JP5817907B2 - 金属材料、金属材料の製造方法、金属材料を基材とした撥水材料の製造方法、金属材料の製造装置、および金属材料の製造方法 - Google Patents

金属材料、金属材料の製造方法、金属材料を基材とした撥水材料の製造方法、金属材料の製造装置、および金属材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属材料、金属材料の表面処理方法、金属材料を基材とした撥水材料の製造方法、導電性材料の表面処理装置、および導電性材料の表面処理方法に関するものである。
近年、金属材料に新機能を付与することが強く期待されている。具体的には、強度、加工性、耐食性といった金属材料が本来有する有利な特性に加えて、親水特性、撥水特性、発光特性といった金属表面に関する新機能が金属材料の新しい利用分野を開拓する意味で大いに期待されている。このような背景から、最近では、めっき層、酸化層、表面硬化層、表面粗度を向上させた改質層などの改質層を金属表面に形成する研究が盛んに行われている。一例をあげると、金属表面をアノード酸化して微細構造を形成する技術(非特許文献1参照)や電解加工による表面微細構造を形成する技術(非特許文献2参照)などがある。
高橋英明、坂入正敏、菊地竜也、ジャー・ヒメンドラ表面技術 Vol.60 (2009) No.3 p.14 電解加工の微細加工への応用と理論 夏恒 表面技術 Vol.61 (2010) No.4 294
金属材料表面に親水特性、撥水特性、発光特性といった新機能を付与するためには、1μm以下のミクロな視点で表面改質層の構造や組成を設計する必要がある。しかしながら、従来までの研究は、加工性や耐食性などの機能の向上を目的としたものであり、ミクロンオーダーで表面改質層の構造や組成を設計していたために、新機能の発現には不十分であった。例えば、表面粗度を向上させる方法として、金属材料の表面にダル構造を有するロールを押し付ける方法が提案されている。ところが、この方法によって形成される金属材料表面の凹凸はミクロンオーダー以上の大きさを有している。このため、金属材料表面は、油保持による加工性の向上や表面外観を均一にする効果を有するが、新機能を発現しない。また、自動車外板の塗装密着性を高める方法として、金属材料表面にリン酸塩結晶を形成する方法が提案されている。ところが、この方法によって形成されるリン酸塩結晶の粒子径は数ミクロンの大きさを有している。このため、金属材料表面は新機能を発現しない。
一方、既報告の微細構造形成技術のうち、非特許文献1に記載の技術のような金属表面をアノード酸化して微細構造を形成する技術は、微細な孔を形成するものであり、付与できる機能が限定されてしまう。また、表面が酸化層になるために、表面物性が酸化物種に限定されてしまう。また、非特許文献2に記載の方法のような電解加工を用いる方法は、表面微細構造を形成させるために被処理表面と対向電極との間の距離を非常に短くする必要があるが、この制御は大変困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、親水特性および発光特性などの新しい機能を有する金属材料を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、多くの労力および費用を要することなく金属材料表面に高い撥水特性を付与することが可能な金属材料の表面処理方法および金属材料を基材とした撥水材料の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、表面の所定の場所又は表面の広い面積にわたって処理を行いナノレベルの微細構造が形成された導電性材料を低コストで効率的に製造可能な導電性材料の表面処理装置および表面処理方法を提供することにある。
本発明に係る金属材料は、金属材料基材と、前記金属材料基材の表面上に形成された改質層と、を備え、前記改質層は、前記金属材料基材の表面に対し垂直な方向から見たときの平均直径が1μm以下である、前記金属材料基材の表面から突出する突起部を10μmの範囲内に平均して3個以上備えることを特徴とする。
本発明に係る金属材料は、上記発明において、前記改質層が、前記金属材料基材の表面から突出する基部と、前記基部の端部に形成された先端部と、を備え、前記金属材料基材の表面に対し垂直な方向から見たときの平均直径が1μm以下であり、前記基部の外径が前記先端部の外径より小さいくびれ構造を有する突起部を10μmの範囲内に平均して1個以上備えることを特徴とする。
本発明に係る金属材料は、上記発明において、前記突起部の前記金属材料基材の表面に対し垂直な方向から見たときの平均直径が500nm以下であることを特徴とする。
本発明に係る金属材料は、上記発明において、前記突起部が形成されている位置が前記金属材料基材の面内方向において周期性を有さないことを特徴とする。
本発明に係る金属材料は、上記発明において、前記改質層が、前記金属材料基材の表面に対し垂直な方向から見たときの平均直径が500nm以下の凹部を備えることを特徴とする。
本発明に係る金属材料は、上記発明において、前記金属材料基材が合金鋼により形成されていることを特徴とする。
本発明に係る金属材料は、上記発明において、前記金属材料基材が鋼材により形成されていることを特徴とする。
本発明に係る金属材料は、上記発明において、前記金属材料基材の組成と前記突起部の組成とが異なることを特徴とする。
本発明に係る金属材料は、上記発明において、前記金属材料基材と前記突起部とが連続的に繋がっていることを特徴とする。
本発明の第1の態様に係る金属材料の表面処理方法は、被処理表面を有する金属材料からなる陰極電極としての被処理材と陽極電極とを電解溶液中に浸漬させるステップと、前記陰極電極と前記陽極電極との間に70V以上で被処理材が酸化又は熔解しない範囲の電圧を印加することによって、前記被処理表面に微細構造を形成するステップと、前記電解溶液中から前記被処理材を取り出し、該被処理材を洗浄するステップと、洗浄された前記被処理材の前記被処理表面に撥水処理を施すステップと、を含むことを特徴とする。
本発明の第2の態様に係る金属材料の表面処理方法は、被処理表面を有する金属材料からなる陰極電極としての被処理材と陽極電極とを電解溶液中に浸漬させるステップと、前記陰極電極と前記陽極電極との間に70V以上200V以下の電圧を印加することによって、前記被処理表面に微細構造を形成するステップと、前記電解溶液中から前記被処理材を取り出し、該被処理材を洗浄するステップと、洗浄された前記被処理材の前記被処理表面に撥水処理を施すステップと、を含むことを特徴とする。
本発明に係る金属材料を基材とした撥水材料の製造方法は、被処理表面を有する陰極電極としての被処理材である金属材料と陽極電極とを電解溶液中に浸漬させるステップと、前記陰極電極と前記陽極電極との間に70V以上200V以下の電圧を印加することによって、前記被処理材である金属材料表面に微細構造を形成するステップと、前記電解溶液中から前記金属材料を取り出し、該金属材料を洗浄するステップと、洗浄された前記金属材料の前記被処理表面に撥水処理を施すステップと、を含むことを特徴とする。
本発明に係る導電性材料の表面処理装置は、電解溶液中に互いに離隔して浸漬された陽極電極および導電性材料からなる陰極電極と、前記陽極電極と前記陰極電極との間に介在し、前記陰極電極の被処理部分を限定する開口部を有する遮蔽物と、前記陽極電極と前記陰極電極との間に電圧を印加する電源と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る導電性材料の表面処理装置は、上記発明において、前記開口部の位置および/または前記陽極電極と前記陰極電極との相対位置を変化させる機構を備えることを特徴とする。
本発明に係る導電性材料の表面処理装置は、上記発明において、前記電源が、陽極電極と陰極電極との間に60V以上、300V以下の電圧を印加することを特徴とする。
本発明に係る導電性材料の表面処理装置は、上記発明において、前記遮蔽物は、陰極電極の表面に被覆された前記開口部を有する絶縁性の耐熱材料であることを特徴とする。
本発明に係る導電性材料の表面処理装置は、上記発明において、前記導電性材料が金属材料であることを特徴とする。
本発明に係る導電性材料の表面処理方法は、本発明に係る導電性材料の表面処理装置を利用して導電性材料の表面を処理することを特徴とする。
本発明に係る金属材料によれば、親水特性および発光特性などの新しい機能を有する金属材料を提供することができる。
本発明に係る金属材料の表面処理方法および金属材料を基材とした撥水材料の製造方法によれば、多くの労力および費用を要することなく金属材料表面に高い撥水特性を付与することができる。
本発明に係る導電性材料の表面処理装置および表面処理方法によれば、表面の所定の場所又は表面の広い面積にわたってナノレベルの微細構造が形成された導電性材料を低コストで効率的に製造することができる。
図1Aは、本発明の一実施形態である金属材料の構成を示す平面図である。 図1Bは、図1AのA−A線断面図である。 図2は、冷延鋼板の表面に形成された突起部の一例を示すSEM写真図である。 図3は、突起部の外径の算出方法を説明するための模式図である。 図4は、突起部のくびれ構造を説明するための模式図である。 図5は、冷延鋼板に形成されたくびれ構造を有する突起部の一例を示すSEM写真図である。 図6は、冷延鋼板に形成されたくびれ構造を有する突起部の一例を示す断面TEM写真図である。 図7は、ステンレス鋼の表面に形成された凹部の一例を示すSEM写真図である。 図8は、ステンレス鋼の表面に形成された凹部の一例を示すSEM写真図である。 図9は、基材の組成とは異なる組成を有する突起部の一例を示す断面TEM写真図である。 図10は、冷延鋼板に突起部が連続的に形成されている様子を示す断面TEM写真図である。 図11は、本発明の一実施形態である金属材料の表面処理の流れを示すフローチャートである。 図12は、本発明の一実施形態である金属材料の表面処理方法において用いられる装置の一構成例を示す模式図である。 図13は、表面処理されたSUS316Lステンレス鋼の表面を示すSEM写真図である。 図14は、図13に示すステンレス鋼表面に撥水処理を施した後に表面に蒸留水を滴下した状態を横方向から観察した図である。 図15は、本発明の一実施形態である導電性材料の表面処理装置の構成を示す模式図である。 図16は、図15に示す表面処理装置の変形例を示す模式図である。 図17は、図15に示す表面処理装置の変形例を示す模式図である。 図18は、開口部の構成を示す図である。 図19Aは、陽極電極と陰極電極との間に150Vを印加した時の開口部の長さ方向の左部の二次電子像を示す図である。 図19Bは、陽極電極と陰極電極との間に150Vを印加した時の開口部の長さ方向の中央部の二次電子像を示す図である。 図19Cは、陽極電極と陰極電極との間に150Vを印加した時の開口部の長さ方向の右部の二次電子像を示す図である。 図20は、開口部の大きさを5mm×5mmおよび5mmφとして処理した後の陰極電極の外観を示す図である。 図21は、開口部の大きさを5mmφとして処理した後の陰極電極表面のSEM像を示す図である。 図22は、表面処理を行っていない陰極電極表面のSEM像を示す図である。
〔金属材料〕
図1A,1Bはそれぞれ、本発明の一実施形態である金属材料の構成を示す平面図および図1AのA−A線断面図である。図1A,1Bに示すように、本発明の一実施形態である金属材料1は、基材2と、基材2の表面上に形成された改質層としての突起部3と、を備えている。基材2は、金属材料によって形成されている。金属材料としては、ステンレス鋼を含む合金鋼、FeとCと必要に応じて3質量%以下程度の微量な合金元素とを含有する冷延鋼板などの鋼材、軟質鋼板、引張強度2GPa級の高強度鋼板、熱延鋼板などを例示できる。基材2の形状は、特に限定されることはなく、板状、棒状、線状、若しくはパイプ状などの形状を利用できる。また、基材2は、複数の部材が溶接されたものであってもよい。また、基材2が板状である場合、その板厚が限定されることはなく、100μm以下の金属箔から厚さ3mm以上の厚鋼板まで利用することができる。
突起部3は、基材2の表面に対し垂直な方向から見たときの平均直径Rが1μm、好ましくは500nm以下である、基材2の表面から突出する微細構造によって形成されている。図2は、冷延鋼板の表面に形成された突起部の一例を示す走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope : SEM)写真図である。図中、矢印で示したものが突起部3である。この突起部3は、冷延鋼板および白金電極をそれぞれ陰極電極および陽極電極として濃度0.3mol/LのKCO水溶液中において30分間135Vで通電することによって形成されたものである。この場合、図3に示すように、冷延鋼板の表面に対し垂直な方向から見たときの突起部3の平均直径Rは、突起部3の輪郭によって囲まれる面積と同じ面積を有する円Cを想定し、この円Cの直径Rを算出することによって求めた。このような突起部3を10μmの範囲内に平均して3個以上形成することによって、発光特性や親水特性を基材2の表面に付与できる。親水特性を高くすることにより、金属表面に液滴が形成されにくくなる結果、有機物などの汚れがつきにくい清浄化作用を有するようになり、反射強度の落ちにくい光反射板などの様々な用途が期待できる。突起部3の面内分布は、限定されるものではないが、特段の周期性を有さないことは製造上有利である。例えば、突起部3が列状に周期性を有する表面を製造するためには、過度の工程が必要となり、製造上不利となる。
図4に示すように、突起部3が、基部3aの外径Lrminが先端部3bの外径Lrmaxよりも小さい構造、すなわちくびれ構造を有する場合、くびれ構造を有さない場合と比較して、基材2の比表面積や内部の空隙が見かけ上大きくなる。そのため、比表面積に影響を受ける親水特性などをさらに向上できる。また、くびれ構造を有する突起部3は、表面での化学反応やその促進機能を基材2の表面に付与したり、基材2の表面上に形成される薄膜層との密着性を向上させたりする効果を期待できる。このため、基部3aの外径Lrminが先端部3bの外径Lrmaxよりも小さいくびれ構造を有する突起部3を10μmの範囲内に平均して1個以上形成することが望ましい。親水特性は比表面積が大きいほど高いことから、突起サイズを小さく、突起数を多くすると有利であり、また、くびれた突起構造を有する表面では比表面積がさらに大きくなることから、親水特性がさらに向上する。
くびれ構造を有する突起部3は、(1)FIB(Focused Ion Beam)法などによって金属材料表面の断面試料を作製し、その断面試料をSEMや透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope : TEM)で観察する方法、(2)金属材料を傾斜させてSEMで観察する方法などによって確認できる。図5は、冷延鋼板に形成されたくびれ構造を有する突起部3の一例を示すSEM写真図である。これは試料を70度傾斜させて撮影した像である。図6は、冷延鋼板に形成されたくびれ構造を有する突起部3の一例を示す断面TEM写真図である。くびれ構造を有する突起部は、以下に示す数式(1)のように基部3aの外径Lrminが先端部3bの外径Lrmaxの大きさの90%以下、好ましくは以下に示す数式(2)のように基部3aの外径Lrminが先端部3bの外径Lrmaxの大きさの80%以下である構造のことを意味する。図5に示す例では、Lrmin/Lrmaxの値は0.38、図6に示す例では、Lrmin/Lrmaxの値は0.62であった。基部3aの外径Lrminは金属材料基材の表面に対し垂直な方向から基部3aを見たときの基部3aの最小外径のことであり、先端部3bの外径Lrmaxは金属材料基材の表面に対し垂直な方向から見たときの先端部3bの最大外径のことである。
基材2の表面には、突起部3に加えて、基材2の表面に対し垂直な方向から見たときの平均直径が1μm以下、好ましくは500nm以下の凹部が形成されていることが望ましい。突起部3に加えて凹部を形成することによって、金属材料の表面積をより大きくすることができるので、金属材料表面の発光特性や親水特性をより向上させることができる。また、凸部以外に凹部が存在することにより潤滑油や機能性液体をより多く、且つ、長く保持させることができるので、基材2の表面に新機能を付与することができる。
図7および図8は、ステンレス鋼の表面に形成された凹部の一例を示すSEM写真図である。図7は、金属材料表面の真上から金属材料を観察した様子を示し、図8は、金属材料を60度傾斜させて金属材料を観察した様子を示す。図7および図8に示す凹部は、SUS430ステンレス鋼および白金電極をそれぞれ陰極電極および陽極電極として濃度0.1mol/LのKCO水溶液中において30分間115Vで通電することによって形成されたものである。図中の矢印が凹部を示している。図7および図8から明らかなように、200nm乃至500nm程度の大きさを有する凹部がステンレス鋼表面の至るところに形成されている。
突起部3を形成する物質は、基材2と同じ組成を有していても良いし、異なる組成であっても良く、目的に応じて使い分けることができる。図9は、基材2の組成とは異なる組成を有する突起部3の一例を示す断面TEM写真図である。図9に示す例では、基材2はSUS316ステンレス鋼によって形成されているが、突起部3中のCr濃度は基材2中のCr濃度よりも小さくなっている。このような構造によれば、SUS316ステンレス鋼の長所を活かしつつ、Niの触媒機能をより有効に活かすことができると期待される。一例を挙げると、Niを有効成分とする水蒸気改質触媒としてそのまま利用できる可能性がある。この場合、Crは触媒性能を低下させることが知られているので、Crの影響を少なくできることが期待できる。また、本発明の突起構造は比表面積が大きいため熱交換性に優れる。このことも触媒反応基材として有利である。
基材2と突起部3とは連続体であることが望ましい。基材2と突起部3とが連続体であることによって、突起部3の強度を高めることができる。図10は、冷延鋼板に突起部が連続的に形成されている様子を示す断面TEM写真図である。図示しないが、突起部3の領域R1と基材2の領域R2とについて結晶方位を解析したところ、突起部3は単結晶であり基材2とほぼ同じ結晶方位を有していた。このような連続構造は、機械的作用や化学的作用に対して安定しており突起部3が脱落しにくいことに加えて、突起部3に異種物質や異種元素を用いたくない場合にも有効である。また、このような連続構造は、易酸化性の合金元素(例えばCr)の含有量が少ない鋼材や金属を基材2として用いることによって形成できる。
このような構造を有する金属材料1の製造方法の一例としては、電解溶液中の放電を利用することによって製造することができる。具体的には、被処理材および白金などの不活性な金属をそれぞれ陰極電極および陽極電極として電解溶液中で60乃至140V程度の直流電圧を電極に印加する。印加電圧の範囲は、被処理材によって異なるが、被処理材の表面構造をSEMで確認しながら容易に決定することができる。処理時間や印加電圧を適した範囲内で変えることによって、突起部の平均直径を制御することができる。具体的には、同じ素材である場合、印加電圧を大きくするほど、処理時間を長くするほど、電解溶液液面から深い位置ほど、突起部の平均直径を大きくすることができる。
但し、印加電圧が完全プラズマ状態になる値になると、鉄やステンレス鋼では表面が過度に融解されるか酸化されてしまい。微細な突起構造が形成されにくい。くびれ構造を付与するためには、表面が過度に融解又は酸化されない範囲で放電エネルギー密度が高い条件を選定する必要がある。一例として、印加電圧を高めに設定する又は電場が集中するように処理対象領域を小さくすることが有効である。この場合も、処理表面をSEMで観察した結果を処理条件と比較することによって好適条件を決定できる。また、図9に示したNiが濃化し、Crが欠乏した突起構造は放電電圧を高めに設定することによって形成できる。この他にも、突起構造を作製しておき、続いて元素を溶液中で供給することで表面に新たな元素を付与することができる。「完全プラズマ状態」とは、放電時にオレンジ色が混じった発光又はオレンジ色が主体の発光が陰極電極表面を覆う状態を指す。
〔実施例1〕
軟質冷延鋼板(CRS、大きさ2mm×20mm×0.7mm)およびPtをそれぞれ陰極電極および陽極電極として濃度0.3mol/LのKCO水溶液中に浸漬し、異なった通電電圧を陰極電極および陽極電極に通電して試料を作製した。そして、通電後の軟質冷延鋼鈑の表面をSEMにより観察し、表面に形成されている突起部の平均直径と密度とを評価した。その際、水溶液液面からの深さにより、どのように処理が異なるかを観察するため、一部の試料に関しては、液面からの深さが異なる部分で軟質冷延鋼鈑よりサンプルを切り出し、表面観察を行なった。突起部の平均直径は、任意に選んだ12μm×9μmの範囲の中で任意に選択した20個の突起部の直径の平均値であり、密度は上記範囲の内にある突起部の数を108μm(=12μm×9μm)で除するとともに10μmを乗じて10μm当たりの突起部の個数を求めた結果である。評価結果を以下の表1に示す。表1に示す実験No.1−7の試料は上記の水溶液中での通電を行なう前の軟質冷延鋼板である。表1に示す実験No.1−1乃至1−6の試料と実験No.1−7の試料との比較から明らかなように、通電処理によって本発明に係る突起部を有する改質層が得られることが確認された。また、印加電圧を小さくすることによって、突起部の平均直径を小さくし、且つ、突起部の密度を増加できることが確認された。また、実験No.1−6の試料のように、液面からの処理表面までの距離を短くすることによっても、突起部の平均直径を小さくし、且つ、突起部の密度を増加できることが確認された。
〔実施例2〕
SUS316ステンレス鋼(大きさ25mm×2.5mm×0.8mm)およびPtをそれぞれ陰極電極および陽極電極として濃度0.3mol/LのKCO水溶液中に浸漬し、異なった通電電圧を陰極電極および陽極電極に通電して試料を作製した。そして、通電後のSUS316ステンレス鋼の表面をSEMにより観察し、表面に形成されている突起部の平均直径と密度とを実施例1と同様に評価した。その際、水溶液液面からの深さによりどのように処理が異なるか観察するため、一部の試料に関しては、液面からの深さが異なる部分で軟質冷延鋼鈑よりサンプルを切り出し、表面観察を行なった。また、通電後のSUS316ステンレス鋼の表面のフォトルミネッセンスを測定した。装置には日本分光(株)製FP6200を用い、開始波長350nm、終了波長600nm、励起波長435nmで測定を行った。具体的には、通電後のステンレス鋼表面から得られたフォトルミネッセンススペクトルには、通電前のステンレス鋼表面から得られたフォトルミネッセンススペクトルには見られない波長430nm付近を中心とする発光ピークが確認された。そこで、本実施例では、フォトルミネッセンス測定においてこの発光ピークの強度を測定した。本実施例内で最大の発光強度が得られた実験No.2−5の発光ピークの高さを10、未処理であり該当する発光ピークが観測されなかった実験No.2−7の発光ピークの高さを0として評価した。評価結果を以下の表2に示す。表2に示すように、本発明に係る突起部を有するステンレス鋼表面(実験No.2−1乃至2−5の試料)は、未処理の、突起部を有さないステンレス鋼表面(実験No.2−7の試料)、又は突起が1000nmをはるかに越える実験No.2−6の試料と比較して、高い発光特性を有することが確認された。発光特性は突起部のサイズが小さいほど大きくなっており、突起部の平均直径が500nm以下で特に高い発光特性が得られている。この結果から、本発明に係る突起部を有するステンレス鋼が表示素子や可視光領域の光を利用する素子の金属材料として利用できると期待される。
〔実施例3〕
SUS316ステンレス鋼(厚さ1mm×幅2.5mm×長さ30mm)を用いた。表面をダイヤラップML−150Pで鏡面研磨した。このステンレス鋼およびPtをそれぞれ陰極電極および陽極電極として濃度0.1mol/LのKCO水溶液300cm中に浸漬し、異なった通電電圧で陰極電極および陽極電極に15分間通電して試料を作製した。実験後の電極(SUS316ステンレス鋼)は蒸留水で十分にすすいだ後、十分乾燥させて液面からの深さ30mm、28mm、26mmの3箇所の部分の表面の接触角測定実験を行った。蒸留水(和光純薬工業社製)をマイクロピペットで1μリットル滴下し、カメラ(Canon社製EOS Kiss X2)でそれぞれの水滴を真横から撮影し、写真より液滴の高さ(h)、接触長さ(l)を測定し、θ=2tan−1(2h/l)よりそれぞれの接触角(θ)を求め平均値を算出し、液面からの深さ30mmの部分の接触角とした。
接触角測定実験が終わった後、十分乾燥させて、表面に形成されている突起部の平均直径と密度とを実施例1と同様に評価した。また、得られた試料の表面積が平滑な表面に対してどの程度増加しているかを評価するために、平滑な表面の表面積を1とした時の試料の表面積を比表面積として、以下の仮定に基づいて算出した。すなわち、上記で求められた平均直径を有する半球状の突起が上記で求められた密度で平滑表面上に存在すると仮定して、平滑表面に対して何倍になるかを算出した。結果を以下の表3に示す。表3に示すように、本発明の範囲内にある実施例は未処理で本発明の改質層を有しない試料(実験No.3−1)又は改質層の性状が本発明範囲を外れる試料(実験No.3−6)と比較して接触角が小さく親水特性が向上していることがわかる。
〔実施例4〕
軟質冷延鋼板(大きさ1.5mm×20mm×0.7mm)およびPtをそれぞれ陰極電極および陽極電極として濃度0.3mol/LのKCO水溶液中に浸漬し、通電電圧を110Vとして陰極電極および陽極電極に30分間通電して試料を作製した。本実施例では、電場を集中させるために試料の幅を実施例1,2とは異なる1.0mmとした。そして、通電後、液面より深さ15mm部分に関し、実施例3と同様の方法で1箇所の接触角を測定した。結果は接触角45°であった。また、接触角測定後、乾燥し、同じ部分の表面をSEMにより観察し、表面に形成されている突起部の平均直径と密度とを実施例1と同様に評価した。代表的なSEM写真を図5に示す。評価の結果、上から見た突起の平均直径は350nmであった。また、くびれ構造を有する突起の密度を評価した。くびれ構造を有する突起の密度は、突起部の平均直径と密度を評価した部分(範囲)と同じ部分にあるくびれ構造を有する突起の数をかぞえ、突起部の密度と同様にして、10μmあたりの平均数を算出して求めた。その結果、平均して3個存在することが確認された。
〔実施例5〕
軟質冷延鋼板(大きさ1.5mm×20mm×0.7mm)およびPtをそれぞれ陰極電極および陽極電極として濃度0.3mol/LのKCO水溶液中に浸漬し、通電電圧を95Vとして陰極電極および陽極電極に10分間通電して試料を作製した。そして、通電後、液面より深さ15mm部分に関し、実施例3と同様の方法で1箇所の接触角を測定した。結果は、接触角60°であった。また、接触角測定後、乾燥し、同じ部分の表面をSEMにより観察し、表面に形成されている突起部の平均直径および密度とくびれ構造を有する突起の密度とを実施例1と同様に評価した。評価の結果、上から見た突起の平均直径は350nmで、くびれ構造を有する突起が10μm内に平均して1個存在することが確認された。
〔実施例6〕
6mass%C−2mass%Si−2mass%Cr鋼を圧延加工し、断面を25gのビッカース強度を評価したところ900であり、2GPa級の超高強度鋼であることが確認された。この鋼材を大きさ1mm×20mm×0.7mmに切断したものおよびPtをそれぞれ陰極電極および陽極電極として濃度0.1mol/LのKCO水溶液中に浸漬し、通電電圧を110Vとして陰極電極および陽極電極に30分間通電した。そして、通電後、液面より深さ18mm部分の軟質冷延鋼板の表面をSEMにより観察し、表面に形成されている突起部の平均直径とくびれ構造を有する突起の密度とを評価した。評価の結果、上から見た突起の平均直径は400nmで、くびれ構造を有する突起が10μm内に平均して2個存在することが確認された。
〔金属材料の表面処理方法〕
図11は、本発明の一実施形態である金属材料の表面処理の流れを示すフローチャートである。図12は、本発明の一実施形態である金属材料の表面処理方法において用いられる装置の一構成例を示す模式図である。図11に示すように、本発明の一実施形態である金属材料の表面処理では、始めに、金属材料である陰極電極としての被処理材と陽極電極とを電解溶液中に浸漬し、陰極電極と陽極電極との間に電圧を印加することにより、被処理材の表面に微細構造を形成させる(ステップS1)。具体的には、図12に示すように、容器11内の電解溶液12中に陽極電極13と被処理材14とを浸漬し、銅ワイヤーなどの導線15を介して電源16から陽極電極13と被処理材14とに電圧を印加することによって、被処理材14の表面に微細構造を形成させる。
電解溶液12は、特に限定されないが、電気伝導性を有し、且つ、被処理材14の表面処理を行う際に、被処理材14の表面を過度にエッチングしたり、陽極電極13および被処理材14の表面に付着や析出したり、沈殿物を形成したりし難い溶液である。このような電解溶液12の電解質としては、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸アンモニウム((NHCO)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NHOH)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化アンモニウム(NHCl)、硫酸のナトリウム塩、硫酸のカリウム塩、硫酸のアンモニウム塩、硝酸のナトリウム塩、硝酸のカリウム塩、硝酸のアンモニウム塩、クエン酸ナトリウム(NaH(CO(COO)))などのクエン酸のナトリウム塩、クエン酸のカリウム塩、クエン酸のアンモニウム塩、硝酸、および塩酸などを例示できる。
電解溶液12は、被処理材14の表面を改質可能であれば、任意のpHおよび濃度とすることができる。例えば炭酸カリウム水溶液を電解溶液12として用いる場合、その濃度は、特に限定されることなく、0.001mol/L以上、より好ましくは0.005mol/L以上とすることができる。電解溶液12の濃度が低すぎると、陽極電極13と被処理材14との間に電圧を印加した際に好適な放電状態を維持することが困難となる場合があるからである。電解溶液12の濃度の上限は特に設けないが、例えば0.5mol/L以下とすることができる。また、電解溶液12のpHは、電極の過度の腐食やエッチングを起こさなければ任意の値とすることができ、例えばpH10乃至12とすることができる。
陽極電極13は、放電に際して熱的および化学的に安定な材料によって形成されている。このような陽極電極13としては、Pt、Ir、黒鉛などを例示できる。
被処理材14は、金属材料であれば特に限定されず、鉄鋼材料であれば冷間圧延材、熱間圧延材、若しくは鋳造材、およびその加工物(溶接など含む)を用いることができる。また、鋼種は特に限定されず、炭素鋼、低合金鋼、若しくはステンレス鋼などを利用できる。また、電気亜鉛めっき鋼板をはじめとするめっき鋼板も利用できる。また、被処理材14の形状は特に限定されず、板状、線状、棒状、パイプ状、若しくは加工部品を利用することができる。また、被処理材14は電解溶液12中に浸漬されていることが必要で、少なくとも液面から1mmより深くする必要がある。
放電条件は、被処理材14の表面に凹凸が形成される部分プラズマ状態から完全プラズマ状態までの範囲を利用できる。但し、被処理材14が融解する電圧よりも低い電圧範囲で実施する必要がある。具体的には、放電電圧を上げていったときに暗所で肉眼で確認できる発光が始まり、オレンジ色の点発光を示す電圧から材料全体が赤熱する直前までの状態である。印加電圧は、被処理材14の大きさを1mm×1mm×20mmとした場合、およそ70乃至200Vの範囲内が好適であり、より望ましくは80乃至150Vの範囲内である。この電圧範囲は、ステンレス鋼などの合金鋼を含むほとんどの鉄鋼材料に適用できる。しかしながら、この電圧範囲は、被処理材14の種類や配置によって変化するため、電圧条件を変更して処理した被処理材14の表面をSEMで観察することにより決定すると良い。
放電電圧は、鉄鋼材料の表面に微細突起を形成させる電圧であることが必要条件である。下限の電圧未満では表面に微細突起は形成されないため、SEMで微細突起の有無を確認することで決定できる。上限を超えると被処理面が熔解してしまう。従って、表面が熔解する電圧として上限を決定することができる。しかしながら、表面を酸化させないほうがより望ましい。その場合は表面が酸化される電圧をSEMおよびSEMに付属したエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いて調べることで容易に決定できる。被処理材14の酸化物と同程度のX線強度で酸素が検出された場合、表面は酸化されていると判断できる。また被処理材14の酸化物(例えば冷延鋼板や低合金鋼ではFeの酸化物を意味する)のFeのL線の強度で規格化した酸素のX線強度に対して、被処理材14における酸素のFe−L線強度で規格化したX線強度が1/3以下である必要がある。上記の表面調査は、電圧を変更して30分間放電した後、被処理材14を取出し水洗、乾燥した後、SEMへ導入して観察することにより行う。
放電処理時間は3秒以上必要である。但し、放電処理時間は例えば60分などの長い時間も可能であるが、放電処理時間が長すぎると被処理材14が損耗する場合があるため30分以上の処理時間は好ましくない。望ましい電圧範囲の中では、印加電圧が大きいほど最終工程後の表面の撥水特性が高いことがわかっている。したがって、最も好ましい条件は、好ましい条件範囲のなかの上限に近い印加電圧を選択することである。
図13は、厚さ0.8mmのSUS316Lステンレス鋼板を処理した例である。このSUS316Lステンレス鋼板を2mm幅、長さ30mmに切断し、銅ワイヤーにより導通をとり陰極電極とした。陽極電極は長さ50cmのPtワイヤーを互いに接触しないように折り曲げて面状に成型したものを用いた。SUS316Lステンレス鋼板と銅ワイヤーとの接続部は耐熱樹脂を加熱圧着し銅ワイヤーが電解溶液に触れないようにして電極の20mmの長さ部分を電解溶液に浸漬した。電解溶液は濃度0.1mol/LのKCO水溶液を用い、電圧を130Vに設定して10分間放電を行い、終了後直ちに水洗した。
その結果、図13に示すように、SUS316Lステンレス鋼板の表面に平均直径が1μm以下の微細な突起構造が形成されていることが確認された。また、EDSによる元素分析によりSUS316Lステンレス鋼板の表面は酸化されていないことが確認された。また、160Vを越える印加電圧では、SUS316Lステンレス鋼板の先端が熔断してしまった。このため、印加電圧の上限値は160Vと求めることができた。また、EDSによる元素分析により140V以下の印加電圧ではSUS316Lステンレス鋼板の表面が酸化されないことが確認されたため、この実験条件および試験材においては、印加電圧の好ましい上限値は140Vであることがわかった。一方、印加電圧の下限値は突起構造の有無から80Vと決定することができた。もっとも好ましい印加電圧は140Vと決定できた。
図11に戻る。上述のようにして被処理材14の表面に微細構造を形成すると、次に、電解溶液12中から被処理材14を取り出し、被処理材14を洗浄する(ステップS2)。そして最後に、洗浄された被処理材14の被処理表面に撥水処理を施す(ステップ3)。洗浄方法は、表面の電解溶液を除去する目的で行い、純水に浸漬したり、スプレーしたりする方法などが挙げられる。純水に限らず、表面の微細構造を壊さなければ、弱酸やアルカリ溶液を用いても良い。その際、電解をかけることも可能である。洗浄後は乾燥させても良いし、続く撥水処理によっては乾燥させずに次工程へ進める場合もある。撥水処理方法は、撥水スプレーを塗布する方法や、フッ素系樹脂など撥水機能を有する有機物を液相又は気相中で吸着させる方法などを採用できる。本実施形態では、コロニル社製ナノプロ(成分:フッ化炭素樹脂、シリコン樹脂)を被処理材14の表面に吹き付け、12時間以上乾燥させることによって、被処理材14の表面に撥水処理を施した。これにより、一連の表面処理は終了する。
図14は、図13に示す試料表面に撥水処理を施し、蒸留水を滴下した状態を横方向から観察した結果である。観察の結果、水の接触角は152°と測定され、超撥水が実現していることが確認された。撥水処理を行わなかった試料における水の接触角は51°であった。また、溶液中プラズマ放電を実施していない材料に対して同様の撥水処理を施したところ、水の接触角は125°であった。従って、超撥水表面を得るためには、溶液中プラズマ放電と撥水処理との両方が必要であることが確認された。
〔実施例1〕
市販の厚さ0.8mmのステンレスSUS316L鋼板を2mm幅、長さ30mmに切断し、希塩酸に浸漬させることによって脱脂した後、銅ワイヤーを介して導通をとり陰極電極とした。陽極電極は長さ50cmの0.5mmφのPtワイヤーを互いに接触しないように折り曲げて面状に成型したものを用いた。陰極電極と銅ワイヤーとの接続部は耐熱樹脂を加熱圧着することによって、銅ワイヤーが電解溶液に触れないようにして電極の20mmの長さ部分を電解溶液に浸漬した。電解溶液は濃度0.1mol/LのKCO水溶液とし、印加電圧を60乃至180Vの範囲内に設定し、10分間放電を行い、終了後直ちに純水で水洗し乾燥させた。その後、コロニル社製ナノプロを被処理材の表面に吹き付け12時間以上乾燥させることによって撥水処理を施し、水濡れ性を調査した。水濡れ性は、蒸留水をマイクロピペット用いて電極面に等間隔になるように蒸留水を1μmずつ6か所滴下し、キャノン社製のデジタルカメラEOS Kiss X2を用いて真横から撮影し、得られた写真から接触角を測定し、6箇所の平均をとることによって評価した。蒸留水は和光純薬工業社製蒸留水049-16787を使用した。表4に試験結果を示す。表4に示すように、発明例はいずれも未処理材と比較して高い接触角を示すことが確認された。特に印加電圧が120乃至140Vの範囲である発明例3,4,5では接触角150°以上の超撥水が実現されており、印加電圧を140Vとした発明例5は153.6°と最も高い接触角を示すことが確認された。
〔導電性材料の表面処理装置〕
本発明の発明者らは、表面にナノレベルの微細構造が形成された導電性材料を低コストで効率的に製造することを目的として、従来はナノレベルの微細構造の形成が不可能と考えられていた液中プラズマ放電の利用可能性の検討も含め、鋭意研究を行った。その結果、本発明の発明者らは、導電性材料を陰極電極として用いて部分的に液中プラズマ放電を起こすことによって、導電性材料の表面にナノレベルの微細構造を形成し得ることを見出した。また、本発明の発明者らは、導電性材料の表面の特定部分にナノレベルの微細構造を形成する方法を検討し、導電性材料の被処理部分が陽極電極と共に電解液に浸漬され、導電性材料と陽極電極との間に開口部を有する遮蔽物を設置することによって、導電性材料の表面の特定部分にナノレベルの微細構造を形成できることを見出した。さらに、本発明の発明者らは、遮蔽物の開口部および/又は陽極電極と導電性材料との相対位置を変化させることによって、導電性材料の表面に連続的又は離散的にナノレベルの微細構造を形成できることを見出した。
図15は、本発明の一実施形態である導電性材料の表面処理装置の構成を示す模式図である。図15に示すように、本発明の一実施形態である導電性材料の表面処理装置21は、改質処理セル22と、改質処理セル22内に貯留された電解溶液23と、電解溶液23中に互いに離隔して浸漬された陽極電極24および導電性を有する被処理材からなる陰極電極25と、陽極電極24および陰極電極25に接続された直流電源26とを備えている。陰極電極25は絶縁素材からなる箱27によって覆われており、箱27には陰極電極25の被処理部分を限定する開口部28が形成されている。箱27は、上部が電解溶液23の液面よりも高い位置になるように配置されている。箱27の上部は開放されていてもよいし、陰極電極25と直流電源26とを接続する導線を通す穴があいた蓋を有していてもよい。
改質処理セル22としては、電解溶液23に対して安定な材質からなる既知のセル、例えばガラス、テフロン(登録商標)、又はポリエチルエーテルケトン(PEEK)製のセルを用いることができる。また、改質処理セル22として、セラミックス製のセルも用いることができる。後述する図16に示す表面処理装置21では、金属性のセルを使用することも可能である。
電解溶液23は、電気伝導性を有し、且つ、陽極電極24と陰極電極25との間に電圧を印加して被処理表面(陰極電極25の表面)にナノレベルの微細構造を形成する際に、被処理表面を過度にエッチングしたり、陽極電極24および陰極電極25の表面に付着や析出したり、沈殿物を形成したりし難い溶液である。このような電解溶液23としては、例えば、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、炭酸アンモニウム((NHCO)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NHOH)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化アンモニウム(NHCl)、リチウムの硫酸塩、ナトリウムの硫酸塩、マグネシウムの硫酸塩、カリウムの硫酸塩、アンモニウムの硫酸塩、リチウムの硝酸塩、ナトリウムの硝酸塩、マグネシウムの硝酸塩、カリウムの硝酸塩、アンモニウムの硝酸塩、リチウムのクエン酸塩、クエン酸ナトリウム(NaH(CO(COO)))などのナトリウムのクエン酸塩、マグネシウムのクエン酸塩、カリウムのクエン酸塩、アンモニウムのクエン酸塩、硫酸、硝酸、塩酸、およびクエン酸よりなる群から選択される少なくとも1種を含む水溶液を用いることができる。
電解溶液23は、陰極電極25の表面処理が実施可能であれば、任意のpHおよび濃度とすることができ、例えば炭酸カリウム水溶液を電解溶液23として用いる場合には、その濃度は、特に限定されることなく0.001mol/L以上、より好ましくは0.005mol/L以上とすることができる。濃度が低すぎると、陽極電極24と陰極電極25との間に電圧を印加した際に好適な放電状態を維持することが困難となる場合があるからである。濃度の上限は特に設けないが、例えば0.5mol/L以下とすることができる。また、電解溶液23のpHは、電極の過度の腐食やエッチングを起こさなければ任意の値とすることができ、例えばpH5乃至12とすることができる。
陽極電極24は、陽極電極24と陰極電極25との間に電圧を印加して被処理表面にナノレベルの微細構造を形成する際に、電解溶液23中にイオン化して溶解し、陰極電極25上に析出してナノレベルの微細構造の形成を阻害しない電極材からなる不溶性陽極電極である。このような陽極電極24としては、例えば白金(Pt)電極、パラジウム(Pd)電極、イリジウム(Ir)電極、表面をPtやPdやIrでコーティングした電極、又は黒鉛電極などを用いることができる。
陰極電極25は、電圧の印加によって表面が改質処理される被処理材であり、金属材料や合金材料などの導電性を有する材料(導電性材料)からなる。陰極電極25として機能する被処理材としては、例えば、炭素鋼材、合金鋼材、ステンレス鋼材、ニッケル材などが挙げられる。また、陰極電極25(被処理材)の形状は、特に限定されることなく、板状、帯状、導電性材料部を有する部品とすることができる。被処理材は、任意にサンドペーパーなどで表面を鏡面研磨してから陰極電極25として用いることもできる。
直流電源26は、被処理材である陰極電極25の表面の改質処理に必要な電圧、例えば60V以上、300V以下の電圧を陽極電極24と陰極電極25との間に印加するものである。直流電源26としては、既知の電源を用いることができる。
本実施形態では、陰極電極25が箱27によって覆われているとしたが、図16に示すように、陽極電極24を開口部28が形成された箱27によって覆うようにしてもよい。また、開口部28を有する箱27によって陰極電極25の被処理部分を限定するのではなく、図17に示すように、陰極電極25の少なくとも電解溶液23に浸漬する表面を耐熱性樹脂やガラスなどの絶縁性の耐熱材料で被覆し、耐熱材料の一部に陰極電極25の被処理部分を限定するための開口部28を形成するようにしてもよい。
開口部28の形状や大きさは特に限定されることはなく、箱27は複数の開口部を有していてもよい。開口部28を複数設ける場合、開口部28は陰極電極25の同一面に限定されない。例えば、陰極電極25の表面側と裏面側とに開口部28を設けてもよい。また、図18に示すように、開口部28の上側(液面側)の端部に傾斜部28aを設けてもよい。傾斜部28aを設けることによって、被処理部分から発生する気体を効率よく電解溶液23中へ逃がすことができる。
表面処理装置21は、電解溶液23を加熱するためのヒーターなどの加熱手段や電解溶液23の温度を測定するための温度計を有していてもよい。また、陰極電極25を設置する角度は電解溶液23の液面に対し垂直でもよいがこれに限定されるものではない。また、陰極電極25の表面におけるプラズマ発生を促進する目的で、陰極電極25の表面に水素やアルゴン、水蒸気などのガスを供給する機構を設けてもよい。
このような構成を有する表面処理装置21は、以下のようにして表面改質された導電性材料を製造する。以下、この表面処理装置21を利用した導電性材料の表面処理方法について説明する。
〔導電性材料の表面処理方法〕
表面処理装置21を利用して表面改質された導電性材料を製造する際には、始めに、改質処理セル22内に貯留された電解溶液23中に箱27を浸漬した後、陽極電極24と陰極電極25とを離隔させて浸漬し、陰極電極25の表面改質処理を行う系(表面改質処理系)を構築する。その際、陰極電極25は箱27の中に浸漬し、処理したい部分を箱27の開口部28から見えるようにする。陰極電極25の表面改質処理は開口部28から電解溶液23側に露出した部分に対し施される。図16に示す表面処理装置21の構成では、陽極電極24を箱27の中に入れ、箱27の開口部28が陰極電極25の被処理部分に対向するように箱27を設置する。開口部28から処理したい部分が離れるほど処理される部分が開口部よりも大きくなってしまうため、開口部28と陰極電極25の処理したい部分の間隔(距離)は、通常は、5mm以下が好ましく、1mm以下が更に好ましい。
次に、陽極電極24と陰極電極25との間に所定電圧を印加し、陰極電極25の表面を改質処理する(表面改質処理工程)。所定電圧とは、予備実験で定めることができる電圧であり、以下の方法により決定することができる。すなわち、始めに、表面改質処理系に印加する電圧と処理時間とを希望する範囲で変化させる。処理時間の指定がない場合は15分間行うと良い。また、電圧を変化させる範囲は、50乃至300V程度でよい。次に、処理された表面をSEMで観察し、表面に平均1μm以下の突起構造が形成されていること、表面が酸化されていないこと(厚さ数ナノメートル程度の自然酸化層は除く)、融解されていないこととを確認し、条件を決定する。表面が酸化されているか否かはSEM内のEDSを用いることで確認できる。
電圧範囲は、陰極電極25の種類によって多少は変化するが、60V乃至300Vの範囲内、好ましくは80乃至180Vの範囲内である。下限電圧は、プラズマが発生する電圧に対応している。上限電圧は、高温になることによって表面が酸化されること、又は表面が融解し微細な突起構造が消失することにより決まる。以上で好ましい電圧範囲は決定できるが、短時間処理したい場合や突起構造を大きくしたい場合には、高めの印加電圧を設定するとよい。
具体例を説明する。本具体例では、図15に示した表面改質処理系を陰極電極25としてステンレス鋼板(SUS316)を用い構築した。開口部28の大きさを25mm×4mmとした。そして、0.1mol/Lの炭酸カリウム(KCO)水溶液を電解溶液23として15分間通電した。SEMで処理後のステンレス鋼板表面を観察したところ、下限電圧は80Vと求まった。また、上限電圧は250Vであることがわかった。陽極電極24と陰極電極25との間に150Vを印加した時の開口部28の長さ方向の(a)左部、(b)中央部、および(c)右部の二次電子像をそれぞれ図19A、図19B、図19Cに示す。
図19A、図19B、図19Cに示すように、直径1μm以下の微細な突起構造がステンレス鋼板の表面に形成されていることが確認できた。また、開口部28の長さ方向の左部および右部と中央部とで同様の突起構造がみられることから、開口部全面で適正な処理が行われていることを確認できた。また、望ましい電圧範囲内で電圧が低いほど、突起構造の大きさが減少し、突起構造の数が増加することが確認された。このため、必要とする表面特性に合わせて印加電圧を調整すればよい。例えば、発光特性を得たい場合は、突起構造は小さい方がよいので、印加電圧を低めに設定すればよい。
微細突起が形成される原理は明らかにはなっていないが、陰極電極25の近傍で部分的な液中プラズマ放電が起きることで形成されているものと推測される。すなわち、この方法では、陽極電極24と陰極電極25との間に印加する電圧が下限電圧未満だと部分的な液中プラズマ放電が十分に起きずに微細突起が形成されず、上限電圧以上だと、完全プラズマの発生によって陰極電極25の表面が融解してしまい、微細突起の形成に不利となる。
液中プラズマ放電は、電圧の印加によって陰極電極25の近傍の電解溶液23の温度が局所的に沸点以上になり、陰極電極25の近傍にガス相が発生した際に、ガス相中にプラズマ放電が生じることで起きているものと考えられる。このため、電圧の印加は、室温からはじめても可能ではあるが、電解溶液23全体あるいは陰極電極25近傍の温度を80℃から100℃の範囲にしてから行うとより効果的である。陰極電極25の近傍での温度を効率的に上昇させて液中プラズマ放電を効率的に起こすことができるからである。電圧の印加時間は、任意の時間、例えば1秒以上、30分以下とすることができる。電圧の印加時間が短いほど、形成される微細突起のサイズが小さくなるので、電圧の印加時間は、所望の表面形状や特性に応じて適宜選択すればよい。
以上の説明から明らかなように、この表面処理方法によれば、高価な装置および高度な技術を用いることなく、電解溶液23中に浸漬した陽極電極24と陰極電極25との間に印加する電圧を制御するだけで、表面にナノレベルの微細構造が形成された導電性材料を低コストで効率的に製造することができる。表面にナノレベルの微細構造が形成された導電性材料は、その微細構造に起因して様々な機能を発揮し得る。箱27を固定しておき陰極電極25を移動する、又は陰極電極25を固定しておき、箱27を移動させることにより、陰極電極25のより広い面積について表面改質を行うことができる。また、処理しながら連続的に移動することにより連続的な処理表面が得られる。また、ステップ状に移動させる、又は移動と放電を繰り返すことによって離散的なパターンをつけることも可能である。特に図16に示す表面処理装置21では、陰極電極25を箱27で覆う必要がないため、陰極電極25を大型試料や帯状試料とすることで連続処理設備および連続処理方法への拡張が可能である。
〔実施例1〕
厚さ1.7mmのアルミナ板に様々な大きさの開口部(5mm×5mm、5mmφ、10mmφ、10mm×2mm、および20mm×1mmの5種類)を有する箱27を作製した。開口部28の上端面は、図18に示すように30度斜めに加工した。陰極電極25として厚さ1mmのSUS316ステンレス鋼を使い、Ptを陽極電極24として濃度0.3mol/LのKCO水溶液中に浸漬し、図15に示すような表面改質処理系を構築した。陰極電極25および陽極電極24間に電圧を印加した。そして、電圧印加後のSUS316ステンレス鋼の表面をSEMにより観察した。開口部28の大きさを5mm×5mmおよび5mmφとして処理した後の陰極電極25の外観写真の一例を図20に示す。印加電圧は160Vで印加時間は15分間である。図20に示すように、陰極電極25の表面が開口部28の形に処理されていることが確認できた。
開口部28の大きさを5mmφとして処理した後の陰極電極25の表面のSEM像の一例を図21に示す。図21に示すように、表面処理を行っていない表面(図22参照)にはない直径1μm以下の微細な突起構造が陰極電極25の表面に形成されていることが確認できた。また、ほかの開口部28の形状を用いても90乃至200Vの印加電圧で微細突起構造を形成させることができたが、220V以上では微細突起構造が減少することがわかった。これは表面の融解によるものと推定される。また、図20に示した陰極電極25の全面に一様な撥水処理を行ったところ、表面処理を行っていない表面と比較して高い撥水性能を得ることができた。また、5mmφおよび5mm×5mmの開口部28を両面に有する箱27を用いて170V(印加時間は15分)を印加した実験では、SEM観察によって両面共に微細突起構造が形成され、表面改質処理を表裏同時に実施できることが確認できた。
〔実施例2〕
ステンレス鋼板(SUS316)を陰極電極として、1mm(縦方向)×20mm(横方向)の開口部28を設けたアルミナ(厚さ1.7mm)製の箱27で陽極電極24を覆い、図16に示すような表面改質処理系を構築した。開口部28のある面を陰極電極25から1mm離して設置した。電極間の印加電圧を140Vと220Vとした。電極間に5分間電圧を印加し、続いてステンレス鋼板を5mm上方(縦方向)に移動し、再び5分間電圧を印加した。上方への移動と電圧の印加とを10回繰り返した。電極間の印加電圧を140Vの場合と220Vの場合の2通りの実験を行なった。結果は、どちらも5mm間隔で微細突起構造が存在する領域を有するステンレス鋼板を得ることができた。
〔実施例3〕
Znめっき鋼板を陰極電極として、1mm(縦方向)×20mm(横方向)の開口部28を設けたアルミナ(厚さ1.7mm)製の箱27で陽極電極24を覆い、図16に示すような表面改質処理系を構築した。開口部28のある面を陰極電極25から1mm離して設置した。電極間の印加電圧を120Vとし、電極間に電圧を印加しながらZnめっき鋼板を下方(縦方向)に1mm/分の速度で20mm移動した。20mm×20mmの面積が処理されたZnめっき鋼板を作製することができた。この表面についてメチレンブルー脱色反応試験を実施したところ表面処理を行っていない表面と比べて格段に高い光触媒効果が得られた。
〔実施例4〕
厚さ0.8mmの市販の冷延鋼板を長さ80mm×幅6mmに切断して陰極電極とした。長さ方向が軸になるように幅方向に曲げ加工をして幅方向断面が局率半径10mmの弧状になるように加工した。電極との接続部を除いて陰極電極25の表面に耐熱樹脂を塗布し、湾曲加工した一方の面に幅2mmおよび4mmで長さ25mmの開口部28を形成した。Ptの陰極電極25との間に150Vの電圧を印加した。どちらの試料でも開口部28の表面に平均直径1μm以下の微細突起構造が形成されていた。
本発明によれば、親水特性および発光特性などの新しい機能を有する金属材料を提供することができる。
本発明によれば、多くの労力および費用を要することなく金属材料表面に高い撥水特性を付与することが可能な金属材料の表面処理方法および金属材料を基材とした撥水材料の製造方法を提供することができる。
本発明によれば、表面の所定の場所又は表面の広い面積にわたって処理を行いナノレベルの微細構造が形成された導電性材料を低コストで効率的に製造可能な導電性材料の表面処理装置および表面処理方法を提供することができる。
1 金属材料
2 基材
3 突起部
11 容器
12 電解溶液
13 陽極電極
14 被処理材(陰極電極)
15 導線
16 電源
17 温度計
21 表面処理装置
22 改質処理セル
23 電解溶液
24 陽極電極
25 陰極電極(被処理材)
26 直流電源
27 箱
28 開口部
28a 傾斜部

Claims (17)

  1. 金属材料基材と、
    前記金属材料基材の表面上に形成された改質層と、
    を備え、
    前記改質層は、前記金属材料基材の表面に対し垂直な方向から見たときの平均直径が1μm以下である、前記金属材料基材の表面から突出する突起部を10μmの範囲内に平均して3個以上備えると共に、前記金属材料基材の表面から突出する基部と、前記基部の端部に形成された先端部と、を備え、前記金属材料基材の表面に対し垂直な方向から見たときの平均直径が1μm以下であり、前記基部の外径が前記先端部の外径より小さいくびれ構造を有する突起部を10μm の範囲内に平均して1個以上備えることを特徴とする金属材料。
  2. 前記突起部の前記金属材料基材の表面に対し垂直な方向から見たときの平均直径が500nm以下であることを特徴とする請求項に記載の金属材料。
  3. 前記突起部が形成されている位置が前記金属材料基材の面内方向において周期性を有さないことを特徴とする請求項1または2に記載の金属材料。
  4. 前記改質層は、前記金属材料基材の表面に対し垂直な方向から見たときの平均直径が500nm以下の凹部を備えることを特徴とする請求項1乃至のうち、いずれか1項に記載の金属材料。
  5. 前記金属材料基材が合金鋼により形成されていることを特徴とする請求項1乃至のうち、いずれか1項に記載の金属材料。
  6. 前記金属材料基材が鋼材により形成されていることを特徴とする請求項に記載の金属材料。
  7. 前記金属材料基材の組成と前記突起部の組成とが異なることを特徴とする請求項1乃至のうち、いずれか1項に記載の金属材料。
  8. 前記金属材料基材と前記突起部とが連続的に繋がっていることを特徴とする請求項1乃至のうち、いずれか1項に記載の金属材料。
  9. 被処理表面を有する金属材料からなる陰極電極としての被処理材と陽極電極とを電解溶液中に浸漬させるステップと、
    前記陰極電極と前記陽極電極との間に70V以上で被処理材が酸化又は熔解しない範囲の電圧を印加することによって、前記被処理表面に微細構造を形成するステップと、
    前記電解溶液中から前記被処理材を取り出し、該被処理材を洗浄するステップと
    を含むことを特徴とする請求項1乃至8のうち、いずれか1項に記載の金属材料の製造方法。
  10. 被処理表面を有する金属材料からなる陰極電極としての被処理材と陽極電極とを電解溶液中に浸漬させるステップと、
    前記陰極電極と前記陽極電極との間に70V以上200V以下の電圧を印加することによって、前記被処理表面に微細構造を形成するステップと、
    前記電解溶液中から前記被処理材を取り出し、該被処理材を洗浄するステップと
    を含むことを特徴とする請求項1乃至8のうち、いずれか1項に記載の金属材料の製造方法。
  11. 洗浄された前記被処理材の前記被処理表面に撥水処理を施すステップをさらに含むことを特徴とする請求項9または10に記載の金属材料の製造方法。
  12. 被処理表面を有する陰極電極としての被処理材である金属材料と陽極電極とを電解溶液中に浸漬させるステップと、
    前記陰極電極と前記陽極電極との間に70V以上200V以下の電圧を印加することによって、前記被処理材である金属材料表面に微細構造を形成するステップと、
    前記電解溶液中から前記金属材料を取り出し、該金属材料を洗浄するステップと、
    洗浄された前記金属材料の前記被処理表面に撥水処理を施すステップと、
    を含むことを特徴とする請求項1乃至8のうち、いずれか1項に記載の金属材料を基材とした撥水材料の製造方法。
  13. 電解溶液中に互いに離隔して浸漬された陽極電極および金属材料からなる陰極電極と、
    前記陽極電極と前記陰極電極との間に介在し、前記陰極電極の被処理部分を限定する開口部を有する遮蔽物と、
    前記陽極電極と前記陰極電極との間に電圧を印加する電源と、
    を備えることを特徴とする請求項1乃至8のうち、いずれか1項に記載の金属材料の製造装置
  14. 前記開口部の位置および/または前記陽極電極と前記陰極電極との相対位置を変化させる機構を備えることを特徴とする請求項13に記載の金属材料の製造装置
  15. 前記電源は、陽極電極と陰極電極との間に60V以上、300V以下の電圧を印加することを特徴とする請求項13または14に記載の金属材料の製造装置
  16. 前記遮蔽物は、陰極電極の表面に被覆された前記開口部を有する絶縁性の耐熱材料であることを特徴とする請求項13乃至15のうち、いずれか1項に記載の金属材料の製造装置
  17. 請求項13乃至16のうち、いずれか1項に記載の金属材料の製造装置を利用して金属材料の表面を改質することを特徴とする金属材料の製造方法
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