JP5804635B2 - 樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

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本発明は、第1樹脂成形体の端末部に第2樹脂成形体を接合した形態の樹脂成形品の製造方法に関し、特に、その接合強度の向上を図ることができ、かつ、接合部での樹脂漏れによる外観不良を効果的に防止できるようにしたものである。
第1樹脂成形体の端末部に第2樹脂成形体を接合した形態の樹脂成形品としては、例えば、特許文献1に示された2色成形品の成形方法によって製造される、自動車用内装部品としてのドアトリム(ツートンタイプ)が知られている。
この種のドアトリム(ツートンタイプ)は、第1樹脂成形体としてのドアトリムアッパーと、その端末部に接合された第2樹脂成形体としてのドアトリムロアとからなる上下2分割体になっていて、ドアトリムアッパーとドアトリムロアの接合部を境に、ドアトリムアッパーとドアトリムロアの色彩が異なるものとなっている。
ところで、特許文献1に示された2色成形品の成形方法によると、例えば同文献1の図3に図示の通り、第1樹脂成形体としてのドアトリムアッパー(20)と第2樹脂成形体としてのドアトリムロア(30)との接合は、それぞれの端末部どうしを接合する方式であるため、その接合部の強度(接合強度)はそれ程高いものとは言えない。
特開2005−329544号公報
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、第1樹脂成形体の端末部に第2樹脂成形体を接合した形態の樹脂成形品の製造方法において、その接合強度の向上を図ることができ、かつ、接合部での樹脂漏れによる外観不良を効果的に防止し得る、当該樹脂成形品の製造方法を提供することである。
前記目的を達成するために、第1の本発明は、第1樹脂成形体の端末部に第2樹脂成形体を接合した形態の樹脂成形品の製造方法であって、キャビ型とコア型の型締めによって形成される2つの連続した成形空間の境界部を入子で仕切り、仕切られた2つの成形空間のうち一方の成形空間内に第1溶融樹脂を射出充填することで、第1樹脂成形体を形成する工程と、前記入子を所定量下降させることで当該入子による仕切りを解除した後、前記2つの連続した成形空間のうち他方の成形空間内に第2溶融樹脂を射出充填することで、前記2つの連続した成形空間の境界部において前記第1樹脂成形体の端末部に接合してなる第2樹脂成形体を成形する工程と、を含み、前記第2樹脂成形体を成形する工程では、前記第1樹脂成形体の端末部における両面のうち前記キャビ型の型面との当接により形成される意匠面とは反対の裏面側に空隙を設け、この空隙に前記第2樹脂成形体を形成するための第2溶融樹脂が回り込んで固化することにより、前記第1樹脂成形体の端末部と前記第2樹脂成形体との接合面積を拡大してなること、及び、前記空隙への第2溶融樹脂の流れ込み時に、下記《位置規制構造》で前記第1樹脂成形体の端末部の位置を規制してなることを特徴とする。
《位置規制構造》
前記2つの連続した成形空間の境界部には、前記コア型に下端を固定してなる固定ピンが設けられ、前記入子には、前記第1樹脂成形体の端末部に向って開設された貫通孔が設けられており、前記入子を所定量下降させて前記他方の成形空間に第2溶融樹脂を充填する時は、前記固定ピンの上端が前記入子の貫通孔を通じて前記第1樹脂成形体の端末部に当接していることにより、その端末部の位置が規制されるようになっている
また、第1の本発明は、第1樹脂成形体の端末部に第2樹脂成形体を接合した形態の樹脂成形品の製造方法であって、キャビ型とコア型の型締めによって形成される2つの連続した成形空間の境界部を入子で仕切り、仕切られた2つの成形空間のうち一方の成形空間内に第1溶融樹脂を射出充填することで、第1樹脂成形体を形成する工程と、前記入子を所定量下降させることで当該入子による仕切りを解除した後、前記2つの連続した成形空間のうち他方の成形空間内に第2溶融樹脂を射出充填することで、前記2つの連続した成形空間の境界部において前記第1樹脂成形体の端末部に接合してなる第2樹脂成形体を成形する工程と、を含み、前記第2樹脂成形体を成形する工程では、前記第1樹脂成形体の端末部における両面のうち前記キャビ型の型面との当接により形成される意匠面とは反対の裏面側に空隙を設け、この空隙に前記第2樹脂成形体を形成するための第2溶融樹脂が回り込んで固化することにより、前記第1樹脂成形体の端末部と前記第2樹脂成形体との接合面積を拡大してなること、及び、前記空隙への第2溶融樹脂の流れ込み時に、下記《位置規制構造》で前記第1樹脂成形体の端末部の位置を規制してなることを特徴とする。
《位置規制構造》
前記2つの連続した成形空間の境界部には、前記コア型に下端を固定してなる固定ピンが設けられ、前記入子には、前記第1樹脂成形体の端末部に向って開設された貫通孔が設けられており、前記第1溶融樹脂の射出充填時には、前記入子の前記貫通孔に前記固定ピンの上端を挿入し、その挿入量を前記入子の厚み範囲内とすることにより、前記貫通孔全体のうち当該固定ピンの上端より上の範囲が前記一方の成形空間内に連通する凹部として設定されるとともに、その凹部に前記第1溶融樹脂が流れ込んで固化することにより、第1溶融樹脂からなる樹脂ボスが前記第1樹脂成形体の端末部に一体に形成されてなり、前記入子を所定量下降させて前記他方の成形空間に第2溶融樹脂を充填する時は、前記樹脂ボスの先端が前記入子の前記凹部から抜け出ないことにより、前記第1樹脂成形体の端末部の位置が規制されるようになっている
第2の本発明は、第1樹脂成形体の端末部に第2樹脂成形体を接合した形態の樹脂成形品の製造方法であって、キャビ型とコア型の型締めによって形成される2つの連続した成形空間のうち一方の成形空間内に予め成形した第1樹脂成形体をセットする工程と、前記2つの連続した成形空間のうち他方の成形空間内に第2溶融樹脂を射出充填することで、前記2つの連続した成形空間の境界部において前記第1樹脂成形体の端末部に接合してなる第2樹脂成形体を成形する工程と、を含み、前記第2樹脂成形体を成形する工程では、前記第1樹脂成形体の端末部における両面のうち前記キャビ型の型面との当接により形成される意匠面とは反対の裏面側に空隙を設け、この空隙に前記第2樹脂成形体を形成するための第2溶融樹脂が回り込んで固化することにより、前記第1樹脂成形体の端末部と前記第2樹脂成形体との接合面積を拡大してなること、及び、前記第2溶融樹脂の射出充填時に、下記《位置規制構造》で前記第1樹脂成形体の端末部の位置を規制してなることを特徴とする。
《位置規制構造》
前記2つの連続した成形空間の境界部には、前記コア型に下端を固定してなる固定ピンが設けられており、前記他方の成形空間に第2溶融樹脂を充填する時は、前記固定ピンの上端が前記第1樹脂成形体の端末部の先端面に当接していることにより、その端末部の先端面が支持されるとともに、その端末部の位置が規制されるようになっている
なお、前記「キャビ型」とは、凹形状のキャビティ(キャビとも略称される)を形成してある型のことを意味し、前記「コア型」とは、凸形状のコアを形成してある型のことを意味する。以下の説明でも同様とする。
第1及び第2の本発明によると、いずれも、前記の通り、第2樹脂成形体を成形する工程では、第1樹脂成形体の端末部における両面のうちキャビ型の型面との当接により形成される意匠面とは反対の裏面側に空隙を設け、この空隙に第2樹脂成形体を形成するための第2溶融樹脂が回り込んで固化する方式を採用した。このような第2溶融樹脂の回り込み固化によって、第1樹脂成形体の端末部と第2樹脂成形体との接合面積が拡大されることから、第1樹脂成形体と第2樹脂成形体との接合強度の向上を図ることができる。これに加えて更に、前記第2溶融樹脂の射出充填時に、第1樹脂成形体の端末部の位置を規制することにより、第2溶融樹脂が第1樹脂成形体の意匠面に滲み出る現象、すなわち接合部での樹脂漏れによる外観不良を効果的に防止することもできる。
図1(a)は、本発明を適用して製造した樹脂成形品である自動車用内装部品としてのドアトリム(ツートンタイプ)の正面図、同図(b)は、そのB−B断面図である。 図2は、第1の本発明を適用して図1のドアトリム等の樹脂成形品を製造するための成形金型の概念図である。 図3(a)は、図1の成形金型における型締め工程とその型締め状態の説明図、図3(b)は、図1の成形金型における第1溶融樹脂の射出充填工程とその射出充填状態の説明図、図3(c)は、図1の成形金型における第2溶融樹脂の射出充填工程とその射出充填状態の説明図である。 図4は、図2の成形金型に対し第1の位置規制方式を適用して樹脂成形品を製造する場合の説明図であり、同図(a)は、型締めの状態説明図、同図(b)は、型締め後に行われる第1溶融樹脂の射出充填時の状態説明図である。 図5は、図2の成形金型に対し第1の位置規制方式を適用して樹脂成形品を製造する場合の説明図であり、同図(a)は、第1溶融樹脂の射出充填後に行われる第2溶融樹脂の射出充填時の状態説明図、同図(b)は、この第1の位置規制方式を採用した場合に最終製品として得られる樹脂成形品の断面図である。 図6は、図2の成形金型に対し第2の位置規制方式を適用して樹脂成形品を製造する場合の説明図であり、同図(a)は、型締めの状態説明図、同図(b)は、型締め後に行われる第1溶融樹脂の射出充填時の状態説明図である。 図7は、図2の成形金型に対し第2の位置規制方式を適用して樹脂成形品を製造する場合の説明図であり、同図(a)は、第1溶融樹脂の射出充填後に行われる第2溶融樹脂の射出充填時の状態説明図、同図(b)は、この第2の位置規制方式を採用した場合に最終製品として得られる樹脂成形品の断面図である。 図8(a)は、第2の本発明を適用して図1のドアトリム等の樹脂成形品を製造するための成形金型の概念、その成形金型のコア型に第1樹脂成形体をセットする工程とセット状態の説明図、同図(b)は、その成形金型における型締め工程と型締め状態の説明図である。 図9(a)は、図8(a)の成形金型における第2溶融樹脂の射出充填工程とその射出充填状態の説明図、図9(b)は、図8(a)の成形金型で得られる樹脂成形品の断面図である。 図10は、本発明の参考例である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)は、本発明を適用して製造した樹脂成形品の一例として自動車用内装部品であるツートンタイプのドアトリムの正面図、同図(b)は、そのB−B断面図である。
図1(a)のドアトリムDT(樹脂成形品1)は、ドアトリムアッパーDT1(第1樹脂成形体2)と、その端末部2Aに接合されているドアトリムロアDT2(第2樹脂成形体3)とからなる上下2分割体であって、ドアトリムアッパーDT1とドアトリムロアDT2の接合部4を境にドアトリムアッパーDT1とドアトリムロアDT2は色彩が異なるツートンタイプになっている。
また、図1(a)のドアトリムDTは、後述する本発明の製造方法を適用して製造されることにより、同図(b)に示すように、ドアトリムアッパーDT1の端末部2Aにおける両面のうち意匠面Fとは反対の裏面R側に、ドアトリムロアDT2を形成している第2溶融樹脂が回り込んで固化した構造になっている(図5(b)、図7(b)、図9(b)参照)。
図1(a)のドアトリムDTでは、前記のような第2溶融樹脂の回り込み固化構造により、ドアトリムアッパーDT1の端末部2AとドアトリムロアDT2との接合面積が拡大され、接合強度の向上が図られている。これに加えて更に、図1(a)のドアトリムDTでは、後述する本発明を適用して製造されることにより、接合部4での樹脂漏れによる外観不良も効果的に防止されており、接合部4の見栄え向上も図られている。
また、図1(a)を参照すると、ドアトリムアッパーDT1には、機能部品として、インサイドハンドルエスカッション5、パワーウインドウスイッチエスカッション6等が取り付けられている。また、ドアトリムロアDT2には、ドアポケット用開口7が開設されており、その背面側にはポケットバックカバー8が取り付けられている。ドアトリムロアDT2のフロント側には、スピーカグリル9が一体あるいは別体に形成されている。
図2は、第1の本発明を適用して図1のドアトリム等の樹脂成形品を製造するための成形金型の概念図、図3(a)は、図1の成形金型における型締め工程とその型締め状態の説明図、図3(b)は、図1の成形金型における第1溶融樹脂の射出充填工程とその射出充填状態の説明図、図3(c)は、図1の成形金型における第2溶融樹脂の射出充填工程とその射出充填状態の説明図である。
図2の成形金型10は、所定ストローク長で上下動可能なキャビ型11と、このキャビ型11と対をなす固定のコア型12と、このコア型12に接続される2基の射出機(第1射出機13A、第2射出機13B)とを有している。
キャビ型11の型面(コア型12と対向している面)には、2つの連続した凹形状のキャビティ14A、14Bが形成されている。図2の成形金型10ではキャビティ14A、14Bの凹面で最終製品としての樹脂成形品1の意匠面Fを成形するので、前記キャビティ14A、14Bの凹形状は、その樹脂成形品1の意匠面Fの形状に合致するように形成してある。
コア型12の型面(キャビ型11と対向している面)には、前記2つの連続した凹形状のキャビティ14A、14Bに対応する凸形状のコア15が設けられている。図2の成形金型10では前記コア15の凸面で最終製品としての樹脂成形品1の裏面R(意匠面Fと反対の面)を成形するので、コア15の凸形状は、その樹脂成形品1の裏面Rの形状に合致するように形成してある。
図2の成形金型10では、同図に示した油圧シリンダ16を利用してキャビ型11をコア型12に向って所定量下降させ、図3(a)のようにキャビ型11とコア型12の型締めを行うことにより、コア15とキャビティ14A、14Bを接近させ、キャビティ14A、14Bとコア15との間に樹脂成形品1を成形するための2つの連続した成形空間G1、G2が形成されるように構成してある。
前記2つの連続した成形空間G1、G2の境界部には、仕切り手段として、入子17が昇降可能に設けられている。図3(a)は入子17を最大に上昇させた状態である。このように入子17が最大に上昇した時に、前記2つの連続したキャビティ14A、14Bからその境界部に突出しているキャビティ内突部18と入子17とが当接することで、前記2つの連続した成形空間G1、G2は、その境界部で入子17により仕切られ、それぞれ独立した空間として設定される。なお、入子17を昇降させる手段としては、例えば公知の油圧シリンダ等を利用した図示しない昇降装置をコア型12に組み込む等の方式や、これ以外の方式を採用してよい。
図2の成形金型10では、図3(b)に示したように、入子17で仕切られた2つの成形空間G1、G2のうち一方の成形空間G1内に第1溶融樹脂M1を射出充填することにより、図3(c)のように第1樹脂成形体2が成形される。第1溶融樹脂M1の射出充填は第1射出機13Aにより行われる。第1射出機13Aは、図3(b)のようにコア型12に設けた第1マニホールド19Aと第1ゲート20Aを介して、前記一方の成形空間G1内に第1溶融樹脂M1を射出充填するものである。
また、図2の成形金型10では、図3(c)に示したように、図3(b)の位置にある入子17を所定量下降させることで当該入子17による仕切りを解除した後、前記2つの連続した成形空間G1、G2のうち他方の成形空間G2内に第2溶融樹脂M2を射出充填することで、前記2つの連続した成形空間G1、G2の境界部において第1樹脂成形体2の端末部2Aに接合してなる第2樹脂成形体3が成形される。第2溶融樹脂M2の射出充填は第2射出機13Bにより行われる。第2射出機13Bは、図3(c)のように、コア型12に設けた第2マニホールド19Bと第2ゲート20Bを介して、前記他方の成形空間G2内に第2溶融樹脂M2を射出充填するものである。
前記のように第2樹脂成形体3を成形する工程では、第1樹脂成形体2の端末部2Aにおける両面のうちキャビ型11の型面との当接により形成される意匠面Fとは反対の裏面R側に、図5(a)に示すような空隙G3が設けられる。この空隙G3に第2樹脂成形体3を形成するための第2溶融樹脂M2が回り込んで固化することにより、第1樹脂成形体2の端末部2Aと第2樹脂成形体3との接合面積が拡大される。
そして、第2樹脂成形体3を成形する工程では、前記空隙G3への第2溶融樹脂M2の流れ込み時に、第1樹脂成形体2の端末部2Aの位置を規制することにより、第2溶融樹脂M2が第1樹脂成形体2の意匠面Fに滲み出る現象、すなわち接合部4での樹脂漏れによる外観不良を効果的に防止することができる。
次に、前記のように第1樹脂成形体の端末部の位置を規制する方式(以下「位置規制方式」という)について具体例を説明する。
図4は、図2の成形金型に対し第1の位置規制方式を適用して樹脂成形品を製造する場合の説明図であり、同図(a)は、型締めの状態説明図、同図(b)は、型締め後に行われる第1溶融樹脂の射出充填時の状態説明図である。また、図5は、図2の成形金型に対し第1の位置規制方式を適用して樹脂成形品を製造する場合の説明図であり、同図(a)は、第1溶融樹脂の射出充填後に行われる第2溶融樹脂の射出充填時の状態説明図、同図(b)は、この第1の位置規制方式を採用した場合に最終製品として得られる樹脂成形品の断面図である。
第1の位置規制方式では、図4(a)のように、2つの連続した成形空間G1、G2の境界部には、コア型12に下端を固定してなる固定ピン21が設けられ、また、入子17には、第1樹脂成形体2の端末部2Aに向って開設された貫通孔22が設けられる。
図4(a)の工程は、先に説明した図3(a)の工程に対応するものである。この対応する図4(a)の工程では、キャビ型11とコア型12の型締めを行うとともに、入子17を所定量上昇させてキャビティ内突部18に当接させることにより、入子17で仕切られた2つの成形空間G1、G2を形成する。
図4(b)の工程は、先に説明した図3(b)の工程に対応するものである。この対応する図4(b)の工程では、前記のように入子17で仕切られた2つの成形空間G1、G2のうち一方の成形空間G1内に第1溶融樹脂M1を射出充填することで、第1樹脂成形体2を成形する。
図5(a)の工程は、先に説明した図3(c)の工程に対応するものである。この対応する図5(a)の工程では、図4(b)の位置にある入子17を図5(a)のように所定量下降させて他方の成形空間G2に第2溶融樹脂M2を充填する。この時、図5(b)のように固定ピン21の上端が入子17の貫通孔22を通じて第1樹脂成形体2の端末部2Aに当接していることにより、その端末部2Aの位置が規制されるようになっている。このように固定ピン21で第1樹脂成形体2の端末部2Aの位置を規制する方式が、第1の位置規制方式である。
図6は、図2の成形金型に対し第2の位置規制方式を適用して樹脂成形品を製造する場合の説明図であり、同図(a)は、型締めの状態説明図、同図(b)は、型締め後に行われる第1溶融樹脂の射出充填時の状態説明図である。また、図7は、図2の成形金型に対し第2の位置規制方式を適用して樹脂成形品を製造する場合の説明図であり、同図(a)は、第1溶融樹脂の射出充填後に行われる第2溶融樹脂の射出充填時の状態説明図、同図(b)は、この第2の位置規制方式を採用した場合に最終製品として得られる樹脂成形品の断面図である。
第2の位置制御方式でも、図6(a)のように、2つの連続した成形空間G1、G2の境界部には、コア型12に下端を固定してなる固定ピン21が設けられ、また、入子17には、第1樹脂成形体2の端末部2Aに向って開設された貫通孔22が設けられる。
図6(a)の工程は、先に説明した図3(a)の工程に対応するものである。この対応する図6(a)の工程では、キャビ型11とコア型12の型締めを行うとともに、入子17を所定量上昇させてキャビティ内突部18に当接させることにより、入子17で仕切られた2つの成形空間G1、G2を形成する。また、この図6(a)の工程では、入子17の貫通孔22に固定ピン21の上端を挿入し、上端の位置すなわち挿入量を入子17の厚みTの範囲内とすることにより、貫通孔22全体のうち固定ピン21の上端より上の範囲が一方の成形空間G1内に連通する凹部23として設定されるものとする。
図6(b)の工程は、先に説明した図3(b)の工程に対応するものである。この対応する図6(b)の工程では、入子17で仕切られた2つの成形空間G1、G2のうち一方の成形空間G1に第1溶融樹脂M1を射出充填する。そして、この図6(b)の工程においては、前記のように設定された凹部23に第1溶融樹脂M1が流れ込んで固化することにより、第1溶融樹脂M1の固化体からなる樹脂ボス24が第1樹脂成形体2の端末部2Aに一体に形成される。
図7(a)の工程は、先に説明した図3(c)の工程に対応するものである。この対応する図7(a)の工程では、入子17を所定量下降させて他方の成形空間G2に第2溶融樹脂M2を充填する。この時、同図(a)のように前記樹脂ボス24の先端が入子17の凹部から抜け出ないこと、すなわち、前記樹脂ボス24の先端が入子17の凹部23(図6(a)参照)に係合していることにより、第1樹脂成形体2の端末部2Aの位置が規制されるようになっている。このように第1樹脂成形体2の端末部2Aに樹脂ボス24を形成するとともに、この樹脂ボス24を利用して第1樹脂成形体2の端末部2Aの位置を規制する方式が、第2の位置規制方式である。
以上説明した第1の位置制御方式と第2の位置制御方式とを比較すると、最終製品として得られる樹脂成形品の接合部の強度(接合強度)は、第2の位置制御方式の方が高くなる。これは、第2の位置制御方式では、図7(b)のように、第1樹脂成形体2の端末部2Aにおける意匠面Fとは反対の裏面R側に第2溶融樹脂M2が回り込んで固化することにより、第1樹脂成形体2の端末部2Aと第2樹脂成形体3との接合面積が拡大されることに加え、更に、樹脂ボス24が第2樹脂成形体3に食い込む形態で接合されるからである。このような樹脂ボス24の食い込みは、図5(b)のように第1の位置制御方式を採用した場合に最終製品として得られる樹脂成形品1には存在しない。
図8(a)は、第2の本発明を適用して図1のドアトリム等の樹脂成形品を製造するための成形金型の概念、その成形金型のコア型に第1樹脂成形体をセットする工程とセット状態の説明図、同図(b)は、その成形金型における型締め工程と型締め状態の説明図である。また、図9(a)は、図8(a)の成形金型における第2溶融樹脂の射出充填工程とその射出充填状態の説明図、図9(b)は、図8(a)の成形金型で得られる樹脂成形品の断面図である。
図8(a)の成形金型の基本的な構成、例えば、キャビ型11とコア型12の型締めにより2つの連続した成形空間G1、G2が形成されることや、これら2つの連続した成形空間G1、G2の境界部には、コア型12に下端を固定してなる固定ピン21が設けられていること等は、図4(a)や図6(a)の成形金型10と同様であるため、その詳細説明は省略する。図8(a)の成形金型10が図4(a)や図6(a)の成形金型10と異なるところは、入子17と第1射出機13Aが省略されている点である。
図8(a)の工程においては、第1溶融樹脂により予め成形した第1樹脂成形体2を用意し、それをコア型12にセットする。この際、後工程(図8(b)参照)の型締めで形成される2つの連続した成形空間G1、G2のうち一方の成形空間G1に第1樹脂成形体2が配置されるようにするため、第1樹脂成形体2のセット位置は図8(a)に示す位置とする。また、このセット位置において、第1樹脂成形体2の端末部2Aは図8(a)のように固定ピン21の上端に当接するように設定する。
また、この図8(b)の工程では、第1樹脂成形体2の端末部2Aにおける両面のうちキャビ型11の型面との当接により形成される意匠面Fとは反対の裏面R側に、図8(a)に示すような空隙G3が設定される。
次に、図8(b)の工程では、キャビ型11をコア型12に向って所定量下降させることにより型締めを行っている。これにより、コア15とキャビティ14A、14Bが接近し、キャビティ14A、14Bとコア15との間に樹脂成形品を成形するための2つの連続した成形空間G1、G2(図4(a)、図6(a)参照)が形成される。これら2つの連続した成形空間G1、G2のうち一方の成形空間G1には、先の工程でセットした第1樹脂成形体2が配置されている。
なお、この型締め後も、前記空隙G3の設定や、第1樹脂成形体2の端末部2Aが固定ピン21の上端に当接している設定は、維持される。型締めにより固定ピン21の上端が第1樹脂成成形品2の端末部2Aをキャビ型11に向って押し付ける力は、固定ピン21の高さを変更することにより、適宜調整することができる。
その後の図9(a)の工程では、前記2つの連続した成形空間G1、G2のうち他方の成形空間G2内に第2溶融樹脂M1を射出充填することで、前記2つの連続した成形空間G1、G2の境界部において第1樹脂成形体2の端末部2Aに接合してなる第2樹脂成形体3を成形する。
前記のように第2樹脂成形体3を成形する工程では、先に設定した空隙G3に第2樹脂成形体を形成するための第2溶融樹脂が回り込んで固化することにより、第1樹脂成形体の端末部と第2樹脂成形体との接合面積が拡大される。
また、前記空隙G3への第2溶融樹脂の流れ込み時に、固定ピン21の上端が第1樹脂成形体2の端末部2Aに当接していることで、その端末部2Aの位置が規制される。これにより、第2溶融樹脂M2が第1樹脂成形体2の意匠面Fに滲み出る現象、すなわち接合部4での樹脂漏れによる外観不良を効果的に防止することができる。
図10は、本発明の参考例である。この参考例では、第2樹脂成形体3を成形する工程において、第2溶融樹脂M2を射出充填する時に、第1樹脂成形体2の端末部2Aの位置を規制していない。このため、第2溶融樹脂M2の射出充填時において、空隙G3の存在により第1樹脂成形体2の端末部2Aがその厚み方向にフリーになるため、第2溶融樹脂M2の射出圧力により第1樹脂成形体2の端末部2Aが撓むことで、意匠面Fとキャビ型11との間に隙間ができ、第2溶融樹脂M2が第1樹脂成形体2の意匠面Fに滲み出る現象、すなわち接合部4での樹脂漏れによる外観不良が生じ易い。
図2から図9では、キャビ型11とコア型12が上下に配置される例を示したが、この配置例に限定されることはない。本発明は、そのようなキャビ型11とコア型12が横に並んで配置される例にも適用することができる。
本発明は、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等、ドアトリム以外の自動車用内装部品に適用できることは勿論のこと、自動車用内装部品以外の樹脂成形品であって、かつ、第1樹脂成形体の端末部に第2樹脂成形体を接合した形態のものに適用してもよい。
また、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。
1 樹脂成形品
2 第1樹脂成形体
2A 第1樹脂成形体の端末部
3 第2樹脂成形体
4 接合部
5 インサイドハンドルエスカッション
6 パワーウインドウスイッチエスカッション
7 ドアポケット用開口
8 ポケットバックカバー
9 スピーカグリル
10 成形金型
11 キャビ型
12 コア型
13A 第1射出機
13B 第2射出機
14A 一方のキャビティ
14B 他方のキャビティ
15 コア
16 油圧シリンダ
17 入子
18 キャビティ内突部
19A 第1マニホールド
19B 第2マニホールド
20A 第1ゲート
20B 第2ゲート
21 固定ピン
22 貫通孔
23 凹部
DT ドアトリム(樹脂成形品)
DT1 ドアトリムアッパー(第1樹脂成形体)
DT2 ドアトリムロア(第2樹脂成形体)
E 樹脂成形品
F 樹脂成形品の意匠面
R 樹脂成形品の裏面
G1 一方の成形空間
G2 他方の成形空間
G3 空隙
M1 第1溶融樹脂
M2 第2溶融樹脂

Claims (3)

  1. 第1樹脂成形体の端末部に第2樹脂成形体を接合した形態の樹脂成形品の製造方法であって、
    キャビ型とコア型の型締めによって形成される2つの連続した成形空間の境界部を入子で仕切り、仕切られた2つの成形空間のうち一方の成形空間内に第1溶融樹脂を射出充填することで、第1樹脂成形体を形成する工程と、
    前記入子を所定量下降させることで当該入子による仕切りを解除した後、前記2つの連続した成形空間のうち他方の成形空間内に第2溶融樹脂を射出充填することで、前記2つの連続した成形空間の境界部において前記第1樹脂成形体の端末部に接合してなる第2樹脂成形体を成形する工程と、を含み、
    前記第2樹脂成形体を成形する工程では、前記第1樹脂成形体の端末部における両面のうち前記キャビ型の型面との当接により形成される意匠面とは反対の裏面側に空隙を設け、この空隙に前記第2樹脂成形体を形成するための第2溶融樹脂が回り込んで固化することにより、前記第1樹脂成形体の端末部と前記第2樹脂成形体との接合面積を拡大してなること、及び、前記空隙への第2溶融樹脂の流れ込み時に、下記《位置規制構造》で前記第1樹脂成形体の端末部の位置を規制してなること
    を特徴とする樹脂成形品の製造方法。
    《位置規制構造》
    前記2つの連続した成形空間の境界部には、前記コア型に下端を固定してなる固定ピンが設けられ、前記入子には、前記第1樹脂成形体の端末部に向って開設された貫通孔が設けられており、前記入子を所定量下降させて前記他方の成形空間に第2溶融樹脂を充填する時は、前記固定ピンの上端が前記入子の貫通孔を通じて前記第1樹脂成形体の端末部に当接していることにより、その端末部の位置が規制されるようになっている。
  2. 第1樹脂成形体の端末部に第2樹脂成形体を接合した形態の樹脂成形品の製造方法であって、
    キャビ型とコア型の型締めによって形成される2つの連続した成形空間の境界部を入子で仕切り、仕切られた2つの成形空間のうち一方の成形空間内に第1溶融樹脂を射出充填することで、第1樹脂成形体を形成する工程と、
    前記入子を所定量下降させることで当該入子による仕切りを解除した後、前記2つの連続した成形空間のうち他方の成形空間内に第2溶融樹脂を射出充填することで、前記2つの連続した成形空間の境界部において前記第1樹脂成形体の端末部に接合してなる第2樹脂成形体を成形する工程と、を含み、
    前記第2樹脂成形体を成形する工程では、前記第1樹脂成形体の端末部における両面のうち前記キャビ型の型面との当接により形成される意匠面とは反対の裏面側に空隙を設け、この空隙に前記第2樹脂成形体を形成するための第2溶融樹脂が回り込んで固化することにより、前記第1樹脂成形体の端末部と前記第2樹脂成形体との接合面積を拡大してなること、及び、前記空隙への第2溶融樹脂の流れ込み時に、下記《位置規制構造》で前記第1樹脂成形体の端末部の位置を規制してなること
    を特徴とする樹脂成形品の製造方法。
    《位置規制構造》
    前記2つの連続した成形空間の境界部には、前記コア型に下端を固定してなる固定ピンが設けられ、前記入子には、前記第1樹脂成形体の端末部に向って開設された貫通孔が設けられており、
    前記第1溶融樹脂の射出充填時には、前記入子の前記貫通孔に前記固定ピンの上端を挿入し、その挿入量を前記入子の厚み範囲内とすることにより、前記貫通孔全体のうち当該固定ピンの上端より上の範囲が前記一方の成形空間内に連通する凹部として設定されるとともに、その凹部に前記第1溶融樹脂が流れ込んで固化することにより、第1溶融樹脂からなる樹脂ボスが前記第1樹脂成形体の端末部に一体に形成されてなり、
    前記入子を所定量下降させて前記他方の成形空間に第2溶融樹脂を充填する時は、前記樹脂ボスの先端が前記入子の前記凹部から抜け出ないことにより、前記第1樹脂成形体の端末部の位置が規制されるようになっている。
  3. 第1樹脂成形体の端末部に第2樹脂成形体を接合した形態の樹脂成形品の製造方法であって、
    キャビ型とコア型の型締めによって形成される2つの連続した成形空間のうち一方の成形空間内に予め成形した第1樹脂成形体をセットする工程と、
    前記2つの連続した成形空間のうち他方の成形空間内に第2溶融樹脂を射出充填することで、前記2つの連続した成形空間の境界部において前記第1樹脂成形体の端末部に接合してなる第2樹脂成形体を成形する工程と、を含み、
    前記第2樹脂成形体を成形する工程では、前記第1樹脂成形体の端末部における両面のうち前記キャビ型の型面との当接により形成される意匠面とは反対の裏面側に空隙を設け、この空隙に前記第2樹脂成形体を形成するための第2溶融樹脂が回り込んで固化することにより、前記第1樹脂成形体の端末部と前記第2樹脂成形体との接合面積を拡大してなること、及び、前記第2溶融樹脂の射出充填時に、下記《位置規制構造》で前記第1樹脂成形体の端末部の位置を規制してなること
    を特徴とする樹脂成形品の製造方法。
    《位置規制構造》
    前記2つの連続した成形空間の境界部には、前記コア型に下端を固定してなる固定ピンが設けられており、
    前記他方の成形空間に第2溶融樹脂を充填する時は、前記固定ピンの上端が前記第1樹脂成形体の端末部の先端面に当接していることにより、その端末部の先端面が支持されるとともに、その端末部の位置が規制されるようになっている。
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