JP5830312B2 - 端子付き電線 - Google Patents

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本発明は、主として、電池の電極板や、配電板等の導電部材に電線を接続する電線接続端子の端子圧着用クリンパ型刃によって、電線の導通芯材を電線接続端子に圧着固定した端子付き電線に関するものである。
従来、電子機器等の各種メモリーバックアップ用電源として、円筒形、ボタン形、コイン形の電池の電極板や集積回路の端子片等の極薄い金属板で構成された導電部材が多用されており、このような導電部材には、スポット溶接(抵抗溶接)、レーザー溶接等の方法によって、電線の端部が取り付けられた端子が接続されている。
この接続端子は、電池ケースの開口部にガスケットを介して封着される封口板の上方に突出した部分に接続する接続部(溶接部)と、リード線を取付ける取付け部、及びこれらを連結する連結部とで構成されている(特許文献1参照)。
又、コネクタハウジングのキャビティに挿入される端子金具と電線とを圧着接続する端子圧着装置が知られている(特許文献2)。
この端子圧着装置は、端子金具の一対の電線圧着片と、電線とを圧着接続する、押圧側のクリンパと台座側のアンビルとを対向して備え、該クリンパには、該アンビルが進入するガイド溝が設けられ、該ガイド溝は、両側のテーパ状の内側面と加締部とを有し、該加締部は、一対のアーチ部と、該一対のアーチ部の交差稜線部に形成された突起部とを有する。
特開2010−123363号公報 特開2003−59612号公報
しかしながら、上記従来の端子圧着装置は、一対のアーチ部に、面取部を設け、テーパ状の内側面には面取部を設けずに、該面取部を該アーチ部と該内側面の交点までとしたくリンパを用いており、このようなクリンパで電線圧着片を圧着すると、電線圧着片の前後端部に相当する余肉部は、クリンパのガイド溝の内側面と面取部とに拘束されて逃げ場を失い、クリンパから下方の電線圧着片に加わった力や衝撃も逃げ場を失う。
従って、電線圧着片に加わった力や衝撃に対する反力は、全てクリンパに跳ね返り、端子金具を圧着接続するたびに、大きな力がクリンパに伝わることとなる。
このように反力の逃げ場がないクリンパは、割れを生じやすく、寿命が短いとい問題がある。
更には、電線圧着片における逃げ場を失った余肉部に対しては、高い圧力が掛かって発熱するため、高温となったクリンパと端子金具とが焼き付く等の問題も生じる。この焼付きを防ぐための油を、クリンパと端子金具との間に塗布しなくてはならず、その油の分だけコスト高になったり、塗布工程が増えて作業効率が落ちる。
又、圧着される端子金具にも、以下のような不都合が生じる。
電線圧着片における余肉部も逃げ場がなく、当然に電線圧着片自体にも大きな応力を掛けることとなり、更には、電線圧着片のうちクリンパと接触する部分に応力が集中し、この応力集中により加締めた電線圧着片に割れや亀裂、端子金具の歪みが生じる。
上述したような、クリンパや電線圧着片の割れ等を防止するために、圧着する力を小さくすると、電線圧着片の加締具合が甘くなり、電線が端子金具から抜け易くなる。
そこで、本発明に係る端子付き電線は、上述した点を鑑みて、ベルマウスの左右幅を、圧着固定したワイヤ起立片における前後中途部の左右幅より幅広とすることで、電線の圧着固定時にワイヤ起立片に係る応力を分散させて、ワイヤ起立片の割れや亀裂を防ぐと同時に、電線の引張強度が向上した端子付き電線を提供することを目的とする。
子圧着機は、電線Eの導通芯材Sを、左右一対のワイヤ起立片4a、4b間で圧着固定して導電部材Bと接続させる電線接続端子1の端子圧着機であって、
前記電線接続端子1を支持するアンビル型刃31と、このアンビル型刃31に電線接続端子1を上下方向に沿って押圧するクリンパ型刃32とを有し、
このクリンパ型刃32は、前記電線接続端子1とこの電線接続端子1を支持したアンビル型刃31とを押圧方向に沿って出入させるガイド溝34が形成されており、
このガイド溝34は、前記電線接続端子1及びアンビル型刃31を溝奥へ案内する左右一対の溝内壁35a、35bと、これらの溝内壁35a、35b間の溝奥に位置し且つ前記電線接続端子1の左右一対のワイヤ起立片4a、4bを押圧して湾曲状に加締めるように凹んだ左右一対のアーチ溝底36a、36bと、この左右一対のアーチ溝底36a、36bとクリンパ型刃32における前後方向の刃表面37との稜線に沿った左右一対の面取部38a、38bとを備え、
これらの面取部38a、38bは、前記ガイド溝34の溝内壁35a、35bとクリンパ型刃32の刃表面37との稜線まで延設されていて、
前記左右一対の面取部38a、38bの左右幅W1は、前記左右一対のアーチ溝底36a、36bの左右幅W2より幅広である場合もある。
、前記アンビル型刃31は、前記電線接続端子1の左右一対のワイヤ起立片4a、4bを下から支えるワイヤ支持部39が設けられており、
前記クリンパ型刃32は、前記電線接続端子1及びアンビル型刃31に上から接近して前記左右一対のワイヤ起立片4a、4b間で電線Eの導通芯材Sを圧着固定した加締位置Uにおける面取部38a、38bの下端G1が、前記ガイド溝34に進入したアンビル型刃31のワイヤ支持部39の上端G2より下方に位置している場合もある。
に、前記アンビル型刃31は、前記電線接続端子1の左右一対のワイヤ起立片4a、4bを下から支持するワイヤ支持部39が設けられており、
前記クリンパ型刃32は、前記電線接続端子1及びアンビル型刃31に上から接近して前記面取部38a、38bの下端G1がワイヤ支持部39の上端G2より下方位置までアンビル型刃31を溝奥に進入させる溝幅W3でガイド溝34が形成されている場合もある。
ーチ溝底36a、36bとクリンパ型刃32の刃表面37との稜線に沿った左右一対の面取部38a、38bを溝内壁35a、35bまで延設し、左右一対の面取部38a、38bの左右幅W1(左面取部38aの左端から右面取部38bの右端までの距離)を、左右一対のアーチ溝底36a、36bの左右幅W2(左アーチ溝底36aの左端から右アーチ溝底36bの右端までの距離)より幅広とする場合には、アンビル型刃31に支持された電線接続端子1をクリンパ型刃32で押圧した際であっても、圧着される左右一対のワイヤ起立片4a、4bの左右外方に、左右一対の面取部38a、38bとの間に隙間dが形成される。
この隙間dは、クリンパ型刃32に押圧されてワイヤ起立片4a、4bの前後方向における端部に生じる余肉部Aを、クリンパ型刃32側とは反対側(アンビル型刃31側)へ逃がすことが出来ると同時に、クリンパ型刃32からワイヤ起立片4a、4bに加わった力や衝撃も、隙間dを通って余肉部Aと共にアンビル型刃31側へ逃がすことが可能となる。
従って、ワイヤ起立片4a、4bに加わった力や衝撃によって生じる力(反力)のうち、クリンパ型刃32に跳ね返る反力を低減させることが出来、押圧1回ごとの反力低減は小さくとも、何万回、何十万回と押圧させた際には、積み重なって大きな差となる。
その結果、クリンパ型刃32に金属疲労や、内部構造の損傷などが蓄積することを抑制し、クリンパ型刃32の割れ防止や、長寿命化を図ることが可能となる。
余肉部Aをワイヤ起立片4a、4bの左右外方からアンビル型刃31側へ逃がせば、当然に、余肉部Aに掛かる圧力も下がって発熱も抑えられるため、焼付き防止を実現でき、塗布する油を減らす又は無くすることが可能となるため、油コストの低減や作業効率の向上が図れる。
更には、圧着されるワイヤ起立片4a、4bに掛かる応力集中を防ぐ、つまり、余肉部Aと共に隙間dを通ってアンビル型刃31側へ応力を分散させることが出来、加締めたワイヤ起立片4a、4bにおける割れ、亀裂及び歪みを抑えられる。
このような応力分散によって、ワイヤ起立片4a、4b全体として耐え得る押圧力が上がり、より強い力でワイヤ起立片4a、4bを加締めることが可能となって、電線接続端子1に対する電線Eの引張強度が上がる。
又、電線接続端子1及びアンビル型刃31に上から接近するクリンパ型刃32がワイヤ起立片4a、4b間で導通芯材Sを圧着固定した加締位置Uにある時に、面取部38の下端G1がアンビル型刃31のワイヤ支持部39上端G2より下方に位置している場合には、圧着される左右一対のワイヤ起立片4a、4bの左右外方の隙間dは、ワイヤ起立片4a、4bの下方位置まで延び、この隙間dが延びた分だけ、余肉部Aで生じた反力をより多く低減できる。
更に、図12(a)にて示した如く、ワイヤ起立片4a、4bの左右外下方に空間Cがある場合には、この空間Cと隙間dが連通することとなる。
これは、クリンパ型刃32の押圧によって生じた余肉部Aや反力は、ワイヤ起立片4a、4bと面取部38a、38bとの間の隙間dを通ってワイヤ起立片4a、4bの下方まで回り込めることを意味し、より確実にクリンパ型刃32への反力を低減させ、ワイヤ起立片4a、4bの応力を分散させ、焼付きを防止し、電線Eの引張強度を向上できる。
そして、ガイド溝34を、面取部38の下端G1がワイヤ支持部39の上端G2より下方位置までアンビル型刃31を溝奥に進入させることが可能となる溝幅W3で形成する場合には、ワイヤ起立片4a、4bの左右外方の隙間dが、電線接続端子1が加締められた時でもワイヤ起立片4a、4bの下方まで延設し得ることとなり、クリンパ型刃32の押圧によって生じた余肉部Aや反力を更に逃がすことが出来る(逃がした力F’)。
尚、ガイド溝34の溝幅W3とは、左右一対の面取部38a、38bにおける溝幅であり、更に詳しくは、左面取部38aの下端G1から、右面取部38bの下端G1までの長さとなる。又、「ガイド溝34を、面取部38の下端G1がワイヤ支持部39の上端G2より下方位置までアンビル型刃31を溝奥に進入させることが可能となる溝幅W3で形成する」とは、この溝幅W3が、アンビル型刃31のワイヤ支持部39における左上端G2から右上端G2までの長さW6より大きいことの意である。
子圧着用クリンパ刃は、電線Eの導通芯材Sを、左右一対のワイヤ起立片4a、4b間で圧着固定して導電部材Bと接続させる電線接続端子1の端子圧着用クリンパ型刃であって、
前記電線接続端子1を支持するアンビル型刃31との間で前記電線接続端子1を上下方向に沿って押圧し、この押圧方向に沿って電線接続端子1及びアンビル型刃31を出入させるガイド溝34が形成されており、
このガイド溝34は、前記電線接続端子1及びアンビル型刃31を溝奥へ案内する左右一対の溝内壁35a、35bと、これらの溝内壁35a、35b間の溝奥に位置し且つ前記電線接続端子1の左右一対のワイヤ起立片4a、4bを押圧して湾曲状に加締めるように凹んだ左右一対のアーチ溝底36a、36bと、この左右一対のアーチ溝底36a、36bと前後方向の刃表面37との稜線に沿った左右一対の面取部38a、38bとを備え、
これらの面取部38a、38bは、前記ガイド溝34の溝内壁35a、35bと前記刃表面37との稜線まで延設されていて、
前記左右一対の面取部38a、38bの左右幅W1は、前記左右一対のアーチ溝底36a、36bの左右幅W2より幅広である場合もある。
その他、前記電線接続端子1及びアンビル型刃31に上から接近し、前記面取部38a、38bの下端G1がアーチ溝底36a、36bの下端G3より下方に位置している場合もある。
に、前記面取部38a、38bの面取表面40は、前記アーチ溝底36a、36bの底表面41と曲面R’を介して連続している場合もある。
ーチ溝底36a、36b及び溝内壁35a、35bと刃表面37との稜線に沿って形勢された面取部38a、38bの左右幅W1を、アーチ溝底36a、36bの左右幅W2より幅広とする場合には、ワイヤ起立片4a、4bの左右外方に形成される隙間dを通って、クリンパ型刃32やワイヤ起立片4a、4bに加わる力を逃がし(逃がした力F’)、クリンパ型刃32における割れ防止、長寿命化、焼付き防止と、ワイヤ起立片4a、4bにおける割れ、亀裂及び歪みの抑制、電線Eの引張強度向上を実現できる。
又、面取部38の下端G1をアーチ溝底36の下端G3より下方に位置させる場合には、隙間dをより下方まで延ばし、隙間dからより多くの力を逃がすことが出来、これに加えて、面取部38の面取表面40を、曲面R’を介してアーチ溝底36の底表面41と連続させる場合には、加締められたワイヤ起立片4a、4bの前後端部に形成されるベルマウス11の立ち上がりを緩やかに出来、更に応力集中を抑えること可能となる。
本発明に係る端子付き電線は、第1に、
電線Eと、この電線Eの導通芯材Sを導電部材Bと接続させる電線接続端子1とを有する端子付き電線であって、
少なくとも表裏両面がニッケルで構成される金属板Kを加工成形した端子本体2に、この端子本体2の前端部に成形され前記導電部材Bとの溶着部3と、前記端子本体2の前後方向の中途部に成形された左右一対のワイヤ起立片4a、4bとが設けられ、
この左右一対のワイヤ起立片4a、4b湾曲しており、前記左右一対のワイヤ起立片4a、4b間で、前記電線Eの導通芯材Sが圧着さており
圧着された左右一対のワイヤ起立片4a、4bにおける前後方向の端部に、前後方向外方に行くにつれて拡開するベルマウス11が形成され、
このベルマウス11の左右幅W4は、前記圧着された左右一対のワイヤ起立片4a、4bにおける前後方向の中途部の左右幅W5より幅広であり、
前記端子本体2の表面は、所定の表面粗さRaを有する所定部位42と、この所定部位42より表面粗さRaが大きい非所定部位43とに分けられ、
前記ワイヤ起立片4a、4bは、このワイヤ起立片4a、4bにおける前後方向の中途部及びベルマウス11の表面に、前記所定部位42を有していることを特徴とする。
、前記ワイヤ起立片4a、4bは、この起立方向の先端における前後方向の端部に円弧部10が形成されていることを特徴とする。
上記の特徴によって、端子本体2の前端部には導電部材Bに溶接される溶着部3が成形され、端子本体2の前後方向の中途部には電線Eの導通芯材Sを圧着固定する左右一対のワイヤ起立片4a、4bが成形され、これらのワイヤ起立片4a、4bの前後方向における端部に形成されたベルマウス11の左右幅W4を、ワイヤ起立片4a、4bにおける前後方向の中途部の左右幅W5より幅広とすることで、アンビル型刃31に接近するクリンパ型刃32の押圧によって左右一対のワイヤ起立片4a、4bが湾曲状に加締められても、ベルマウス11に相当するワイヤ起立片4a、4bの前後方向端部における余肉部Aは、上下方向だけでなく、左右外方にも逃がされることとなり、左右外方に余肉部Aを逃がさない場合と比較して、ワイヤ起立片4a、4bに掛かる応力も湾曲したワイヤ起立片4a、4b端部に沿って分散され、ワイヤ起立片4a、4bの割れや亀裂、歪みを防止できる。
尚、本発明は、あくまで導電部材Bに溶接される溶着部3を有する電線接続端子1付きの電線E’であって、このような溶着部3を有さないコネクタハウジングのキャビティに挿入される端子金具とは、適用場面、技術思想が異なる。
更に、端子本体2の表面が押圧部位42と非押圧部位43とに分けられ、ワイヤ起立片4a、4bの前後方向の中途部だけでなく、ベルマウス11の表面にも押圧部位42を有していることで、ベルマウス11が、クリンパ型刃32におけるベルマウス11を形成する部分(面取部38a、38b)に当って形成されており、ワイヤ起立片4a、4bを加締め且つベルマウス11を形成する時に掛かる押圧力Fを、ワイヤ起立片4a、4b及びベルマウス11における押圧部位42全体で受け止めることとなり、ワイヤ起立片4a、4bに生じる応力が分散される。
本発明のような応力分散は、たとえば、ベルマウスの表面には押圧部位がない場合の応力分散と比べて、応力の分散具合が高い。
尚、ベルマウス11の表面に押圧部位がない場合、すなわち、ベルマウス11に相当する余肉部Aが、押圧するクリンパ型刃32の前後方向からはみ出て隆起した場合には、クリンパ型刃32の押圧部位と、押圧されずに生じたベルマウス11との間の境界に、応力が集中することとなる。
その他、ワイヤ起立片4a、4bの前後長さLを、クリンパ型刃32の厚さtと同一の値とすることで、クリンパ型刃32で押圧された際に、ワイヤ起立片4a、4bの前後方向における端部(余肉部A相当部分)が、クリンパ型刃32におけるベルマウス11を形成する部分(面取部38a、38b)に当って左右外方に逃げることとなり、余肉部Aを逃がした分だけ、ワイヤ起立片4a、4bの応力集中を防ぐことが出来る。
すなわち、ワイヤ起立片4a、4bの応力分散を行って、割れ、亀裂及び歪みを抑えると同時に、同じ金属板Kから加工成形した電線接続端子であっても、応力を分散させた方がワイヤ起立片4a、4b全体として耐え得る押圧力が上がり、より強い力でワイヤ起立片4a、4bを加締めることが可能となって、電線接続端子1に対する電線Eの引張強度を向上できる。
尚、本発明における「同一」とは、「全く同じ」値、長さ等であることはもちろんのこと、実質的に同じ値、長さ等である「略同一」も含む。
この「略同一」とは、本発明では、例えば、余肉部Aがクリンパ型刃32の面取部38a、38bに当って左右外方に逃げ得るのであれば、多少値が異なっても実質的に同じ値とみなせることを言う。
又、湾曲状に加締められるワイヤ起立片4a、4bの起立先端における前後端部に円弧部10を形成することで、ワイヤ起立片4a、4bが加締められ起立先端同士が合わさった際に円弧部10も合わさりあって、この円弧部10の分だけ余肉部Aが左右外方に逃がされるため、更なる応力分散が図れる。
その他、端子付き電線の製造装置は、電線Eと、この電線Eの導通芯材Sを左右一対のワイヤ起立片4a、4b間で圧着固定して導電部材Bに接続させる電線接続端子1とを有する端子付き電線の製造装置であって、
前記電線接続端子1を支持するアンビル型刃31と、このアンビル型刃31に電線接続端子1を上下方向に沿って押圧するクリンパ型刃32と、このクリンパ型刃32を電線接続端子1に押圧させる押圧手段33とが配備され、
前記クリンパ型刃32は、前記電線接続端子1とこの電線接続端子1を支持したアンビル型刃31とを押圧方向に沿って出入させるガイド溝34が形成されており、
このガイド溝34は、前記電線接続端子1及びアンビル型刃31を溝奥へ案内する左右一対の溝内壁35a、35bと、これらの溝内壁35a、35b間の溝奥に位置し且つ前記電線接続端子1の左右一対のワイヤ起立片4a、4bを押圧して湾曲状に加締めるように凹んだ左右一対のアーチ溝底36a、36bと、この左右一対のアーチ溝底36a、36bとクリンパ型刃32における前後方向の刃表面37との稜線に沿った左右一対の面取部38a、38bとを備え、
これらの面取部38a、38bは、前記ガイド溝34の溝内壁35a、35bとクリンパ型刃32の刃表面37との稜線まで延設されていて、
前記左右一対の面取部38a、38bの左右幅W1は、前記左右一対のアーチ溝底36a、36bの左右幅W2より幅広である場合もある。
発明に係る端子付き電線によると、ベルマウスの左右幅を、圧着固定したワイヤ起立片における前後中途部の左右幅より幅広とすることで、ワイヤ起立片の割れや亀裂を防ぐことが出来る。
本発明に係る端子付き電線の電線接続端子及びキャリアを示す平面図である。 電線接続端子及びキャリアを示す側面図である。 (a)は図1のA−A線矢視図であり、(b)は図1のB−B線矢視図である。 電線を加締固定した電線接続端子を示す平面図である。 電線と導電部材(乾電池)とを接続した端子付き電線を示す斜視図である。 端子付き電線の製造装置を示す概略図で、(a)は全自動式の製造装置を示し、(b)は手動式の製造装置である。 端子圧着機を示す斜視図である。 端子圧着機を示す側面断面図である。 端子圧着機の圧着工具(アンビル型刃、ワイヤクリンパ型刃)を示す斜視図である。 (a)はアンビル型刃を示す斜視図であり、(b)はアンビル型刃を示す正面図であり、(c)はアンビル型刃を示す側面図である。 (a)はクリンパ型刃を示す斜視図であり、(b)はクリンパ型刃を示す正面図であり、(c)は(a)のC−C線矢視断面図である。 (a)は、加締位置におけるアンビル型刃、クリンパ型刃及び電線接続端子を示す正面図であり、(b)は、(a)のD−D線矢視断面図である。 圧着第1工程を示した側面断面図である。 (a)は圧着第2工程を示した側面断面図であり、(b)は電線接続端子とアンビル型刃、スライドカッタと表した側面断面の拡大図である。 圧着第3工程を示した側面断面図である。 圧着第4工程を示した側面断面図である。 圧着第5工程を示した側面断面図である。
以下、電線接続端子1の端子圧着機30、端子圧着用のクリンパ型刃32、本発明に係る端子付き電線E’、及びこの端子付き電線E’を製造する製造装置100について、図面に基づいて実施形態を説明する。
端子付き電線E’の製造装置100には、電線Eに電線接続端子1を圧着固定する端子圧着機30が装備され、この端子圧着機30は、アプリケータとも呼ばれ、所望長さの電線Eの端部で露出した導通芯材Sに電線接続端子1を圧着固定して、電線接続端子1を電線Eの端部に電気的に接続するものである。
アプリケータ30には、多数の電線接続端子1が並列してキャリア21に接続されている端子帯体21’を、端子付き電線E’の製造装置100の側方から供給するサイドフィードアプリケータ等のタイプがある。
アプリケータ30自体は、材料である端子帯体21’を送る機構を有し且つ加締加工をするものであるから、電線接続端子1の形状やサイズ、電線Eのサイズ等に応じて製造される。
そこで最初に、電線接続端子1、電線E、そして、電線接続端子1が並列にキャリア21に接続されている端子帯体21’について説明する。
図1〜5に示されたように、電線接続端子1は、導通芯材S(導体部W)が被覆部Zで覆われた電線Eを、乾電池やボタン電池等の導電部材Bに接続する端子である。
この電線接続端子1に接続される電線Eの導体部Wは、銅線、錫メッキ軟銅線等の導電性金属製である導通芯材Sを複数撚り合わせて構成されているか、又は、1本の導通芯材Sで構成されるなど導通芯材Sから成っている。
電線Eの被覆部Zは、素材が電子線架橋ポリオレフィンや難燃架橋ポリオレフィン等である絶縁体であり、導体部Wを所定厚さで一様に覆っている。
図1に示されたように、各電線接続端子1(端子本体2)は、金属板Kから成る長尺帯状のキャリア21によって、連鎖状(チェーン状)に繋がれており、搬送時にはこのキャリア21を各電線接続端子1ごとロール状に巻き上げて運ぶこととなる。
キャリア21は、端子本体2(被覆圧着部7)後端と、キャリア連結部22によって連結されており、このキャリア連結部22の基端部近傍で、端子本体2の前後軸X上にパイロットホール(キャリアホール)23が形成されている。
各端子本体2及びキャリア21を構成する金属板Kは、純ニッケル金属板、ニッケルメッキ鉄板、又はニッケルメッキステンレス板である。純ニッケル金属板は、表裏両面のみならず内部全てが、導電性及び耐食性が高いニッケルで構成されており、ニッケルメッキステンレス板は、SUS304、SUS316等のステンレス板を芯材として、これら芯材の表裏両面にニッケルメッキを施して、耐食性及び導電性を向上させたものである。
尚、上述したニッケルやSUS304等は、従来の接続端子に用いられていた黄銅(真鍮)やリン青銅などの素材より硬いため、この端子本体2を加締める圧着金具(後述するワイヤクリンパ型刃32等)には、より耐久性が必要となる。
詳解すれば、本発明の電線接続端子1に用いられるニッケルは、ビッカース硬さ(JIS−G−0202、以下、HVとする)が638で、先端半径0.2mmかつ先端角120度のダイヤモンド円錐を使い150kgfの力をかけるロックウェル硬さ(JIS−G−0202、以下、HRCとする)に換算すれば57となる。
又、ニッケルメッキステンレス板の芯材であるSUS304やSUS316は、HVが180以上300以下で、HRCに換算すれば6以上30以下となるが、表面にニッケルメッキを施すことによって、無電解ニッケルメッキでは、そのメッキのHVが500以上800以下となり、HRCは49以上64以下となる。又、ワット浴、スルファミン酸浴等による電解ニッケルメッキを施した場合でも、そのメッキのHVが500近い値となり、HRCでは49前後となる。
つまり、電線接続端子1の素材は、高硬度又は超高硬度となっている。
これに対して、従来の接続端子に用いられていた黄銅のHVは、85以上145以下で、HRCに換算すれば0未満である。又、リン青銅のHVは、125以上170以下であって、HRCは0以上4以下となる。
従って、従来の接続端子は低硬度の素材が使われていたが、本発明のように、高い硬度を持つ金属板Kで電線Eを圧着固定するために、その圧着工具(ワイヤクリンパ型刃32等)にも、HRCで52以上、好ましくはHRCで60以上70以下という非常に高い硬度や、耐摩耗性、高温下での硬度維持及び耐軟化性、靭性が求められる。
又、上述したような高い硬度を有する金属板Kを加工成形することによって、電線Eと導電部材B(電池等)との導電性を確保しながら、端子としての強度を有するため、電池Bに溶着後、電線Eを引っ張る等をされても、曲げ応力が働き、端子本体2は容易に曲がらない。
図2で示す如く、端子本体2は、この端子本体2の前端部に成形され且つ導電部材Bに溶接される平板状の溶着部3と、端子本体2の前後方向中途部に成形され且つ電線E端部の被覆部Zを剥離して露出した導通芯材Sを左右一対のワイヤ起立片4a、4b間で加締固定する導体圧着部5と、端子本体2の後端部に成形され且つ電線Eの被覆部Zの非剥離部分を左右一対のインスレーション起立片6a、6b間で加締固定する被覆圧着部7と、この被覆圧着部7と導体圧着部5とを連結するように端子本体2に成形された連結部8とを有している。
溶着部3は、平板状(タブ状)であって、平面視で円形状に成形された円形部と、この円形部の左右幅より狭い細首状に成形された導体圧着部5との連結部分とを有している。
溶着部3の円形部の直径は、例えば、導電部材Bである単三乾電池の正極B1と略同じ直径であるなど、導電部材Bに溶着した際に短絡しない大きさであれば良く、溶着部3は、スポット溶接によって電池Bの電極に溶着される。
従って、本発明に係る電線接続端子1は、あくまで乾電池等の導電部材Bに溶接される溶着部3を有する電線接続端子1付きの電線E’である。
図3(a)、(b)に示すように、左右一対のワイヤ起立片4a、4b及び左右一対のインスレーション起立片6a、6bは、底部から円弧状(略U字状)立ち上がっており、更に、左右ワイヤ起立片4a、4bは、端子本体2の左右方向(左右軸Y)に沿って畝状に上方(露出した導体部Wを加締める側)へ隆起したセレーション凸部9を有している。
このセレーション凸部9には、ワイヤ起立片4a、4bを加締めた際に、導体圧着部5で電線Eに作用する押圧応力が集中し、そのセレーション凸部9に噛み合った形状の凹凸が導体部Wの導通芯材Sの表面に出来るので、電線Eは、引き抜くことは出来ない程度に導体圧着部5に確り圧着される。
又、このような機械的な接続に寄与するだけでなく、セレーション凸部9は、導通芯材Sの表面に酸化物が付いていても、この酸化物を押し潰して破壊することが出来、上述した接触抵抗の低減を促し、電気的な接続を確保できる。
更に、左右ワイヤ起立片4a、4bは、その上前端部及び上後端部(ワイヤ起立片4a、4bの起立方向先端における前後方向の端部)の両方に成形された円弧部10を有している。
この円弧部10は、上述のアプリケータ30でワイヤ起立片4a、4b間の電線Eの導体部Wを加締めた際に生じる余肉部Aの一部となる。
このような余肉部Aが生じるのは、電線Eが押し潰されて変形して左右ワイヤ起立片4a、4b間を充填して塞ぎ、ワイヤ起立片4a、4bと導体圧着部5の底部との間で強く締めつけられるときは、導体圧着部5における前後両端縁間の中間部分が強く押し潰されて窪み、その窪み対してワイヤ起立片4a、4bの前後両端縁が、アプリケータ30の圧着工具(具体的には、後述のワイヤクリンパ型刃32の面取部38a、38b)に沿って、相対的に隆起するからである。
このようにワイヤ起立片4a、4bの前後端が隆起して反り上がった隆起縁11は、前後方向における開口が先開き(鐘状)、つまり、前後方向外方に行くにつれて拡開しており、ベルマウス11と呼ばれる(図4、5参照)。
尚、このベルマウス11は、後述する圧着固定によって、適切なベルマウス11が形成される。
次に、端子付き電線E’の製造装置100を説明する。
図6(a)、(b)に示すように、製造装置100は、電線E端部の被覆部Zの剥離から、電線接続端子1の圧着固定、排出までを全て自動で行う全自動式と、端部の被覆部Zが既に剥離された電線Eを、手で持って端子圧着機30にセットし電線接続端子1を圧着固定する手動式とがある。
図6(a)に示された全自動式の製造装置100は、電線送給手段101、クランプ手段102、電線切断手段103、皮むき手段104、端子供給手段105、端子圧着機30(アプリケータ)、押圧手段33(プレス)及び排出手段106とを有し、これらは、機台107上に配置されている。
電線送給手段101は、所定の長さずつ電線Eを送り出すものであって、電線Eはロール状に巻かれている。クランプ手段102は、前記電線送給手段101から送り出された電線Eを把持し、把持した電線Eを、電線切断手段103や皮むき手段104、アプリケータ30まで搬送する(後に詳解)。
電線切断手段103は、クランプ手段102で把持された電線Eを所定長さごとに切断するものであって、この電線切断手段103で切断された電線Eの端部における被覆部Zを剥離して導通芯材Sを露出させるのが皮むき手段104である。
この皮むき手段104で導通芯材Sが露出された電線Eに、端子供給手段105から端子帯体21’が巻回されたロールから所定長さごとに側方から供給された電線接続端子1を圧着固定するものが、アプリケータ30であって、このアプリケータ30の圧着工具(各クリンパ型刃32、53)を昇降させるものが、プレス33である。
尚、アプリケータ30によって電線接続端子1が圧着された電線E’は、排出手段106によって、製造装置100から排出される。
又、全自動式の製造装置100は、電線Eにおける片側の端部に電線接続端子1を圧着固定するだけでなく、両端に圧着固定するタイプであっても良い。
一方、図6(b)は、手動式の製造装置100を示し、別工程にて、電線Eの所定長さの切断や端部の被覆部Zの剥離を行うため、全自動式における電線送給手段101、クランプ手段102、電線切断手段103、皮むき手段104、排出手段106を有していない。
続いて、端子圧着機30であるアプリケータを説明する。
図7、8に示すように、アプリケータ30は、各部を搭載する基板であるベース51、このベース51上に立設された柱状の構造体であるホルダ柱体52、このホルダ柱体52で保持され電線接続端子1を支持するアンビル型刃31と、このアンビル型刃31に近接離反可能でワイヤ起立片4a、4bを湾曲状に加締めるクリンパ型刃32(ワイヤクリンパ型刃)と、このワイヤクリンパ型刃32に隣接配置されてインスレーション起立片6a、6bを湾曲状に加締めるインスクリンパ型刃53と、前記アンビル型刃31に隣接配置されて端子帯体21’におけるキャリア21から電線接続端子1を切断するスライドカッタ54と、このスライドカッタ54を押し下げるカットオフパンチ55と、前記アンビル型刃31と各クリンパ型刃32、53とで加締固定する加締位置Uへ端子帯体21’を送り出す端子フィード機構56とを有している。
又、アプリケータ30は、電線Eの供給や位置決めをする上述のクランプ手段102と一緒に用いられる。
尚、アプリケータ30において、ワイヤクリンパ型刃32がアンビル型刃31に近接離反する方向を上下方向とし、端子フィード機構56が端子帯体21’を送り出す方向を左右方向とし、アンビル型刃31とスライドカッタ54とが隣接する方向やワイヤクリンパ型刃32とインスクリンパ型刃53とが隣接する方向を前後方向(ワイヤクリンパ型刃32が前側、インスクリンパ型刃53が後側)とする。
又、アプリケータ30の上下方向は加締位置Uにおける電線接続端子1の上下方向と略同一方向であり、アプリケータ30の左右方向は加締位置Uにおける電線接続端子1の左右方向と略同一方向であり、アプリケータ30の前後方向は加締位置Uにおける電線接続端子1の前後方向と略同一方向である。
図7、8に示すように、ベース51上において、ホルダ柱体52の下部後方にアンビル型刃31がアンビルホルダ57を介して配置固定され、このアンビル型刃31の後方にスライドカッタ54がカットホルダ58に対して上下動自在に配置されている。
ホルダ柱体52後面には、上下にスライド可能なシャンク59が取付けられており、このシャンク59は、ラム60を介して押圧手段33(プレス)に連結され、このプレス33によってシャンク59が昇降される。
シャンク59後面には、リホーマガイド61を介して上下動自在で加締めた電線接続端子1を各クリンパ型刃32、53から離すリホーマ62が取り付けられ、このリホーマ62の後方に所定厚さのスペーサ63を介してワイヤクリンパ型刃32が取り付けられ、このワイヤクリンパ型刃32の後面にインスクリンパ型刃53が取り付けられ、このインスクリンパ型刃53の後面に加締める際に電線Eを押さえる電線押え部材64が取り付けられ、この電線押え部材64の後面に前記スライドカッタ54を下方へ押圧可能なカットオフパンチ55が取り付けられている(図7〜9参照)。
従って、シャンク59がプレス33によってラム60を介して昇降されると、昇降するシャンク59と一体的に、リホーマ62、スペーサ63、ワイヤクリンパ型刃32、インスクリンパ型刃53、電線押え部材64及びカットオフパンチ55も昇降する。
尚、各クリンパ型刃32、53はアンビル型刃31とその上方で対向する前後位置に取り付けられ、カットオフパンチ55はスライドカッタ54とその上方で対向する前後位置に取り付けられている。
図10(a)に示すように、アンビル型刃31は、金属製で平板状の型刃であって、正面視で略矩形状のアンビル基部65と、このアンビル基部65上面の左右方向中央から上方へ直線状に延設されたアンビル上部66とを有しており、これらアンビル基部65及びアンビル上部66全体で正面視逆T字状に形成されている。
アンビル基部65には、中央を前後方向に貫通するビス孔65aが設けられており、このビス孔65aを通るビス等の固定手段によって、アンビル型刃31がアンビルホルダ57に取り付けられている。
アンビル上部66の上前部には電線接続端子1のワイヤ起立片4a、4bを支持するワイヤ支持部39が形成され、このワイヤ支持部39の後方に左右方向に延びる横溝66aが形成され、この横溝66aの後方で且つアンビル上部66の上後部には電線接続端子1のインスレーション起立片6a、6bを支持するインス支持部67が形成されている。
ワイヤ支持部39の上面には、湾曲状の凹みが前後方向に延びるワイヤ中央溝39aと、このワイヤ中央溝39aの左右両側に隆起したワイヤ凸部39bとが形成され、ワイヤ中央溝39a及び左右のワイヤ凸部39bを合わせたワイヤ支持部39の左右幅は、加締めた後の電線接続端子1における導体圧着部5の左右幅であるクリンプワイドW’と略同一である。
尚、各ワイヤ凸部39bの上面は、平面状であって、アンビル型刃31をアプリケータ30に取り付けた際に略水平状となるように形成されている(図10(b))。
図10(c)に示す如く、ワイヤ支持部39の前上部及び後上部は面取りされており(前面取部39c、後面取部39d)、前面取部39cの上端と後面取部39dの後端との間の距離は、電線接続端子1のワイヤ起立片4a、4bの前後長さLと略同一の長さである。
インス支持部67の上面にも、湾曲状の凹みが前後方向に延びるインス中央溝67aと、このインス中央溝67aの左右両側に隆起したインス凸部67bとが形成され、インス中央溝67a及び左右のインス凸部67bを合わせたインス支持部67の左右幅は、加締めた後の電線接続端子1における被覆圧着部7の左右幅と略同一である。
又、インス凸部67bの上面も、平面状であって、アンビル型刃31をアプリケータ30に取り付けた際に略水平状となるように形成されている。
このようなアンビル型刃31は、加締める電線接続端子1を下から支持可能に構成されている。
図11(a)に示すように、ワイヤクリンパ型刃32は、平板状の型刃であって、その厚さtは、電線接続端子1のワイヤ起立片4a、4bの前後長さLと略同一である。
又、ワイヤクリンパ型刃32は、上述したように、そのロックウェル硬度HRCが、少なくとも52以上、好ましくは60以上70以下の非常に高い硬度の素材であることが求められる。
このような非常に硬い素材としては、超硬合金や、高速度鋼がある。
超硬合金は、硬質の金属炭化物の粉末を焼結して作られる合金であって、代表的なものとしては、炭化タングステン(WC、タングステン・カーバイド)と結合剤(バインダ)であるコバルト(Co)とを混合して焼結したWC−Co合金や、WC−TiC−Co合金、WC−TaC−Co合金などがある。
超硬合金の耐摩擦性を一層高めるために、ワイヤクリンパ型刃32において特に応力が掛かる部分(後述のワイヤクリンパ下部69や、ガイド溝34周辺など)の表面に、他の硬質物質をコーティング(化学気相成長(CVD)や物理気相成長(PVD))しても良い。この硬質物質としては、例えば、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)、チタンアルミナイトライド(TiAlN)などがある。
ワイヤクリンパ型刃32の材料としては、高速度鋼も好ましく、工具材料における高温下での耐軟化性の低さを補い、より高速での金属材料の加工を可能にする。高速度鋼は、高温下での硬さや耐軟化性を高めるべく、鋼にクロム、タングステン、モリブデン、バナジウムといった金属成分を多量に添加したもので、焼入れ等の熱処理を施した後、研磨により成形して使用される。
高速度鋼の種類としては、タングステン系高速度工具鋼鋼材(JIS−G−4403におけるSKH2〜4、10)や、モリブデン系高速度工具鋼鋼材(JIS−G−4403におけるSKH40、50〜59)等がある。
高速度鋼を使用した場合でも、超硬合金と同様に、特に応力が掛かるガイド溝34周辺等には、部分的に、PVD法による表面への窒化チタン (TiN) 等の高耐磨耗性被膜の形成を行っても良い。
ワイヤクリンパ型刃32は、正面視で略矩形状のワイヤクリンパ上部68と、このワイヤクリンパ上部68下端から下方へ延設されたワイヤクリンパ下部69とを有している。
ワイヤクリンパ上部68には、中央を前後方向に貫通するビス孔68aが設けられており、このビス孔65aを通るビス等の固定手段は、前方にあるスペーサ63、リホーマ62及びリホーマガイド61も通って、ワイヤクリンパ型刃32がホルダ柱体52に取り付けられている。
ワイヤクリンパ下部69には、下端から上方に向かって切り欠かれたガイド溝34を有しており、少なくともガイド溝34付近は、硬度60度以上70度以下のハイスピード超硬加工がなされている。ガイド溝34は、電線接続端子1とこの電線接続端子1を支持したアンビル型刃31とを、プレス33による押圧方向(上下方向)に沿って出入させることが出来るように形成されている。
ガイド溝34は、左右一対の溝内壁35a、35bと、これらの溝内壁35a、35b間の溝奥に位置した左右一対のアーチ溝底36a、36bと、この左右一対のアーチ溝底36a、36b及び溝内壁35a、35bの前後の角を面取りした左右一対の面取部38a、38bとを備えている。
左右の溝内壁35a、35bは、上(溝奥側)から下(溝開口側)にかけて末広がり状に形成され、ガイド溝34の溝幅W3は、溝開口から溝奥にかけて徐々に狭まっており、電線接続端子1及びアンビル型刃31を溝奥へ案内できる。
又、溝内壁35a、35bによって案内された電線接続端子1のワイヤ起立片4a、4bがスムースに加締められるように、溝内壁35a、35bの上端と、アーチ溝底36a、36bの下端G3とは滑らかに連続している。
左右の各アーチ溝底36a、36bは、溝内壁35a、35b上端から連なっており、正面視において中心角が略180度の2つの半円が、左右方向中央で一部重なり合うように形成されている。
又、左右のアーチ溝底36a、36bの間の稜線に沿って、下方へ突出する中央突起36cが形成されており、この中央突起36cの下端G4は、左右アーチ溝底36a、36bの下端G3(つまり、アーチ溝底36a、36bと溝内壁35a、35bとの交点G3)よりも上方に位置している。
各アーチ溝底36a、36bは、電線接続端子1の左右一対のワイヤ起立片4a、4bを押圧して加締めるように上方に湾曲して凹んでおり、この湾曲半径の値によって、ワイヤ起立片4a、4bの加締める半径や、加締高さ(クリンプハイト)や加締幅(クリンプワイドW’)が決定される。
従って、このクリンプワイドW’と左右のアーチ溝底36a、36bの左右幅W2は、略同一である。
左右の面取部38a、38bは、ワイヤクリンパ型刃32が電線接続端子1を押圧することでワイヤ起立片4a、4bの端部に生じる余肉部Aを囲い成形して、所定形状のベルマウス11を形成する。
この面取部38a、38bは、アーチ溝底36a、36b及び溝内壁35a、35bとワイヤクリンパ型刃32における前後方向の刃表面37との稜線に沿った角を面取りして円弧状に形成されている。
つまり、左右の面取部38a、38bは、アーチ溝底36a、36bの下端G3までに止まらず、この下端G3よりも更に下方まで延びており、ガイド溝34の溝内壁35a、35bとワイヤクリンパ型刃32の刃表面37との稜線まで延設されている。
図11(b)に示されたように、面取部38a、38bは、半円形状のアーチ溝底36a、36bと同心円状に、つまり、面取部38a、38bの円弧中心が、アーチ溝底36a、36bの円弧中心と略同一位置となるように構成されている。
又、正面視において、面取部38a、38bの上縁(刃表面37との境界縁)が成す円弧と、アーチ溝底36a、36bが成す円弧との間の距離(半径の差Δr)は、中央突起36c付近からアーチ溝底36a、36bの下端G3の左右外方位置G5まで、所定の値で略一定となっている。
これに加えて、左右外方位置G5から更に下方へ溝内壁35a、35b側まで各面取り部38a、38bは延びており、面取部38a、38bの上縁から続く刃表面37との境界縁は、略直下方へ形成されている。
つまり、左面取部38aの左外方位置G5から右面取部38bの右外方位置G5までの距離が、左右一対の面取部38a、38bの左右幅W1となり、この左右幅W1は、左右一対のアーチ溝底36a、36bの左右幅W2(左のアーチ溝底36aの左下端G3から右のアーチ溝底36bの右下端G3までの距離)より幅広である。
尚、正面視において、面取部38a、38bと刃表面37との境界線と、溝内壁35a、35bとの間の距離は、下方に行くに従って徐々に小さくなる。
更に、後述する圧着第4工程にて詳解するが、図12(a)に示した如く、ワイヤクリンパ型刃32と電線接続端子1の左右ワイヤ起立片4a、4bが加締位置Uにある時において、ワイヤクリンパ型刃32の面取部38の下端G1は、ワイヤ支持部39の上端G2より下方に位置するように、面取部38a、38bが形成されている。
これは、ワイヤクリンパ型刃32のガイド溝34が、面取部38の下端G1がワイヤ支持部39の上端G2より下方位置までアンビル型刃31を溝奥に進入させる溝幅W3を有していることを意味する。
更に、これは当然に、ワイヤクリンパ型刃32の面取部38a、38bの下端G1が、アーチ溝底36a、36bの下端G3より下方に位置していることも表している。
又、図11(c)に示したように、面取部38a、38bの面取表面40は、アーチ溝底36a、36bの底表面41と曲面R’を介して連続させても良く、これによって、ワイヤ起立片4a、4bの前後端に形成されるベルマウス11が滑らかに起立することとなる。
このように、面取部38a、38bの面取表面40と、アーチ溝底36a、36bの底表面41とを滑らかに連続させた場合には、面取部38a、38bを切削や研磨等をした後、もう一度、切削や研磨等をすることとなる。
インスクリンパ型刃53は、ワイヤクリンパ型刃32と同様に、金属製であって、正面視略矩形の平板状の型刃であって、中央にビス孔53aが設けられている。
このインスクリンパ型刃53の下部にも、電線接続端子1及びアンビル型刃31とが出入可能なガイド溝70が形成されており、このガイド溝70も、溝奥に左右一対のアーチ溝底が備えられている。
図9に示されたように、スライドカッタ54は、幅広の略直方体状の部材で、バネ54aにより上方に付勢されて取付けられており、前記カットホルダ58によって上下方向に移動可能に保持されている。
スライドカッタ54の上面には、圧着時に電線Eが置かれる溝部54bと、カットオフパンチ55下部から下方突出した突出部55aが当たる当接面54cとが形成されている。
又、スライドカッタ54における、前側(アンビル型刃31側)の側面には、断面コの字状の送り溝54dが設けられており、この送り溝54dが端子フィード機構56から送られた端子帯体21’を受け入れる。
送り溝54dの上方の部分は切断刃54eとなっており、この切断刃54eの下エッジ54fによって、端子帯体21’におけるキャリア連結部22を切断して、キャリア21から電線接続端子1(端子本体2)を切り離す。
次に、クランプ手段102について説明する。
図13に示したように、クランプ手段102は、アプリケータ30の正面に配置され、電線Eが保持されるクランプ102aと、クランプ開閉用のカム機構や同カム機構を駆動するシリンダ等が収容されているクランプ駆動機構102bと、クランプ102aやクランプ駆動機構102bを保持するクランプ搬送テーブル102cを有している。
クランプ102aは、別工程にて端部が剥ぎ取られて導通芯材Sが露出した電線Eを把持する。
クランプ102a及びクランプ駆動機構102bは、搬送テーブル102cに上下移動可能に取付けられており、電線Eは、端子圧着のために、クランプ102aによりアプリケータ30内に搬送される。
アプリケータ30内に搬送された電線Eは、電線接続端子1を加締める前に、加締位置Uまで下降されるが、この電線Eの下降のために、アプリケータ30を駆動するプレス33には、クランプ102aを下方に押し下げる押し棒33aが設けられている。
次に、製造装置100におけるアプリケータ30やクランプ手段102を用いて電線接続端子1を圧着する工程について詳しく説明する。
圧着工程は主に以下の5つの工程からなる。
第1工程:アンビル型刃31と各クリンパ型刃32、53との間に、電線Eの端部における露出した導通芯材S及び被覆部Zを送り込む。
第2工程:アンビル型刃31と各クリンパ型刃32、53との間に、電線接続端子1を位置させる。
第3工程:電線Eを加締位置Uまで下降させる。
第4工程:各クリンパ型刃32、53及びカットオフパンチ55を下降させて電線接続端子1を圧着すると共に、キャリア21から電線接続端子1を切り離す。
第5工程:各クリンパ型刃32、53及びカットオフパンチ55を上昇させると共に、アンビル型刃31と各クリンパ型刃32、53との間から、電線接続端子1付きの電線Eを送り出す。
<第1工程>(図13参照)
図13に示すように、クランプ102aにより、電線Eをアプリケータ30内へ送りこむ。
このとき、電線Eにおいて被覆部Zが剥ぎ取られた導通芯材S(導体部W)は、アンビル型刃31のワイヤ支持部39とワイヤクリンパ型刃32との間に位置し、電線E端部における被覆部Zの非剥離部分は、アンビル型刃31のインス支持部67とインスクリンパ型刃53との間に位置している。
<第2工程>(図14参照)
図14(a)、(b)に示したように、電線Eを送り込んだ後に、プレス33が下降し始めてシャンク59が下方にスライドする。
このシャンク59の下降に伴なって、端子フィード機構56(図7参照)が作動して、端子帯体21’に連結された電線接続端子1をアプリケータ30内に送り込む。
つまり、図14(b)にて分かりやすく示すように、端子帯体21’におけるキャリア21がスライドカッタ54の送り溝54d内に位置し、端子帯体21’における電線接続端子1のワイヤ起立片4a、4bがアンビル型刃31のワイヤ支持部39上に位置し、インスレーション起立片6a、6bがアンビル型刃31のインス支持部67上に位置する。
そして、端子帯体21’におけるキャリア連結部22は、送り溝54d上方の切断刃54eにおける下エッジ54fの下方に位置する。
<第3工程>(図15参照)
図15に示すように、プレス33が更に下降することによって、ワイヤクリンパ型刃32、インスクリンパ型刃53及びカットオフパンチ55も一体的に下降すると共に、クランプ手段102における押し棒33aがクランプ102aに当接して、電線Eが下降し始める。
下降する電線Eは、電線接続端子1における各起立片4a、4b、6a、6bによる加締位置Uまで降りた際に停止する。このとき、電線Eの露出した導通芯材Sは、左右ワイヤ起立片4a、4b間に位置し、電線Eの被覆部Zの非剥離部分は、左右インスレーション起立片6a、6b間に位置している。
<第4工程>(図12、16参照)
図16に示すように、電線E及び電線接続端子1が加締位置Uで停止した後も、プレス33が更に下降し、カットオフパンチ55の突起部55aが、当接面54cに当接してスライドカッタ54を押し下げ始める。
このスライドカッタ54の押下げと平行して、ワイヤクリンパ型刃32におけるガイド溝34内へ、電線接続端子1(特に、ワイヤ起立片4a、4b)及びアンビル型刃31のワイヤ支持部39が進入する。
図12(a)にて示す如く、ガイド溝34内へ進入したワイヤ起立片4a、4bは、溝奥に行くほど溝幅W3が狭まる左右の溝内壁35a、35bに沿って、導通芯材Sを間に抱えた状態で徐々に閉じられる。
更に、ワイヤクリンパ型刃32が下降することで、左右のワイヤ起立片4a、4bは、先端部が溝奥にある左右アーチ溝底36a、36bに当接し、左右ワイヤ起立片4a、4b全体が湾曲状に加締められる。このとき、各ワイヤ起立片4a、4bにおける前後軸Xに直交する断面の形状は、略F字状となっている(Fクリンプ)。
このように化締められて圧着固定される左右一対のワイヤ起立片4a、4bの左右外方には、上述したワイヤクリンパ型刃32の左右の面取部38a、38bの左右幅W1が、左右のアーチ溝底36a、36bの左右幅W2より大きいため、電線接続端子1と左右一対の面取部38a、38bとの間に、隙間dが形成される(図12(a)、(b)参照)。
この隙間dは、平面視において、ワイヤ起立片4a、4bの左右外側面と、面取部38a、38bの面取表面40とに囲まれた略くさび形の空隙である(図12(b)参照)。
更に、図12(a)に示したように、左右の面取部38a、38bの下端G1は、左右アーチ溝底36a、36bの下端G3より下方に位置していることから、隙間dは、アーチ溝底36a、36b下端G3の高さ位置において、上下方向に連通している。
このような隙間dが、電線接続端子1をワイヤクリンパ型刃32で押圧した際に生じることで、ワイヤ起立片4a、4bの前後方向における端部に生じる余肉部Aが、隙間dを通って、アーチ溝底36a、36bの下端G3よりも下方へ移動することが可能となり、余肉部Aがワイヤクリンパ型刃32から離れる方向(アンビル型刃31側)へ逃がすことが出来る。
この余肉部Aの逃がしと同時に、ワイヤクリンパ型刃32からワイヤ起立片4a、4bに加わった力や衝撃も、隙間dを通って余肉部Aと共にアンビル型刃31側へ逃がすことも出来る。
従って、ワイヤ起立片4a、4bに加わった力や衝撃によって生じる力(反力)のうち、ワイヤクリンパ型刃32に跳ね返る反力を低減させることが出来、ワイヤクリンパ型刃32への反力の低減は、何万回、何十万回と押圧させた際には、積み重なって大きな差となる。
尚、上述の隙間dがない場合、3万回の圧着固定でワイヤクリンパ型刃に亀裂や割れが発生していたが、隙間dがある場合には、50万回以上圧着固定してもワイヤクリンパ型刃32に亀裂及び割れが生じることはない。
従って、ワイヤクリンパ型刃32の飛躍的な長寿命化が図れると同時に、メンテナンスの容易化や、ワイヤクリンパ型刃32の取替頻度の低下による経済性の向上が図れる。
又、プレス33によって生じるワイヤクリンパ型刃32がワイヤ起立片4a、4b及び導通芯材Sを押圧する力F(押圧力)は、1t(トン)から2t(トン)で、例えば、1.5t(トン)前後に設定する。
ワイヤクリンパ型刃32への反力が、ワイヤクリンパ型刃32に金属疲労や、内部構造の損傷などとして蓄積されることを抑制し、ワイヤクリンパ型刃32の割れ防止や、長寿命化を図ることが可能となる。
更には、余肉部Aをワイヤ起立片4a、4bの左右外方からアンビル型刃31側へ逃がせば、当然に、余肉部Aに掛かる圧力も下がって発熱も抑えられるため、焼付き防止を実現でき、塗布する油を減らす又は無くすることが可能となるため、油コストの低減や作業効率の向上が図れる。
又、図12(a)で示すように、ワイヤクリンパ型刃32が加締位置U(ワイヤ起立片4a、4b間で導通芯材Sを圧着固定した位置)にある時には、面取部38の下端G1がアンビル型刃31のワイヤ支持部39上端G2より下方に位置している。
これによって、上述した隙間dは、ワイヤ起立片4a、4bの下方位置まで延び、この隙間dが延びた分だけ、余肉部Aで生じた反力をより多く低減できる。
更に、ワイヤ起立片4a、4bの左右外下方に(加締位置Uにおいて、アンビル型刃31のワイヤ支持部39と、ワイヤクリンパ型刃32のガイド溝34の溝内壁35a、35bとの間に)空間Cがある場合、この空間Cと隙間dが連通することとなる。
これは、ワイヤクリンパ型刃32の押圧によって生じた余肉部Aや反力は、ワイヤ起立片4a、4bと面取部38a、38bとの間の隙間dを通ってワイヤ起立片4a、4bの下方の空間Cまで回り込めることを意味し、より確実にワイヤクリンパ型刃32への反力を低減させことが可能となる(回り込んだ力F”)。
このような面取部38a、38bを設けることは、ワイヤクリンパ型刃32や端子圧着時にメリットがあるだけでなく、圧着される電線接続端子1にも好適となる。
1つは、圧着されるワイヤ起立片4a、4bにおいても応力集中を防ぎ、余肉部Aと共に隙間dを通ってアンビル型刃31側へ応力を分散させることも可能となるので、加締められる側のワイヤ起立片4a、4bにおける割れ、亀裂及び歪みも抑えられる。
更には、このような応力分散によって、ワイヤ起立片4a、4b全体として耐え得る押圧力Fが上がり、より強い力でワイヤ起立片4a、4bを加締めることが可能となって、電線接続端子1に対する電線Eの引張強度が上がる。
これに加え、ワイヤクリンパ型刃32の面取部38a、38bによって、電線接続端子1のワイヤ起立片4a、4bに形成されるベルマウス11にもメリットがある。
湾曲状に加締められてベルマウス11を形成するワイヤ起立片4a、4bの起立先端における前後端部には、上述したように、円弧部10が設けられているが、この円弧部10の半径Rが小さ過ぎれば、ベルマウス11が形成されないので、半径Rは一定の値以上となる。
逆に、半径Rが大き過ぎる場合、円弧部10は、左右ワイヤ起立片4a、4bの合わせ目近くの左右中央に位置しており、この合わせ目付近では、円弧部10の分だけ、ベルマウス11の余肉部Aが余計に余ることとなる。
しかし、ワイヤ起立片4a、4bと左右一対の面取部38a、38bとの間に、隙間dが空いているため、左右中央近傍で余った余肉部Aも、それぞれ左右外方に押圧されて、隙間dから下方へ逃げるので、ワイヤ起立片4a、4bを加締めた際に成形されるベルマウス11が適切なものとなり、後述するワイヤクリンパ型刃32の長寿命化や、ワイヤ起立片4a、4bの割れ防止が図れると共に、電線Eの導体部Wの傷付きや、導通芯材Sの断線(つまり、導体部Wの一部切断)を抑えられるため、電線引張強度の低下も防げる。 そして、円弧部10を形成することによって、ワイヤ起立片4a、4bが加締められ起立先端同士が合わさった際に円弧部10も合わさりあって、この円弧部10の分だけ余肉部Aが左右外方に逃がされるため、ワイヤ起立片4a、4bにおける更なる応力分散が図れる。
尚、半径Rは、適切にベルマウス11が形成されるのであれば、何れの値でも良いが、端子本体2を形成する金属板Kの厚さTが0.10mm以上0.30mm以下である場合には、ワイヤ起立片4a、4bに成形された円弧部10は、半径Rを0.10mm以上0.40mm以下の範囲内で設定すると良い。
更に加えて、上述したような左右幅W1を面取部38a、38bを有するワイヤクリンパ型刃32によって、ワイヤ起立片4a、4bの前後方向における端部に形成されたベルマウス11は、左右幅W4にも特徴が生じる。
つまり、ベルマウス11の左右幅W4は、ワイヤ起立片4a、4bにおける前後方向の中途部の左右幅W5より幅広となり、ワイヤクリンパ型刃32の押圧によって生じるワイヤ起立片4a、4b前後端の余肉部Aは、面取部38a、38bに沿って、アーチ溝底36a、36bの上方へ逃がされるだけでなく、左右外方にも逃がされることとなる。
従って、左右外方に余肉部Aを逃がさない場合と比較して、ワイヤ起立片4a、4bに掛かる応力も湾曲したワイヤ起立片4a、4b端部に沿って分散され、ワイヤ起立片4a、4bの割れや亀裂、歪みを防止できる。
尚、本発明は、あくまで導電部材Bに溶接される溶着部3を有する電線接続端子1付きの電線E’であって、このような溶着部3を有さないコネクタハウジングのキャビティに挿入される端子金具とは、適用場面、技術思想が異なり、ベルマウス11の左右幅W4を、ワイヤ起立片4a、4bにおける前後方向の中途部の左右幅W5より幅広としても、コネクタハウジングのキャビティ内壁に引っ掛かる等の不都合は生じない。
又、ワイヤ起立片4a、4bの前後長さLをワイヤクリンパ型刃32の厚さtと同一の値としながらも、ベルマウス11の左右幅W4をワイヤ起立片4a、4bにおける前後中途部の左右幅W5より幅広とするには、ワイヤクリンパ型刃32に、左右一対のアーチ溝底36a、36bと面取部38a、38bとを設け、この面取部38a、38bの左右幅W1がアーチ溝底36a、36bの左右幅W2より幅広であることが必須となる。
このような面取部38a、38bの左右幅W1を有するが故に、ワイヤ起立片4a、4bと左右一対の面取部38a、38bとの間に隙間dが生じ、この隙間dを通って、ワイヤ起立片4a、4bの余肉部Aが、面取部38a、38bに当たりながら左右外方に逃げることとなり、余肉部Aを逃がした分だけ、ワイヤ起立片4a、4bの応力集中を防ぐことが出来る。
このように、余肉部Aを面取部38a、38bに当てながら左右外方の隙間dから逃がす方が、ワイヤ起立片4a、4bの前後長さLより薄いワイヤクリンパ型刃32で押圧した場合よりも、ワイヤ起立片4a、4b全体として耐え得る押圧力が上がる。
詳しく述べれば、電線接続端子1の元と成る金属板Kの厚さTが同一であれば、押圧力への耐久性も本来同一であるが、ワイヤ起立片4a、4bの左右外方に隙間dがある場合は、余肉部Aを下方へ逃がすことが出来るため、ワイヤ起立片4a、4bに掛かる応力を分散できる。
しかし、ワイヤ起立片4a、4bの左右外方に隙間dがない場合(例えば、特許文献2のように、面取部をアーチ部と内側面の交点までとした場合等)には、余肉部Aを逃がすことが出来ず、ワイヤ起立片4a、4bにおける上部(面取部に面する部分)に応力が集中する。
従って、隙間dがない場合に、隙間dがある場合と同じ押圧力を掛けたとすると、応力集中が起こる分だけ、ワイヤ起立片4a、4bに亀裂や割れ等が生じる。
つまり、隙間dがあれば、隙間dがない場合よりも、ワイヤ起立片4a、4bの耐え得る押圧力が上がり、より強い力でワイヤ起立片4a、4bを加締めることが可能となって、電線接続端子1に対する電線Eの引張強度を向上できる。
又、電線Eの引張強度や押圧力への耐久性は、ワイヤ起立片4a、4bに残る押圧部位42の範囲からも判断できる。
又、このように、ワイヤクリンパ型刃32で電線接続端子1(端子本体2)を上方から押圧することで、端子本体2の表面における凹凸が均されるため、端子本体2(金属板K)本来の表面より、表面粗さRa(JIS−B−0601:2001)の値が小さい押圧部位42が生じる。
尚、表面粗さRaとは、輪郭曲線の算術平均高さであって、基準長さにおける高さ(Z)の絶対値の平均であって、さらに詳しくは、輪郭曲線を高さの中心線(高さの平均値)から折り返し、輪郭曲線と中心線によって得られた面積を基準長さで割った値を、マイクロメートル(μm) で表わしたものである。
又、表面粗さRaは、表面における凹凸差とも言え、押圧部位42は、非押圧部位43に比べて、表面における凹凸差が小さい。
端子本体2本来の表面粗さRaは、ワイヤ起立片4a、4bで電線Eの導通芯材Sを確り固定するために、所定の値以上であることが好ましいが、あまりに表面の凹凸があると、導通芯材Sと端子本体2との接触面積が小さくなり、返って接触抵抗が増加することになる。
従って、端子本体2の表面粗さRaは、0.1μm以上10μm以下、好ましくは、0.2μm以上1.0μm以下、更に好ましくは、0.3μm以上0.8μm以下である。
又、この端子本体2の表面粗さRaは、金属板Kがニッケルで構成される場合、ニッケルメッキを施したSUS304等を素材としている場合を問わず、上述の範囲内となる。
当然に、ワイヤクリンパ型刃32で押圧されていない非押圧部位43における端子本体2の表面粗さRaも、端子本体2本来の表面粗さRaと等しくなる。
又、実際の端子本体2の表面粗さRaは、上述した範囲内に入る値であっても、個々の端子本体2ごとに多少異なるが、1つの端子本体2における押圧部位42の表面粗さRaは、同じ端子本体2における非押圧部位43の表面粗さRaよりも、ワイヤクリンパ型刃32等の圧着工具によって押圧された分だけ、表面粗さRaの値が小さくなる。
この押圧部位42と非押圧部位43との表面粗さRaの差は、0.01μm以上1μm以下、好ましくは、0.05μm以上0.8μm以下、更に好ましくは、0.1μm以上0.5μm以下となる。
従って、端子本体2の表面には、ワイヤクリンパ型刃32に接触せず表面が押圧されない部位(非押圧部位43)も存在するため、端子本体2の表面は、ワイヤクリンパ型刃32の押圧によって、押圧部位42と、この押圧部位42より表面粗さRaが大きい非押圧部位43とに分けられる。
このような押圧部位42が、ワイヤクリンパ型刃32に諸に当たるワイヤ起立片4a、4bの前後方向の中途部だけでなく、左右幅W4がワイヤ起立片4a、4bの前後中途部の左右幅W5より幅広なベルマウス11の表面にも生じる。
このベルマウス11表面に生じた押圧部位42は、ワイヤクリンパ型刃32における面取部38a、38bに当って形成されており、ワイヤ起立片4a、4bを加締め且つベルマウス11を形成する時に掛かる押圧力Fを、ワイヤ起立片4a、4b及びベルマウス11における押圧部位42全体で受け止めることとなり、ワイヤ起立片4a、4bに生じる応力が分散される。
この応力分散は、たとえば、ベルマウス11の表面には押圧部位がない場合の応力分散と比べて、応力の分散具合が高い。
尚、ベルマウス11の表面には押圧部位が生じない場合、つまり、ワイヤクリンパ型刃32の厚さtが、ワイヤ起立片4a、4bの前後長さLより薄く、ベルマウス11に相当する余肉部Aが押圧するワイヤクリンパ型刃32の前後方向からはみ出て隆起した場合には、ワイヤクリンパ型刃32の押圧部位と、押圧されずに生じたベルマウス11との間の境界に、応力が集中する。
又、左右幅W4がワイヤ起立片4a、4bの前後中途部の左右幅W5より幅広なベルマウス11が形成されることによって、圧着固定される電線接続端子1の歪みが抑えられる。
例えば、前後のベルマウス11のうち溶着部3側(前側)の前ベルマウス11について詳解すれば、図4、5に示すように、ワイヤ起立片4a、4bの前後中途部の左右幅W5と、溶着部3の左右幅には幅の差がある。
しかし、ワイヤ起立片4a、4bの前後中途部と溶着部3との間に、ワイヤ起立片4a、4bの前後中途部より幅広の前ベルマウス11があることから、ワイヤ起立片4a、4bから溶着部3にかけて急激に幅の増加ではなく、段階的に幅広となる。
このような幅の拡がり具合を電線接続端子1が持つため、ワイヤ起立片4a、4bを加締められても、圧着による金属板Kの変形を前ベルマウス11が吸収することとなり、圧着固定時の溶着部3の歪みを抑制することが出来る。
これと同様に、後ベルマウス11が、ワイヤ起立片4a、4bの前後中途部とインスレーション起立片6a、6bの間に位置するため、ワイヤ起立片4a、4bからインスレーション起立片6a、6bにかけて緩やかに幅広となり、圧着固定による歪みがインスレーション起立片6a、6b側に伝わるのを抑えている。
これまで、ワイヤクリンパ型刃32における圧着固定について述べてきたが、このワイヤクリンパ型刃32と同様に、プレス33の下降によって、インスクリンパ型刃53による圧着固定も行われる。
インスクリンパ型刃53におけるガイド溝70内へ、電線接続端子1のインスレーション起立片6a、6b及びアンビル型刃31のインス支持部67が進入し、インスクリンパ型刃53の左右一対のアーチ溝底がインスレーション起立片6a、6bに当たって、電線Eにおける被覆部Zの非剥離部分を加締めることが出来る。
又、図16に示すように、プレス33が最後まで下降すると、カットオフパンチ55によってスライドカッタ54が押し下げられ、端子帯体21’のキャリア連結部22は、切断刃54eの下エッジ54fとアンビル型刃31のインス支持部67の後上端との間で切断される。
キャリア連結部22が切断されることで、送り溝54d内のキャリア21と、アンビル型刃31上の電線接続端子1及び電線Eに分かれる。
尚、この切断の際、電線接続端子1の後端に、キャリア連結部22の一部(カットオフタブ)が残る場合があるが、残ったとしても、カットオフタブの長さ(前後長さ)は、最長でも0.30mm以下に抑えられている。
このようにカットオフタブの長さが抑えられるのは、キャリア21に形成されたパイロットホール23によって端子本体2及びキャリア21の位置がコントロールされており、加締及び切断時における端子本体2の位置ズレがほぼ無いためである。
<第5工程>(図17参照)
圧着完了後、プレス33がシャンク59を上昇させることによって、シャンク59に一体的に取り付けられている各クリンパ型刃32、53及びカットオフパンチ55も上昇する。
この各クリンパ型刃32、53及びカットオフパンチ55の上昇と同期して、電線Eを把持するクランプ102aも所定距離だけ上昇し、電線接続端子1が圧着固定された電線E’を、アンビル型刃31と各クリンパ型刃32、53との間から送り出す。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。電線接続端子1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
端子圧着機30は、アンビル型刃31が下方に位置し、上方からクリンパ型刃32が接近する構成としていたが、クリンパ型刃32の押圧方向が上下方向(鉛直方向)に沿っているのであれば、アンビル型刃31がクリンパ型刃32より上方に位置し、クリンパ型刃32がアンビル型刃31に下方から接近することとしても良い。
その際、端子圧着機30,アンビル型刃31、クリンパ型刃32における上方、下方、上端、下端等の上下関係は、上下逆となる。
溶着部3は、平面視形状が、円形や長手方向を有する形状であったが、導電部材Bの電極に溶着可能で短絡が生じないのであれば、楕円形、渦巻き形、三角形状など、いずれでも良い。
セレーション凸部9は、1つでも良く、ワイヤ起立片4a、4bの前後長さL、又は導体圧着部5の前後長さ内に成形可能であるならば、3つ以上でも良い。
ベルマウス11は、加締めたワイヤ起立片4a、4bの前端及び後端の両方に形成したが、導通芯材Sを一部切断又は傷付けず、電線Eの引張強度が低下しないのであれば、ワイヤ起立片4a、4bにおける前端又は後端の何れか一方に設けられていても良い。
又、ベルマウス11は、電線Eの導体部Wが導通芯材Sを撚り合わせた撚線である場合には、導通芯材Sから離れるように拡径しており、導通芯材Sが適度に歪むことを妨げないため、導通芯材Sに自然な撚り目を持たせることが可能となる。
発明に係る端子付き電線は、乾電池やボタン電池やなどに電線を接続させる端子を取り付けた電線だけに留まらず、同様に、電子機器内で電線を加締固定する極薄い金属板で構成された端子であれば、コンピュータ、オーディオ機器の電池以外の導電部材に使用する端子を取り付けた電線であっても利用できる。
1 電線接続端子
2 端子本体
3 溶着部
4a、4b 左右一対のワイヤ起立片
10 ワイヤ起立片の円弧部
11 ワイヤ起立片のベルマウス
30 端子圧着機(アプリケータ)
31 アンビル型刃
32 クリンパ型刃(ワイヤクリンパ型刃)
33 押圧手段(プレス)
34 ガイド溝
35a、35b 溝内壁
36a、36b アーチ溝底
37 クリンパ型刃の刃表面
38a、38b 面取部
39 ワイヤ支持部
40 面取部の面取表面
41 アーチ溝底の底表面
42 押圧部位
43 非押圧部位
100 端子付き電線の製造装置
E 電線
E’ 端子付き電線
W 電線の導通芯材
B 導電部材
K 金属板
W1 左右一対の面取部の左右幅
W2 左右一対のアーチ溝底の左右幅
W3 ガイド溝の溝幅
W4 ベルマウスの左右幅
W5 左右一対のワイヤ起立片における前後方向の中途部の左右幅
L ワイヤ起立片の前後長さ
t クリンパ型刃の厚さ

Claims (2)

  1. 電線(E)と、この電線(E)の導通芯材(S)を導電部材(B)と接続させる電線接続端子(1)とを有する端子付き電線であって、
    少なくとも表裏両面がニッケルで構成される金属板(K)を加工成形した端子本体(2)に、この端子本体(2)の前端部に成形され前記導電部材(B)との溶着部(3)と、前記端子本体(2)の前後方向の中途部に成形された左右一対のワイヤ起立片(4a、4b)とが設けられ、
    この左右一対のワイヤ起立片(4a、4b)湾曲しており、前記左右一対のワイヤ起立片(4a、4b)間で、前記電線(E)の導通芯材(S)が圧着さており
    圧着された左右一対のワイヤ起立片(4a、4b)における前後方向の端部に、前後方向外方に行くにつれて拡開するベルマウス(11)が形成され、
    このベルマウス(11)の左右幅(W4)は、前記圧着された左右一対のワイヤ起立片(4a、4b)における前後方向の中途部の左右幅(W5)より幅広であり、
    前記端子本体(2)の表面は、所定の表面粗さRaを有する所定部位(42)と、この所定部位(42)より表面粗さRaが大きい非所定部位(43)とに分けられ、
    前記ワイヤ起立片(4a、4b)は、このワイヤ起立片(4a、4b)における前後方向の中途部及びベルマウス(11)の表面に、前記所定部位(42)を有していることを特徴とする端子付き電線。
  2. 記ワイヤ起立片(4a、4b)は、この起立方向の先端における前後方向の端部に円弧部(10)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の端子付き電線。
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