JP6007439B2 - 末端アルコールの製造方法 - Google Patents

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本発明は、末端アルコールの製造方法に関し、詳しくは、触媒の存在下に、原料の内部オレフィン性化合物を水素及び一酸化炭素と反応させて一段階の反応工程で高い直鎖選択性を有する末端アルコールを製造する方法に関する。
周期表第8〜10族遷移金属と有機リン配位子からなる触媒の存在下に、オレフィン性化合物を水素及び一酸化炭素と反応させてアルデヒド類を製造する方法は、ヒドロホルミル化反応として広く知られている。一般的に、得られるアルデヒド類の内、より直鎖性の高いアルデヒドが有用であり、その直鎖選択性を高めるために様々な有機リン配位子が開発されている。そのようにして得られた直鎖性の高いアルデヒドは、通常、水素化反応させてアルコールにするか、縮合反応によって分子量の大きなアルデヒドに変換した後に水素化反応させて、より分子量の大きなアルコールに変換している。これらのアルコール類は、接着剤や塗料、可塑剤の原料などとして用いられている。
上記反応のうち、縮合を行わないアルコールの製造に注目するならば、オレフィン性化合物から一段階の反応工程で直接アルコールを製造することができれば、従来のヒドロホルミル化反応と水素化反応の二段階の反応工程での製造と比較して、水素化反応設備や水素化反応用触媒が不要となり、経済的に非常に有利なプロセスとなる。
オレフィン性化合物から一段階の反応工程でアルコールを得る触媒系としては、古くはトリアルキルホスフィンを配位子として持つコバルト系の触媒が知られているが、コバルト系の触媒では、通常、反応温度として160〜200℃、反応圧力として5〜10MPaといった厳しい反応条件が必要であるため、近年においては、より穏和な条件で反応が進行するロジウム系触媒に注目が集まっている。
従来、ロジウム−有機リン系化合物からなる触媒系による一段階反応でのアルコール類の製造に関する文献例としては、非特許文献1、非特許文献2及び特許文献1のように、アルコール溶媒中で、ロジウムと単座のトリアルキルホスフィンからなる触媒の存在下、オレフィン性化合物を水素と一酸化炭素と反応させる方法が知られている。
しかしながら、これらの方法は、目的とする直鎖型のアルコールの選択性は低く、分岐型アルコール(B)に対する直鎖型アルコール(L)の生成比(以下、この比を「L/B比」と称す場合がある。)は、ほぼ全てのオレフィン性化合物原料を生成物に転化させた状態で2.5(直鎖選択性=71%)程度と低い値である。
一段階反応によるアルコール製造プロセスにおける直鎖選択性の低さを改善する試みとしては、特許文献2のように、高い直鎖選択性を有するアルデヒドの生成に寄与する二座配位子と、生成したアルデヒドの水素化反応に寄与する単座のトリアルキルホスフィン配位子を共存させたロジウム触媒系による方法が開示されおり、この方法では、得られるアルコールのL/B比は最大で7.7(直鎖選択性=89%)にまで改善されている。
しかしながら、本手法においては、共存するロジウム−単座トリアルキルホスフィン触媒により、低い直鎖選択性のアルデヒドの生成が併発的に進行するため、得られるアルコールのL/B比は必ずしも十分に高い値となっていない。
また、特許文献3においては、ロジウム−トリアルキル型二座ホスフィン触媒系による手法が開示されているが、得られるアルコールのL/B比は最大で6.3(直鎖選択性=86%)に留まっている。
上述のように、ロジウム触媒を用いた一段階の反応工程でオレフィン原料からアルコールを製造する手法を分類するならば、大きく2つのグループに分類することができる。
即ち、第1の方法は、非特許文献1、非特許文献2、及び特許文献1に記載されるような、1種類の触媒系で行なう方法であり、第2の方法は、特許文献2に記載されるような、高直鎖選択性のアルデヒドを製造する触媒と当該アルデヒドを水素化させる触媒との2種類の触媒を併用する方法である。
後者の手法においては、系中で生成してくるアルデヒドの効率的な水素化反応が重要な要素となってくる。
従来、アルデヒドのような極性官能基(カルボニル基)を持つ基質を選択的に水素化させる触媒としては、非特許文献3や非特許文献4の総説に紹介されているように多種多様な触媒が知られている。しかしながら、こうした水素化反応用の触媒は、非特許文献5にも記載されているように、通常、ヒドロホルミル化反応雰囲気のような一酸化炭素(CO)ガスの存在下では水素化反応用触媒にCOが強固に配位し、被毒を受けて触媒活性が大きく低下してしまうことが知られている。
一段の反応工程で、より直鎖選択性が高いアルコールを直接製造可能な新たな方法としては、特許文献4に、従来から知られている高い直鎖選択性を発現させるロジウム−二座有機リン系化合物からなるヒドロホルミル化反応用触媒に、反応系中で生成するアルデヒドの選択的水素化反応用触媒としてロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を共存させて反応を行なうことで、直鎖選択性が大きく改善されたアルコールを一段階の反応工程で製造することができることが記載されている。
欧州特許0420510号公報 特開2006−312612号公報 特開2009−029712号公報 特開2010−215604号公報
J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1990,P165 J.Chem.Soc.,DaltonTrans.,1996,p1161 Chem.Soc.Rev.,2006,35,p237 Chem.Commun.,2007,5134 J.Mol.Catal.A:Chem.1999,148,p69
上述した通り、ロジウム−トリアルキルホスフィン触媒を用いれば、一段階の反応工程で原料のオレフィン性化合物からアルコールを製造することは可能であるが、目的とする直鎖型のアルコールの選択性が低いことが大きな問題として残っていた。
一方で、工業的に製造されるアルコールは、エステル化反応によりポリエステル樹脂や可塑剤などに多く利用されるが、エステル化反応の反応性や製品エステルの性能の観点から、原料となるアルコールは末端アルコールであることが多い。そのため、上述のようなアルコール製造プロセスの原料オレフィン性化合物としては、末端オレフィン(α−オレフィン)が有利である。
しかし、従来のアルコール製造プロセスでは、末端オレフィンを原料としても、末端アルコールの収率が低い欠点があり、特許文献4の方法で、末端オレフィンを原料として使用した場合でも、末端オレフィンが反応系内で熱的により安定な内部オレフィンに異性化し、それにヒドロホルミル化反応が進行した副生物が生成するため目的物の収量が低下する問題があった。まして、内部オレフィン性化合物を原料として用いた場合に、一段階の反応でオレフィンの末端異性化反応と同時にヒドロホルミル化反応と水添反応により、末端アルコールを効率良く製造することは困難であり、従来において、このような技術は知られていなかった。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。
すなわち、本発明の目的は、触媒の存在下、内部オレフィン性化合物を水素及び一酸化炭素と反応させて一段階の反応工程でアルコールを製造する方法において、従来よりも高い直鎖選択性を有する末端アルコールを高収率で製造する方法を提供することに存する。
本発明者らは、内部オレフィン性化合物から高い直鎖選択性を有するアルコールを一段階の反応工程で効率的に得る方法を鋭意検討していく中で、従来から知られている高い直鎖選択性を発現させるロジウム−二座有機リン系化合物からなるヒドロホルミル化反応用触媒に、反応系中で生成するアルデヒドの選択的水素化反応用触媒としてロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を共存させると共に、溶媒として極性溶媒、特に酸素原子などのヘテロ原子を有する溶媒を用いて反応を行なうことで、オレフィンのヒドロホルミル化反応時に内部オレフィンから末端オレフィンへの異性化反応も進行させることができ、生成した末端アルデヒドを選択的に水素化反応させて直鎖選択性が大きく改善された末端アルコールを一段階の反応工程で効率的に製造することができることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、下記[1]〜[7]に存する。
[1] ロジウム化合物、二座の有機リン化合物、及びロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を一種以上含む化合物の存在下に、極性溶媒を用いて内部オレフィン性化合物を水素及び一酸化炭素と反応させて末端アルコールを製造する末端アルコールの製造方法であって、該ロジウム化合物、二座の有機リン化合物、及びロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を一種以上含む化合物を、下記式で算出されるA値が1以上2.5以下となるように存在させることを特徴とする末端アルコールの製造方法。
Figure 0006007439
[2] 前記極性溶媒がヘテロ原子を含む化合物を含有することを特徴とする[1]に記載の末端アルコールの製造方法。
[3] 前記ロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属が、ルテニウム、イリジウム、パラジウム及び白金からなる群より選ばれる遷移金属であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の末端アルコールの製造方法。
[4] 前記ロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を一種以上含む化合物が、下記一般式(I)で表される有機基を含む助剤を有することを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の末端アルコールの製造方法。
−X−H …(I)
(式中、Xはヘテロ原子を含み、且つ、該ヘテロ原子が水素原子と結合する連結基を表す。)
[5] 前記助剤が、少なくとも一つの窒素原子を有し、該窒素原子で前記ロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属に配位しており、該窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合していることを特徴とする[4]に記載の末端アルコールの製造方法。
[6] 前記助剤が、2つ以上の結合点で、前記ロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属に配位する多座配位子の構造を有していることを特徴とする[5]に記載の末端アルコールの製造方法。
[7] 前記反応時の一酸化炭素分圧を0.1MPa以上、0.5MPa以下とすることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載の末端アルコールの製造方法。
本発明により、触媒の存在下、内部オレフィン性化合物を原料として用いてこれを水素及び一酸化炭素と反応させて、一段階の反応工程で、従来よりも高い直鎖選択性で末端アルコールを効率的に製造することができる。
実施例において用いた触媒量比の関係を示すグラフである。
以下に、本発明の末端アルコールの製造方法の実施の形態につき詳細に説明する。
本発明の末端アルコールの製造方法は、
ロジウム化合物、
二座の有機リン化合物、
及び
ロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を一種以上含む化合物
の存在下に、極性溶媒を用いて、内部オレフィン性化合物を水素及び一酸化炭素と反応させて末端アルコールを製造することを特徴とする。
即ち、本発明においては、原料オレフィンとして内部オレフィン性化合物を用いる末端アルコールの製造において、従来から知られている高い直鎖選択性を発現させるロジウム−二座有機リン系化合物からなるヒドロホルミル化反応用触媒を形成するためのロジウム化合物及び二座の有機リン化合物と、反応系内で生成するアルデヒドの選択的水素化反応用触媒を形成するためのロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を含む化合物(以下「水素化触媒用遷移金属化合物」と称す場合がある。)とを併用すると共に、溶媒として極性溶媒を用いることにより、オレフィンのヒドロホルミル化反応時に内部オレフィンから末端オレフィンへの異性化反応をも進行させ、生成した末端アルデヒドを選択的に水素化反応させて、末端アルコールを製造することを特徴とする。この反応系内で生成するアルデヒドの選択的水素化反応用触媒は、特に特定の助剤を含む遷移金属錯体化合物であることが好ましい。
[ヒドロホルミル化反応用触媒]
<ロジウム化合物>
本発明に係るヒドロホルミル化反応用触媒として用いることができるロジウム化合物は、ヒドロホルミル化反応に対する触媒作用を発揮するものであれば良く、特に制限はないが、例えばその形態としては、アセチルアセトネイト化合物、ハライド、硫酸塩、硝酸塩、有機塩、無機塩、アルケン配位化合物、アミン配位化合物、ピリジン配位化合物、一酸化炭素配位化合物、ホスフィン配位化合物、ホスファイト配位化合物等を挙げることができる。
具体的には、RhCl、RhI、Rh(NO、Rh(OAc)、RhCl(CO)(PPh、RhH(CO)(PPh、RhCl(PPh、Rh(acac)、Rh(acac)(CO)、Rh(acac)(cod)、[Rh(OAc)、[Rh(OAc)、[Rh(OAc)(cod)]、[RhCl(CO)]、[RhCl(cod)]、Rh(CO)12等のロジウム化合物が挙げられる。なお、以上の例示において、codは1,5−シクロオクタジエンを、acacはアセチルアセトネイトを、Acはアセチル基を、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
ロジウム化合物の種類は特に制限されず、活性なロジウム錯体種であれば、単量体、二量体、三量体以上の多量体の何れであっても構わない。
ロジウム化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
ロジウム化合物の使用量については特に制限はないが、触媒活性と経済性の観点から、反応媒体中のロジウム原子の重量濃度として、通常0.1ppm以上、好ましくは1ppm以上、より好ましくは10ppm以上であり、通常10000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。
<二座の有機リン化合物>
本発明に用いることのできる二座の有機リン系化合物(以下「有機リン系配位子」と称す場合がある。)は、好ましくは、ロジウム化合物と共に用いて、オレフィン性化合物と水素及び一酸化炭素との反応でアルデヒドを製造する場合に、得られるアルデヒドのL/B比が4.0以上、すなわち直鎖選択性が80%以上となる能力を有する二座の有機リン系化合物であり、特にその構造に制限はない。
即ち、高い直鎖選択性を示すアルデヒドを生成し得る配位子であるほど、得られるアルコールの直鎖選択性が高まる傾向があるため、より直鎖選択性の高い二座の有機リン系化合物を用いることが好ましい。上記の好ましい二座の有機リン系化合物の選別基準として、実際にアルコールを製造しようとする条件において事前に反応評価を実施し、その条件下で得られるアルデヒドの直鎖選択性が80%以上を示すものが好ましいが、より好ましくは85%以上の直鎖選択性を示すものである。
一般的に、高い直鎖選択性を示すアルデヒドを生成させる二座の有機リン系化合物であるためには、遷移金属に2つのリン原子で挟むようにキレート配位する構造であることが好ましい。また、遷移金属に配位可能なリン原子は三価のリン原子である必要があるが、三価のリン原子には3つの共有結合部位があり、それぞれが炭素原子、酸素原子、窒素原子等、様々な原子と共有結合する可能性が考えられるため、多種多様な二座の有機リン系化合物の可能性が考えられる。しかしながら、合成の容易さ、配位子としての性能、安定性等を考慮すると、二座の有機リン系化合物の各リンユニットは、リン原子に3つの炭素原子が結合したホスフィンタイプ、リン原子に2つの炭素原子と1つの酸素原子が結合したようなホスフィナイトタイプ、リン原子に1つの炭素原子と2つの酸素原子が結合したようなホスホナイトタイプ、リン原子に3つの酸素原子が結合したようなホスファイトタイプのいずれかであることが好ましい。
その場合、二座の有機リン系化合物の2つのリンユニットは、ホスフィン−ホスフィン化合物(二座ホスフィン化合物)のように同じタイプのものであっても、ホスフィン−ホスファイト化合物のように異なるタイプの化合物であっても構わない。しかしながら、それらの中でも、二座ホスフィン化合物、及び二座ホスファイト化合物が好ましく、特に、二座ホスフィン化合物が好ましい。
従来の技術において、高い直鎖選択性を示すアルデヒドを生成する二座ホスフィン化合物、及び二座ホスファイト化合物としては、下記一般式(II)〜(IV)で表される基本骨格を有するものが知られており、本発明においてもこのような二座ホスフィン化合物、及び二座ホスファイト化合物を用いることが好ましい。
Figure 0006007439
(式中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、或いはエステル基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R15とR16、R16とR17、R17とR18、或いはこれらが有する任意の2つの置換基が、それぞれ互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。
21〜R24は、それぞれ独立に、鎖状又は環状のアルキル基、或いはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R21とR22、及びR23とR24は、それぞれ、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。)
Figure 0006007439
(式中、R31〜R36は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、或いはエステル基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R31とR32、R32とR33、R34とR35、R35とR36、或いはこれらが有する任意の2つの置換基が、それぞれ互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。
41〜R44は、それぞれ独立に、鎖状又は環状のアルキル基、或いはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R41とR42、及びR43とR44は、それぞれ、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。
及びAは、それぞれ独立に、O、S、SiR、NR、又はCRを表し、ここで、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、鎖状又は環状のアルキル基、或いはアリール基を表す。)
Figure 0006007439
(式中、R51〜R58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アシル基、アシロキシ基、カルボキシ基、或いはエステル基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、或いはこれらが有する任意の2つの置換基が、それぞれ互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。
61〜R64は、それぞれ独立に、鎖状又は環状のアルキル基、或いはアリール基を表す。これらの基は、更に置換基を有していても良く、R61とR62、及びR63とR64は、それぞれ、互いに結合を形成して環状構造を形成しても良い。)
上記一般式(II)〜(IV)で表される二座の有機リン系化合物のうち、高い直鎖選択性を示すアルデヒドを生成させるという観点で、より好ましくは、一般式(II)のR21〜R24、一般式(III)のR41〜R44、及び一般式(IV)のR61〜R64で表される二座の有機リン系化合物の末端置換基が、置換基を有していても良いアリール基であるものである。そのような好ましい構造の二座の有機リン系化合物の具体例を以下に示す。以下の例示化合物のうち、L−1〜L−20が好ましい二座ホスフィン化合物であり、L−21〜L−30が好ましい二座ホスファイト化合物である。
以下において、「Me」はメチル基を表し、「Bu」はt−ブチル基を表す。
Figure 0006007439
Figure 0006007439
Figure 0006007439
これらの二座の有機リン化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明においては、前述のロジウム化合物と、上記の二座の有機リン系化合物からなるロジウム錯体化合物を用いることによって、ヒドロホルミル化反応が進行し、高い直鎖選択性を有するアルデヒドを反応系内に生成させることができる。
二座の有機リン系化合物の使用量は特に制限されるものではなく、反応成績、触媒活性、及び触媒安定性等に対して望ましい結果が得られるように任意に設定することができるが、通常は、ロジウム化合物1モル当たり0.1モル以上、好ましくは0.5モル以上、より好ましくは1モル以上であり、通常500モル以下、好ましくは100モル以下、より好ましくは通常50モル以下である。
[アルデヒドの選択的水素化反応用触媒]
<水素化触媒用遷移金属化合物>
本発明においては、上記ロジウム化合物及び二座の有機リン化合物と共に、アルデヒドの選択的水素化反応用触媒として、ロジウム以外の周期表第8〜10族(IUPAC無機化学命名法改訂版(1998)による)に属する遷移金属からなる群より選ばれる一種以上の遷移金属を含む化合物を用いる。
この水素化触媒用遷移金属化合物としては、具体的には、鉄化合物、ルテニウム化合物、オスミウム化合物、コバルト化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物及び白金化合物等が挙げられるが、中でもルテニウム化合物、イリジウム化合物、パラジウム化合物及び白金化合物が好ましく、特にルテニウム化合物が好ましい。
これらの化合物の形態は任意であるが、具体例としては、上記遷移金属の酢酸塩、アセチルアセトネイト化合物、ハライド、硫酸塩、硝酸塩、有機塩、無機塩、アルケン配位化合物、アミン配位化合物、ピリジン配位化合物、一酸化炭素配位化合物、ホスフィン配位化合物、ホスファイト配位化合物等が挙げられる。
水素化触媒用遷移金属化合物の具体例を列記すると、鉄化合物としては、Fe(OAc)、Fe(acac)、FeCl、Fe(NO等が挙げられる。ルテニウム化合物としては、RuCl、RuBr、RuI、Ru(OAc)、Ru(acac)、RuCl(PPh、RuCl(CO)(PPh、RuH(CO)(PPh等、CpRuCl(PPh、CpRuCl多核体、CpRu(cod)Cl、Ru(cod)Cl多核体、Ru(benzene)Cl二核体、Ru(p-cymene)Cl二核体、Ru(CO)12等が挙げられる。オスミウム化合物としては、OsCl、Os(OAc)等が挙げられる。コバルト化合物としては、Co(OAc)、Co(acac)、CoBr、Co(NO等が挙げられる。イリジウム化合物としては、IrCl、Ir(OAc)、[IrCl(cod)]が挙げられる。ニッケル化合物としては、NiCl、NiBr、Ni(NO、NiSO、Ni(cod)、NiCl(PPh等が挙げられる。パラジウム化合物としては、PdCl、PdCl(cod)、PdCl(PPh、Pd(PPh、Pd(dba)、KPdCl、PdCl(CHCN)、Pd(NO、Pd(OAc)、PdSO、Pd(acac)等が挙げられる。白金化合物としては、Pt(acac)、PtCl(cod)、PtCl(CHCN)、PtCl(PhCN)、Pt(PPh、KPtCl、NaPtCl、HPtClが挙げられる。なお、以上の例示において、codは1,5−シクロオクタジエンを、dbaはジベンジリデンアセトンを、acacはアセチルアセトネイトを、Acはアセチル基を、Phはフェニル基を、Cpはシクロペンタジエニル基を、Cpはペンタメチルシクロペンタジエニル基をそれぞれ表す。
水素化触媒用遷移金属化合物の種類は特に制限されず、活性な金属錯体種であれば、単量体、二量体、三量体以上の多量体の何れであっても構わないが、好ましい水素化触媒用遷移金属化合物の種類としてはハライド化合物を挙げることができ、特に好ましくは塩化物化合物を挙げることができる。
水素化触媒用遷移金属化合物の使用量については特に制限はないが、前述したヒドロホルミル化反応用触媒によるアルデヒドの生成速度と当該選択的水素化反応用触媒によるアルデヒドの水素化反応速度との関係や経済性の観点から選ばれる。アルデヒドの不安定さを考慮すると、反応系内で生成したアルデヒドは比較的速やかに水素化されることが好ましく、この観点から、ヒドロホルミル化反応用触媒としてのロジウムの使用量に対する水素化触媒用遷移金属化合物の遷移金属換算の使用割合として、通常0.01モル倍以上、好ましくは0.1モル倍以上、より好ましくは1モル倍以上であり、通常1000モル倍以下、好ましくは100モル倍以下、より好ましくは10モル倍以下である。
<助剤>
本発明においては、アルデヒドの選択的水素化反応用触媒として上述した種々の水素化触媒用遷移金属化合物を任意に用いることができるが、原料の内部オレフィン性化合物を水素化させることなく、反応系中で生成したアルデヒドのみを選択的に水素化させるためには、当該選択的水素化反応用触媒の中心金属には、反応中に下記一般式(I)で表される有機基を含む助剤が配位していることが好ましい。
−X−H …(I)
(式中、Xはヘテロ原子を含み、ヘテロ原子で水素原子と結合する2価の連結基を表す。)
上記一般式(I)におけるXのヘテロ原子とは、炭素原子、水素原子以外の原子であって、化学的に安定な二本以上の結合を形成できるものであれば特に制限されないが、窒素原子又は酸素原子が好ましく、特に窒素原子が好ましい。
また、一般式(I)で表される有機基を含む助剤の構造的特徴として、当該助剤が、水素化触媒用遷移金属化合物のロジウム以外の周期表第8〜10族遷移金属に配位した場合に、当該ヘテロ原子は、遷移金属の中心から4Å以内、好ましくは3Å以内に位置している、若しくは位置できることが好ましい。これは下記理由による。
通常、アルデヒドのカルボニル基の炭素原子は弱い正電荷を帯び、酸素原子は弱い負電荷を帯びているが、負に帯電した水素原子と正に帯電した水素原子が近接した状態を触媒的に構築してやれば、静電気親和力によりカルボニル基を選択的に水素化することができる。すなわち、一般式(I)で表される有機基を含む助剤を持つ周期表第8〜10族遷移金属錯体で水素化反応が進行する場合には、以下に示すように、ロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属Mに結合した水素原子は負電荷を帯び、助剤に含まれるヘテロ原子Qに結合した水素原子は正電荷を帯びた活性種が形成され、この極性点に静電気力で引かれるようにアルデヒドのカルボニル基が近づき選択的な水素化が進行することとなる。この場合、金属中心Mとヘテロ原子Qの距離が近接していた方が効率的にカルボニル基C=Oを引き寄せることができ、より選択的なアルデヒドRC(=O)Hの水素化が進むこととなる。
Figure 0006007439
(上記式中、Mはロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を表し、Qは窒素原子又は酸素原子等の助剤中のヘテロ原子を表す。Rは一価の有機基を表す。)
因みに、ヘテロ原子Qに結合した水素原子をアルデヒドRC(=O)Hに渡した後には、ヘテロ原子Q上に非共有電子対が残るが、通常、その非共有電子対は、金属中心Mもしくは隣接炭素と結合することで安定化するか、そのままヘテロ原子Q上に保持された状態で安定化する。再び水素分子が金属中心Mに配位した際には、水素−水素結合のヘテロ開裂(プロトン:Hとヒドリド:Hへの開裂)を経て、活性種が再生することとなる。
本発明に好適な、前記一般式(I)で表される有機基を含む助剤の具体的な構造としては、以下のA−1〜A−68等を挙げることができる。
Figure 0006007439
Figure 0006007439
Figure 0006007439
Figure 0006007439
Figure 0006007439
上述した助剤の中でも、特に、ヘテロ原子として少なくとも一つの窒素原子を有し、当該窒素原子で水素化触媒用遷移金属化合物のロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属に配位し、また、当該窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合している構造の化合物が好ましい。即ち、助剤としては、少なくとも一つのN−H結合を有しているアミン系化合物であり、下記一般式(i)で表されるものが好ましい。
NHR …(i)
(式中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい一価の有機基を表し、Rは置換基を有していてもよい一価の有機基を表す。)
このようなアミン系化合物の具体例としては、上記例示化合物のA−9〜A−68を挙げることができる。
中でも、この助剤は、窒素原子で水素化触媒用遷移金属化合物のロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属に配位する以外に、更に1つ以上の結合点で当該遷移金属に配位する、即ち、水素化触媒用遷移金属化合物の遷移金属に対して2つ以上の結合点で配位する、いわゆる二座以上の多座配位子の構造を有していることが更に好ましい。
一般的にアミン配位子や有機リン配位子のように金属中心に非共有電子対を配位させることで結合する配位子は、解離平衡が存在し、反応条件下のような高い温度条件において配位子の配位と解離が速い速度で起こっている。本発明のように、ヒドロホルミル化反応用のロジウムの配位子として有機リン系化合物を用い、水素化反応用のロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属の助剤としてアミン系化合物を用いる場合には、それぞれの金属から配位子や助剤が解離し、それらの配位交換が起こってしまう可能性が考えられる。このような配位交換は、それぞれの金属の望ましい反応性を低下させる原因となるので、極力配位交換は抑制すべきである。そのためにも本アミン系化合物の助剤は多座配位子の構造を取り、水素化反応用触媒の金属中心に強く配位させておくことが望ましい。
本アミン系化合物の窒素原子以外の結合点としては、リン原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、珪素原子、他の窒素原子を挙げることができる。このような好ましい多座配位子構造を取るアミン系化合物の具体例としては、上記例示化合物のA−26〜A−68を挙げることができる。
このような助剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
上述の助剤の使用量に関しては特に制限はないが、通常、前述の水素化触媒用遷移金属化合物に対する割合として、通常0.1モル倍以上、好ましくは0.5モル倍以上、より好ましくは1モル倍以上であり、通常100モル倍以下、好ましくは10モル倍以下、より好ましくは5モル倍以下である。
<触媒の調製方法>
アルデヒドの選択的水素化反応用触媒の調製は、別途設けた触媒調製槽で予め調製してから当該触媒を反応系に加えても良いし、水素化反応用触媒原料である水素化触媒用遷移金属化合物と配位子をそれぞれ個別に反応系に添加して反応系内で触媒調製を行っても良い。また、反応後、生成物系と触媒系とを分離し、その触媒を再び反応系にリサイクルして用いても良い。この場合、触媒の劣化や消失の度合いに応じて、適宜水素化触媒用遷移金属化合物、及び配位子、また、必要に応じて後述する塩基性化合物のいずれか、又はすべてを追加して補充することが望ましい。
アルデヒドの選択的水素化反応用触媒の調製において、前述した好ましい水素化触媒用遷移金属化合物であるハライド化合物を用いる場合には、通常は前記一般式(I)で表される有機基を含む助剤の存在下、塩基性化合物を加えて水素化触媒用遷移金属化合物からハライドを除去することで活性種を調製することが好ましい。
ここで、塩基性化合物としては、無機系の塩基、有機系の塩基、ルイス塩基等の塩基を使用することができる。具体的には、無機系の塩基としては、LiOH、NaOH、KOH、CsOH等のアルカリ金属の水酸化物、LiCO、NaCO、KCO、CsCO等のアルカリ金属の炭酸塩、LiHCO、NaHCO、KHCO、CsHCO等のアルカリ金属の炭酸水素塩、Mg(OH)、Ca(OH)、Ba(OH)等のアルカリ土類金属の水酸化物、MgCO、CaCO、BaCO等のアルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。
また、有機系の塩基としては、メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、t−ブトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、t−ブトキシカリウム等のアルカリ金属のアルコシキド化合物、酢酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、酢酸カリウム、酪酸カリウム等のアルカリ金属のカルボン酸塩、ピリジン、4−メチルピリジン等のピリジン類、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−オクチルアミン、1,5−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の第3級アミン類、ピペリジン、N−メチルピペリジン、モルホリン等のその他のアミン類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(略称:DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(略称:DBN)等の環状アミジン誘導体、t−ブチルイミノトリス(ジメチルアミノホスホラン)(略称:P−t−Bu)、1−t−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]−2Λ,4Λ−カテナジ(ホスファゼン)(略称:P−t−Bu)等のホスファゼン塩基、2,8,9−トリイソプロピル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン、2,8,9−トリメチル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン等のプロアザホスファトラン塩基等が挙げられる。
これらの塩基の中でも、水素化触媒用遷移金属化合物からハライドを確実に引き抜けるような比較的強い塩基性化合物が好ましく、LiOH、NaOH、KOH、CsOH等のアルカリ金属の水酸化物、LiCO、NaCO、KCO、CsCO等のアルカリ金属の炭酸塩、メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、t−ブトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、t−ブトキシカリウム等のアルカリ金属のアルコシキド化合物が好ましい。
これらの塩基性化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これらの塩基性化合物を使用する場合、当該塩基性化合物の使用量に関しては特に制限はないが、水素化触媒用遷移金属化合物に対して、通常0.1モル倍以上、好ましくは0.5モル倍以上、より好ましくは1モル倍以上であり、通常100モル倍以下、好ましくは10モル倍以下、より好ましくは5モル倍以下である。
水素化反応用触媒の調製にあたり、水素化触媒用遷移金属化合物としてハライド化合物を用い、塩基性化合物を加えてハライドの除去を行う場合には、それぞれの触媒成分を個別に反応系に添加して反応系内で触媒調製するよりも、別途設けた触媒調製槽で予め触媒を調製してから当該触媒を反応系に加える方が好ましい。これは、塩基性化合物を必要以上に反応系に加えると、ヒドロホルミル化反応用触媒によって生成するアルデヒドがアルドール縮合を受け、一部消失してしまう可能性が考えられるからである。また、遷移金属のハライド化合物のハライドがしばしばヒドロホルミル化反応用触媒の被毒源となり得るためである。
また、前述したヒドロホルミル化反応用触媒と選択的水素化反応用触媒の接触方法については特に制限されないが、ロジウム化合物と二座有機リン系化合物を先に混合してヒドロホルミル化反応用触媒前駆成分を調製し、その後、水素化反応用触媒成分を加えて触媒調製を行なっても良いし、水素化反応用触媒の水素化触媒用遷移金属化合物と一般式(I)で表される有機基を含む助剤、場合によっては更に塩基性化合物を先に混合して水素化反応用触媒前駆成分を調製し、その後にヒドロホルミル化反応用触媒成分を加えて触媒調製を行なっても良い。又は、両触媒成分を同時に混合して調製しても良い。
しかしながら、前述したように、ヒドロホルミル化反応用触媒は、別途設けた触媒調製槽で予め調製した上でヒドロホルミル化反応用触媒と接触させる方が好ましい。この際、前述の如く、水素化触媒用遷移金属化合物としてハライド化合物を用いた場合、ハライドがヒドロホルミル化反応用触媒を被毒することを防止するために、別途設けた触媒調製槽で事前にハライドを除去しておくことが好ましい。具体的には前述したように、塩基性化合物との反応でハライドを塩の形で水素化反応用触媒原料から引き抜き、場合によっては濾過、水洗、デカンテーション等の手法で除去する方法などが挙げられる。
また、触媒調製全般において言えることとして、反応系で速やかに触媒反応を開始させるようにするためにも、触媒は溶解した状態で反応系に導かれることが好ましい。この場合、触媒を溶解させる溶媒としては、後述のものを用いることができる。
また、場合によっては、触媒を調製して反応系に導入する前に、加熱処理や触媒活性種への変換に必要なガス処理、例えば水素や一酸化炭素等のガスとの加圧接触を予め行ってから触媒を反応系に導入しても良い。
[内部オレフィン性化合物]
本発明の末端アルコールの製造方法に適用される原料内部オレフィン性化合物としては、炭素数4以上の化合物であって分子内にオレフィン性二重結合を少なくとも1つ有する化合物であれば特にその構造に制限されるものではなく、飽和炭化水素基のみによって置換されたオレフィン性化合物、不飽和炭化水素基を含む炭化水素基によって置換されたオレフィン性化合物、又は、ヘテロ原子を含む官能基により置換されたオレフィン性化合物等、いずれの内部オレフィン性化合物にも適用できる。
具体的な例を挙げると、シス及びトランス−2−ブテン、シス及びトランス−2−ヘキセン、シス及びトランス−3−ヘキセン、シス及びトランス−2−オクテン、シス及びトランス−3−オクテン、シス及びトランス−4−オクテン等の直鎖状内部オレフィン性炭化水素、ブテン類の二量化により得られるオクテン、プロピレンや1−ブテンやイソブテン等の低級オレフィンの二量体〜四量体のようなオレフィンオリゴマー異性体混合物等の内部オレフィン性炭化水素混合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基を含む炭化水素基により置換された内部オレフィン性化合物の例としては、β−メチルスチレン、芳香族基を有する内部オレフィン性化合物、2,4−ヘキサジエン、2,6−オクタジエンのようなジエン化合物等が挙げられる。その他、ヘテロ原子を含む官能基により置換された内部オレフィン性化合物の例としては、オレフィン性二重結合を有するエーテル類、オレフィン性二重結合を有するアルコール類、オレイン酸メチルなどのオレフィン性二重結合を有するエステル類のほか、6−オクテン−1−アール、クロトンアルデヒド等が挙げられる。
上記の内部オレフィン性化合物の内、炭素数4以上の直鎖状の内部オレフィン性化合物が好ましく、特に炭素数4以上の直鎖状β−オレフィン性炭化水素が好ましい。
なお、内部オレフィン性化合物の炭素数の上限については特に制限はないが、溶解性の問題、粘度の問題、原料確保の容易さなどを考慮して通常50以下である。
[極性溶媒]
本発明においては、極性溶媒を用いて反応を行うことを必要とする。内部オレフィン性化合物よりもアルデヒドへの選択的水添反応を優先させるために、触媒は分子内に電荷の偏りを有する設計がなされているが、同時に不安定である。極性溶媒を用いることで溶媒和の作用で触媒自体の安定性を改善し、またアルデヒドの水素化反応中の遷移状態も安定化することで、効率よくアルデヒドの水添反応が進行すると考えられる。
本発明で用いる極性溶媒のうち、好ましい溶媒としては、基質の内部オレフィン性化合物、ヒドロホルミル化反応用触媒、配位子となる二座の有機リン化合物およびアルデヒドの選択的水素化反応用触媒を均一に溶解できるヘテロ原子を含有する炭化水素溶媒であり、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、塩素原子等が挙げられる。
また、本発明における選択的水素化反応用触媒の好適な助剤として弱塩基性を示すアミン系化合物をしばしば用いるため、アミンの配位力を保持できる中性又はアルカリ性を示す溶媒を使用することが好ましい。
極性溶媒の具体例としては、水の他、例えば、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジアリルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等のエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ジ(n−オクチル)フタレイト等のエステル類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブチルアルコール、n−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール等のアルコール類などが挙げられる。
この他、本反応の副生物として生成するアルデヒドのアセタール反応体やアルドール縮合体といった目的とするアルコールよりも高い沸点を有する高沸物が挙げられる。
これらのうち、極性溶媒としては、特にテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が好ましい。
これらの極性溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
極性溶媒の使用量は、反応媒体(反応系内の全物質)の総重量に対して通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上であり、通常95重量%以下であり、好ましくは90重量%以下である。極性溶媒の使用量が多過ぎると基質濃度が低下し反応速度が低下する。少な過ぎると触媒の安定化の効果が得られなくなり、やはり反応速度の低下が生じる。
[反応条件]
本発明の末端アルコールの製造方法における好適な反応条件は次の通りである。
<反応圧力>
水素分圧、一酸化炭素分圧、原料、生成物、溶媒等の蒸気圧の総和で形成される反応圧力は、通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、通常10MPa以下、好ましくは8MPa以下、より好ましくは5MPa以下である。
反応圧力が低すぎるとヒドロホルミル化反応用触媒及びアルデヒドの選択的水素化反応用触媒の触媒金属化合物が失活してメタル化してしまう懸念がある他、ヒドロホルミル化反応用触媒及びアルデヒドの選択的水素化反応用触媒の触媒活性自体十分に発現せず、アルコール収率が低下することが予想される。また、逆に高すぎると得られるアルコールの直鎖選択性が低下する傾向が見られるため好ましくない。
また、特に、水素分圧は好ましくは0.005MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上であり、好ましくは2.5MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。水素分圧が低すぎると反応活性の低下が懸念され、高すぎると原料オレフィン性化合物の水素化反応の進行の伴う浪費が予想される。
一酸化炭素分圧は好ましくは0.005MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、好ましくは2.5MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。一酸化炭素分圧が低すぎると反応活性の低下、特にヒドロホルミル化反応用触媒のメタル化が懸念され、高すぎると得られるアルコールの直鎖選択性の低下が予想されるほか、水素化反応用触媒の著しい活性低下が予想される。
<触媒量比>
本発明に係る触媒系は、ヒドロホルミル化反応用触媒のロジウム化合物及び二座の有機リン系化合物(有機リン系配位子)と、アルデドの選択的水素化反応用触媒との組み合わせからなり、この組み合わせの量比が反応成績に影響する。
原料の内部オレフィン性化合物からの末端オレフィンへの異性化反応は、ヒドロホルミル化反応用触媒のロジウム金属上で起こっていると考えられるが、そこに選択的水素化反応用触媒の水素化触媒用遷移金属化合物が共存すると、水素化触媒用遷移金属化合物と有機リン系配位子とで錯体を形成することで、反応系内の遊離の有機リン系配位子濃度が低下してしまい、有機リン系配位子濃度の低下で直鎖選択性(L/B比)が低下してしまうが、逆に有機リン系配位子が多すぎると選択的水素化反応用触媒を失活させてしまう。このため、有機リン系配位子の量は、ヒドロホルミル化反応用触媒のロジウム化合物と選択的水素化反応用触媒の水素化触媒用遷移金属化合物に対して、所定の範囲内に設定されることが好ましい。
一方、オレフィンのヒドロホルミル化反応とアルデヒドの選択的水素化反応を効率よく進行させるためには、ヒドロホルミル化反応用触媒に加える選択的水素化反応用触媒の量は、多い方がアルコールへの転化が速くなり好ましいが、多すぎると原料オレフィンの水添が進行して、原料オレフィンを損失するため好ましくない。このため、ヒドロホルミル化反応用触媒に対する選択的水素化反応用触媒の量比も設定することが好ましく、前述のように、ヒドロホルミル化反応用触媒としてのロジウムの使用量に対する水素化触媒用遷移金属化合物の遷移金属換算の使用割合として、通常0.01モル倍以上、好ましくは0.1モル倍以上、より好ましくは1モル倍以上であり、通常1000モル倍以下、好ましくは100モル倍以下、より好ましくは10モル倍以下とされる。
本発明において、内部オレフィン性化合物を原料として用い、内部オレフィンの末端オレフィンへの異性化反応と、オレフィンのヒドロホルミル化反応と、オレフィンのヒドロホルミル化反応で生成したアルデヒドの選択的水素化反応との3つの反応のすべてをバランスよく進行させて、原料の内部オレフィン性化合物から一段階で末端アルコールを効率よく製造するためには、下記式で算出される触媒の量比Aが0.1以上20以下となるようにこれらを併用することが好ましく、より好ましくは、0.5以上10以下であり、特に好ましくは1以上2.5以下である。触媒量比Aがこの範囲となるように、ヒドロホルミル化反応用触媒のロジウム化合物及び有機リン系配位子と、選択的水素化反応用触媒の水素化触媒用遷移金属化合物を用いることにより、内部オレフィン性化合物から末端アルコールを効率的に製造することが可能となる。
Figure 0006007439
<水素/一酸化炭素モル比>
水素と一酸化炭素のモル比は、1:10〜10:1であり、より好ましくは1:5〜5:1であり、更に好ましくは1:2〜2:1である。
<反応温度>
反応温度は、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。即ち、本発明の反応においては80℃以上の反応温度で実施することが好ましい。これは、低い温度条件では一酸化炭素が選択的水素化反応用触媒に強く配位し、水素化反応触媒活性を大きく低下させるからであり、反応温度を高めることによって選択的水素化反応用触媒から熱エネルギーによって一酸化炭素が解離できる条件にする必要があるからである。また、逆に、反応温度が高すぎると得られるアルコールの直鎖選択性の低下や配位子の熱分解による消失やヒドロホルミル化反応用触媒又はアルデヒドの選択的水素化反応用触媒の分解に伴う失活などが予想される。
<反応方式>
本発明の反応方式としては特に制限はなく、撹拌型反応槽、又は気泡塔型反応槽中で、連続式、半連続式、又はバッチ式操作のいずれでも容易に実施し得る。
<生成物の分離・回収>
未反応原料の内部オレフィン性化合物や生成物類と触媒との分離は、通常、単蒸留、減圧蒸留、薄膜蒸留、水蒸気蒸留等の蒸留操作のほか、気液分離、蒸発(エバポレーション)、ガスストリッピング、ガス吸収及び抽出等の公知の方法で行うことができる。
蒸留条件は特に制限されるものではなく、生成物の揮発性、熱安定性、及び触媒成分の揮発性、熱安定性等を考慮して望ましい結果が得られるように任意に設定されるが、通常、50〜300℃の温度、760〜0.01mmHgの圧力条件の範囲から選ばれる。
分離操作において、未反応の原料やアルコール前駆体のアルデヒド類が得られた場合には、反応工程にリサイクルし、再利用することがより経済的で望ましい。また、蒸留を行うに当たって、溶媒の使用は必須ではないが、必要に応じて生成物類や触媒成分に不活性な溶媒を存在させることができる。
分離した触媒を含む残液からは、公知の方法により触媒成分であるロジウムやロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を回収することができる。或いは残液の全量若しくは一部を反応工程にリサイクルして触媒を再利用することもできる。
[末端アルコールの収率]
本発明の反応における目的物は末端アルコールであるため、末端アルコールの収率に関しては40%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上である。
末端アルコールの収率を60%以上にするためには、基本的に反応を十分に押し切る条件(即ち、ほぼ全ての内部オレフィン性化合物原料を末端オレフィンに異性化させた上で生成物に転化させる条件)を採用すれば達成される。例えば、前述のA値を好適な範囲に調整することや、触媒濃度を高めること、反応ゾーンにおける滞留時間を長く取る等の手法が挙げられる。その他、比較的高い反応温度(例えば120〜160℃程度)や水素分圧を高める(例えば120〜160℃/0.5〜5MPa程度)など、アルコール生成に適した反応条件を採用すれば末端アルコールの収率を高めることができる。
[直鎖選択性]
本発明は、高い直鎖選択性を有する末端アルコールを製造することを目的とし、このため、本発明の末端アルコールの製造方法におけるL/B比は、10以上、特に20以上であることが好ましい。このようなL/B比を実現するために、本発明においては前述のヒドロホルミル化反応用触媒とアルデヒドの選択的水素化反応用触媒とを併用する他、例えば前述のA値を好適な範囲に調整する、ヒドロホルミル化反応時の圧力を調整する、或いは、更に一酸化炭素分圧をヒドロホルミル化反応の触媒活性に悪影響が出ない範囲内で極力低くすることが好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
触媒調製用のガラス容器を3つ用意し、各ガラス容器に窒素雰囲気下で、アルデヒドの選択的水素化反応用触媒原料の水素化触媒用遷移金属化合物としてCpRu(cod)Cl(5.7mg、0.015mmol)、水素化反応用触媒の助剤として前記化合物A−46(3.5mg、0.015mmol)、塩基性化合物としてt−ブトキシカリウム(1.7mg、0.015mmol)をそれぞれ加え、これらを順番にガラス容器A(水素化触媒用遷移金属化合物)、B(助剤)、C(塩基性化合物)とした。
別に、容器内に磁性攪拌子を入れた内容量50mlのステンレス鋼オートクレーブに、ヒドロホルミル化反応用触媒のロジウム化合物としてRh(acac)(CO)(5.2mg、0.020mmol)と、ヒドロホルミル化反応用触媒の配位子として前記二座の有機リン化合物L−22(42.9mg、0.040mmol)を量り取った。
次に、上記ガラス容器A、B、Cのそれぞれに溶媒として1,4−ジオキサン(0.5ml)を窒素雰囲気下で加え、各成分を溶解させた後、ガラス容器Aの溶液をキャヌラでガラス容器Bに移し、室温下で5分間攪拌後、更にガラス容器Bの溶液をキャヌラでガラス容器Cに移し、5分間攪拌した。また、上記オートクレーブに溶媒の1,4−ジオキサン(0.5ml)を窒素雰囲気下で加え、5分間攪拌した。
続いて、上記ガラス容器Cの溶液をキャヌラでオートクレーブに移し、ガラス容器C内を1,4−ジオキサン(2.0ml)で洗浄して洗液もオートクレーブに移した。更にオートクレーブにcis−2−デセン(反応原料)とn−ドデカン(GC分析の内部標準物質)の混合溶液(2/1 mol/mol)を448.9mg(cis−2−デセン:2.0mmol、n−ドデカン:1.0mmol)加えた。オートクレーブを密閉後、ガス導入バルブより速やかに水素/一酸化炭素混合ガス(混合比:1/1)を0.5MPaまで導入し、磁性攪拌子による800rpmの攪拌下、電気炉にて120℃に加熱しながら18時間反応させた(1,4−ジオキサン使用量は反応媒体の総重量に対して88重量%)。
反応終了後、室温まで冷却し、残存ガスを放圧した後、NMR及びガスクロマトグラフィーにて反応成績を解析した。
その結果、ウンデカナール収率は4.0%であり、ウンデカノール収率は62.2%であった。また、ウンデカノールにおける分岐型アルコール(2−メチル−1−デカノール等)に対する直鎖型アルコール(1−ウンデカノール)の比(L/B比)は17(直鎖選択性=94%)であった。その結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1における反応溶媒である1,4−ジオキサンをテトラヒドロフラン(THF)に変えた以外は同様にして反応を行った。その結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1における反応溶媒である1,4−ジオキサンをジメチルホルムアミド(DMF)に変えた以外は同様にして反応を行った。その結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例1における反応溶媒である1,4−ジオキサンをジメチルアセトアミド(DMA)に変えた以外は同様にして反応を行った。その結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1における反応溶媒である1,4−ジオキサンをトルエンに変えた以外は同様にして反応を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0006007439
実施例1〜4及び比較例1より、反応溶媒として極性溶媒を用いることにより、高い直鎖選択性で末端アルコールを製造することができることが分かる。
なお、実施例1〜4及び比較例1における触媒使用量は、ロジウム化合物Rh(acac)(CO):0.020mmol、ルテニウム化合物CpRu(cod)Cl:0.015mmol、有機リン系配位子L−22:0.040mmolであり、[M]/[Rh]=0.75、[L]/([Rh]+[M])=1.14で、前記A値は1.52である。
<実施例5−7>
実施例1におけるヒドロホルミル化反応圧力を表2に示す値に変えた以外は同様にして反応を行った。その結果を実施例1の結果と共に表2にまとめて示す。
Figure 0006007439
表2の結果から、ヒドロホルミル化反応圧力は高すぎても低すぎても直鎖選択性が低下しており、水素ガス分圧又は一酸化炭素分圧を制御して直鎖選択性を高めることができると考えられる。
<実施例8−10>
実施例1における有機リン系配位子L−22の添加量を、表3に示す値に変えた以外は同様にして反応を行った。その結果を実施例1の結果と共に表3にまとめて示す。
Figure 0006007439
表3の結果より、有機リン系配位子が多いと、基質である内部オレフィンの転化率と生成物の直鎖選択性があがる一方で、水素化反応は抑制されアルコールの収率が低下しており、プロセス要求によって触媒の最適濃度比が存在すると言える。
<実施例11−13>
実施例1における選択的水素化反応用触媒のルテニウム化合物CpRu(cod)Clと有機リン系配位子L−22の添加量を、表4に示す値に変えた以外は同様にして反応を行った。その結果を実施例1の結果と共に表4にまとめて示す。
Figure 0006007439
表4の結果より、ヒドロホルミル化反応用触媒の有機リン系配位子濃度は高いほうが好ましいが、有機リン系配位子と選択的水素化反応用触媒のルテニウム化合物量をともに増やすことが好ましいと言える。
なお、A値の異なる実施例1,8,9,10,11,12,13で採用した[M]/[Rh]の値をx軸に、[L]/([Rh]+[M])の値をy軸にプロットしたグラフを図1に示す。
図1より、A={[M]/[Rh]}/{[L]/([Rh]+[M])}であるグラフの傾きが0.5〜20、特に1〜2.5の範囲において、アルコール収率と直鎖選択性(L/B比)が共に高い結果が得られることが分かる。
<実施例14>
触媒調製用のガラス容器に、アルゴン雰囲気下、選択的水素化反応用触媒として下記構造のRu化合物(A)(16.3mg、Ru換算で0.030mmol)および1,4−ジオキサン(3.0ml)を加えて攪拌することで、水素化反応用触媒溶液を調製した。なお、この水素化反応用Ru触媒は、前記化合物A−2を配位子として持つ化合物と見なすことができる。
Figure 0006007439
別に、アルゴン雰囲気下、容器内に磁性攪拌子を入れた内容量50mlのステンレス鋼オートクレーブに、ヒドロホルミル化反応用触媒のロジウム化合物としてRh(acac)(CO)(5.2mg、0.020mmol)と、ヒドロホルミル化反応用触媒の配位子として前記二座の有機リン化合物L−22(42.9mg、0.040mmol)を量り取り、1,4−ジオキサン(1.0ml)を加えて攪拌することで、ヒドロホルミル化反応用触媒溶液を調製した。
次に、上記のオートクレーブに、アルゴン雰囲気下、水素化反応用触媒溶液および反応原料であるcis−2−オクテン(2.0mmol)とガスクロマトグラフィー分析の内部標準物質であるn−ドデカン(1.0mmol)を加え、オートクレーブを密閉した。その後、ガス導入バルブより速やかに水素/一酸化炭素混合ガス(混合比:1/1)を0.5MPaまで導入し、磁性攪拌子による800rpmの攪拌下、電気炉にて120℃に加熱しながら18時間反応させた。
反応終了後、室温まで冷却し、残存ガスを放圧した後、ガスクロマトグラフィーにて反応成績を解析した。結果を表5に示す。
<実施例15>
実施例14における反応原料をcis−2−オクテンからtrans−2−オクテン(2.0mmol)に変えた以外は同様にして反応を行なった。結果を表5に示す。
<実施例16>
実施例14における反応原料をcis−2−オクテンからtrans−4−オクテン(2.0mmol)に変えた以外は同様にして反応を行なった。結果を表5に示す。
<参考例1>
実施例14における反応原料をcis−2−オクテンから末端オレフィンである1−オクテン(2.0mmol)に変えた以外は同様にして反応を行なった。結果を表6に示す。
Figure 0006007439
実施例14〜16において、[L]/([Rh]+[M])=0.80、[M]/[Rh]=1.50であり、前記A値は0.53であるが、いずれも高い直鎖選択性で末端アルコールを製造することができることが分かる。
<実施例17>
実施例14における反応原料をcis−2−オクテン(2.0mmol)からオレイン酸メチル(2.3mmol)に変え、同様に120℃で反応を行なった。ただし、ガスクロマトグラフィー分析の内部標準物質であるn−ドデカンは加えずに反応を行ない、反応時間としては7日間反応させた。
反応後、反応液に所定量の2,4,6−トリメトキシベンゼンを加え、生成物の収率をH−NMRを用いて分析した。その結果、反応原料のオレイン酸メチルの転化率は100%であり、アルデヒド収率はほぼ0%であり、アルコール収率は40%であった。得られたアルコールの内、分岐型のアルコール収率に対する直鎖型のアルコール収率の比率(L/B比)は2.4であった。
実施例17においても[L]/([Rh]+[M])=0.80、[M]/[Rh]=1.50であり、前記A値は0.53であるが、オレイン酸メチル(CH−(CH−CH=CH−(CH−COOCH)のような炭素−炭素二重結合が末端炭素原子から数えて9番目と10番目の炭素原子間にあるような化合物であっても、末端に二重結合が異性化された上でヒドロホルミル化反応がかかり、かつ水素化され、直鎖型のアルコールが分岐型のアルコールよりも2.4倍も多く製造できることが分かる。
<実施例18>
実施例17におけるRu触媒の調製において、Ru化合物(A)の他に新たにRu(CO)12(4.2mg、Ru換算で0.020mmol)を加えて調製した以外は同様にして反応を行なった。
その結果、反応原料のオレイン酸メチルの転化率は100%であり、アルデヒド収率はほぼ0%であり、アルコール収率は76%であった。得られたアルコールの内、分岐型のアルコール収率に対する直鎖型のアルコール収率の比率(L/B比)は3.5であった。
実施例18においては、[L]/([Rh]+[M])=0.57、[M]/[Rh]=2.50であり、前記A値は0.23であるが、Ru(CO)12の共存によってオレイン酸メチルの炭素−炭素二重結合の異性化が加速され、アルコール収率が大きく改善され、かつ、直鎖型のアルコールが分岐型のアルコールよりも3.5倍も多く製造できることが分かる。
<比較例2−5>
実施例1,5,6,7における選択的水素化反応用触媒のルテニウム化合物CpRu(cod)Clを添加しない以外は同様にして反応を行った。その結果を表6にまとめて示す。
<比較例6>
比較例2において、ヒドロホルミル化反応圧力を2.0MPaとしたこと以外は同様にして反応を行った。結果を表6に示す。
<比較例7>
比較例5において、有機リン系配位子L−22を有機リン系配位子L−11に変更した以外は同様にして反応を行った。その結果を表6に示す。
Figure 0006007439
以上の結果から、ヒドロホルミル化反応用触媒としてのロジウム化合物及び二座の有機リン化合物と、アルデヒドの選択的水素化反応用触媒としての水素化触媒用遷移金属化合物、更に好ましくは特定の助剤を用いる本発明の末端アルコールの製造方法によれば、原料に内部オレフィン性化合物を用いて一段で高い直鎖選択性で末端アルコールを製造できることが分かる。

Claims (7)

  1. ロジウム化合物、二座の有機リン化合物、及びロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を一種以上含む化合物の存在下に、極性溶媒を用いて内部オレフィン性化合物を水素及び一酸化炭素と反応させて末端アルコールを製造する末端アルコールの製造方法であって、
    該ロジウム化合物、二座の有機リン化合物、及びロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を一種以上含む化合物を、下記式で算出されるA値が1以上2.5以下となるように存在させることを特徴とする末端アルコールの製造方法。
    Figure 0006007439
  2. 前記極性溶媒がヘテロ原子を含む化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の末端アルコールの製造方法。
  3. 前記ロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属が、ルテニウム、イリジウム、パラジウム及び白金からなる群より選ばれる遷移金属であることを特徴とする請求項1又は2に記載の末端アルコールの製造方法。
  4. 前記ロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属を一種以上含む化合物が、下記一般式(I)で表される有機基を含む助剤を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の末端アルコールの製造方法。
    −X−H …(I)
    (式中、Xはヘテロ原子を含み、且つ、該ヘテロ原子が水素原子と結合する連結基を表す。)
  5. 前記助剤が、少なくとも一つの窒素原子を有し、該窒素原子で前記ロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属に配位しており、該窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合していることを特徴とする請求項4に記載の末端アルコールの製造方法。
  6. 前記助剤が、2つ以上の結合点で、前記ロジウムを除く周期表第8〜10族遷移金属に配位する多座配位子の構造を有していることを特徴とする請求項5に記載の末端アルコールの製造方法。
  7. 記反応時の一酸化炭素分圧を0.1MPa以上、0.5MPa以下とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の末端アルコールの製造方法。
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