JP5821801B2 - 硫化物固体電解質材料の製造方法および固体電池の製造方法 - Google Patents
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その中で、従来用いられてきた非水電解液系のリチウム電池に比べて電解液を用いないため、非水電解液を用いる場合の安全性向上のために必要なシステムを簡略化し得て構造の自由度が増し補器の数を減らすことができる等の多くの利点を有し得ることから、固体電池の実用化が期待されている。
この固体電池の高容量・高出力を実現し得る技術の1つとして、硫化物固体電解質材料が提案された。
しかし、硫化物固体電解質材料の代表例であるLi2S−P2S5は、リチウムイオン伝導性および耐水性が十分ではなく、さらなる改良が求められている。
従って、本発明の目的は、Liイオン伝導性と耐水性とを兼ね備えた硫化物固体電解質材料の製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、Liイオン伝導性と耐水性とを兼ね備えた硫化物固体電解質材料の製造方法の工程を有する固体電池の製造方法を提供することである。
yLiI・(100−y)[(75−x)Li2S・xLi2O・25P2S5)]
(式中、xおよびyはモル%を示し、4≧x≧2、45≧y>0を満足する。)
で示される組成を有し結晶化されてなる硫化物固体電解質材料の製造方法であって、ガラスセラミック状の材料を90〜300℃の温度で10分間以上、2時間以下の時間で熱処理して結晶化する、前記方法に関する。
yLiI・(100−y)[(75−x)Li2S・xLi2O・25P2S5)]
(式中、xおよびyはモル%を示し、4≧x≧2、45≧y>0を満足する。)
で示される組成を有し結晶化されてなる硫化物固体電解質材料を製造する工程であって、ガラスセラミック状の材料を90〜300℃の温度で10分間以上、2時間以下の時間で熱処理して結晶化する、前記工程、および
前記工程で得られた硫化物固体電解質材料を用いて固体電池を作製する工程
を含む、固体電池の製造方法に関する。
本明細書において、硫化物固体電解質材料の耐水性は後述の実施例の欄に詳述する測定法によって求められる硫化水素発生量によって評価される。
また、本明細書において、硫化物固体電解質材料のLiイオン伝導性は後述の実施例の欄に詳述する測定法によって求められたものである。
また、本発明によれば、Liイオン伝導性と耐水性とを兼ね備えた硫化物固体電解質材料を有する固体電池を得ることができる。
1)前記一般式において、yが45≧y>0を満足する前記硫化物固体電解質材料。
2)前記一般式において、xが5≧x≧2を満足する前記硫化物固体電解質材料。
3)熱処理により結晶化されてなる前記硫化物固体電解質材料。
yLiI・(100−y)[(75−x)Li2S・xLi2O・25P2S5)]
(式中、xおよびyはモル%を示し、xは0より大で6未満、yは0より大である。)
で示される組成を有することが必要であり、これによってLiイオン伝導性と耐水性とを兼ね備えた硫化物固体電解質材料であり得る。
モル%比で(100−y)(75−x)モル%(但し、xおよびyはモル%を示し、y>0、好適には45≧y>0、6>x>0、以下同様)のLi2Sと25(100−y)モル%のP2S5とyモル%のLiIとを用意する工程、
前記の各原料をメカニカルミリング、例えば遊星型ボールミル中でメカニカルミリングする工程、および
得られた反応物の全量と(100−y)xモル%のLi2Oとをメカニカルミリング、例えば遊星型ボールミル中でメカニカルミリングする工程、
を含む製造方法によって得ることができる。
また、前記の工程に続いて、さらに硫化物固体電解質材料、好適にはガラスセラミック状の硫化物固体電解質材料を熱処理、例えば不活性雰囲気中、例えば窒素あるいはAr雰囲気中、約90〜300℃の範囲、例えば100〜200℃の範囲の温度で例えば10分間以上、2時間以下の範囲の時間で熱処理することにより、結晶化した硫化物固体電解質材料を得ることができる。
本発明の実施態様の硫化物固体電解質材料は、結晶化することによって、図1および図2に示すように、Liイオン伝導度が2x10−3S/cmより大、耐水性を示す硫化水素発生量が約35ppm未満であり、特に前記一般式:
yLiI・(100−y)[(75−x)Li2S・xLi2O・25P2S5)]
(式中、xおよびyはモル%を示し、xは0より大で6未満、yは0より大である。)
における5≧x≧2を満足する場合は、Liイオン伝導度が約2.5x10−3S/cm以上で、耐水性を示す硫化水素発生量が35ppm未満程度であり、高いLiイオン伝導度を有し且つ耐水性を示す硫化水素発生量が少ないという特性を示す。
これは、前記一般式におけるxが0である本発明の範囲外の硫化物固体電解質材料が、結晶化しても耐水性を示す硫化水素発生量が約70ppmであることを考慮すると特異的である。
本発明の実施態様の硫化物固体電解質材料が、結晶化することによって高いLiイオン伝導度を有し且つ耐水性を示す硫化水素発生量が少ない理論的な解明は十分にはなされていないが、Li2SとLi2Oとが熱処理の際に固相反応しH2Sを生成する不純物が抑制されることによると考えられる。
yLiI・(100−y)[(75−x)Li2S・xLi2O・25P2S5)]
(式中、xおよびyはモル%を示し、xは0より大で6未満、yは0より大である。)
で示される組成を有するものであるが、前記の一般式においてP2S5の一部、例えば50モル%以下、例えば10モル%以下を他の硫化物成分、例えばP2S3、SiS2、GeS2、Al2S3、B2S3などによって置き換えられてもよい。
yLiI・(100−y)[(75−x)Li2S・xLi2O・25P2S5)]
(式中、xおよびyはモル%を示し、xは0より大で6未満、yは0より大である。)
で示される組成を有する硫化物固体電解質材料を用いたものである。
前記正極活物質層における正極活物質は、粒子状である場合、平均粒径が好適には0.1〜50μの範囲内であり得て、正極活物質層における正極活物質の含有量は好適には10〜90体積%、特に30〜70体積%の範囲内であり得る。前記の導電化材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバーなどを、前記の結着材としては、例えばフッ素含有樹脂などが挙げられる。前記の正極活物質層は厚さが1〜200μm程度であり得る。
以下の実施例は単に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
以下の各例において、Liイオン伝導度、耐水性およびX線回折の測定は以下の方法により行った。なお、以下の方法は例示であって、当業者が同等と考える方法も同様に用い得る。
各例で得られた硫化物固体電解質材料に対して、交流インピーダンス法によるLiイオン伝導度(常温)の測定を行った。Liイオン伝導度の測定は以下のように行った。支持筒(マコール製)に添加した試料100mgを、SKD製の電極で挟んだ。その後、4.3ton/cm2の圧力で試料を圧粉し、6Ncmで試料を拘束しながらインピーダンス測定を行った。測定にはソーラトロン1260を用い、測定条件は、印加電圧5mV、測定周波数域0.01MHz〜1MHzとした。
各例で得られた硫化物固体電解質材料をそれぞれ100mg秤量し、試料を、面積1cm2の成形部を有するペレット成形機を用いて、5.1ton/cm2の圧力で1分間プレスし、ペレットを得た。その後、得られたペレットを密閉されたデシケータ(1755mL、大気雰囲気、温度25℃、湿度40%)の内部に配置し、最初の300秒間で発生した硫化水素の発生量を、硫化水素センサー(ジコー社製GBL−HS)を用いて測定し、得られた硫化水素発生量(時間内で最大を示す硫化水素発生量を最大硫化水素発生量として示す。)によって示す。
各例で得られた硫化物固体電解質材料に対して、CuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った。XRD測定には、リガク製RINT UltimaIIIを使用した。
Li2Sを0.5951g、P2S5を0.9859g、LiIを0.4190g、脱水ヘプタンを4g秤量し、45mLのZrO2の遊星型ボールミルの容器に入れ、5mmφのZrO2ボール53gで500rpmにて20時間反応させた。その後、120℃で乾燥させ、反応生成物を取り出した。
その生成物1.4921gとLiO2を0.0079gと脱水ヘプタンを4g秤量し、45mLのZrO2の遊星型ボールミルの容器に入れ、5mmφのZrO253gで500rpmにて20時間反応させた。その後、120℃で乾燥させ、生成物を取り出した。
得られた生成物は組成式が15LiI・85(73Li2S・2Li2O・25P2S5)で示される硫化物固体電解質材料であった。
また、前記の硫化物固体電解質材料をAr雰囲気中、180℃、1時間の条件で熱処理を行った。
得られた熱処理した硫化物固体電解質材料について、Liイオン伝導度および耐水性を測定し、これらの測定結果を他の結果とまとめて図1、図2に示す。
また、この材料のXRD測定結果は、2θ=20.2°、23.5°に結晶のピークが確認された。
Li2Sを0.5836g、P2S5を0.9940g、LiIを0.4225g、脱水ヘプタンを4g秤量し、45mLのZrO2の遊星型ボールミルの容器に入れ、5mmφのZrO2ボール53gで500rpmにて20時間反応させた。その後、120℃で乾燥させ、反応生成物を取り出した。
その生成物1.4841gとLiO2を0.0159gと脱水ヘプタンを4g秤量し、45mLのZrO2の遊星型ボールミルの容器に入れ、5mmφのZrO253gで500rpmにて20時間反応させた。その後、120℃で乾燥させ、生成物を取り出した。
得られた生成物は組成式が15LiI・85(71Li2S・4Li2O・25P2S5)で示される硫化物固体電解質材料であった。
また、前記の硫化物固体電解質材料をAr雰囲気中、180℃、1時間の条件で熱処理を行った。
得られた熱処理した硫化物固体電解質材料について、Liイオン伝導度および耐水性を測定し、これらの測定結果を他の結果とまとめて図1、図2に示す。
また、この材料のXRD測定結果は、2θ=20.2°、23.5°に結晶のピークが確認された。
Li2Sを0.6065g、P2S5を0.9779g、LiIを0.4156g、脱水ヘプタンを4g秤量し、45mLのZrO2の遊星型ボールミルの容器に入れ、5mmφのZrO2ボール53gで500rpmにて20時間反応させた。その後、120℃で乾燥させ、反応生成物を取り出した。
得られた生成物は組成式が15LiI・85(75Li2S・25P2S5)で示される硫化物固体電解質材料であった。
また、前記の硫化物固体電解質材料をAr雰囲気中、180℃、1時間の条件で熱処理を行った。
得られた熱処理した硫化物固体電解質材料について、Liイオン伝導度および耐水性を測定し、これらの測定結果を他の結果とまとめて図1、図2に示す。
また、この材料のXRD測定結果は、2θ=20.2°、23.5°に結晶のピークが確認された。
Li2Sを0.5718g、P2S5を1.0022g、LiIを0.4260g、脱水ヘプタンを4g秤量し、45mLのZrO2の遊星型ボールミルの容器に入れ、5mmφのZrO2ボール53gで500rpmにて20時間反応させた。その後、120℃で乾燥させ、反応生成物を取り出した。
その生成物1.4761gとLiO2を0.0239gと脱水ヘプタンを4g秤量し、45mLのZrO2の遊星型ボールミルの容器に入れ、5mmφのZrO253gで500rpmにて20時間反応させた。その後、120℃で乾燥させ、生成物を取り出した。
得られた生成物は組成式が15LiI・85(69Li2S・6Li2O・25P2S5)で示される硫化物固体電解質材料であった。
また、前記の硫化物固体電解質材料をAr雰囲気中、180℃、1時間の条件で熱処理を行った。
得られた熱処理した硫化物固体電解質材料について、Liイオン伝導度および耐水性を測定し、これらの測定結果を他の結果とまとめて図1、図2に示す。
また、この材料のXRD測定結果は、2θ=20.2°、23.5°に結晶のピークが確認された。
yLiI・(100−y)[(75−x)Li2S・xLi2O・25P2S5)]
(式中、xおよびyはモル%を示し、xは2又は4であり、yは15である。)
で示される組成を有する硫化物固体電解質材料は、結晶化することによって、Liイオン伝導度が2.8x10−3S/cm以上であるのに対して、比較例の一般式でxが6であり、yが15である組成を有する硫化物固体電解質材料は、結晶化してもLiイオン伝導度が2.1x10−3S/cm程度である。
また、図2から、実施例の前記の一般式でxが2又は4でありyが15である組成を有する硫化物固体電解質材料は、結晶化することによって、耐水性を示す最大硫化水素発生量が約32ppm未満程度であるのに対して、比較例1の前記一般式におけるxが0である硫化物固体電解質材料は、結晶化すると耐水性を示す最大硫化水素発生量が約70ppmであり、比較例2の前記一般式におけるxが6である硫化物固体電解質材料は、結晶化すると耐水性を示す最大硫化水素発生量が約37ppmと悪化している。
また、本発明によって、耐水性とLi伝導性とを兼ね備えた硫化物固体電解質材料を有する固体電池を得ることができる。
Claims (2)
- 下記一般式:
yLiI・(100−y)[(75−x)Li2S・xLi2O・25P2S5)]
(式中、xおよびyはモル%を示し、4≧x≧2、45≧y>0を満足する。)
で示される組成を有し結晶化されてなる硫化物固体電解質材料の製造方法であって、ガラスセラミック状の材料を90〜300℃の温度で10分間以上、2時間以下の時間で熱処理して結晶化する、前記方法。 - 下記一般式:
yLiI・(100−y)[(75−x)Li2S・xLi2O・25P2S5)]
(式中、xおよびyはモル%を示し、4≧x≧2、45≧y>0を満足する。)
で示される組成を有し結晶化されてなる硫化物固体電解質材料を製造する工程であって、ガラスセラミック状の材料を90〜300℃の温度で10分間以上、2時間以下の時間で熱処理して結晶化する、前記工程、および
前記工程で得られた硫化物固体電解質材料を用いて固体電池を作製する工程
を含む、固体電池の製造方法。
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