JP5816706B2 - 測定治具 - Google Patents

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Description

本発明は、測定治具に関する。
近年、建設機械を用いた土木作業等への情報化施工の導入が進んでいる。情報化施工とは、土木工事等の施工作業を油圧ショベルやブルドーザ、あるいはモータグレーダといった建設機械を用いて行う際、情報化通信技術(ICT ;Information and Communication Technology)およびRTK−GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite Systems)を駆使して、それら建設機械に設けられた作業機の作業点の位置検出を行い、検出された作業点に基づいて作業機を自動制御したり、施工作業現場の地形とその地形に対する作業点といった情報をキャブ内の表示装置に表示したりすることにより、当該施工作業(以下、単に作業)を高効率に行い、高精度な施工結果を取得することを目的とするものである。
情報化施工において、作業機の作業点としては、建設機械が例えば油圧ショベルの場合では、バケットの刃先の位置である。この刃先の位置は、GNSアンテナとブームフートピンとの位置関係、ブーム、アーム、バケットのそれぞれの長さ、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダのそれぞれのストローク長さなどのパラメータに基づき、設計上の位置座標として演算される。
一方、演算に用いられるブーム、アーム、バケット、および各シリンダの長さが設計値である場合、それらの実際の長さは製造上および組立上の寸法公差による誤差を含むことから、演算された位置座標と実際の刃先の位置座標とは必ずしも一致せず、刃先の位置検出の精度低下をもたらす。このため、刃先の位置検出の精度を向上させるためには、実際の位置計測で得られる位置座標に基づき、演算に用いられるパラメータを所定の較正値で較正しなければならず、位置計測といった較正作業を行う必要がある。
このような較正作業として、ブームフートピンから側方に数メートル離れた位置にトータルステーションを設置し、このトータルステーションを使用してバケットの刃先近くに設定された計測点の位置計測を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の較正作業では、バケットの刃先を地上面位置および地上面から上方に所定高さ離れた位置など、複数の計測位置に位置させ、それぞれの計測位置において計測点の位置計測を実施する。そして、計測された複数の計測点の位置座標に基づいてパラメータの較正値を演算している。
また、刃先の位置計測にあたっては、プリズムミラー(以下、単にプリズム)を刃先近くに取り付けて位置計測を実施する。すなわち、トータルステーションからプリズムに向けてレーザ光を投射し、プリズムからの反射光を計測するのである。
特開2012−202061号公報
ところで、従来のプリズムは、測量作業では一般的なピンポールに取り付けられるタイプのものであり、トータルステーションを通して視準されるミラー中心(プリズムの頂点部分)と、実際に位置計測したい計測点とは一致しておらず、ミラー中心に対して計測点がオフセットしている。従って、較正値の演算を正確に行うためには、トータルステーションを通して視準した場合のミラー中心と計測点との位置関係、つまりオフセット量を各計測位置で一定に保つ必要がある。
しかしながら、各計測位置でオフセット量を一定に保とうとすると、いずれの計測位置での計測時においても、トータルステーションからの投射光をプリズムの正面から入射させる必要があることから、計測位置毎にプリズムをトータルステーションに対して厳密に正対させなければならず、プリズムの位置調整に手間がかかるという問題がある。特にバケットの刃先を上方に位置させ、作業者の届かない計測位置にプリズムがある場合には、脚立等を利用した高所の作業となってさらに面倒である。
本発明の目的は、トータルステーションによる位置計測を容易にできる測定治具を提供することにある。
本発明の測定治具は、被取付部に取り付けられ、トータルステーションと共に計測点の位置計測に用いられる測定治具であって、前記トータルステーションからの投射光を反射するプリズムミラーと、前記プリズムミラーを前記被取付部に取り付ける取付部材とを備え、前記プリズムミラーのミラー中心と前記計測点とが一致していることを特徴とする。
ここで、「プリズムミラーを前記被取付部に取り付ける」とは、作業者等の人手によりプリズムミラーや取付部材を支えることなく、当該プリズムミラーを被取付部に取り付けることをいう。
本発明によれば、プリズムミラーのミラー中心と計測点とが一致しているので、従来のようなオフセット量が存在せず、計測位置が異なってもミラー中心に対して計測点が位置ずれしない。このため、トータルステーションを通してミラー中心が視準可能である限り、わざわざプリズムミラーをトータルステーションに正対させるといった、計測位置毎のプリズムミラーの位置調整を不要にでき、位置計測を容易にできる。そして、ミラー中心が視準可能であれば、計測位置が上方にある場合でも、高所にてプリズムミラーをトータルステーションに正対させる必要がなく、作業性を大幅に改善できる。
本発明の測定治具では、前記プリズムミラーは、前記取付部材に支持手段を介して取り付けられるとともに、前記支持手段に対して所定方向に回動自在に支持され、前記プリズムミラーの回動点と前記ミラー中心とが一致していることが好ましい。
本発明によれば、プリズムミラーの回動点は、ミラー中心と一致していることで、計測点とも一致することになるから、プリズムミラーを回動させても、トータルステーション、ミラー中心、および計測点間相互の位置関係は変化しない。従って、一見してトータルステーションからミラー中心を視準できない場合には、プリズムミラーを所定方向に回動させ、ミラー中心を視準できるように調整すればよい。そして、この際には、ミラー中心を最低限視準できればよいので、プリズムミラーをトータルステーションに必ずしも厳密に正対させる必要がなく、位置調整を容易にできる。従って、計測位置が広範囲にわたって存在しても、プリズムミラーを回動させることで、計測点を確実に計測できる。
本発明の測定治具では、前記プリズムミラーは、前記支持手段に対して着脱自在に設けられ、前記支持手段には、前記プリズムミラーが外された状態で前記取付部材と前記被取付部との互いの当接位置を視認可能な開口部が設けられることが好ましい。
本発明によれば、取付部材と被取付部とが確実に当接しているかの確認や、計測点と被取付部とを一致させたい場合の一致状態の確認を、開口部を通して簡単にできる。
本発明の測定治具では、前記取付部材には、前記被取付部に磁着する磁石が設けられていることが好ましい。
本発明によれば、取付部材ひいては測定治具全体を磁石を用いて被取付部に容易に取り付けることができ、設置作業を迅速に行える。
本発明の測定治具は、被取付部に取り付けられ、トータルステーションと共に計測点の位置計測に用いられる測定治具であって、前記トータルステーションからの投射光を反射するプリズムミラーと、前記プリズムミラーが支持される支持手段と、前記支持手段を前記被取付部に取り付ける取付部材とを備え、前記プリズムミラーは、前記支持手段に対して所定方向に回動自在に支持され、前記プリズムミラーのミラー中心と前記計測点とが一致し、前記プリズムミラーの回動点と前記ミラー中心とが一致し、前記支持手段には、前記プリズムミラーが外された状態で前記取付部材と前記被取付部との互いの当接位置を視認可能な開口部と、鉛直方向に長い長孔が設けられ、前記長孔に挿通されるボルトにより前記支持手段が前記取付部材に取り付けられることを特徴とする。
本発明によれば、上述した各作用効果を奏するうえ、長孔を利用することにより、開口部を通しての視認結果に応じて支持手段を取付部材に対して位置調整できる。
本発明の一実施形態に係る測定治具が取り付けられた油圧ショベルにて較正作業を実施している様子を示す斜視図。 油圧ショベルのバケットの刃先に取り付けられる測定治具を示す分解者視図。 測定治具の正面図。 測定治具の平面図。 測定治具の側面図であり、図4の矢印V側から見た矢視図。 測定治具からプリズムミラーを取り外した状態を示す正面図。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、油圧ショベル100に本実施形態に係る測定治具30を取り付け、この測定治具30およびトータルステーションTSを用いて較正作業を実施している様子が示されている。
[油圧ショベル]
図1において先ず、建設機械としての油圧ショベル100は、車体1と作業機2とを有する。車体1は、旋回体3とキャブ4と走行装置5とを有する。旋回体3は、走行装置5に旋回可能に取り付けられている。旋回体3は、図示しないエンジンや油圧ポンプなどの装置を収容している。旋回体3の後部側には、RTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite Systems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう)用の2つのアンテナ21、22が設けられている。キャブ4は旋回体3の前部に載置されている。走行装置5は左右の履帯5A,5Bを有しており、履帯5A,5Bが回転することにより油圧ショベル100が走行する。
作業機2は、車体1の前部に取り付けられており、ブーム6、アーム7、バケット8、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、およびバケットシリンダ12を有する。
ブーム6の基端部は、ブームフートピン13を介して車体1の前部に回動可能に取り付けられている。すなわち、ブームフートピン13は、ブーム6の旋回体3に対する回動中心に相当する。
アーム7の基端部は、アームフートピン14を介してブーム6の先端部に回動可能に取り付けられている。すなわち、アームフートピン14は、アーム7のブーム6に対する回動中心に相当する。
アーム7の先端部には、バケットフートピン15を介してバケット8が回動可能に取り付けられている。すなわち、バケットフートピン15は、バケット8のアーム7に対する回動中心に相当する。
ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12は、それぞれ油圧によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10の基端部は、ブームシリンダフートピン10Aを介して旋回体3に回動可能に取り付けられている。また、ブームシリンダ10の先端部は、ブームシリンダトップピン10Bを介してブーム6に回動可能に取り付けられている。ブームシリンダ10は、油圧によって伸縮することによって、ブーム6を駆動する。
アームシリンダ11の基端部は、アームシリンダフートピン11Aを介してブーム6に回動可能に取り付けられている。また、アームシリンダ11の先端部は、アームシリンダトップピン11Bを介してアーム7に回動可能に取り付けられている。アームシリンダ11は、油圧によって伸縮することによって、アーム7を駆動する。
バケットシリンダ12の基端部は、バケットシリンダフートピン12Aを介してアーム7に回動可能に取り付けられている。また、バケットシリンダ12の先端部は、バケットシリンダトップピン12Bを介して第1リンク部材16の一端および第2リンク部材17の一端に回動可能に取り付けられている。第1リンク部材16の他端は、第1リンクピン16Aを介してアーム7の先端部に回動可能に取り付けられている。第2リンク部材17の他端は、第2リンクピン17Aを介してバケット8に回動可能に取り付けられている。バケットシリンダ12は、油圧によって伸縮することによって、バケット8を駆動する。
ブームシリンダ10、アームシリンダ11、およびバケットシリンダ12などの油圧シリンダと図示しない油圧ポンプとの間には、比例制御弁が配置されている。比例制御弁が作業機コントローラによって制御されることにより、油圧シリンダ10〜12に供給される作動油の流量が制御され、油圧シリンダ10〜12の動作が制御される。
[較正作業と座標系]
ここで、情報化施工を実施するためには、油圧ショベル100のバケット8の刃先中央Qの位置座標を逐次演算によって検出する必要がある。刃先中央Qの位置とは、ブーム6およびアーム7の長手方向に沿った中心線と、バケット8に設けられたツース8Aの先端を通り、かつバケット8の回動軸に平行な線との交点として定義される位置である。そして、油圧ショベル100のブーム6の長さ、すなわちブームフートピン13からアームフートピン14までの長さ、アーム7の長さ、すなわちアームフートピン14からバケットフートピン15までの長さ、バケット8の長さ、すなわちバケットフートピン15からバケット8の刃先中央Qまでの長さが、演算上必要なパラメータとして用いられる。また、ブームシリンダ10のストローク長さ、アームシリンダ11のストローク長さ、およびバケットシリンダ12のストローク長さについても、演算上必要なパラメータとして用いられる。
それらの長さは設計値であり、製造誤差や組立誤差の関係で実際の長さとは一致しない。このため、作業機2の姿勢を異ならせた複数の計測位置にて、刃先Pの近傍に設定された計測点MPの計測作業を実際に行い、実測による計測点MPの位置座標とパラメータに基づいて演算された計測点MPの位置座標とから較正値を算出し、この較正値によりパラメータを較正することが行われる。これが較正作業である。この較正作業での計測点MPの実測において、トータルステーションTSおよび測定治具30が用いられる。
なお、情報化施工で施工位置を特定する位置座標の座標系は、GNSSによって計測されるグローバル座標系であり、地球に固定された原点を基準とした座標系である。一方、作業機2中の長さのパラメータを用いて演算される計測点MP(刃先P)の座標系は車体座標系であり、車体1(具体的には旋回体3)に固定された原点を基準とする座標系である。また、較正作業での計測点MPの実測に用いられる座標系はトータルステーション座標系であり、図1に示すように、トータルステーションTSの直下の地上面に設定された原点を基準とする座標系である。
そして、トータルステーション座標系では、車体1の前方側がX軸(正側)、車体前方を向いて右手外方側がY軸(正側)、上方側がZ軸(正側)として設定されている。トータルステーションTSは、ブームフートピン13からX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に所定距離だけ離間した位置に設置される。
このため、較正作業での較正値の演算に際しては、座標系を統一すべく、実測によるトータルステーション座標系の計測点MPの位置座標が車体座標系に変換され、同じ車体座標系である演算による計測点MPの位置座標と比較される。また、情報化施工を実施するにあたっては、逐次演算される車体座標系の刃先中央Qの位置座標と、施工位置を特定するためのグローバル座標系の位置座標との間で座標系変換が行われ、同一座標系の位置座標に基づいて作業機2が制御される。
以下には、較正作業の実測で用いられる測定治具30について詳細に説明する。
[測定治具]
図2には、バケット8の刃先Pに取り付けられる測定治具30の分解斜視図が示されている。図3には、測定治具30をトータルステーションTS側から見た場合の正面図が示されている。図4には、測定治具30の平面図が示されている。図5には、測定治具30の側面図であり、図4の矢印V側から見た矢視図が示されている。
図2ないし図5において、測定治具30は、バケット8が有する複数のツース8Aのうち、最もトータルステーションTSに近い側(Y軸方向正側)のツース8Aの刃先(被取付部)Pに取り付けられる。これは、トータルステーションTSから投射された投射光を、測定治具30の後述するプリズムミラー40に何ら遮られることなく入射させるためである。このため、刃先Pは、刃先中央Qに対しY軸方向に沿って所定距離だけ離間した位置関係にあり、一方で、刃先Pと刃先中央QとにおけるX軸上およびZ軸上での位置は、同じである。
具体的に測定治具30は、トータルステーションTSからの投射光を反射するプリズムミラー(以下、単にプリズム)40と、プリズム40を支持する支持手段としての角度調整機構50と、角度調整機構50を介してプリズム40を刃先Pに取り付ける取付部材60とを備える。
[プリズム]
プリズム40は、三角錐状に3つのプリズムを組み合せて反射面としたプリズム本体41と、プリズム本体41を覆う外装部材42とを備える。
プリズム本体41の三角錐状部分の頂点は、トータルステーションTSを通して視準されるミラー中心MCになっている。また、ミラー中心MCは、本実施形態での計測点MPと一致している。ミラー中心MCは、較正作業時の実測において、トータルステーションTSを通して視準される点であり、計測点MPは、トータルステーションTSを用いて計測される点のことである。
従って、プリズム40のミラー中心MCと計測点MPとが一致していることにより、両者間に従来のようなオフセット量が存在せず、計測位置を異ならせてもミラー中心MCに対して計測点MPが位置ずれしない。
外装部材42の円形の正面は、透明なガラス面42Aとされている。トータルステーションTSから投射された投射光は、ガラス面42Aを通過して内部のプリズム本体41に入射し、プリズム本体41の反射面で反射した後、反射光としてガラス面42Aを通してトータルステーションTSへ出射する。外装部材42のガラス面42Aとは反対側には、雄ねじ部42B(図4、図5)が刻設されている。
[角度調整機構]
角度調整機構50は、プリズム40が支持される第1回動ブラケット51と、第1回動ブラケット51が支持される第2回動ブラケット52と、第2回動ブラケット52が支持される支持ブラケット53とを備え、全体で自在継手の構造を成す。
第1回動ブラケット51は、平面視でトータルステーションTS側に開口したチャンネル形状とされ、その内側部分にはブロック状の支持部51Aが設けられている。支持部51Aには表裏方向(Y軸方向)に貫通した支持開口51Bが設けられ、支持開口51Bの内周面には雌ねじ部51Cが刻設されている。雌ねじ部51Cに雄ねじ部42Bを螺合させることで、プリズム40が第1回動ブラケット51に着脱自在に支持される。
第1回動ブラケット51の両側部51D,51Dには、第2回動ブラケット52を貫通する第1軸部材54,54が挿通されている。第1軸部材54によりプリズム40は、第1回動軸R1を回動中心として、第1回動ブラケット51ごと第2回動ブラケット52に回動自在に支持される。なお、本実施形態では、第1軸部材54の先端が円錐とされ、鋲状に形成されているが、第1軸部材54の形状はこれに限定されず、任意である。
第2回動ブラケット52は、正面視で下方に開口したチャンネル形状とされ、その両側部52A,52A内側には、第1回動ブラケット51の両側部51D,51Dが支持される。
第2回動ブラケット52の上側部52Bには、支持ブラケット53を貫通する第2軸部材55が挿通されている。第2軸部材55によりプリズム40は、第2回動軸R2を回動中心として、第1、第2回動ブラケット51,52ごと支持ブラケット53に回動自在に支持される。
これら第1、第2回動ブラケット51,52において、図3ないし図5では、第1回動軸R1が図1に示す座標軸のX軸と平行に描かれ、第2回動軸R2がZ軸と平行に描かれている。従って、プリズム40は、第1回動軸R1を回動中心として上下方向に回動し、第2回動軸R2を回動中心として左右方向に回動する。ただし、第1、第2回動軸R1,R2とX、Y軸との関係は作業機2の姿勢によって異なるため、この限りではない。
また、第1、第2回動軸R1,R2はミラー中心MCの位置で交差している。このため、プリズム40は、ミラー中心MCすなわち計測点MPを回動点RPとして回動することになる。この結果、プリズム40を回動させても、トータルステーションTS、ミラー中心MC、および計測点MP間相互の位置関係は変わらない。
支持ブラケット53は、側面視で逆L時形状とされ、その上面部53Aには第2回動ブラケット52の上側部52Bが支持される。
支持ブラケット53の鉛直部53Bには、鉛直方向(Z軸方向)に沿って長形状とされた一対の長孔53Cが設けられている。これらの長孔53Cに挿通されるボルト56によりプリズム40は、第1、第2回動ブラケット51,52および支持ブラケット53ごと上下位置を調整可能に取付部材60に取り付けられる。
鉛直部53Bにはさらに、表裏方向(Y軸方向)に貫通した開口部53Dが設けられている。開口部53Dの中心、計測点MP、および刃先Pは、Y軸に沿って位置する。
図6に示すように、測定治具30からプリズム40を外した状態で開口部53Dをのぞき込むと、開口部53Dの中心で取付部材60とツース8Aの先端との実際の当接部分を確認可能である。両者が開口部53Dの中心で当接していることはすなわち、刃先Pが計測点MPに対し、X軸方向やZ軸方向に位置ずれしていないことを意味する。なお、計測点MPは、刃先Pに対してY軸に沿って位置ずれしているだけであるから(図4参照)、計測点MPの位置座標のY座標の値を変えるだけで、任意のツース8Aでの刃先Pひいては刃先中央Qの位置座標を算出することができる。
[取付部材]
取付部材60は、正面視にてL字形状とされ、底面部61と鉛直面部62とを有する。取付部材60の角度調整機構50側の端面には、角度調整機構50の支持ブラケット53をボルト止めするためのボルト孔63が設けられている。取付部材60の底面部61には、ツース8Aの下面と対向する上面側に複数の磁石64がボルト66にて取り付けられている。これらの磁石64の磁着力により、取付部材60ひいては測定治具30全体を鉄製のツース8Aに容易に取り付けることが可能である。
取付部材60の鉛直面部62の一方の鉛直面は、ツース8Aの刃先Pが当接する当接面65である。当接面65での当接状態が開口部53Dを通して視認される。
[計測点の実測手順]
以下には、トータルステーションTSおよび本発明の測定治具30を用いた計測点MPの計測手順について簡単に説明する。
先ず、トータルステーションTSを油圧ショベル100に対して所定距離だけ離れた位置に設置するとともに、プリズム40を取り除いた状態の測定治具30を刃先Pに取り付ける。この際の所定距離としては、厳密な距離ではなく、大凡の距離でよい。また、測定治具30において、開口部53Dをのぞき込み、ツース8Aの刃先Pが開口部53Dの中心で取付部材60に当接しているかを確認する。位置していない場合には、長孔53Cを利用し、取付部材60に対する支持ブラケット53の上下位置を調整したり、取付部材60の当接面65に確実に当接させたりして、当接状態を確実に確保する。
次いで、作業機2を駆動し、刃先Pを予め決められた複数の計測位置に移動し、各計測位置にて、トータルステーションTSによる計測点MPの位置計測を行う。ここで、測定治具30では、プリズム40のミラー中心MCと計測点MPとが一致し、刃先Pを各計測位置に移動させても互いの位置関係がずれないため、トータルステーションTSを通してミラー中心MCを視認できれば、そのまま測定治具30の位置を調整することなく計測を継続できる。刃先Pを各計測位置に移動させた結果、ミラー中心MCを視準できない場合に限って、刃先Pを作業者が作業可能な位置に一旦移動し、プリズム40を適宜回動させてミラー中心MCを視準可能となる位置に調整し、この後、刃先Pを計測位置に再度戻し、計測すればよい。
そして、実測によって得られた各計測位置での計測点MPの位置座標のデータは、図示しない制御装置に出力され、そのデータに基づいて制御装置にて較正値が自動的に演算される。
以上に説明した本実施形態によれば、ミラー中心MCと計測点MPとが一致しており、計測位置が異なってもミラー中心MCに対して計測点MPが位置ずれしないため、トータルステーションTSを通してミラー中心MCが視準可能である限り、わざわざプリズム40をトータルステーションTSに厳密に正対させる必要がない。従って、計測位置が変わる毎にプリズム40の位置を調整する必要もなく、位置計測を容易にできるという効果がある。
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、計測点MPと刃先PとがY軸に沿って位置ずれしていたが、加えてX軸やZ軸に沿って位置ずれしてもよい。両者の位置関係は計測位置が異なっても変化しないため、較正値を演算する上で何ら不都合を生じさせるものではないからである。なお、計測点MPと刃先Pとが一致していても、勿論よい。
前記実施形態では、角度調整機構50は第1、第2回動ブラケット51,52および支持ブラケット53を備えて構成されていたが、これに限らず、例えば球面継手のような構造であってもよい。
また、プリズム40を角度調整機構50のような機構に支持させるのではなく、例えばY軸方向に正面(ガラス面42A)が向いた状態から回動しないよう、取付部材60に固定してもよい。このような場合でも、ミラー中心MCと計測点MPとが一致していることで、本発明の目的を達成できる。しかし、プリズム40を何らかの角度調整機構に支持させ、回動点RP、ミラー中心MC、および計測点MPを一致させることで、前記実施形態で説明したように、計測位置を広範囲にわたって移動させても確実に対応できるため、そうすることが好ましい。
本発明は、実施形態で説明したような通常のバケットが装着される油圧ショベルに利用できる他、法面を押圧して固める法面バケットが装着された油圧ショベル、あるいはバケットが装着される油圧ショベル以外に、ブレードが装着されるブルドーザやモータグレーダ等の建設機械にも利用できる。
30…測定治具、40…プリズムミラー、50…支持手段である角度調整機構、53D…開口部、60…取付部材、64…磁石、MC…ミラー中心、MP…計測点、P…被取付部である刃先、RP…回動点、TS…トータルステーション。

Claims (3)

  1. 被取付部に取り付けられ、トータルステーションと共に計測点の位置計測に用いられる測定治具であって、
    前記トータルステーションからの投射光を反射するプリズムミラーと、
    前記プリズムミラーを前記被取付部に取り付ける取付部材とを備え、
    前記プリズムミラーのミラー中心と前記計測点とが一致しており、
    前記プリズムミラーは、前記取付部材に支持手段を介して取り付けられるとともに、前記支持手段に対して所定方向に回動自在に支持され、前記支持手段に対して着脱自在に設けられ、
    前記プリズムミラーの回動点と前記ミラー中心とが一致しており、
    前記支持手段には、前記プリズムミラーが外された状態で前記取付部材と前記被取付部との互いの当接位置を視認可能な開口部が設けられる
    ことを特徴とする測定治具。
  2. 請求項1に記載の測定治具において、
    前記取付部材には、前記被取付部に磁着する磁石が設けられている
    ことを特徴とする測定治具。
  3. 被取付部に取り付けられ、トータルステーションと共に計測点の位置計測に用いられる測定治具であって、
    前記トータルステーションからの投射光を反射するプリズムミラーと、
    前記プリズムミラーが支持される支持手段と、
    前記支持手段を前記被取付部に取り付ける取付部材とを備え、
    前記プリズムミラーは、前記支持手段に対して所定方向に回動自在に支持され、
    前記プリズムミラーのミラー中心と前記計測点とが一致し、
    前記プリズムミラーの回動点と前記ミラー中心とが一致し、
    前記支持手段には、前記プリズムミラーが外された状態で前記取付部材と前記被取付部との互いの当接位置を視認可能な開口部と、鉛直方向に長い長孔が設けられ、
    前記長孔に挿通されるボルトにより前記支持手段が前記取付部材に取り付けられる
    ことを特徴とする測定治具。
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