前に実施することができる。なお、ラッカーゼの添加及びラッカーゼによる酵素処理を煮沸処理の後に実施することもできる。この場合、例えば、まず糖化処理を実施し、次いで煮沸処理を実施し、その後、原料液にラッカーゼを添加して当該ラッカーゼによる酵素処理を実施する。
また、ラッカーゼによる酵素処理後にホップを添加する場合、上述のような予めラッカーゼによる酵素処理が施されたホップを使用することにより、当該ホップに含有される成分に対してもラッカーゼによる酵素処理が十分に施された発酵前液を調製することができる。
発酵前工程10においては、上述のように原料液の調製及びラッカーゼによる酵素処理を実施した後、当該原料液のろ過及び冷却を行い、最終的に、続く発酵工程20における酵母の添加に適した無菌状態の発酵前液を調製する。
発酵工程20においては、発酵前工程10で調製された発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う。発酵工程20においては、前発酵と後発酵(貯酒)とを行う。すなわち、まず、予め温度が所定の範囲内(例えば、0℃〜40℃の範囲)に調整された無菌状態の発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製する。
酵母は、アルコール発酵を行うことができるものであれば特に限られず、任意の種類のものを適宜選択して使用することができる。すなわち、例えば、下面発酵酵母や上面発酵酵母等のビール酵母を使用することができ、下面発酵酵母を好ましく使用することができる。発酵開始時の発酵液における酵母の密度は適宜調節することができ、例えば、1×106個/mL〜3×109個/mLの範囲内とすることができる。
そして、この発酵液を所定の温度で所定の時間だけ維持することにより前発酵を行う。前発酵の温度は適宜調節することができ、例えば、0℃〜40℃の範囲内とすることができ、好ましくは、6℃〜15℃の範囲内とすることができる。前発酵において、酵母は、発酵前液に含有される窒素源及び炭素源、さらに必要に応じて添加されるビタミンやミネラル等の栄養源を消費しながらアルコール発酵等の代謝活動を行う。この結果、発酵液中では酵母によって、エタノール、炭酸ガス、香味成分(エステル等)が生成される。
後発酵は、前発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。すなわち、例えば、下面発酵酵母を用いた場合には、前発酵を終えて酵母が沈降した発酵液の上澄みを回収する。そして、回収された上澄みをさらにマイナス3℃〜20℃の範囲内の温度で、1日〜150日の範囲内の時間維持する。この後発酵により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り、また、熟成により香味を向上させることができる。また、後発酵においては、発酵液中に炭酸ガスをさらに溶解させることもできる。
こうして発酵工程20においては、酵母により生成されたエタノールや香味成分を含有する発酵後液を得ることができる。発酵後液に含まれるエタノールの濃度は、例えば、1%〜20%の範囲内とすることができ、好ましくは、1%〜10%とすることができ、より好ましくは、3%〜10%とすることができる。
本製造方法は、上述のようにして調製された発酵後液に所定の処理を施すことにより、最終的に発泡性アルコール飲料を得る発酵後工程をさらに含むことができる。発酵後工程においては、例えば、発酵後液をろ過することにより、当該発酵後液に含まれる酵母を除去する。また、例えば、発酵後液を60℃以上の温度で1分以上保持する低温殺菌や、発酵後液をより高温で短時間保持する高温殺菌を行う。また、発酵後液に炭酸ガスを吹き込むこともできる。
また、発酵後工程は、スピリッツを添加する工程を含むこともできる。すなわち、この場合、例えば、発酵後工程において、上述のようにして得られた発泡性アルコール飲料にスピリッツを添加する。スピリッツとしては、穀物を原料として製造されたものを好ましく使用することができる。すなわち、例えば、大麦、小麦、米、蕎麦、馬鈴薯、サツマイモ、トウモロコシ、サトウキビを原料として製造された蒸留酒を使用することができ、特に好ましくは、大麦又は小麦を原料として製造された蒸留酒を使用することができる。スピリッツに含有されるアルコール濃度は、例えば、20〜90体積%の範囲内とすることができる。
本実施形態に係る発泡性アルコール飲料(以下、「本飲料」という。)は、このような本製造方法により好ましく製造することができる。
本飲料は、例えば、発酵前液の原料として麦芽及びラッカーゼを使用して製造された発泡性アルコール飲料とすることができる。この場合、本飲料は、発酵前液の原料として麦芽、ホップ及びラッカーゼを使用して製造された発泡性アルコール飲料とすることができる。
すなわち、本飲料は、例えば、発酵前液の原料としてラッカーゼを使用して製造されたビールとすることができる。また、本飲料は、例えば、発酵前液の原料として、ビールに比べて少ない量の麦芽を使用し、且つホップ及びラッカーゼを使用して製造された発泡酒とすることができる。
また、本飲料は、例えば、麦芽を使用することなく、発酵前液の原料として窒素源、炭素源及びラッカーゼを使用して製造された発泡性アルコール飲料とすることができる。この場合、本飲料は、例えば、麦芽を使用することなく、発酵前液の原料として窒素源、炭素源、ホップ及びラッカーゼを使用して製造された発泡性アルコール飲料とすることができる。また、本飲料は、例えば、麦芽及びホップを使用することなく、発酵前液の原料として窒素源、炭素源及びラッカーゼを使用して製造された発泡性アルコール飲料とすることができる。
また、本飲料は、上述のような発泡性アルコール飲料にスピリッツを添加することにより製造された発泡性アルコール飲料とすることができる。この場合、本飲料は、例えば、上述のように発酵前液の原料の一部として麦芽及びラッカーゼを使用して製造された発泡性アルコール飲料と、スピリッツと、を混合して製造された発泡性アルコール飲料とすることができる。また、本飲料は、例えば、上述のように麦芽を使用することなく、発酵前液の原料として窒素源、炭素源及びラッカーゼを使用して製造された発泡性アルコール飲料と、スピリッツと、を混合して製造された発泡性アルコール飲料とすることもできる。
上述のように、本製造方法において発酵前液の原料として微量のラッカーゼを使用し作用させることにより、本飲料は、従来の発泡性アルコール飲料に比べてドリンカビリティの向上した発泡性アルコール飲料となる。
ラッカーゼの使用が本飲料のドリンカビリティの向上にどのようなメカニズムで寄与しているかについては明らかではないが、例えば、ラッカーゼを使用することなく調製した発酵前液に酵母を添加して前発酵を行った後にラッカーゼ添加しても、最終的に得られる発泡性アルコール飲料のドリンカビリティは効果的には向上しない。したがって、発酵前液の原料としてラッカーゼを使用して作用させることが重要と考えられる。
また、本製造方法の発酵前工程10において発酵前液の原料としてラッカーゼを使用し作用させることにより、本飲料は、ラッカーゼを使用することなく製造された発泡性アルコール飲料に比べて優れた香味特性を有することとなる。
ラッカーゼの使用が本飲料の香味特性の向上にどのようなメカニズムで寄与しているかについても明らかではないが、例えば、ラッカーゼを使用することなく調製した発酵前液に酵母を添加して前発酵を行った後にラッカーゼ添加しても、最終的に得られる発泡性アルコール飲料の香味特性は効果的には向上しない。したがって、発酵前液の原料としてラッカーゼを使用して作用させることが重要と考えられる。
また、本製造方法の発酵前工程10において発酵前液の原料としてラッカーゼを使用し作用させることにより、本飲料は、ラッカーゼを使用することなく製造された発泡性アルコール飲料に比べて優れた泡特性を有することとなる。
ラッカーゼの使用が本飲料の泡特性の向上にどのようなメカニズムで寄与しているかについても明らかではないが、例えば、当該ラッカーゼの使用量が増加するにつれて、本飲料の泡持ち特性が向上する傾向がある。
なお、発泡性アルコール飲料の泡持ち特性は、例えば、NIBEM値により評価することができる。NIBEM値は、例えば、次のようにして測定することができる。すなわち、まず、20℃の発泡性アルコール飲料を、円筒形グラス(例えば、内径60mm、内高120mm)の中に炭酸ガスを用いて強制的に注ぎ起泡させる。次いで、発泡性アルコール飲料の泡面が、起泡直後の位置から10mm低下したときから、さらに40mmまで低下するまでの時間を、市販の測定装置により測定する。NIBEM値は、この測定された時間(秒)として表わされる。
本飲料のNIBEM値は、例えば、50以上とすることができ、好ましくは100以上とすることができ、より好ましくは200以上とすることができる。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
原料として、麦芽、ホップ、ラッカーゼ及びプロテアーゼを使用し、発泡性アルコール飲料を製造した。すなわち、ラッカーゼを使用して調製された発酵前液を使用して、いわゆる麦芽100%のビールを製造した。
麦芽としては、可溶性窒素(Soluble Nitrogen:SN)が比較的低い、いわゆる溶けの程度が低いものを使用した。ラッカーゼとしては、ダイワY120(大和化成株式会社)を使用した。
このラッカーゼの力価は、108000U/g以上であった。酵素活性を表す単位「U」については、4−アミノアンチピリンとフェノールにpH4.5、30℃で作用するとき、ラッカーゼが触媒する酸化縮合反応により生成するキノンイミン色素の505nmにおける吸光度を反応初期1分間に0.1増加させるのに必要な酵素量を1U単位とした。また、このラッカーゼの至適pHは4.0〜4.5であり、至適温度は60℃であった。プロテアーゼとしては、スミチームLP50D(新日本化学工業株式会社)を使用した。
例1−1では、麦芽1200gと、プロテアーゼ1.2gと、ラッカーゼ0.03g(麦芽に対して0.0025重量%)と、を60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。
例1−2では、ラッカーゼ0.06g(麦芽に対して0.005重量%)を使用した以外は上述の例1−1と同様にして4Lの原料液を調製した。例1−3では、ラッカーゼ0.12g(麦芽に対して0.01重量%)を使用した以外は上述の例1−1と同様にして4Lの原料液を調製した。例1−4では、ラッカーゼ0.3g(麦芽に対して0.025重量%)を使用した以外は上述の例1−1と同様にして4Lの原料液を調製した。
例1−5では、ラッカーゼ0.6g(麦芽に対して0.05重量%)を使用した以外は上述の例1−1と同様にして4Lの原料液を調製した。例1−6では、ラッカーゼ1.2g(麦芽に対して0.1重量%)を使用した以外は上述の例1−1と同様にして4Lの原料液を調製した。例1−7では、ラッカーゼ3.0g(麦芽に対して0.25重量%)を使用した以外は上述の例1−1と同様にして4Lの原料液を調製した。例1−8では、ラッカーゼ6.0g(麦芽に対して0.5重量%)を使用した以外は上述の例1−1と同様にして4Lの原料液を調製した。
また、例1−C1では、麦芽1200gを60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。例1−C2では、上述の例1−C1と同量の麦芽とプロテアーゼ1.2gを使用して4Lの原料液を調製した。このようにして、10種類の原料液を調製した。
次いで、これら10種類の原料液のそれぞれを、60℃〜67℃の範囲の温度で90分維持することにより、ラッカーゼによる酵素反応とともに、糖化処理を行った。その後、各原料液にホップ5.45gを添加して煮沸処理を90分間行った。そして、原料液のろ過処理を行い、酵母の添加に適した温度に冷却した。こうして、10種類の4Lの発酵前液を調製した。
図2には、各例で使用されたラッカーゼの濃度を示す。ラッカーゼ濃度(U/g)は、発酵前液の原料の単位重量(g)あたりに使用されたラッカーゼの量(U)を示す。また、ラッカーゼ濃度(U/L)は、発酵前液の単位体積(L)あたりに使用されたラッカーゼの量(U)を示す。
次いで、発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製した。この発酵液を11℃の温度で7日間維持することにより前発酵を行った。その後、さらに発酵液を0℃〜11℃の温度で35日間維持することにより貯酒を行った。貯酒後の発酵液(発酵後液)にろ過処理及び殺菌処理を施した。こうして、10種類の発酵前液のそれぞれを使用して、10種類のビールを得た。
10種類のビールの各々について、熟練した5人のパネリストによる官能検査及びNIBEM値の測定を行った。なお、官能検査においては、エステル香、麦芽香、硫黄臭、甘味、酸味、渋味、雑味等の香味や、ドリンカビリティといった様々な項目を評価した。ドリンカビリティとは、例えば、グラス一杯の発泡性アルコール飲料を飲んだ後に、もう一杯飲みたくなるかどうかといった飲みやすさとして評価された。すなわち、ドリンカビリティが高い発泡性アルコール飲料は、一杯飲んだ後に、さらにもう一杯飲みたくなるような発泡性アルコール飲料であるということができる。
図3には、官能検査の結果を示す。図3の横軸における「1−C1、1−C2、1−1〜8」は、「例1−C1、例1−C2、例1−1〜例1−8」を示し、縦軸はパネリストにより付けられた点数の平均値を示す。白抜きの棒グラフは総合評価の結果を示し、黒塗りの棒グラフはドリンカビリティを評価した結果を示す。点数が高いほど好ましい評価が得られたことを示す。
図3に示すように、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することによって、ビールの総合評価及びドリンカビリティが高められる(特に、ドリンカビリティが向上する)ことが示された。特に、例1−2では、その効果が顕著であった。
図4には、NIBEM値の測定結果を示す。図4の横軸における「1−C1、1−C2、1−1〜8」は、「例1−C1、例1−C2、例1−1〜例1−8」を示し、縦軸は測定されたNIBEM値を示す。NIBEM値が高いほど好ましい泡特性が得られたことを示す。図4に示すように、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することによって、ビールの泡特性は損なわれず、むしろ高められることが示された。
原料として、麦芽、ホップ及びラッカーゼを使用し、発泡性アルコール飲料を製造した。すなわち、ラッカーゼを使用して調製された発酵前液を使用して、麦芽100%のビールを製造した。麦芽としては、溶けが中程度のものを使用した。ラッカーゼとしては、上述の実施例1でも使用したダイワY120(大和化成株式会社)を使用した。
例2−1では、麦芽1200gと、ラッカーゼ0.03g(麦芽に対して0.0025重量%)と、を60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ5.45gを添加して煮沸処理を90分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して4Lの発酵前液を調製した。続いて、上述の実施例1と同様の工程を実施して、ビールを製造した。
例2−2では、ラッカーゼ0.06g(麦芽に対して0.005重量%)を使用した以外は上述の例2−1と同様にして4Lの発酵前液を調製しビールを製造した。例2−3では、ラッカーゼ0.12g(麦芽に対して0.01重量%)を使用した以外は上述の例1−1と同様にして4Lの発酵前液を調製しビールを製造した。例2−4では、ラッカーゼ0.3g(麦芽に対して0.025重量%)を使用した以外は上述の例2−1と同様にして4Lの発酵前液を調製しビールを製造した。
例2−5では、ラッカーゼ0.6g(麦芽に対して0.05重量%)を使用した以外は上述の例2−1と同様にして4Lの発酵前液を調製しビールを製造した。例2−6では、ラッカーゼ1.2g(麦芽に対して0.1重量%)を使用した以外は上述の例2−1と同様にして4Lの発酵前液を調製しビールを製造した。例2−7では、ラッカーゼ3.0g(麦芽に対して0.25重量%)を使用した以外は上述の例2−1と同様にして4Lの発酵前液を調製しビールを製造した。
例2−8では、まず、麦芽1200gを60℃の水と混合することにより、ラッカーゼを含有しない4Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ5.45gを添加して煮沸処理を90分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して4Lの発酵前液を調製した。続いて、上述の実施例1と同様に前発酵を行った。次いで、前発酵後の発酵液にラッカーゼ0.3g(麦芽に対して0.025重量%)を添加し、貯酒を行い、ビールを製造した。すなわち、この例2−8では、ラッカーゼを添加するタイミングを、発酵前ではなく、前発酵後であって貯酒前とした以外は上述の例2−4と同様の条件でビールを製造した。
また、例2−Cでは、麦芽1200gを60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ5.45gを添加して煮沸処理を90分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して4Lの発酵前液を調製した。続いて、上述の実施例1と同様にビールを製造した。こうして、9種類のビールを得た。
図5には、各例で使用されたラッカーゼの濃度を示す。ラッカーゼ濃度(U/g)は、発酵前液の原料の単位重量(g)あたりに使用されたラッカーゼの量(U)を示す。また、ラッカーゼ濃度(U/L)は、例2−1〜例2−7及び例2−Cについては発酵前液の単位体積(L)あたり、例2−8については発酵液の単位体積(L)あたりに使用されたラッカーゼの量(U)を示す。
9種類のビールの各々について、熟練した5人のパネリストによる官能検査及びNIBEM値の測定を行った。図6には、官能検査の結果を示す。図6の横軸における「2−C、2−1〜8」は、「例2−C、例2−1〜例2−8」を示し、縦軸はパネリストにより付けられた点数の平均値を示す。白抜きの棒グラフは総合評価の結果を示し、黒塗りの棒グラフはドリンカビリティを評価した結果を示す。
図6に示すように、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することによって、ビールの総合評価及びドリンカビリティが高められる(特に、ドリンカビリティが向上する)ことが示された。特に例2−1及び例2−2では、その効果が顕著であった。
一方、発酵前にラッカーゼを添加せず、前発酵後にラッカーゼを添加した例2−8においては、官能評価及びドリンカビリティともに好ましい結果は得られなかった。すなわち、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することで官能検査における総合評価及びドリンカビリティの向上という効果が得られると考えられた。
図7には、NIBEM値の測定結果を示す。図7の横軸における「2−C、2−1〜8」は、「例2−C、例2−1〜例2−8」を示し、縦軸は測定されたNIBEM値を示す。図7に示すように、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することによって、ビールの泡特性は損なわれず、むしろ高められることが示された。一方、ラッカーゼを前発酵後に添加した例2−8においては、ラッカーゼを使用しなかった例2−Cに比べて、NIBEM値がやや低下した。
原料として、麦芽、ホップ及びラッカーゼを使用し、パイロットスケールにて、発泡性アルコール飲料を製造した。すなわち、ラッカーゼを使用して調製された発酵前液を使用して、400Lスケールで、麦芽100%のビールを製造した。麦芽としては、上述の実施例2と同様、溶けが中程度のものを使用した。ラッカーゼとしては、上述の実施例1でも使用したダイワY120(大和化成株式会社)を使用した。
例3−1では、麦芽120kgと、ラッカーゼ6g(麦芽に対して0.005重量%)と、を60℃の水と混合することにより、400Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ545gを添加して煮沸処理を90分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して400Lの発酵前液を調製した。続いて、上述の実施例1と同様の工程を実施して、ビールを製造した。この例3−1において使用されたラッカーゼの濃度は、発酵前液の原料の単位重量あたり5.4(U/g)、発酵前液の単位体積あたり1620(U/L)であった。
例3−2では、ラッカーゼ30g(麦芽に対して0.025重量%)を使用した以外は上述の例3−1と同様にして400Lの発酵前液を調製しビールを製造した。この例3−2において使用されたラッカーゼの濃度は、発酵前液の原料の単位重量あたり26.9(U/g)、発酵前液の単位体積あたり8100(U/L)であった。
また、例3−Cでは、麦芽120kgを60℃の水と混合することにより、400Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ545gを添加して煮沸処理を90分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して400Lの発酵前液を調製した。続いて、上述の実施例1と同様の工程を実施して、ラッカーゼを使用することなく、ビールを製造した。こうして、3種類のビールを得た。
3種類のビールの各々について、熟練した10人のパネリストによる官能検査を行った。図8には、官能検査の結果を示す。図8の横軸における「3−C、3−1、3−2」は、「例3−C、例3−1、例3−2」を示し、縦軸はパネリストにより付けられた点数の平均値を示す。白抜きの棒グラフは総合評価の結果を示し、黒塗りの棒グラフはドリンカビリティを評価した結果を示す。
図8に示すように、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することによって、ビールの総合評価及びドリンカビリティ(特に、ドリンカビリティ)が高められることが示された。
原料として、麦芽、液糖、ホップ及びラッカーゼを使用し、発泡性アルコール飲料を製造した。原料に占める麦芽の使用量は、約24重量%であった。すなわち、ラッカーゼを使用して調製された発酵前液を使用して、いわゆる発泡酒を製造した。
麦芽としては、溶けが中程度のものを使用した。液糖としては、S75C(日本コーンスターチ株式会社)を使用した。この液糖は、固形分を75重量%含有していた。ラッカーゼとしては、上述の実施例1でも使用したダイワY120(大和化成株式会社)を使用した。
例4−1では、麦芽206gと、液糖686g(固形分514.5g)と、ラッカーゼ0.15gと、を60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ3.76gを添加して煮沸処理を80分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して4Lの発酵前液を調製した。続いて、上述の実施例1と同様の工程を実施して、発泡酒を製造した。この例4−1において使用されたラッカーゼの濃度は、発酵前液の原料の単位重量あたり22.4(U/g)、発酵前液の単位体積あたり4050(U/L)であった。なお、原料の重量を算出するにあたっては、液糖全体の重量(686g)ではなく当該液糖の固形分の重量(514.5g)を使用した。
また、例4−Cでは、麦芽206gと、液糖686g(固形分514.5g)とを60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ3.76gを添加して煮沸処理を90分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して4Lの発酵前液を調製した。続いて、上記例4−1と同様の工程を実施して、ラッカーゼを使用することなく、発泡酒を製造した。こうして、2種類の発泡酒を得た。
2種類の発泡酒の各々について、熟練した6人のパネリストによる官能検査を行った。図9には、官能検査の結果を示す。図9の横軸における「4−C、4−1」は、「例4−C、例4−1」を示し、縦軸はパネリストにより付けられた点数の平均値を示す。白抜きの棒グラフは総合評価の結果を示し、黒塗りの棒グラフはドリンカビリティを評価した結果を示す。
図9に示すように、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することによって、発泡酒の総合評価及びドリンカビリティが高められることが示された。
原料として、エンドウタンパク、エンドウタンパク分解物、液糖、ホップ及びラッカーゼを使用し、発泡性アルコール飲料を製造した。すなわち、原料として麦芽を使用することなく、ラッカーゼを使用して調製された発酵前液を使用して、発泡性アルコール飲料を製造した。
エンドウタンパクとしては、エンドウから抽出されたタンパク質を使用した。エンドウタンパク分解物としては、エンドウタンパクを酵素で分解することにより調製されたペプチド及びアミノ酸を含有する組成物を使用した。液糖としては、上述の実施例4でも使用した、75重量%の固形分を含有するS75C(日本コーンスターチ株式会社)を使用した。ラッカーゼとしては、上述の実施例1でも使用したダイワY120(大和化成株式会社)を使用した。
例5−1では、エンドウタンパク組成物7.8gと、液糖600g(固形分450g)と、ラッカーゼ0.15gとを60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。
ラッカーゼによる酵素反応は、この原料液を60℃℃で20分間維持することにより行った。その後、原料液にホップ2.88gを添加し、煮沸処理を90分間行った。続いて、ろ過や、アルコール発酵等の工程を実施例1と同様に実施して、発泡性アルコール飲料を製造した。
この例5−1において使用されたラッカーゼの濃度は、発酵前液の原料の単位重量あたり35.1(U/g)、発酵前液の単位体積あたり4050(U/L)であった。なお、発酵前液の原料の重量を算出するにあたっては、上述の実施例4と同様、液糖の固形分の重量を使用した。
また、例5−Cでは、エンドウタンパク組成物7.8gと、液糖600g(固形分450g)とを60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ2.88gを添加して煮沸処理を60分間行った。続いて、上記例5−1と同様の工程を実施して、ラッカーゼを使用することなく、発泡性アルコール飲料を製造した。こうして、2種類の発泡性アルコール飲料を得た。
2種類の発泡性アルコール飲料の各々について、熟練した6人のパネリストによる官能検査を行った。図10には、官能検査の結果を示す。図10の横軸における「5−C、5−1」は、「例5−C、例5−1」を示し、縦軸はパネリストにより付けられた点数の平均値を示す。白抜きの棒グラフは総合評価の結果を示し、黒塗りの棒グラフはドリンカビリティを評価した結果を示す。
図10に示すように、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することによって、発泡性アルコール飲料のドリンカビリティが顕著に高められることが示された。
また、上述の実施例1、実施例4、実施例5で製造された発泡性アルコール飲料について、含有される成分を定量したところ、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用して製造された発泡性アルコール飲料においては、ラッカーゼを使用することなく製造された発泡性アルコール飲料に比べて、硫化水素の含有量が減少していることが確認された。
この硫化水素は、例えば、原料の一部として麦芽を使用して製造される発泡性アルコール飲料において、原料に占める麦芽の使用量が少ない場合に含有量が増加し、香味を損なう成分である。
したがって、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することにより発泡性アルコール飲料に含有される硫化水素の量を低減できるという上記の定量結果は、当該ラッカーゼの使用により当該発泡性アルコール飲料の香味特性が向上するという上記の官能検査結果を裏付けるものであった。
ラッカーゼを使用して調製された発酵前液を使用して、LOXレス麦芽100%のビールを製造した。
すなわち、例6−1では、原料として、LOXレス麦芽、ホップ、ラッカーゼ及びプロテアーゼを使用し、発泡性アルコール飲料を製造した。LOXレス麦芽として、上述の実施例1と同様に、溶けの程度が低いものを使用した。ラッカーゼとしては、上述の実施例1でも使用したダイワY120(大和化成株式会社)を使用した。プロテアーゼとしては、上述の実施例1でも使用したスミチームLP50D(新日本化学工業株式会社)を使用した。
具体的に、LOXレス麦芽1200gと、プロテアーゼ1.2gと、ラッカーゼ0.06g(LOXレス麦芽に対して0.005重量%)と、を60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ5.45gを添加して煮沸処理を90分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して4Lの発酵前液を調製した。続いて、上述の実施例1と同様の工程を実施して、ビールを製造した。
例6−C1では、例6−1と同様に溶けの程度が低いLOXレス麦芽1200gと、プロテアーゼ1.2gと、を60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ5.45gを添加して煮沸処理を90分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して4Lの発酵前液を調製した。続いて、上述の実施例1と同様の工程を実施して、ビールを製造した。
例6−2では、原料として、LOXレス麦芽、ホップ及びラッカーゼを使用し、発泡性アルコール飲料を製造した。LOXレス麦芽として、上述の実施例2と同様に、溶けが中程度のものを使用した。ラッカーゼとしては、上述の例6−1と同様にダイワY120(大和化成株式会社)を使用した。
具体的に、LOXレス麦芽1200gと、ラッカーゼ0.06g(LOXレス麦芽に対して0.005重量%)と、を60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ5.45gを添加して煮沸処理を90分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して4Lの発酵前液を調製した。続いて、上述の実施例1と同様の工程を実施して、ビールを製造した。
例6−C2では、例6−2と同様に溶けが中程度のLOXレス麦芽1200gを60℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。そして、この原料液にホップ5.45gを添加して煮沸処理を90分間行い、さらにろ過処理を行い、冷却して4Lの発酵前液を調製した。続いて、上述の実施例1と同様にビールを製造した。
なお、例6−1及び例6−2において使用されたラッカーゼの濃度は、発酵前液の原料の単位重量あたり5.4U/g、発酵前液の単位体積あたり1620U/Lであった。
こうして得られた4種類のビールの各々について、熟練した9人のパネリストによる官能検査を行った。図11には、官能検査の結果を示す。図11の横軸における「6−C1、6−1、6−C2、6−2」は、「例6−C1、例6−1、例6−C2、例6−2」」を示し、縦軸はパネリストにより付けられた点数の平均値を示す。白抜きの棒グラフは総合評価の結果を示し、黒塗りの棒グラフはドリンカビリティを評価した結果を示す。
図11に示すように、LOXレス麦芽を使用した場合、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することによって、ビールの総合評価及びドリンカビリティがより高められる(特に、ドリンカビリティが向上する)ことが示された。
原料として、大麦、ホップ、ラッカーゼ、プロテアーゼ及びα−アミラーゼを使用し、発泡性アルコール飲料を製造した。すなわち、原料として麦芽を使用することなく、大麦及びラッカーゼを使用して調製された発酵前液を使用して、大麦100%の発泡性アルコール飲料を製造した。
大麦としては、粉砕したものを使用した。ラッカーゼとしては、上述の実施例1でも使用したダイワY120(大和化成株式会社)を使用した。プロテアーゼとしては、上述の実施例1でも使用したスミチームLP50D(新日本化学工業株式会社)を使用した。α−アミラーゼとしては、市販のものを使用した。
例7−1では、大麦1080gと、ラッカーゼ0.027g(大麦に対して0.0025重量%)と、プロテアーゼ1.08gと、α−アミラーゼ1.08gと、を50℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。
そして、原料液を50℃で30分間維持することにより、主にプロテアーゼ及びラッカーゼによる酵素反応を行った。次に、原料液を加熱して昇温し、65℃で60分間維持することにより、主にα−アミラーゼ及びラッカーゼによる酵素反応を行った。その後、原料液にホップ7.01gを添加し、煮沸処理を90分間行った。続いて、ろ過や、アルコール発酵等の工程を上述の実施例1と同様に実施して、発泡性アルコール飲料を製造した。
この例7−1において使用されたラッカーゼの濃度は、発酵前液の原料の単位重量あたり2.7(U/g)、発酵前液の単位体積あたり729(U/L)であった。
例7−2では、ラッカーゼ0.054g(大麦に対して0.005重量%)を使用した以外は上述の例7−1と同様にして4Lの原料液を調製した。例7−3では、ラッカーゼ0.108g(大麦に対して0.01重量%)を使用した以外は上述の例7−1と同様にして4Lの原料液を調製した。例7−4では、ラッカーゼ0.270g(大麦に対して0.025重量%)を使用した以外は上述の例7−1と同様にして4Lの原料液を調製した。例7−5では、ラッカーゼ1.08g(大麦に対して0.1重量%)を使用した以外は上述の例7−1と同様にして4Lの原料液を調製した。例7−6では、ラッカーゼ5.40g(大麦に対して0.5重量%)を使用した以外は上述の例7−1と同様にして4Lの原料液を調製した。
これらの例において使用されたラッカーゼの濃度(発酵前液の原料の単位重量あたりの濃度(U/g)及び発酵前液の単位体積あたりの濃度(U/L))は、例7−2において5.4U/g及び1458U/L、例7−3において10.8U/g及び2916U/L、例7−4において27.0U/g及び7290U/L、例7−5において108U/g及び29160U/L、例7−6において540U/g及び145800U/Lであった。
次いで、上述の例7−1と同様にして発泡性アルコール飲料を製造した。すなわち、原料液を50℃で30分間維持することにより、主にプロテアーゼ及びラッカーゼによる酵素反応を行った。次に、原料液を加熱して昇温し、65℃で60分間維持することにより、主にα−アミラーゼ及びラッカーゼによる酵素反応を行った。その後、原料液にホップ7.01gを添加し、煮沸処理を90分間行った。続いて、ろ過や、アルコール発酵等の工程を上述の実施例1と同様に実施した。
また、例7−C1では、大麦1080gと、α−アミラーゼ1.08gと、を50℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。また、例7−C2では、大麦1080gと、プロテアーゼ1.08gと、α−アミラーゼ1.08gと、を50℃の水と混合することにより、4Lの原料液を調製した。
次いで、上述の例7−1と同様にして発泡性アルコール飲料を製造した。すなわち、原料液を50℃で30分間維持することにより、主にプロテアーゼ及びラッカーゼによる酵素反応を行った。次に、原料液を加熱して昇温し、65℃で60分間維持することにより、主にα−アミラーゼ及びラッカーゼによる酵素反応を行った。その後、原料液にホップ7.01gを添加し、煮沸処理を90分間行った。続いて、ろ過や、アルコール発酵等の工程を上述の実施例1と同様に実施した。
こうして得られた8種類のビールの各々について、熟練した6人のパネリストによる官能検査を行った。図12には、官能検査の結果を示す。図12の横軸における「7−C1、7−C2、7−1〜6」は、「例7−C1、例7−C2、例7−1〜例7−6」」を示し、縦軸はパネリストにより付けられた点数の平均値を示す。白抜きの棒グラフは総合評価の結果を示し、黒塗りの棒グラフはドリンカビリティを評価した結果を示す。
図12に示すように、麦芽を使用せず、大麦を使用した場合(特に、原料が、1U/g以上、10U/g以下のラッカーゼを含む場合)においても、発酵前液の原料の一部としてラッカーゼを使用することによって、ビールの総合評価及びドリンカビリティが高められる(特に、ドリンカビリティが向上する)ことが示された。