JP7377763B2 - 電気炉製鋼法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属アルミニウムを用いて含クロム鋼を精錬する電気炉製鋼法に関するものである。
近年、電気炉でステンレス鋼などを精錬する場合において、溶解時の電気エネルギーを削減する為に、Siを昇温剤として炉内に装入して、Siの酸化熱を利用することが一般的に行われている (例えば、特許文献1参照)。このSiは、製鋼時に脱酸素材としても用いられるものであり、一般的にはFeSiやSiMnなどの合金鉄の形で利用されている。ただ、合金鉄は電気炉などの高温プロセスを経て製造されるため、省エネルギー・省資源化の観点から大量使用は望ましくない。そのため、FeSiやSiMn等の合金鉄に代わって、JIS G2402で規定される「鉄鋼用アルミドロス」を、昇温剤・脱酸素剤として用いることが検討されている。
このアルミドロスは、アルミニウム又はアルミニウム合金の溶解時に、溶湯の表面に浮かぶ残留物及び炉底の残留物を指し、アルミドロス又は単にドロスと略して呼ぶ場合もある。アルミドロスは、金属アルミニウムに富み、冷却後は粒状、粉状及び塊状となることが知られている。
また、脱酸素材として用いられる「鉄鋼用アルミドロス」は、上述したアルミニウムドロスに粉砕、分級、粒度調整などの加工を加え、更にこれら数種類を配合することで成分を調整した混合物を指している。なお、配合した後で不足成分がある場合には、上述したアルミニウムドロスに、金属アルミニウム、酸化アルミニウム、その他の有効成分などを添加して成分調整を行ったものも「鉄鋼用アルミドロス」に含まれる。さらに、アルミドロスから金属アルミを回収し終わったものはドロス残灰と呼ばれ、鉄鋼用アルミドロスとは別の物質として扱われることが多い。ただ、本明細書では、ドロス残灰が金属アルミニウムを含む場合には、昇温材や脱酸素材としての利用も期待できることから、本明細書では「鉄鋼用アルミドロス」と扱うものとする。
ところで、含クロム鋼の溶製時に、合金鉄に代えて金属アルミニウムを含むものを昇温剤や脱酸素剤として利用する方法としては、例えば特許文献1の製鋼法が知られている。
すなわち、特許文献1の製鋼法は、溶製時に生成するスラグ組成をCaO:20~40wt%、SiO2:25~45wt%、Al2O3:10~20wt%、CaO/SiO2=0.6~1.1に調整し、かつ溶鋼温度は1550~1700℃に調整して、蛍石使用時と同等のスラグ融点、粘度及び排滓性を維持するものとなっている。
特許第3636693号公報
特許文献1の方法では、スラグのAl2O3の濃度は10~20wt%とされており、金属アルミニウムの使用量はそれほど多いものではない。つまり、造滓材にかかる費用を下げて精錬工程の更なるコストダウンを行うためには、金属アルミニウムを大量に使用すること、即ち、Al2O3の濃度が20wt%を超えるような添加量まで金属アルミニウムを増量することが好ましい。
しかし、スラグのAl2O3の配合量が20wt%を超えるまで金属アルミニウムを増量すると、スラグの粘性が高くなりすぎたり、溶解ができなくなったりして、スラグの排滓が困難になる可能性がある。つまり、金属アルミニウムの増量は、コストダウンには有効であるが、排滓性の面では問題を招く虞がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、スラグの排滓性を良好に維持しつつ、金属アルミニウムを増量することで、作業性などを損なうことなく費用を低減できる電気炉製鋼法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の電気炉製鋼法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の電気炉製鋼法は、含クロム鋼を電気炉で精錬するに際し、溶解期に石灰、含クロムスラグ、含クロムダスト、または金属シリコン含有物のうち、一種または二種以上を有する造滓材を添加すると共に、生成するスラグ組成のAl2O3の総量が20wt%を超えるように金属アルミニウム含有物を添加し、前記生成するスラグの組成の間に、0.25≦ CaO/SiO2≦1.24、0.50≦(CaO+SiO2)/(MgO+MnO+Al2O3+Cr2O3)なる関係が成立し、かつ、溶鋼温度を1550℃以上に調整することを特徴とする。
なお、好ましくは、前記金属アルミニウム含有物が、アルミドロス、アルミ灰、アルミニウムくず、アルミニウム合金くず、アルミニウム含有鉄屑、金属アルミニウムと酸化アルミニウムの混合物、金属アルミニウムと酸化アルミニウムを含むブリケット、および金属アルミニウムと酸化アルミニウムを含む造粒物のいずれか1種または2種以上を有しているとよい。
本発明の電気炉製鋼法によれば、スラグの排滓性を良好に維持しつつ、金属アルミニウムを増量することで、作業性などを損なうことなく費用を低減できる。
塩基度と、液相/固相の比を示すパラメータとの関係を実験例1~10についてまとめた図である。
以下、本発明に係る電気炉製鋼法の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態の電気炉製鋼法は、含クロム鋼を電気炉で精錬するに際し、原料の溶解前または原料が溶解した溶解期、あるいは溶解後に造滓材と金属アルミニウム含有物とを添加し、さらに溶鋼温度を1550℃以上に調整しつつ、含クロム鋼の精錬を行うものとなっている。
なお、造滓材には、石灰、含クロムスラグ、含クロムダスト、金属シリコン含有物から選ばれる一種または二種以上が含まれるものが用いられる。また、金属アルミニウム含有物は、生成するスラグ組成のAl2O3が、生成するスラグの重量に対する重量濃度で20wt%を超えるように添加される。さらに、上述した造滓材及び金属アルミニウム含有物は、生成するスラグの組成が以下の式(1)及び式(2)を満足するように添加する必要がある。
0.25 ≦ CaO/SiO2≦1.24 ・・・(1)
0.50 ≦ (CaO+SiO2)/(MgO+MnO+Al2O3+Cr2O3) ・・・(2)
なお、式(1)及び式(2)中のCaO、SiO2、MgO、MnO、Al2O3、Cr2O3は、生成するスラグ組成中の各酸化物の濃度を、生成するスラグの重量に対する重量濃度で示したものとなっている。
以下、本発明の電気炉製鋼法について、詳しく説明する。
本発明の電気炉製鋼法で精錬される含クロム鋼は、いわゆるステンレスを含むクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケル鋼などのようにクロムを含む鋼種である。これらの含クロム鋼は、スクラップなどの原料を電気炉で溶解し、鋼種に対応した組成となるように精錬される。なお、この原料が溶解させた後、言い換えれば原料の溶解期に、上述した造滓材と金属アルミニウム含有物とが添加される。
造滓材は、石灰、含クロムスラグ、含クロムダスト、金属シリコン含有物から選ばれる一種または二種以上を含んでいる。つまり、造滓材は、溶解した原料中にスラグを形成する石灰や金属シリコン含有物、クロムを補充したりして精錬を安定して促進させる含クロムスラグや含クロムダストを含んでいる。
金属アルミニウム含有物は、Cr2O3を還元してCr(金属Cr)を溶鋼中に戻すための還元剤や昇温剤として添加されるものである。この金属アルミニウム含有物には、アルミドロス、アルミ灰、アルミニウムくず、アルミニウム合金くず、アルミニウム含有鉄屑、金属アルミニウムと酸化アルミニウムの混合物、金属アルミニウムと酸化アルミニウムを含む
ブリケット、及び金属アルミニウムと酸化アルミニウムを含む造粒物から選ばれる1種または2種以上を有するものが好適に用いられる。つまり、金属アルミニウム含有物は、含有される金属アルミニウムにより酸化クロムを還元することで、金属クロムを回収(精錬)するために添加される。
例えば、ステンレス鋼など含クロム鋼の精錬に金属アルミニウム含有物を還元剤として用いると、金属アルミニウムがCr2O3を還元し、金属アルミニウム自体はAl2O3に酸化され、スラグ中のAl2O3濃度が増加する。ここで、スラグ中にCaOやSiO2を生成させる副原料、例えばFeSiやSiMnなどの添加を抑制し、金属アルミニウム含有物の添加量を増量(増加)させると、高価な副原料が減るためコスト低減、省エネ、省資源効果を発揮することができる。
つまり、本発明の電気炉製鋼法では、コスト低減、省エネ、省資源効果を発揮させるために、スラグ中のAl2O3の総量が20wt%を超えるように、金属アルミニウム含有物を増量するものとなっている。
また、本発明の電気炉製鋼法で精錬を行う際に、鋼を溶融させるためには溶融温度を1550℃以上にする必要がある。なお、この溶融温度については、好ましくは1550℃より高温で、更に好ましくは1600℃おり高温で、1800℃より低い温度にするのが良い。
上述したように、スラグ中にCaOやSiO2を生成させる従来の副原料に代えて金属アルミニウム含有物を添加する場合、スラグ中のAl2O3が20wt%を超えるように金属アルミニウム含有物を多量添加する条件では、上述した従来の副原料を用いた場合よりもコスト低減などが可能になる。
ただ、コスト低減が可能になったとしても、生成したスラグを排滓できなければ、精錬方法としては不十分である。この点、スラグ中のAl2O3が20wt%を超えるまで金属アルミニウム含有物を多量添加すると、低融点の共晶部が減少してスラグの流動性を悪化させることが懸念される。
そこで、本発明の電気炉製鋼法では、生成したスラグを確実に排滓するために、精製されるスラグの組成制御を行っている。具体的には、このスラグの組成制御とは、「上述した溶融温度で生成したスラグが溶解していること」という条件と、「生成したスラグが十分排滓可能な粘度となっていること」という条件とを双方満足させる組成にスラグを制御することをいう。
以降では、上述したスラグの組成制御のための2つの条件について説明する。
生成したスラグを十分に排滓可能な粘度にするためには、上述した溶解温度でCaO-SiO2系の化合物が低融点領域となる組成制御が不可欠である。つまり、スラグと接触する溶鋼温度は後述のとおり1550℃以上とする必要があり、その場合でもデレッキやスラグドラッガーなどのスラグ掻き出し手段で排滓が可能となるように、上述した塩基度(CaO/SiO2)を、式(1)のような組成にスラグを制御することが必要となる。
0.25≦CaO/SiO2≦1.20 ・・・(1)
なお、出願人は、塩基度(CaO/SiO2)が0.25≦CaO/SiO2≦1.20の組成範囲を満たせば、スラグの排滓が可能となる点を、状態図と実験との双方で実際に確認している。
また、上述した塩基度(CaO/SiO2)が下がると(小さくなると)、排滓は可能となるものの、粘度が小さくなりすぎて排滓に要する時間がかえって増加する。そのため、塩基度の下限は、0.25以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは(最も好ましくは)0.60以上とするのが良い。
さらに、塩基度(CaO/SiO2)が増加すると、排滓に要する時間は低下するものの、CaOの使用量が増加するため、スラグ発生量や精錬コストがかえって増大する。そのため、塩基度(CaO/SiO2)の上限は、1.24以下、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.15以下、さらに好ましくは1.10以下とするのが良い。
上述したステンレス鋼などの含クロム鋼の精錬で生じるスラグには、大別してCaO-SiO2系の化合物と、MgO-Al2O3-Cr2O3系の化合物があることがわかっている。ここで、スラグ中にはMnOも存在するが、MnOは一般にMgO-Al2O3-Cr2O3系の化合物に固溶する形をとる。そのため、MnOは、MgO-Al2O3-Cr2O3系の化合物と同一に扱うことができる。
次に、これらの化合物の溶解性に関して状態図を用いて検討する。状態図を検討した結果、CaO-SiO2系の化合物は特定の組成範囲で液相が存在し、1600℃以下の低融点でも溶解が可能であることがわかった。これに対して、MgO-Al2O3-Cr2O3系の化合物は、どのような組成範囲でも固相となっており、組成状態を変化させても溶解できないことがわかった。つまり、MgO-Al2O3-Cr2O3系の化合物は組成範囲の全域で固相であり、1600℃以下の低融点では溶融できない。
次に、上述した溶解温度で固相のMgO-Al2O3-Cr2O3系の化合物と、液相のCaO-SiO2系の化合物とが、どの程度の存在比でスラグ中に含まれている場合に(液相をどの程度まで増やせば)、スラグ自体が溶解可能となるかという点について、出願人は検討した。
その結果、MgO-Al2O3-Cr2O3系の化合物に対するCaO-SiO2系の化合物の濃度比が0.50以上となった場合に、スラグが溶解することがわかった。
なお、上述したように、MnOは、MgO-Al2O3-Cr2O3系の化合物に固溶しているため、MgO-Al2O3-Cr2O3系の状態図におけるMgOと同等のものとして取り扱うことができる。
以上のことから導かれる関係が、以下の式(2)である。
(CaO+SiO2)/(MgO+MnO+Al2O3+Cr2O3) ≧0.50 ・・・(2)
ここで、上述した式(2)の左辺に記載された液相/固相の比(液相率)は、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上とされるのが良い。また、液相/固相の比(液相率)は、高くしても溶解量が増加して、より排滓しやすくなるため、式(2)では特に上限値を規定していない。しかし、液相/固相の比を大きくしすぎると、スラグ発生量が増加し、更には精錬コストも増大するため、作業性は良好となってもコスト全体からすると好ましくない。このことから、上述した式(2)の左辺に記載された液相/固相の比(液相率)の上限は、好ましくは1.80以下、より好ましくは1.70以下、さらに好ましくは1.30以下、最も好ましくは1.0以下とするのがよい。
上述した結果から、「CaO/SiO2」や「(CaO+SiO2)/(MgO+MnO+Al2O3+Cr2O3) 」の値が式(1)や式(2)の関係を満足するように、金属アルミニウム含有物を含クロム鋼に造滓材と一緒に添加して、1550℃以上の溶鋼温度で精錬することで、スラグの組成を最適化して良好な排滓性を維持しつつ、金属アルミニウムを20wt%以上に増量することができ、スラグの排滓性向上と造滓材にかかる費用の低減とを両立することができると判断される。
次に、実施例および比較例を用いて、本発明の電気炉精錬法が有する作用効果について詳しく説明する。
実施例および比較例のための実験は、「実験例1」~「実験例10」の10水準で行った。「実験例1」~「実験例10」のうち、「実験例5」、「実験例6」、及び「実験例10」が比較例に相当し、残りの「実験例1」~「実験例4」、及び「実験例7」~「実験例9」が実施例に相当している。
また、「実験例1」~「実験例10」は、以下に示す(実験方法1)~(実験方法3)のいずれかに従って実験(評価)を行ったものである。具体的には、「実験例1」~「実験例6」は実験方法1に従って実験を行っており、「実験例7」~「実験例9」は実験方法2に従って実験を行っている。また、「実験例10」は、実験方法3に従って実験を行ったものである。
上述した(実験方法1)は、電気炉内で脱炭された含クロム鋼の溶鋼に、金属アルミニウム含有物としてアルミドロスを脱酸材として添加して、精錬(脱酸)を行ったものである。なお、この溶鋼は、電気炉において装入された含クロム鋼のスクラップを溶解し、石灰などの造滓材を炉内に投入した後、酸素吹錬により脱炭処理を行ったものである。
また、脱酸材が添加された溶鋼は、電気炉内で通電により溶解されて、脱酸作業(精錬作業)に供される。この脱酸作業(精錬作業)の際の溶鋼は、溶鋼温度を1600℃以上としている。そして、溶解の後、先端に薪をつけたデレッキ(スラグ掻き出し手段)を用いてスラグを除去する排滓作業が行われ、排滓作業で採取されたスラグに対して後述する定量分析を行った。スラグの定量分析は、スラグを粉砕してブリケット状態として、蛍光X線
回折装置(株式会社リガク、「Supermini2000」)で、CaO、SiO2、Al2O3、MgO、MnO、Cr2O3の定量分析を行っている。
(実験方法2)は、上述した(実験方法1)と同様にして得られたスラグを、ICP(発光分光分析法)を用いて定量分析したものである。
具体的には、(実験方法2)は、電気炉にてスクラップを溶解し、石灰などの造滓材を炉内に投入した後、酸素吹錬により脱炭処理を行った溶鋼に、金属アルミニウム含有物としてアルミニドロスを脱酸材として投入し、通電後、取鍋へ出鋼した。また出鋼後には、取鍋を傾け、先端に薪をつけたデレッキを用いてスラグを除去する排滓作業においてスラグを採取し、スラグの定量分析をICPで行ったものである。なお、(実験方法2)の作業における溶鋼温度も1600℃以上となっている。
(実験方法2)においてスラグに対して行われる定量分析は、金属酸化物の種類に応じてやり方を設定している。具体的には、酸化カルシウム(CaO)の含有量の定量分析については、JIS M8221(1997)「鉄鉱石-カルシウム定量方法」に従った。また、酸化ケイ素(SiO2)の含有量、酸化アルミニウム(Al2O3)の含有量、酸化マグネシウム(MgO)の含有量、酸化マンガン(MnO)の含有量の定量分析については、JIS M8206(2014)「鉄鉱石-ICP発行分光分析方法」に従った。さらに、三酸化二クロム(Cr2O3)の含有量の定量分析については、JIS M8206(2014)「鉄鉱石-ICP発行分光分析方法」のうち、JISの手順のうち、「3用語及び定義」~「5要旨」、「7装置」~「14.1最終結果の計算」まではそのまま引用し、「6試薬」については、この項目に記載された原液及び標準液に代えて、市販のクロム標準液(1000ppm)を使用することで、この項目を引用しつつ、分析を行った。また、「14.2酸化物含有率の算出」については、この項目に記載された換算係数に代えて、クロム(Cr)から三酸化二クロム(Cr2O3)への換算係数として「1.4615」を用いている。
上述した(実験方法1)及び(実験方法2)については、いずれも「排滓性評価」も行っている。
つまり、排滓作業ができないほどスラグが硬化し、出鋼後の電気炉内にスラグを残して次チャージの操業を実施せざるを得なかったものについては、排滓困難として「排滓性評価」の結果を×とした。一方、排滓でき、出鋼後の電気炉内にスラグを残さず次チャージの操業を実施できたものについては、排滓性良しとして「排滓性評価」の結果を〇とした。
さらに、(実験方法3)は、スラグの組成がCaO:13.5wt%、SiO2:18.2wt%、Al2O3:21.8wt%、MgO:23.0wt%、MnO:9.2wt%、Cr2O3:14.3wt%となるように、市販の試薬を混合し、混合した試薬を白金坩堝に25g入れ、試薬が入れられた白金坩堝を電気炉に装入し、1650℃に昇温して10分間保持したものである。このようにして1650℃に保持された試薬を、鉄板上に排滓して、排滓性を評価した。
この(実験方法3)の「排滓性評価」は、大気雰囲気中で鉄板上に白金坩堝から排滓を行う際に、鉄板上に排滓できなかったものを排滓困難として「排滓性評価」の結果を×とした。また、鉄板上に排滓できたものを排滓可能として「排滓性評価」の結果を○とした。
なお、混合に用いる試薬は、CaO:富士フイルム和光純薬製(純度:試薬特級)、SiO2:富士フイルム和光純薬製(純度:試薬特級)、MgO:富士フイルム和光純薬製(純度:試薬特級)、Al2O3:富士フイルム和光純薬製(純度:試薬特級)、Cr2O3:富士フイルム和光純薬製(純度:試薬1級)、MnO:高純度化学研究所製(純度:99.9%)である。
なお、(実験方法1)~(実験方法3)は、いずれもスラグ組成とスラグの流動性の関係を評価しており、実験方法の差によって、これらの関係および発明の効果は異ならない。
上述した「実験例1」~「実験例10」の結果を、表1に示す。
Figure 0007377763000001
「実験例1」~「実験例4」、及び「実験例7」~「実験例9」を見ると、「CaO/SiO2」の値が0.66~1.11の場合に、「排滓性評価」の結果は○となっている。しかし、「実験例5」、「実験例6」、及び「実験例10」を見ると、「CaO/SiO2」の値が1.25、1.53の場合に、「排滓性評価」の結果は×となっている。このことから、「CaO/SiO2」の値を1.24以下、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.15以下、さらに好ましくは1.10以下とした場合に、排滓性を良好にできることがわかる。
また、「実験例1」~「実験例4」、及び「実験例7」~「実験例9」を見ると、式(2)の左辺に示された「(CaO+SiO2)/(MgO+MnO+Al2O3+Cr2O3) 」というパラメータ(液相率のパラメータ)は、0.52~0.81となっており、「排滓性評価」の結果は○となっている。しかし、「実験例6」や「実験例10」を見ると、「(CaO+SiO2)/(MgO+MnO+Al2O3+Cr2O3) 」のパラメータは、0.47や0.46となっており、「排滓性評価」の結果は×となっている。このことから、「(CaO+SiO2)/(MgO+MnO+Al2O3+Cr2O3)」の値を0.50以上、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上とした場合に、排滓性を良好にできることがわかる。
以上の結果から、横軸に「CaO/SiO2」の値、縦軸に「(CaO+SiO2)/(MgO+MnO+Al2O3+Cr2O3) 」の値をとった図1において、図中に「好適範囲」として示される領域(太い実線で囲まれた範囲)に「CaO/SiO2」や「(CaO+SiO2)/(MgO+MnO+Al2O3+Cr2O3) 」の値が含まれるような組成のスラグが得られるように、金属アルミニウム含有物を含クロム鋼に造滓材と一緒に添加し、1550℃以上の溶鋼温度で精錬することで、スラグの組成を最適化して良好な排滓性を維持しつつ、金属アルミニウムを20wt%以上に増量することができ、スラグの排滓性向上と造滓材にかかる費用の低減とを両立することができると判断される。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。

Claims (2)

  1. 含クロム鋼を電気炉で精錬するに際し、溶解期に石灰、含クロムスラグ、含クロムダスト、または金属シリコン含有物のうち、一種または二種以上を有する造滓材を添加すると共に、生成するスラグ組成のAl2O3の総量が20wt%を超えるように金属アルミニウム含有物を添加し、
    前記生成するスラグの組成間に、
    0.25 ≦ CaO / SiO2 ≦1.24
    0.50 ≦ (CaO+SiO2)/(MgO+MnO+Al2O3+Cr2O3)
    なる関係が成立し、かつ、溶鋼温度を1550℃以上に調整する
    ことを特徴とする電気炉製鋼法。
  2. 前記金属アルミニウム含有物が、アルミドロス、アルミ灰、アルミニウムくず、アルミニウム合金くず、アルミニウム含有鉄屑、金属アルミニウムと酸化アルミニウムの混合物、金属アルミニウムと酸化アルミニウムを含むブリケット、および金属アルミニウムと酸化アルミニウムを含む造粒物のいずれか1種または2種以上を有している
    ことを特徴とする請求項1に記載の電気炉製鋼法。
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