本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
光を照射すると硬化する光硬化性インクを媒体に吐出するノズルと、前記媒体に着弾した前記光硬化性インクに前記光を照射する照射部と、を備え、前記ノズルから前記光硬化性インクを前記媒体に吐出し、前記照射部から前記光を前記光硬化性インクに照射して前記光硬化性インクを硬化させることによって、画像を前記媒体に印刷する印刷装置であって、前記画像のエッジから内側の1000μmまでの領域であるエッジ近傍領域の最厚位置の厚さをtAとし、前記エッジ領域よりも内側の領域である中央領域の平均厚さをtaveとしたとき、(tA−tave)/tave ≦ 0.1となるように前記画像を前記媒体に印刷することを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれば、厚盛り感の抑制された画像を印刷できる。
前記画像の外枠よりも内側の領域に本来塗布すべきインク量よりも少ないインク量で前記光硬化性インクを前記媒体に塗布するように、前記ノズルから前記光硬化性インクを吐出することが望ましい。これにより、厚盛り感の抑制された画像を印刷できる。
前記画像を印刷するために本来塗布すべき範囲よりも広い範囲に前記光硬化性インクを塗布するように、前記インク吐出用ノズルから前記光硬化性インクを吐出し、前記照射部から前記光を照射して、前記光硬化性インクを硬化させ、前記本来塗布すべき範囲よりも広い範囲に塗布された前記光硬化性インクを前記媒体から除去することによって、前記画像を前記媒体に印刷することが望ましい。これにより、厚盛り感の抑制された画像を印刷できる。
前記光硬化性インクを塗布する前に、前記光硬化性インクを弾く性質を有する処理液を、前記本来塗布すべき範囲よりも広い範囲に塗布することが望ましい。これにより、除去処理を容易にできる。
前記光硬化性インクを塗布する前に、前記光硬化性インクを前記媒体に定着させる定着剤を、前記画像を印刷するために前記本来塗布すべき範囲に塗布することが望ましい。これにより、媒体に残留させるべき印刷画像が媒体から除去されることを防ぐことできる。
前記光硬化性インクの塗布範囲の周囲に前記表面活性剤を塗布することが望ましい。これにより、厚盛り感の抑制された画像を印刷できる。
インク受容層を持たない媒体に前記画像を印刷することが望ましい。このようなインク吸収性の無い媒体に対して、光硬化性インクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷する場合に、特に有効である。
===概要===
<厚盛り現象・厚盛り感について>
プラスチックフィルム等のような媒体はインクを吸収しにくい性質を有するため、このような媒体にインクジェット方式によって印刷を行う際に、光硬化性インクとしてUVインクが用いられることがある。UVインクは、紫外線が照射されると硬化する性質を有するインクである。UVインクを硬化させてドットを形成することによって、インク受容層を持たずインク吸収性の無い媒体に対しても印刷を行うことができる。
但し、UVインクで形成されたドットは媒体の表面で隆起しているため、UVインクを用いて媒体に印刷画像を形成すると、媒体表面に凹凸ができる。そして、印刷画像が塗り潰すような画像である場合には、印刷画像が厚みを有することになる。
図1Aは、UVインクを用いて画像を媒体に印刷したときの印刷画像の説明図である。
UVインクは媒体に浸透しにくいため、UVインクを用いて画像を印刷すると、ドットが盛り上がって形成される。塗り潰すような画像(塗り潰し画像)を印刷すると、UVインクで形成されたドットが所定の領域を埋め尽くすため、厚みのある印刷画像が媒体上に形成されることになる。例えば、媒体に文字を印刷する場合、厚みのある文字画像(塗り潰し画像の一例)が媒体上に形成されることになる。UVインクを用いて印刷された印刷画像の厚さは、数μm程度になる。
図1Bは、図1Aの点線で示す領域(エッジ近傍)の厚さの測定値のグラフである。グラフの横軸は媒体の位置を示し、縦軸はドットの高さ(印刷画像の厚さ)を示している。なお、印刷画像は、インク重量を10ngとしてドットを形成し、720×720dpiの印刷解像度で塗り潰した画像である。印刷画像の厚さは、ミツトヨ社製のノンストップCNC画像測定機Quick Vision Stream plusを用いて測定した。図に示すように、この印刷画像は、5μmほどの厚さである。
グラフ中の位置Xは、印刷画像の最も外側の位置を示している。言い換えると、位置Xは、印刷画像のエッジ(輪郭)の位置を示している。また、グラフ中の位置Aは、印刷画像のエッジ近傍における最厚位置(最も高い位置)を示している。言い換えると、位置Aは、印刷画像のエッジ近傍における突出部分の位置を示している。
位置Aは、位置Xから約200μmほど内側に位置している。位置Xから位置Aまでの間(グラフ中の領域B)では、印刷画像の内側ほど徐々に印刷画像が厚くなるように傾斜している。グラフでは縦と横のスケールが一致していないが、実際には、グラフ中の領域Bでは、3°未満の角度で傾斜している。また、位置Aよりも印刷画像の内側の領域(グラフ中の領域C)では、内側ほど徐々に印刷画像が薄くなり、厚さが5μm程度に達するとほぼ一様な厚さになる。
本件明細書では、グラフ中の位置Aのように、エッジ近傍が他の部分よりも特に盛り上がる現象のことを「厚盛り現象」と呼ぶ。この厚盛り現象は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の現象である。
厚盛り現象が生じるメカニズムは明らかではないが、およそ次のように考えられている。UVインクは、浸透性インクと比べて粘度が高いものの、インクジェット方式でノズルから吐出できる程度の流動性を有している(このように、ノズルから吐出できる程度の流動性が必要とされる点は、製版印刷で用いられるインキとは異なる特有の性質である)。UVインクは、媒体に着弾した後も、紫外線が照射されて完全に硬化するまでの間は流動性がある。この着弾後の流動性の影響により、印刷画像のエッジ近傍において厚盛り現象が生じていると考えられている。
図2Aは、図1Aの印刷画像を上から見た図である。図2Bは、図2Aの印刷画像の一部で光が正反射したときの様子の説明図である。図2Bでは、印刷画像の内側で光って視認される部分を白く示している。
印刷画像の中央部分では、厚さがほぼ一様になっているため、一様な光沢性が得られる。但し、印刷画像のエッジ近傍では、厚さが一様ではないため、一様な光沢性は得られない。
エッジ近傍では、厚盛り現象のため、印刷画像は一様な厚さにはならず、印刷画像のエッジ(輪郭)よりも内側に、エッジに沿った突出部分が形成される。この結果、光の反射角次第によって、図2Bに示すように、印刷画像の一部がエッジに沿って光って視認されることがある。観察者の目、光源及び印刷画像の位置関係・角度によって、図1Bの傾斜領域で正反射した光が観察者の目に入り、図2Bに示すように印刷画像が視認されるのである。
図2Bに示すように、エッジに沿って印刷画像の一部が光って見えると、印刷画像全体が立体的に知覚されてしまう。喩えると、コンピュータ・グラフィックスで3次元物体をディスプレイ上で2次元画像として物体の一部の輝度を明るく表示したときのように(例えば光線追跡法により3次元物体を2次元画像として表示したときのように)、印刷画像が立体的に知覚されてしまう。この結果、実際には5μmほどの厚さであるにも関わらず、印刷画像の観察者には、それ以上に厚く知覚されてしまうことになる。
本明細書では、厚盛り現象のために印刷画像が実際よりも厚く知覚されることを「厚盛り感」と呼ぶ。「厚盛り感」という課題は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の課題である。
なお、通常の製版印刷(フレキソ印刷やオフセット印刷など)による印刷画像は、UVインクを用いた印刷画像と比べると、厚さがほとんど無い。このため、通常の製版印刷による印刷画像では、「厚盛り現象」は生じず、「厚盛り感」という課題も生じない。また、媒体にインクを浸透させて印刷した印刷画像も、印刷画像の厚さはほとんど無い。このため、媒体にインクを浸透させて印刷した印刷画像でも、「厚盛り現象」は生じず、「厚盛り感」という課題も生じない。このように、厚盛り現象や厚盛り感は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の現象・課題なのである。
<エッジ近傍の形状>
図3は、塗り潰し画像の断面形状の説明図である。図中では、説明を分かりやすくするため、断面の凹凸を極端に示している。
図中の「エッジ近傍領域」とは、塗り潰し画像のエッジ(前述の位置X)から内側の1000μmまでの領域を意味する。前述の厚盛り現象は、塗り潰し画像のエッジから内側の1000μmまでの範囲で生じている。このため、厚盛り現象が生じていれば、厚盛り現象により突出した部分は、エッジ近傍領域に含まれることになる。図中の「中央領域」とは、エッジ近傍領域よりも内側の領域を意味する。
また、図中のtAは、エッジ近傍領域の最厚位置の厚さ(μm)を意味する。このため、厚盛り現象が生じていれば、tAは、厚盛り現象により突出した部分の厚さ(前述の位置Aの厚さ)になる。図中のtaveは、中央領域の平均厚さ(μm)を意味する。
厚盛り現象が生じた場合、エッジに沿って突出部分が形成されているため、エッジ近傍領域の最厚位置の厚さtAは、中央領域の平均厚さtaveよりも厚くなる。このため、突出量tA−taveが小さければ、厚盛り感が抑制されると考えられる。
図10は、2つのサンプルのエッジ近傍の厚さの測定値のグラフである。点線のグラフは図1Bと同じグラフであり、厚盛り現象が生じており、印刷画像には厚盛り感がある。これに対し、実線のグラフは、エッジ近傍領域での突出がほとんど無いため、印刷画像の厚盛り感は抑制されていた。なお、図10の実線のグラフは、後述する第1実施形態の印刷画像の測定結果であるが、他の方法で形成された印刷画像においても、エッジ近傍領域の突出量が小さければ、印刷画像の厚盛り感は抑制されると考えられる。
そこで、中央領域の平均厚さ(tave)に対する突出量(tA−tave)の割合((tA−tave)/tave)である突出率と厚盛り感との関係をまとめたところ、以下のような結果が得られた。なお、表中の「厚盛り感の有無」では、印刷画像の一部がエッジに沿って光って視認されたために観察者が印刷画像を立体的に知覚したか否かを基準にして評価している。
厚盛り感の有無について、官能評価をおこなった。評価する試料として、55ミリメートル×99ミリメートル、厚み260マイクロメートルのケント紙に、各突出率のサンプル1〜9を作製した。無作為に抽出した100人に、立体的に知覚したか否かを回答してもらった。評価環境は、3波長型昼白色の蛍光灯が天井に備え付けら得たオフィス環境である。サンプル1〜9を、事務用デスクに同時に並べ、各サンプルにつき立体的に知覚したか否かを回答してもらった。サンプルは、手にとり多角的に観察してもらった。
上記の結果に示される通り、突出率が小さいほど、厚盛り感が抑制されることになる。したがって、上記の結果から、下記の条件式を満たすように媒体に塗り潰し画像を印刷すれば、厚盛り感が抑制されることになる。
(tA−tave)/tave ≦ 0.1
つまり、中央領域の厚さに対するエッジ近傍領域の突出量の割合が1割以下であれば、印刷画像を見たときの厚盛り感が抑制される。以下に説明する第1実施形態〜第3実施形態によれば、印刷画像のエッジ近傍をこのような形状(厚盛り感を抑制できる形状)にすることが可能である。
===第1実施形態===
<第1実施形態の概要>
図4A〜図4Cは、第1実施形態の概要の説明図である。図4Aは、厚盛り現象を抑制するための間引き処理を施した後の画像データ上の画像の説明図である。図4Bは、図4Aの点線で示す領域の画像データ(画素データ)の説明図である。図4Cは、図4Bの画像データに従って媒体に形成されることになるドットの説明図である。
第1実施形態では、画像の外枠を残しつつ、画像の内側の画素を間引くことによって、厚盛り現象を抑制している。なお、「間引く」又は「間引き処理」とは、媒体に本来塗布すべきインク量よりも少ないインク量でインクを塗布すること(ドットを形成すること)、若しくは、そのようにドットが形成されるように画像データを加工することを意味する。後述するように、本来ドットを形成すべき画素にドットを形成しないことや、本来形成すべき大きさよりも小さいドットを形成することも、間引き処理に含まれる。
図4Bでは、間引き処理によって画素データが変換された画素を太線で示している。図4B及び図4Cでは、「外枠ライン」を3本とし、「間引きライン」を2本として、間引き処理が行われている。「間引きライン」は、間引き処理が施されたラインである。このため、「間引きライン数」は、間引き処理を施す領域の幅を示す値でもある。「外枠ライン」は、間引きラインの外側に位置するラインである。このため、「外枠ライン数」は、間引き処理を施す領域の外側の領域である外枠の幅を示す値でもある。
図4Cでは間引きラインの領域にドットが記載されていないため、UVインクが塗布されておらずに隙間になっているが、実際には、UVインクが媒体に着弾した後にUVインクが媒体上を濡れ広がることによって、間引きラインの領域にもUVインクが塗布される。これにより、図4Aのように画像データ上では隙間が空いていても、媒体に印刷された印刷画像はUVインクで塗り潰された画像になる。
第1実施形態の間引き処理によって、印刷画像のエッジ近傍に塗布されるインク量が減少し、図1Bの位置Aの高さが低くなる。これにより、厚盛り現象や厚盛り感を抑制できる。
<第1実施形態の基本的な構成>
まず、間引き処理を実現するための印刷装置の基本的な構成について説明する。なお、第1実施形態の「印刷装置」は、間引き処理を施した画像を媒体に印刷するための装置である。例えば、以下に説明するプリンター1と、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター110とから構成される装置(システム)は、印刷装置に該当する。そして、プリンター1のコントローラー10とコンピューター110は、印刷装置を制御するための制御部を構成している。
図5は、プリンター1の全体構成のブロック図である。図6は、プリンター1の全体構成の説明図である。第1実施形態のプリンター1は、いわゆるラインプリンターである。但し、プリンター1は、ラインプリンターではなく、いわゆるシリアルプリンター(紙幅方向に移動可能なキャリッジにヘッドが搭載されているプリンター)でも良い。
プリンター1は、コントローラー10と、搬送ユニット20と、ヘッドユニット30と、照射ユニット40と、センサー群60とを有する。印刷制御装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー10によって各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40など)を制御する。
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御装置である。コントローラー10は、メモリー11に格納されているプログラムに従って、各ユニットを制御する。また、コントローラー10は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、媒体Sに画像を印刷する。コントローラー10には、センサー群60が検出した各種の検出信号が入力している。
搬送ユニット20は、媒体S(例えば、紙、フィルムなど)を搬送方向に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、搬送モータ(不図示)と、上流側ローラー21及び下流側ローラー22を有する。不図示の搬送モータが回転すると、上流側ローラー21及び下流側ローラー22が回転し、ロール状の媒体Sが搬送方向に搬送される。
ヘッドユニット30は、媒体Sにインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、シアンインクを吐出するシアンヘッド群31Cと、マゼンタインクを吐出するマゼンタヘッド群31Mと、イエローインクを吐出するイエローヘッド群31Yと、ブラックインクを吐出するブラックヘッド群31Kとを有する。各ヘッド群は、紙幅方向(図6において紙面に垂直な方向)に並ぶ複数のヘッドを備えており、各ヘッドは、紙幅方向に並ぶ複数のノズルを備えている。これにより、各ヘッド群は、紙幅分のドットを一度に形成することができる。搬送方向に搬送中の媒体Sに向かってヘッドユニット30からインクが吐出されると、媒体Sの印刷面に2次元の印刷画像が形成される。
第1実施形態では、ヘッドユニット30の各ノズルから、UVインクが吐出される。UVインクは、紫外光が照射されると硬化する性質を有するインクである。なお、UVインクは、媒体に浸透させて印刷を行うための浸透性インクと比べて、粘度も高い性質を有する。このため、仮に普通紙に印刷を行う場合であっても、UVインクは、浸透性インクと比べて、媒体に吸収されにくい。UVインクはドットを硬化させて媒体に定着させるため、仮にインク受容層を持たずインク吸収性の無い媒体であっても、印刷を行うことができる。
照射ユニット40は、媒体Sに吐出されたUVインクに紫外光を照射するためのものである。照射ユニット40は、仮硬化用照射部41と、本硬化用照射部42とを有する。
仮硬化用照射部41は、印刷領域の搬送方向下流側(ヘッドユニット30の搬送方向下流側)に設けられている。仮硬化用照射部41は、媒体Sに着弾したUVインク同士が滲まないようにUVインクの表面を硬化(仮硬化)させる程度の強度の紫外光を照射する。例えば、仮硬化用照射部41として、LED(発光ダイオード)などが採用される。
なお、第1実施形態では、1つの仮硬化用照射部がヘッドユニット30の搬送方向下流側に設けられているが、4つのヘッド群のそれぞれの搬送方向下流側に仮硬化用照射部を設けても良い。
本硬化用照射部42は、仮硬化用照射部41の搬送方向下流側に設けられている。本硬化用照射部42は、媒体上のUVインクを本硬化(完全に固化)させることが可能な強度の紫外光を照射する。例えば、本硬化用照射部42として、UVランプなどが採用される。
印刷を行うとき、コントローラー10は、搬送ユニット20に媒体Sを搬送方向に沿って搬送させる。そして、コントローラー10は、媒体Sを搬送させながら、ヘッドユニット30にUVインクを吐出させて媒体上にドットを形成させると共に、仮硬化用照射部41から紫外線を照射させてUVインクで形成されたドットを仮硬化させ、本硬化用照射部42から紫外線を照射させてドットを完全に硬化させる。
コンピューター110は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューター読み取り可能な記録媒体)に記録されている。プリンタードライバーは、インターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。
<間引き処理>
プリンター1のユーザーが、アプリケーションプログラム上で描画した画像の印刷を指示すると、コンピューター110のプリンタードライバーが起動する。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データを受け取り、プリンター1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データをプリンターに出力する。アプリケーションプログラムからの画像データを印刷データに変換する際に、プリンタードライバーは、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理などを行う。また、第1実施形態のプリンタードライバーは、前述の間引き処理を行う。
図7は、コンピューター110のプリンタードライバーの機能の説明図である。
解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、媒体に印刷する解像度(印刷解像度)に変換する処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラムから受け取ったベクター形式の画像データを720×720dpiの解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。
色変換処理は、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。なお、CMYKデータは、プリンターが有するインクの色に対応したデータである。この色変換処理は、RGBデータの階調値とCMYKデータの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)に基づいて、行われる。なお、色変換処理後の画素データは、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータである。
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンターが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータに変換される。ハーフトーン処理後の画像データでは、画素毎に1ビットの画素データが対応している。1ビットの画素データは、ドットの有無を示すデータになる。なお、画素データを2ビットデータとし、画素データがドットの有無だけでなくドットの大きさを示すようにしても良い。いずれの場合においても、ハーフトーン処理後の画素データは、媒体に形成すべきドットを示すデータとなる。
間引き処理は、図4Bに示すように、画像のエッジ近傍におけるドット形成を示す画素データを、ドット形成しないことを示す画素データに変換する処理である。
図8は、図7の間引き処理のフロー図である。図9A〜図9Dは、画像データの説明図である。図9Aは、ハーフトーン処理後の画像データの説明図である。ここでは、画素毎に1ビットの画素データが対応付けられているものとする。また、画像データの中に12×12画素の塗り潰し画像が含まれているものとする。ここではブラックの画像データのみについて説明するが、他の色の画像データについても同様の処理が行われる。
プリンタードライバーは、ハーフトーン処理後の画像データ(図9A参照)に対してエッジ抽出処理を施し、画像の輪郭に位置するエッジ画素を抽出する(図8:S001)。ここでは、図9Bの太枠で示した画素がエッジ画素として抽出される。
次に、プリンタードライバーは、X方向又はY方向のエッジ画素同士の間隔に基づいて、画像の線幅を決定する(図8:S002)。ここでは、プリンタードライバーは、図9Bの太枠で示したエッジ画素の間隔に基づいて、線幅を12画素と決定する。なお、X方向(図中の横方向)とY方向(図中の縦方向)とでエッジ画素の間隔が異なる場合には、狭い方の間隔に基づいて線幅を決定する。広い方の間隔に基づいて線幅を決定するような処理では、例えば画像が横方向に長い線のような場合に、線幅を誤って決定してしまうからである。
次に、プリンタードライバーは、線幅に基づいて、外枠ライン数及び間引きライン数を決定する(図8:S003)。線幅と外枠ライン数及び間引きライン数とを対応付けたテーブルがコンピューター110に記憶されているので、プリンタードライバーは、このテーブルに基づいて、外枠ライン数及び間引きライン数を決定する。ここでは、外枠ライン数が「2」、間引きライン数が「1」と決定されるものとする。
次に、プリンタードライバーは、決定された外枠ライン数及び間引きライン数に応じて、間引き画素を決定する(図8:S004)。ここでは、外枠ライン数が「2」、間引きライン数が「1」であるため、図9Cの太枠で示した画素が間引き画素となる。図に示すように、間引き画素には、ドット形成を示す画素データ「1」が対応付けられている。
次に、プリンタードライバーは、間引き画素に対応付けられている画素データを「1」から「0」に変換する(図8:S005)。つまり、プリンタードライバーは、ドット形成を示す画素データ「1」を、ドット形成しないことを示す画素データ「0」に変換する。ここでは、図9Dの太枠で示した間引き画素の画素データが、「1」から「0」に変換されている。
コンピューター110は、間引き処理後の2階調の画素データに制御データを付加して印刷データを生成し、印刷データをプリンター1に送信する(図7参照)。プリンター1は、印刷データに含まれている制御データに従って各ユニットを制御すると共に、各画素データに従ってヘッドユニット30の各ノズルからUVインクを吐出して、媒体上に画像を印刷する。
プリンター1は、図9Dに示す画素データに従って、ヘッドユニットの各ノズルから画素データに従ってUVインクを吐出し、媒体上にドットを形成することになる。つまり、外枠ラインを2本とし間引きラインを1本として、間引き処理が施された画像が媒体上に印刷される。つまり、画像の内側において、本来塗布すべきインク量よりも少ないインク量でUVインクが塗布されることによって、画像が印刷される。
間引きラインの画素にはドットが形成されないが、適切な外枠ライン数や間引きライン数が設定されていれば、紫外線が照射されて硬化する前に、隣接領域(外枠ラインの領域や、間引きラインよりも内側の領域)からUVインクが濡れ広がることによって、間引きラインの領域もUVインクで塗り潰されることになる。
そして、プリンター1は、仮硬化用照射部41及び本硬化用照射部42から紫外線を画像に向かって照射する。これにより、UVインクで形成された画像が硬化し、印刷画像が媒体に定着する。
図10は、画像のエッジ近傍の厚さの測定値のグラフである。実線のグラフは、間引き処理を施した場合の測定値を示している。点線のグラフは、間引き処理を施さない場合の測定値を示しており、図1Bと同じグラフである。なお、印刷画像は、インク重量を10ngとしてドットを形成し、720×720dpiの印刷解像度で塗り潰した画像である。印刷画像の厚さは、ミツトヨ社製のノンストップCNC画像測定機Quick Vision Stream plusを用いて測定した。また、間引き処理は、外枠ラインを3本とし、間引きラインを1本としている。
間引き処理を施した場合、厚盛り現象が生じていた位置Aにおいて、他の部分と比べて大きく突出するような厚盛り現象は抑制されている。また、間引き処理を施したことによる隙間も生じていない。このため、印刷画像を観察しても、厚盛り感は生じておらず、隙間も視認されていなかった。
第1実施形態によれば、画像の内側において、本来塗布すべきインク量よりも少ないインク量で画像が印刷される。これにより、中央領域の厚さに対するエッジ近傍領域の突出量の割合を1割以下にでき、印刷画像を見たときの厚盛り感が抑制される。
<第1実施形態の変形例>
・別の間引き処理1(画素データが2ビットの場合)
前述の第1実施形態では、本来ドットを形成すべき画素にドットを形成しないように間引き処理することによって、厚盛り現象を抑制していた。しかし、これに限られるものではない。
図11Aは、ハーフトーン処理後の画像データの説明図である。ここでは、ハーフトーン処理後の画素データは、1ビットデータではなく、2ビットデータである。2ビットの画素データは、「00」であればドット形成しないことを示し、「01」であれば小ドットを形成することを示し、「10」であれば中ドットを形成することを示し、「11」であれば大ドットを形成することを示している。
図11Bは、間引き処理後の画像データの説明図である。ここでは、太枠で示した間引き画素の画素データが「11(大ドット)」から「01(小ドット)」に変換されている。つまり、本来形成すべき大きさよりも小さいドットが形成されるように、画素データが変換されている。
このような間引き処理であっても、画像の内側において、本来塗布すべきインク量よりも少ないインク量で画像が印刷される。これにより、中央領域の厚さに対するエッジ近傍領域の突出量の割合を1割以下にでき、印刷画像を見たときの厚盛り感が抑制される。
・別の間引き処理2(ハーフトーン処理前に間引き処理)
前述の実施形態では、ハーフトーン処理後の画像データに対して、間引き処理が施されていた。言い換えると、ドットの形成状態を示す画像データに対して、間引き処理が施されていた。しかし、これに限られるものではない。
図12は、プリンタードライバーの別の処理の説明図である。図に示すように、間引き処理は、色変換処理の直後に行われ、ハーフトーン処理の前に行われている。
図13Aは、ハーフトーン処理前の画像データの説明図である。色変換処理の後の画像データであるため、画素毎に256階調を示す8ビットの画像データが対応している。ここでは、画素データは、「0」であれば白を示し、「255」であれば黒を示し、値が大きいほど濃いグレーを示している。
図13Bは、間引き処理後の画像データの説明図である。ここでは、太枠で示した間引き画素の画素データが「255(黒)」から「127(グレー)」に変換されている。
このような間引き処理後の画像データに対してハーフトーン処理が行われ、ハーフトーン処理後の画像データに従ってプリンター1が画像を印刷すると、画像の内側において、本来塗布すべきインク量よりも少ないインク量で画像が印刷される。これにより、中央領域の厚さに対するエッジ近傍領域の突出量の割合を1割以下にでき、印刷画像を見たときの厚盛り感が抑制される。
===第2実施形態===
<第2実施形態の概要>
図14A及び図14Bは、第2実施形態の概要の説明図である。
図14Aは、カラーインクの塗布範囲の説明図である。図14Aの点線は、本来の印刷画像を示している。図に示す通り、カラーインク(UVインク)の塗布範囲は、本来の印刷画像よりも大きい範囲である。
図14Aのようにカラーインクを塗布することによって、カラーインクの塗布範囲のエッジよりも内側に、厚盛り現象が生じている。但し、エッジに沿った突出部分は、本来の印刷画像の外側に形成されている。言い換えると、厚盛り現象による突出部分が本来の印刷画像の外側に位置するように、カラーインクの塗布範囲が設定される。
図14Bは、第2実施形態の除去処理の説明図である。除去処理により、図14Aの点線よりも外側に塗布されたインクが除去される。これにより、媒体上に残留したインクによって、印刷画像が構成される。
厚盛り現象による突出部分は除去処理によって除去されるため、媒体上に残留した印刷画像には、厚盛り現象による突出部分が存在しない。このようにして、印刷画像の厚盛り感を抑制している。
以下の説明では、除去処理によって除去されるインクが媒体上で形成していた画像のことを「除去画像」と呼ぶ。図14Aのカラーインクの塗布範囲は、本来の印刷画像と除去画像の範囲となる。また、除去画像は、印刷画像の外側に形成されることになる。
また、以下の第2実施形態では、印刷画像の外側のインクを除去することを容易にするために、カラーインクの塗布前に前処理も行っている。具体的には、前処理として、除去画像の形成範囲にインクを弾く処理液を塗布している。第2実施形態の改良例では、前処理として、インクを弾く処理液を塗布するだけでなく、媒体に残留させるべき印刷画像が除去されることを防ぐため、印刷画像の形成範囲に定着液(定着剤)を塗布している。
<プリンター1>
以下、第2実施形態の印刷装置の構成について説明する。なお、「印刷装置」とは、除去処理を施した印刷画像を媒体に形成するための装置である。例えば、以下に説明するプリンター1と、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター110とから構成される装置(システム)は、印刷装置に該当する。そして、プリンター1のコントローラー10とコンピューター110は、印刷装置を制御するための制御部を構成している。
図15は、プリンター1の全体構成のブロック図である。図16は、プリンター1の全体構成の説明図である。
プリンター1は、コントローラー10と、搬送ユニット20と、ヘッドユニット30と、照射ユニット40と、除去ユニット50と、センサー群60とを有する。第1実施形態と比較すると、第2実施形態では、ヘッドユニット30の構成と、除去ユニット50が追加されている点が異なる。
ヘッドユニット30は、媒体Sに液体(インクや処理液など)を吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、印刷ヘッド群31と、前処理ヘッド群32とを有する。印刷ヘッド群31は、画像を形成するためのインクを媒体に吐出するためのものである。印刷ヘッド群31として、シアンインクを吐出するシアンヘッド群31Cと、マゼンタインクを吐出するマゼンタヘッド群31Mと、イエローインクを吐出するイエローヘッド群31Yと、ブラックインクを吐出するブラックヘッド群31Kとが設けられている。
前処理ヘッド群32は、前処理を施すための処理液を媒体に吐出するためのものである。この前処理は、後述する除去処理の際に印刷画像を媒体Sに残留させつつ除去画像を媒体から除去し易くするための処理である。前処理ヘッド群32は、印刷ヘッド群31よりも搬送方向上流側に設けられている。前処理ヘッド群32が行う前処理については、後述する。
各ヘッド群(印刷ヘッド群31及び前処理ヘッド群32)は、紙幅方向(図16において紙面に垂直な方向)に並ぶ複数のヘッドを備えており、各ヘッドは、紙幅方向に並ぶ複数のノズルを備えている。これにより、各ヘッド群は、紙幅分のドットを一度に形成することができる。搬送中の媒体Sに向かって印刷ヘッド群31からインクが吐出されると、媒体Sの印刷面に2次元の印刷画像が形成される。また、搬送中の媒体Sに向かって前処理ヘッド群32から処理液が吐出されると、媒体Sの印刷面に前処理を施すことができる。
第2実施形態では、印刷ヘッド群31の各ノズルから、UVインクが吐出される。UVインクは、紫外光が照射されると硬化する性質を有するインクである。なお、UVインクは、媒体に浸透させて印刷を行うための浸透性インクと比べて、粘度も高い性質を有する。このため、仮に普通紙に印刷を行う場合であっても、UVインクは、浸透性インクと比べて、媒体に吸収されにくい。UVインクはドットを硬化させて媒体に定着させるため、仮にインク受容層を持たずインク吸収性の無い媒体であっても、印刷を行うことができる。なお、UVインクとして、例えば特開2006-199924号公報に記載されたインクを採用することができるが、他のUVインクを用いても良い。
また、第2実施形態では、前処理ヘッド群32の各ノズルから、UVインクを弾く性質を有する処理液が吐出される。UVインクを弾く性質を有する処理液としては、例えば、フッ素系の表面処理液が挙げられる。第2実施形態では、フッ素系の表面処理液として、住友スリーエム株式会社製フッ素系表面処理剤EGC−1720を用いている。必要に応じて、前処理ヘッド群32と印刷ヘッド群31との間にヒーターを設け、媒体Sに塗布した処理液をヒーターで加熱・乾燥してから、印刷ヘッド群31が媒体Sにインクを吐出するようにしても良い。
除去ユニット50は、印刷画像の外側に形成されている除去画像(図14B参照)を媒体Sから除去するためのものである。除去ユニット50は、照射ユニット40よりも搬送方向下流側に設けられている。除去ユニット50は、揺動ブラシ51と、回転ブラシ52と、送風機53とを有する。
揺動ブラシ51及び回転ブラシ52は、媒体Sの印刷面に接触するブラシを動かして、除去画像を媒体Sから削り取る(はぎ取る)ためのものである。揺動ブラシ51は媒体Sの紙幅方向(図16において紙面に垂直な方向)にブラシを揺動させることによって、紙幅方向に沿ったブラッシングを行う。回転ブラシ52は、紙幅方向に沿った軸を中心にブラシを回転させることによって、搬送方向に沿ったブラッシングを行う。揺動ブラシ51のブラッシングの方向と、回転ブラシ52のブラッシングの方向とが交差しているため、除去画像が媒体Sに残留することを抑制できる。
送風機53は、媒体Sから削り取られたインク滓を印刷面から吹き払うためのものである。送風機53は、下流側ローラー22よりも搬送方向上流側に設けられており、削り取られたインク滓が下流側ローラー22によって印刷面に圧着することを抑制している。
印刷を行うとき、コントローラー10は、搬送ユニット20に媒体Sを搬送方向に沿って搬送させる。そして、コントローラー10は、媒体Sを搬送させながら、前処理ヘッド群32に処理液を吐出させて媒体Sの印刷面に前処理を施し、必要に応じて媒体Sに塗布した処理液をヒーターで加熱・乾燥させる。そして、コントローラー10は、媒体Sを搬送させながら、印刷ヘッド群31にUVインクを吐出させて、本来の印刷画像と除去画像の範囲にUVインクを塗布すると共に、仮硬化用照射部41から紫外線を照射させてUVインクで形成されたドットを仮硬化させ、本硬化用照射部42から紫外線を照射させてドットを完全に硬化させる。その後、コントローラー10は、硬化した印刷画像に対して揺動ブラシ51及び回転ブラシ52によりブラッシングし、除去画像を媒体Sから削り取り、削り取られたインク滓を送風機53によって吹き払う。そして、コントローラー10は、本来の印刷画像だけが残留した媒体Sを下流側ローラー22の搬送方向下流側で巻き取る。
<コンピューター110及びプリンタードライバー>
コンピューター110は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューター読み取り可能な記録媒体)に記録されている。プリンタードライバーは、インターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。
プリンター1のユーザーが、アプリケーションプログラム上で描画した画像の印刷を指示すると、コンピューター110のプリンタードライバーが起動する。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データを受け取り、プリンター1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データをプリンターに出力する。アプリケーションプログラムからの画像データを印刷データに変換する際に、プリンタードライバーは、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理などを行う。また、第2実施形態のプリンタードライバーは、前処理の処理液を吐出するための印刷データや、除去画像を形成するための印刷データも生成する。
図17は、コンピューター110のプリンタードライバーの機能の説明図である。解像度変換処理、色変換処理及びハーフトーン処理については、前述の実施形態と同様なので、説明を省略する。
除去画像生成処理は、図14Bに示すように、印刷画像の外側に除去画像を形成するための印刷データを生成する処理である。
図18は、除去画像生成処理のフロー図である。図19A〜図19Dは、画像データの説明図である。図19Aは、ハーフトーン処理後の画像データ(原画像)の説明図である。ここでは、画素毎に1ビットの画素データが対応付けられているものとする。また、画像データの中に8×8画素の塗り潰し画像(図19Aの太線参照)が含まれているものとする。ここでは、説明の簡略化のため、ブラックの画像データのみについて説明する。
プリンタードライバーは、ハーフトーン処理後の画像データ(図19A参照)に対してエッジ抽出処理を施し、画像の輪郭に位置するエッジ画素を抽出する(図18:S101)。ここでは、図19Bの太枠で示した画素がエッジ画素として抽出される。
次に、プリンタードライバーは、エッジ画素に基づいて、除去画像の範囲を決定する(図18:S102)。ここでは、エッジ画素より外側の2画素の範囲が除去画像の範囲として決定される。厚盛り現象による突出部分が含まれるように除去画像の範囲を決定する必要があるので、実際には2画素よりも幅広い範囲が除去画像の範囲として決定される。
次に、プリンタードライバーは、図19Aの原画像の画像データにおいて、除去画像の範囲にある画素に対応付けられている画素データを「0」から「1」に変換することによって、UVインク吐出用の画像データを生成する(図18:S103)。図19Cは、UVインク吐出用の画素データを示している。図19Cに示すように、除去画像の範囲にある画素は、ドットを形成しないことを示す画素データ「0」に対応付けられた状態から、ドットを形成することを示す画素データ「1」に対応付けられた状態に変更される。
なお、UVインク吐出用の画像データにおいて、除去画像の内側には、本来の印刷画像(原画像)が位置している。本来の印刷画像と除去画像との間には隙間が無く、ドットを形成することになる画素(画素データ「1」が対応付けられている画素)が連続して配置されている。
また、プリンタードライバーは、エッジ画素(図19B参照)に基づいて、処理液の塗布範囲を決定する(図18:S104)。ここでは、エッジ画素より外側の3画素の範囲が除去画像の範囲として決定される。前述の除去画像の範囲は2画素であるのに対し、処理液の塗布範囲は、3画素に設定されている。つまり、処理液の塗布範囲は、除去画像の範囲よりも外側に広くなるように、決定される。これは、処理液の塗布範囲とUVインクの塗布範囲がずれても、除去画像が媒体上に残留しないようにするためである。言い換えると、もし仮に除去画像の範囲と処理液の塗布範囲が同じ幅に設定すると、処理液の塗布範囲とUVインクの塗布範囲がずれたときに、除去画像の一部が除去処理時に除去できずに残留してしまうためである。
次に、プリンタードライバーは、処理液の塗布範囲にある画素に対応付けられている画素データを「1」とし、他の画素データを「0」とする処理液吐出用の画像データを生成する(図18:S105)。図19Dは、処理液吐出用の画像データを示している。なお、処理液吐出用の画像データにおいて、処理液の塗布範囲の内側に位置する画素は、ドットを形成しないことを示す画素データ「0」が対応付けられた状態になる。この位置には本来の印刷画像が位置するためである。
コンピューター110は、除去画像生成処理後の2階調の画素データからなる画像データに制御データを付加して印刷データを生成し、印刷データをプリンター1に送信する(図17参照)。印刷データを受信したプリンター1は、印刷データに含まれている制御データに従って各ユニットを制御すると共に、処理液吐出用の画像データ(図19D参照)に従って前処理ヘッド群32の各ノズルから処理液を吐出し、また、UVインク吐出用の画像データ(図19C参照)に従って印刷ヘッド群31の各ノズルからUVインクを吐出して、媒体上に画像を印刷することになる。
図20A〜図20Cは、印刷時の媒体上の様子の説明図である。
プリンター1は、媒体Sを搬送させながら、処理液吐出用の画像データ(図19D参照)に従って前処理ヘッド群32の各ノズルから処理液を吐出することによって、図20Aに示すような塗布範囲に処理液を塗布する(前処理を施す)。なお、図中では、処理液の塗布範囲を砂地模様で示しているが、実際の処理液は無色であり、視認しにくい。
処理液の塗布後、プリンター1は、媒体Sを搬送させながら、UVインク用の画像データ(図19C参照)に従って印刷ヘッド群31の各ノズルからUVインクを吐出することによって、図20Bで黒く塗り潰された範囲にUVインクを塗布する。これにより、本来の印刷画像とその外側の除去画像の範囲に、UVインクが塗布される。除去画像の範囲では、処理液が塗布された上にUVインクが塗布されることになる。処理液は、UVインクを弾く性質を有するため、処理液の上に塗布されたUVインクは媒体に定着しにくい。
なお、除去画像の範囲よりも外側に広く処理液が塗布されているため、仮にUVインクの塗布範囲がずれても、処理液の塗布範囲(図20A参照)の外側にUVインクが塗布されるようなことはない。
図20Bに示すようにUVインクが塗布された後、プリンター1は、仮硬化用照射部41から紫外線を照射させてUVインクで形成されたドットを仮硬化させ、本硬化用照射部42から紫外線を照射させてドットを完全に硬化させる。通常、UVインクが硬化すると、これに伴って、ドット(UVインク)が媒体に定着する。但し、除去画像の範囲では、UVインクを弾くように前処理が施されているため、UVインクは媒体に定着していない。
その後、プリンター1は、硬化した印刷画像に対して揺動ブラシ51及び回転ブラシ52によりブラッシングする。このとき、前処理が施された範囲では、UVインクが媒体に定着していないため、ブラッシングによってUVインクが削り取られる(除去処理)。一方、前処理が施されていない範囲では、ドットが媒体に定着しているため、ブラッシングされてもUVインクは媒体に定着したままになる。この結果、図20Cに示すように、本来の印刷画像は媒体上に残留したまま、その外側の除去画像が媒体から削り取られる。
なお、第2実施形態では、既に硬化したUVインクをブラッシングによって削り取っている。このため、硬化前のUVインクを除去する場合と比べると、除去画像をきれいに媒体から除去することができる(剥離させることができる)。
最後に、プリンター1は、削り取られたインク滓を送風機53によって吹き払う。これにより、プリンター1は、原画像(図19A参照)の示す通りの画像を媒体に印刷することができる。
以上説明したように、第2実施形態によれば、UVインク(光硬化性インク)を塗布することによって媒体に画像を印刷する際に、まず、プリンター1は、本来の印刷画像の範囲(画像を印刷するために本来塗布すべき範囲)よりも広い範囲にUVインクを塗布するように、印刷ヘッド群31の各ノズルからUVインクを媒体に向けて吐出し、その後、照射ユニット40(照射部)から光を照射してUVインクを硬化させる。そして、プリンター1は、本来の印刷画像の範囲よりも広い範囲に形成されている除去画像を除去ユニット50によって媒体から除去する。これにより、厚盛り現象による突出部分は除去されるため、媒体上に残留した印刷画像には、厚盛り現象による突出部分が存在しない。この結果、中央領域の厚さに対するエッジ近傍領域の突出量の割合を1割以下にでき、印刷画像を見たときの厚盛り感が抑制される。
また、第2実施形態によれば、UVインクを媒体に塗布する前に、UVインクを弾く性質を有する処理液を、除去画像の範囲(本来塗布すべき範囲よりも広い範囲)に塗布している。これにより、除去画像を容易に媒体から除去することができる。
更に第2実施形態によれば、UVインクを弾く性質を有する処理液を塗布する範囲は、除去画像が塗布される範囲よりも外側に広い範囲になっている(図19B、8C、図20B参照)。これにより、仮にUVインクの塗布範囲が多少ずれても、処理液の塗布範囲(図20A参照)の外側にUVインクが塗布されるようなことはなく、除去すべきUVインクが媒体に残留してしまうことを抑制できる。
また、第2実施形態によれば、プリンター1は、UVインクを削り取るための揺動ブラシ51及び回転ブラシ52を備えており、揺動ブラシ51がUVインクを削り取る方向(紙幅方向)と、回転ブラシ52がUVインクを削り取る方向(搬送方向)とが異なっている。これにより、除去画像が媒体Sに残留することを抑制できる。
更に第2実施形態によれば、プリンター1は、媒体から削り取られたインク滓(光硬化性インクの滓)を吹き払うための送風機を備えている。これにより、削り取られたインク滓が媒体の印刷面に再付着することを抑制できる。
<第2実施形態の改良例>
図21は、改良例の前処理後の媒体の様子の説明図である。
改良例では、前処理ヘッド32は、UVインクを弾く処理液を吐出するノズルを有するだけでなく、UVインクを媒体に定着させる定着剤(定着液)を吐出するノズルも有する。そして、改良例では、前処理ヘッド32は、UVインクを弾く処理液を媒体に塗布するだけでなく、UVインクを媒体に定着させる定着剤(定着液)も媒体に塗布している。
定着剤は、前処理の際に、本来の印刷画像の範囲(画像を印刷するために本来塗布すべき範囲)に塗布される。これにより、除去処理の際に、媒体に残留させるべき印刷画像が媒体から除去されることを防ぐことできる。
<第2実施形態の変形例1>
前述の実施形態では、揺動ブラシ51及び回転ブラシ52の2つの部材を用いてUVインクを削り取っているが、どちらか一方のブラシだけを用いてUVインクを削り取っても良い。但し、この場合、除去すべきUVインクが媒体に残留する可能性が高くなるおそれがある。
また、前述の実施形態では、UVインクを削り取るための部材としてブラシ(揺動ブラシ51及び回転ブラシ52)が用いられていた。但し、UVインクを削り取るための部材はブラシに限られるものではない。例えば、ナイフのような鋭利な部材を用いてUVインクを削り取っても良いし、針のような先鋭な部材を用いてUVインクを削り取っても良い。
また、除去画像を除去する際に、UVインクを削り取るのではなく、例えば粘着テープ等によってUVインクを剥離させても良い。
<第2実施形態の変形例2>
図22は、第2実施形態の変形例の印刷装置の説明図である。前述の実施形態と比べると、変形例では、前処理が行われていない。また、変形例では、除去ユニット50の構成・手段が異なっている。前述の実施形態では除去画像を物理的手段によって削り取っているのに対し、変形例では、除去画像を化学的手段によって除去している。
変形例の除去ユニット50は、溶剤吐出ヘッド54と、回収ローラー55とを有している。
溶剤吐出ヘッド54は、UVインクを溶かす溶剤を吐出するノズルを有する。そして、コントローラー10は、除去画像の範囲に溶剤を塗布するように、溶剤吐出ヘッド54に溶剤を吐出させる。変形例では、例えばグリコールエーテルを溶剤として用いている。
回収ローラー55は、溶剤によって溶けたUVインクをローラー面に付着させて回収するためのものである。回収ローラー55は、下流側ローラー22よりも搬送方向上流側に設けられており、溶剤によって溶けた除去画像のインクが下流側ローラー22に付着することを抑制している。
変形例においても、UVインク(光硬化性インク)を塗布することによって媒体に画像を印刷する際に、まず、プリンター1は、本来の印刷画像の範囲(画像を印刷するために本来塗布すべき範囲)よりも広い範囲にUVインクを塗布するように、印刷ヘッド群31の各ノズルからUVインクを媒体に向けて吐出し、その後、照射ユニット40(照射部)から光を照射してUVインクを硬化させる。そして、プリンター1は、本来の印刷画像の範囲よりも広い範囲に形成されている除去画像を除去ユニット50によって媒体から除去する。これにより、厚盛り現象による突出部分は除去されるため、媒体上に残留した印刷画像には、厚盛り現象による突出部分が存在しない。この結果、中央領域の厚さに対するエッジ近傍領域の突出量の割合を1割以下にでき、印刷画像を見たときの厚盛り感が抑制される。
===第3実施形態===
<第3実施形態の概要>
図23A〜図23Cは、第3実施形態の概要の説明図である。図23Aは、界面活性剤の塗布範囲の説明図である。図23Bは、印刷画像の説明図であり、UVインクの塗布範囲の説明図である。図23Cは、界面活性剤によるドット形成の様子の説明図である。
第3実施形態では、印刷画像の周囲に界面活性剤(表面活性剤)を塗布する。言い換えると、第3実施形態では、印刷画像のエッジに沿って、界面活性剤を塗布する。これにより、印刷画像の周囲において、UVインクが濡れ広がり易くなり、印刷画像の周囲でのUVインクの凝集が抑制される。この結果、第3実施形態では、厚盛り現象を抑制することができる。
なお、図23Cでは、界面活性剤の塗布範囲の幅を3画素としている。また、印刷画像のエッジに対する界面活性剤の塗布範囲のはみ出し量を1画素としている。塗布範囲の幅やはみ出し量は、この値に限られるものではない。また、界面活性剤の塗布範囲のはみ出し量がマイナスの値になることもある。はみ出し量がマイナスの場合、界面活性剤の塗布範囲は、印刷画像の内側に位置することになる。このため、「印刷画像の周囲」とは、印刷画像の外周に限定されるものではなく、また、印刷画像の内周に限定されるものでもなく、印刷画像の外周及び内周の少なくともいずれか一方を意味する。
<第3実施形態の基本的な構成>
まず、印刷装置の基本的な構成について説明する。なお、第3実施形態の「印刷装置」は、界面活性剤を塗布しつつ媒体に画像を印刷するための装置である。例えば、以下に説明するプリンター1と、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター110とから構成される装置(システム)は、印刷装置に該当する。そして、プリンター1のコントローラー10とコンピューター110は、印刷装置を制御するための制御部を構成している。
図24は、プリンター1の全体構成のブロック図である。図25は、プリンター1の全体構成の説明図である。
プリンター1は、コントローラー10と、搬送ユニット20と、ヘッドユニット30と、照射ユニット40と、センサー群60とを有する。第1実施形態と比較すると、第3実施形態では、ヘッドユニット30の構成が異なる。
ヘッドユニット30は、媒体Sに液体(インクや界面活性剤など)を吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、印刷ヘッド群31と、前処理ヘッド群33とを有する。印刷ヘッド群31は、画像を形成するためのインクを媒体に吐出するためのものである。印刷ヘッド群31として、シアンインクを吐出するシアンヘッド群31Cと、マゼンタインクを吐出するマゼンタヘッド群31Mと、イエローインクを吐出するイエローヘッド群31Yと、ブラックインクを吐出するブラックヘッド群31Kとが設けられている。
前処理ヘッド群33は、界面活性剤を媒体に吐出するためのものである。第3実施形態では、前処理として印刷画像の周囲に界面活性剤を塗布しており、前処理ヘッド群33は、その前処理を媒体に施すための界面活性剤を吐出するためのものである。前処理ヘッド群33は、印刷ヘッド群31よりも搬送方向上流側に設けられている。
各ヘッド群(印刷ヘッド群31及び前処理ヘッド群33)は、紙幅方向(図25において紙面に垂直な方向)に並ぶ複数のヘッドを備えており、各ヘッドは、紙幅方向に並ぶ複数のノズルを備えている。これにより、各ヘッド群は、紙幅分のドットを一度に形成することができる。搬送中の媒体Sに向かって印刷ヘッド群31からインクが吐出されると、媒体Sの印刷面に2次元の印刷画像が形成される。また、搬送中の媒体Sに向かって前処理ヘッド群33から界面活性剤が吐出されると、媒体Sの印刷面に前処理を施すことができる。
第3実施形態では、印刷ヘッド群31の各ノズルから、UVインクが吐出される。UVインクは、紫外光が照射されると硬化する性質を有するインクである。なお、UVインクは、媒体に浸透させて印刷を行うための浸透性インクと比べて、粘度も高い性質を有する。このため、仮に普通紙に印刷を行う場合であっても、UVインクは、浸透性インクと比べて、媒体に吸収されにくい。UVインクはドットを硬化させて媒体に定着させるため、仮にインク受容層を持たずインク吸収性の無い媒体であっても、印刷を行うことができる。なお、UVインクとして、例えば特開2006-199924号公報に記載されたインクを採用することができるが、他のUVインクを用いても良い。
また、第3実施形態では、前処理ヘッド群33の各ノズルから、UVインクの濡れ性を向上させる性質を有する界面活性剤が吐出される。UVインクの濡れ性を向上させる性質を有する界面活性剤としては、例えば、楠本化成株式会社製オイルハジキ防止剤のLHP−90番台を100倍に薄めた液体が挙げられる(ノズルから吐出できるように薄めて用いている)。
照射ユニット40は、媒体Sに吐出されたUVインクに紫外光を照射するためのものである。照射ユニット40は、仮硬化用照射部41と、本硬化用照射部42とを有する。
仮硬化用照射部41は、印刷領域の搬送方向下流側(ヘッドユニット30の搬送方向下流側)に設けられている。仮硬化用照射部41は、媒体Sに着弾したUVインク同士が滲まないようにUVインクの表面を硬化(仮硬化)させる程度の強度の紫外光を照射する。例えば、仮硬化用照射部41として、LED(発光ダイオード)などが採用される。
なお、第3実施形態では、1つの仮硬化用照射部がヘッドユニット30の搬送方向下流側に設けられているが、4色のヘッド群のそれぞれの搬送方向下流側に仮硬化用照射部を設けても良い。
本硬化用照射部42は、仮硬化用照射部41の搬送方向下流側に設けられている。本硬化用照射部42は、媒体上のUVインクを本硬化(完全に固化)させることが可能な強度の紫外光を照射する。例えば、本硬化用照射部42として、UVランプなどが採用される。
印刷を行うとき、コントローラー10は、搬送ユニット20に媒体Sを搬送方向に沿って搬送させる。そして、コントローラー10は、媒体Sを搬送させながら、前処理ヘッド群33に界面活性剤を吐出させて媒体Sの印刷面に前処理を施す。そして、コントローラー10は、媒体Sを搬送させながら、印刷ヘッド群31にUVインクを吐出させて、UVインクを塗布すると共に、仮硬化用照射部41から紫外線を照射させてUVインクで形成されたドットを仮硬化させ、本硬化用照射部42から紫外線を照射させてドットを完全に硬化させる。そして、コントローラー10は、印刷画像が印刷された媒体Sを下流側ローラー22の搬送方向下流側で巻き取る。
コンピューター110は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューター読み取り可能な記録媒体)に記録されている。プリンタードライバーは、インターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。
<印刷工程>
プリンター1のユーザーが、アプリケーションプログラム上で描画した画像の印刷を指示すると、コンピューター110のプリンタードライバーが起動する。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データを受け取り、プリンター1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データをプリンターに出力する。アプリケーションプログラムからの画像データを印刷データに変換する際に、プリンタードライバーは、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理などを行う。また、第3実施形態のプリンタードライバーは、界面活性剤を吐出するための印刷データも生成するための前処理画像生成処理も行う。
図26は、コンピューター110のプリンタードライバーの機能の説明図である。解像度変換処理、色変換処理及びハーフトーン処理については、前述の実施形態と同様なので、説明を省略する。
前処理画像生成処理は、図23Aや図23Cに示すように、印刷画像の周囲に界面活性剤を塗布するための印刷データを生成する処理である。
図27は、図26の前処理画像生成処理のフロー図である。図28A〜図28Cは、画像データの説明図である。図28Aは、ハーフトーン処理後の画像データの説明図である。ここでは、画素毎に1ビットの画素データが対応付けられているものとする。なお、図28Aに示す画像データに基づいてUVインクが吐出されることになり、画素データが「1」の画素にはUVインクが吐出されてドットが形成され、画素データが「0」の画素にはUVインクは吐出されずにドットが形成されないことになる。また、画像データの中に10×10画素の塗り潰し画像が含まれているものとする。ここでは説明の簡略化のため、ブラックの画像データのみについて説明する。
プリンタードライバーは、ハーフトーン処理後の画像データ(図28A参照)に対してエッジ抽出処理を施し、画像の輪郭に位置するエッジ画素を抽出する(図27:S201)。ここでは、図28Bの太枠で示した画素がエッジ画素として抽出される。
次に、プリンタードライバーは、X方向又はY方向のエッジ画素同士の間隔に基づいて、画像の線幅を決定する(図27:S202)。ここでは、プリンタードライバーは、図28Bの太枠で示したエッジ画素の間隔に基づいて、線幅を10画素と決定する。なお、X方向(図中の横方向)とY方向(図中の縦方向)とでエッジ画素の間隔が異なる場合には、狭い方の間隔に基づいて線幅を決定する。広い方の間隔に基づいて線幅を決定するような処理では、例えば画像が横方向に長い線のような場合に、線幅を誤って決定してしまうからである。
次に、プリンタードライバーは、線幅に基づいて、界面活性剤の塗布範囲の幅及びはみ出し量を決定する(図27:S203)。線幅と界面活性剤の塗布範囲の幅・はみ出し量とを対応付けたテーブルがコンピューター110に記憶されているので、プリンタードライバーは、このテーブルに基づいて、界面活性剤の塗布範囲の幅及びはみ出し量を決定する。ここでは、界面活性剤の塗布範囲の幅が「3」、はみ出し量が「+1」と決定されるものとする。
次に、プリンタードライバーは、決定された界面活性剤の塗布範囲の幅・はみ出し量に応じて、前処理用の画像データを生成する(図27:S204)。ここでは、界面活性剤の塗布範囲の幅が「3」、はみ出し量が「+1」であるため、図28Cの太枠で示した画素が界面活性剤の吐出される画素となる。図に示すように、太枠で示した画素には、ドット形成を示す画素データ「1」が対応付けられ、それ以外の画素には、ドットを形成しないことを示す画素データ「0」が対応付けられる。このようにして、プリンタードライバーは、UVインクを吐出するための画像データとは別に、界面活性剤を吐出するための前処理用の画像データを生成する。
コンピューター110は、2階調の画素データからなる画像データに制御データを付加して印刷データを生成し、印刷データをプリンター1に送信する(図26参照)。印刷データを受信したプリンター1は、印刷データに含まれている制御データに従って各ユニットを制御すると共に、前処理用の画像データ(図28C参照)に従って前処理ヘッド群33の各ノズルから界面活性剤を吐出し、UVインク吐出用の画像データ(図28A参照)に従って印刷ヘッド群31の各ノズルからUVインクを吐出して、媒体上に画像を印刷することになる。
プリンター1は、媒体Sを搬送させながら、前処理用の画像データ(図28C参照)に従って前処理ヘッド群33の各ノズルから界面活性剤を吐出することによって、図23A及び図23Cに示すような塗布範囲に界面活性剤を塗布する(前処理を施す)。ここでは、幅を3画素とし、印刷画像のエッジに対するはみ出し量を+1画素とした塗布範囲に界面活性剤が塗布される。
界面活性剤の塗布後、プリンター1は、媒体Sを搬送させながら、UVインク用の画像データ(図28A参照)に従って印刷ヘッド群31の各ノズルからUVインクを吐出することによって、図23B及び図23Cで黒く塗り潰された範囲にUVインクを塗布する。これにより、印刷画像が媒体上に印刷される。印刷画像の周囲では、界面活性剤が塗布された上にUVインクが塗布されることになる。
そして、プリンター1は、仮硬化用照射部41及び本硬化用照射部42から紫外線を画像に向かって照射する。これにより、UVインクで形成された画像が硬化し、印刷画像が媒体に定着する。
第3実施形態によれば、印刷画像の周囲に界面活性剤を塗布することにより、印刷画像の周囲でのUVインクの凝集が抑制されて、厚盛り現象を抑制することができる。これにより、中央領域の厚さに対するエッジ近傍領域の突出量の割合を1割以下にでき、印刷画像を見たときの厚盛り感が抑制される。
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
<塗り潰し画像について>
前述の画像データ上の塗り潰し画像は、全ての画素にドットを形成するような画像であった。但し、これに限られるものではない。塗り潰し画像は、媒体の所定の領域をインクで塗り潰すことを目的とした画像であれば良く、一部にドットを形成しない画素が含まれていても良い。
<ラインプリンターについて>
前述のプリンター1は、いわゆるラインプリンターであり、固定されたヘッドに対して媒体が搬送され、媒体上に搬送方向に沿ったドット列が形成されている。但し、プリンター1は、ラインプリンターに限られるものではない。例えば、主走査方向に移動可能なキャリッジにヘッドが設けられたプリンターであって、移動中のヘッドからUVインクを吐出して主走査方向に沿ったドット列を形成するドット形成動作と、媒体を搬送する搬送動作とを交互に繰り返すプリンター(いわゆるシリアルプリンター)であっても良い。
このようなシリアルプリンターの場合、ノズルピッチよりも狭い間隔でドット列を形成することが可能である。つまり、ノズルピッチよりも印刷解像度を高くすることが可能である。このため、前述の画像データの解像度は、ノズルピッチと同じ解像度ではなく、ノズルピッチよりも高い解像度であっても良い。
<コンピューター110の処理について>
前述のコンピューター110は、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理などの各種処理を行っていた。但し、これらの処理の一部又は全部をプリンター1の側で行っても良い。