JP5806532B2 - ビニルエーテルの製造方法 - Google Patents

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本発明は、エーテル交換反応の転化率が高く、原料成分のリサイクル性にも優れ、工業的に安価に量産できるビニルエーテルの製造方法に関する。
ビニルエーテル類は、樹脂原料や、各種化合物の中間体として用いられている。樹脂原料は、成形用樹脂、塗料用樹脂、接着剤、粘着剤などの各種分野における合成樹脂に対するポリマー改質剤として好適に利用されている。ポリマー改質剤は、用途や要求される特性、需要などに対して、各種の化合物を供給できるようにすることが重要である。そのため、ビニルエーテル類は、分子中の置換基の種類を変更することにより、所望の化合物として供給できるようにすることが工業的に極めて重要である。
ビニルエーテル類の置換基の種類を変更する方法としては、例えば、アルキルビニルエーテル類とアルコール類とをエーテル交換させる方法が工業的に有用である。特開平9−87224号公報(特許文献1)には、パラジウムと窒素二座配位子との錯体の存在下でエーテル交換させ、ビニルエーテルを製造する方法が提案されている。この文献の実施例では、ジアセタト(1,10−フェナントロリン)パラジウム(II)の存在下、エタノールとメチルビニルエーテルとをエーテル交換させ、反応終了後、減圧下、浴温40℃で、反応液を濃縮乾固し、濃縮残渣中のパラジウム錯体を再利用している。
特開2001−114718号公報(特許文献2)には、副生するアルコールを反応系外に留出しながらエーテル交換させ、ビニルエーテルを製造する方法が開示されている。この文献の実施例では、酢酸パラジウム−1,10−フェナントロリン錯体の存在下、n−ブチルビニルエーテルとn−ドデカノールとを40℃で反応させるとともに、反応系内を90mmHgに減圧し、反応により生成したn−ブタノールと共に留出するn−ブチルビニルエーテルを回収している。
しかし、これらの方法では、反応を促進するため、温度を高くすれば遷移金属が変色して失活する。そのため、減圧下でなければ濃縮留去が困難であり、沸点の高い化合物は、通常、到達可能な減圧度で留去するのは困難である。また、40℃での蒸留操作は、低沸点成分の凝縮効率及び回収率が低下し、工業的に安価にエーテル交換反応を行うことができない。
なお、特開2003−206251号公報(特許文献3)には、収率を向上させるため、触媒の存在下、反応液中の溶存酸素濃度を10ppm以上に調整しながらエーテル交換させ、ビニルエーテルを製造する方法が開示されている。この文献の実施例では、200mlの反応容器内で、コバルト(III)アセチルアセトナートの存在下、反応液に酸素を10ml/分の割合で供給しながら、n−ドデシルアルコールとn−ブチルビニルエーテルとを30℃で反応させ、n−ドデシルビニルエーテルを得ている。しかし、この文献には、反応液から低沸点成分(副生するn−ブタノール)を留去することについて記載されていない。さらに、反応温度が低く、反応効率を向上することが困難である。
特開平09−87224号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2001−114718号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2003−206251号公報(特許請求の範囲、実施例)
従って、本発明の目的は、反応温度を高くしても、反応工程中に遷移金属触媒の失活を有効に防止でき、反応効率を向上できるビニルエーテルの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、遷移金属触媒を失活させることなく再使用できるビニルエーテルの製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、留出した低沸点成分の凝縮率及び回収率を向上できるビニルエーテルの製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ビニルエーテルの製造方法において、反応工程ないし反応終了後に、反応混合物に酸素をバブリングしつつ低沸点成分を系外に留去すると、遷移金属触媒の失活を有効に防止でき、反応効率を向上できること、遷移金属触媒を繰り返し使用できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の方法では、遷移金属触媒の存在下、(1)ビニルエーテルと(2)アルコールとを反応させ、(3)エーテル交換により生成するビニルエーテル[(2)アルコールに対応する(エーテル基を有する)ビニルエーテル]を製造する。この方法では、反応工程中ないし反応終了後に、反応混合物に酸素をバブリングしつつ、低沸点成分を留出させて反応混合物を濃縮する。前記低沸点成分は、50〜100℃(例えば、60〜80℃)程度で留出させてもよい。(1)ビニルエーテルは、(2)アルコールに対して過剰モル当量(例えば、6〜25倍モル当量)の割合で用いてもよい。酸素は、遷移金属触媒1モルに対して、5〜100リットル/分(例えば、10〜80リットル/分)の割合でバブリングさせてもよい。遷移金属触媒は、パラジウム錯体及び/又はコバルト錯体(特に、パラジウム錯体)であってもよい。(1)ビニルエーテルは、C1−6アルキルビニルエーテル及びC2−6アルケニルビニルエーテルから選択された少なくとも一種であってもよい。(2)アルコールは、直鎖状又は分岐鎖状C4−20アルカノール及び下記式(2a)で表されるアルコールから選択された少なくとも一種であってもよい。
Figure 0005806532
(式中、環Zは、C4−10脂肪族炭化水素環、又は窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも一種のヘテロ原子を環の構成原子として含む4〜8員複素環を示し、Xは、C1−4アルキレン基を示し、mは1〜4の整数であり、pは0又は1である)
低沸点成分は、(1)未反応のビニルエーテルと(4)反応で副生するアルコールとを含んでいてもよい。
本発明は、上記反応終了後の反応混合物から低沸点成分が留出した残渣の存在下、(1)ビニルエーテルと(2)アルコールとを反応させ、(3)エーテル交換により生成するビニルエーテルを製造する方法を包含する。この方法でも、上記反応と同様の条件でエーテル交換反応してもよい。例えば、反応工程中ないし反応終了後に酸素をバブリングしつつ反応混合物から低沸点成分を留出してもよく、低沸点成分を特定温度で留出してもよく、(1)ビニルエーテルを(2)アルコールに対して過剰モル当量の割合で使用してもよい。また、本発明は、遷移金属触媒の存在下、(1)ビニルエーテルと(2)アルコールとを反応させて、生成した反応混合物に対して酸素をバブリングしつつ、低沸点成分を留出させて、反応混合物を濃縮する方法も包含する。
なお、本明細書中、「反応混合物」とは、反応工程ないし反応終了後の系内の全成分(又は全液状成分)を意味する。また、本明細書中、数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
本発明では、酸素をバブリングしつつ反応混合物中の低沸点成分を留出するため、温度が高くても遷移金属触媒が失活するのを有効に防止できる。そのため、反応工程中であれば、反応効率を向上でき、反応終了後であれば、濃縮残渣中の遷移金属触媒を再使用できる。また、本発明では、アルコールに対してビニルエーテルを過剰モル当量の割合で用いると、反応効率をより一層高くすることができる。さらに、本発明では、留出した低沸点成分は、効率よく凝縮して回収でき、回収した低沸点成分を再使用できる。
本発明のビニルエーテルの製造方法は、遷移金属触媒の存在下、(1)ビニルエーテルと(2)アルコールとをエーテル交換(又はビニル交換)させる反応工程と、反応工程ないし反応終了後に、反応混合物(反応系又は液相)に酸素をバブリングしつつ低沸点成分を留出(又は留去)させて、反応混合物を濃縮する濃縮工程(又は蒸留工程)とを含んでいる。上記反応は、下記反応式で表すことができる。
Figure 0005806532
[式中、Rは1価の非芳香族性有機基を示し、式(1)においてRの炭素原子はオキシ基(酸素原子)と結合しており;Rは、Rと異なって、1価又は多価の非芳香族性有機基を示し、式(2)においてヒドロキシル基はRの炭素原子と結合しており;mは1以上の整数であり;m−nは0又は1以上の整数である]
[反応工程]
(1)ビニルエーテル
式(1)において、Rで表される1価の非芳香族性有機基(脂肪族性有機基)は、通常、鎖状又は環状脂肪族炭化水素基である。鎖状炭化水素基としては、例えば、アルキル基[例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−30アルキル基(例えば、C1−18アルキル基など)など]、アルケニル基[前記アルキル基に対応する基、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−30アルケニル基(例えば、C2−18アルケニル基など)など]などが例示できる。
環状炭化水素基としては、シクロアルキル基[例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのC4−10シクロアルキル基(例えば、C4−8シクロアルキル基など)など]、シクロアルケニル基[例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などのC4−10シクロアルケニル基(例えば、C4−8シクロアルケニル基)など]などが例示できる。
なお、鎖状又は環状脂肪族炭化水素基は、エーテル交換反応に不活性な置換基、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、N−アルキル置換アミノ基、N−アシル置換アミノ基などが置換していてもよい。
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテルなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−12アルキルビニルエーテル;アリルビニルエーテルなどのC2−6アルケニルビニルエーテルなどが例示できる。
これらのビニルエーテルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのビニルエーテルのうち、反応性や取扱性などの点から、C1−6アルキルビニルエーテル、C2−6アルケニルビニルエーテル[特に、C2−6アルキルビニルエーテル(例えば、n−プロピルビニルエーテルなどのC3−4アルキルビニルエーテル)]が好ましい。
ビニルエーテルの沸点は、常圧で、5〜200℃程度の範囲から選択でき、例えば、45〜100℃、好ましくは50〜80℃、さらに好ましくは55〜75℃(例えば、60〜70℃)程度であってもよい。
(2)アルコール
式(2)において、Rで表される1価又は多価(2価以上)の非芳香族性有機基は、1価又は多価の鎖状有機基と1価又は多価の環状有機基に分類できる。1価の鎖状有機基としては、前記Rと同様の鎖状炭化水素基(例えば、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状C1−30アルキル基、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状C2−30アルケニル基など)などが例示できる。
多価の鎖状有機基は、通常、多価の鎖状炭化水素基又はヘテロ原子含有基である。多価の鎖状炭化水素基としては、例えば、2価の鎖状炭化水素基[例えば、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレン、オクタデシレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−30アルキレン基(例えば、C1−18アルキレン基)など)、アルケニレン基(前記アルキレン基に対応するアルケニレン基、例えば、ビニレン、アリレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−30アルケニレン基(例えば、C2−18アルケニレン基)など)など]、3価の鎖状炭化水素基[例えば、プロパン−トリイル基、1,1,1−トリメチルプロパン−トリイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C3−30アルカン−トリイル基(例えば、C3−18アルカン−トリイル基)など]、4価の鎖状炭化水素基[例えば、ブタン−テトライル基、2,2−ジメチルプロパン−テトライル基などの直鎖状又は分岐鎖状C4−30アルカン−テトライル基(例えば、C4−18アルカン−テトライル基など)など]などが例示できる。
多価の鎖状ヘテロ原子含有基としては、例えば、2価の鎖状ヘテロ原子含有基[例えば、−R2a−X−R2b−(式中、R2a及びR2bは、同一又は異なって、アルキレン基を示し、Xは、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−SO−、−SO−、又はNHを示す)など]などが例示できる。
なお、多価の鎖状有機基は、前記例示のエーテル交換反応に不活性な置換基(ハロゲン原子、アルコキシ基など)などが置換していてもよい。
1価又は多価の環状有機基としては、例えば、C4−10脂肪族炭化水素環、又は窒素原子(N)、酸素原子(O)及び硫黄原子(S)から選択された少なくとも一種のヘテロ原子を環の構成原子として含む4〜8員複素環で構成された基(これらの環のモノ乃至テトライル基など)が例示できる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、イソペンチルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルカノール;アリルアルコールなどのC2−6アルケニルアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどのC2−10アルカンジオール;ジエチレングリコールなどのポリC2−4アルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのアルカントリ乃至テトラオール;式(2a)で表されるアルコールなどが例示できる。
式(2a)において、環Zで表される脂肪族炭化水素環としては、例えば、シクロアルカン環[例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン環などのC4−10シクロアルカン環(例えば、C4−8シクロアルカン環)など]、シクロアルケン環[例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン環などのC4−10シクロアルケン環など]、多環式飽和炭化水素環[例えば、ボルナン、ノルボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン環などのジ又はトリシクロアルカン環(例えば、ジ又はトリC7−10シクロアルカン環)など]、多環式不飽和炭化水素環[例えば、ボルネン、ノルボルネンなどのジ又はトリシクロアルケン環(例えば、ジ又はトリC7−10シクロアルケン環)など]などが例示できる。
環Zで表される複素環としては、単環式複素環又は縮合複素環のいずれであってもよい。また、複素環は、4〜8員環であればよく、好ましくは4〜7員環(例えば、4〜6員環)である。代表的な複素環としては、N含有複素環(例えば、アゼチジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピペラジンなど)、O含有複素環(例えば、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン、ジオキサンなど)、S含有複素環(例えば、チイラン、チエタン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ジチアンなど)などが例示できる。
環Zは、前記例示のエーテル交換反応に不活性な置換基(例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、N−アルキル置換アミノ基、N−アシル置換アミノ基など)を有していてもよい。
Xで表されるアルキレン基は、前記例示のアルキレン基、例えば、メチレン基などのC1−4アルキレン基などが例示できる。
なお、環Zにおいて、置換基及びXの結合部位は、特に制限されない。環Zに2つ以上のXが置換しているとき、各々のXは同一の部位に置換してもよく、異なる部位(o−,m−,p−位など)に置換してもよい。
mは、1以上の整数であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1又は2程度であってもよい。
式(2a)で表されるアルコールとしては、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどのモノ又はジヒドロキシC4−10シクロアルカン;シクロペンタンジメタノールなどのモノ又はジヒドロキシC1−4アルキルC4−10シクロアルカン;モノ又はジヒドロキシオキセタン、モノ又はジヒドロキシテトラヒドロフランなどのヒドロキシル基が置換した4〜8員複素環(酸素原子含有複素環など);オキセタンモノ又はジメタノール、テトラヒドロフランモノ又はジメタノールなどのヒドロキシC1−4アルキル基が置換した4〜8員複素環(酸素原子含有複素環など)などが例示できる。
これらのアルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアルコールのうち、直鎖状又は分岐鎖状C4−20アルカノール及び式(2a)で表されるアルコールが好ましい。
アルコールの沸点は、常圧で、例えば、50〜300℃、好ましくは70〜270℃、さらに好ましくは100〜250℃程度である。
(1)ビニルエーテルと(2)アルコールは、略等モル当量の割合で使用してもよいが、化学平衡を生成物側にシフトさせビニルエーテルの転化率を向上する点から、(1)ビニルエーテルの使用量は(2)アルコールに対して過剰モル当量の割合であってもよい。(1)ビニルエーテルの使用量は、(2)アルコール1モルに対して、例えば、(1〜10)×mモル、好ましくは(2〜9)×mモル、さらに好ましくは(3〜8)×mモル[例えば、(4〜7)×mモル]程度であってもよく、大過剰の割合[例えば、(6〜25)×mモル、好ましくは(7〜15)×mモル程度]であってもよい。
(遷移金属触媒)
本発明では、反応温度や蒸留温度で活性が低下し易い遷移金属触媒を用いても、酸素をバブリングしつつ反応や蒸留を行うため、遷移金属触媒が失活するのを防止できる。そのため、遷移金属触媒としては、エーテル交換反応を促進する作用を有する限り、特に制限されない。
遷移金属触媒としては、遷移金属単体であってもよいが、通常、遷移金属を含む化合物(遷移金属化合物)である。遷移金属としては、例えば、周期表4族元素(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなど)、周期表5族元素(例えば、バナジウム、ニオブ、タンタルなど)、周期表6族元素(例えば、クロム、モリブデン、タングステンなど)、周期表7族元素(例えば、マンガンなど)、周期表8族元素(例えば、鉄、ルテニウムなど)、周期表9族元素(例えば、コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、周期表10族元素(例えば、ニッケル、パラジウム、白金など)、周期表11族元素(例えば、銅、銀、金など)などが例示できる。これらの遷移金属は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの遷移金属のうち、コバルト、パラジウムなどの周期表9〜10族元素(特に、パラジウムなどの周期表10族元素など)が好ましい。これらの元素(遷移金属)の価数は、例えば、0〜6価、好ましくは1〜6価、さらに好ましくは1〜4価(例えば、2〜4価)程度である。
遷移金属化合物としては、遷移金属の無機塩[例えば、無機酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、過塩素酸塩などの過ハロゲン酸塩、クロム酸塩など)、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、酸化物、硫化物、窒化物、水酸化物など]、有機酸塩[例えば、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩などのC1−12アルカン酸塩;ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩などのハロC1−4アルカン酸塩など)、オキシカルボン酸塩、チオシアン酸塩、スルホン酸塩]、錯体(又は錯塩)などが例示できる。
錯体(配位化合物)を構成する配位子としては、例えば、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アセチルアセトナト(acac)、トリフルオロアセチルアセトナト、シクロアルカジエニル基(シクロペンタジエニル基など)、ハロゲン原子、CO、CN、酸素原子、HO(アコ)、リン化合物(ホスフィンなど)、窒素化合物[NH(アンミン)、NO、NO(ニトロ)、NO(ニトラト)、エチレンジアミンなどのC2−4アルキレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのジC2−4アルキレントリアミン、シクロヘキサンジアミンなどのC5−10シクロアルカンジアミン;ピリジン、イミダゾール、ビピリジン、フェナントロリンなどの窒素原子含有複素環化合物など]などが例示できる。これらの配位子は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。配位子は、単座配位子、二座配位子、三座以上の多座配位子のいずれであってもよい。
代表的な遷移金属化合物(又は有機遷移金属化合物)としては、コバルト錯体[例えば、Co(acac)、Co(acac)などのアセチルアセトナト錯体;CoH(CO)、Co (CO)などのカルボニル錯体など]、パラジウム錯体[例えば、(1,10−フェナントロリン)Pdなどのフェナントロリン錯体;(2,2’−ビピリジン)Pdなどのビピリジン錯体;(エチレンジアミン)Pd、(2,4−ペンタンジアミン)Pd、(1,2−シクロヘキサンジアミン)Pdなどのジアミン錯体など]などが例示できる。
これらの遷移金属触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの遷移金属触媒のうち、パラジウム化合物(パラジウム錯体など)、コバルト化合物(コバルト錯体など)が好ましく、特に、パラジウム化合物(パラジウム錯体など)が好ましい。
遷移金属触媒は、慣用の担体(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどの金属酸化物など)に担持させて利用してもよい。
遷移金属触媒の割合は、(2)アルコール100重量部に対して、例えば、0.001〜15重量部、好ましくは0.01〜12重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部(例えば、0.5〜5重量部)程度である。上記割合は(1)ビニルエーテルに対する割合であってもよい。
遷移金属触媒は、市販品を用いてもよく、公知の方法により調製してもよい。なお、遷移金属化合物は、遷移金属化合物の前駆体を利用し、反応系中で遷移金属化合物を形成させてもよい。本発明では、反応終了液の反応混合物から低沸点成分が留去した残渣(濃縮残渣)中の遷移金属触媒は失活していないため、この残渣の存在下でエーテル交換反応してもよい。
(溶媒)
エーテル交換反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒としては、特に制限されず、ビニルエーテルやアルコールの種類などにより適宜選択でき、例えば、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンなどの直鎖状又は分岐鎖状C5−10アルカンなど)、脂環式炭化水素(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどのC5−10シクロアルカン類など)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンなどのC6−10アレーン類など)、ハロゲン化炭化水素(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロC1−2アルカン;モノ又はジクロロベンゼンなどのハロC6−10アレーン;トリフルオロメチルベンゼンなどのハロC1−2アルキルC6−10アレーンなど)、アミド(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの鎖状アミド;N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの環状アミドなど)、アミン(例えば、ジブチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミンなどのジ又はトリC1−4アルキルアミン類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどのC2−4アルキレンジアミン類;N,N−ジメチルアニリンなどのC6−10アリールアミン類;ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピコリンなどの環状アミンなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのジC1−4アルキルケトン;シクロヘキサノンなどのC5−10シクロアルカノンなど)、エステル(例えば、酢酸エチルなどのC1−4アルカン酸C1−4アルキル;酢酸フェニルなどのC1−4アルカン酸C6−10アリール;安息香酸メチルなどのC6−10アレーンカルボン酸C1−4アルキル;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類など)、エーテル(例えば、ジエチルエーテルなどのジC1−4アルキルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)などの(ポリ)C2−4アルキレングリコールジC1−4アルキルエーテル;シクロペンチルメチルエーテルなどのC5−10シクロアルキルC1−4アルキルエーテル;アニソールなどのC6−10アリールC1−4アルキルエーテル;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテルなど)、カーボネート(例えば、ジメチルカーボネートなどのジC1−4アルキルカーボネート;ジフェニルカーボネートなどのジC6−10アリールカーボネート;エチレンカーボネートなどのC2−4アルキレンカーボネートなど);イオウ含有化合物(例えば、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;テトラメチレンスルホンなどのスルホンなど);ニトリル(例えば、アセトニトリルなどのシアノC1−2アルカン、ベンゾニトリルなどのシアノC6−10アレーンなど);ニトロ化合物(例えば、ニトロメタンなどのニトロC1−2アルカン;ニトロベンゼンなどのニトロC6−10アレーンなど)などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。これらの溶媒のうち、ジグライム、テトラグライムなどのポリC2−4アルキレングリコールジC1−4アルキルエーテルが汎用される。
溶媒は、式(1)〜式(4)で表される成分のいずれかに対して共沸混合物を形成可能な成分であってもよい。
溶媒の割合は、(2)アルコール100重量部に対して、例えば、1〜500重量部、好ましくは5〜300重量部、さらに好ましくは10〜250重量部程度であってもよい。上記割合は(1)ビニルエーテルに対する割合であってもよい。
エーテル交換反応は、反応に不活性な他の成分、例えば、慣用の添加剤(例えば、重合禁止剤、安定剤など)の存在下で行ってもよい。
エーテル交換反応の反応温度は、−10〜100℃(例えば、0〜95℃)程度の範囲から選択でき、例えば、40〜90℃、好ましくは45〜85℃(例えば、50〜80℃)、さらに好ましくは55〜75℃(例えば、60〜70℃)程度であってもよい。特に、反応を促進するため高温(例えば、60〜80℃程度)で反応させても、遷移金属触媒の活性低下を防止できる。
エーテル交換反応は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよい。加圧下でエーテル交換反応すると、反応速度を向上でき、減圧下でエーテル交換反応すると、低沸点成分を効率よく留去できることにより、反応率を高めることができる。減圧下の場合、減圧度は、1〜759Torr(トル)程度の範囲から選択できる。反応時間は、例えば、1〜50時間、好ましくは3〜30時間程度であってもよい。
(3)エーテル交換されたビニルエーテル
上記の反応により(3)エーテル交換されたビニルエーテルを製造することができる。式(3)において、nはmと同様の範囲から選択できる。また、m−nは、0又は1以上の整数であればよく、例えば、0〜3、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0又は1程度である。本発明では、反応効率が高いため、m−nが0であるビニルエーテルを効率よく生成できる。
本発明では、エーテル交換反応が平衡反応であるにも拘わらず、ビニルエーテルの転化率(又は収率)が高い。ビニルエーテルの転化率は、例えば、50〜100モル%(例えば、55〜99.9モル%)、好ましくは60〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%(例えば、80〜100モル%)程度である。なお、反応終了後の反応混合物から低沸点成分を留出させた残渣の存在下、(1)ビニルエーテルと(2)アルコールとを反応する場合であっても、残渣中の遷移金属触媒の活性が保持されているため、ビニルエーテルの転化率は、上記と同様の範囲から選択できる。
[濃縮工程又は蒸留工程]
本発明では、反応中、特に反応終了後、反応混合物に酸素をバブリングさせつつ、反応混合物を濃縮(蒸留)する。反応混合物は(1)未反応のビニルエーテル、(2)未反応のアルコール、(3)生成ビニルエーテル、反応中に副生する不純物[例えば、(4)副生アルコールなど]、遷移金属触媒、溶媒、添加剤、これらの組み合わせなどを含んでいる。
酸素をバブリングする箇所は、特に制限されず、例えば、反応容器中の反応混合物であってもよく、蒸留塔中の反応混合物であってもよい。なお、遷移金属触媒を含んでいる限り、回分式の蒸留であれば、仕込み液、釜液のいずれにバブリングしてもよく、連続式の蒸留であれば、仕込み液、缶出液のいずれにバブリングしてもよい。本発明では、遷移金属触媒の失活を防止するため、少なくとも遷移金属触媒を含む溶液、例えば、反応容器中の反応混合物、蒸留塔の仕込み部位から塔底に至る領域の被蒸留液にバブリングするのが好ましい。
バブリングガス(供給ガス)としては、少なくとも酸素(分子状酸素)を含んでいればよく、純酸素であってもよく、酸素と不活性ガスとの混合ガスであってもよい。不活性ガスとしては、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)などが例示できる。これらの不活性ガスは、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。代表的な混合ガスは、酸素と窒素とを含むガス(例えば、空気など)が例示できる。
混合ガス中の酸素濃度は、例えば、0.1%以上(例えば、0.1〜99.9%)、好ましくは1%以上(例えば、5〜99%)、さらに好ましくは10%以上(例えば、15〜95%)程度であってもよい。
バブリング速度(供給速度)は、室温、O換算で、例えば、触媒1モルに対して、遷移金属触媒1モルに対して、5〜100リットル/分、好ましくは7〜90リットル/分、さらに好ましくは10〜80リットル/分程度である。また、反応工程でのバブリング速度は、室温、O換算で、基質の(2)アルコール1モルに対して、0.1〜100リットル/分、好ましくは0.2〜80リットル/分(例えば、0.3〜50リットル/分)、さらに好ましくは0.4〜40リットル/分(例えば、0.5〜20リットル/分)程度であってもよい。なお、酸素は連続的に供給してもよく、間欠的に供給してもよい。
濃縮工程中の反応混合物の溶存酸素濃度は、特に制限されず、100ppm以上(例えば、130〜150ppm程度)であってもよいが、通常、100ppm未満、例えば、0.0001〜60ppm、好ましくは0.001〜30ppm、さらに好ましくは0.01〜10ppm(例えば、0.01〜5ppm)程度である。なお、上記溶存酸素濃度は、濃縮温度での飽和溶解度(ほぼ0)を示す場合が多く、検出限界以下(例えば、0〜1ppm未満)であってもよい。溶存酸素濃度は、慣用の方法、例えば、隔膜電極法(ガルバニ電池方式、ポーラログラフ方式など)などにより測定できる。
上記のように酸素をバブリングしつつ、蒸留温度で反応混合物中の低沸点成分を反応系から留去し、低沸点成分と高沸点成分とが分離される。低沸点成分は、反応混合物中に存在する成分のうち、蒸留温度で揮発する成分である。低沸点成分は、遷移金属触媒以外の成分、例えば、(1)未反応のビニルエーテルと(4)副生するアルコールとを含んでいる場合が多い。従って、反応工程中に低沸点成分を系外に留去すれば、化学平衡が生成物側にシフトし、ビニルエーテルの転化率を向上できる。
また、低沸点成分は、(1)未反応のビニルエーテルと、(2)未反応のアルコールと、(3)生成ビニルエーテルと、(4)副生アルコールとを含んでいてもよい。このような低沸点成分を反応終了後に留去すれば、遷移金属触媒を失活させることなく再使用できる。
蒸留温度(又は低沸点成分の沸点)は、例えば、50〜100℃(例えば、50〜90℃)、好ましくは55〜85℃(例えば、55〜80℃)、さらに好ましくは60〜75℃(例えば、60〜70℃)程度であってもよい。なお、蒸留温度は、通常、反応工程で低沸点成分を蒸留するとき、反応温度を意味し、反応終了後に低沸点成分を蒸留するとき、蒸留塔の塔底の温度(釜液又は缶出液の温度)を意味する。本発明では、温度条件によらず、遷移金属触媒の失活を防止しつつ、反応や濃縮を行うことができる。また、本発明では、蒸留温度を高くしても遷移金属触媒の活性低下を防止できるため、蒸留効率を高めることができるとともに、冷却温度との温度差を大きくして低沸点成分を効率よく凝縮して回収でき、回収した低沸点成分を再使用できる。
蒸留は、常圧又は減圧下で行ってもよい。減圧度は、反応工程と同様の範囲(例えば、1〜759Torr程度)から選択できる。本発明では、比較的低い減圧度(1〜5Torr程度)で、かつ比較的高い温度(60〜80℃程度)で蒸留しても、遷移金属触媒の失活を防止できる。
蒸留は、慣用の蒸留装置(蒸留塔)、例えば、棚段塔(多孔板塔、泡鐘塔など)、充填塔などの精留塔を利用して行うことができる。蒸留方法としては、所定量の混合物を蒸留系に仕込んで蒸留するバッチ式(回分式)で行ってもよく、セミバッチ式、又は所定量の混合物を蒸留系に連続的に導入しつつ蒸留する連続式で行ってもよい。また、蒸留方法は、単蒸留(例えば、フラッシュ蒸留)であってもよく、分子蒸留(例えば、ポット式分子蒸留、流下膜式分子蒸留、遠心式分子蒸留など)であってもよい。なお、フラッシュ蒸留は、慣用の装置[例えば、薄膜蒸留装置(例えば、WFE(Wiped Film Evaporator)、FFE(Falling Film Evaporator)など)など]を利用して行うことができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
ジムロート冷却管を備えた30mLの三口フラスコに、Pd(OAc)270mg(1.20ミリモル)、2,2’−ビピリジル 1.87g(12.0ミリモル)、テトラグライム 10.4g、オキセタンジメタノール 4.74g(40ミリモル)、n−プロピルビニルエーテル 6.90g(80ミリモル)を加え、50℃で4時間ビニル化反応を実施した。反応終了後の液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、オキセタンジメタノールの転化率は59%であり、オキセタンジメタノールモノビニルエーテルが50%の収率で、オキセタンジメタノールジビニルエーテルが9%の収率で生成しており、n−プロピルビニルエーテルを4.5g、反応副生物のn−プロパノールを1.5g含有していた。
次に、反応終了液に20%酸素を120ml/分の流量で液中にバブリングを実施しながら、オイルバスで加熱を開始し、常圧にてn−プロピルビニルエーテルとn−プロパノールの濃縮を実施した。蒸留中の釜液温度は65℃であり、反応液の溶存酸素濃度は1ppm未満であった。蒸留終了後の濃縮液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、n−プロピルビニルエーテルが0.1g、n−プロパノールが0.1g含有されていた。蒸留後の液は濃い赤黄色の溶液であり、黒色の不溶物の沈殿は認められなかった。ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析により、溶液中のPd量を定量したところ、Pd含有量の低下は認められなかった。
比較例1
実施例1と同様にビニル化反応を実施した。続いて反応終了液には20%酸素のバブリングを実施することなく、実施例1と同様の蒸留作業を開始したところ、5分後には反応液が黒色に変化し始め、蒸留完了時には、黒色の沈殿物が発生していた。0.20μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製カートリッジフィルターでろ過して黒色沈殿を除去した後、ICP発光分析により、ろ液中のPd量を定量したところ、反応に使用した量の78%に低下していた。
実施例2
ジムロート冷却管を備えた30mLの三口フラスコに、Pd(OAc) 404mg(1.8ミリモル)、2,2’−ビピリジル 2.81g(18.0ミリモル)、アセトニトリル 9.8g、1−ブタノール 4.45g(60ミリモル)、n−プロピルビニルエーテル 10.3g(120ミリモル)を加え、60℃で6時間ビニル化反応を実施した。反応終了後の液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1−ブタノールからn−ブチルビニルエーテルへの転化率は90%であった。
次に、反応終了液を減圧下とし、20%酸素を180ml/分の流量で液中にバブリングを実施しながら、オイルバスで加熱を開始し、浴温65℃で濃縮乾固した。濃縮中の反応液の溶存酸素濃度は1ppm未満であった。濃縮中に黒色沈殿の発生は認められず、濃縮残渣は濃い黄色を示した。この残渣に一回目と同重量のアセトニトリル、1−ブタノール、n−プロピルビニルエーテルを仕込み一回目と同様の反応を実施したところ、反応時間6時間で1−ブタノールの転化率は89%であり、濃縮残渣のリサイクル使用による活性の低下は見られなかった。
比較例2
実施例2と同様に一回目のビニル化反応を実施した後、反応終了液に20%酸素のバブリングを実施することなく、実施例2と同様の蒸留操作を開始したところ、10分後には、反応液が黒色に変化し始め、濃縮乾固終了時の濃縮残渣は黒色であった。
この残渣に一回目と同重量のアセトニトリル、1−ブタノール、及びn−プロピルビニルエーテルを仕込み、一回目と同様の反応を実施したが、反応液には黒色沈殿物が存在し、反応時間6時間後の転化率は18%であった。
参考
滴下ロート、留出ライン、コンデンサーを備えた200mLの四つ口フラスコに、Pd(OAc)0.9g(4ミリモル)、2,2’−ビピリジル 6.22g(40ミリモル)、オキセタンジメタノール 16.2g(0.14モル)、n−プロピルビニルエーテル 113g(1.3モル)、ジグライム 12.2gを仕込み、20%酸素を350mL/分でバブリングしながら、反応温度65℃の加熱条件で、n−プロピルビニルエーテルと副生物のn−プロパノールを留去しながら反応を行った。留去に従い反応液量が減少することから、仕込み時の液量を維持するように、滴下ロートよりn−プロピルビニルエーテルの補充を行った。反応中の反応液の溶存酸素濃度は1ppm未満であった。24時間後に反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、オキセタンジメタノールの転化率は100%であり、オキセタンジメタノールモノビニルエーテルの収率が10%、オキセタンジメタノールジビニルエーテルの収率が80%であった。また、黒色の不溶物の沈殿は認められなかった。
比較例3
20%酸素のバブリングを実施しない以外、参考と同様の手順で、反応温度65℃の加熱条件で、n−プロピルビニルエーテルと副生物のn−プロパノールを留去しながら反応を行ったところ、反応開始1時間後には、黒色沈殿が発生しはじめ、反応時間13時間でオキセタンジメタノールの転化率が70%に到達して以降は、反応が進行しなかった。
実施例
ジムロート冷却管を備えた100mLの三口フラスコに、Pd(OAc) 135mg(0.60ミリモル)、2,2’−ビピリジル 1.79g(11.4ミリモル)、ネオペンチルグリコール 4.17g(40ミリモル)、n−プロピルビニルエーテル 32.7g(380ミリモル)を加え、50℃で15時間ビニル化反応を実施した。反応終了後の液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ネオペンチルグリコールの転化率は97%であり、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテルが32%の収率で、ネオペンチルグリコールジビニルエーテルが65%の収率で生成しており、n−プロピルビニルエーテルを27.1g、反応副生物のn−プロパノールを3.8g含有していた。
次に、反応終了液に20%酸素を120ml/分の流量で液中にバブリングを実施しながら、オイルバスで加熱を開始し、常圧にてn−プロピルビニルエーテルとn−プロパノールの濃縮を実施した。蒸留中の釜液温度は65℃であり、反応液の溶存酸素濃度は1ppm未満であった。蒸留終了後の濃縮液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、n−プロピルビニルエーテルが0.1g、n−プロパノールが0.1g含有していた。蒸留後の液は濃い赤黄色の溶液であり、黒色の不溶物の沈殿は認められなかった。ICP分析により溶液中のPd量を定量したところ、Pd含有量の低下は認められなかった。
実施例
ジムロート冷却管を備えた100mLの三口フラスコに、Pd(OAc) 135mg(0.60ミリモル)、2,2’−ビピリジル 94mg(0.60ミリモル)、テトラグライム 31.5g、オキセタンジメタノール 4.73g(40ミリモル)、n−プロピルビニルエーテル 32.7g(380ミリモル)を加え、50℃で6時間ビニル化反応を実施した。反応終了後の液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、オキセタンジメタノールの転化率は59%であり、オキセタンジメタノールモノビニルエーテルが53%の収率で、オキセタンジメタノールジビニルエーテルが6%の収率で生成しており、n−プロピルビニルエーテルを30.4g、反応副生物のn−プロパノールを1.5g含有していた。
次に、反応終了液に20%酸素を120ml/分の流量で液中にバブリングを実施しながら、オイルバスで加熱を開始し、常圧にてn−プロピルビニルエーテルとn−プロパノールの濃縮を実施した。蒸留中の釜液温度は65℃であり、反応液の溶存酸素濃度は1ppm未満であった。蒸留終了後の濃縮液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、n−プロピルビニルエーテルが0.1g、n−プロパノールが0.1g含有していた。蒸留後の液は濃い赤黄色の溶液であり、黒色の不溶物の沈殿は認められなかった。ICP分析により溶液中のPd量を定量したところ、Pd含有量の低下は認められなかった。
実施例
参考で得られた反応液に、20%酸素を350mL/分の流量でバブリングしながら、オイルバスで加熱し、常圧にて65℃でn−プロピルビニルエーテルとn−プロパノールの留去を実施した。n−プロピルビニルエーテルとn−プロパノールの留去が終了したところで、蒸留装置の減圧を開始して減圧度2.3Torrで、オキセタンジメタノールジビニルエーテルの留去を実施した。70〜78℃の沸点範囲の留分として、オキセタンジメタノールジビニルエーテルを10.5g得た。蒸留終了時の釜液の温度は80℃であった。蒸留中の反応液の溶存酸素濃度は1ppm未満であった。蒸留終了後の液は濃い赤色の溶液であり、黒色の不溶物の沈殿は認められなかった。
本発明では、エーテル交換反応の転化率が高く、原料成分のリサイクル性にも優れ、工業的に安価にビニルエーテルを量産できる。得られたビニルエーテルは、各種分野の材料、例えば、塗料、インキ、接着剤又は粘着剤、感光性樹脂、レジスト、製版、リソグラフィー、ホログラムなどの材料として好適に利用できる。

Claims (10)

  1. パラジウム錯体の存在下、(1)未反応のアルキルビニルエーテルと(2)直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルカノール、C2−10アルカンジオール、及びヒドロキシC1−4アルキル基が置換した酸素原子含有複素環から選択された少なくとも一種のアルコールとを反応させ、(3)エーテル交換により生成する生成アルキルビニルエーテルを製造する方法であって、反応終了後に、反応混合物に酸素をバブリングしつつ、蒸留温度で揮発する低沸点成分を留出させて反応混合物を濃縮するビニルエーテルの製造方法。
  2. 低沸点成分を50〜100℃で留出させる請求項1記載の方法。
  3. (2)アルコールに対して、(1)未反応のアルキルビニルエーテルを過剰モル当量の割合で用いる請求項1又は2記載の方法。
  4. パラジウム錯体1モルに対して、5〜100リットル/分の割合で酸素をバブリングさせる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. パラジウム錯体の存在下、(2)アルコール1モルに対して(1)未反応のアルキルビニルエーテルを6〜25倍モル当量の割合で用いて、(1)未反応のアルキルビニルエーテルと(2)アルコールとを反応させ、反応終了後に、パラジウム錯体1モルに対して10〜80リットル/分の割合で反応混合物に酸素をバブリングしつつ、低沸点成分を60〜80℃で留出させて反応混合物を濃縮する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. (1)未反応のアルキルビニルエーテルが、C1−6アルキルビニルエーテルであり、
    (2)アルコールが、直鎖状又は分岐鎖状C4−20アルカノール及び下記式(2a)
    Figure 0005806532
    (式中、環Zは、酸素原子を環の構成原子として含む4〜8員複素環を示し、Xは、C1−4アルキレン基を示し、mは1〜4の整数であり、pは1である)
    で表されるアルコールから選択された少なくとも一種であり、
    低沸点成分が、(1)未反応のアルキルビニルエーテルと(4)反応で副生するアルコールとを含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 反応終了後の反応混合物から低沸点成分が留出した残渣の存在下、(1)未反応のアルキルビニルエーテルと(2)アルコールとを反応させる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. さらに反応工程中に、反応混合物に酸素をバブリングしつつ、蒸留温度で揮発する低沸点成分を留出させて反応混合物を濃縮する請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 反応工程中に、パラジウム錯体1モルに対して10〜80リットル/分の割合で反応混合物に酸素をバブリングしつつ、低沸点成分を60〜80℃で留出させて反応混合物を濃縮する請求項8記載の方法。
  10. パラジウム錯体の存在下、(1)未反応のアルキルビニルエーテルと(2)直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルカノール、C2−10アルカンジオール、及びヒドロキシC1−4アルキル基が置換した酸素原子含有複素環から選択された少なくとも一種のアルコールとを反応させ、生成した反応混合物を濃縮する方法であって、反応終了後に、前記反応混合物に対して酸素をバブリングしつつ、蒸留温度で揮発する低沸点成分を留出させる濃縮方法。
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