JP5829447B2 - 結晶化ガラスおよび情報記録媒体用結晶化ガラス基板 - Google Patents
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Description
垂直磁気記録方式においては、従来の基板と比較して、基板の耐熱性、表面の平滑性、機械的強度がより高いレベルで求められている。機械的強度は、ヤング率、曲げ強度、および破壊靱性が主な評価項目であり、これらの特性の向上が課題となっている。
また、スピンドルモーターへの負担の軽減や、落下時のディスクの破壊を防止する為に、基板材料の比重が重要な評価項目であり、基板材料の低比重化が強く要求されている。
同様に、結晶化ガラスは紛体を焼結してなるセラミックスとは異なる物性を備えることができる。結晶化ガラスはガラスを出発材料として、内部に結晶を析出させることにより製造される為、セラミックスと比較して、空孔が無く、緻密な組織を得ることができる。
特に次世代のハードディスクに使用される情報記録媒体用基板おいては、高記録密度化に伴って磁気ディスク回転速度が高速化の傾向にある為に、基板表面の僅かな傷を基点とする亀裂伝播に対する耐性、すなわち破壊靭性が重要な評価項目となっており、高い破壊靭性を有することが求められている。
しかし、現在使用されているガラス基板ではその要求を満たすことは容易ではなく、破壊靱性を向上するために、基板に2次的な強化処理、例えば、長時間の化学強化工程を施すことが必要となる。
ガラスを溶融する際には、溶融ガラス中から泡を除くために清澄剤として、砒素やアンチモン成分が使用されていた。しかし、近年では、これらの成分は、人体及び環境に対して悪影響を及ぼす恐れがあるとして、使用が制限されている。
そこで、ヒ素やアンチモン成分の代替成分が清澄剤として検討されているが、他の清澄剤を使用すると、ダイレクトプレス時の衝撃によって、ガラスにリボイルが生じ、プレス後の基板内部に泡が残存するという問題があった。
また、表面硬度が高過ぎる為に研磨レートが低く、研磨加工に長時間を要し、生産性が悪く、市場の要求コストを満足することが不可能である。
さらに、この結晶化ガラスは、原ガラスを熱処理して結晶化する際に、結晶の析出が急激に発生する傾向があり、析出する結晶の結晶化度、結晶粒径の制御が非常に困難である。
また、砒素成分やアンチモン成分を実質的に使用せずとも、ダイレクトプレス時のリボイルの発生がなく、ダイレクトプレス法に適した結晶化ガラスを提供することにある。
より具体的には、本発明の構成は以下の通りである。なお、本明細書において「RAl2O4」、「R2TiO4」の表記にはこれらの固溶体を含むものとする。
結晶相としてRAl2O4、R2TiO4、(ただしRはZn、Mg、Feから選択される1種類以上)から選ばれる一種以上を含有する結晶化ガラスであって、
酸化物基準の質量%で、
SiO2 40%〜60%、
Al2O3 7%〜23%、
TiO21〜15%、
MgO 1%〜20%、
CaO 0%〜10%、
SrO 0%〜5%、
BaO 0%〜5%、
ZnO 0%〜15%、
FeO 0%〜8%、
P2O5 0%〜7%、
B2O3 0%以上8%未満、
の各成分を含有し、
(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO+FeO)/(SiO2+Al2O3)の値が0.25以下、
(ZnO+FeO)/MgOの値が0以上0.9以下、
比重が2.67以下であることを特徴とする結晶化ガラス。
(構成2)
前記結晶化ガラスは、酸化物基準の質量%で、
RO 5〜20%(ただしRはZn、Mg、Feから選択される1種類以上)
の各成分をさらに含有する構成1に記載の結晶化ガラス。
(構成3)
前記結晶化ガラスは酸化物基準の質量%で、
ZrO2 0〜10%
Li2O 0〜4%、
Na2O 0〜10%、
K2O 0〜8%、
の各成分をさらに含有する構成1または2に記載の結晶化ガラス。
(構成4)
前記結晶化ガラスは酸化物基準でAs2O3成分およびSb2O3成分、ならびにCl−、NO−、SO2−、およびF−成分を含有しないことを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成5)
構成1から4のいずれかに記載の結晶化ガラスを用いた情報記録媒体用結晶化ガラス基板。
(構成6)
前記情報記録媒体用結晶化ガラス基板の外周端面および内周端面の一方または両方に圧縮応力層が形成されている構成5に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板。
(構成7)
前記情報記録媒体用結晶化ガラス基板の二つの主表面の一方または両方に圧縮応力層が形成されており、圧縮応力層の深さが30μm未満であることを特徴とする構成5または6に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板。
(構成8)
構成5から7のいずれかに記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板を用いた情報記録媒体。
本発明の結晶化ガラスを肉眼で観察すると、結晶化前のガラス(母ガラス)と比較して、同等の可視光透過性を有し、外観において明確に違いを確認することができない程、析出結晶は微細であり、かつ結晶化度も低い。しかも、驚くべき事に、本発明の結晶化ガラスで作製した基板を、結晶化前のガラスで作製した基板と比較すると、きわめて低い比重を達成しつつ、ヤング率、破壊靭性の値は飛躍的に高くなっているのである。そして、本発明の結晶化ガラスは、研磨加工後に表面粗度Raが2Å未満の表面性状を容易に得ることができ、研磨加工における加工能率もガラス材料と遜色のないものである。
その上、成形温度に相当する2.5ポアズ近傍の温度である1250℃において原ガラスに失透が発生しない。加えて、結晶成長が極めて緩やかであることから、結晶子の析出量、および析出粒子径の制御が容易であり、量産性に優れた材料であることを見出した。
さらに、砒素成分やアンチモン成分を不使用としながらも、清澄可能かつ、ダイレクトプレス法を用いた場合に、リボイル発生を抑制し得る結晶化ガラスを提供することができる。
図1の曲線において21に示す部分はガラス転移点を示しており、温度が高温であることが分かる。この為、特許文献1の原ガラスをダイレクトプレス法によりディスク状へプレス成型する場合、プレス時のガラスの成形温度を、失透が発生しないように高い温度にしなければならない。すると、成形時のガラス粘性が著しく低下してしまうため、高い生産性(例えばサイクルタイム2秒以下)を確保しつつ、シャーカット及び、1mm以下の薄さにプレスすることは容易ではない。
また図1の曲線において、22、23、および24に示す部分は、それぞれ、第1の結晶化ピーク、第2の結晶化ピーク、および第3の結晶化ピークである。これらのピークは、急激に立ち上がっていることが特徴的である。これは、一度結晶の析出が始まると、急激に結晶が析出することを意味している。
特に、実際の情報記録媒体用基板の製造において、結晶化の熱処理工程は、トンネル式の結晶化炉の中を、耐熱性のメッシュベルトやローラーの上に載置された原ガラスが連続的に移動することによって行われる。このような結晶化炉では、温度条件の詳細な制御が難しく、例え実験室レベルの小型炉で微細な結晶粒径と低い結晶化度を達成したとしても、実際の製造工程でこれを再現することは困難である。
また、図1の曲線において、25に示す部分は降温時の吸熱、発熱が現れている。これは、ガラスが著しく失透しやすいことを意味する。よって、失透が発生したガラスの再ガラス化のために、多くの熱量と時間が必要であることを意味し、バッチチャージからガラス化までの必要熱量が多くなるため所要時間も増大するため、量産性を損なってしまう。
この効果は、本発明の結晶化ガラスを構成する各成分の含有割合を、総合的に調整することにより得やすくなり、特にB2O3成分、P2O5成分から選ばれる1種以上の成分を含有することにより、より得やすくなる。
これらを結晶相とする結晶化ガラスは、結晶がスピネル型構造を示し、優れた機械的強度を得ることができ、次世代の情報記録媒体用基板に要求される表面の平滑性と、比重、ヤング率、ビッカース硬度、および破壊靭性等の機械的強度をバランス良く得ることが可能となるのである。
同様に、前記効果を得やすくする為には、結晶相の最大粒径は30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下が最も好ましい。
「最大結晶粒径」とはTEM(透過型電子顕微鏡)により倍率100,000〜3000,000倍での任意の部位の画像を取得し、得られた画像に現われた結晶を平行な2直線で挟んだ時の最長距離の最大値とする。このときn数は30とする。
同様に、本発明の結晶化ガラスは、情報記録媒体用基板として適切な熱膨張係数が得られないので、β−石英、β−ユークリプタイト、α−クリストバライト及び、これらの固溶体は含まないことが好ましい。
したがって、情報記録媒体用基板は、高剛性でありながら低比重という一見相反する特性のバランスを取らなければならない。
近年、記録密度およびデータ転送速度を向上するために、ハードディスクの高速回転化がより進行している。従って、基板の撓みの問題はより顕著となっており、高剛性かつ低比重の要求は、従来にも増して一層高い。
また、近年においては、ハードディスクを動的な状況で使用することが増えており、このような状況下での衝撃に十分耐え得る、ヤング率、表面硬度を有する事が好ましい。
破壊靭性(K1C)はSEPB法(JIS R1607)によって得られた値を用いる。
本明細書において、結晶化ガラスを構成する各組成成分について述べるとき、特に記載が無い場合は、各成分の含有量は酸化物基準の質量%で示す。
ここで、「酸化物基準」とは、本発明の結晶化ガラスの構成成分の原料として使用される酸化物、炭酸塩等が溶融時にすべて分解され、表記された酸化物へ変化すると仮定して、結晶化ガラス中に含有される各成分の組成を表記する方法であり、この生成酸化物の質量の総和を100質量%として、結晶化ガラス中に含有される各成分の量を表記する。
なお、例えばFeの酸化物は、FeO、Fe3O4、Fe2O3がある。このように、陽イオンの価数によって、いくつかの化学式が存在する成分については、本発明書に表記されたひとつの化学式によって換算する。上記の例では、本明細書は、Feの酸化物はFeOとして換算する。
当該合計が80%を超えると、溶解性、成形性が悪化するため、当該合計の上限は80%であることが好ましい。
しかし、その含有量が20%を超えると、かえって原ガラスの比重が高くなり、所望のガラスを得にくくなるばかりか、未溶物として析出してしまうことがある。したがって、ガラスの比重を低くし、未溶物の析出を防止するため、これらの成分の含有量の上限は、20%とすることが必要であり、18%がより好ましく、15%が最も好ましい。
しかし、CaO成分が10%を超えると、結晶化ガラスの比重が高くなり、所望の結晶化ガラスを得にくくなる。したがって、この成分の含有量の上限は10%が好ましく、9%がより好ましく、7%が最も好ましい。
しかし、ZnO成分の含有量が15%を超えると、結晶化ガラスの比重が高くなる。従って、ZnO成分の含有量は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、9%以下が最も好ましい。
その条件とは、SiO2およびAl2O3成分の合計含有量(質量%)に対する、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOおよびFeO成分の合計含有量(質量%)の比の値、すなわち、(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO+FeO)/(SiO2+Al2O3)の値を0.25以下とし、かつ、MgO成分の含有量(質量%)に対するZnO成分とFeO成分の合計含有量(質量%)の比の値、すなわち、(ZnO+FeO)/MgOの値を0.9以下とすることである。
本発明者らは、これらの成分のバランスの最適化、すなわち上述の2種の比の値を共に特定の範囲とすることが、機械的強度と比重を両立させるために重要であることを見いだしたのである。
(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO+FeO)/(SiO2+Al2O3)の値は、結晶化ガラスの低比重化の為には、0.22以下がより好ましく、0.20以下が最も好ましい。
この比の値は、低いほど良いが、結晶相の析出維持及び原ガラスの粘性をダイレクトプレスに適合する範囲とするために、その下限は0.09が好ましい。
(ZnO+FeO)/MgOの値は、結晶化ガラスの低比重化の為には、0.8以下がより好ましく、0.7以下が最も好ましい。
この比の値は、低いほど良く、下限は0で良いが、所望結晶の安定析出の為には0.2が好ましく0.4が最も好ましい。
一方、RO成分の合計量が20%を超えると、ガラス化が困難となるばかりか、未溶物の析出や失透温度の上昇を招いてしまう。含有量の上限は20%が好ましく、19%がより好ましく、18%が更に好ましく、16%が最も好ましい。
しかし、この成分の添加量が15%を超えるとガラスの比重値が高くなり、ガラス化が困難になるため、含有量の上限は15%とすることが好ましく、10%がより好ましく、8%が最も好ましい。
この成分の添加量が10%を超えると、ガラス溶融時に溶け残りやZrSiO4(ジルコン)が発生しやすく、かつ、ガラス比重が高くなる。したがって、ZrO2成分の含有量の上限は10%とすることが好ましく、6%がより好ましく、3%が最も好ましい。
しかし、この成分が8%以上であると、機械的特性を満足することが困難になり、さらに所望の結晶の析出を抑制しすぎることとなる。その上、原ガラスが分相しやすくなり、ガラス化が困難になるので、含有量の上限を8%未満とすることが好ましい。より好ましい上限値は6%である。
情報記録媒体用基板は、表面へのアルカリ金属成分の溶出を制限する必要がある。このため、結晶化ガラスが含有するR’2O成分は、極力少なくすることが必要である。以上の観点から、R’2O成分の含有量の上限は10%が好ましく、9%がより好ましく、8%が更に好ましく、7%が最も好ましい。
一方、Na2O成分は、他のアルカリ金属成分と比較して、所望の結晶相を析出させるうえで、過度に結晶が析出してしまうなどの悪影響をもたらしにくい成分である。同時に、イオン交換による化学強化を施す場合は、Na2O成分を結晶化ガラスに含有させ、結晶化ガラス中のNa+イオンをK+イオンと交換することが、圧縮応力層を形成するうえで効果的である。従って、イオン交換による化学強化を施す場合、Na2O成分は、2%を超えて結晶化ガラスに含有されることが好ましく、3%以上含有されることがより好ましい。
高い清澄効果を得るためには、酸化物基準でSnO2成分、CeO2成分、または両者の合計の含有量の下限が0.01%であることが好ましく、0.1%であることがより好ましく、0.15%であることが最も好ましい。
一方、機械的強度を維持しつつ、比重を低くし、高い清澄効果を得て、かつダイレクトプレス時のリボイル抑制効果を高めるためには、SnO2成分またはCeO2成分から選択される1種以上の含有量の上限は1%が好ましく、0.7%がより好ましく、0.5%が最も好ましい。
しかし、上述の通り、本発明の結晶化ガラスは、その化学組成的な特徴により、TiO2成分によっても十分な清澄効果が得られる為、SnO2、CeO2等を清澄成分として含有させなくとも良い。CeO2成分は近年価格が高騰しており、これらの成分を含有させないことで、結晶化ガラスの製造コストを抑制する効果が得られる。
また、PbO成分は環境上有害となるうえに、ガラスの比重が大きくなってしまう為に、含まないことが好ましい。本発明のガラスはPbO成分を含まなくても結晶の過大な析出を防止し、溶融性の向上や成型時のガラス安定性が良好である。
本発明の結晶化ガラスは、化学強化により形成された、主表面の圧縮応力層の深さが30μm未満でも、十分な強度を得ることができ、15μmまでその強度をほぼ維持できる。
まず、上記の組成範囲のガラス構成成分を有する様に、酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の原料を混合し、白金や石英等の坩堝を使用した通常の溶解装置を用いて、ガラス融液の粘度が1.5〜3.0dPa・sとなる温度で溶解する。
次に、ガラス融液の温度を、粘度が1.0〜2.3dPa・s、好ましくは1.2〜2.2dPa・sとなる温度まで昇温し、ガラス融液内に泡を発生させ撹拌効果を引き起こし均質度を向上させる。
その後、ガラス融液の温度を、粘度が1.8〜2.6dPa・s、好ましくは2.0〜2.5dPa・sとなる温度まで降温し、ガラス内部に発生していた泡の消泡、清澄を行い、その後この温度を維持する。
上記の条件で作製した溶融ガラスを下型に滴下し、上下型で溶融ガラスをプレス(ダイレクトプレス)することによって、厚さ0.7mm〜1.2mm程度のディスク状に成形する。
具体的には、プレス成形型の上型の温度を300±100℃、好ましくは300±50℃、下型の温度をガラスのTg±50℃、好ましくはTg±30℃に設定する。
坩堝からプレス成型形へ溶融ガラスを導くための、ガラス流出パイプの温度を、ガラスの粘度が2.0〜2.6dPa・s、好ましくは2.1〜2.5dPa・sとなる温度に設定し、前記下型上に所定量の溶融ガラスを滴下し、上型と下型を接近させてこれをプレスし、ディスク状のガラス成形体を得る。
情報記録媒体用基板の製造においては、1枚あたりのコスト低減が求められるため、プレススピード150〜700mm/sec、サイクルタイム(プレス開始後次のプレス開始までの時間)1〜2secという高速でプレスする。このようなプレス時の衝撃においても本発明の結晶化ガラスを使用し、ガラス融液の温度と製造装置の温度を上記の様に管理することで、プレス時のリボイルの発生を抑制することが可能となる。
また、第2の温度のみで熱処理することにより、核形成工程と結晶成長工程を連続的に行っても良い。
この結晶化工程においては、ディスク状のセラミックス製セッターとディスク状ガラスを交互に積み重ね、セッターで挟み込む(セッターの枚数はガラスの枚数+1枚である)と、ディスクの平坦度を向上させることができるので好ましい。
本発明の結晶化ガラスを、所望の析出結晶の粒径、結晶化度とするために、好ましい熱処理の条件は以下の通りである。
第1の熱処理の最高温度は650℃〜750℃が好ましい。第1の熱処理を省略しても良い。第2段階の熱処理の最高温度は670℃〜850℃が好ましい。
第1の温度の保持時間は0分〜300分が好ましく、0分〜180分が最も好ましい。
第2の温度の保持時間は60分〜600分が好ましく、120分〜420分が最も好ましい。
第1の温度までの昇温速度は、10℃/分〜200℃/分が好ましい。第1の温度から第2の温度までの昇温速度は、5℃/分〜100℃/分が好ましい。第2の温度のみで熱処理する場合の昇温速度も同様である。第2の温度の保持時間を経過した後は、10℃/h〜50℃/hで降温することが好ましく、10℃/h〜30℃/hで降温することがより好ましい。
従来のガーナイトを結晶相とする結晶化ガラスは、硬度が高い為に、主表面を鏡面加工する際には、ジルコニア、アルミナ、ダイヤモンド砥粒などの硬度の高い遊離砥粒を用いる必要があり、加工時間も長時間を要していた。さらにその仕上がり面は、硬度の高い遊離砥粒を使用している為にスクラッチが生じやすく、Raで2Å以下の表面性状を得ることは非常に困難であった。
本発明の結晶化ガラス基板は、コロイダルシリカ、酸化セリウム、ジルコン(ZrSiO4)などの安価な遊離砥粒を用いて研磨することが可能であり、加工時間も短時間(30分〜90分)で済む。本発明の結晶化ガラスは、現在確立された研磨等の加工方法を用いることにより、Raで2Å以下の表面性状を得ることができる。
また、研磨加工時の残留研磨材除去のために、例えばフッ酸等の酸やアルカリで洗浄した場合においても、Raで2Å以下の表面性状を維持することができる。
その後、温度を維持したまま所定量のガラスを流出しながら、ダイレクトプレス方式により、上型の温度を300±100℃、下型の温度をTg±50℃に設定した上、ディスク状に成形して、冷却し、ガラス成形体を得た。一つの組成について100枚をプレス成型した。
得られたガラス成形体のうち数枚を、セラミックスのセッターを挟んで積み重ね、結晶化の為の熱処理を施した。
次いで、熱処理後の結晶化ガラス成形体を上述の方法で、中央部分への孔空け、外周部および内周部の端面研削、外周部および内周部の端面研磨等形状加工を施し、主表面のラッピングおよび研磨加工をし、研磨剤除去のため、フッ酸洗浄を行い、情報記録媒体用の基板を得た。
各物性の値は、複数作製したサンプルから一つを任意に抜き出して測定した値である。
表中、(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO+FeO)/(SiO2+Al2O3)の比を「比A」とし、(ZnO+FeO)/MgOの比を「比B」と表記した。
ビッカース硬度は対面角が136°のダイヤモンド四角すい圧子を用いて、試験面にピラミッド形状のくぼみをつけたときの荷重(N)を、くぼみの長さから算出した表面積(mm2)で割った値で示した。(株)明石製作所製微小硬度計MVK−Eを用い、試験荷重は4.90(N)、保持時間15(秒)で行った。
実施例3の結晶化度をリートベルト法を用いて測定したところ、13質量%であった。
(1)主表面の研削工程前の基板に強化処理を実施する場合、
(2)主表面の研削工程終了の後に強化処理を実施し、その後研磨工程を実施する場合、
(3)複数の研磨工程の間に強化処理を実施する場合
(4)全ての研磨工程後の基板に強化処理を実施する場合
等、多様な方法が考えられる。また、主表面に形成した圧縮応力層を研削工程や研磨工程で全量削除し、基板の端面部のみに圧縮応力層を形成しても良い。
実施例2の2.5インチ研磨済み情報記録媒体用基板(65φ×0.8mmt)を400℃の硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩(KNO3:NaNO3=1:3)に0.25時間浸漬し、表面に深さ3μmの圧縮応力層を形成した。この基板はリング曲げ強度が圧縮応力層形成前(470MPa)の2倍に向上していることが確認された。
なお、リング曲げ強度とは、直径が65mmで厚み0.8mmの薄い円板状試料を作成し、円形の支持リングと荷重リングにより該円板状試料の強度を測定する同心円曲げ法で測定した曲げ強度をいう。また、破壊靱性(K1C)は、2.3に向上していることが確認された。
実施例28の2.5インチ研磨済み情報記録媒体用基板(65φ×0.8mmt)を400℃の硝酸カリウム塩(KNO3)に0.5時間浸漬し、表面に深さ5μmの圧縮応力層を形成した。この基板はリング曲げ強度が圧縮応力層形成前(470MPa)の4倍に向上していることが確認された。また、破壊靱性(K1C)は、2.4に向上していることが確認された。
実施例3の2.5インチ研磨済み情報記録媒体用基板(65φ×0.8mmt)を300℃〜600℃に加熱した後に空冷法で急速冷却を実施し、表面に圧縮応力層を形成した。この基板はリング曲げ強度、破壊靱性(K1C)が向上していることが確認された。
実施例3の熱処理後のガラス成形体を順次加工し、第1段目の研磨終了後に530℃の硝酸カリウム塩(KNO3)に1時間浸漬し、表面に圧縮応力層を形成した。その後、pH10のアルカリ水溶液で洗浄し、第2段目の研磨を施し情報記録媒体用基板を作製した。研磨工程終了後の圧縮応力層をガラス表面応力計で測定したところ、圧縮応力層の深さは8μm、圧縮応力値は320MPaであった。この基板はリング曲げ強度が圧縮応力層を形成しない場合(480MPa)の3〜5倍に向上していることが確認された。破壊靱性(K1C)は、2.4に向上していることが確認された。
実施例2の熱処理後のガラス成形体を順次加工し、主表面の研削工程終了後に570℃の硝酸カリウム塩(KNO3)に2時間浸漬し、表面に圧縮応力層を形成した。その後、pH10のアルカリ水溶液で洗浄し、第1段目及び第2段目の研磨を施し情報記録媒体用基板を作製した。研磨工程終了後の圧縮応力層をガラス表面応力計で測定したところ、圧縮応力層の深さは5μm、圧縮応力値は110Mpaであった。この基板はリング曲げ強度が圧縮応力層形成前(470MPa)の2倍に向上していることが確認された。また、破壊靱性(K1C)は、1.9であることが確認された。
実施例2の熱処理後のガラス成形体を加工し、中央部分への孔空け、外周部および内周部の端面研削、内外周の端面研磨を行った。これを500℃の硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩(KNO3:NaNO3=1:1)に0.17時間浸漬し、表面に圧縮応力層を形成した。その後、主表面の研削工程、研磨加工を順次施した。研磨工程終了後は主表面の圧縮応力層は無くなり、外周及び内周の端面のみ圧縮応力層が残存していた。この基板はリング曲げ強度が圧縮応力層形成前(470MPa)の2倍に向上していることが確認された。また、破壊靱性(K1C)は、2.0であることが確認された。
また、上記の実施例により得られた基板に、DCスパッタ法により、クロム合金下地層、コバルト合金磁性層を成膜し、さらにダイヤモンドライクカーボン層を形成し、次いでパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を塗布して、情報磁気記録媒体を得た。
Claims (8)
- 結晶相としてRAl2O4、R2TiO4、(ただしRはZn、Mg、Feから選択される1種類以上)から選ばれる一種以上を含有する結晶化ガラスであって、
酸化物基準の質量%で、
SiO2 40%〜60%、
Al2O3 7%〜23%、
TiO21〜15%、
MgO 1%〜20%、
CaO 0%〜10%、
SrO 0%〜5%、
BaO 0%〜5%、
ZnO 0%〜15%、
FeO 0%〜8%、
P2O5 0%〜7%、
B2O3 0%以上8%未満、
の各成分を含有し、
(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO+FeO)/(SiO2+Al2O3)の値が0.25以下、
(ZnO+FeO)/MgOの値が0以上0.9以下、
比重が2.67以下であることを特徴とする結晶化ガラス。 - 前記結晶化ガラスは、酸化物基準の質量%で、
RO 5〜20%(ただしRはZn、Mg、Feから選択される1種類以上)
の各成分をさらに含有する請求項1に記載の結晶化ガラス。 - 前記結晶化ガラスは酸化物基準の質量%で、
ZrO2 0〜10%
Li2O 0〜4%、
Na2O 0〜10%、
K2O 0〜8%、
の各成分をさらに含有する請求項1または2に記載の結晶化ガラス。 - 前記結晶化ガラスは酸化物基準でAs2O3成分およびSb2O3成分、ならびにCl−、NO−、SO2−、およびF−成分を含有しないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の結晶化ガラス。
- 請求項1から4のいずれかに記載の結晶化ガラスを用いた情報記録媒体用結晶化ガラス基板。
- 前記情報記録媒体用結晶化ガラス基板の外周端面および内周端面の一方または両方に圧縮応力層が形成されている請求項5に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板。
- 前記情報記録媒体用結晶化ガラス基板の二つの主表面の一方または両方に圧縮応力層が形成されており、圧縮応力層の深さが30μm未満であることを特徴とする請求項5または6に記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板。
- 請求項5から7のいずれかに記載の情報記録媒体用結晶化ガラス基板を用いた情報記録媒体。
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