JP5815291B2 - 溶接用ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素鋼へのステンレス鋼の肉盛溶接において、高温割れが防止されるとともに、溶接金属部において高耐食性が得られる溶接用ステンレス鋼に関する。
一般に、構造用炭素鋼部材に対して、耐食性、耐熱性、耐摩耗性等を部分的に付与する目的で、ステンレス鋼の肉盛溶接が行われている。肉盛溶接は、部材全体をこのような特性を持った鋼材で作製すると高価となる場合や、部材全体をこのような特性を持った鋼材で作製することが困難である場合、また、部材に生じた摩耗を補修する場合等に用いられる。一般的な構造用炭素鋼へのステンレス鋼の肉盛溶接には、溶接材料(溶接棒、溶接芯線、バンドア−ク鋼帯など)としてオ−ステナイト系ステンレス鋼(特許文献1参照)や、1〜5%程度のδフェライトを含有させた材料(特許文献2参照)が用いられる。溶接金属部にδフェライトが存在すると、PやS等の偏析が抑制され、高温割れの防止に有効であることはよく知られており、溶接性向上のために、溶接材料の高δフェライト化が求められている。
高δフェライト含有のステンレス鋼を溶接材として用いて、SS400、S45C、SCM415等からなる炭素鋼部材に対して肉盛溶接を行うと、溶融した炭素鋼部材の表面に溶接材が溶着して溶接金属部が形成される。炭素鋼部材表面の溶接金属部では、溶接材であるステンレス鋼の成分であるCrが溶融した炭素鋼部材に拡散するため、溶接金属部ではCr量が低下して希釈されており、溶接金属部の耐食性が低下し易い。これに対し、Cr量の低下を防ぐため、フラックス等にCrを含有させて、溶接時にフラックスから溶接金属部へCrが供給されるような方法も開発されている(特許文献3参照)。
特開平8−319541号公報 特開2001−214254号公報 特開2010−234395号公報
δフェライトは高温割れの防止に有効であるが、δフェライトを多く含有するステンレス鋼は、熱間加工性が悪く熱間圧延時に耳割れが発生し易い。このため、高δフェライト含有ステンレス鋼は難加工性材料であり、薄板への加工時に耳割れが発生し、歩留りが低下するなど製造が困難である。また、ステンレス鋼の高δフェライト化には、CrやMo等の添加量を増やし、NiやNの添加量を低くすることによりδフェライトを生成させて行うが、スラブや熱延板等の冷却時にσ相等の金属間化合物が析出して脆化を招くため、割れが発生しやすい。
また、上記のようなフラックスから溶接金属部へCrを供給する方法では、溶接金属部に安定してCrを供給することが難しく、溶接部位の耐食性にばらつきが生じる原因となる。さらに、被覆アーク溶接では、溶接後にフラックスにより生成される溶接金属部表面のスラグに6価Crが残存し易く、環境や安全の観点から好ましくない。
このような背景から、本発明は、炭素鋼部材へのステンレス鋼の肉盛溶接において、高温割れが防止されるとともに、溶接金属部において高耐食性が得られる溶接用ステンレス鋼を提供することを目的としている。
上記課題を解決するため、本発明者らは、溶接性向上の観点からδフェライト量、溶接金属部の耐食性向上の観点からCr量に着目し、高δフェライト・高Cr含有ステンレス鋼について、熱間加工性、製造性、溶接性、σ析出挙動について調査および研究を行った。一般に、δフェライト量が高くなると、溶接時の高温割れを防止することができるが、その一方で、熱間加工時に割れが発生し易くなる。特に、δフェライトが15体積%以上になると、従来のステンレス鋼では、熱間加工割れが顕著となって製造が困難となっている。したがって、ステンレス鋼中のδフェライト量を適切な範囲に規定することが重要である。また、炭素鋼に対してステンレス鋼を溶接材として肉盛溶接を行うと、ステンレス鋼中のCrが溶融した炭素鋼に移動し、溶接金属部ではステンレス鋼のCrが希釈されるため、ステンレス鋼中のCr量は多い方が良い。通常、炭素鋼に肉盛を行う場合は、10〜30%程度希釈される。しかしながら、Cr量が26質量%以上と高濃度になると、スラブや熱延板等の冷却過程でσ相などの金属間化合物が析出し易くなり、脆化による割れが起こり易くなってしまう。
そこで、本発明者らは、ステンレス鋼のNi当量とCr当量のバランスを検討し、C、Si、Mn、Nの成分で調整することによってδフェライト量およびCr量の好適な範囲を求めた。Ni当量およびCr当量は、溶接金属中のδフェライト量を推定する計算式として広く用いられている式を利用し、Ni当量(質量%)=Ni+30×C+0.5×Mn+30×N、Cr当量(質量%)=Cr+1.5×Siにより求めた。また、本発明者らが溶接金属中のδフェライト量について研究を行ったところ、本発明におけるδフェライト量の範囲では、δフェライト量(体積%)=2.8(1.5Si+Cr)−2.5(30C+30N+0.5Mn+Ni)−14.1が成り立つことが判明した。なお、各式における化学記号は当該化学成分の含有量(質量%)を示す。
以上の検討結果から、次の成分を持つ鋼であれば、希釈された溶接金属部においても20質量%以上%以上のCrが含有され、溶接金属部の耐食性が向上されるステンレス鋼が得られることが明らかとなった。すなわち、本発明の溶接用ステンレス鋼は、質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.2〜1.0%、Mn:1.2〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Ni:13〜15%、Cr:24.9〜30%、N:0.02〜0.15%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、かつ下記数1、数2を満足することを特徴とする。
Figure 0005815291
Figure 0005815291
以下、本発明の溶接用ステンレス鋼の数値限定の根拠を本発明の作用とともに説明する。なお、本発明においては、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を表す。
C:0.02〜0.08%
C含有量が低下すると、炭化物の生成が少なくなりステンレス鋼の加工性が向上するため、C含有量は0.08%以下とする。一方、Cはδフェライトの過剰な生成を抑制する元素であるため、0.02%以上必要である。したがって、Cの含有量は0.02〜0.08%とする。
Si:0.2〜1.0%
Siは、σ相などの金属間化合物の析出を抑制する上で低減させる必要があり、また、溶接時の湯流れ性を低下させる。また、多量のSiは、δフェライトを過剰に生成し、熱間加工性を低下させる。このため、Si含有量は1.0%以下とする。一方、Siは脱酸に必要であるため、0.2%以上添加することが必要である。このため、Siの含有量は0.2〜1.0%とする。
Mn:1.2〜2.0%
MnもSi同様にσ相などの金属間化合物の析出を抑制する上で低減させる必要があるため、その含有量を2.0%以下とする。一方、Mnはδフェライトの過剰な生成を抑制する効果があるため、1.2%以上添加することが必要である。このため、Mnの含有量は1.2〜2.0%とする。
P:0.03%以下
Pは不純物として不可避的に混入する元素であり、結晶粒界に偏析しやすく、熱間加工性や溶接における高温割れを防止する観点から、少ないほうが望ましい。しかし、Pの含有量を極端に低減させることは原料コストや精錬等の製造コストの増加を招く。そこで、Pの含有量は0.03%以下とする。
S:0.005%以下
SはPと同様に不純物として不可避的に混入する元素であり、結晶粒界に偏析しやすく、熱間加工性や溶接における高温割れを防止する観点から、少ないほうが望ましい。特に、0.005%を超えて含有させると、その影響が顕著となる。そのため、Sの含有量は0.005%以下とする。好ましくは、0.003%以下とする。
Ni:13〜15%
Niはσ相などの金属間化合物を抑制する上で有効な元素であり、その含有量が13%未満であると、σ相が析出し易くなり、δフェライトが過剰に生成されて、熱間加工性が低下する。一方、Ni含有量が15%を超えると、δフェライトの生成が抑制されるため、所望のδフェライト量が得られず、溶接金属部の高温割れ感受性が高まる。よって、Niの含有量は、13〜15%とする。
Cr:24〜30%
Crは耐食性の向上に有効な元素である。δフェライトを十分に生成させ、かつ、耐食性を確保するために、溶接金属部に20%以上のCrを含有させることが望ましい。このため、溶接金属部での希釈を考慮して、溶接材であるステンレス鋼にはCrを24%以上含有させる必要がある。しかしながら、30%を超えて含有させると、スラブ等の冷却過程でσ相などの金属間化合物が析出しやすく、脆化し、割れが起こり易くなる。そこで、Crの含有量は24〜30%とする。より好ましくは、25〜28wt%である。
N:0.02〜0.15%
NはCrと同様に耐食性を向上させるとともに、δフェライトの過剰な生成を抑制するのに有効な元素であり、その効果を得るには0.02%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.15%を超えて含有させると、熱間変形抵抗が上昇して熱間加工性を低下させる。また、Nの含有量が大きいと、Ni当量が増え、Cr当量とのバランスが崩れて、溶接金属部での所望のδフェライト量を確保することが難しくなる。このため、Nの含有量は0.02〜0.15%とする。より好ましくは、0.04〜0.12%である。
Ni当量(質量%):15〜22
Ni当量は、Ni当量=Ni+30×C+0.5×Mn+30×Nにより求められるが、 15未満であると、σ相が析出し易くなり脆化し割れ易くなる。一方、Ni当量が22を超えると、所望のδフェライト量が得難くなる。
Cr当量(質量%):24〜30
Cr当量は、Cr当量=Cr+1.5×Siにより求められる。Cr当量が24未満であると、所望のδフェライト量を得難くなる。一方、Cr当量が30を超えると、σ相が析出し、脆化する。
δフェライト量(体積%):12〜19
本発明におけるδフェライト量の範囲では、δフェライト量(体積%)=2.8(1.5Si+Cr)−2.5(30C+30N+0.5Mn+Ni)−14.1が成り立つ。炭素鋼に対するステンレス鋼の異種溶接においては、溶接金属部のδフェライト量の増加に伴い高温割れが低減される。このため、この式により推定されるδフェライト量が12未満であると、δフェライト量が不十分となり、高温割れの抑制効果が小さくなる。また、δフェライト量が19を超えると、熱間加工性が低下する。したがって、δフェライト量は12〜19とする。
このように、本発明の溶接用ステンレス鋼を、数1、数2を満たす量の上記成分組成とすることにより、母材である炭素鋼との希釈を受ける溶接金属部において、2体積%以上のδフェライトを含有させることができる。したがって、溶接時の高温割れを防止することができる。
また、本発明の溶接用ステンレス鋼は、Crを多量に含有するため、SS400、S45C、SCM415等の一般的なCr濃度の鉄鋼材料に肉盛溶接を行っても、溶接金属部のCr量を20%以上とすることができ、溶接金属部の耐食性を確保することができる。このため、本発明の溶接用ステンレス鋼は、Crが2%未満の構造用鉄鋼材料に肉盛溶接を行うことが好ましい。また、本発明の溶接用ステンレス鋼を、サブマージアーク溶接、被覆アーク溶接、エレクトロスラグ溶接、フラックスコアドワイヤーによるマグ溶接、ソリッドワイヤーによるミグ溶接、ティグ溶接のいずれかの溶接法によって溶融させることが好ましい。
本発明によれば、炭素鋼部材へのステンレス鋼の肉盛溶接において、高温割れが防止されるとともに、溶接金属部において高耐食性が得られる溶接用ステンレス鋼を得ることができる。
実施例で用いた試料のδフェライト量とCr量との関係を示すグラフである。
以下、本発明の溶接用ステンレス鋼についてさらに詳細に説明する。本発明の溶接用ステンレス鋼は、工業的に利用されている従来の方法によって製造することが可能である。最も工業的に望ましいのは、60トンなど実機規模にて、製造するのが効率的かつ経済的である。まず、鉄屑、ステンレス屑、フェロクロム、フェロニッケル、純ニッケル、メタリッククロムなどの原料を、電気炉で溶解する。次に、AOD(Argon Oxygen Decarburization)および/またはVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)において、酸素を吹精し、脱炭精錬する。AODの煉瓦はマグクロあるいはドロマイトなどMgO含有耐火物が好ましい。VODの取鍋は、マグクロあるいはドロマイトなどMgO含有耐火物が好ましい。AODの場合は希釈ガスにArおよび/または窒素を用いるのが良い。また、AODにおいては、上から減圧用に炉内を排気可能な蓋を被せて、脱炭末期に減圧下において、Arを吹精しながら強撹拌し、スラグ中に形成したCr酸化物と溶鋼中のCを積極的に反応させて、脱炭しても構わない。
脱炭後、FeSi合金および/またはAlを投入して、スラグ中のCr酸化物を還元する。その後、石灰石、蛍石を添加して、CaO−SiO−Al−MgO系スラグを形成して、脱酸、脱硫を行い、必要に応じて、窒素ガスを吹き込み、溶鋼中窒素濃度を、所望の範囲に制御する。S:0.005%以下に制御するために、スラグ組成は塩基度質量%CaO/質量%SiO比率:2〜6が望ましい。2未満であると、スラグのS許容能力が足りずに、Sが0.005%を超えて高くなってしまい、熱間加工性が低下する。塩基度が6を超えて高いと滓化性に劣り、逆にスラグの流動性を低下させ、脱硫に不利になることで、Sが0.005%を超えて高くなってしまう。MgOは3〜8%が望ましい。MgOが3%未満では、煉瓦の溶損が進行し、炉の寿命が短くなる。MgOが8%を超えて高いと、MgOが還元されて、溶鋼中にMgが供給され、非金属介在物がMgO・Alスピネルとなりやすい。このスピネル介在物はタンディッシュから連続鋳造の鋳型に注湯する浸漬ノズルの内壁に付着して、堆積し、脱落すると、数百μm〜数mmのサイズの大型介在物として、スラブ中に捕捉される。このようになってしまうと、鋼板の表面、あるいは鋼板内部に欠陥をもたらしてしまうので、MgOは3〜8%が望ましい。
このようにして、精錬して化学成分を所望の範囲に制御した溶鋼を、連続鋳造機で鋳造し、スラブを得る。連続鋳造スラブを冷却する際の冷却速度は、700℃に至るまで1℃/min以上とする。なお、1℃/min未満で冷却すると、スラブ中でσ相が形成し、脆化し易くなる。さらに、得られたスラブを熱間圧延し、熱延板を製造する。熱間圧延においては、その熱延過程にて鋼が900から700℃まで冷却される温度域を10℃/min以上で冷却する。なお、10℃/min未満で冷却すると、σ相が形成し、脆化し易くなる。もちろん、高周波誘導炉を用いて、電解鉄、純クロム、純ニッケル、窒化フェロクロム、フェロシリコン、純マンガンなどの原料を溶解して、鋼塊を作製しても構わない。
以上のようにして作製した本発明の溶接用ステンレス鋼は、一般的なCr濃度の炭素鋼材料に肉盛溶接を行っても、溶接金属部のCr量を20%以上とすることができ、溶接金属部の耐食性を確保することができる。たとえば、SS400、S45C、SCM415等の構造用炭素鋼部材への肉盛溶接に好適である。本発明の溶接用ステンレス鋼は、サブマージアーク溶接、被覆アーク溶接、エレクトロスラグ溶接、フラックスコアドワイヤーによるマグ溶接、ソリッドワイヤーによるミグ溶接、ソリッドワイヤーによるティグ溶接のいずれかの溶接法によって肉盛溶接を行う。溶接条件は、特に規定しないが、たとえば次のような条件で溶接可能である。すなわち、厚み0.4mm、幅50mmのバンドアーク鋼帯として、溶接電流860A、溶接電圧24V、溶接速度250mm/minでサブマージアーク溶接を行うことができる。溶接におけるフラックスには、溶接金属部での所望のδフェライト量を満足するフラックスを使用すれば良い。
以下、実施例によってさらに本発明を詳細に説明する。まず、鉄屑、ステンレス屑、フェロクロム、フェロニッケル、純ニッケル、メタリッククロムなどの原料を、60トンの電気炉で溶解した。その後、VODにおいて、酸素を吹精し、脱炭精錬した。VODの取鍋には、マグクロ耐火物を張った。脱炭後、FeSi合金およびAlを投入して、スラグ中のCr酸化物を還元した。さらに、石灰石、蛍石を添加して、CaO−SiO−Al−MgO系スラグを形成して、脱酸、脱硫を行い、窒素ガスを吹き込み、溶鋼中窒素濃度を制御した。このようにして精錬した溶鋼を、縦型連続鋳造機にて鋳造し、表1に示す組成のスラブ(試料1〜20)を得た。
なお、表1に、下記数3、数4より算出した値を併記する。
Figure 0005815291
Figure 0005815291
Figure 0005815291
各スラブに対して、熱間圧延と冷間圧延を行い、溶体化処理を施して、厚さ0.4mmの冷延板を製造した。そして、超高温引張試験による熱間加工性と、熱間鍛造・冷間圧延工程までの歩留まり率から製造性を評価した。超高温引張試験は、1100℃において、引張速度100mm/sにおいて試験を行った。超高温引張試験では、破断後の断面減少率を熱間加工性として評価した。断面減少率が大きいほど、熱間加工性に優れるため好ましい。また、歩留まり率は、85%以上を○とし、84〜70%を△、69%以下を×として評価した。
また、各試料の溶接性および耐食性を評価するため、溶接実験を行い、溶接金属部の評価を以下の通りに行った。各試料から厚み0.4mm、幅50mmのバンドアーク鋼帯を作製し、溶接電流860A、溶接電圧24V、溶接速度240mm/minにおいて、表1に示す被溶接材に対してサブマージアーク溶接を行った。なお、被溶接材であるSS400のCr量は、0.01%、S45CのCr量は0.01%、SCM415のCr量は1.05%であった。フラックスとしては、本発明で規定した溶接金属部でのδフェライト量を満足するフラックスを使用した。そして、形成された溶接金属部について、高温割れ有無およびδフェライト量を調査して溶接性を評価し、Cr量およびPREを調査して耐食性を評価した。
高温割れの有無は、溶接後の肉盛面を0.2mm研削し、浸透探傷試験により求めた。高温割れが見られなかったものを○、割れが発生したものを×とした。また、δフェライト量は、フェライトメーターで測定することにより求めた。溶接金属中のδフェライト量が2質量%以上であれば、高温割れが生じにくいため、δフェライト量が2質量%以上の試料を○と評価した。
耐食性は、一般的に、溶接金属部においてCrが20質量%以上含有されていれば十分な耐食性を有することが分かっている。このため、溶接金属部を切り出して、溶接金属中のCr量を化学分析により求めることにより、耐食性をCr濃度により評価した。Crが20質量%以上を○、20質量%未満を×とした。なお、溶接金属中のCrが20質量%以上であれば、十分な耐食性を示すことは、ASTM G48 Method Cにより確認を行った。さらに、耐食性の指標としてPREを求めた。PREは、PRE=Cr+16×Nより求め、高耐食性であるSUS316Lが25であるため、25以上の試料を○と評価した。各種結果を表2に示す。
Figure 0005815291
図1に、各試料のδフェライト計算値とCr量との関係を示す。図1では、製造性、溶接性、耐食性のすべてにおいて、その評価が良好であったものを●で表示し、いずれかが基準に満たなかったものを×と表示した。図1および表2から分かるように、本発明で規定した組成範囲の試料No.1〜10の試料では、製造性、溶接性に優れるとともに、耐食性に優れることが確認された。他方、比較例である試料No.11〜20の試料では、歩留まりが低く製造性が低いものや、溶接金属中のδフェライト量が不足して溶接性が低いものや、溶接金属中のCr量が20%に満たないために耐食性が低いものがあった。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.2〜1.0%、Mn:1.2〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Ni:13〜15%、Cr:24.9〜30%、N:0.02〜0.15%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、かつ下記数1、数2を満足することを特徴とする溶接用ステンレス鋼。
    Figure 0005815291
    Figure 0005815291
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