JP5820171B2 - 包接化合物およびその製造方法 - Google Patents
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然るに、包接機能を有する大環状化合物の合成においては、多段階の反応工程が必要となることから、得られる大環状化合物の収率が低い、という問題がある。
そして、このような動的共有化学を利用して合成される大環状化合物としては、カリックスアレーン、カリックスレゾルシンアレーン、或いはそれらの環状オリゴマーなどのアレーン系化合物が知られている(非特許文献3乃至非特許文献5参照。)。
本発明の包接化合物は、上記一般式(1)で表されるカリックスレゾルシンアレーン環状オリゴマー誘導体(以下、「特定の環状オリゴマー誘導体」ともいう。)よりなるホスト分子を有するものである。上記一般式(1)において、R1 は、上記式(a)で表される基であり、kは2または3であり、pは2〜15の整数、好ましくは2〜8の整数である。
上記式(a)において、R2 はアルキル基を示し、アルキル基としては、炭素数が1〜4のものが好ましい。
触媒としては、テトラブロモアンモニウムブロマイド等の第四級アンモニウム塩、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。
また、溶媒としては、N−メチルピロリジン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。
また、反応温度は、例えば60℃であり、反応時間は例えば48時間である。
レゾルシノールと特定のアルカンジアールとの割合は、モル比で1:1〜4:1であることが好ましい。特定のアルカンジアールの割合が過大である場合には、特定のアルカンジアール同士の反応が生じ、反応系がゲル化する、という問題がある。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタスルホン酸、ヨウ化水素などを用いることができる。酸触媒の使用量は、その種類によって適宜選択されるが、例えば酸触媒としてトリフルオロメタスルホン酸を用いる場合には、レゾルシノール6.7mmol(官能基当量13.4mmol)および特定のアルカンジアール1.7mmol(官能基当量3.4mmol)の反応系において、酸触媒の使用量は10〜18mmolであり、酸触媒の使用量が多いほどポリマーの生成を抑制することができる。
溶媒としては、例えばエタノール、エチレングリコールなどのアルコール類を用いることができる。
反応温度は、例えば70〜90℃であり、反応時間は例えば48時間である。
カリックスレゾルシンアレーン環状オリゴマーの合成プロセスを下記反応式(i)に示す。
ゲスト分子としては、ホスト分子を構成する特定の環状オリゴマー誘導体に包接され得るものであれば、特に限定されず、その具体例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの金属類、ヘキサン、ペンタン、ノナン等の炭化水素類、クロロフォルム、四塩化炭素などのハロゲン化合物類などの有機溶媒類、ポリエチレンオキサイド、ポリテトラヒドロフランなどのポリマーなどが挙げられ、これらの物質がゲスト分子として、特定の環状オリゴマー誘導体よりなるホスト分子によって包接される。
〈調製例1〉
10mLナスフラスコ内において、エチレングリコール3mLにレゾルシノール0.74g(6.7mmol,官能基当量13.4mmol)を溶解させた。得られた溶液に、氷冷下にて1,6−ヘキサンジアール0.19g(1.7mmol,官能基当量3.4mmol)を滴下し、更に触媒としてトリフルオロ酢酸18mmolを滴下し、攪拌下に80℃で48時間加熱することにより反応させた。次いで、得られた反応溶液を水に注ぎ、生成物を沈殿させ、濾別した後、沈殿物をメタノールで洗浄し、室温で24時間減圧乾燥することにより、赤色固体よりなる生成物を得た。生成物の収量は0.1434g、収率は28%であった。
得られた生成物について、IR分析およびNMR分析を行った結果、生成物は、下記式(2−1)で表されるカリックスレゾルシンアレーン環状オリゴマーであることが確認された。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)を測定したところ、数平均分子量(Mn)が1882、分子量分布が1.04であった。以下、この生成物を「環状オリゴマー(2−1)」とする。
IR (KRS,cm-1)
3332(νO−H hydoroxyl),2931,2858(νCH methylen),1620,1501,1443(νC=C aromatic)
1H−NMR(600MHz,CDCl3 −d6 ,TMS)
δppm:1.25−2.39(m,32.0H,Ha andHb ),4.18(s,7.9H,Hc ),6.19(s,8.0H,Hc ),7.17(s,8.0H,Hd ),9.08(16.0H,Hf )
25mLナスフラスコ内において、エチレングリコール3mLにレゾルシノール0.74g(6.67mmol,官能基当量13.4mmol)を溶解させた。得られた溶液に、氷冷下にて1,9−ノナンジアール0.261g(1.7mmol,官能基当量3.4mmol)を滴下し、更に触媒としてトリフルオロ酢酸11.25mmolを滴下し、攪拌下に90℃で48時間加熱することにより反応させた。次いで、得られた反応溶液を水に注ぎ、生成物を沈殿させ、濾別した後、沈殿物をメタノールて洗浄し、室温で24時間減圧乾燥することにより、赤色固体よりなる生成物を得た。収率は46%であった。
得られた生成物について、IR分析およびNMR分析を行った結果、生成物は、下記式(2−2)で表されるカリックスレゾルシンアレーン環状オリゴマーであることが確認された。以下、この生成物を「環状オリゴマー(2−2)」とする。
〈合成例1〉
20mL二つ口ナスフラスコに、環状オリゴマー(2−1)1.2g (1mmol,水酸基当量16mmol)、炭酸カリウム2.2g(16mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.52(1.61mmol,環状オリゴマー(2−1)の水酸基に対して10mol%)を入れ、ナスフラスコ内を窒素で置換した後、N−メチルピロリジン5mLを加えて環状オリゴマー(2−1)を溶解した。得られた溶液に、ブロモ酢酸エチル2.65mL(24mmol,環状オリゴマー(2−1)の水酸基1当量に対して1.5当量)を加え、60℃で48時間反応させた。次いで、反応溶液をクロロホルムによって希釈し、得られた希釈液に対して、水で3回、飽和食塩水で1回分液操作を行った。得られた溶液の有機相を回収して無水硫酸マグネシウムよりなる乾燥剤で乾燥処理し、乾燥剤を濾別した後、濃縮して、メタノールに注ぎ、生成物を沈殿させた。この生成物を24時間減圧乾燥し、白色固体を得た。得られた生成物の収量は0.614g、収率は24%であった。
得られた生成物についてIR分析およびNMR分析を行ったところ、下記式(1−1)で表される特定の環状オリゴマー誘導体であることが確認された。
また、IR分析の結果から、水酸基によるピークが消失していることが確認され、このことから、水酸基に係る水素原子の99%以上が上記式(a)で表される基に置換されていることが確認された。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)を測定したところ、数平均分子量(Mn)が2150、分子量分布が1.01であった。
以下、この特定の環状オリゴマー誘導体を「環状オリゴマー誘導体(1−1)」とする。
IR (KRS,cm-1)
2982,2931,2859(νCH methylen),1759,1753(νC=O carbonyl),1611,1587(νC=C aromatic),1207,1181(νC−O−C ester)
1H−NMR(600MHz,CDCl3 −d6 ,TMS)
δppm:0.99−1.29(br,49.7H,Hb ),1.84(bs,15.5H,Ha andHc ),6.00−7.72(m,16.0H,He andHd )
20mL二つ口ナスフラスコに、環状オリゴマー(2−2)1.84g (0.9mmol,水酸基当量21mmol)、炭酸カリウム3.23g(21mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.64(1.99mmol,環状オリゴマー(2−2)の水酸基に対して10mol%)を入れ、ナスフラスコ内を窒素で置換した後、N−メチルピロリジン4mLを加えて環状オリゴマー(2−2)を溶解した。得られた溶液に、ブロモ酢酸エチル3.7mL(32mmol,環状オリゴマー(2−2)の水酸基1当量に対して1.5当量)を加え、60℃で48時間反応させた。次いで、反応溶液をクロロホルムによって希釈し、得られた希釈液に対して、水で3回、飽和食塩水で1回分液操作を行った。得られた溶液の有機相を回収して無水硫酸マグネシウムよりなる乾燥剤で乾燥処理し、乾燥剤を濾別した後、濃縮して、メタノールに注ぎ、生成物を沈殿させた。この生成物を24時間減圧乾燥し、白色固体を得た。得られた生成物の収量は1.06g、収率は28%であった。
得られた生成物についてIR分析およびNMR分析を行ったところ、下記式(1−2)で表される特定の環状オリゴマー誘導体であることが確認された。
また、IR分析の結果から、水酸基によるピークが消失していることが確認され、このことから、水酸基に係る水素原子の99%以上が上記式(a)で表される基に置換されていることが確認された。
以下、この特定の環状オリゴマー誘導体を「環状オリゴマー誘導体(1−2)」とする。
IR (KRS,cm-1)
2981,2925,2853(νC−H),1759,1732(νC=O),1203,1185(νC−O −C)
1H−NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS)
δppm:1.12−1.27(m,137H,Hb andHf ),1.78,1.83(bs,28H,Ha ),4.15−4.22(m,70H,Hg ),4.33−4.39(m,22H,Hc ),4.61(s,15H,Hh ),6.15,6.22(s,12H,He ),6.44,6.80(s,12H,Hd )
〈試験例1〉
合成例1で得られた環状オリゴマー誘導体(1−1)を塩化メチレンに濃度が2.5×10-4mol/dm3 となるよう溶解し、得られた溶液4mLに、濃度が2.5×10-4mol/dm3 のピクリン酸セリウム水溶液4mLを加え、24時間室温で攪拌した後、静沈させ、水溶液(水相)を回収した。そして、回収された水溶液および上記のピクリン酸セリウム水溶液の各々にについて、金属イオン(セリウムイオン)による紫外可視吸光スペクトルを測定することにより、特定の環状オリゴマー誘導体によって包接された金属イオン(セリウムイオン)の割合(以下、「イオン包接率」という。)を求めた。結果を下記表1に示す。
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10-4mol/dm3 のピクリン酸ルビジウム水溶液4mLを用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりに合成例2で得られた環状オリゴマー誘導体(1−2)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10-4mol/dm3 のピクリン酸ルビジウム水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりに合成例2で得られた環状オリゴマー誘導体(1−2)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10-4mol/dm3 のピクリン酸マグネシウム水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりに合成例2で得られた環状オリゴマー誘導体(1−2)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10-4mol/dm3 のピクリン酸銀水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりに合成例2で得られた環状オリゴマー誘導体(1−2)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりに下記式(c1)で表されるカリックスレゾルシンアレーン誘導体(以下、「CRA誘導体」という。)を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10-4mol/dm3 のピクリン酸ルビジウム水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりにCRA誘導体を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10-4mol/dm3 のピクリン酸マグネシウム水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりにCRA誘導体を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
ピクリン酸セリウム水溶液の代わりに濃度が2.5×10-4mol/dm3 のピクリン酸銀水溶液4mLを用い、環状オリゴマー誘導体(1−1)の代わりCRA誘導体を用いたこと以外は試験例1と同様にしてイオン包接率を求めた。結果を下記表1に示す。
これに対して、CRA誘導体においては、金属イオンを包接する包接機能が認められなかった。
Claims (3)
- レゾルシノールおよび炭素数が4〜17のアルキレン鎖を有するアルカンジアールを縮合反応させることにより、前記一般式(2)で表される化合物を得る工程を有することを特徴とする請求項2に記載の包接化合物の製造方法。
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