JP5803890B2 - 耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の合せ材及びそれを用いた二相ステンレスクラッド鋼並びにその製造方法 - Google Patents

耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の合せ材及びそれを用いた二相ステンレスクラッド鋼並びにその製造方法 Download PDF

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本発明は、海水などの高塩化物環境下で構造部材として用いられる二相ステンレスクラッド鋼の合せ材及びそれを用いた二相ステンレスクラッド鋼並びにその製造方法に関する。
従来、海水などの高塩化物環境下や、油井あるいはガス井などの厳しい腐食性環境下、具体的には、油井やガス井の配管類、排煙脱硫装置・排水処理施設・海水揚水発電機などの構造部材、沙紙ロール、遠心分離器、ポンプ・バルブ、熱交換器などには二相ステンレス鋼が採用されてきた。二相ステンレス鋼とはオーステナイト相及びフェライト相よりなる複合組織を有するステンレス鋼であり、優れた耐食性と優れた強度特性を併せ持つており、この鋼では一般に、オーステナイト相とフェライト相との比率がほぼ1:1の場合に耐食性が最も優れていることが知られている。従って、実用鋼の化学成分はオーステナイト相とフェライト相との比率がほぼこの付近にあるように規定されている。
このような観点から、日本工業規格(JIS)では棒材・板材としてはSUS329Jl、SUS329J3L、SUS329J4Lなどが規格化されている。また、鍛鋼品としてはSUS329J1FB、鋳鋼品としてはSCS10などが規格化されている。
一方、二相ステンレス鋼の主原料であるCr、Ni、Moに代表される合金元素の価格は、時に高騰や大きな変動があるため、無垢材(全厚が合せ材の金属組成のような場合を云う。)としての使用よりも、高合金鋼の優れた防錆性能をより経済的に利用できるクラッド鋼が最近注目されている。
高合金クラッド鋼とは合せ材に高い耐食性を示す高合金鋼材、母材に普通鋼材と二種類の性質の異なる金属を貼り合わせた鋼材である。クラッド鋼は異種金属を金属学的に接合させたもので、めっきとは異なり剥離する心配がなく単一金属及び合金では達し得ない新たな特性を有している。
クラッド鋼は、使用環境毎の目的に合った機能を有する合せ材を選択することにより無垢材と同等の機能を発揮させることができる。さらに、クラッド鋼の母材には耐食性以外の高靭性、高強度といった厳しい環境に適した炭素鋼、低合金鋼を適用することができる。
このように、クラッド鋼は無垢材よりも合金元素の使用量が少なく、かつ、無垢材と同等の防錆性能を確保でき、さらに炭素鋼、低合金鋼と同等の強度、靭性を確保できるため、経済性と機能性が両立できるという利点を有する。
以上から、高合金の合せ材を用いたクラッド鋼は非常に有益な機能性鋼材であると考えられており、近年そのニ−ズが各種産業分野で益々高まっている。
ところで、二相ステンレス鋼では熱的影響による金属組織の変化に伴い、諸性質が変化する場合がある。例えば、融点〜1200℃の高温域におけるフェライト相(以下α相と呼ぶ)の増加、600〜900℃の中温域におけるシグマ相(σ相と呼ぶ)や炭窒化物など異種相の析出、450〜500℃の低温域で生じるα相の分解と考えられる反応など、各温度域で金属組織の変化を生じ、それに伴って耐食性や強度特性が変化することになる。実際の適用に際して、上記の組織変化の中で特に問題となるのがσ相の析出である。σ相が析出すると耐食性および延性・靭性が著しく低下するからである。
σ相の析出防止策としては、特許文献1には、Ni、Cr、Mo、N、Si、Mnの成分範囲を規定し、大型部材においても中心部のσ相析出を防止した2相ステンレス鋼が開示されている。
特許文献2、特許文献3および特許文献4には高耐食性を維持するためのステンレスクラッド鋼の製造方法が開示されている。
特許第3779043号公報 特開2005−133125号公報 特許第3527458号公報 特公平3−64233号公報
特許文献1に開示された技術は、σ相析出を防止するために溶体化処理を行うものである。即ち、σ相が析出した場合には、一旦その材料全体をσ相の固溶温度以上に加熱保持した後に急冷することによりσ相を消失させるものである。しかしながら、クラッド鋼の場合は、σ相固溶温度以上に加熱保持すると、母材の低合金鋼の結晶粒が粗大化し、機械的特性が著しく悪化するという問題点がある。
特許文献2〜4に開示された技術は、合せ材としてオーステナイトステンレス鋼を使用したクラッド鋼の製造方法に関するものであり、組織がオーステナイト相(以下γ相と呼ぶ)なので、σ相析出の危険度は非常に低い。
σ相析出化防止策の他の方策としては、二相ステンレス鋼の合金成分を改良することが考えられる。例えば、Cr添加量を少なくすればσ相が析出しにくくなる。これは、σ相の基本構造がFe:Cr=1:1のように構成されているからである。同様にMo添加量を低減することにより、σ相の析出を遅延させることができる。しかしながら、CrやMoの添加量を低減すれば、母相の耐食性に悪影響を及ぼす。即ち、この方法によるσ相の析出の遅延は、同時に耐食性を犠牲にすることになり、一概にCrやMoの低減を図ることは困難であるという問題点がある。
上記したように、耐食性を犠牲にせずに二相ステンレス鋼の最大の問題点であるσ相析出を防止する方法は未だに確立されていないのが現状である。特にクラッド鋼を製造する場合には、母材の機械的特性を保持するという制約からσ相を固溶する溶体化処理を行うことは困難であり、σ相析出に伴う二相ステンレス鋼合せ材の耐食性低下防止問題は未だに解決されていない。
本発明は、上記課題を解決したσ相の析出を抑えた、即ち、耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の合せ材及びそれを用いた二層ステンレス鋼並びにその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を達成するために、本発明者らは既知の二相ステンレス鋼をベースとする多くの試験材を用いて、σ相の析出の容易性に及ぼす各合金元素の影響を評価し、さらに耐食性に関する評価試験を実施した。その結果、不純物元素のうちの特定の元素の許容量を厳密に規定することにより、耐食性を犠牲にせずにσ相の析出を遅延できることを見出し、本発明に至った。本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 二相ステンレスクラッド鋼の合せ材の成分組成が、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.001〜0.15%、Mn:2%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Ni:2〜10%、Cr:20〜28%、Mo:1〜5%、N:0.01〜0.30%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の合せ材。
[2] 前記合せ材の成分組成が、更に、質量%で、W:1〜3%を含有することを特徴とする前記[1]に記載の耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の合せ材。
[3] 前記合せ材の金属組織がアルファ相およびガンマ相の相分率を各々40〜60%、シグマ相の相分率を1%以下であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の合せ材。
[4] 前記[1]乃至[3]の何れかに記載の二相ステンレスクラッド鋼の合せ材と低炭素鋼または低合金鋼の母材とからなる耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼。
[5] 前記[4]に記載の二相ステンレスクラッド鋼の素材を用いて、1050〜1200℃に加熱後、熱間圧延を開始して、950℃以下の温度域における制御圧延の累積圧下率を30%以上80%以下、圧下比3以上とし、圧延仕上温度を800℃以上とする熱間圧延を行った後、直ちに冷却速度2℃/s以上、冷却停止温度700℃以下とする加速冷却を行った後に放冷することを特徴とする耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の製造方法。
本発明は、合せ材である二相ステンレス鋼の特定元素の許容量を厳密に規定し、耐食性を犠牲にせずにσ相の析出を抑制したので、耐食性−接合性−機械的特性のバランスに優れた二相ステンレスクラッド鋼が得られる。
1.合せ材の成分組成について
はじめに、本発明の合せ材の成分組成を規定した理由を説明する。なお、成分%は、全て質量%を意味する。
C:0.03%以下
Cは不可避的に鋼材中に存在する元素の一つであるが、C量が0.03%を超えると炭化物の析出が顕著に生じ、耐食性の劣化を引き起こす。従って、C量は0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下である。
Si:0.001〜0.15%
Siはσ相の析出を著しく促進する元素であり、極力低下することが望ましい。溶体化処理を省略してもシグマ相の析出を抑えるには、Si量は0.15%以下とする必要がある。しかしながら、合金の溶解、製錬を行う際には、Siは脱酸元素として有益な元素である。そのため、Siを過剰に低下することは工業的に非常に困難である。従って、Si量は0.001〜0.15%の範囲とする。なお、好ましくは0.05%以下である。
Mn:2%以下
Mnは脱酸に有用な元素であるが、Mn量が2%を超えるとMnSを形成し耐孔食性を劣化させる。従って、Mn量は2%以下とする。好ましくは1.5%以下である。より好ましくは1.0%以下である。
P:0.05%以下
P量が0.05%を超えると靭性が劣化することに加え、耐食性が劣化する。従って、P量は0.05%以下とする。好ましくは0.03%以下である。
S:0.03%以下
S量が0.03%を超えると熱間加工性が劣化することに加え、耐孔食性が劣化する。従って、S量は0.03%以下とする。好ましくは0.01%以下である。より好ましくは0.001%以下である。
Ni:2〜10%
Niは二相ステンレス鋼の一方の相であるオーステナイトを安定化させる元素として必須の元素である。その効果を発揮させるためには、最低2%以上の含有が必要である。しかしながら、Niは高価な金属であるために、10%を超える含有は合金自体の高価格化を招いて従来合金よりも高価となってしまう。従って、Ni量は2〜10%の範囲とする。また、前述のように二相ステンレス鋼では、γ相とα相との比率がほぼ1:1の場合に耐食性が最も優れている。従って、この相比率を満足するためにも、Ni量は2〜10%の範囲とする。なお、好ましくは4〜8%の範囲である。
Cr:20〜28%
Crは合金の耐食性を保証し、かつ二相ステンレス鋼の他方の相であるα相を安定化するために必要不可欠な元素である。その効果を発揮させるためには、最低20%以上の含有量が必要である。しかしながら、28%を超える含有はσ相の析出を著しく促進して、延性や靭性に悪影響を及ぼす。従って、Cr量は20〜28%の範囲とする。また、前述のように二相ステンレス鋼では、γ相とα相との比率がほぼ1:1の場合に耐食性が最も優れているので、この相比率を満足するためにも、Cr量は20〜28%の範囲とする。耐食性の観点からは、好ましくは24〜28%の範囲である。
Mo:1〜5%
Moも合金の耐食性、特に耐孔食性や耐隙間腐食性を向上させる元素として重要である。その効果を発揮させるためには、最低1%以上の含有が必要である。しかしながら、5%を超える含有はσ相の析出を著しく促進して、延性や靭性に悪影響を及ぼす。従って、Mo量は1〜5%の範囲とする。また、耐孔食性の観点からは、好ましくは3〜5%の範囲である。
N:0.01〜0.30%
Nは合金の耐食性、特に耐孔食性を向上させる元素として重要であり、同時に、強度を向上させる元素としても有効であるので、その効果を発揮させるためには、最低0.01%以上の含有量が必要である。しかしながら、0.30%を超える含有は、合金の溶接特性に著しい悪影響を及ぼす。従って、N量は0.01〜0.30%の範囲とする。また、耐孔食性の観点からは、好ましくは0.15〜0.30%の範囲である。
Si:0.001〜0.15%
Siはσ相の析出を著しく促進する元素であり、極力低下することが望ましい。溶体化処理を省略してもシグマ相の析出を抑えるには、Si量は0.15%以下とする必要がある。しかしながら、合金の溶解、製錬を行う際には、Siは脱酸元素として有益な元素である。そのため、Siを過剰に低下することは工業的に非常に困難である。従って、Siの許容含有量の範囲を0.001〜0.15%とする。なお、好ましくは0.05%以下とする。
以上が本発明の合せ材の基本成分であり残部はFe及び不可避的不純物であるが、更に特性を向上させるために、上記成分に加えて選択的にWを以下の範囲で含有してもよい。
W:1〜3%
Wは合金の耐食性、特に耐孔食性を向上させる元素として重要であり、その効果を発揮させるには最低1%以上の含有が必要である。しかしながら、3%を超えて含有するとシグマ相析出が促進されるため、W量は1〜3%の範囲とすることが好ましい。
なお、本発明の二相ステンレスクラッド鋼の母材としては、低炭素鋼または低合金鋼を用いる。
低炭素鋼、低合金鋼の規格としては、例えばJIS G 3106に規格化されている溶接構造用鋼材、JIS G 3103に規格化されているボイラ及び圧力容器用炭素鋼及びモリブデン鋼鋼板、JIS G 3115に規格化されている圧力容器用鋼板、JIS G 3124に規格化されている中・常温圧力容器用高強度鋼鋼板等を用いることができる。
2.合せ材の金属組織について
前述のように合せ材である二相ステンレス鋼はα相とγ相の相分率がおよそ1:1であるときに最大の耐孔食性が発揮されることが明らかとなっている。従って、十分な耐孔食性を発現できる相分率としてα相およびγ相の相分率を各々40〜60%とする。
また、高耐孔食性を得るためにはσ相分率としては1.0%以下とする。
なお、相分率はα相+γ相+σ相合計で100%であり、σ相がゼロの場合はα相+γ相で100%とする。
相分率の測定方法について
相分率は20%NaOH溶液にて電解エッチングを施し、光学顕微鏡により撮影したカラー写真を画像処理ソフトで処理することで、α相、γ相、σ相それぞれの相分率を算出した。ここで、二相ステンレス鋼を20%NaOH溶液中で電解エッチングするとσ相、α相、γ相の順に濃くエッチングされるため、各相を区別することが可能となる。
CPTはCPT=2.5Cr+7.6Mo+31.9N−41.0により算出した。なお元素記号は各元素の質量%を示す。
ここで、各種元素濃度から算出されていることからも分かるように、上記計算式によって算出されたCPTはσ相分率が0%である溶体化材の耐孔食性の指標値である。一方、σ相が析出する場合にはCPTとσ相分率の兼ね合いによって耐孔食性が決定される。
CPTが高くなると素材の耐孔食性は向上するが、Cr、Mo、Nの含有量が多くなるためσ相は析出し易くなる。
上記の理由から請求項1、2記載の成分範囲内でかつ、CPTを50〜60℃の範囲とすることが好ましい。
3.二相ステンレスクラッド鋼の製造方法
本発明の二相ステンレスクラッド鋼の製造方法を以下に述べる。
加熱温度:1050〜1200℃
加熱温度を1050℃以上とするのは、合せ材であるステンレス鋼中のσ相を十分に固溶させるためである。この温度を下回る加熱温度で製造した場合、σ相が残存してしまうため耐孔食性に優れたクラッド鋼を製造することは出来ない。1200℃より高い加熱温度では母材の結晶粒粗大化が顕著であり、靭性が劣化する。従って、母材の靭性確保の観点から加熱温度を1200℃以下とする。
制御圧延:950℃以下の温度域における累積圧下率30%以上80%以下
制御圧延は800℃以上で仕上げ圧延を終了することを前提とし、さらに母材の強度、靭性を確保するために、制御圧延開始温度は950℃、累積圧下率は30%以上80%以下とする。仕上げ板厚との関係にもよるが、好ましい累積圧下率は50〜70%の範囲である。
圧下比:3以上
圧下比とはスラブ厚(圧延前のクラッド材の厚さ)/圧延後のクラッド材の厚さをいう。
熱間圧延において圧下比を3以上としたのは、クラッド鋼の接合は高温で圧下することにより、金属相互の結合力が生じることにより、圧下比3以上で良好な接合が得られるので圧下比は3以上とする。
圧延仕上げ温度:800℃以上
800℃以上の温度で圧延を終了するのは、圧延仕上げ温度が800℃未満となると、合せ材の二相ステンレス鋼のσ相の析出が著しくなるため圧延仕上げ温度は800℃以上とした。
冷却速度:2℃/s以上、冷却停止温度:700℃以下
圧延終了後に冷却速度2℃/s以上で700℃以下まで冷却するのは、760〜700℃の温度範囲における冷却速度が2℃/s未満では母材の結晶粒粗大化が著しく、靭性が劣化するためである。また、700℃以下では結晶粒成長速度は遅くなるため、700℃以下の冷却は放冷でも良いものとする。
4.評価方法について
次に合せ材の二相ステンレス鋼の耐孔食性について説明する。
耐孔食性の評価は、JIS G0578 塩化第二鉄腐食試験方法―試験方法(A)により評価した。
試験方法は50(±1)℃に加熱した6%FeCl+N/20塩酸水溶液中に試験片を24時間浸漬させ、試験前後の重量変化から腐食速度(g/m・h)を算出し、耐孔食性を評価した。評価基準は2.0g/m・h以下のものを耐孔食性が良好であると判断した。
合せ材と母材の接合性評価はJIS G0601 せん断強さ試験によった。
せん断強さ試験は合せ材を母材から接合面と平行に剥離し、その剥離に要した最大せん断強度から接合性を評価する方法である。評価基準はせん断応力が200MPa以上のものを接合性が良好であると判断した。
シャルピー衝撃は、母材についてJIS Z2242に規定の7.5×7.5mmサブサイズVノッチシャルピ衝撃試験片を採取し、測定した吸収エネルギー値に5/6を乗じて値を補正した。評価基準はシャルピー衝撃吸収エネルギー値が100Jを超えるものを靭性が良好であると判断した。
表1に示す13鋼種(発明鋼5鋼種、比較鋼8鋼種)を溶解して合せ材を作成し、この合せ材を使ってクラッド鋼を作成し、σ相の発生状況を調査した。各合せ材を使ったクラッド鋼のスラブを加熱温度1150℃で加熱後、圧延を開始し、圧下比4、850〜950℃における累積圧下率を50%として、800℃で圧延を終了し、加速冷却開始温度760℃、加速冷却速度20℃/sとして加速冷却を開始し、610℃で加速冷却を終了した。その結果を表2に示す。
表2に表1記載の各鋼を合せ材に使用したクラッド鋼のα相分率、γ相分率、σ相分率、鋼の化学成分から算出したCPT(Critical Pitting Temperature)温度および塩化第二鉄腐食試験(JIS G0578、 50℃、 24時間浸漬)における腐食速度を示す。CPTはCPT=2.5Cr+7.6Mo+31.9N−41.0により算出した。なお元素記号は各元素の質量%を示す
塩化第二鉄腐食試験における合否判定基準は6%FeCl3+N/20塩酸水溶液中、50℃で24時間浸漬後に腐食減量が2.0g/m・hr以下のものを耐孔食性が良好であると判断した。
Figure 0005803890
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本発明の化学成分である鋼No.1〜4および鋼No.7は良好な耐孔食性を示した。中でも、σ相析出量が1.0%以下である鋼は特に良好な耐孔食性を示した。一方、Si量が0.15を超えている鋼No.5、鋼No.6および鋼No.8はσ相析出に伴う耐孔食性の劣化が見られた。鋼No.4と鋼No.7の結果を比較すると1.1%のWを含有する鋼No.7の方が高い耐孔食性を示す。しかし、Wを3.3%含有する鋼No.9はσ相析出による著しい耐孔食性の低下が生じた。本発明例と比較して、No.10はNiが上限外れ、No.11はNi、Crが上限外れ、No.12はSiが上限外れ、Moが下限外れ、No.13はSiが上限外れ、Nが下限外れである。これら鋼No.10〜13は元々含有している耐孔食性元素濃度が低く、低CPTであることに起因して耐孔食性が低いことが分かる。
次に母材に低炭素鋼を合せ材に二相ステンレス鋼を使用してクラッド鋼を製造した。
合せ材は表1に示す二相ステンレス鋼を使用した。母材の化学成分は、鋼種A(0.073C−0.17Si−1.21Mn−0.001P−0.001S)、鋼種B(0.045C−0.21Si−1.05Mn−0.0009P−0.0008S−0.21Cu−0.18Ni−0.045Nb−0.012Ti)を使用した。
クラッド鋼の製造結果を表3に、試験結果を表4に示す。
Figure 0005803890
Figure 0005803890

Claims (5)

  1. 二相ステンレスクラッド鋼の合せ材の成分組成が、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.001〜0.15%、Mn:2%以下、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Ni:2〜10%、Cr:20〜28%、Mo:1〜5%、N:0.01〜0.30%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で求めるCPTが50〜60℃の範囲であることを特徴とする耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の合せ材。
    CPT=2.5Cr+7.6Mo+31.9N−41.0・・・式(1)
  2. 前記合せ材の成分組成が、更に、質量%で、W:1〜3%を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の合せ材。
  3. 前記合せ材の金属組織がアルファ相およびガンマ相の相分率を各々40〜60%、シグマ相の相分率を1%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の合せ材。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載の二相ステンレスクラッド鋼の合せ材と低炭素鋼または低合金鋼の母材とからなる耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼。
  5. 請求項4に記載の二相ステンレスクラッド鋼の素材を用いて、1050〜1200℃に加熱後、熱間圧延を開始して、950℃以下の温度域における制御圧延の累積圧下率を30%以上80%以下、圧下比3以上とし、圧延仕上温度を800℃以上とする熱間圧延を行った後、直ちに冷却速度2℃/s以上、冷却停止温度700℃以下とする加速冷却を行った後に放冷することを特徴とする耐孔食性に優れた二相ステンレスクラッド鋼の製造方法。
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