JP5821338B2 - エンジンの燃料噴射装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンの燃料噴射装置に関するものである。
自動車(以下、車両とも言う)に搭載されるエンジンには、排気行程中に燃料噴射を行ない、噴射燃料を吸気行程で気筒内へ流入させるPFI(ポートフューエルインジェクション)エンジンが知られている。
このPFIエンジンは、噴射燃料の気化促進期間を確保することができる一方で、噴射燃料が吸気ポートの内壁面に付着してしまうという課題があった。このようなポート壁面への噴射燃料の付着を低減するために、吸気行程中に燃料が筒内に直入するように燃料噴射を行なうエンジンが開発されている。
上記エンジンでは、エンジン回転数によっても左右されるが主に吸気行程中にポート内に燃料噴射を行なう。これにより、噴射された燃料は、ポート内に滞留することなく気筒内へ直接流入するため、ポート壁面への噴射燃料の付着を低減することができる。
このエンジンにおいて、燃料噴射形状を広げると、噴射燃料の気化を促進させることができるが、燃料噴射形状を広げすぎると、噴射燃料がポート壁面に付着してしまう。このため、エンジンにおける燃料噴射形状にかかる種々の技術が開発されている。例えば、特許文献1及び2には、1気筒あたり2本の吸気ポートが接続され、それぞれの吸気ポートに1つのインジェクタが装備されたものにおける、エンジンの燃料噴射形状に関する技術が開示されている。
特許文献1には、燃料噴射の中心を閉弁時の吸気バルブの中心にあわせ、燃料の噴射領域がポート壁面からほぼ均等に離れるように燃料噴射方向及び燃料噴射形状を設定するものが開示されている。これにより、噴射燃料が吸気流速の増減によって移動されても、燃料の噴射領域がポート壁面からほぼ均等に離れているため、噴射燃料のポート壁面への付着を抑制することができる。
特許文献2には、主噴射及び副噴射の燃料噴射を同時に行ない、主噴射は吸気バルブの笠部に指向し、副噴射の噴射角は主噴射のそれよりも広げられ、主噴射の噴射領域の外周に隣接して副噴射の噴射領域が形成される技術が開示されている。この副噴射による噴射燃料は、吸気バルブ近傍であって各吸気ポートを隔てる隔壁の反対側のポート壁面に当たるように設定される。これにより、主噴射による噴射燃料は、吸気バルブの笠部に当たったときの衝撃と笠部の熱によって気化が促進され、副噴射による噴射燃料は、吸気バルブ近傍で比較的温度の高いポート壁面に当たるため、気化促進を図ることができる。
特開平11−141435号公報 特開2004−353558号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、燃料の噴射領域がポート壁面からほぼ均等に離れるように燃料噴射を行なうため、燃料噴射角を大きくすることができない。すなわち、特許文献1の技術では、広がりの大きな燃料噴射形状の燃料噴射を行なうことが困難であるため、噴射燃料の気化促進や微粒化促進を図ることができない虞がある。
また、特許文献2の技術では、ポート壁面に付着した噴射燃料が、噴射された吸気行程中に気化せずに次の燃焼サイクルに持ち越されてしまう虞がある。噴射燃料が次の燃焼サイクルに持ち越されると、吹き抜けHCが発生したり、吸気流量及び噴射燃料量に基づく空燃の最適化が困難になる。また、ポート壁面に付着した燃料が気化すると、付着燃料の気化潜熱によって空気よりも比熱の大きいポート壁が冷却され、充填効率が低下してしまう。
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたものであり、噴射燃料の気化促進を図ることができ、ポート壁面への噴射燃料の付着を抑制することができるエンジンの燃料噴射装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のエンジンの燃料噴射装置は、燃焼室に接続され、燃焼室に近づくに従って次第にシリンダ軸心線の方向に沿うように湾曲形成された湾曲部を有する吸気ポートと、前記吸気ポートと前記燃焼室とを連通する吸気口を開閉する吸気バルブと、前記吸気ポートの前記湾曲部の外周側部分の上流側の壁面に装備されるインジェクタとを備え、前記吸気バルブの開放期間中に噴射燃料が前記吸気口に達するように前記インジェクタによる燃料噴射を行なうエンジンにおいて、前記インジェクタは、下流に向けて広がりをもつように燃料噴射範囲が設定され、前記燃料噴射範囲は、前記湾曲部の内側の境界線が前記吸気ポートの前記湾曲部の内周側の壁面と交差する向きに、且つ、前記湾曲部の外側の境界線が前記吸気ポートの前記湾曲部の外周側の壁面に対して接することなく所定の距離だけ離れる向きに設定され、前記インジェクタの燃料噴射圧力が、前記燃料噴射範囲の噴射燃料が前記湾曲部の内周側の壁面に到達することなく吸気流と共に下流に流されるように設定されていることを特徴としている。
また、前記インジェクタの燃料噴射中心が前記吸気バルブの最大リフト時における吸気弁底面部の中心点に向くように設定され、前記インジェクタの前記燃料噴射範囲の前記湾曲部の外周側壁面の側の境界が、前記吸気バルブの最大リフト時における前記吸気バルブのバルブフェーズ部と、前記吸気口のバルブシート部との間を結ぶ線上を通るように設定されていることが好ましい。
また、前記インジェクタの前記燃料噴射範囲の前記湾曲部の外周側壁面の側の境界が、前記吸気バルブの最大リフト時における前記吸気バルブのバルブフェーズ部と、前記吸気口のバルブシート部との中点(中間点)を通るように設定されていることが好ましい。
また、前記インジェクタから噴射される燃料噴射圧力(燃圧)を調整する燃料圧力調整手段と、エンジン回転数に応じて前記燃料圧力調整手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記エンジン回転数が低い運転領域では噴射燃料が前記湾曲部の内周側の壁面に到達することなく吸気流と共に下流に流されるように前記燃料噴射圧力が低くなるよう前記燃料圧力調整手段を制御するとともに、該エンジン回転数が高いほど前記燃料噴射圧力が高くなるように前記燃料圧力調整手段を制御することが好ましい。
本発明のエンジンの燃料噴射装置によれば、インジェクタは、吸気ポートの湾曲部の外周側部分の上流側の壁面に装備され、噴射燃料の一部が湾曲部の内周側の壁面に当たるように燃料噴射範囲が設定されているので、インジェクタの燃料噴射角を大きく設定することができ、広がりの大きな燃料噴射形状を実施しうる。これにより、噴射燃料の気化促進を図ることができる。
また、インジェクタによる燃料噴射は、吸気バルブの開放期間中、即ち、吸気行程に噴射燃料が吸気口に達するように行なわれるため、噴射燃料はこの吸気流の影響を受ける。吸気行程では、吸気ポート内を吸気が燃焼室へ向かって流通し、この際、吸気流は、湾曲部において湾曲部の外側に偏倚する。したがって、湾曲部の内周側の壁面に当たるように噴射された燃料は、湾曲部の内周側から遠ざかるように吸気流に流される。このため、湾曲部の内周側を含む吸気ポートの壁面への噴射燃料の付着を抑制することができる。
また、湾曲部の内周側の壁面に当たるように噴射された燃料は、単に吸気ポートに沿って燃焼室に向かうのではなく、吸気流と共に湾曲部の内周側から外周側に偏倚しながら燃焼室に向かう。このため、噴射燃料が燃焼室に進入するまでの経路長が増大し、この点からも噴射燃料の気化促進を図ることができる。さらに、湾曲部の内周側の壁面に当たるように噴射された燃料は、吸気流の流れに対して比較的大きな角度を取ることになり、これによっても噴射燃料の気化促進を図ることができる。
また、インジェクタの燃料噴射範囲が、噴射燃料の一部が湾曲部の外周側の壁面には当たらないように設定されていると、吸気ポートの壁面への噴射燃料の付着を抑制することができる。
また、燃料噴射範囲の湾曲部の外周側壁面の側の境界が、吸気バルブの最大リフト時における吸気バルブのバルブフェーズ部と、吸気口のバルブシート部との間を結ぶ線上を通るように設定されると、噴射燃料が湾曲部の外周側壁面から所定の距離だけ離れるようになるため、吸気ポートの壁面への付着を抑制することができる。さらに、燃料噴射範囲の湾曲部の外周側壁面の側の境界が、吸気バルブの最大リフト時における吸気バルブのバルブフェーズ部と、吸気口のバルブシート部との中点を通るように設定されると、噴射燃料が吸気流に流されても吸気ポートの壁面への付着を抑制することができる。
また、エンジン回転数が高いほど燃料噴射圧力(燃圧)が高くなるように燃料圧力調整手段を制御すると、即ち、吸気流速が高くなるエンジン回転数が高い場合に高燃圧で燃料噴射を行なうと、噴射燃料は高い貫徹力を有するため、速度の高い吸気流であっても噴射燃料が吸気流に過度に流されることがない。これにより、湾曲部の内周側の壁面に当たるように噴射された燃料は適度に流され、また、湾曲部の外周側の壁面に当たらないように噴射された燃料は過度に流されることがなく、エンジン回転数に依らず、吸気ポートの壁面への噴射燃料の付着を抑制することができる。
本発明の一実施形態にかかるエンジンの燃料噴射装置の全体構成を説明する図である。 本発明の一実施形態にかかるエンジンの各気筒の吸気ポート及び排気ポートを示す気筒上部の模式的な上面図である。 本発明の一実施形態にかかるエンジンの各気筒の吸気ポート及び燃料噴射範囲を説明する図であって、吸気バルブが最大リフト時の状態を示す。 図3の拡大図であって、燃料噴射範囲の一側を説明する図である。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1〜図4は本発明の一実施形態にかかるエンジンの燃料噴射装置を示すものであって、図1はその全体構成を説明する図、図2はその吸気ポート及び排気ポートを示す上面図、図3はその吸気ポート及び燃料噴射範囲を説明する図、図4は図3の拡大図である。
〔エンジンの主要構成〕
まず、本実施形態にかかるエンジンの燃料噴射装置が適用されるエンジン及びその周辺構成を説明する。
本実施形態にかかるエンジン10は、マルチバルブ式の多気筒エンジンである。図1には、多気筒のエンジン10に設けられた複数のシリンダ19のうちの一つを縦断面にて示す。
図1に示すように、エンジン10のシリンダブロック10Bには、シリンダ19が図面と直交する方向に複数並んで形成され、各シリンダ19には、シリンダ19内を往復摺動するピストン16が装備され、このピストン16は、コネクティングロッド16aを介してクランクシャフト17に接続される。このピストン16は、その頂面にバルブリセス16aを有する。
このシリンダ19の燃焼室Bの上部は、シリンダ19に対向するシリンダヘッド10Hの下面を凹設されることにより形成されるが、本実施形態では、燃焼室Bは、上部が三角屋根状をなすペントルーフ型に形成されている。三角屋根の一方の斜面には一対の吸気ポート11A,11B(第1の吸気ポート11A,第2の吸気ポート11B)が接続され、他方の斜面には一対の排気ポート12A,12B(第1の排気ポート12A,第2の排気ポート12B)が接続される。
三角屋根の頂部の中央部には、点火プラグ13がその先端を燃焼室B側に突出させた状態で設けられる。
それぞれの吸気ポート11A,11Bには吸気バルブ14A,14B(第1の吸気バルブ14A,第2の吸気バルブ14B)が設けられ、吸気バルブ14A,14Bの往復駆動により、吸気ポート11A,11Bの燃焼室Bに臨む箇所(吸気口)11a,11b(第1の吸気口11a,第2の吸気口11b)において開閉動作して吸気口11a,11bが開閉され、吸気ポート11A,11Bと燃焼室Bとが連通又は遮蔽される。
同様に、それぞれの排気ポート12A,12Bには排気バルブ15A,15B(第1の排気バルブ15A,第2の排気バルブ15B)が設けられ、排気バルブ15A,15Bの往復駆動により、排気ポート12A,12Bの燃焼室Bに臨む箇所(排気口)12a,12b(第1の排気口12a,第2の排気口12b)において開閉動作して、排気ポート12A,12Bと燃焼室Bとが連通又は遮蔽される。
〔吸排気系の構成〕
第1の吸気バルブ14A及び第2の吸気バルブ14Bは、これらの下端に笠部14a,14bが形成されたポペット弁であり、これらの各笠部14a,14bが第1の吸気口11a又は第2の吸気口11bを開閉する。同様に、第1の排気バルブ15A及び第2の排気バルブ15Bも、その下端に笠部15a,15bが形成されたポペット弁であり、これらの各笠部15a,15bが第1の排気口12a又は第2の排気口12bを開閉する。
第1の吸気バルブ14A及び第2の吸気バルブ14Bの各上端部はそれぞれロッカアーム35の一端に当接され、第1の排気バルブ15A及び第2の排気バルブ15Bの各上端部はそれぞれロッカアーム37の一端に当接される。ロッカアーム35,37はロッカシャフトに軸支された揺動部材であり、それぞれのロッカアーム35,37の揺動により吸気バルブ14及び排気バルブ15が往復駆動される。これらの往復駆動により各吸気ポート11A,11Bと燃焼室Bとが連通又は遮蔽され、各排気ポート12A,12Bと燃焼室Bとが連通又は遮蔽される。また、ロッカアーム35,37の他端には、カムシャフトに軸支されたカム36,38が設けられる。これにより、ロッカアーム35,37の揺動パターンはカム36,38の形状(カムプロファイル)に応じたものとなる。なお、本実施形態では、カム36,38は同じ形状のものが用いられ、両吸気バルブ14A,14Bの開閉タイミングが同期される。
図2に示すように、吸気ポート11A,11Bを有する吸気ポート部11は、上流のインテークマニホールド20(図1参照、以下、インマニという)と連通接続された単一の吸気ポート上流部11Cと、この一本の吸気ポート上流部11Cから分岐してそれぞれシリンダ19の燃焼室Bに臨む箇所まで延在する第1の吸気ポート11Aと第2の吸気ポート11Bとから構成される。ここでは、第1の吸気ポート11Aと第2の吸気ポート11Bとは互いに対称に形成される。
第1の吸気ポート11Aは、その吸気流の下流端の燃焼室Bに臨む箇所に第1の吸気口11aを有し、第1の吸気ポート11A内の空気はこの第1の吸気口11aを介して燃焼室Bに供給される。同様に、第2の吸気ポート11Bは、その吸気流の下流端の燃焼室Bに臨む箇所に第2の吸気口11bを有し、第2の吸気ポート11B内の空気はこの第2の吸気口11bを介して燃焼室Bに供給される。これらの吸気ポート11A,11Bの吸気口11a,11bは、燃焼室Bの上部に形成された三角屋根の一方の斜面に形成される。また、これらの吸気口11a,11bは、吸気ポート11A,11Bと燃焼室Bとを連通する。
図1,図3に示すように、第1の吸気ポート11Aは、その上流側では鉛直方向に沿うシリンダ軸心線の方向に対して大きく傾斜しているが、その下流側には、燃焼室Bに近づくに従って次第にシリンダ軸心線の方向に沿うように湾曲形成された湾曲部11Wを有している。したがって、第1の吸気ポート11A内の鉛直方向における吸気流は、この湾曲部11Wにおいて、慣性作用により外側(外周側)11Wに接近し内側(内周側)11Wから遠ざかるように偏倚しながら流通する。
なお、第1の吸気ポート11Aの形状の水平方向成分は、その上流から下流に亘って、吸気流の流通方向の水平方向成分に沿って形成されている。したがって、第1吸気ポート11A内の水平方向における吸気流は、偏倚することなく流通する。
同様に、第2の吸気ポート11Bは、その下流側に、燃焼室Bに近づくに従って次第にシリンダ軸心線の方向に沿うように湾曲形成された湾曲部11Wを有している。したがって、第2の吸気ポート11B内の吸気流も、この湾曲部11Wにおいて、慣性作用により外側11Wに接近し湾曲部11Wの内側11Wから遠ざかるように偏倚しながら流通する。また、第2の吸気ポート11Bの形状の水平方向成分は、その上流から下流に亘って、吸気流の流通方向の水平方向成分に沿って形成されている。したがって、第2吸気ポート11B内の水平方向における吸気流は、偏倚することなく流通する。
第1の吸気ポート11Aには第1の吸気バルブ14Aが設けられ、第2の吸気ポート11Bには第2の吸気バルブ14Bが設けられる。第1の吸気バルブ14A及び第2の吸気バルブ14Bは、その下端に笠部14a,14bが形成されたポペット弁であり、その笠部14a,14bが第1の吸気口11a,第2の吸気口11bを開閉する。
つまり、第1の吸気口11aにおいて、第1の吸気バルブ14Aの下端に形成された笠部14aが接触することで、第1の吸気ポート11Aと燃焼室Bとの連通を遮断し、笠部14aが離隔することで、第1の吸気ポート11Aと燃焼室Bとを連通する。同様に、第2の吸気口11bにおいて、第2の吸気バルブ14Bの下端に形成された笠部14bが接触することで、第2の吸気ポート11Bと燃焼室Bとの連通を遮断し、笠部14bが離隔することで、第2の吸気ポート11Bと燃焼室Bとを連通する。
図3に示すように、第1の吸気バルブ14Aは、第1の吸気ポート11Aの湾曲部11Wの外側11Wの一部に設けられた凹部から、そのバルブステムが摺動自在に延出する。同様に、第2の吸気バルブ14Bのバルブステムも、第2の吸気ポート11Bの湾曲部Wの外側11Wの一部に設けられた凹部から摺動自在に延出する。なお、図3の二点鎖線は、第1の吸気ポート11Aの湾曲部外側11W(又は吸気ポート11A上側)を区画する線を示す。
また、第1の吸気口11aには、第1のバルブシート部11aSが設けられる。同様に、第2の吸気口11bには、第2のバルブシート部11bSが設けられる。すなわち、第1のバルブシート部11aSにより囲繞される開口が第1の吸気口11aであり、第2のバルブシート部11aSにより囲繞される開口が第2の吸気口11bである。これらのバルブシート部11aS,11bSは、例えば焼結合金等の耐摩耗性の高い材料が用いられる。
第1の吸気バルブ14Aの笠部14aには、第1の吸気口11aに装備された第1のバルブシート11aSと接触する第1のバルブフェーズ部14APが設けられる。同様に、第2の吸気バルブ14Bの笠部14bには、第2の吸気口11bに装備された第1のバルブシート11bSと接触する第2のバルブフェーズ部14BPが設けられる。これらのバルブフェーズ部14AP,14BPは、耐摩耗性に優れた合金により形成される。
第1の吸気ポート11Aには、第1のインジェクタ18Aが設けられ、第2の吸気ポート11Bには、第2のインジェクタ18Bが設けられる。つまり、本実施形態のエンジン10は、吸気ポート11A,11B毎にインジェクタ18A,18Bが設けられるエンジン(マルチポート噴射式エンジンともいう)である。
第1のインジェクタ18Aは、第1の吸気ポート11Aの湾曲部11Wの外側11W部分の上流側の壁面に設けられた凹部の壁面から、そのノズルが突出するように設けられ、同様に、第2のインジェクタ18Bは、そのノズルが第2の吸気ポート11Bの湾曲部11Wの外側11W部分の上流側に設けられた凹部の壁面から突出するように設けられる。
また、第1のインジェクタ18Aは、その鉛直方向における燃料噴射方向の中心軸が、第1の吸気ポート11A内を流通する吸気の流通方向に対して角度を有するように設けられる。同様に、第2のインジェクタ18Bは、その鉛直方向における燃料噴射方向の中心軸が、第2の吸気ポート11B内を流通する吸気の流通方向に対して角度を有するように設けられる。
ここでは、これらの第1の吸気バルブ14Aと第2の吸気バルブ14Bとも互いに対称に配置され、また、第1のインジェクタ18Aと第2のインジェクタ18Bとも互いに対称に配置される。
図1に示すように、これらの両インジェクタ18A,18Bには、燃料タンクから一部を図示するデリバリーパイプ29を流通して燃料が供給される。このデリバリーパイプ29には、インジェクタ18A,18Bの燃料噴射圧力(以下、燃圧ともいう)を調整するプレッシャレギュレータ26が介装される。このプレッシャレギュレータ26は、車両ECU5に接続され、燃圧の調整を制御される。
両インジェクタ18A,18Bは、プレッシャレギュレータ26により燃圧を小さく調整されると、高い微粒化性能及び低い貫徹力の燃料噴射を実施し、プレッシャレギュレータ26により燃圧を高く調整されると、吸気流に流されにくい燃料噴射を実施する。
また、各インジェクタ18A,18Bを駆動するインジェクタドライバ(燃料圧力調整手段)18Dがそれぞれ装備され、このインジェクタドライバ18Dも、車両ECU5に接続され作動を制御される。
また、排気ポート12A,12Bを有する排気ポート部12は、それぞれシリンダ19の燃焼室Bに臨む箇所から下流側に延在する第1の排気ポート12Aと第2の排気ポート12Bと、これらの第1の排気ポート12A及び第2の排気ポート12Bが一本に合流して下流のエキゾーストマニホールド30(図1参照、以下、エキマニという)に連通接続された排気ポート下流部12Cとから構成される。ここでは、第1の排気ポート12Aと第2の排気ポート12Bとは互いに対称に形成される。
第1の排気ポート12Aは、その排気流の上流端の燃焼室Bに臨む箇所に第1の排気口12aを有し、第1の排気ポート12Aにはこの第1の排気口12aを介して燃焼室Bから排気が排出される。同様に、第2の排気ポート12Bは、その排気流の上流端の燃焼室Bに臨む箇所に第2の排気口12bを有し、第2の排気ポート12Bにはこの第2の排気口12bを介して燃焼室Bから排気が排出される。これらの排気ポート12A,12Bの排気口12a,12bは、燃焼室Bの上部に形成された三角屋根の他方の斜面に形成される。
図2に示すように、第1の排気口12aは第1の吸気口11aに対向して設けられ、第2の排気口12bは第2の吸気口11bに対向して設けられる。ここでいう「対向」とは、シリンダ19の稜線に相当する一点鎖線Xを挟んで互いに向かい合うことを意味する。
第1の排気ポート12Aには第1の排気バルブ15Aが設けられ、第2の排気ポート12Bには第2の排気バルブ15Bが設けられる。第1の排気バルブ15A及び第2の排気バルブ15Bは、これらの下端に笠部15a,15bが形成されたポペット弁であり、これらの笠部15a,15bが第1の排気口12a又は第2の排気口12bを開閉する。
各排気口12a,12bと各排気バルブ15A,15Bの下端に形成された笠部15a,15bとが接触することで、各排気ポート12A,12Bと燃焼室Bとの連通を遮断し、各排気口12a,12bと各排気バルブ15A,15Bの下端に形成された笠部15a,15bとが離隔することで、各排気ポート12A,12Bと燃焼室Bとを連通する。
ここでは、これらの第1の排気バルブ15Aと第2の排気バルブ15Bとも互いに対称に配置される。
噴射される燃料の範囲(燃料噴射範囲α)は、両インジェクタ18A,18Bのノズル形状,配設箇所及び燃圧によって異なる。以下、両インジェクタ18A,18Bにより噴射される燃料の範囲の水平方向及び鉛直方向の燃料噴射範囲αを説明する。なお、ここでは、後述する基準の燃圧により噴射された燃料の燃料噴射範囲αについて説明する。
図2に上面視で示すように、第1のインジェクタ18Aによる水平方向における燃料噴射範囲αは、下流に向けて広がりをもっている。この燃料噴射範囲αは、第1のインジェクタ18Aを起点に第1の吸気ポート11Aの壁面に当たらない範囲に最大限の水平方向の広がりを持つように設定される。つまり、第1のインジェクタ18Aによる水平方向の燃料噴射範囲αは、各吸気ポート11A,11Bを隔てる隔壁側(単に隔壁側ともいう)と第1の吸気ポート11A内でこの隔壁側に対向する壁面側(単に壁面側ともいう)との間に、第1のインジェクタ18Aを起点に最大限の広がりを有する扇状の領域に設定される。この最大限の広がりを有する扇状の領域とは、図2に示す上面視の燃料噴射範囲αの境界、つまり燃料噴射範囲αを規定する隔壁側の境界線及び壁面側の境界線が、第1の吸気ポート11A内で隔壁側及び壁面側に接することなく可能な限り近接する領域をいう。
また、第1のインジェクタ18Aの水平方向における燃料噴射方向の中心軸は、第1の吸気ポート11A内を流通する吸気流の流通方向に沿って配置される。このため、第1のインジェクタ18Aにより噴射された燃料は、水平方向には第1の吸気ポート11A内の隔壁側及び壁面側に偏倚することなく流通する吸気流に乗って、第1の吸気ポート11A内の隔壁側及び壁面側に水平方向には偏倚することなく移動する。
第2のインジェクタ18Bによる水平方向における燃料噴射範囲αは、第1のインジェクタ18Aによる燃料噴射範囲αと対称で同様に設定され、第2のインジェクタ18Bを起点に第2の吸気ポート11Bの壁面に当たらない範囲に最大限の水平方向の広がりを持つように設定される。つまり、第2のインジェクタ18Bによる水平方向の燃料噴射範囲αは、隔壁側と第2の吸気ポート11B内でこの隔壁側に対向する側の壁面側との間に、第2のインジェクタ18Bを起点に最大限の広がりを有する扇状の領域に設定される。
また、第2のインジェクタ18Bの水平方向における燃料噴射方向の中心軸は、第2の吸気ポート11B内を流通する吸気流の流通方向に沿って配置される。このため、第2のインジェクタ18Bにより噴射された燃料も、水平方向には第1の吸気ポート11A内の隔壁側及び壁面側に偏倚することなく流通する吸気流に乗って、第2の吸気ポート11A内の隔壁側及び壁面側に偏倚することなく移動する。
次に、図3を用いて、鉛直方向における燃料噴射範囲αを説明する。図3には、吸気バルブ14の最大リフト時の状態を示す。
図3に一点鎖線で示すように、上流側の第1の吸気ポート11Aは、その中心軸が吸気の流通方向に沿っており、鉛直方向に沿うシリンダ軸心線の方向に対して大きく傾斜している。
図3に側面視で示すように、第1のインジェクタ18Aによる鉛直方向における燃料噴射範囲αは、下流に向けて広がりをもった範囲に設定される。この燃料噴射範囲αの中心軸は、吸気の流通方向に対して角度を有するように設定される。ここでは、この中心軸線Cは、最大リフト時における第1の吸気バルブ14Aの笠部14aの底面(燃焼室側を向く面)の中心Pを通るように設定される。すなわち、第1のインジェクタ18Aの燃料噴射範囲αの中心軸線Cは、第1のインジェクタ18Aを起点にこれと最大リフト時における第1の吸気バルブ14Aの笠部14aの底面の中心Pを結ぶ直線で規定される。
燃料噴射範囲αは、第1のインジェクタ18Aを起点にし、第1の吸気ポート11Aの内側の壁面に当たるように、且つ、第1の吸気ポート11Aの外側の壁面に当たらないように設定される。つまり、第1のインジェクタ18Aによる鉛直方向の燃料噴射範囲αは、第1の吸気ポート11Aの湾曲部11Wの内側Wの壁面に当たり、第1の吸気ポート11Aの湾曲部11Wの外側Wの壁面に当たらないように、第1のインジェクタ18Aを起点に広がりを有する扇状の領域に設定される。
湾曲部11Wの外側Wの壁面に当たらないように設定される燃料噴射範囲αの一側について、図4を用いて説明する。図4は、図3中の第1の吸気口11a近傍の拡大図である。
図4には、第1の吸気ポート11Aの壁面と第1のバルブシート部11aSとが接するエッジ部の湾曲部外側に相当する点Pと、バルブ閉鎖時にこの点Pと接する第1の吸気バルブ14Aのバルブフェーズ部14APの点Pと、これらの点Pと点Pとの中点である点P(即ち、点Pと点Pとを結ぶ直線上で且つ点Pとも点Pとも等距離にある点P)とを示す。
ここでは、燃料噴射範囲αは、その一側(湾曲部外側11W、即ち、ポート11A内壁の上側)の境界線αが点Pを通るように設定される。すなわち、燃料噴射範囲αの境界線αは、第1のインジェクタ18Aを起点にこれと点Pとを結ぶ直線で規定される。したがって、境界線αは第1の吸気ポート11Aの外側の壁面に対して接することが無く、燃料噴射範囲αは、第1の吸気ポート11Aの外側の壁面に対して所定の距離だけ離れるように設定される。
また、燃料噴射範囲αの他側の境界線αは、図3に示すように、第1のインジェクタ18Aの鉛直方向における燃料噴射方向の中心軸線Cに対して一側の境界線αと線対称な直線で規定され、且つ、湾曲部11Wの内側11Wの壁面と交差するように規定される。
したがって、第1のインジェクタ18Aの鉛直方向における燃料噴射範囲αは、湾曲部11Wの内側11W及び外側11Wの何れにも当たらないように設定される仮想の燃料噴射範囲に対して、湾曲部11Wの内側方向にのみ広げた領域として設定されたものといえる。
また、第2のインジェクタ18Bの鉛直方向における燃料噴射範囲αも、第1のインジェクタ18Aの鉛直方向における燃料噴射範囲αと同様に設定される。
図1に示すように、吸気ポート部11の吸気流の上流側には、インマニ20が接続される。このインマニ20の上流部には、吸気ポート部11へ流れる吸気を一時的に溜めるためのサージタンク21が設けられる。サージタンク21よりも下流側のインマニ20は、各シリンダ19に向かって分岐するように形成され、その分岐点にサージタンク21は位置する。サージタンク21は、各シリンダ19で発生する吸気脈動や吸気干渉を緩和するように機能する。
インマニ20の上流端には、スロットルボディ23が接続される。スロットルボディ23の内部にはスロットルアクチュエータ23aを備えた電子制御式のスロットルバルブ24が内蔵され、インマニ20側へと流れる吸気の量が、スロットルバルブ24の開度(スロットル開度)に応じて調節される。
スロットルボディ23のさらに上流側には、吸気通路25が接続され、この吸気通路25の上流側にはエアフィルタ28が介装される。さらに、吸気通路25には、吸気通路25内を通過する吸気量を計測するエアフローセンサ27が設けられている。このエアフローセンサ27により検出された吸気量の情報は車両ECU5に伝達される。
これにより、エアフィルタ28で濾過集塵された吸気が、吸気通路25,インマニ20及び吸気ポート部11を介して燃焼室Bに供給される。
一方、排気ポート部12よりも排気流の下流側には、エキマニ30,排気触媒32及び排気通路39が設けられる。エキマニ30は、各シリンダ19から合流するように形成され、その下流側で排気通路39と接続される。この排気通路39には、排気触媒32が介装される。
排気触媒32は、排気中に含まれるHC(炭化水素)や一酸化炭素,窒素酸化物等を無害化する機能を持ち、例えば酸化触媒や三元触媒である。エンジン10の燃焼室Bから排出された排気中のHCは排気触媒32により酸化除去される。
クランクシャフト17には、その回転角θCRを検出するクランク角センサ(エンジン回転数検出手段)33が設けられる。回転角θCRの単位時間あたりの変化量はエンジン10の回転数Neに比例する。したがって、クランク角センサ33はエンジン10の回転数Neを検出する機能を有するものといえる。ここで検出されたクランク角θCRの情報は車両ECU5に伝達される。クランク角センサ33により検出された回転角θCRに基づいて、車両ECU5はエンジン回転数Neを演算する。
車両には、アクセルペダルの踏込量に対応するアクセル開度θACを検出するアクセルポジションセンサ34が設けられる。このアクセルポジションセンサ34により検出されたアクセル開度θACの情報は、車両ECU5に伝達される。
〔制御系の構成〕
車両ECU5は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM,入出力回路等からなる電子制御装置であって、スロットルボディ23やプレッシャレギュレータ26等の電子制御装置やエアフローセンサ27及びクランク角センサ33等の各種センサと接続される。各種センサと接続された車両ECU5は、スロットルボディ23内部のスロットルバルブ24の開度(スロットル開度),エアフローセンサ27により検出された吸気量及びクランク角センサ33により検出されたクランク角θCRの各情報を取得し、クランク角θCRに基づいてエンジン回転数Neを演算する。
この車両ECU5は、例えばエンジン10の点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを制御する。
車両ECU5には、ソフトウェアとして、インジェクタ18の燃料噴射時期を制御する燃料噴射制御部1と、アクセル開度θACに応じてスロットルバルブ24の開度を制御するスロットル開度制御部2とが設けられている。
燃料噴射制御部1は、スロットル開度,吸気量,クランク角θCR及びエンジン回転数Neに基づいて、両インジェクタ18A,18Bの燃料噴射タイミングを制御する。本実施形態では、両インジェクタ18A,18Bの燃料噴射タイミングを同期させて同時に実施する。
この燃料噴射制御部1は、インジェクタドライバ18Dに両インジェクタ18A,18Bの燃料噴射を実施させる。すなわち、燃料噴射制御部1は、第1のインジェクタ18Aにより噴射された燃料が、第1の吸気バルブの開放期間中(吸気行程中)に第1の吸気口11aに達するように燃料噴射を制御する。同様に、燃料噴射制御部1は、第2のインジェクタ18Aにより噴射された燃料が、第2の吸気バルブの開放期間中に第2の吸気口11aに達するように燃料噴射を制御する。
詳細には、燃料噴射制御部1は、両インジェクタ18A,18Bによって噴射された燃料が両吸気口11a,11bに到達する遅延時間τを用いて、両インジェクタ18A,18Bの噴射タイミングを制御する。
この遅延時間τは、吸気ポート11A,11Bの形状、インジェクタ18A,18B並びに吸気口11a,11b及び排気口12a,12bの位置関係等のエンジン10の構造によって異なるだけでなく、エンジン回転数Neやスロットル開度等で変化する吸気流速等のエンジン10の運転状況によって変化する。本実施形態では、本制御が適用されるエンジン10の構造のもとでのエンジン10の運転状況と遅延時間τとの関係を予め実験的・経験的に求め、車両ECU5に記憶している。また、燃料噴射制御部1は、エンジンの運転状況の情報を取得し、このエンジン運転状況に応じた遅延時間τを読み出すことができるように構成される。
つまり、燃料噴射制御部1は、クランク角θCR,吸気量,エンジン回転数Ne,遅延時間τに基づいて、両インジェクタ18A,18Bによって噴射された燃料が両吸気バルブ11A,11Bの開放期間中(吸気行程中)に両吸気口11a,11bに到達するように噴射タイミングを制御する。
これにより、両インジェクタ18A,18Bにより噴射された燃料は、吸気行程中に燃焼室Bへ流入する。
また、燃料噴射制御部1は、プレッシャレギュレータ26を介して両インジェクタ18A,18Bの燃圧を制御する。この燃圧制御は、エンジン回転数Neに応じて燃圧を制御する。以下、この燃圧制御について説明する。
エンジン回転数Neが低い領域では、燃料噴射制御部1は、両インジェクタ18A,18Bの燃圧を基準燃圧に制御する。この場合、両インジェクタ18A,18Bにより噴射される燃料は、低貫徹力を有することとなる。
一方、エンジン回転数Neの上昇に伴い、燃料噴射制御部1は、両インジェクタ18A,18Bの燃圧を基準燃圧よりも高める。この場合、エンジン回転数Neが高い領域では、両インジェクタ18A,18Bにより噴射される燃料は吸気流に過度に流されず、単位時間当たりの燃料噴射量が大きくなる。
つまり、燃料噴射制御部1による燃圧制御は、エンジン回転数Neが高くなるに連れて両インジェクタ18A,18Bの燃圧を高めることで行なわれる。
なお、ここでは、エンジン回転数Neが高くなるのにしたがって次第に燃圧を高める構成としているが、この場合、エンジン回転数Neに対して連続的に燃圧を高める構成でもよく、エンジン回転数Neを何段階かの範囲に分けてエンジン回転数Neに対して段階的に燃圧を高める構成としてもよい。
そして、燃料噴射制御部1は、両インジェクタ18A,18Bによる燃料噴射量を制御する。例えば、エアフローセンサ27により検出された吸気流に基づいて、最適な空燃となる噴射燃料量を算出し、この算出された燃料量を両インジェクタ18A,18Bに噴射させる。この場合、燃圧を考慮した開弁時間に基づいて両インジェクタ18A,18Bを開弁駆動する。
スロットル開度制御部2は、アクセルポジションセンサ34により検出されたアクセル開度θACに応じたスロットル開度となるように、スロットルバルブ24を制御する。
〔作用・効果〕
本発明の一実施形態に係るエンジンの燃料噴射装置は、上述のように構成されるので、以下のような作用および効果を奏する。
両インジェクタ18A,18Bはそれぞれの吸気ポート11A,11Bの湾曲部11Wの外側11W部分の上流側の壁面に装備され、両インジェクタ18A,18Bの燃料噴射範囲αは、噴射燃料の一部が湾曲部11Wの内側11Wの壁面に当たるように設定されているので、両インジェクタ18A,18Bの燃料噴射角を大きく設定することができ、広がりの大きな燃料噴射形状を実現しうる。このため、噴射燃料の気化促進を図ることができる。
各吸気ポート11A,11B内を吸気が燃焼室Bに向かって流通し、この際、吸気流は、湾曲部11Wにおいて湾曲部外側11Wに偏倚する。したがって、湾曲部内側11Wの壁面に当たるように噴射された燃料は、湾曲部内側11Wから遠ざかるように吸気流に流される。このため、湾曲部11Wの内側11Wを含む各吸気ポート11A,11Bの壁面への噴射燃料の付着を抑制することができる。
また、湾曲部内側11Wの壁面に当たるように噴射された燃料は、単に吸気ポート11A,11Bに沿って燃焼室Bに向かうのではなく、吸気流と共に湾曲部11Wの内側11Wから外側11Wに偏倚しながら燃焼室Bに向かう。このため、噴射燃料が燃焼室Bに進入するまでの経路長が増大し、この点からも噴射燃料の気化促進を図ることができる。さらに、湾曲部内側11Wの壁面に当たるように噴射された燃料は、吸気流の流れに対して比較的大きな角度を取ることになり、これによっても噴射燃料の気化促進を図ることができる。
また、両インジェクタ18A,18Bの燃料噴射範囲αの境界線αが、噴射燃料が湾曲部外側11Wの壁面には当たらないように設定されているため、各吸気ポート11A,11Bの壁面への噴射燃料の付着を抑制することができる。さらに、燃料噴射範囲αの境界線αが、両吸気バルブ14A,14Bそれぞれの最大リフト時におけるバルブフェーズ部14AP,14BPと、吸気口11a,11bのバルブシート部11aS,11bSとの中点Pを通るように設定され、即ち湾曲部11Wの外側11Wの壁面に対して所定の距離だけ離れるように設定されるため、噴射燃料が吸気流に流されても各吸気ポート11A,11Bの壁面への付着を抑制することができる。
両インジェクタ18A,18Bによる水平方向の燃料噴射範囲αは、隔壁側と壁面側とに接することなく可能な限り近接する範囲に設定されるため、噴射燃料の気化促進を図ることができる。このとき、両インジェクタ18A,18Bの水平方向における燃料噴射方向の中心軸は、各吸気ポート11A,11B内を流通する吸気流の流通方向に沿って配置されるため、両インジェクタ18A,18Bにより噴射された燃料は、吸気流に流されても各吸気ポート11A,11B内の隔壁側及び壁面側に偏倚することない。したがって、これらの隔壁側及び壁面側への噴射燃料の付着を防止又は抑制することができる。
エンジン回転数Neの低い運転領域では、吸気量が少ない、即ち吸気流速が低く、燃料噴射制御部1により両インジェクタ18A,18Bの燃圧を低くする。つまり、両インジェクタ18A,18Bにより噴射された低貫徹力の燃料が速度の低い吸気流に噴射される。これにより、両インジェクタ18A,18Bから湾曲部11Wの内側11Wの壁面に当たるように噴射された貫徹力の低い燃料は、湾曲部11Wの内側11Wの壁面に到達することなく吸気流と共に下流に流れる。したがって、各吸気ポート11A,11B内の壁面への噴射燃料の付着が抑制される。
エンジン回転数Neの高い運転領域では、吸気量が多い、即ち吸気流速が高く、燃料噴射制御部1により両インジェクタ18A,18Bの燃圧を高くする。この場合、両インジェクタ18A,18Bにより噴射される燃料の貫徹力が高くなるため、速度の高い吸気流であっても燃料が吸気流に過度に流されることがない。これにより、両インジェクタ18A,18Bから中点Pを通るように噴射された燃料は、各吸気ポート11A,11B内の壁面への付着を抑制される。また、高燃圧で噴射された燃料は、単位時間当たりの燃料噴射量が大きく、吸気行程期間が短くなるエンジン回転数Neの高い運転領域においても、必要な燃料噴射量を確保することができ、同吸気サイクル中の噴射燃料の直入率が低下することがない。
各吸気ポート11A,11Bには、それぞれインジェクタ18A,18Bが設けられ、1本のシリンダ19に対して2本のインジェクタ18A,18Bにより噴射燃料を実施するため、例えば高回転時で吸気行程の時間が短い場合であっても必要な量の燃料を噴射ことが可能となり、高出力が要求される場合にも、必要とされる量の燃料噴射を実施することができる。
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態では、燃料噴射範囲の一側の境界線αが点Pとも点Pとも等距離にある点Pを通るものを示したが、点Pを通るものに限らず、点Pと点Pとの間を結ぶ直線(線分)上であって、点P,P以外の点を通るものであればよい。これによれば、境界線αは各吸気ポート11A,11Bの外側の壁面に対して接することが無く、燃料噴射範囲αは、各吸気ポート11A,11Bの外側の壁面に対して所定の距離だけ離れるように設定される。
また、燃料噴射制御部1は、遅延時間τに基づいて、両インジェクタ18A,18Bによって噴射された燃料が両吸気口11a,11bに到達するように噴射タイミングを制御するものを示したが、燃料噴射制御部は、クランク角θCRに基づいて噴射タイミングを制御し、両インジェクタ18A,18Bに吸気行程噴射を実施させるものでもよい。これによれば、両インジェクタ18A,18Bにより噴射された燃料は、その燃料量の略全部が同吸気サイクルに燃焼室Bへ流入する。また、燃料噴射制御部による制御を簡素な構成とすることができる。
また、上述の実施形態では、遅延時間τを示したが、これに限らず、クランク角θCRにより規定される期間と対応する遅延期間としてもよい。
また、吸気バルブの開放期間と排気バルブの開放期間とを重複させてバルブオーバーラップを有するエンジンに適用しても良い。これによれば、両インジェクタ18A,18Bによる吸気行程噴射により、吹き抜けHCを低減させ、充填効率を向上させることができる。
また、両インジェクタ18A,18Bの燃料噴射タイミングを同期させて同時に実施するものを示すが、これに限らず、各インジェクタの燃料噴射タイミングをそれぞれ制御してもよい。
また、シリンダ19に対し2本の吸気ポート11A,11Bが接続されるマルチポートエンジンを示したが、シリンダに対し1本の吸気ポートが接続されるシングルポートのエンジンに適用してもよい。
本発明のエンジンの噴射制御装置は、吸気ポートにインジェクタを有するエンジンを搭載した種々の車両等に適用できる。
1 燃料噴射制御部(制御手段)
2 スロットル開度制御部
5 車両ECU
10 エンジン
11 吸気ポート部
11W 湾曲部
11W 内側(内周側)
11W 外側(外周側)
11aS バルブシート部
11b 第2の吸気口
11bS バルブシート部
11A 第1の吸気ポート
11B 第2の吸気ポート
12 排気ポート
13 点火プラグ
14 吸気バルブ
14A 第1の吸気バルブ
14a (第1の吸気バルブの)笠部
14AP バルブフェーズ部
14B 第2の吸気バルブ
14b (第2の吸気バルブの)笠部
14BP バルブフェーズ部
15 排気バルブ
17 クランクシャフト
18 インジェクタ
18A 第1のインジェクタ
18B 第2のインジェクタ
18D インジェクタドライバ(燃料圧力調整手段)
19 シリンダ(気筒)
24 スロットルバルブ
25 吸気通路
26 プレッシャレギュレータ
27 エアフローセンサ
33 クランク角センサ
34 アクセルポジションセンサ

Claims (4)

  1. 燃焼室に接続され、前記燃焼室に近づくに従って次第にシリンダ軸心線の方向に沿うように湾曲形成された湾曲部を有する吸気ポートと、
    前記吸気ポートと前記燃焼室とを連通する吸気口を開閉する吸気バルブと、
    前記吸気ポートの前記湾曲部の外周側部分の上流側の壁面に装備されるインジェクタとを備え、
    前記吸気バルブの開放期間中に噴射燃料が前記吸気口に達するように前記インジェクタによる燃料噴射を行なうエンジンにおいて、
    前記インジェクタは、下流に向けて広がりをもつように燃料噴射範囲が設定され、
    前記燃料噴射範囲は、前記湾曲部の内側の境界線が前記吸気ポートの前記湾曲部の内周側の壁面と交差する向きに、且つ、前記湾曲部の外側の境界線が前記吸気ポートの前記湾曲部の外周側の壁面に対して接することなく所定の距離だけ離れる向きに設定され、
    前記インジェクタの燃料噴射圧力が、前記燃料噴射範囲の噴射燃料が前記湾曲部の内周側の壁面に到達することなく吸気流と共に下流に流されるように設定されている
    ことを特徴とする、エンジンの燃料噴射装置。
  2. 前記インジェクタの燃料噴射中心が前記吸気バルブの最大リフト時における吸気弁底面部の中心点に向くように設定され、
    前記インジェクタの前記燃料噴射範囲の前記湾曲部の外周側壁面の側の境界が、前記吸気バルブの最大リフト時における前記吸気バルブのバルブフェーズ部と、前記吸気口のバルブシート部との間を結ぶ線上を通るように設定されている
    ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの燃料噴射装置。
  3. 前記インジェクタの前記燃料噴射範囲の前記湾曲部の外周側壁面の側の境界が、前記吸気バルブの最大リフト時における前記吸気バルブのバルブフェーズ部と、前記吸気口のバルブシート部との中点を通るように設定されている
    ことを特徴とする、請求項2記載のエンジンの燃料噴射装置。
  4. 前記インジェクタから噴射される燃料噴射圧力を調整する燃料圧力調整手段と、
    エンジン回転数に応じて前記燃料圧力調整手段を制御する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、エンジン回転数が低い運転領域では噴射燃料が前記湾曲部の内周側の壁面に到達することなく吸気流と共に下流に流されるように前記燃料噴射圧力が低くなるよう前記燃料圧力調整手段を制御するとともに、エンジン回転数が高いほど前記燃料噴射圧力が高くなるように前記燃料圧力調整手段を制御する
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のエンジンの燃料噴射装置。
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