JP5830464B2 - K5ヘパロサン発酵および精製 - Google Patents
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Description
本出願は、2009年9月1日に出願された米国特許仮出願第61/275,675号(その全体が参照により本明細書に組入れられるものとする)に対する優先権を主張する。
本発明は、米国立衛生研究所(National Institutes of Health)により与えられた認可番号GM38060およびHL096972の下で米国連邦政府の支援と共に為された。米国連邦政府は本発明において特定の権利を有する。
により決定される速度で供給する。
ヘパロサンは、反復二糖単位[GlcAα-(1-4)GlcNAcR(1-4)]nを有する多糖類である。K5菌体外多糖は、本発明者らが単離および精製するヘパロサンから作られるため、特定の背景における「ヘパロサン」は、培養培地中、ならびに単離および精製の間に存在する細菌と結合したヘパロサンを指してもよい。当業者であれば、ヘパロサンの意味を、関連する文脈で理解できるであろう。
発酵のための好適な条件の同定においては、多くの因子を考慮しなければならない。
に従って算出されるが、ある程度の柔軟性を持ってもよい。
1つの例示的な実施形態においては、ヘパロサンの精製は、(a)培養上清または濾液を調製する工程、(b)樹脂などの固相へのヘパロサンの結合、およびそこからのヘパロサンの溶出、(c)アルコールを用いる沈降(沈殿)ならびに(d)発熱物質除去を含んでもよい。追加の結合、沈降および発熱物質除去工程を加えてもよい。
得られるヘパロサンを分析して、収率、純度およびさらなる加工のための好適性を決定する。いくつかの分析ツールを用いることができる。
本発明を、以下の実施例を参照することによりさらに理解することができるが、これは本発明の特定の実施形態を例示するために提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本発明の精神を逸脱することなく変更を行うことができることを理解するであろう。
Applikon社(Schiedam, Netherlands)製の7Lガラスオートクレーブ可能バイオリアクターを発酵器として用いた。BioXpert V1.5ソフトウェアを用いて、発酵器の運転を制御し、データを収集した。Difco(商標)LBブロス粉末を、BD社(Franklin Lakes, NJ)から購入した。合成培地を調製するのに用いた化合物の多くは、Sigma-Aldrich社(St Louis, MO)製であった。消泡剤204はSigma-Aldrich社(St Louis, MO)製であった。バッフル付き(Baffled)振とうフラスコはCorning社(Corning, NY)製であった。GE Healthcare社(Piscataway, NJ)製のDEAE Sepharose Fast Flowを、ヘパロサンの精製に用いた。Vipapure D Mini HスピンカラムはSartorius Stedim Biotech社(Aubagne, France)製であった。Micro BCA Protein Assay KitはThermo Scientific社(Rockford, IL)製であった。二糖分析のためにヘパロサンを消化するのに用いた酵素を、Hanら(2009) “Structural snapshots of heparin depolymerization by heparin lyase I” J Biol Chem 284(49):34019-27に記載のように、本発明者らの実験室で発現させ、精製した。HPLC-MSを、Agilent 1100装置(Santa Clara, California)上で実施した。TLCシリカゲルプレートはEMD社(Gibbstown, NJ)製であった。ヘパロサン分子量ラダーを調製し、ヘパロサンのMwを決定するための材料は、Ly Mら(2010) “Analysis of E. coli K5 capsular polysaccharide heparosan” Anal Bioanal Chem (DOI: 10.1007/s00216-010-3679-7)に詳細に記載されている。ヒアルロナン分子マーカーのセットであるSelect_HA(商標)LoLadderを、Hyalose社(Oklahoma City, OK)から取得した。
American Type Culture Collectionに由来する大腸菌K5(ATCC #23506)を、25%のグリセロールを含む、1 mLのM9、LB、グリセロールおよびグルコース培地中で凍結保存した。25 mLの同じ培地を含有する250 mLの振とうフラスコに、0.5 mLの解凍した大腸菌を接種した。培養物を、M9培地培養物については約1.1 gの乾燥細胞重量(DCW)/L、グリセロール合成培地については5.4 g DCW/L、グルコース合成培地については5.6 g DCW/L、およびLB培地については1.9 g DCW/Lで後期指数増殖期に収穫した。次に、大腸菌K5培養物(300 mL)を、後期指数増殖期に5 vol%細胞を接種した2.8 Lの振とうフラスコ中で増殖させた。増殖が定常期に達した後1〜4時間まで培養物を220 RPMおよび37℃で振とうした後、ヘパロサンの回収のために収穫した。2.8 Lの振とうフラスコ中での発酵において用いられた培地は、1. LB培地: Difco(商標)LBブロス、Lennox, 20 g/L;2. M9培地: 2 g/Lグルコース、0.12 g/L MgSO4、0.011 g/L CaCl2、0.337 g/L チアミン-HCl、6 g/L Na2HPO4、3g/L KH2PO4、0.5 g/L NaCl、1 g/L NH4Cl;3. グリセロール規定培地: 20 g/Lグリセロール、20 mg/Lチアミン、13.5 g KH2PO4; 4.0 g (NH4)2HPO4、1.4 g MgSO4・7H2O、1.7 gクエン酸、および10.0 mL微量金属溶液(微量金属溶液は、(1Lの5 M HClあたり) 10.0 g FeSO4・7H2O、2.0 g CaCl2、2.2 g ZnSO4・7H2O、0.5 g MnSO4・4H2O、1.0 g CuSO4・5H2O、0.1 g (NH4)6Mo7O24・4H2O、および0.02 g Na2B4O7・10H2Oから成っていた(Wang FL、Lee SY (1998) “High cell density culture of metabolically engineered Escherichia coli for the production of poly(3-hydroxybutyrate) in a defined medium” Biotechnology and Bioengineering 58(2-3):325-328));4. グルコース規定培地: 1リットルあたり、20 gグルコース、20 mgチアミン、13.5 g KH2PO4; 4.0 g (NH4)2HPO4、1.4 g MgSO4・7H2O、1.7 gクエン酸、および10.0 mL微量金属溶液(微量金属溶液は、(1Lの5 M HClあたり) 10.0 g FeSO4・7H2O、2.0 g CaCl2、2.2 g ZnSO4・7H2O、0.5 g MnSO4・4H2O、1.0 g CuSO4・5H2O、0.1 g (NH4)6Mo7O24・4H2O、および0.02 g Na2B4O7・10H2Oから成っていた(WangおよびLee(1998)、上掲))を含んでいた。
この発酵は、バッチ増殖段階とフェドバッチ増殖段階とからなる。発酵におけるバッチ増殖のための培地の組成は、(1リットルあたり) 20 gグルコース、20 mgチアミン、13.5 g KH2PO4; 4.0 g (NH4)2HPO4、1.4 g MgSO4・7H2O、1.7 gクエン酸、および10.0 mL微量金属溶液であった。微量金属溶液は(1Lの5 M HClあたり) 10.0 g FeSO4・7H2O、2.0 g CaCl2、2.2 g ZnSO4・7H2O、0.5 g MnSO4・4H2O、1.0 g CuSO4・5H2O、0.1 g (NH4)6Mo7O24・4H2O、および0.02 g Na2B4O7・10H2Oからなっていた。フェドバッチ段階において用いられる供給溶液は、(1リットルあたり) 700 g グルコース、20 g MgSO4・7H2Oおよび0.2 gチアミン(WangおよびLee (1998)、上掲)からなっていた。
に従って指数的に供給した(Lee SY. 1996. “High cell-density culture of Escherichia coli”. Trends Biotechnol 14(3):98-105)。この試験では0.10〜0.15 h-1のμ値を用いて、より高い増殖速度に起因する毒性副産物の蓄積を回避しながら十分な細胞増殖を可能にした。発酵器に結合させた「酸ポンプ」を用いて、実際の酸を添加する代わりにグルコース供給機能を実行し、塩基ポンプを用いて29%アンモニア溶液を添加して、安定なpHを維持し、培養物に窒素源を提供した。気泡形成が、発酵器のデジタル制御ユニットを介してフィードバックループにより制御された設定レベルを超えた場合に、第3のポンプを用いて消泡剤204を培養物に添加した。「酸ポンプ」をオンオフする時間を1分間にプログラムすることにより、グルコース供給速度を達成した。経過した発酵時間の7時間〜24時間にTon=0.72*exp[0.0023*(t-420)]の式を用いた(ここで、Tonは「酸ポンプ」を1分の間に1秒間オンにした時間である)。一度、酸素の限界が観察された24時間後に、グルコース供給速度を低下させた。29%水酸化アンモニウム溶液を添加する塩基ポンプを用いて、手動でpH制御を達成した。BioXpert V1.5ソフトウェアに書かれた特別注文のプログラムを用いて、pHをより密接に制御した。溶存酸素が20%空気飽和以下に低下した場合、攪拌速度および/または空気流量速度を増加させた。純粋な酸素を空気と混合して、発酵時間の24時間後に十分な溶存酸素を得た。細胞が全てのグルコースを消費すること、および毒性副産物(酢酸塩など)が培地中で構築されないことを確保するために、グルコース供給を定期的に中断した。グルコースの枯渇および毒性副産物の形成を示す溶存酸素の急上昇が観察された後に供給を再開した(Johnston WAら(2003) “Tracking the acetate threshold using DO-transient control during medium and high cell density cultivation of recombinant Escherichia coli in complex media” Biotechnol Bioeng 84(3):314-23)。サンプルを発酵器から定期的に収集した。取得したサンプルを12,000 x gで30分間遠心分離して、大腸菌細胞から上清を分離した。
発酵上清中のヘパロサン濃度を、カルバゾール分析とNMR分析の両方により測定した。ヘパロサンのカルバゾールアッセイにおいては、遠心分離により回収された0.5 mLの発酵上清をMillipore YM-3脱塩スピンカラム(1200 x g)に印加して、塩および小分子を除去した。粗ヘパロサンを含む残渣を回収し、凍結乾燥させた。乾燥された粗ヘパロサンを0.5 mLの蒸留水を用いて再構成させ、カルバゾールアッセイに供した。ヘパロサンの濃度を、純粋なヘパロサンを用いて調製された標準曲線から算出した。NMRアッセイにおいては、培養上清から同様に回収されたヘパロサン(1 mL)を凍結乾燥させた後、71μgのテレフタル酸ナトリウム(内部標準)を含有する400μLのD2Oに溶解し、次いで600 MHzでの1H-NMRのためにNMRチューブに移した。ヘパロサンの濃度を、ヘパロサン中のN-アセチル基の総面積と内部標準の総面積との比率から算出した。
発酵上清からヘパロサンを迅速に回収し、Vipapure D Mini Hスピンカラムを用いて部分的に精製した。遠心分離(12,000 x g)により細胞から回収された上清(1 mL)を、1 mLのバッファーA(50 mM塩化ナトリウム、20 mM酢酸ナトリウム、pH 4)と混合した。次いで、混合物をpH 4に調整し、予め平衡化させたVivapure D Mini Hカラム上に充填した。次いで、カラムをバッファーAで洗浄し、バッファーB(1M塩化ナトリウム、20 mM酢酸ナトリウム、pH 4)で溶出させた。次いで、溶出したサンプルを3倍量のエタノールを用いて、-20℃(防爆冷凍庫中)で一晩静置して沈降させ、得られた沈降物を75%エタノールで洗浄し、水に溶解し、凍結乾燥させた。次いで、回収されたサンプルの純度を1H-NMRにより試験した。
培養物を12,000 x gで30分間遠心分離することにより、振とうフラスコまたは7L発酵器中での発酵の完了時にヘパロサンを回収した。得られた上清を、氷酢酸を添加することによりpH 4に調整した後、フリットディスク(孔径40〜60μm)を備えたPyrex Buchner漏斗を通して濾過した。DEAE-Sepharose高速流動樹脂を、好適なサイズ(20 mg未満のヘパロサン/膨らんだ樹脂1 mL)のカラムに充填した。このカラムを、pH 4の20 mM酢酸ナトリウムバッファー中の50 mM塩化ナトリウムを用いて最初に平衡化させた。次いで、発酵上清をカラム上に充填し、カラムを3倍量のpH 4の20 mM酢酸ナトリウムバッファー中の50 mM塩化ナトリウムで洗浄した。次いで、pH 4の20 mM酢酸ナトリウムバッファー中の1M塩化ナトリウムを用いて、カラムからヘパロサンを溶出させた。カラムから溶出したヘパロサンを、3倍量のエタノールを添加し、この溶液を-20℃で一晩、防爆冷凍庫中で保存することにより沈降させた。12,000 gで30分間遠心分離することにより沈降物を回収した。ペレットを75%エタノールで洗浄し、再度遠心分離し、得られたペレットを保存のために凍結乾燥するか、または漂白工程のために直接用いた。また、0.02%SDSを添加した後、激しく攪拌し、遠心分離し、DEAEクロマトグラフィーに供することにより、細胞ペレットからヘパロサンを精製することもできた。
ヘパロサン(10 mg/mL)をpH7の200 mMリン酸ナトリウムバッファーに溶解し、30℃で一晩、それぞれ1 mUのヘパリンリアーゼ1、2および3で処理した。得られた二糖生成物を、Agilent Ion捕捉装置上での高速液体クロマトグラフィー(HPLC)-電子スプレーイオン化(ESI)-質量分析(MS)に供し、二糖組成を決定した。LC-MS分析を、LC-MS系(LC/MSD捕捉MS;Agilent, Santa Clara, CA)上で実施した。高速液体クロマトグラフィーのための溶液AおよびBは、それぞれ、同じ濃度の37.5 mM NH4HCO3および11.25 mMトリブチルアミンを含有する15%および65%アセトニトリルであった。溶液Aを20分間、次いで、0〜50%の溶液Bの20〜45分間の線状勾配を用いて、C-18カラム(Agilent)上で分離を実施した。MSによる連続検出のために、カラム流出液は電子スプレーイオン化質量分析(ESI-MS)の供給源に進入した。電子スプレーインターフェースを、400 Vのスキマー電位、240.0 Vのキャピラリー出口、および325℃の熱源を用いる陰イオン化モードに設定して、フルスキャンスペクトル(150〜1,500 Da、10フルスキャン/秒)で最大量のイオンを得た。乾燥ガス(5リットル/分)および噴霧ガス(20 psi)として窒素を用いた(Bhattacharyya S, Am J Respir Cell and Molec Biol 42, 51-61)。
Bruker 600 MHz NMR分光計上で1H-NMRおよび13C-NMRを行った。ヘパロサンサンプルを、D2O中で2 mg/mLの濃度(99.99+アトム%)で調製し、凍結乾燥して交換可能なプロトンを除去し、D2O中に再溶解し、標準的な5 mmのNMRチューブに移した。スペクトルの獲得を、TOPSPIN 2.0ソフトウェアを用いて実行した。全てのスペクトルを298Kの温度で獲得した。
最終ヘパロサン産物中のDNA含量を、260 nmおよび320 nmで0.1 mg/mLのヘパロサン溶液のUV吸収を測定することにより決定した。DNA濃度を、濃度(μg/mL)=(A260読み取り-A320読み取り)×希釈率×50μg/mLとして算出した。タンパク質含量を、Micro BCA Protein Assay Kitを用いて製造業者の説明書に従ってアッセイした。
既知の分子質量のヘパロサン標準ラダーを、Mini Prep Cell (Biorad, Hercules, CA)装置を用いる連続分取ポリアクリルアミド電気泳動により、漂白されたK5ヘパロサン多糖から調製した(Lyら、2010)。ヘパロサン画分を、フーリエ変換-質量分析(FT-MS)により特性評価し、再混合して、ヘパロサンの分子量特性の決定のための分子量標準ラダーを調製した(Lyら、2010)。N-アセチルヘパロサンと同じ電荷密度を有する線状多糖でもあるヒアルロナン(HA)の分子マーカーを、サンプルの上限のための標準として用いた。
ヘパロサンの調製のための振とうフラスコ中での大腸菌K5の発酵
定常期に達した後1〜4時間まで、大腸菌K5を振とうフラスコ中で増殖させた。定常期を超えて発酵を延長して、培地中に最大量のヘパロサンを蓄積させたところ、培地中へのヘパロサン出現が細胞増殖を遅延させるという報告と一致していた(Manzoni Mら(1993) Journal of Bioactive and Compatible Polymers 8(3):251-257)。フラスコ培養物に由来するヘパロサンの収量は70〜500 mg/Lの範囲であった。フラスコ培養物から回収されたヘパロサンの純度は、全ての事例において、NMRにより見積もられたように85%を超えていた(Wang Zら(2009) Anal Biochem. 398(2):275-7;Zhang ZQら(2008) “Solution structures of chemoenzymatically synthesized heparin and its precursors” Journal of the American Chemical Society 130(39):12998-13007)。M9培地、グルコース培地およびグリセロール培地などの合成培地から回収されたヘパロサンは、NMRにおいて追加のピークを示したLB培地から回収されたヘパロサンよりも高い純度レベル(95%を超える)を示し、これは約85%の純度と一致していた(図2)。ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によるLB培地由来ヘパロサンのさらなる分析により、ヘパロサンと共に同時精製される培地成分に対応する低いMwバンドが示された。この不純物を、3K分子量カットオフ(MWCO)スピンカラムを用いて除去することができる(図2A)。
大腸菌の指数的増殖についていくために、供給速度を指数的に増加させた。供給段階中に数回の中断を行って、酢酸塩の蓄積をもたらし、大腸菌の増殖を阻害し得る培地中でのグルコースの構築がないことを確保した。グルコースの枯渇を確認する溶存酸素の増加が観察された後にのみ、供給を再開した(図3)。発酵の後期段階(22時間後)には、溶存酸素が限界になった。攪拌の増加および純粋な酸素の導入を用いて、培養物中の溶存酸素濃度を最大化した。これらの努力にも拘わらず、溶存酸素レベルは、31時間後にも依然として全く低いままであった。酸素が制限栄養素になった時にグルコース供給速度を低下させた。発酵を通じて、NH4OHを添加することによりpHを6〜8に維持した。37.5時間の発酵後、85 g DCW/Lの細胞密度に達し、発酵上清中のヘパロサン濃度は15 g/Lであると決定された。全体の増殖速度は0.12 h-1であると算出され、全体の産生速度は1.2 g/hであり、容量産生速度は0.4 g/L.hであった。発酵物から精製されたヘパロサンは、1H-NMRスペクトルから判断して、高純度のものであった(図4A)。さらに、DNAおよびBCAタンパク質アッセイにより、1%未満のDNAと2%未満のタンパク質が最終ヘパロサン材料中に存在することが示された。
1H-NMR、13C-NMR、HPLC-MSおよびフーリエ変換(FT)-MS(図4)は全て、ヘパロサンの一般構造を→4)-β-D-GlcA(1→4)-α-D-GlcNAc(1→と確認する(図1A)。分取電気泳動を用いて得られた、24の重合度(dp)を有するヘパロサン画分のFT-MSを図4Cに示す。このスペクトルはまた、いくつかの多糖鎖の非還元末端に不飽和のウロン酸ΔUA残基(図1B)が存在することを示している。末端ΔUA残基の存在は、大腸菌K5にも存在するK5ヘパロサンリアーゼの作用と一致している。FT-MS分析は、発酵上清から回収されたヘパロサンが、ΔUA残基およびGlcA残基で終結するヘパロサンの混合物を含むことを示唆している。この結果は、培地中のいくらかのヘパロサンが剪断力により細胞表面から脱離し、いくらかはヘパロサンリアーゼ消化により培地中に放出されることと一致している。上清から単離されたヘパロサンを、ヘパロサン鎖の非還元末端から、DUAではなくGlcAを除去することができるエキソ分解酵素であるβ-グルクロニダーゼを用いて処理した。薄層クロマトグラフィーを用いる放出されたGlcAの観察(データは示さず)により、上清中に脱離したヘパロサン鎖のいくらかがGlcAで終結することが確認される。
振とうフラスコ中で増殖させた大腸菌K5から回収されたヘパロサンを、精製されたヘパロサン標準物のラダーに対してPAGEにより分析した(図5および表1)。M9培地、グリセロール合成培地、LB複合培地上で増殖させたフラスコ培養物中の上清から回収されたヘパロサンは、MnまたはMwのわずかな差異を示した。グルコース合成培地中の上清から回収されたヘパロサンは、最も低いMnおよびMwを有していた。ペレットから回収されたヘパロサンは、発酵上清から回収されたヘパロサンよりも高いMwを示した(データは示さず)。
本研究では、グルコースを含有する規定培地上で増殖させたフェドバッチ式発酵器培養物中で、発酵上清中の高いヘパロサン収量(15 g/L)が達成された。これは、グリセロールを含有する規定培地上で増殖させた同じ生物に由来する最近報告された10.2 g/Lのヘパロサンの収量(米国特許出願公開第2008/0032349号)と都合良く比較される。容量産生速度も、この以前の報告と比較して増加した。さらに、グリセロールよりも高価でない炭素源であるグルコースは、この発酵プロセスをより経済的なものにする。3L規模で開発されたフェドバッチ式発酵プロセスは、より大きい実験室規模の発酵のための原型として役立ち、究極的には工業的ヘパロサン生産をもたらすことができる。3Lから750Lの実働容量に動かす、プロセスのスケールアップ研究が現在本発明者らの実験室で行われており、これは生物工学的ヘパリン合成のための出発材料として供給するための大規模(100メートルトン)ヘパロサン生産にとって必要とされる約100,000 Lの実働容量にスケールアップするための基礎を提供するであろう。ヘパロサンの産生速度を増加させるために、発酵中のより速いグルコース供給速度および発酵器中のより高い酸素レベルを使用する可能性を調査するところである。
培地
グルコース規定培地:(1リットルあたり)20 gグルコース、20 mgチアミン、13.5 g KH2PO4; 4.0 g (NH4)2HPO4、1.4 g MgSO4・7H2O、1.7 gクエン酸、および10.0 mL微量金属溶液。微量金属溶液は、(1Lの5 M HClあたり) 10.0 g FeSO4・7H2O、2.0 g CaCl2、2.2 g ZnSO4・7H2O、0.5 g MnSO4・4H2O、1.0 g CuSO4・5H2O、0.1 g (NH4)6Mo7O24・4H2O、および0.02 g Na2B4O7・10H2Oからなっていた。フェドバッチ段階において用いられた供給溶液は、(1Lあたり): 700 gグルコース、20 g MgSO4・7H2O、47g KH2PO4および0.4 gチアミンからなっていた。実施された発酵において用いられたグルコース含有培地であるR培地を、以下のように調製した。
1日目:
4本の5 ml培養チューブに、朝に大腸菌K5株(-80℃の冷凍庫で保存)を含む上記のグルコース合成培地(R培地)を接種し、220 rpmで10時間、振とうしながら37℃でインキュベーター中で増殖させた。4本の培養物を、夕方、2.8 Lのバッフル付き振とうフラスコ中の500 mlの培地に移し、220 rpmで10時間、振とうしながら37℃で増殖させた。
発酵器のpHプローブおよびDOプローブを滅菌し、増殖温度(37℃)に補正した。3個のポンプを設定した:ポンプ1、pH調整のためのNH4OH;ポンプ2、供給溶液;ポンプ3、消泡剤。
培養物のOD600値が低下し始めた時に発酵を停止させた。培養物を収穫し、遠心分離した。ヘパロサンを上清から回収した。
キトサンは、無作為に分布したβ-(1-4)結合D-グルコサミンおよびN-アセチル-D-グルコサミンから構成される線状多糖であり、ヘパロサンのクロマトグラフィー精製のための陰イオン交換樹脂に対する代替手段を提供する。キトサン中のアミノ基(pKa約6.5)は、酸性条件下でそれを正に荷電させ、可溶性にし、従って、負に荷電したヘパロサンの親和性に基づく精製にとって好適になる。キトサンに基づくヘパロサンの精製を、キトサン濃度および初期pHに基づいて容易に制御することができる。さらに、キトサンは安価であり、豊かに供給され、さらに生分解性である。本実施例は、発酵ブロスからヘパロサンを効率的に直接回収するための可溶性キトサンに基づく分離方法を記載する。キトサンを用いるこの電荷中和に基づく分離を、複雑な発酵混合物から他の負に荷電した大分子を精製するために用いることができる。
上記手順を用いて、カラムモードのDEAEセファロースファストフロー樹脂を用いて発酵ブロスからヘパロサンを精製した後、4倍量のエタノールを用いて沈降させた。次いで、回収されたヘパロサンを、DI水に対して3500 MWCO膜を用いて透析した。次いで、透析した溶液を、回転式蒸発装置を用いて容量を減少させた後、凍結乾燥した。
さらなる実験において、発酵後の遠心分離後に得られた上清を、pH 4.0まで塩酸を添加することにより馴らした。次いで、沈降する不純物を除去するために、8000 rpmで1時間遠心分離した。次いで、1M NaOH溶液を用いて、上清をpH 4.0に調整し戻した。このpHを調整したサンプルのNMR定量により、これらのサンプル中のヘパロサンが失われていないことが示された。
Claims (15)
- 大腸菌K5から少なくとも85%の純度のヘパロサンを産生する方法であって、
(a)主要炭素源としてグルコースを含む規定培地中で、温度を約37℃に維持しながら大腸菌K5を培養する工程であって、該培養がバッチ式増殖段階とフェドバッチ式増殖段階とからなり、
(i)バッチ式増殖段階において用いられる培地が(1リットルあたり)約20 gのグルコース、10〜300 mgのチアミン、約13.5 gのKH2PO4、約4.0 gの(NH4)2HPO4、約1.4 gのMgSO4・7H2O、約1.7 gのクエン酸、および約10.0 mLの微量金属溶液を含み、該微量金属溶液は(1リットルの5M HClあたり)10.0 gのFeSO4・7H2O、2.0 gのCaCl2、2.2 gのZnSO4・7H2O、0.5 gのMnSO4・4H2O、1.0 gのCuSO4・5H2O、0.1 gの(NH4)6Mo7O24・4H2O、および0.02 gのNa2B4O7・10H2Oから本質的になり、ならびに、
(ii)フェドバッチ式増殖段階において用いられる供給培地が(1Lあたり)250〜1000 gのグルコース、20 gのMgSO4、0.15〜0.5 gのチアミン、および必要に応じて47 gのKH2PO4からなり、ならびに、
(iii)補給酸素を含むか、または含まない散布空気により、酸素を供給する、工程;
(b)ヘパロサンを固相に結合させた後、溶出させる工程;および、
(c)溶出液からヘパロサンを沈降させる工程、
を含み、前記ヘパロサンが少なくとも85%の純度である、前記方法。 - 前記ヘパロサンが少なくとも90%の純度である、請求項1に記載の方法。
- 溶存酸素を約20%に維持する、請求項1または2に記載の方法。
- pHを約7に維持する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記pHを29%アンモニア溶液の添加により維持する、請求項4に記載の方法。
- 培養上清1 Lあたり12 gを超えるヘパロサンを取得する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記発酵が出発培養を含まずに48時間未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 結合および溶出工程が、(i)細胞の除去;(ii)陰イオン交換樹脂と培養上清との混合および上清の除去;(iii)pH 4の酢酸ナトリウムバッファー中の50 mM塩化ナトリウムを用いる樹脂の洗浄;ならびに(iv)pH 4の酢酸ナトリウムバッファー中の1 M塩化ナトリウムを用いる溶出を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 前記結合および溶出工程が、(i)細胞の除去;(ii)キトサン溶液と培養上清との混合;(iii)キトサンの沈降および沈降物の単離;(iv)キトサンの洗浄;ならびに(v)約1 M NaOHを用いるヘパロサンの溶出を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 溶出液からの前記ヘパロサンの沈降化が、エタノール沈降を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 過酸化水素を用いる発熱物質除去をさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
- ヘパロサンが1%未満のDNAおよび2%未満のタンパク質を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
- ヘパロサンが約58,000 Daの数平均分子量、約84,000 Daの重量平均分子量、および約1.4の多分散性指数(PDI)を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
- ヘパロサンが少なくとも95%純粋である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
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