JP5813660B2 - 隔年結実の抑制 - Google Patents
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Description
本発明は、米国特許法35条119(e)項の下、米国特許出願No.61/290,470号(出願日:2009年12月28日)に基づく優先権を主張するものであり、参照により、上記米国特許出願の内容を含むものである。
天然代謝産物を使用して多年生作物の隔年結実を抑制する組成物および方法について説明する。特に、本開示内容では、オーキシン輸送阻害物質の存在下または非存在下において天然代謝産物を与えて、結実数の多い年の翌春の着花度(花の個数)を増加させて、結実数が減少すると予測される年の生産量を増加させることで、累積生産量を増加する。さらに、本開示内容では、天然代謝産物を成長促進タイプの植物成長調整剤と、ホルモン生合成阻害タイプの植物成長調整剤、輸送阻害タイプの植物成長調整剤、または機能阻害タイプの植物成長調整剤との1つ以上と組み合わせて使用する。
隔年結実(隔年結果または結実ムラとも称する)とは、結実数の多い年と結実の少ない年とを交互に繰り返す、多年生作物の傾向である。結実数の多い年では、サイズの小さい果実が大量に生産されるため、果実の市場価値が低下する。一方、結実数の少ない年では、果実のサイズが大きくなるものの、生産量が低いため、生産コストを差し引いた後に生産者の手に残る収入は僅かとなる。隔年結実は、果実価格の不安定性を招来し、生産者の年間収入を不安定にし、市場シェアの喪失リスクに繋がる。結実数の少ない年の生産量の減少は、付加価値品産業の発展または持続性を危うくするものである。
天然代謝産物を使用して多年生作物の隔年結実を抑制する組成物および方法を説明する。特に、本開示内容では、オーキシン輸送阻害物質(植物成長調整剤または天然フラボノイド)の存在下または非存在下において天然代謝産物(アデノシン等)を供給して、結実数の多い年の翌春の着花度(花の個数)を増大させて、結実数が減少すると予測される翌年の生産量を増加し、累積作物生産量を増加する。また、本開示内容では、天然代謝産物を、成長促進性の植物成長調整剤と、ホルモン生合成阻害性、輸送阻害性、または機能阻害性の植物成長調整剤との1つ以上と組み合わせて供給する。
図1は、一年間の間に起きるネーブルオレンジの開花、実止まり、果実形成を示すタイムラインである。ネーブルオレンジの果樹では、11月下旬から翌年の1月にかけて、栄養成長から繁殖(花)成長へと移行し、12月中旬から翌年の1月中旬にかけて、開花(決定性)への不可逆的関与が生じる。そして、開花および落花が2月から5月中旬または6月中旬にかけて起きる。実止まりは、2月から7月の間に行われる。落果は、4月から8月の間に起きる。ここで、果実形成は、3段階に分かれて展開される。2月から7月の間に生じる第1ステージでは、果実のサイズがゆっくりと大きくなる。上記第1ステージの終わりには、果実の皮の厚さが最大になる。南はIrvine(カリフォルニア州)から北はMadera(カリフォルニア州)まで、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、およびマンダリンオレンジの上記第1ステージの終わりが、概ね6月10日から7月26日にかけて行われるのが実験的に示された。なお、上記第1ステージの終わりは、皮の薄い品種のもの(すなわち、マンダリンオレンジ<バレンシアオレンジ<ネーブルオレンジ)ほど上記期間の早い段階において到来した。また、同一の品種では、結実数の少ない年と比較して、結実数の多い年の方が、上記第1ステージの終わりが早い時期に到来した。次に、6月から11月の間に生じる第2ステージでは、果実のサイズが急激に大きくなる。そして、11月から翌年の1月の間に生じる第3ステージは、果実のサイズの増大率が再度低くなる成熟段階である。上記第1段階および第2段階(それぞれ、早期落果期間および6月の落果期間)は、果実の保持および生産量の増加における臨界期間である。上記第1段階の終わりから上記第2段階までは、果実のサイズ増加にとっての臨界期間である。収穫前の期間は、9月から12月の間であり、収穫期は12月から翌年の6月までである。図1は、Riverside(カリフォルニア州)に栽培される‘Troyer’シトレンジの根茎に継ぎ木した、樹齢25年の“Washington”ネーブルオレンジを基にして作成した図である。
本開示内容を完全に理解できるよう、以下の定義を供給する。
ある作物において、結実の多い年(on−crop、on−year)の後に結実の減少する年(off−crop, off−year)が続く場合に、隔年結実が起きる。このような現象について定量化したものを以下の表1に示す。
Ojai(カリフォルニア州)の‘Pixie’マンダリンオレンジ(温州ミカン)の研究結果では、結実の多い年に未成熟の果実が大量に成長した場合、夏の栄養シュートまたは秋の栄養シュートへと成長する芽の発芽が阻害され、その結果、翌春に花芽および花部を形成するシュート及びその節(部位)の双方の数が減少する(Verreynne, Ph.D. Thesis,University of California,Riverside,2005年; Verreynne and Lovatt,J Amer Soc Hort Sci,134:299−307,2009年)という有力な証拠が得られた。より詳細な研究では、未成熟の果実の除去が翌春の着花度、栄養シュート数、および不活性化する芽の数に及ぼす影響を定量化し、この研究により、夏の若いシュートが優れた着花にとって重要であることが確認された。さらに、果実除去を含む研究により、春を通じて果樹に残された結実の多い年の成長中の未成熟果実と成熟果実(マンダリンオレンジ品種、ネーブルオレンジ品種、およびバレンシアオレンジ品種などの後期収穫の柑橘品種にみられるように)とが、春の発芽を抑制することで、隔年結実の大きな原因となるという証拠が得られた。
夏のシュートの生育の阻害は、芽の中に高濃度のホルモンインドール−3−酢酸(IAA)およびオーキシンと低濃度のサイトカイニンイソペンテニルアデノシン(IPA)とを伴う相互抑制に因るものである(Verreynne,Ph.D.Thesis,University of California,Riverside,2005年)。上記果実はIAAを排出し、排出されたIAAは夏の若いシュートの芽の中に蓄積する。結実数の多い年では、芽の中のIAA濃度が高く、多くの芽に影響が出る。一方、根で作製され、樹木の木質部の若枝(林冠部)へと移動するサイトカイニンは、果実へと運ばれ、夏の若いシュートの芽には届かない。結実数の多い年では、上記サイトカイニンを転用する果実が多く実る。その結果、高オーキシン・低サイトカイニン比率となり、萌芽が相互的に抑制され、夏(及び秋)の栄養シュート数が減少し、花芽の発育が抑制されるので、翌春の着花が抑制される。7月に果実を取り除くことで、IAA源が排除され、サイトカイニンが上記芽へ供給される。その結果、夏の若いシュートおよび秋のシュートが生育し、花芽が発育するので、翌春に形成される花序および花の数が増加し、多くの果実が実り、生産量が増加する。果実の浸出液を分析した結果、IAA源が果実であることが確認された。結実数の多い年の個体樹木から全ての果実を7月中に取り除いた場合、8月までに、シュート内のIAA濃度が452ng/gDWから179ng/gDW(P=0.0091)へと減少し、シュート内のIPA濃度が50ng/gDWから118ng/gDW(p=0.0537)へと増加して結実数の少ない年の個体樹木のシュート内のIPA濃度と同等になり、発育したSFシュート数が増加し、翌春の着花度が増加した。なお、結実数の少ない年における、低果実数による効果は、上記のように果実を取り除くことで得られる効果と同様のものである。
‘Pixie’マンダリンのような晩熟性の品種では、ほぼ熟している果実が春季に樹に実っている場合には、春季の萌芽が抑制されてしまう。この場合、萌芽の抑制の原因は、IAAが蓄積されること、果実により排出されたアブシジン酸(ABA)が蓄積されること、および、上記芽に到達するサイトカイニン(IPA)の量が減少することである。上記のように果実を取り除くことによって、果実がIAA源およびABA源であり、IPAが上記芽へ到達できない原因であることが確認された。結実数の多い年の個体樹木から12月中に果実を取り除いた場合、翌年の1月までに、芽中のIAA濃度が減少し、IPA濃度が増加して、春の着花を有意に増加させた。また、結実数の多い年の個体樹木から2月中に果実を取り除いた場合、3月上旬までに、ABA:IPA比率が、結実数の少ない年の個体樹木のABA:IPA比率と同等にまで減少した。他の品種においても、熟した果実を果樹から取り除かない場合、春季の萌芽が抑制されてしまった。本開示内容を構築していくなかで究明されたように、低サイトカイニンに対するIAAおよびABAの比率が高い場合、萌芽だけではなく、花成経路遺伝子の発現にも影響が及ぶ。本明細書に開示する技術を使用して上記芽中のIAA濃度の減少および/またはサイトカイニン濃度の増加させた場合、上記IAA:サイトカイニン比率および上記ABA:サイトカイニン比率を低下させれば、着花度(花芽シュートおよび花の数)は増加する。よって、上記技術は、花遺伝子の発現の制御と発芽の増加とに対する好ましい効果も持つ。
果実除去を含む上記実験の結果、果実が悪影響を及ぼす時期と、上記果実の悪影響に対する矯正処置を行うべき時期とを同定した。上記実験において採取された上記芽についてホルモン濃度の変化を分析したところ、萌芽抑制におけるホルモンの役割が判明した。新たな夏の栄養シュートおよび秋の栄養シュートの萌芽の抑制は、インドール−3−酢酸(オーキシン)が上記果実から排出され、芽中に蓄積されることで、低サイトカイニンに対するオーキシンの比率(相互抑制)を増大させることに起因する。同様に、春の萌芽の抑制は、低サイトカイニン濃度に対するIAA濃度およびアブシジン酸濃度が芽において増大することに起因する。よって、サイトカイニンに対するIAAおよびアブシジン酸の比率が増大することにより引き起こされる春の萌芽の抑制と、これと相互して、サイトカイニンに対するインドール−3−酢酸の比率が増大することにより引き起こされる抑制との一方または両方を解決する本開示内容の方法および組成物は、多年生作物の隔年結実を抑制するのに好適である。どちらの場合においても、上記実験により得られた結果は、結実数が増加することによって翌年の花の発育に必要な作物内の炭水化物貯蔵(エネルギー)が使い果たされる結果として隔年結実が引き起こされるという長年支持されてきたパラダイムと、著しく対比するものである。
アボカド(Persea americana cv.Hass)の研究結果により、‘Pixie’マンダリンの隔年結実の一因となる2つのホルモン系機構が、‘Hass’アボカドの隔年結実の一因でもあるという有力な証拠が得られた(Lovatt,2008 年 Production Research Report of the California Avocado Commission, www.avocado.org/growers/symposiumcontent.php?research=m2)。さらに、ピスタチオ(Pistacia vera cv.Kerman)においても、結実数が増加すると、翌年の花芽を実らせる夏の栄養シュートの数および/または長さが減少する。その結果、翌年の花芽の数が減少する可能性が高くなる。初期のホルモン分析の結果では、夏のシュート発育の抑制は、これに相互抑制(低サイトカイニン濃度に対する高オーキシン濃度)する原因に因ることが示唆されている。よって、ピスタチオの樹は、夏の栄養シュートの萌芽を増加させるとともに、夏の栄養シュートの長さを増大させることで、花芽が形成する節(部位)の数を増加させて、翌春の着花を増加させ、その結果、結実数の減少する年の生産量を増加させる技術から恩恵を受ける。ピスタチオは9月に収穫されるため、隔年結実を抑制する晩冬の処置は必要でなくともよいが、晩冬の処置を行って、夏の間の胚発生(nut fill)期間中に花芽において発展する低サイトカイニンに対するIAAおよびアブシジン酸の比率の増大を抑制することで、春季の萌芽を増進してもよい(Lovatt and Ferguson,Calif.Pistachio Industry Annual Rep.Crop:114−115,2002年)。
本開示内容では、オーキシン輸送阻害物質の存在下または非存在下において天然化合物(アデノシン等)を使用して、結実数が増加することによる影響を抑制することが具現されている。結実数が増加することによる影響の抑制は、(i)オーキシンの蓄積とサイトカイニン濃度(相関抑制)の低下とにより引き起こされる夏のシュートの萌芽の抑制を克服すること、および(ii)IAAおよびアブシジン酸の蓄積とサイトカイニン濃度の低下とにより引き起こされる春の花芽の萌芽の抑制を克服すること、のうちの一方または両方を行うことにより達成される。
本開示内容によれば、隔年結実を抑制する組成物であって、(i)アデノシン(等)と(ii)オーキシン輸送阻害物質とを含む組成物が提供される。幾つかの実施形態では、上記オーキシン輸送阻害物質は、植物成長調整剤である(PGR)。一方、他の実施形態では、上記オーキシン輸送阻害物質は、フラボノイド又はイソフラボノイドである。また、本開示内容によれば、隔年結実を抑制する組成物であって、(i)アデノシン(等)と(ii)PGRとを含む組成物が提供される。幾つかの実施形態では、上記PGRは、植物の成長を促進させるか、または、アブシジン酸の合成、輸送、または機能を阻害する。幾つかの実施形態では、上記組成物は肥料を含む。いくつかの実施形態では、隔年結実の抑制は、隔年結実の起きている果樹園で栽培される市場価値のある果実のサイズを大きくし、且つ生産量を増加させることを含む。
5%である。上記組成物内に存在する界面活性剤により上記天然代謝産物の分解が促進され、上記植物による分解された上記天然代謝産物の摂取が促進され、および/または、所望の反応を誘発させる効果が得られる場合、上記界面活性剤は、本開示内容に係る上記組成物内において有用な量で存在しているといえる。好ましい実施形態では、上記界面活性剤は、上記組成物内に約0.5%から約5%の量で存在するポリソルベートである。特に好ましい実施形態では、上記界面活性剤は、上記組成物内に約0.5%から約5%の量で存在するポリソルベート20(ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート)である。
以下に実施例を説明する。下記の実施例は、本開示内容の好適な実施形態および好適な様態のうちの一部を示し、更に説明するものであるが、本開示内容の範囲を限定するものではない。
本開示内容の理解を確実にするために、以下の略称を使用する:ABA(アブシジン酸);Ado(アデノシン);Ade(アデニン);6−BA(6−ベンジルアミノプリン、6−ベンジルアデニン);2,4−D(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸);2,4,5−T(2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸);GA(ジベレリン);、GA3(ジベレリン酸);IAA(インドール−3−酢酸);IBA(インドール−3−酪酸);IPA(イソペンテニルアデニン);NAA(1−ナフタレン酢酸);TIBA(2,3,5‐トリヨード安息香酸);PGR(植物成長調整剤);およびVeg(栄養性)。
特に断りのない限り、以下に示すデータの全ては100節当たりのシュート数の平均値である。また、分散の解析を利用して、栄養シュートおよび花芽シュートの発育における処理効果と、マンダリンの葉無しの花芽シュートおよび葉有りの花芽シュートの結果による着花度における処理効果と、アボカドの有限花序の花芽シュートおよび無限花序の花芽シュートの結果による着花度における処理効果と、大増殖期のマンダリンの栄養シュートおよび大増殖期のアボカドの栄養シュートにおける処理効果と、マンダリンの収量における処理効果とを、SAS統計モデル(SAS Inst社 Cary(ニューヨーク州))の一般線形モデル手順を使用して検査した。そして、Fisher‘s protected LSD法またはDunnett’s two−tailed T−test法を使用して、平均値を分離した(p=0.05)。
(マンダリンの樹の隔年結実を抑制するための、樹幹注入法によるアデノシン投与)
本実施例では、上記オーキシン輸送阻害物質TIBAを含む組成物中のアデノシンを‘Nules’ クレメンタインマンダリンの樹へ樹幹注入することにより実現される、隔年結実の抑制を説明する。結実数の多い年の‘Nules’ クレメンタインマンダリンの樹に対して、表1−1に示す以下の化合物を単独で又はTIBAと組み合わせて樹幹注入した:TIBA(2,3,5−トリヨード安息香酸)(Sigma Chemical社);6−BA(6−ベンジルアデニン)(Sigma Chemical社);GA3(PROGIBB(登録商標)40%、Valent BioSciences社);Ado(9−ベータ−D−アデノシン)(Sigma Chemical社、カタログ番号A9251)。各投与時期に、1果樹当たり1gの割合で50mlから60mlの蒸留水に溶解させた各材料を、1樹木につきプラスチック注射器を2本使用して投与した。投与の時期は、(1)相互抑制を解決して夏のシュート発育を活性化するように(7月)、および(2)春季の萌芽の抑制を解決するように(1月)、選んだ。したがって、果樹への投与を7月のみに行うか、または、7月と翌年の1月に行った。また、各シュートから頂端の3つの節を取り除いて、側芽を上記節の支配から開放させて、夏の栄養シュートの発育を促進する処理を行った。上記処理には、結実数の多い年の未処理の対照果樹と不作年に当たる未処理の対照果樹とが含まれる。実験の設計は、各処理につき5つの個体果樹の複製を使用した13通りの処理による完全乱塊法であった。各果樹に対して4つの象限領域を想定し、各象限領域において、結実有りの枝(長さ)12インチ)の3本にタグ付けし、結実無しの枝(長さ:12インチ)の1本にタグ付けをした(不作年の対照果樹に関しては、各象限領域において、結実無しの枝の3本にタグ付けをし、結実有りの枝の1本にタグ付けをした)。新たな栄養シュートの個数と長さを9月末および12月末に測定した。これにより、上記処理によって、夏のシュートを形成する芽の萌芽阻害をどの程度抑制できたか、および秋のシュートを形成する芽の萌芽阻害をどの程度抑制できたかを測定した。春の開花時期に、タグ付けされた各枝における夏および秋に萌芽した花芽シュート(葉を含む花芽シュートおよび葉を含まない花芽シュート)の個数、栄養シュートの個数、および不活性となった芽の個数を数え、それ以前の春に萌芽していた花芽シュート(葉を含む花芽シュートおよび葉を含まない花芽シュート)の個数、栄養シュートの個数、および不活性となった芽の個数を数えた。
(アデノシンの樹幹注入によるアボカド果樹の隔年結実抑制)
本実施例では、アデノシンと植物成長調整剤とを‘Hass’アボカド果樹に樹幹注入することにより達成される、‘Hass’アボカド果樹の隔年結実の抑制を説明する。Irvine(カリフォルニア州)に所在する商業的果樹園にて栽培されている‘Hass’アボカドの樹のうち、結実の多い年の樹の幹に、以下の(1)から(5)に示す処理剤を1g/樹の割合で1月中旬に注入した;(1)9−ベータ−D−アデノシン(Sigma Chemical社、カタログ番号A9251)と、(2)6-BA(Sigma Chemical社)と、(3)GA3(PROGIBB(登録商標)40% Valent BioSciences社)と、(4)TIBA(Sigma Chemical社)と、(5)TIBAおよびアデノシン。1果樹当たり1gの割合で50mlから60mlの蒸留水に溶解させた各材料を、1樹木につきプラスチック注射器を2本使用して投与した。各処理を施す対象として、同じ果樹の複製個体を5つずつ用意し、そのうちの1個体ずつを結実の多い年の未処理の対照果樹(6)とした。各果樹に対して4つの象限領域を想定し、各象限領域において、結実有りの枝(長さ:12インチ)の1本にタグ付けし、結実無しの枝(長さ:12インチ)の1本にタグ付けをした。春季大増殖期に、タグ付けされた各枝の花芽シュート(無限花序の花芽シュートおよび有限花序の花芽シュート)の数、栄養シュートの数、および不活性となった芽の数を数えた。
(商業的価値のある大きなサイズの果実の生産量を増加させるために、隔年結実を起こすマンダリンオレンジの樹に対して行われる葉面散布法によるアデノシンの投与)
本実施例では、隔年結実を起こすクレメンタインマンダリンオレンジの樹の林冠部にアデノシンを投与して実現される、商業的価値のある大きなサイズの果樹の生産量の増加について説明する。本実施例では、隔年結実を抑制した果樹の林冠部へアデノシンを噴きつけることによって夏の栄養シュートの発育を活性化させた場合、商業的価値のある果実はサイズが増大し、且つ生産量が増加するので、結実数の増加に伴って頻繁に現れるサイズの小さい果実の問題が防止される証拠を提供する。果実の皮が最も厚くなると、果実形成の細胞分裂段階が終わりを迎えたことが示されるので、Sigma Chemical社のアデノシン (9−beta−D−アデノシン) (カタログ番号A9251)(1エーカー当たり、250ガロンの水に対して25mg/Lの割合)を‘Fina Sodea’クレメンタインマンダリンの樹に投与する。以下の表3−1に示すように、アデノシンを投与すると、直径が57.16mmから69.85mmのサイズ(“large”サイズおよび“jumbo”サイズの梱包箱)の果実の3年間の累積収量を有意に増加させることができ、且つ、全収量を減少させることなく(1果樹当たりの平均キログラム数[xサイズの個数])(p ≦0.05)、“large”サイズ、“jumbo”サイズ、および“mammoth”サイズの梱包箱に相当するサイズの商業的価値のあるマンダリン果実の合計の3年間の累積収量を増加できた。以下の表3−2に示すように、アデノシンを投与することで、各樹に実る直径57.16 mmから69.85 mm(“large”および“jumbo”の梱包箱サイズ)のサイズの大きな果実の3年間の累積収量(個数)を有意に増加させ、且つ、全収量(1樹当たりに実る果実の平均個数)を減少させることなく、“large”、 “jumbo”、“mammoth”それぞれの梱包箱サイズであって商業的価値のあるマンダリン果実の3年間の合計累積収量を有意に増加させた(p≦0.05)。
Claims (30)
- 多年生作物の隔年結実を抑制する方法であって、
効果的な量のアデノシンを含むヌクレオシドを含む組成物を多年生作物に投与して、上記多年生作物の隔年結実を抑制する工程を含む、方法。 - 上記ヌクレオシドが、9−ベータ−D−アデノシンを少なくとも95%含む、請求項1に記載の方法。
- 上記多年生作物が、シトラスである、請求項1に記載の方法。
- 上記組成物は、6−ベンジルアミノプリンと、ゼアチンと、ゼアチンリボシドと、キネチンと、イソペンテニルアデニンと、イソペンテニルアデノシンと、1−(2−クロロ−4−ピリジニル)−3−フェニル尿素と、ジベレリン酸と、6−ベンジルアデニンと、6−ベンジルアデノシンと、2,3,5−トリヨード安息香酸と、DPX1840と、9−ヒドロキシフルオレン−9−カルボン酸と、ナプタラム(N−1−ナフチルフタラミン酸)と、フルリドン(1−メチル−3−フェニル−5−[3−トリフルロメチル(フェニル)]−4−(1H)−ピリジノン)と、アバミンと、1−ブタノールと、これらの組み合わせとからなる一群から選択される植物成長調整剤を更に含む、請求項2に記載の方法。
- 上記植物成長調整剤が2,3,5−トリヨード安息香酸である、請求項4に記載の方法。
- 上記組成物が、ナリンゲニンと、ケルセチンと、フォルモノネチンと、ゲニステインと、これらの組み合わせとからなる一群から選択されるフラボノイド又はイソフラボノイドを更に含む、請求項2に記載の方法。
- 上記組成物が、窒素と、カリウムと、マグネシウムと、リンと、カルシウムと、硫黄と、鉄と、ホウ素と、塩素と、マンガンと、亜鉛と、銅と、モリブデンと、ニッケルと、シリコンと、セレンと、コバルトと、これらの組み合わせとからなる一群から選択される肥料を更に含む、請求項2に記載の方法。
- 上記多年生作物が、アプリコットと、アボカドと、シトラスと、桃と、西洋ナシと、ペカンと、ピスタチオと、プラムとからなる一群から選択される、請求項2に記載の方法。
- 上記多年生作物が、アボカドと、シトラスと、ピスタチオとからなる一群から選択される、請求項8に記載の方法。
- 上記組成物を、発育シュートの夏の発育の開始時期であって、春の萌芽期よりも早い時期に投与する、請求項2に記載の方法。
- 葉面散布法と、注水法と、樹幹注入法とからなる一群から選択される手法を用いて、上記組成物を投与する、請求項2に記載の方法。
- 上記隔年結実の抑制が、上記組成物が投与されていない果樹と比較して、着果数の多い年の翌春の100節当たりの花芽シュート数を増加させることを含む、請求項2に記載の方法。
- 上記隔年結実の抑制が、上記組成物が投与されていない果樹と比較して、着果数の多い年の翌年の果実収量を増加することを含む、請求項2に記載の方法。
- 上記隔年結実の抑制が、上記組成物が投与されていない果樹と比較して、2年間の累計果実収量を増加させることを含む、請求項2に記載の方法。
- 多年生作物の隔年結実の抑制に効果的な組成物であって、
(i)アデノシンを含むヌクレオシドと、(ii)オーキシン輸送阻害物質とを含む、組成物。 - 上記ヌクレオシドが、9−ベータ−D−アデノシンを少なくとも95%含む、請求項15に記載の組成物。
- 上記組成物が、さらに界面活性剤を含む、請求項15に記載の組成物。
- 上記オーキシン輸送阻害物質が、2,3,5−トリヨード安息香酸と、DPX1840と、9−ヒドロキシフルオレン−9−カルボン酸と、ナプタラム(N−1−ナフチルフタラミン酸)と、これらの組み合わせとからなる一群から選択される植物成長調整剤である、請求項16に記載の組成物。
- 上記植物成長調整剤が、2,3,5−トリヨード安息香酸である、請求項18に記載の組成物。
- 上記オーキシン輸送阻害物質が、ナリンゲニンと、ケルセチンと、フォルモノネチンと、ゲニステインと、これらの組み合わせとからなる一群から選択されるフラボノイド又はイソフラボノイドである、請求項16に記載の組成物。
- 肥料を更に含んでいる請求項16に記載の組成物。
- 上記肥料が、窒素と、カリウムと、マグネシウムと、リンと、カルシウムと、硫黄と、鉄と、ホウ素と、塩素と、マンガンと、亜鉛と、銅と、モリブデンと、ニッケルと、セレンと、シリコンと、コバルトと、これらの組み合わせとからなる一群から選択される、請求項21に記載の組成物。
- 上記肥料が低ビウレット尿素である、請求項21に記載の組成物。
- 上記肥料が八ホウ酸二ナトリウム四水和物である、請求項21に記載の組成物。
- 多年生作物の隔年結実の抑制に効果的な組成物であって、
(i)アデノシンを含むヌクレオシドと、(ii)植物成長調整剤とを含む、組成物。 - 上記ヌクレオシドが、9−ベータ−D−アデノシンを少なくとも95%含む、請求項25に記載の組成物。
- 上記組成物が、さらに界面活性剤を含む、請求項25に記載の組成物。
- 上記植物成長調整剤が、6−ベンジルアミノプリンと、ゼアチンと、ゼアチンリボシドと、キネチンと、イソペンテニルアデニンと、イソペンテニルアデノシンと、1−(2−クロロ−4−ピリジニル)−3−フェニル尿素と、ジベレリン酸と、6−ベンジルアデニンと、6−ベンジルアデノシンとからなる一群から選択される成長促進剤である、請求項26に記載の組成物。
- 上記植物成長調整剤が、フルリドンと、アバミンと、1−ブタノールとからなる一群から選択されるアブシジン酸の生合成または機能を阻害する阻害物質である、請求項26に記載の組成物。
- 窒素と、カリウムと、マグネシウムと、リンと、カルシウムと、硫黄と、鉄と、ホウ素と、塩素と、マンガンと、亜鉛と、銅と、モリブデンと、ニッケルと、セレンと、シリコンと、コバルトと、これらの組み合わせとからなる一群から選択される肥料を更に含む、請求項26に記載の組成物。
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