JP5807698B2 - 鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法 - Google Patents

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本発明は、冷間または温間で使用する鍛鋼ロールを製造するためのインゴットの鋳造方法に関し、特に、使用に伴ってロール表面を繰り返し切削しても、良好な表面性状を保つことが可能な鍛鋼ロールを製造するためのインゴットの鋳造方法に関する。
一般に、鍛鋼ロールは、直径が大きいため、造塊法によって大型のインゴット(鋳塊)を鋳造し、これを鍛造することにより製造される。大型インゴットには、鋳造時に中心から表面近傍にかけてゴースト偏析と呼ばれるマクロ偏析が生成しやすく、このゴースト偏析は、鍛造工程および熱処理工程を経た後においても、製造された鍛鋼ロールの内部に偏析として残存する。
図1は、一般的なマクロ偏析の発生状況を示す大型インゴットの縦断面図である。同図に示すように、一般的なマクロ偏析としてはV偏析とゴースト偏析がある。V偏析は、インゴットの中心部でV字状を呈し、上部の濃V偏析と下部の淡V偏析からなる。淡V偏析の下方には沈殿晶が存在する。ゴースト偏析は、CやP、またはMnやその他の合金成分が濃化した偏析であり、V偏析の外側からインゴットの半径の約1/2の位置までの領域に存在し、インゴットの上下方向に伸びた線状の偏析線の体をなす。
ゴースト偏析は、生成位置がV偏析よりもインゴット表面に近いため、インゴットの鋳造以降の鍛造や熱処理工程で、このゴースト偏析を起点に加工変形時の応力や熱処理‐冷却時の熱応力で割れが発生するという問題がある。
また、鍛鋼ロールを使用していくうちに、表面が摩耗したり損耗したりすると、平滑度を規定範囲内に復元するために、ロール表面を切削する手入れが行われる。ゴースト偏析線が鍛鋼ロールの表面近傍に残存していると、製造工程で割れ等の欠陥が発生しなくても、この切削手入れによってロールの表面に偏析線が露出することがある。偏析線が露出したロールを圧延等の加工に使用すると偏析線が被加工材に転写されるため、ロール自体が再使用に適さなくなる。
以上のことから、鍛造や熱処理工程で割れが発生せず、また、鍛鋼ロールの表面を繰り返し切削手入れしても偏析線が露出せず、長期間にわたって安定して利用できるものとするには、ゴースト偏析をインゴットの鋳造段階で完全に抑制するか、少なくともインゴットの表面から中心寄りにゴースト偏析を封じ込める必要がある。
ゴースト偏析の発生機構は以下の通り説明できる。
鋳造過程において、鋼中のCやP、Si等の軽元素は、凝固途上のデンドライト樹間でミクロ偏析する。ミクロ偏析した溶鋼は、これらの軽元素が濃化しているために、バルク(母材)溶湯よりも密度が低く、浮力により重力と反対方向の鉛直上向きの力を受ける。
ミクロ偏析溶鋼は、生成当初には樹枝状のデンドライト樹間で止まっているが、その後浮力によりわずかに浮上し、さらに上部に位置していた別のミクロ偏析溶鋼と合体し、マクロ的な偏析溶鋼の集合体に成長して体積を増す。ミクロ偏析溶鋼は、さらに浮上して合体が進行し、体積が増すことによって、大きな浮力が生じ、上部に存在するデンドライトの樹枝を横切り、また、樹枝を破壊しながら上昇し、別のミクロ偏析溶鋼をさらに集めることとなる。
この偏析溶鋼は、デンドライト樹間を上昇中に凝固の進展とともに凍結し、偏析線となってインゴットの内部に残り、これが、ゴースト偏析として現れる。
ゴースト偏析は、その発生機構上、溶鋼中の軽元素の含有率が多ければ多いほど発生しやすいのは言うまでもない。
また、凝固組織であるデンドライト組織が粗いと、ミクロ偏析溶鋼の体積が大きくなりやすく、ゴースト偏析が粗大化しやすい。これは、デンドライト組織が粗いと、デンドライト樹間に最初に発生するミクロ偏析溶鋼の体積も大きくなることと、ミクロ偏析溶鋼が浮力により上昇し始める際の抵抗が小さいことにより、溶鋼の上昇流が容易に生起するためである。
一般的に、ゴースト偏析は、デンドライト組織が粗いインゴット中心側の方が発生しやすい。しかし、インゴットが大型で、軽元素の含有率が高い場合には、インゴットの表面寄りにも発生しやすく、上述したように熱処理工程で割れが発生する等の問題が生じる。なお、インゴットの真中心では、鋳造時の凝固、収縮に起因するV偏析が発生しやすく、逆にゴースト偏析は発生しない。
以上の観点から、ゴースト偏析の発生は、デンドライト組織を微細化することによって抑制できると考えられる。デンドライト組織の微細化は、鋳造時の冷却速度を大きくすることによって実現することができるが、例えば、冷却速度の大きい小径のインゴットを製造しても、製品のロール径が制限されたり、インゴットの鍛造時の鍛錬比を充分に取れなかったりする問題がある。
また、凝固組織の微細化を図る場合、真空アーク再溶解凝固法(VAR)やエレクトロスラグ再溶解凝固法(ESR)が一般的に適用されているが、これらの方法は、一旦素材を鋳造して、そのインゴットを加工して新たに電極として再溶解する方法であり、従来の普通造塊法と比較して、工数が多く、また電力も余計に必要であるため、製造コストが大幅に増加する。
特許文献1には、インゴットの鋳造時に生じるデンドライト組織が、このインゴットを素材とした冷間圧延機のワークロール表面の肌荒れの原因であるため、ロール表面の肌荒れを改善する方法として、Pの含有率を0.025〜0.060重量%としてデンドライト組織を微細化する方法が記載されている。しかし、Pは一般的に不純物元素であり、鉄鋼材料の脆化の原因となるため、Pの含有率を高くすることは好ましくない。また、Pは上述したようにゴースト偏析の原因となる軽元素であり、Pの含有率を高くすることは、ゴースト偏析の発生を助長することにもなると考えられる。
特許文献2には、任意の鋳造方案に基づく鋳造プロセスシミュレーションで算出する濃度や温度から、偏析溶湯流れを考慮したフレックル欠陥(偏析)評価指標(Ra数(Rayleigh数;レイリー数))や、異結晶発生機構を考慮した異結晶欠陥評価指標を同時に評価し、鋳物方案の善し悪しを判定することを特徴とする鋳造プロセスシミュレータにおける判定方法が提案されている。同文献の段落[0057]の記載のように、同文献の図12の計算実施例からRa数が0.07以上の場所でフレックル欠陥の発生する可能性が高いこと等を示唆できるが、記載鋳物材料を変えた場合、欠陥評価基準値をあらためて設定する必要がある。なお、ゴースト偏析とフレッケル欠陥は、ともに同じ発生機構であるチャンネル型偏析の一種である。
特開昭61−9554号公報 特開2003−33864号公報
上述のように、鍛鋼ロールの素材となるインゴットのデンドライト組織の微細化には、ロール径の制限や、工数および電力の増加、軽元素含有率の増大による脆化や偏析の発生等の問題がある。本発明は、この問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、軽元素を含有する鍛鋼ロールの素材となるインゴットを普通造塊法で鋳造するに当たり、ゴースト偏析を完全に抑制するか、少なくとも従来のインゴットでゴースト偏析が現れる位置よりも中心寄りにゴースト偏析を封じ込めることが可能な、鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題について検討した結果、溶鋼にBiを添加して、Biを所定量含有するインゴットを普通造塊法で鋳造することにより、軽元素を含有する場合であってもゴースト偏析の発生を抑制するとともに、デンドライト組織を微細化させることができることを知見した。この検討内容については後述する。
本発明は、この知見に基づいて完成されたものであり、下記の鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法を要旨としている。すなわち、造塊法でインゴットを鋳造する際、下記(1A)式を、インゴットの表面からインゴットの中心付近まで満たすように、前記鋳造に用いる溶鋼に10質量ppm以上かつ100質量ppm以下のBiを添加することを特徴とする、鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法。
Ra/Ra<1 …(1A)
ここで、Ra/Ra0=(d/d03
d:Biを含有するインゴットのデンドライト一次アーム間隔(μm)、
0:Bi含有無しのインゴットのゴースト偏析発生臨界点におけるデンドライト一次アーム間隔(μm)、
Ra:Biを含有するインゴットのレイリー数(Rayleigh数)(−)、
Ra0:Bi含有無しのインゴットのゴースト偏析発生臨界点におけるレイリー数(Rayleigh数)(−)。
本発明において「造塊法」とは、鋳型に溶鋼を流し込み鋳塊を造る鋳造方法をいう。
以下の説明では、鋼の成分組成について、「質量%(mass%)」および「質量ppm」を、単に「%」および「ppm」と表記する。
本発明の鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法によれば、インゴットの鋳造時に生成するマクロ偏析であるゴースト偏析を、インゴットの表面から中心よりに封じ込めることができる。そのため、インゴットの鍛造および熱処理時に偏析を起点とした割れを抑制することができるとともに、このインゴットから製造されたロールを再使用するためにロールを切削手入れしてもゴースト偏析線が露出しにくいため、長期にわたってロールを安定して使用することができる。
一般的なマクロ偏析の発生状況を示す大型インゴットの縦断面図である。 Bi含有率とデンドライト一次アーム間隔との関係を示す図である。 インゴット表面から半径方向の距離とデンドライト一次アーム間隔との関係を示す図である。 インゴット表面から半径方向の距離とRa/Raの値との関係を示す図である。
本発明の鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法は、造塊法でインゴットを鋳造する際、下記(1A)式を、インゴットの表面からインゴットの中心付近まで満たすように、前記鋳造に用いる溶鋼に10質量ppm以上かつ100質量ppm以下のBiを添加することを特徴とする、鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法である。
Ra/Ra<1 …(1A)
ここで、Ra/Ra0=(d/d03
d:Biを含有するインゴットのデンドライト一次アーム間隔(μm)、
0:Bi含有無しのインゴットのゴースト偏析発生臨界点におけるデンドライト一次アーム間隔(μm)、
Ra:Biを含有するインゴットのレイリー数(Rayleigh数)(−)、
Ra0:Bi含有無しのインゴットのゴースト偏析発生臨界点におけるレイリー数(Rayleigh数)(−)。
以下に、本発明の鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法を上述のとおり規定した理由および本発明の方法の好ましい態様について説明する。
1.本発明の鍛鋼ロール製造用のインゴットの化学成分の範囲およびその理由
C:0.3%以上
Cは、インゴットの焼き入れ性向上、および鍛鋼ロールの強度向上の目的で含有させる元素であり、0.3%以上を含有させることが好ましい。
Si:0.2%以上
Siは、インゴットの脱酸または焼き入れ性向上の目的で含有させる元素であり、0.2%以上を含有させることが好ましい。
P:0.01%以上
Pは、一般に不純物として鋼中に混入する元素であり、通常0.01%以上含有する。
Bi:10ppm以上100ppm以下
C、SiおよびPは軽元素であるため、C含有率が0.3%以上である高炭素系の炭素鋼においてSiを0.2%以上、Pを0.01%以上含有する場合、ゴースト偏析が生じやすい。しかし、後述するように、溶鋼にBiを添加して、Bi含有率を10ppm以上とすることにより、ゴースト偏析の発生を抑制することができる。Bi含有率が100ppmを超えると、微量とはいえインゴットの熱間加工での脆化が問題となるため、Bi含有率は100ppm以下とする。
上記組成のインゴットは、普通造塊法で鋳造してもデンドライト組織が微細であるため、このインゴットを素材として鍛造して製造された鍛鋼ロールは、ゴースト偏析が完全に抑制されるか、Biを含有させない場合よりもインゴットの中心寄りにゴースト偏析が封じ込められており、鍛鋼ロールの表面を繰り返し切削手入れしても偏析線が露出せず、長期にわたって安定して使用することができる。
2.Biを含有させることの効果
本発明者らは、溶鋼にBiを添加して、鋳造したインゴットにBiを微量(10ppm以上)に含有させることにより、デンドライト組織を微細化し、ゴースト偏析の発生を抑制することが可能であることを、以下の一方向凝固試験により見出した。
2−1.試験条件
直径が15mm、高さが50mmの円柱形で、Bi含有率が11ppm、24ppmおよび33ppmであるインゴットとBiを含有しないインゴットについて試験を行った。冷却速度は、実用鋳塊の冷却速度に合わせて10〜15℃/minとした。
得られたインゴットは、中心を通る縦断面において軸方向にほぼ平行に延びる約10本の一次アームについて間隔を測定し、算術平均した値を各インゴットのデンドライト一次アーム間隔とした。
2−2.試験結果
図2は、Bi含有率とデンドライト一次アーム間隔との関係を示す図である。同図では、デンドライト一次アーム間隔(d)を、Bi含有無しのインゴットのデンドライト一次アーム間隔(d)に対する比(d/d)として縦軸に表示した。同図から、Bi含有率が高いほどデンドライト一次アーム間隔が狭くなることがわかる。すなわち、Bi含有率が高いほど、炭素鋼のデンドライト一次アーム間隔が狭くなり、デンドライト組織が微細となることがわかる。これは、Biが炭素鋼の固液界面の界面エネルギーを下げる効果を有する元素であり、その含有量が微量でもデンドライト一次アーム間隔の微細化に効果を示すことによるものと考えられる。Bi含有率は、後述の実施例に示すように、10ppm以上であればゴースト偏析の発生の抑制に効果がある。
3.ゴースト偏析発生の尺度
本発明者らは、ゴースト偏析発生の尺度として、Ra数を用いることに着目した。Ra数は、温度場での対流流動無次元数であり、Pr数(Prandtl数;プラントル数)とGr数(Grashof数;グラスホフ数)の積であり、下記(1)式で表される。
Ra=Pr・Gr=gβ(Ts−T)L/να …(1)
ここで、g[m/s]:重力加速度、β[1/K]:体膨張係数、Ts[K]:物体表面温度、T[K]:流体の温度、ν[m/s]:動粘性係数、α[m/s]:熱拡散率、L[m]:代表長さである。
Ra数は、物理的には流動抵抗力に対する流動駆動力である浮力の比と考えられ、上記(1)式に示すように代表長さの3乗に比例する。ゴースト偏析の発生の臨界について考える場合、Ra数における代表長さは、デンドライト樹間のミクロ偏析の大きさとするべきである。この場合、ミクロ偏析溶鋼が生成初期にデンドライト樹間を満たすことから、ミクロ偏析の大きさをデンドライト一次アーム間隔と見なすことができるため、Ra数における代表長さをデンドライト一次アーム間隔とすることができる。そのため、Ra数は、デンドライト一次アーム間隔の3乗に比例するといえる。
上述のように、デンドライト組織が粗いほどゴースト偏析が粗大化しやすいため、Ra数が大きいほどゴースト偏析は発生しやすくなると考えられる。また、実際のインゴットでのゴースト偏析の発生実績と、Ra数とを比較すれば、Ra数をゴースト偏析の発生の臨界の指標とすることができる。インゴットにBiを微量に含有させることによるデンドライト一次アーム間隔の減少そのものが比較的小さくても、Ra数はデンドライト一次アーム間隔の3乗に比例するため、インゴットにBiを含有させることは、Ra数の低減に、すなわちゴースト偏析の発生の抑制に大変効果的である。
本発明の効果を、実際にインゴットを用いて行った予備試験、および数値計算によるシミュレーションにより評価した。
1.予備試験
鋳型に溶鋼を流し込む普通造塊法による直径1100mmのインゴットの鋳造試験を予備試験として行った。対象鋼種は、0.9%C−0.6%Mn−0.02%P−4%Cr−0.6%Mo(Bi含有無し)の高炭素鋼とした。この鋼種の液相線温度は1460℃であり、固相線温度は1280℃である。鋳造条件は、溶鋼規模15t、鋳片長4m、鋳込み時溶鋼過熱度30〜60℃とした。
その結果、インゴット表面から半径方向内部に245mmの位置まではゴースト偏析の発生がなく、それよりも内側ではゴースト偏析が発生した。すなわち、ゴースト偏析発生の臨界点は、インゴット表面から半径方向内部に245mmの位置であった。このインゴットのゴースト偏析発生臨界点におけるデンドライト一次アーム間隔をd、Ra数をRaとし、以下の数値計算によるシミュレーションの基準値とする。
2.数値計算によるシミュレーション
数値計算シミュレーションの評価条件は以下の通り設定した。対象鋼種は、上記予備試験と同様の0.9%C−0.6%Mn−0.02%P−4%Cr−0.6%Moとし、Bi含有率は0ppm(Bi含有無し)、10ppmおよび35ppmとした。対象インゴットの直径も予備試験と同様の1100mmとした。
この評価条件において、インゴットの半径方向一次元の非定常伝熱解析により、インゴット各部の凝固速度と冷却速度とを計算し、インゴットの表面から半径方向のデンドライト一次アーム間隔の分布を下記(2)式(「鉄鋼の凝固」、社団法人日本鉄鋼協会・鉄鋼基礎共同研究会、凝固部会、1977年、付−4)により算出した。(2)式は、凝固速度V(cm/min)および温度勾配G(℃/cm)をパラメータとするデンドライト一次アーム間隔d(μm)のCr−Mo鋼の実験式である。
d=1620V−0.2−0.4 …(2)
図3は、インゴット表面から半径方向の距離とデンドライト一次アーム間隔との関係を示す図である。同図に示す、Bi含有無しの場合のデンドライト一次アーム間隔(d)は、上記(2)式から算出した。Biを含有する場合のデンドライト一次アーム間隔(d)は、前記図2に示される各Bi含有率(10ppmおよび35ppm)についてのデンドライト一次アーム間隔の比率(d/d)を、(2)式から算出したdの値に乗じて算出した。
図4は、インゴット表面から半径方向の距離とRa/Raの値との関係を示す図である。各Bi含有率のRa数(Ra)は、前記(1)式から導出される下記(3)式に示すように、Ra/Raはd/dの3乗であるといえる。同図に示すRa/Raは、この(3)式に基づいて算出した。
Ra/Ra=(d/d …(3)
ここで、Ra/Raは、各Bi含有率のRa数(Ra)の基準となるRa数(上記予備試験で求めたRa)に対する比であり、d/dは、Biを含有するインゴットのデンドライト一次アーム間隔dと、Bi含有無しのインゴットのゴースト偏析発生臨界点におけるデンドライト一次アーム間隔dの比である。
前記図3から、Bi含有無しのインゴットのゴースト偏析発生臨界点におけるデンドライト一次アーム間隔dは、900μmであることがわかる。デンドライト一次アーム間隔dがdよりも大きいインゴット内部では、ゴースト偏析が発生する。一方、Biを微量(10ppmおよび35ppm)含有する場合には、デンドライト一次アーム間隔dが、インゴット表面から半径方向のほぼ全域にわたって、上記臨界点におけるアーム間隔dよりも狭くなることがわかった。この場合、すなわち(d/d<1を満たす場合には、ゴースト偏析の発生が抑制される。前記(3)式から、(d/d<1は、Ra数を用いて言い換えるとRa/Ra<1となるため、Ra/Ra<1を満たす場合には、ゴースト偏析の発生が抑制されるといえる。
また、前記図4によると、Biを含有する場合にはインゴットの表面からかなり深部(インゴットの中心付近)までRa/Ra<1を満たしていることから、ゴースト偏析をインゴットの表面近傍のみならず中心付近まで封じ込めること、または完全にゴースト偏析の発生を抑制することができる可能性が示された。
以上の結果から、Biの含有率は、10ppm以上であればゴースト偏析の発生を確実に抑制することができる。
さらに、前記図4から、Biを含有する場合のRa/Raが1より小さくなる領域は、Bi含有無しの場合よりも、インゴット中央側に広がっていると考えられる。そのため、ゴースト偏析の発生位置をできるだけインゴット表面よりも遠ざけたいという目的は、任意のサイズのインゴットで達せられる可能性は充分にある。ただし、実際のインゴットの冷却は、必ずしも均等になされるとは限らず、均等でない場合も多いため、デンドライト一次アーム間隔が部分的に広くなることも想定できる。このことから、Bi含有率は10ppm以上とすることが肝要である。
以上のことから、Biをインゴットに微量に(10ppm以上)含有させることの効果の可能性が明確に示された。
ただし、上述のように、Biの含有率が100ppmを超えると、熱間加工時の脆化が問題となるため、Bi含有率は100ppmを上限とする。
また、この実施例ではインゴットの形状を円柱形としたが、直方体のブルーム鋳片であっても同様の効果が得られることは言うまでもない。
本発明の鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法によれば、インゴットの鋳造時に生成するマクロ偏析であるゴースト偏析を、インゴットの表面から中心よりに封じ込めることができる。そのため、インゴットの熱処理時の偏析を起点とした割れを抑制することができるとともに、このインゴットから製造されたロールを再使用するためにロールを切削手入れしてもゴースト偏析線が露出しにくいため、長期にわたってロールを安定して使用することができる。

Claims (1)

  1. 鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法であって、
    造塊法でインゴットを鋳造する際、下記(1A)式を、インゴットの表面からインゴットの中心付近まで満たすように、前記鋳造に用いる溶鋼に10質量ppm以上かつ100質量ppm以下のBiを添加することを特徴とする、鍛鋼ロール製造用のインゴットの鋳造方法。
    Ra/Ra<1 …(1A)
    ここで、Ra/Ra0=(d/d03
    d:Biを含有するインゴットのデンドライト一次アーム間隔(μm)、
    0:Bi含有無しのインゴットのゴースト偏析発生臨界点におけるデンドライト一次アーム間隔(μm)、
    Ra:Biを含有するインゴットのレイリー数(Rayleigh数)(−)、
    Ra0:Bi含有無しのインゴットのゴースト偏析発生臨界点におけるレイリー数(Rayleigh数)(−)。
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