(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるスイッチング素子の駆動回路を車載主機として回転機を備える車両の電力変換装置に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかるシステムの全体構成を示す。
モータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に機械的に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータIV及び昇圧コンバータCVを介して高電圧バッテリ12に接続されている。ここで、昇圧コンバータCVは、コンデンサCと、コンデンサCに並列接続された駆動対象スイッチング素子としての一対のスイッチング素子Scp,Scnと、一対のスイッチング素子Scp,Scnの接続点と高電圧バッテリ12の正極とを接続するリアクトルLとを備えている。詳しくは、昇圧コンバータCVは、スイッチング素子Scp,Scnのオンオフによって、高電圧バッテリ12の電圧(例えば「288V」)を所定の電圧(例えば「666V」)を上限として昇圧する機能を有する。
一方、インバータIVは、駆動対象スイッチング素子としてのスイッチング素子Sup,Sunの直列接続体、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体、及びスイッチング素子Swp,Swnの直列接続体を備えている。これら各直列接続体の接続点は、モータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。
なお、本実施形態では、スイッチング素子S*#(*=c,u,v,w;#=p,n)として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。また、これらスイッチング素子S*#にはそれぞれ、フリーホイールダイオードD*#が逆並列に接続されている。
制御装置14は、低電圧バッテリ16を電源としてかつ、モータジェネレータ10の制御量(例えばトルク)を所望に制御すべく、インバータIVや昇圧コンバータCVを操作する。詳しくは、制御装置14は、インターフェース18及びドライブユニットDUを介してスイッチング素子S*#を操作すべく、操作信号g*#を出力する。なお、インターフェース18は、高電圧バッテリ12を備える高電圧システムと低電圧バッテリ16を備える低電圧システムとの間を絶縁しつつ、これらの間の信号の授受を行うための機器である。本実施形態では、インターフェース18として、フォトカプラが用いられている。
ちなみに、高電位側のスイッチング素子S*pに対する操作信号g*pと、対応する低電位側のスイッチング素子S*nに対する操作信号g*nとは、互いに相補的な信号となっている。換言すれば、高電位側のスイッチング素子S*pと、対応する低電位側のスイッチング素子S*nとは、交互にオン状態とされる。
次に、図2を用いて、上記ドライブユニットDUの構成を示す。
図示されるように、ドライブユニットDUは、1チップ化された半導体集積回路であるドライブIC20と、スイッチング素子S*#の開閉制御端子(ゲート)に電圧を印加するための定電圧電源22とを備えている。
定電圧電源22は、PチャネルMOSFET(第1の充電用スイッチング素子24a)を介して、ドライブIC20の端子T1に接続されている。端子T1は、第1の充電用抵抗体26aを介してスイッチング素子S*#のゲートに接続されている。また、定電圧電源22は、PチャネルMOSFET(第2の充電用スイッチング素子24b)を介して、端子T2に接続され、端子T2は、第2の充電用抵抗体26bを介してスイッチング素子S*#のゲートに接続されている。
スイッチング素子S*#のゲートは、第1の放電用抵抗体28aを介してドライブIC20の端子T3に接続されており、端子T3は、NチャネルMOSFET(第1の放電用スイッチング素子30a)を介して端子T4に接続されている。また、スイッチング素子S*#のゲートは、第2の放電用抵抗体28bを介して端子T5に接続されており、端子T5は、NチャネルMOSFET(第2の放電用スイッチング素子30b)を介して端子T4に接続されている。そして、端子T4は、スイッチング素子S*#の出力端子(エミッタ)に接続されている。
ちなみに、第1の充電用抵抗体26a及び第2の充電用抵抗体26bの抵抗値は、互いに同一であってもよいし、相違していてもよい。また、第1の放電用抵抗体28a及び第2の放電用抵抗体28bの抵抗値も、互いに同一であってもよいし、相違していてもよい。
上記スイッチング素子S*#は、その入力端子(コレクタ)及びエミッタ間を流れる電流(コレクタ電流)と相関を有する微少電流を出力するセンス端子Stを備えている。センス端子Stは、抵抗体(センス抵抗32)を介してスイッチング素子S*#のエミッタに接続されている。これにより、センス端子Stから出力される微少電流によってセンス抵抗32に電圧降下が生じるため、センス抵抗32のうちセンス端子St側の電位(以下、センス電圧Vse)を、コレクタ電流と相関を有する電気的な状態量とすることができる。ちなみに、本実施形態では、センス抵抗32の両端のうちセンス端子St側の電位がエミッタの電位よりも高い場合のセンス電圧Vseを正と定義する。また、エミッタの電位を「0」とする。
センス電圧Vseは、端子T6を介してドライブIC20内の駆動制御部34に入力される。また、センス電圧Vseは、端子T6を介して微分回路36に入力される。微分回路36は、センス電圧Vseの変化速度(電圧変化速度Sse)を駆動制御部34に対して出力する。
駆動制御部34は、端子T7を介して入力される操作信号g*#と、センス電圧Vseとに基づき、スイッチング素子S*#のゲートの充放電処理を行う。本実施形態では、ゲートの充放電処理として、ゲート電荷の充放電が開始されてから完了されるまでの期間の途中において、スイッチング素子S*#のゲートに接続される充放電経路の抵抗値を変更するアクティブゲートコントロールを行う。これは、スイッチング素子S*#の駆動状態が切り替えられる場合のサージ電圧やスイッチング損失の増大を抑制するための制御である。
詳しくは、ゲートの充電処理について説明すると、操作信号g*#がオン操作指令とされることで、第1の充電用スイッチング素子24a及び第2の充電用スイッチング素子24bのうちいずれかをオン状態とさせ、ゲート電荷(正の電荷)の充電速度を低速度とする。本実施形態では、第1の充電用スイッチング素子24aのみをオン状態とさせることで、充電速度を低速度とする。これにより、第1の充電用スイッチング素子24a及び第1の充電用抵抗体26aを介して定電圧電源22とスイッチング素子S*#のゲートとを接続する第1の充電経路Lcaによってゲートに電荷が充電される。その後、これらスイッチング素子24a,24bの双方をオン状態とさせ、ゲート電荷の充電速度を高速度に変更する。これにより、第2の充電用スイッチング素子24b及び第2の充電用抵抗体26bを介して定電圧電源22とゲートとを接続する第2の充電経路Lcbと、上記第1の充電経路Lcaとの双方によってゲートに電荷が充電される。なお、ゲートの充電処理が行われる期間において、第1,第2の放電用スイッチング素子30a,30bの双方はオフ状態とされる。また、上記第1の充電経路Lca及び第2の充電経路Lcbが、ゲートに接続された複数の充電経路(正の電荷の充電経路)に相当する。
一方、ゲートの放電処理について説明すると、操作信号g*#がオフ操作指令とされることで、第1の放電用スイッチング素子30a及び第2の放電用スイッチング素子30bの双方をオン状態とさせ、ゲート電荷の放電速度(負の電荷の充電速度)を高速度とする。これにより、第1の放電用抵抗体28a及び第1の放電用スイッチング素子30aを介してゲートとエミッタとを接続する第1の放電経路Lda(負の電荷の充電経路)と、第2の放電用抵抗体28b及び第2の放電用スイッチング素子30bを介してゲートとエミッタとを接続する第2の放電経路Ldbとの双方によってゲートから電荷を放電させる。その後、これらスイッチング素子30a,30bのうちいずれかをオフ状態とさせ、ゲート電荷の放電速度を低速度に変更する。本実施形態では、第2の放電用スイッチング素子30bのみをオフ状態に切り替えることで、放電速度を低速度とする。これにより、上記第1の放電経路Ldaによってゲートの電荷が放電される。なお、ゲートの放電処理が行われる期間において、第1,第2の充電用スイッチング素子24a,24bの双方はオフ状態とされる。また、上記第1の放電経路Lda及び第2の放電経路Ldbが、ゲートに接続された複数の放電経路(負の電荷の充電経路)に相当する。
ここで、本実施形態では、充放電速度の変更タイミングを、センス電圧Vseに基づき把握する。
まず、図3を用いて、充電速度の変更タイミングについて説明する。詳しくは、図3(a)は、操作信号g*#の推移を示し、図3(b)は、ゲート電圧Vgeの推移を示し、図3(c)は、コレクタ・エミッタ間電圧Vce及びコレクタ電流Iceの推移を示し、図4(d)は、センス電圧Vseの推移を示す。また、図3(e),図3(f)は、第1,第2の充電用スイッチング素子24a,24bの操作状態の推移を示し、図3(g)は、ゲート電荷の充電速度の推移を示す。
図示されるように、時刻t1においてゲート電荷の充電が開始された後、センス電圧Vseが第1の閾値電圧Vαを上から下に跨ぐタイミング(時刻t2)を充電速度の変更タイミングとして把握する。ここで、変更タイミングの把握にセンス電圧Vseを用いるのは、スイッチング素子がオフ状態からオン状態に切り替えられる場合におけるリカバリ電流に起因したサージ電圧を抑制しつつ、スイッチング損失を低減可能な充電速度の変更タイミングと、センス電圧Vseが第1の閾値電圧Vαを跨ぐタイミングとを関係付けることが可能であるためである。
なお、スイッチング素子S*#がオフ状態からオン状態に移行される期間内の時刻t2近傍において、センス電圧Vseが大きく上昇する現象(以下、持ち上がり現象)が生じる。持ち上がり現象が生じる理由を、上記リカバリ電流に起因するサージ電圧が生じる理由と併せて以下に説明する。
直列接続された一対の高電位側のスイッチング素子S*p及び低電位側のスイッチング素子S*nのうち一方がオン状態とされると、他方と逆並列に接続されたフリーホイールダイオードにリカバリ電流が流れる。このリカバリ電流に起因して、フリーホイールダイオード及びこれに並列接続されたスイッチング素子にサージ電圧が生じる。そして、このサージ電圧が、オン状態とされるスイッチング素子S*#のコレクタやエミッタとゲートとの間の寄生容量等を介してセンス電圧Vseに重畳する。このようにして、上記持ち上がり現象が生じると考えられる。
続いて、図4を用いて、放電速度の変更タイミングについて説明する。詳しくは、図4(a)〜図4(d)は、先の図3(a)〜図3(d)に対応しており、図4(e),図4(f)は、第1,第2の放電用スイッチング素子30a,30bの操作状態の推移を示し、図4(g)は、ゲート電荷の放電速度の推移を示す。
図示されるように、時刻t1においてゲート電荷の放電が開始された後、センス電圧Vseが第2の閾値電圧Vβを下から上に跨ぐタイミング(時刻t2)を放電速度の変更タイミングとして把握する。ここで、放電速度の変更タイミングの把握にセンス電圧Vseを用いるのは、スイッチング素子がオン状態からオフ状態に切り替えられる場合におけるサージ電圧を抑制しつつ、スイッチング損失を低減可能な放電速度の変更タイミングと、センス電圧Vseが第2の閾値電圧Vαを跨ぐタイミングとを関係付けることが可能であるためである。
なお、スイッチング素子S*#がオン状態からオフ状態に移行される期間内の時刻t2近傍においても、上記持ち上がり現象が生じる。この現象は、スイッチング素子S*#のコレクタやエミッタとゲートとの間の寄生容量等を介してセンス電圧Vseにサージ電圧が重畳するために生じると考えられる。
次に、駆動制御部34によって実行される本実施形態にかかるアクティブゲート異常判断処理について説明する。この処理は、オフ操作指令及びオン操作指令のうち一方から他方に切り替えられる場合において電圧変化速度Sseが切り替わらないと判断された場合、アクティブゲートコントロール機能に異常が生じている旨判断する処理である。
オフ操作指令及びオン操作指令のうち一方から他方に切り替えられると、スイッチング素子S*#の駆動状態を操作指令に応じた駆動状態とするための電荷の充放電が開始される。そして、その後、アクティブゲートコントロールによって充放電速度が変更される。充放電速度が変更されると、電圧変化速度Sseが切り替わる。ここで、例えば第2の放電用スイッチング素子30bにオープン異常が生じることによって放電速度が変更できなくなると、電圧変化速度Sseが切り替わらないこととなる。この点に鑑み、電圧変化速度Sseを用いた上記異常判断処理を行う。
図5は、本実施形態にかかる異常判断処理の手順を示す図である。なお、本実施形態にかかる駆動制御部34は、ハードウェア処理手段であるため、図5に示す処理は、実際にはロジック回路によって実行される。
この一連の処理では、まずステップS10において、操作信号g*#がオフ操作指令であるか否かを判断する。
ステップS10において肯定判断された場合には、ステップS12に進み、オフ操作指令がなされる期間において電圧変化速度Sseが切り替わるか否かを判断する。詳しくは、まず、端子T6を介して検出されるセンス電圧Vseに基づき、センス電圧Vseが第2の閾値電圧Vβを下から上に跨ぐタイミング(先の図4の時刻t2)前後のタイミングを把握する。より具体的には、第2の閾値電圧Vβよりも所定電圧(>0)低い電圧をセンス電圧Vseが下から上に跨ぐタイミングと、第2の閾値電圧Vβよりも上記所定電圧高い電圧をセンス電圧Vseが下から上に跨ぐタイミングとを把握する。そして、これらタイミングのそれぞれにおいて微分回路36から出力される電圧変化速度Sseを取得し、取得されたこれら電圧変化速度Sse同士の差の絶対値が所定値(>0)を上回ると判断された場合、電圧変化速度Sseが切り替わったと判断する。こうした処理は、第2の放電用スイッチング素子30bにオープン異常もしくはショート異常、第2の放電用抵抗体28b、第1の放電経路Ldaもしくは第2の放電経路Ldbにオープン異常、又はセンス抵抗32にショート異常が生じているか否かを判断するための処理である。
つまり、アクティブゲートコントロールによって放電速度が高速度から低速度に変更されると、電圧変化速度Sseとしての電圧上昇速度が低くなる。すなわち、電圧上昇速度が2段階に切り替わる。ここで、第2の放電用抵抗体28b又は第2の放電用スイッチング素子30bにオープン異常が生じると、放電速度を低速度にしか設定できない。また、第2の放電用スイッチング素子30bにショート異常が生じると、放電速度を高速度にしか設定できない。こうした異常が生じると、センス電圧Vseが第2の閾値電圧Vβを跨ぐ場合であっても、放電速度を切り替えることができず、電圧上昇速度が2段階に切り替わらない。
一方、第1の放電経路Lda又は第2の放電経路Ldbにオープン異常が生じると、放電速度を低速度にしか設定できなかったり、ゲートから電荷を放電させることができなかったりすることで、電圧上昇速度が2段階に切り替わらない。
他方、センス抵抗32にショート異常が生じると、ゲート電荷の放電が開始されたにもかかわらず、センス電圧Vseが変化せずに「0」に維持される。このため、センス電圧Vseが第2の閾値電圧Vβを跨がず、放電速度が高速度に維持され、電圧上昇速度が2段階に切り替わらない。
なお、本実施形態において、第1,第2の放電用スイッチング素子30a,30b及び第1,第2の充電用スイッチング素子24a,24bのオープン異常及びショート異常には、これらスイッチング素子自体に生じる異常に加えて、これらスイッチング素子の開閉制御端子(ゲート)と駆動制御部34とを接続する配線の断線等によりこれらスイッチング素子をオンオフ操作できなくなる異常も含まれる。
ステップS12において肯定判断された場合には、ステップS14に進み、第2の放電用スイッチング素子30bにオープン異常もしくはショート異常、第2の放電用抵抗体28b、第1の放電経路Ldaもしくは第2の放電経路Ldbにオープン異常、又はセンス抵抗32にショート異常が生じている旨判断する。そして、端子T8及びインターフェース18を介して制御装置14へとフェール信号FLを出力するフェール処理を行う。なお、フェール信号FLが制御装置14に入力されると、制御装置14によって、例えば、その旨をユーザに報知する処理が行われたり、インバータIVや昇圧コンバータCVが備えるスイッチング素子S*#を強制的にオフ状態とさせるシャットダウン処理が行われたりする。
一方、上記ステップS10において否定判断された場合には、ステップS16に進み、オン操作指令がなされる期間において電圧変化速度Sseが切り替わるか否かを判断する。詳しくは、まず、端子T6を介して検出されるセンス電圧Vseに基づき、センス電圧Vseが第1の閾値電圧Vαを上から下に跨ぐタイミング(先の図3の時刻t2)前後のタイミングを把握する。より具体的には、第1の閾値電圧Vαよりも上記所定電圧高い電圧をセンス電圧Vseが上から下に跨ぐタイミングと、第1の閾値電圧Vαよりも上記所定電圧低い電圧をセンス電圧Vseが上から下に跨ぐタイミングとを把握する。そして、これらタイミングのそれぞれにおいて微分回路36から出力される電圧変化速度Sseを取得し、取得されたこれら電圧変化速度Sse同士の差の絶対値が上記所定値を上回ると判断された場合、電圧変化速度Sseが切り替わったと判断する。こうした処理は、第2の充電用スイッチング素子24bにオープン異常もしくはショート異常、第2の充電用抵抗体26b、第1の充電経路Lcaもしくは第2の充電経路Lcbにオープン異常、又はセンス抵抗32にショート異常が生じているか否かを判断するための処理である。
つまり、アクティブゲートコントロールによって充電速度が低速度から高速度に変更されると、電圧変化速度Sseとしての電圧下降速度が高くなる。すなわち、電圧下降速度が2段階に切り替わる。ここで、第2の充電用抵抗体26b又は第2の充電用スイッチング素子24bにオープン異常が生じると、充電速度を低速度にしか設定できない。また、第2の充電用スイッチング素子24bにショート異常が生じると、充電速度を高速度にしか設定できない。こうした異常が生じると、センス電圧Vseが第1の閾値電圧Vαを跨ぐ場合であっても、電圧下降速度が2段階に切り替わらない。
一方、第1の充電経路Lca又は第2の充電経路Lcbにオープン異常が生じると、充電速度を低速度にしか設定できなかったり、ゲートに電荷を充電することができなかったりすることで、電圧下降速度が2段階に切り替わらない。
他方、センス抵抗32にショート異常が生じると、ゲート電荷の充電が開始されたにもかかわらず、センス電圧Vseが変化せずに「0」に維持される。このため、センス電圧Vseが第1の閾値電圧Vαを跨がず、充電速度が低速度に維持され、電圧下降速度が2段階に切り替わらない。
ステップS16において肯定判断された場合には、ステップS18に進み、第2の充電用スイッチング素子24bにオープン異常もしくはショート異常、第2の充電用抵抗体26b、第1の充電経路Lcaもしくは第2の充電経路Lcbにオープン異常、又はセンス抵抗32にショート異常が生じている旨判断してかつ、上記フェール処理を行う。
なお、上記ステップS12、S16において否定判断された場合や、ステップS14,S18の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
図6に、上記異常判断処理の一例を示す。詳しくは、図6は、第2の放電用スイッチング素子30bにショート異常が生じる状況下、オフ操作指令がなされる期間において実行される異常判断処理の一例である。なお、図6(a)〜図6(d)は、先の図4(a)〜図4(d)に対応しており、図6(e)は、電圧変化速度Sseの推移を示す。
図示される例では、時刻t1において操作信号g*#がオン操作指令からオフ操作指令に切り替えられる。
第2の放電用スイッチング素子30bにショート異常が生じる場合、時刻t3においてセンス電圧Vseが第2の閾値電圧Vβを下から上に跨ぐと判断されるものの、放電速度を高速度から低速度に変更することができない。このため、図6(e)に実線にて示すように電圧変化速度Sseが切り替わらず、第2の放電用スイッチング素子30bにショート異常等が生じている旨判断されることとなる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)オフ操作指令がなされる期間において電圧変化速度Sseが切り替わらないと判断された場合、第2の放電用スイッチング素子30bにオープン異常もしくはショート異常、第2の放電用抵抗体28b、第1の放電経路Ldaもしくは第2の放電経路Ldbにオープン異常、又はセンス抵抗32にショート異常が生じている旨判断した。一方、オン操作指令がなされる期間において電圧変化速度Sseが切り替わらないと判断された場合、第2の充電用スイッチング素子24bにオープン異常もしくはショート異常、第2の充電用抵抗体26b、第1の充電経路Lcaもしくは第2の充電経路Lcbにオープン異常、又はセンス抵抗32にショート異常が生じている旨判断した。これにより、アクティブゲートコントロール機能に異常が生じたことを適切に検出することができる。
(2)異常判断処理によって異常が生じている旨判断された場合、制御装置14に対してフェール信号FLを出力するフェール処理を行った。これにより、例えば、報知処理によってユーザにリンプホームを促したり、シャットダウン処理によってインバータIV等の機器の信頼性が低下した状態で上記機器の使用が継続される事態を回避したりすることができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、アクティブゲート異常判断処理として、センス電圧Vse及びエミッタ・コレクタ間電圧Vceに基づき、センス抵抗32にショート異常が生じているか否かを判断する処理を行う。
図7に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図7において、先の図2の部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を付している。
図示されるように、スイッチング素子S*#のコレクタは、ドライブIC20の端子T9を介して駆動制御部34に接続されている。駆動制御部34は、端子T9の電圧に基づき、スイッチング素子S*#のエミッタ・コレクタ間電圧Vceを検出する。
次に、本実施形態にかかるアクティブゲート異常判断処理について説明する。
オフ操作指令及びオン操作指令のうちいずれか一方から他方に切り替えられた場合、エミッタ・コレクタ間電圧Vceが変化する(先の図3(c),図4(c)参照)。この電圧が変化する状況は、コレクタ電流の流通態様が変化する状況であることから、センス電圧Vseも変化することとなる(先の図3(d),図4(d)参照)。ここで、センス抵抗32にショート異常が生じると、エミッタ・コレクタ間電圧Vceが変化してもセンス電圧Vseが「0」に維持される。この点に鑑み、センス電圧Vse及びエミッタ・コレクタ間電圧Vceを用いた異常判断処理を行う。
図8に、駆動制御部34によって実行される上記異常判断処理の手順を示す。なお、図8に示す処理は、実際にはロジック回路によって実行される。
この一連の処理では、まずステップS20において、操作信号g*#がオン操作指令からオフ操作指令に切り替えられたか否か、又は操作信号g*#がオフ操作指令からオン操作指令に切り替えられたか否かを判断する。
ステップS20において肯定判断された場合には、ステップS22に進み、操作指令の切り替えに伴いエミッタ・コレクタ間電圧Vceが変化を開始するか否かを判断する。ここで、エミッタ・コレクタ間電圧Vceが変化を開始するとは、例えば、充電処理が行われる場合、先の図3(c)に示したようにエミッタ・コレクタ間電圧Vceが低下を開始することを指し、放電処理が行われる場合、先の図4(c)に示したようにエミッタ・コレクタ間電圧Vceが上昇を開始することを指す。
ステップS22において肯定判断された場合には、ステップS24に進み、エミッタ・コレクタ間電圧Vceが変化する状況下においてセンス電圧Vseが「0」であるか否かを判断する。この処理は、センス抵抗32にショート異常が生じているか否かを判断するための処理である。
ステップS24において肯定判断された場合には、ステップS26に進み、センス抵抗32にショート異常が生じている旨判断してかつ、上記フェール処理を行う。
なお、上記ステップS20〜S24において否定判断された場合や、ステップS26の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
このように、本実施形態では、センス電圧Vse及びエミッタ・コレクタ間電圧Vceに基づく異常判断処理を行った。これにより、センス抵抗32のショート異常を適切に検出することができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、アクティブゲート異常判断処理として、センス抵抗32にショート異常又はオープン異常が生じているか否かを判断する処理を行う。
図9に、駆動制御部34によって実行される上記異常判断処理の手順を示す。なお、図9に示す処理は、実際にはロジック回路によって実行される。
この一連の処理では、まずステップS30において、操作信号g*#がオン操作指令からオフ操作指令に切り替えられたか否かを判断する。
ステップS30において肯定判断された場合には、ステップS32に進み、センス電圧Vseが「0」以外の値であるか否かを判断する。この処理は、センス抵抗32にオープン異常が生じているか否かを判断するための処理である。つまり、スイッチング素子S*#がオフ状態とされる場合、コレクタ電流が流れない。このため、センス抵抗32にオープン異常が生じていなければ、センス電圧Vseは「0」とされる。これに対し、センス抵抗32にオープン異常が生じると、センス端子Stの出力電位がコレクタ電流に応じて定まらないこと等に起因して、センス電圧Vseが「0」以外の値を取り得る。
なお、上記オープン異常の有無を判断するために用いるセンス電圧Vseを、図10に示すように、オフ操作指令がなされる期間(時刻t1〜t3)であってかつ、オフ操作指令に切り替えられてから規定時間TA経過したタイミング(時刻t2)以降のタイミングで取得することが望ましい。なお、図10(a)及び図10(b)は、先の図4(a)及び図4(d)に対応している。上述したタイミングでセンス電圧Vseを取得するのは、センス抵抗32のオープン異常の有無の誤判断を回避するためである。つまり、操作信号g*#がオフ操作指令に切り替えられた直後においては、上記持ち上がり現象が生じる。ここで、オフ操作指令に切り替えられた直後のセンス電圧Vseを用いて異常判断処理を行うと、センス抵抗32にオープン異常が生じていないにもかかわらず、この異常が生じている旨誤判断されるおそれがある。このため、上記規定時間TA経過したタイミング以降のタイミングで取得されたセンス電圧Vseを用いることで、上記誤判断を回避する。
図9の説明に戻り、ステップS32において肯定判断された場合には、ステップS34に進み、センス抵抗32にオープン異常が生じている旨判断してかつ、上記フェール処理を行う。
一方、上記ステップS30において否定判断された場合には、ステップS36に進み、操作信号g*#がオフ操作指令からオン操作指令に切り替えられたか否かを判断する。
ステップS36において肯定判断された場合には、ステップS38に進み、センス電圧Vseが「0」であるか否かを判断する。この処理は、センス抵抗32にショート異常が生じているか否かを判断する処理である。つまり、スイッチング素子S*#がオン状態とされた場合、コレクタ電流が流れる。このため、センス抵抗32にショート異常が生じていなければ、センス電圧Vseが「0」以外の値となる。これに対し、センス抵抗32にショート異常が生じると、センス電圧Vseが「0」とされる。
ステップS38において肯定判断された場合には、ステップS40に進み、センス抵抗32にショート異常が生じている旨判断してかつ、上記フェール処理を行う。
なお、上記ステップS32、S36、S38において否定判断された場合や、ステップS34,S40の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
このように、本実施形態では、上記異常判断処理を行うことで、センス抵抗32のショート異常又はオープン異常を適切に検出することができる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、アクティブゲート異常判断処理として、オフ操作指令及びオン操作指令のうち一方から他方に切り替えられた場合におけるセンス電圧Vseの最大値(以下、最大電圧Peak)に基づき、アクティブゲートコントロール機能の異常の有無を判断する処理を行う。
アクティブゲートコントロールによって充放電速度を変更することで、サージ電圧の低減効果が得られる。ここで、センス電圧Vseは、上述したようにサージ電圧の影響を受ける。このため、充放電速度が変更できなくなると、サージ電圧の低減効果が変化し、操作指令が切り替えられた場合における最大電圧Peakが変化する。この点に鑑み、最大電圧Peakを用いた異常判断処理を行う。
なお、本実施形態にかかるドライブユニットDUには、微分回路36が備えられていない。
図11は、駆動制御部34によって実行される異常判断処理の手順を示す図である。なお、図11に示す処理は、実際にはロジック回路によって実行される。
この一連の処理では、まずステップS50において、操作信号g*#がオフ操作指令であるか否かを判断する。
ステップS50において肯定判断された場合には、ステップS52に進み、最大電圧Peakからオフ時規定電圧Vdを減算した値が規定値ΔV(>0)以上であるか否かを判断する。この処理は、第1の放電用抵抗体28a、第2の放電用抵抗体28b又は第2の放電用スイッチング素子30bにショート異常が生じているか否かを判断するための処理である。
つまり、第1の放電用抵抗体28a又は第2の放電用抵抗体28bにショート異常が生じると、放電経路の抵抗値が低下することに起因してサージ電圧が増大する。また、第2の放電用スイッチング素子30bにショート異常が生じると、放電速度を低速度に変更できず、サージ電圧が増大することとなる。本ステップの処理は、この点を利用した処理である。
なお、オフ時規定電圧Vdは、オン操作指令からオフ操作指令に切り替えられた場合であってかつ、アクティブゲートコントロール機能(24a,24b,26a,26b,28a,28b,30a,30b,32,第1の充電経路Lca、第2の充電経路Lcb,第1の放電経路Lda,第2の放電経路Ldb)に異常が生じていない場合における最大電圧Peak近傍の値に設定される。
ステップS52において肯定判断された場合には、ステップS54に進み、第1の放電用抵抗体28a、第2の放電用抵抗体28b又は第2の放電用スイッチング素子30bにショート異常が生じている旨判断してかつ、上記フェール処理を行う。
一方、上記ステップS52において否定判断された場合には、ステップS56に進み、上記オフ時規定電圧Vdから最大電圧Peakを減算した値が上記規定値ΔV以上であるとの条件、及び直近にオン操作指令からオフ操作指令に切り替えられた直前のコレクタ電流Iceが規定電流Ith以上であるとの条件の論理積が真であるか否かを判断する。この処理は、第1の放電用抵抗体28a、第2の放電用抵抗体28b、第1の放電用スイッチング素子30a、第2の放電用スイッチング素子30b、第1の放電経路Lda又は第2の放電経路Ldbにオープン異常が生じているか否かを判断するための処理である。
つまり、第2の放電用抵抗体28b又は第2の放電用スイッチング素子30bにオープン異常が生じると、放電速度を高速度とできず、サージ電圧が低下することとなる。また、第1の放電用抵抗体28a又は第1の放電用スイッチング素子30aにオープン異常が生じると、放電速度が低速度に変更された場合に放電を行うことができず、スイッチング素子S*#をオフ状態とさせることができなくなる。この場合、オン操作指令からオフ操作指令に切り替えられたときに持ち上がり現象が生じず、上記オフ時規定電圧Vdに対して実際のセンス電圧Vseが過度に低い電圧となる。
一方、第1の放電経路Lda又は第2の放電経路Ldbにオープン異常が生じると、放電速度を高速度とできなかったり、放電速度が低速度に変更された場合に放電を行うことができなかったり、ゲートから電荷を放電させることができなかったりする。これに起因して、上記オフ時規定電圧Vdに対して実際のセンス電圧Vseが過度に低い電圧となる。本ステップの処理は、こうした点を利用した処理である。
なお、コレクタ電流Iceは、センス電圧Vseに基づき算出すればよい。また、本ステップにおいて、コレクタ電流Iceに関する条件は、アクティブゲートコントロール機能の異常の有無を誤判断することを回避するための条件である。つまり、コレクタ電流Iceが小さいと、スイッチング素子S*#がオン状態からオフ状態に切り替えられる場合におけるサージ電圧が低くなり、最大電圧Peakが低くなる。最大電圧Peakが低くなると、アクティブゲートコントロール機能に異常が生じていないにもかかわらず、本ステップにおいて肯定判断され、上記機能に異常が生じている旨誤判断されることとなる。
ステップS56において肯定判断された場合には、ステップS58に進み、第1の放電用抵抗体28a、第2の放電用抵抗体28b、第1の放電用スイッチング素子30a、第2の放電用スイッチング素子30b、第1の放電経路Lda又は第2の放電経路Ldbにオープン異常が生じている旨判断してかつ、上記フェール処理を行う。
上記ステップS50において否定判断された場合には、操作信号g*#がオン操作指令であると判断し、ステップS60に進む。ステップS60では、最大電圧Peakからオン時規定電圧Vcを減算した値が上記規定値ΔV以上であるか否かを判断する。この処理は、第2の充電用スイッチング素子24b又は第1の充電用抵抗体26aにショート異常が生じているか否かを判断するための処理である。
つまり、第2の充電用スイッチング素子24bにショート異常が生じると、充電速度を低速度に設定できない。このため、高電位側のスイッチング素子S*p及び低電位側のスイッチング素子S*nのうち充電対象となるスイッチング素子でないスイッチング素子側のフリーホイールダイオードにおいて、リカバリ電流に起因するサージ電圧が増大する。そしてこれにより、充電対象となるスイッチング素子に対応する最大電圧Peakが増大する。また、第1の充電用抵抗体26aにショート異常が生じると、充電経路の抵抗値が低下することに起因してサージ電圧が増大する。サージ電圧が増大する場合における最大電圧Peakは、正常時の最大電圧Peakよりも高くなる。本ステップの処理は、この点を利用した処理である。
なお、オン時規定電圧Vcは、オフ操作指令からオン操作指令に切り替えられた場合であってかつ、アクティブゲートコントロール機能に異常が生じていない場合における最大電圧Peak近傍の値に設定される。
ステップS60において肯定判断された場合には、ステップS62に進み、第2の充電用スイッチング素子24b又は第1の充電用抵抗体26aにショート異常が生じている旨判断してかつ、上記フェール処理を行う。
一方、上記ステップS60において否定判断された場合には、ステップS64に進み、上記オン時規定電圧Vcから最大電圧Peakを減算した値が規定値ΔV以上であるとの条件、及び直近にオン操作指令からオフ操作指令に切り替えられた直前のコレクタ電流Iceが規定電流Ith以上であるとの条件の論理積が真であるか否かを判断する。この処理は、第1の充電用スイッチング素子24a、第1の充電用抵抗体26a又は第1の充電経路Lcaにオープン異常が生じているか否かを判断するための処理である。つまり、第1の充電用スイッチング素子24a、第1の充電用抵抗体26a又は第1の充電経路Lcaにオープン異常が生じると、ゲート電荷の充電を行うことができず、リカバリ電流に起因するサージ電圧が生じない。サージ電圧が生じないと、最大電圧Peakが低下する。本ステップの処理は、この点を利用した処理である。
なお、上記コレクタ電流Iceに関する条件は、上記ステップS56で説明したコレクタ電流Iceに関する条件と同様の趣旨で設けられる条件である。つまり、スイッチング素子S*#が前回オン状態とされていた場合のコレクタ電流Iceが小さいと、スイッチング素子S*#が今回オン状態とされたときのコレクタ電流Iceも小さくなる蓋然性が高い。今回オン状態とされる場合のコレクタ電流Iceが小さくなる状況は、スイッチング素子S*#がオフ状態からオン状態に切り替えられる場合におけるサージ電圧が低くなる状況であると考えられる。こうした状況においては、最大電圧Peakが低くなり、アクティブゲートコントロール機能の異常の有無を誤判断するおそれがある。
ステップS64において肯定判断された場合には、ステップS66に進み、第1の充電用スイッチング素子24a、第1の充電用抵抗体26a又は第1の充電経路Lcaにオープン異常が生じている旨判断する。
なお、上記ステップS56、S64において否定判断された場合や、ステップS54、S58、S62、S66の処理が完了した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
図12に、オン操作指令からオフ操作指令に切り替えられた場合における上記異常判断処理の一例を示す。詳しくは、図12(a)及び図12(b)は、先の図4(a)及び図4(d)に対応している。
まず、第1の放電用抵抗体28aにショート異常が生じた場合を例に説明する。
図中実線にて示すように、操作信号g*#がオン操作指令からオフ操作指令に切り替えられた後、アクティブゲートコントロールによって放電速度を低速度に変更することができないことから、サージ電圧が増大する。これにより、最大電圧Peakからオフ時規定電圧Vdを減算した値が規定値ΔV以上になると判断され、第1の放電用抵抗体28aにショート異常等が生じている旨判断される。
続いて、第2の放電用抵抗体28bにオープン異常が生じた場合を例に説明する。
図中二点鎖線にて示すように、オフ操作指令に切り替えられた後、放電速度が低速度に固定されて放電処理が行われることから、サージ電圧が低下する。このため、オフ時規定電圧Vdから最大電圧Peakを減算した値が規定値ΔV以上になると判断され、第2の放電用抵抗体28bにオープン異常等が生じている旨判断される。
このように、本実施形態では、上記態様の異常判断処理を行うことで、アクティブゲートコントロール機能についての異常判断対象を拡大することができる。
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、アクティブゲート異常判断処理として、オフ操作指令がなされる期間においてセンス抵抗32に電源を接続した場合のセンス電圧Vseが0であると判断されたとき、センス抵抗32にショート異常が生じている旨判断する処理を行う。
図13に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図13において、先の図2の部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を付している。
図示されるように、ドライブIC20には、定電圧電源40が備えられている。定電圧電源40の出力電位Vtmは、スイッチング素子S*#のエミッタ電位Veよりも高い電位に設定されている。
定電圧電源40は、スイッチ42を介して端子T6に接続されている。スイッチ42は、駆動制御部34によってオンオフ操作される。
次に、駆動制御部34によって実行される本実施形態にかかるアクティブゲート異常判断処理について説明する。
図14は、上記異常判断処理の一例を示す図である。詳しくは、図14(a)及び図14(c)は、先の図4(a)及び図4(d)に対応しており、図14(b)は、スイッチ42の操作状態の推移を示す。なお、図14(c)では、上記持ち上がり現象の図示を省略している。また、この処理は、実際にはロジック回路によって実行される。
図示される例では、時刻t1においてオフ操作指令に切り替えられた後、時刻t2においてスイッチ42をオン状態とさせる。
ここで、センス抵抗32にショート異常が生じていない場合、定電圧電源40からセンス抵抗32に流れる電流によってセンス抵抗32に電圧降下が生じることから、センス電圧Vseが「0」以外の値になると判断される。
これに対し、センス抵抗32にショート異常が生じる場合には、センス抵抗32に電圧降下が生じないことから、センス電圧Vseが「0」であると判断され、センス抵抗32にショート異常が生じている旨判断される。
このように、本実施形態では、上記態様の異常判断処理を行うことで、センス抵抗32のショート異常を適切に検出することができる。
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、アクティブゲートコントロールを行うための回路構成を変更する。
図15に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図15において、先の図2の部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を付している。
図示されるように、定電圧電源22は、PチャネルMOSFET(第3の充電用スイッチング素子44)を介してドライブIC20の端子T10に接続されている。端子T10は、充電用抵抗体46a,46bの直列接続体を介してスイッチング素子S*#のゲートに接続されている。そして、充電用抵抗体46a,46bの直列接続体の接続点は、ドライブIC20の端子T11及びPチャネルMOSFET(充電側短絡素子48)を介して端子T10に接続されている。
スイッチング素子S*#のゲートは、放電用抵抗体50a,50bの直列接続体、ドライブIC20の端子T12及びNチャネルMOSFET(第3の放電用スイッチング素子52)を介して端子T4に接続されている。そして、放電用抵抗体50a,50bの直列接続体の接続点は、ドライブIC20の端子T13及びNチャネルMOSFET(放電側短絡素子54)を介して端子T12に接続されている。
次に、本実施形態にかかるゲート電荷の充放電処理について説明する。
まず、ゲートの充電処理について説明すると、操作信号g*#がオン操作指令とされることで、第3の充電用スイッチング素子44をオン状態とさせてかつ、充電側短絡素子48をオフ状態とさせ、ゲート電荷の充電速度を低速度とする。これにより、第3の充電用スイッチング素子44及び充電用抵抗体46a,46bの直列接続体を介して定電圧電源22とスイッチング素子S*#のゲートとを接続する第3の充電経路Lccによってゲートに電荷が充電される。その後、充電側短絡素子48をオン状態に切り替え、ゲート電荷の充電速度を高速度に変更する。これにより、第3の充電用スイッチング素子44、充電側短絡素子48及び充電用抵抗体46bを介して定電圧電源22とゲートとを接続する第4の充電経路Lcdによってゲートに電荷が充電される。なお、ゲートの充電処理が行われる期間において、第3の放電用スイッチング素子52はオフ状態とされる。また、上記第3の充電経路Lcc及び第4の充電経路Lcdが、ゲートに接続された複数の充電経路(正の電荷の充電経路)に相当する。
一方、ゲートの放電処理について説明すると、操作信号g*#がオフ操作指令とされることで、第3の放電用スイッチング素子52及び放電側短絡素子54の双方をオン状態とさせ、ゲート電荷の放電速度を高速度とする。これにより、放電用抵抗体50a、放電側短絡素子54及び第3の放電用スイッチング素子52を介してゲートとエミッタとを接続する第3の放電経路Ldcによってゲートから電荷を放電させる。その後、放電側短絡素子54をオフ状態に切り替え、ゲート電荷の放電速度を低速度に変更する。これにより、放電用抵抗体50a,50bの直列接続体及び第3の放電用スイッチング素子52を介してゲートとエミッタとを接続する第4の放電経路Lddによってゲートの電荷が放電される。なお、ゲートの放電処理が行われる期間において、第3の充電用スイッチング素子44はオフ状態とされる。また、上記第3の放電経路Ldc及び第4の放電経路Lddが、ゲートに接続された複数の放電経路(負の電荷の充電経路)に相当する。
続いて、本実施形態にかかるアクティブゲート異常判断処理について説明する。本実施形態にかかる上記異常判断処理は、先の図5に示した処理に準じた処理によって行うことができる。
詳しくは、図5のステップS12において肯定判断された場合、第3の放電経路Ldc、放電用抵抗体50aもしくは放電側短絡素子54にオープン異常、又は放電側短絡素子54もしくは放電用抵抗体50bにショート異常が生じている旨判断すればよい。
一方、ステップS16において肯定判断された場合、第3の充電経路Lcc、充電用抵抗体46a,46bもしくは充電側短絡素子48にオープン異常、又は充電用抵抗体46aもしくは充電側短絡素子48にショート異常が生じている旨判断すればよい。
このように、本実施形態では、先の図15に示した回路構成を採用する場合であっても、アクティブゲート機能の異常を適切に検出することができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・ゲート電荷の放電速度の変更手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、第1の放電用抵抗体28aの抵抗値を第2の放電用抵抗体28bの抵抗値よりも低く設定し、第1の放電用スイッチング素子30aのみをオン状態とさせることで放電速度を高速度に設定し、第2の放電用スイッチング素子30bのみをオン状態とさせることで放電速度を低速度に設定してもよい。
また、ゲート電荷の充電速度の変更手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、第1の充電用抵抗体26aの抵抗値を第2の充電用抵抗体26bの抵抗値よりも高く設定し、第1の充電用スイッチング素子24aのみをオン状態とさせることで充電速度を低速度に設定し、第2の充電用スイッチング素子24bのみをオン状態とさせることで充電速度を高速度に設定してもよい。
なお、充放電速度の変更手法を上記とする場合、上記第1の実施形態の図5に示す異常判断処理において、オフ操作指令がなされる期間に電圧変化速度Sseが切り替わらないと判断された場合、第1の放電用スイッチング素子30a、第1の放電用抵抗体28a、第1の放電経路Ldaもしくは第2の放電経路Ldbにオープン異常、又はセンス抵抗32にショート異常が生じている旨判断すればよい。一方、オン操作指令がなされる期間に電圧変化速度Sseが切り替わらないと判断された場合、第1の充電用スイッチング素子24a、第1の充電用抵抗体26a、第1の充電経路Lcaもしくは第2の充電経路Lcbにオープン異常、又はセンス抵抗32にショート異常が生じている旨判断すればよい。
また、上記第4の実施形態の図11に示す異常判断処理において、ステップS52で肯定判断された場合、第1の放電用抵抗体28a又は第2の放電用スイッチング素子30bにショート異常が生じている旨判断すればよい。ちなみに、ステップS56,S56,S60,S64で肯定判断された場合の処理は、ステップS58,S62,S66の処理と同じである。
・エミッタ・コレクタ間電圧Vceが操作指令の切り替えに応じて変化するにもかかわらずセンス電圧Vseが変化しないことに基づき、センス抵抗32にショート異常が生じている旨判断する手法としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、先の図8のステップS24において、センス電圧Vseの変化速度が「0」であると判断された場合、センス抵抗32にショート異常が生じている旨判断する手法を採用してもよい。
・上記各実施形態では、センス端子Stがセンス抵抗32を介してスイッチング素子S*#のエミッタに接続される回路構成を採用したがこれに限らない。例えば、エミッタに代えて、エミッタと同じ電位を有する部材(例えば電源)に接続してもよい。この場合、この電源の出力電位は、実際のエミッタの電位に応じて可変設定されることとなる。
・上記第5の実施形態では、定電圧電源40の出力電位を、スイッチング素子S*#のエミッタ電位Veよりも高く設定したがこれに限らず、低く設定してもよい。この場合であっても、センス抵抗32にショート異常が生じると、エミッタからセンス抵抗32を介して定電圧電源40へと電流が流れず、センス抵抗32において電圧降下が生じない。このため、センス電圧Vseが「0」であると判断された場合、センス抵抗32にショート異常が生じている旨判断できる。
・上記第4の実施形態の図11のステップS56,S64において、コレクタ電流Iceに関する条件を除去してもよい。
・上記第1,第2,第5,第6の実施形態において、上記第3の実施形態に示したセンス抵抗32にオープン異常が生じているか否かの判断手法を取り入れてもよい。また、上記第4の実施形態において、上記第2,第3,第5の実施形態に示したセンス抵抗32の異常判断手法を取り入れてもよい。
・上記第6の実施形態の図15に示した回路構成に対して、上記第4の実施形態で説明した異常判断手法を適用することができる。
詳しくは、先の図11のステップS52において肯定判断された場合、放電用抵抗体50a、放電用抵抗体50b又は放電側短絡素子54にショート異常が生じている旨判断すればよい。一方、ステップS56において肯定判断された場合、放電用抵抗体50a、放電用抵抗体50b、第3の放電用スイッチング素子52、放電側短絡素子54、第3の放電経路Ldc又は第4の放電経路Lddにオープン異常が生じている旨判断すればよい。
また、ステップS60において肯定判断された場合、充電用抵抗体46a、充電用抵抗体46b又は充電側短絡素子48にショート異常が生じている旨判断すればよい。一方、ステップS64において肯定判断された場合、第3の充電用スイッチング素子44、充電用抵抗体46a、充電用抵抗体46b又は第3の充電経路Lccにオープン異常が生じている旨判断すればよい。
・上記第1の実施形態では、ゲートに一対の充電経路Lca,Lcb及び一対の放電経路Lda,Ldbを接続した回路構成を採用したがこれに限らない。例えば、充電経路及び放電経路のうち少なくとも一方をゲートに3つ以上接続した回路構成を採用してもよい。詳しくは、充電処理について説明すると、例えば、これら充電経路のそれぞれに充電経路を開閉すべくオンオフ操作される開閉手段(例えばMOSFET)及び抵抗体を備えてかつ、これら抵抗体の抵抗値を互いに相違させる。そして、開閉手段のオンオフ操作によってこれら充電経路のうちいずれかを選択することで、充電速度を段階的に変更する。なお、放電速度の変更についても、上述した充電処理の構成と同様な構成によって実現することができる。
・ゲート電荷の充放電速度を変更するための回路構成としては、充放電経路の抵抗値を変更させる回路構成に限らない。放電処理について説明すると、例えば、エミッタ又はエミッタよりも低電位となる箇所と、ゲートとの接続を切り替え可能な開閉手段(例えばMOSFET)を備えた回路構成を採用してもよい。こうした構成において、放電速度を高速度としたい放電処理の初期に限って、ゲートとエミッタとを接続する代わりに、ゲートをエミッタよりも低電位となる箇所に接続すべく開閉手段を操作する。そしてその後、ゲートをエミッタに接続すべく開閉手段の操作状態を変更することによって放電速度を低速度に変更する。なお、上記回路構成において、エミッタとゲートとを接続する放電経路と、エミッタよりも低電位となる箇所とゲートとを接続する放電経路とが、複数の放電経路(負の電荷の充電経路)に相当する。
一方、充電処理について説明すると、例えば、定電圧電源22又は定電圧電源22の出力電位よりも高い出力電位を有する第2の定電圧電源と、ゲートとの接続を切り替え可能な開閉手段(例えばMOSFET)を備えた回路構成を採用してもよい。こうした構成において、充電速度を低速度としたい充電処理の初期に限って、定電圧電源22をゲートに接続すべく開閉手段を操作する。そしてその後、第2の定電圧電源をゲートに接続すべく開閉手段の操作状態を変更することによって充電速度を高速度に変更する。
・上記各実施形態では、充電処理及び放電処理の双方においてアクティブゲートコントロールを行う回路構成としたがこれに限らない。例えば、充電処理及び放電処理のうちいずれかにおいてアクティブゲートコントロールを行う回路構成を採用してもよい。
・駆動対象スイッチング素子としては、IGBTに限らず、例えばMOSFETであってもよい。
・本願発明の適用対象としては、車両に搭載される電力変換装置に限らない。また、本願発明の適用対象としては、コンバータやインバータ等の電力変換装置に限らない。