JP5822778B2 - スラグにおける六価クロムの溶出抑制方法及びスラグ - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、スラグ中の全クロムの80質量%以上がMgO・Cr2O3として存在し、2CaO・SiO2含有量がスラグ質量に対して3質量%未満とする鉄鋼精錬スラグが開示されている。
すなわち、本発明に係るスラグにおける六価クロムの溶出抑制方法は、Crを含有するスラグから六価クロムが溶出することを抑制する方法であって、前記スラグに含有される総Crのうち、50〜80質量%のCrをMgO・Cr2O3又はMnO・Cr2O3で存在させ、3質量%以上のCrを当該Crを含む鉱物相の形でM.Fe内に含有させ、残りのCrを(Mg,Fe)SiO 4 又はCaMgFeSiOの鉱物相の形として存在させることを特徴とする。
また、本発明に係るスラグは、Crを含有するスラグにおいて、前記スラグに含有される総Crのうち、50〜80質量%のCrがMgO・Cr2O3又はMnO・Cr2O3で存在し、3質量%以上のCrが当該Crを含む鉱物相の形でM.Fe内に含有されていて、残りのCrが(Mg,Fe)SiO 4 又はCaMgFeSiOの鉱物相の形として存在していることを特徴とする。
.Fe内に含有されているとよい。
なお、以下の説明において、溶銑や溶鋼のことを溶湯と表現し説明を行う。また、図面において、三価クロムをCr(III)とし、六価クロムをCr(VI)と表現することもある。
図1に示すように、電気炉1は、内部に投入した冷鉄源等を溶解すると共に、溶解した冷鉄源等や外部から直接装入された溶湯2を精錬するものであって、溶湯2を精錬する容器本体3と、この容器本体3を覆う蓋体4とを備えている。
斯かる構成の電気炉1では、まず、容器本体3に冷鉄源(例えばクロムを含むスクラップ)などの主原料と副原料等を投入する。なお、投入のタイミングは同時でも、副原料を後投入でも問題はない。そして、電極8によるアーク放電によって、冷鉄源及び副原料を加熱溶解して溶融状態とし、その溶湯2に対してランス7により酸素を吹き込むことにより、精錬処理(脱炭処理)を行い、ステンレス鋼を製造する。
ある。なお、脱硫処理においては、ある程度の塩基度を確保する必要があることから、SiO2の濃度を40質量%以下にする必要がある。
Al2O3は、スラグの融点を下げる効果があるため、造サイ材としてAl2O3源を添加することもある。なお、電気炉1にて精錬を行った場合、Al2O3濃度は1〜10質量%である。
Cr2O3は、精錬上の機能は有しておらず、溶湯中のCrが酸化されることにより、スラグ中に含有されることになる。Cr2O3濃度は主に溶湯(溶鋼)とのCr分配やスクラップ中のCr成分に依存するが、ステンレス鋼を製造するために7質量%を超えている。
また、スラグ中には、上述した組成の他に、TiO2、V2O5、S、P2O5、F、f−CaOなどが含まれるが、これらの合計は、10質量%以下である。
本発明では、再利用するスラグの組成は、精錬処理後に排サイしたスラグ自体の組成であっても、改質処理を行った後の組成であってもよい。即ち、精錬後のスラグをそのまま再利用する場合は、精錬処理後(電気炉から排サイ後)の成分(組成)が上述した成分になるように精錬時にスラグの成分調整を行う。
図2に示すように、具体的には、スラグ(ステンレススラグ)に含有される全てのCrを100%としたとき、全Crのうち、50〜80質量%のCrをMgO・Cr2O3又はMnO・Cr2O3の形で存在させるようにしている。ステンレススラグにおいて、スラグ中の鉱物相は、MgO・Cr2O3であり、MgとMnが置換したMnO・Cr2O3として存在することもある。
することができれば、最終的には六価クロムの溶出を抑制することができる。そこで、発明者らは、ステンレススラグに含有される物質で還元剤として作用する成分について検討を行ったところ、M.Feが有効であることを知見した。
図4に示すように、「G−1−A」は、MgO・Cr2O3を含む鉱物相(Mg・Mn鉱物相)を示しており、このMg・Mn鉱物相に含まれるCrは、総Crに対して76.6%である。また、「G−1−B」は、Crを含むM.Feの鉱物相(M.Fe鉱物相)であり、このM.Fe鉱物相に含まれるCrは、総Crに対して14.2%である。さらに、「G−1−C」及び「G−1−D」は、単一の三価クロム酸化物ではない鉱物相(非Cr2O3)であり、この相に含まれるCrは、総Crに対して9.2%である。
上述したように、総Crのうち、Mg・Mn鉱物相に含まれるCrを50〜80質量%とし、M.Fe鉱物相に含まれるCrを3質量%以上とし、残りの部分に含まれるCrを非Cr2O3とするためには、電気炉等から排サイした溶融スラグを冷却するときに、様々な工夫を行う。
或いは、非酸化性雰囲気化で冷却すれば、同様に、酸化されるスラグ中のFe成分が少なくなる。一方で、還元雰囲気化で冷却すれば、FeOがM.Feになることが助長されるためよい。スラグの冷却時において雰囲気制御が難しい場合は、スラグの周りの酸素濃度が低い環境で冷却するのもよい。さらに、スラグを冷却する容器に蓋をするなどしてスラグと大気との遮断を行ってFeの酸化を防止してもよい。また、大気冷却を行う場合などは、Feよりも酸化しやすい成分(Si、Ti、Al、Mg)を脱酸剤としてスラグに添加してもよい。このようにすれば、FeO分の脱酸(M.Fe化)が期待できる。加えて、Cr2O3含有鉱物相の酸化防止も期待できる。
調整を行いながら冷却を行ったり、排サイ後に成分調整が必要でない場合は、排サイ後のスラグを成分調整を行わずに冷却を行った。
スラグ中の総Cr(全Cr)は式(1)により求めた。また、M.Fe中のCr量は、式(2)に示すように、スラグ中のM.Fe量にM.Fe中のCr濃度を乗ずることにより求めた。M.Fe中のCr濃度は、SEM(電子顕微鏡)で500倍に拡大して、M.Feの部分のCr濃度をEDX(エネルギー分散型X線分光法)で分析した。例えば、5点の検体について分析を行い、その平均値をM.Fe中のCr濃度とした。M.Fe中のCrの割合は、式(3)により求めた。
また、実施例32及び33では、「M.Fe中のCr割合」の欄に示すように、スラグ中に含有される総Crのうち、3〜5質量%がM.Feに含有されているため、六価クロムの溶出量を0.50mg/L以下にすることができ、少なくとも環告14号を満たすことができる。
一方で、比較例1〜6は実験的に溶融スラグをサンプリングし、大気雰囲気化で徐冷した。これらのスラグでは、本発明に規定した条件を満たしていないため、六価クロムの溶出量が0.5mg/Lを超えてしまうことになった。
2 溶湯
3 容器本体
4 蓋体
5 排サイ口
6 出鋼口
7 ランス
8 電極
Claims (4)
- Crを含有するスラグから六価クロムが溶出することを抑制する方法であって、
前記スラグに含有される総Crのうち、50〜80質量%のCrをMgO・Cr2O3又はMnO・Cr2O3で存在させ、3質量%以上のCrを当該Crを含む鉱物相の形でM.Fe内に含有させ、残りのCrを(Mg,Fe)SiO 4 又はCaMgFeSiOの鉱物相の形として存在させることを特徴とするスラグにおける六価クロムの溶出抑制方法。 - 前記総Crのうち、5質量%以上のCrを当該Crを含む鉱物相の形でM.Fe内に含有させることを特徴とする請求項1に記載のスラグにおける六価クロムの溶出抑制方法。
- Crを含有するスラグにおいて、
前記スラグに含有される総Crのうち、50〜80質量%のCrがMgO・Cr2O3又はMnO・Cr2O3で存在し、3質量%以上のCrが当該Crを含む鉱物相の形でM.Fe内に含有されていて、残りのCrが(Mg,Fe)SiO 4 又はCaMgFeSiOの鉱物相の形として存在していることを特徴とするスラグ。 - 前記総Crのうち、5質量%以上のCrが当該Crを含む鉱物相の形でM.Fe内に含有されていることを特徴とする請求項3に記載のスラグ。
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