JP5819654B2 - ノンハロゲン難燃性ゴム組成物、ならびにそれを用いた電線およびケーブル - Google Patents

ノンハロゲン難燃性ゴム組成物、ならびにそれを用いた電線およびケーブル Download PDF

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Description

本発明は、耐熱性および耐放射線性に優れたノンハロゲン難燃性ゴム組成物、ならびにそれを用いた電線およびケーブルに関する。
電線やケーブルに用いるゴム組成物には、火災防止の観点から難燃性が要求される。難燃性を付与するためには、デカブロモジフェニルエーテル、エチレンビス(ペンタブロモベンゼン)等の臭素化合物;トリフェニルホスフェート等のリン化合物;塩素化パラフィン等の塩素化合物;メラミンシアヌレート等の窒素化合物などの有機系難燃剤、赤リン、アンチモン化合物、金属水酸化物等の無機系難燃剤が使用される。難燃性を付与する効果の点では有機ハロゲン系化合物が好ましく用いられてきたが、有機ハロゲン系化合物を含有するゴム組成物の燃焼時もしくは成形加工時、または成形品が焼却される際にハロゲン化水素ガスやダイオキシン等の腐食性ガスまたは有毒ガスが発生することが問題となっていた。そこで、有機ハロゲン系化合物を用いずに高度の難燃性を付与する試みがなされてきた。
有機ハロゲン系化合物を含まない難燃性ゴム組成物としては、エチレン・α−オレフィン系ランダム共重合体と不飽和ニトリル・共役ジエン系ゴムに、表面処理された天然水酸化マグネシウムを添加した組成物(特許文献1)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂に、水和金属酸化物、特定の無機酸とメラミンの塩、およびシリコーン系化合物を添加してなる難燃性樹脂組成物(特許文献2)、特定の組成よりなる熱可塑性樹脂成分に、有機パーオキサイド、(メタ)アクリレート系および/またはアリル系架橋助剤、ならびにシランカップリング剤で処理した金属水和物を混合し、加熱・混練してなる難燃性樹脂組成物(特許文献3)、エチレン・プロピレンゴム等の樹脂成分に対し、特定質量比の金属水和物およびメラミンシアヌレート化合物を含有し、金属水和物の50質量%以上がシランカップリング剤で表面処理され、特定の物性値を有することを特徴とする絶縁樹脂組成物(特許文献4)が開示されている。
しかしながら、原子力発電所、放射性廃棄物の貯蔵・処理施設、放射性同位体を扱う研究・医療施設等、放射線濃度の高い施設で使用される電線やケーブルには、難燃性に加えて高度の耐放射線性が要求されるが、特許文献1〜4に記載された組成物については、耐放射線性についての言及はない。また、ベースとなる樹脂について、本願発明のように、ジエン含有量に注目して検討したものはない。
一方、耐放射線性を付与した組成物としては、ヨウ素価が1〜10のエチレン・プロピレン・ジエンゴムおよびプロセス油が配合されてなる組成物が開示され(特許文献5)、共重合体に含まれる不飽和結合量の寄与が示されている。また、耐放射線性の非ハロゲン難燃性樹脂組成物として、エチレン系ポリマーに対し、芳香族アミン系酸化防止剤および金属水酸化物を混和してなる組成物(特許文献6)、ポリオレフィン系樹脂に対して、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系およびトリアジン系の紫外線吸収剤を添加してなる組成物(特許文献7)が開示されている。
しかし、特許文献5に記載された耐放射線性組成物においては、ジエン含有量は考慮されているものの、2種類の表面処理水酸化マグネシウムを用いることは示されておらず、特許文献6および7においては、ベースとなる共重合体について、ジエン含有量は考慮されていない。
特開2004−262963号公報 特開2001−151949号公報 特開2001−316537号公報 特開2002−42552号公報 特開平4−268350号公報 特開2008−303307号公報 特開2009−84571号公報
そこで、本発明においては、より高度な耐熱性および耐放射線性を有し、燃焼した場合にもハロゲン化水素ガス、ダイオキシン等の有毒または腐食性のガスを発生することのない、ノンハロゲン難燃性ゴム組成物、およびそれを用いてなるノンハロゲン難燃性電線またはケーブルを提供することを目的とした。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、ジエン含有量の低いエチレン・プロピレン・ジエンゴムを含有するポリマーに、シランで表面処理した水酸化マグネシウムと、脂肪酸またはリン酸エステルで表面処理した水酸化マグネシウムを含有させることにより、耐熱性および耐放射線性が向上し、ゴム弾性も良好となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の[1]〜[9]に関する。
[1]以下の(a)〜(c)を含有してなる、ノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
(a)ジエン含有量が10質量%以下であるエチレン・プロピレン・ジエンゴムを含有し、ポリマー全体のジエン含有量が0.5質量%〜3.0質量%であるポリマー、
(b)シラン処理水酸化マグネシウム、
(c)脂肪酸またはリン酸エステル処理水酸化マグネシウム。
[2](a)が、さらにシリコーン変性エチレン・プロピレン・ジエンゴムを含有する、上記[1]に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
[3](a)が、さらにエチレン・α−オレフィン共重合体を含有する、上記[1]または[2]に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
[4]エチレン・α−オレフィン共重合体が、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体およびエチレン・オクテン共重合体よりなる群から選択される1種または2種以上である、上記[3]に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
[5](b)のシラン処理水酸化マグネシウムを、(a)のポリマー100質量部に対して50質量部以上含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
[6](b)のシラン処理水酸化マグネシウムと、(c)の脂肪酸またはリン酸エステル処理水酸化マグネシウムの総含有量が、(a)のポリマー100質量部に対して110質量部以上である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
[7]さらに、(d)シラン処理焼成クレーを、(a)のポリマー100質量部に対して45質量部以下となるように含有する、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかに記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物を被覆材として用いてなる、電線。
[9]上記[1]〜[7]のいずれかに記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物を被覆材として用いてなる、ケーブル。
本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物は、より高度な耐熱性および耐放射線性を有し、かつハロゲン化合物を含有しないため、ハロゲン化水素ガス等の有毒または腐食性のガスを発生することがなく、安全性が高い。従って、原子力発電所、放射性廃棄物の貯蔵・処理施設、放射性同位体を扱う研究・医療施設等、放射線濃度の高い施設において、電線またはケーブル用絶縁ゴムとして好ましく用いることができる。
本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物は、(a)ジエン含量が10質量%以下であるエチレン・プロピレン・ジエンゴムを含有し、ポリマー全体のジエン含有量が0.5質量%〜3.0質量%であるポリマー、(b)シラン処理水酸化マグネシウム、および(c)脂肪酸またはリン酸エステル処理水酸化マグネシウムを含有してなる。なお、以下において、特に示さない限り、「%」は「質量%」を意味する。
ノンハロゲン難燃性ゴム組成物に十分な耐熱性および耐放射線性を付与するためには、(a)のポリマー成分中のジエン含有量は0.5質量%〜3.0質量%である。このジエン成分は、(a)のポリマー成分に含まれるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下「EPDM」と表記する)に由来するものである。EPDMは、エチレン、プロピレンおよびジエンモノマーを共重合させて得られる。ジエンモノマーとしては、公知のものを用いることができ、特に限定されないが、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、3,6−ジメチル−1,7−オクタジエン、4,5−ジメチル−1,7−オクタジエン、5−メチル−1,8−ノナジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエンなどを挙げることができ、特に1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等が好ましく用いられる。これらのジエンモノマーは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、(a)のポリマー成分に含まれるEPDMとしては、エチレン40%〜80%、プロピレン20%〜60%、および10%以下のジエンモノマーを含有する単量体成分を共重合させて得られるものが好ましく、JIS K 6300−1により測定したムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が5〜90であるものが好ましい。(a)のポリマー成分には1種類のEPDMを単独で含有させることができ、またジエン含有量が同一のEPDMを2種以上組み合わせて含有させてもよく、ジエン含有量が異なるEPDMを2種以上組み合わせて含有させてもよい。また、(a)のポリマー成分に含まれるEPDM全体としては、エチレン含有量が40%〜80%、プロピレン含有量が20%〜60%、およびジエン含有量が0.5%〜10%で、JIS K 6300−1により測定したムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が5〜90であることが好ましい。
上記EPDMは、エチレン、プロピレンおよびジエンモノマーを上記含有量比となるよう常法に従って共重合させて得たものを用いることができるが、各単量体の含有量比、ムーニー粘度が上記範囲となる市販の製品を用いてもよい。かかる市販のEPDMとしては、「三井EPT」(三井化学株式会社製)、「エスプレン」(住友化学株式会社製)、「NORDEL」(ダウケミカル社製)、「JSR EP」(JSR株式会社製)等のうち、ジエン含有量が10%以下であるものを用いることができる。
本発明において、ゴムの可撓性等の特性と、耐熱性および耐放射線性のすべてを満足させるためには、(a)のポリマー全体のジエン含有量が0.5%〜3.0%であることを要する。前記ジエン含有量が0.5%未満であると、ゴム組成物の耐放射線性が低下するため好ましくなく、また、3.0%を超えると、ゴム組成物の耐熱性および耐放射線性が低下するからである。従って、上記のジエン含有量が10%以下のEPDMは、(a)のポリマー全量に対し、20%〜100%含有させることが好ましく、30%〜100%含有させることがより好ましい。また、ゴム組成物全量に対する(a)のポリマーの含有量は、好ましくは25%〜45%、より好ましくは30%〜40%である。
本発明においては、(a)のポリマー成分として、EPDMに加えてシリコーン変性EPDMを含有させることにより、難燃性の向上を図ることができる。シリコーン変性EPDMは、シラノール化合物やシロキサンを介してEPDMおよびシリコーンの両ポリマー間の結合力を高めたハイブリッドゴムであり、JIS K 6300−1により測定したムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が40〜80のものが好ましく用いられる。また、「SEP1711U」、「SEP1721U」(信越化学工業株式会社製)等の市販品を用いることもできる。耐放射線性の低下を起こすことなく難燃性を向上させるためには、シリコーン変性EPDMは、(a)のポリマー全量に対しては、5%〜15%含有させることが好ましく、5%〜10%含有させることがより好ましい。
本発明においては、(a)のポリマー成分として、EPDM、シリコーン変性EPDMに加えて、さらにエチレン・α−オレフィン共重合体を含有させることにより、耐熱性の改善を図ることができる。エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等が好ましく、JIS K 6300−1により測定したムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が10〜80のものが好ましく用いられる。また、たとえば「タフマー」(三井化学株式会社製)、「エンゲージ」(ダウケミカル社製)等の市販品を用いることもできる。可撓性および耐放射線性の低下を起こすことなく耐熱性の改善を図るためには、エチレン・α−オレフィン共重合体は、EPDMおよびシリコーン変性EPDMを合わせた合計含有量に対して80%以下となるように含有させることが好ましく、15%〜65%含有させることがより好ましい。
(b)のシラン処理水酸化マグネシウムは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル基、メタクリロキシ基またはエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基を末端に有するシランカップリング剤、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤などの反応性官能基を有するシランカップリング剤を用いて表面処理した水酸化マグネシウムであり、好適には、シランカップリング剤としてビニル基、メタクリロキシ基またはエポキシ基を有するシランカップリング剤を用いて表面処理したものが挙げられる。
本発明の目的には、シラン処理水酸化マグネシウムは公知のものを使用することができ、水酸化マグネシウム100質量部に対し、上記シランカップリング剤0.1質量部〜5質量部を用いて処理したものを用いることが好ましい。また、かかるシラン処理水酸化マグネシウムとして、「マグシーズS」(神島化学工業株式会社製)、「キスマ5P」、「キスマ5L」、「キスマ5N」(以上協和化学工業株式会社製)等の市販品を用いることもできる。
(c)の脂肪酸またはリン酸エステル処理水酸化マグネシウムとしては、高級脂肪酸もしくはその塩、または脂肪族アルコールのリン酸エステルもしくはその塩により表面処理したものを用いることができる。
上記高級脂肪酸としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸等が好ましい。また上記高級脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩あるいはマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が例示される。
上記脂肪族アルコールのリン酸エステルとしては、リン酸ラウリル、リン酸ジラウリル、リン酸ミリスチル、リン酸ジミリスチル、リン酸パルミチル、リン酸ジパルミチル、リン酸ステアリル、リン酸ジステアリル、リン酸アラキル、リン酸ジアラキル、リン酸ベヘニル、リン酸ジベヘニル、リン酸リグノセリル、リン酸ジリグノセリル等の飽和脂肪族アルコールのリン酸モノまたはジエステル;リン酸オレイル、リン酸ジオレイル等の不飽和脂肪族アルコールのリン酸モノまたはジエステルが好ましく用いられる。
上記脂肪族アルコールのリン酸エステルの塩としては、下記の式(1)で示される塩が好ましく用いられる。たとえば、ナトリウム塩、ジナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;ジエタノールアミン塩等のジアルコールアミン塩が例示される。
本発明の目的には、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、またはリン酸ラウリルエステルナトリウム塩、リン酸ジオレイルエステルジエタノールアミン塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステルのアルカリ金属塩またはジアルコールアミン塩等により表面処理したものが好ましく用いられる。
Figure 0005819654
[式中、Rは炭素原子数10〜30のアルキル基またはアルケニル基、Mは周期律表第IA族原子のイオン、NH4+または式(2)で示されるジアルカノールアミンを示し、nは1または2を示す。]
Figure 0005819654
[式中、R、Rは同一または異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。]
本発明の目的には、脂肪酸処理水酸化マグネシウムは、水酸化マグネシウム100質量部に対し、上記脂肪酸0.1質量部〜5質量部を用いて処理したものを用いることが好ましい。かかる脂肪酸処理水酸化マグネシウムとして、「マグシーズN」(神島化学工業株式会社製)、「キスマ5A」、「キスマ5B」(以上協和化学工業株式会社製)等の市販品を用いることもできる。また、リン酸エステル処理水酸化マグネシウムは、水酸化マグネシウム100質量部に対し、上記リン酸エステル0.1質量部〜5質量部を用いて処理したものを用いることが好ましい。かかるリン酸エステル処理水酸化マグネシウムとして、「キスマ5J」(協和化学工業株式会社製)等の市販品を用いることもできる。
本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物には、上記(b)成分と(c)成分とを併用して含有させる。これらはゴム組成物への難燃性付与に寄与する。(b)成分および(c)成分は、十分な難燃性を付与するためには、これらの総量で(a)のポリマー100質量部に対し110質量部以上含有させることが好ましく、120質量部以上含有させることがより好ましい。一方、耐熱性および耐放射線性の低下を抑制するためには、180質量部以下とすることが好ましく、170質量部以下とすることがより好ましい。また、本発明の組成物に好ましいゴム弾性を付与するためには、(b)のシラン処理水酸化マグネシウムを(a)のポリマー100質量部に対し50質量部以上含有させることが好ましい。しかし、組成物の伸び、柔軟性、耐熱性および耐放射線性を考慮すると、(b)のシラン処理水酸化マグネシウムの含有量は、(b)および(c)の水酸化マグネシウムの総含有量に対し、55%以下とすることが好ましい。
さらに本発明においては、(d)のシラン処理焼成クレーを含有させることができる。シラン処理焼成クレーは、上記のシランカップリング剤により表面処理した焼成カオリン、焼成タルク、焼成パイロフィライト、焼成スメクタイト、焼成バーミキュライト、焼成ハロサイト等の焼成クレーである。本発明の目的には、ビニル基またはアミノ基を有するシランカップリング剤により処理されたシラン処理焼成クレーを用いることが好ましい。これらシラン処理焼成クレーを含有させることにより、ノンハロゲン難燃性ゴム組成物の特性にほとんど影響を与えることなく、押出後の押出機内の清掃作業性の改善を図ることができる。
本発明においては、(d)のシラン処理焼成クレーとして、焼成クレー100質量部に対し、シランカップリング剤0.1質量部〜5質量部により処理したものを用いることが好ましい。かかるシラン処理焼成クレーとして、「TRANSLINK 37」、「TRANSLINK 77」、「TRANSLINK 445」(以上BASF社製)等の市販品を用いることもできる。なお、シラン処理焼成クレーの含有量は、(a)のポリマー100質量部に対して15質量部以上とすることが好ましい。また、45質量部を超えて含有させると、組成物の引っ張り特性、可撓性、耐放射線性等に影響することがあるため、(a)のポリマー100質量部に対する含有量は、45質量部以下とすることが好ましい。
本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物には、本発明の特徴を損なわない範囲で、電線、ケーブル等において一般的に使用されている各種の添加剤、たとえば、架橋剤、架橋促進助剤、架橋助剤、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃助剤、充填剤、加工助剤等を適宜配合することができる。
架橋剤としては、有機過酸化物等を用いることができる。本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物において、かかる架橋剤は1種または2種以上を選択して用いることができ、(a)のポリマー100質量部に対し、通常1質量部〜10質量部、好ましくは2質量部〜6質量部を用いる。
上記の有機過酸化物としては、たとえば、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好ましく用いられる。
架橋促進助剤としては、酸化亜鉛を好ましく用いることができる。本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物において、かかる架橋促進助剤は、(a)のポリマー100質量部に対し、通常1質量部〜20質量部、好ましくは3質量部〜15質量部を用いる。
さらに、架橋助剤としては、具体的には、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、1,2−ポリブタジエン、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなどの多官能性化合物が例示される。架橋剤、架橋助剤の添加量は必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で適宜調整することができる。
酸化防止剤としては、ジオクチル化ジフェニルアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ビス(4−α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等の芳香族アミン系酸化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等のアミン−ケトン系酸化防止剤;ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤;ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;2−メルカプトベンズイミダゾールおよびその亜鉛塩等のベンズイミダゾール系酸化防止剤などが挙げられる。
本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物において、上記酸化防止剤より1種または2種以上を選択して用いることができ、(a)のポリマー100質量部に対し、通常1質量部〜15質量部、好ましくは2質量部〜10質量部を用いる。
金属不活性剤としては、N, N’−ビス(3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1, 2, 4−トリアゾール、2, 2' −オキサミドビス−(エチル3−(3, 5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を選択して用いることができ、(a)のポリマー100質量部に対し、通常0.1質量部〜3質量部、好ましくは0.2質量部〜2質量部を用いる。
難燃助剤および充填剤としては、赤リン、カーボンブラック、クレー、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボン等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を選択して用いることができる。なお、難燃助剤および充填剤の添加量は必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で適宜調整することができる。
また、加工助剤はゴムの加工操作性をよくするために使用され、プロセス油または伸展油、滑剤等が含まれる。プロセス油または伸展油としては、パラフィン系油、アロマティック系油、ナフテン系油等の石油系油などを挙げることができる。滑剤としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素;ステアリン酸、パルチミン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸;ステアロアミド、オレイルアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸アミド;ステアリルアルコール等の脂肪族アルコール;n−ブチルステアレート、ステアリン酸モノグリセリド等の脂肪酸エステル;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石けんなどが挙げられる。
本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物において、上記加工助剤より1種または2種以上を選択して用いることができ、(a)のポリマー100質量部に対し、通常0.1質量部〜5質量部、好ましくは0.3質量部〜3質量部を用いる。
本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物は、従来公知のインタミックス、ニーダーまたはバンバリーミキサなどの密閉式混練機、オープンロールまたは二軸混練押出機などを用いて混練した後、射出成形機、圧縮成形機、加熱プレス機または押出成形機などを用いて所望の形状に成形し加硫する、あるいは加硫成形することで、加硫成形体を得ることができる。前記加硫あるいは加硫成形においてゴム工業において通常用いられる条件で本発明のゴム組成物を加硫することができ、本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物については、140℃〜220℃で2分間〜120分間という条件で加硫を施すことが好ましい。
本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物は、原子力発電所、放射性廃棄物の貯蔵・処理施設、放射性同位体を扱う研究・医療施設等、放射線濃度の高い施設において使用される電線またはケーブルの絶縁ゴム等、被覆材として適する。従って、本発明は、上記ノンハロゲン難燃性ゴム組成物を被覆材として用いることにより、難燃性の電線またはケーブルをも提供する。
本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物を電線またはケーブルの被覆材として使用する場合には、好ましくは押出被覆により、導体の外周に形成した少なくとも1層の前記本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物からなる被覆層を有すること以外、特に制限はない。たとえば、導体としては軟銅の単線又は撚線等、公知の任意のものを用いることができる。また、導体としては、裸線の他に、スズメッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いてもよい。従って、本発明の電線またはケーブルは、本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物を、汎用の押出被覆装置を用いて、導体周囲や絶縁電線周囲に押出被覆することにより製造することができる。その際の押出被覆装置の温度は、シリンダー部、クロスヘッド部いずれも約50℃〜約120℃程度にすることが好ましい。本発明の電線またはケーブルにおいては、導体の周りに形成される絶縁層、すなわち本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物からなる被覆層の厚さは、特に限定されないが、通常0.2mm〜5mm程度である。
なお、本発明のノンハロゲン難燃性組成物が(d)のシラン処理焼成クレーを含有する場合、押出後の押出混練機、押出成形機、押出被覆装置等の機内または装置内の清掃作業性が改善されるため、前記機器または装置を用いた混練、成形、被覆を行う場合には特に好ましい。
さらに、本発明について、実施例により詳細に説明する。
本発明の実施例のノンハロゲン難燃性ゴム組成物の処方を、比較例のゴム組成物の処方とともに表1に示した。これらのゴム組成物は、表1中の(a)〜(d)成分および加工助剤、酸化防止剤等の他の成分を、40℃〜90℃にて約30分間オープンロールにより混練して調製した。調製した各ゴム組成物は、170℃にて20分間加熱プレス成形加硫して、以下に示す厚さのシート試料を得た。なお、表1中の各成分については、表2に示すものを用いた。
Figure 0005819654
Figure 0005819654
実施例および比較例の各ゴム組成物について、以下に示す通り、引張特性、硬さ、難燃性、耐熱性および耐放射線性を評価した。結果は表1にまとめて示した。
(1)引張特性
各ゴム組成物のゴム弾性の尺度として、JIS K 6251に準拠し、引張特性を評価した。具体的には、200%モジュラス(200%M:200%伸び時における引張応力)、引張強さ(TS:破断時引張応力)、伸び(EL:破断時伸張率)を評価した。シート試料の厚さは、約1mmとした。200%モジュラスが低すぎると荷重がかかった場合に変形および永久変形が生じやすくなり好ましくない。TS、ELが低いと製品として強度不足となる。
本発明の目的を達成するための基準は、200%M>2.5(MPa)、TS>4.0(MPa)、およびEL>300(%)である。
(2)硬さ
硬さはゴム組成物の可撓性の指標として評価した。具体的には、JIS K 6253タイプAデュロメータ硬さ試験方法により評価し、測定時間は0秒(瞬間値)とした。シート試料の厚さは、約3mmとし、シート試料を2枚重ねて試験に用いた。
本発明の目的を達成するための基準は、硬さ<80である。
(3)難燃性
JIS K 7201−2に準拠し、酸素指数(LOI)を測定した。シート試料の厚さは、約3mmとした。酸素指数(LOI)とは、規定の条件下において、試料の燃焼を持続するために必要な酸素と窒素との混合気体の容量%で表される最低酸素濃度の数値であり、この値が大きいほど難燃性に優れる。
本発明の目的を達成するための基準は、LOI>29(%)である。
(4)耐熱性
試料を140℃で120日処理した後の引張特性を評価し、TS残率、EL残率およびEL絶対値を測定した。シート試料の厚さは、約1mmとした。
本発明の目的を達成するための基準は、EL絶対値>150(%)である。
(5)耐放射線性
試料に約10kGy/hの線量率にて2MGyのγ線を照射した後の引張特性を評価し、TS残率、EL残率およびEL絶対値を測定した。シート試料の厚さは、約1mmとした。
本発明の目的を達成するための基準は、EL絶対値>120(%)である。
表1より明らかなように、本発明の実施例のゴム組成物は、いずれも上記の各評価において、上記各基準を満足するものであった。一方、ポリマー中のジエン含有量が3.0%を越えている比較例3および4のゴム組成物は、耐熱性および耐放射線性が不十分であった。また、ポリマー中のジエン含有量が0.5%に満たない比較例5のゴム組成物は、硬さが基準を満たさず、その可撓性が不十分であることが示され、耐放射線性も不十分であった。シラン処理水酸化マグネシウムを含有しない比較例1のゴム組成物は、200%モジュラスおよび難燃性が不十分であり、脂肪酸処理水酸化マグネシウム、リン酸エステル処理水酸化マグネシウムのいずれも含まない比較例2のゴム組成物では、伸び、硬さ、難燃性および耐熱性において満足できるものではなかった。
本発明によれば、高度な耐熱性および耐放射線性を有し、かつハロゲンガス等の有毒または腐食性のガスを発生することがなく、安全性が高いため、原子力発電所、放射性廃棄物の貯蔵・処理施設、放射性同位体を扱う研究・医療施設等、放射線濃度の高い施設において、電線またはケーブル用絶縁ゴムとして好ましく用い得るノンハロゲン難燃性ゴム組成物を提供することができる。
また、本発明のノンハロゲン難燃性ゴム組成物を被覆材として用いることにより、難燃性に優れ、ハロゲンガスを発生することのない電線またはケーブルを提供することができる。

Claims (12)

  1. 以下の(a)〜(c)および架橋剤を含有してなる、ノンハロゲン難燃性ゴム組成物であって、(b)のシラン処理水酸化マグネシウムの含有量が、(a)のポリマー100質量部に対して50質量部以上であり、かつ(b)および(c)の水酸化マグネシウムの総含有量に対して55%以下であって、日本工業規格 K 6251に準拠して測定される200%モジュラスが2.5MPaより大きく、日本工業規格 K 7201−2に準拠して測定される酸素指数が29%を超える、ノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
    (a)ジエン含量が10質量%以下であるエチレン・プロピレン・ジエンゴムを含有し、ポリマー全体のジエン含有量が0.5質量%〜3.0質量%であるポリマー、
    (b)シラン処理水酸化マグネシウム、
    (c)脂肪酸またはリン酸エステル処理水酸化マグネシウム。
  2. (a)が、さらにシリコーン変性エチレン・プロピレン・ジエンゴムを含有する、請求項1に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
  3. (a)が、さらにエチレン・α−オレフィン共重合体を含有する、請求項1または2に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
  4. エチレン・α−オレフィン共重合体が、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体およびエチレン・オクテン共重合体よりなる群から選択される1種または2種以上である、請求項3に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
  5. (b)のシラン処理水酸化マグネシウムと、(c)の脂肪酸またはリン酸エステル処理水酸化マグネシウムの総含有量が、(a)のポリマー100質量部に対して110質量部以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
  6. さらに、(d)シラン処理焼成クレーを、(a)のポリマー100質量部に対して45質量部以下となるように含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物を被覆材として用いてなる、電線。
  8. 原子力発電所用である、請求項7に記載の電線。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物を被覆材として用いてなる、ケーブル。
  10. 原子力発電所用である、請求項9に記載のケーブル。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のノンハロゲン難燃性ゴム組成物を架橋してなる、ゴム成形体。
  12. 日本工業規格(JIS) K 6253に準拠して評価したタイプAデュロメータ硬さが80未満である、請求項11に記載のゴム成形体。
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