JP5801129B2 - 木製部材の接合方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、一対の木製部材の長手軸線に沿って溝を形成し、木製部材の接合端面同士を突き合わせるように位置決めした後、棒状部材としての異形鉄筋を溝に埋設し、この溝に接着剤を充填し、そして、所定の栓部材によって溝を覆う木製部材の接合方法が記載されている。
そうなると、長尺状の木製部材同士を繋いで一本の木製部材としたときには接合部が外れ折れたり、一対の板状の木製部材同士を重ね合わせて一枚の木製部材としたときには一方の木製部材が他方の木製部材から剥がれたりする。
本発明の木製部材の接合方法によれば、予め溝に固定用接着剤が充填されているため、補強材として高強力繊維線材と木製部材との間に空気が入り込むことが抑制でき、補強材と溝の溝面との間に十分な固定用接着剤を介在させることができる。従って、補強材と木製部材との間の接着力を確保することができる。
この木製部材の接合方法によれば、第1の木製部材と第2の木製部材との接着面に沿って形成され、接着剤が充填された溝に補強材を配置して、第1の木製部材と第2の木製部材との接着面同士を突き合わせて押圧することにより、段積みした第1の木製部材と第2の木製部材との間に補強材を配置した状態で、第1の木製部材と第2の木製部材とを接合することができる。また、第1の木製部材および第2の木製部材のそれぞれと補強材との間の接着力を確保することができ、高強力繊維線材の補強効果を発揮させることができるので、曲げに対する強度や引張強度を向上させることができる。
この木製部材の接合方法によれば、第1の木製部材と第2の木製部材とが接合工程にて端面同士が接着されているので、第1の木製部材と第2の木製部材とに跨るように形成された溝に、一度に固定用接着剤を充填することができる。この溝に補強材を配置することにより、端面同士が接着された第1の木製部材と第2の木製部材とに補強材を跨らせて配置することができる。また、第1の木製部材および第2の木製部材のそれぞれと補強材との間の接着力を確保することができ、高強力繊維線材の補強効果を発揮させることができるので、曲げに対する強度や引張強度を向上させることができる。
本発明の実施の形態に係る木製部材補強用の高強力繊維線材(以下、単に高強力繊維線材と略す。)を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、高強力繊維線材1aは、芯線2と、拘束材3aとにより構成されている。
芯線2は、高強力繊維糸4を、繊維方向を合わせ交絡させずに束ねた高強力繊維束5により形成されている。
高強力繊維糸4は、スーパー繊維とも称される繊維が使用できる。高強力繊維糸4としては、例えば、炭素繊維、バサルト繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ポリビニルアルコール(PVA繊維)などが使用できる。
なお、芯線2を構成する高強力繊維束5は、芯線2の周囲面が接着面として機能することを阻害しない程度にサイジング剤や集束剤を含浸させてもよい。
また、この炭素繊維糸を束ねた炭素繊維束は、炭素繊維メーカーから供給される炭素繊維糸6000本(6K)、12000本(12K)、24000本(24K)を、必要とされる強度に応じて1本、または複数本束ねたものを用いることができる。
本実施の形態1では、芯線2の周囲面に、拘束材3aとなる繊維を巻き回して、目の粗い筒状の組紐(丸打)を組むことで、組紐状の拘束材3aを形成している。また、拘束材としては、図2に示すように、芯線2の周囲面に拘束材3bとなる繊維を巻き回して目の粗い筒状の丸編を編むことで、編紐状の拘束材3bとすることもできる。
拘束材3a,3bとしては、柔軟なものが好ましく、ポリエステル、ナイロン、ビニロン等の合成繊維や、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、絹、羊毛、麻、綿などの天然繊維が使用できる。
拘束材3aは、芯線2の長さ方向に対して0.5mm〜30cmのピッチで交差させるとよく、特に、1cmから10cmがより好ましい。
芯線2の被覆率は、高強力繊維線材の周囲面全体の面積に対する拘束材が占める面積の割合である。被覆率は、拘束材が芯線2の周囲面に一様に配置されたものであるときには、高強力繊維線材を側方から撮像し、撮像された画像から高強力繊維線材全体の面積と、拘束材が占める面積とを測定して、次式に従って演算することで算出することができる。
被覆率(%)=(拘束材が占める面積)/(高強力繊維線材全体の面積)×100
必要本数の高強力繊維束5をクリールから引き出し、それらを束ねて芯線2とする。この芯線2を製紐機の中央に通す。そして、製紐機により芯線2の周囲面に拘束材3aにより目の粗い組物を形成する。そうすることで、組紐状の拘束材3aが芯線2の周囲面に形成されて、芯線2がばらばらにならないように結束され、長尺状の高強力繊維線材1aとなり、ドラムなどに巻き取ることができる。高強力繊維線材1aは柔軟な芯線2を拘束材3aで結束しただけなので、ドラム等に容易に巻き付けることができる。従って、移動や保管が容易である。
好適な具体例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン42等)、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、レゾルシノール樹脂などが挙げられるが、これに制限されない。
樹脂として熱可塑性樹脂をコートする場合で説明すると、図6に示すような装置を用いた場合、クリール7aから供給された高強力繊維束(芯線2)を製紐機(図示せず)に通したり、丸編機(図示せず)に通したりして拘束材3を形成した後、溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させ、その後、必要に応じてマングルで絞り、余分な熱可塑性樹脂を取り除いてダイス7bで線径を整えたのちに必要に応じて加熱炉7cにより乾燥、硬化させることでコーティングを行う。そして、乾燥、硬化したものを裁断機7dに所定長さに切断すれば、切断した状態で移動、保管を行うことができる。
次に、本発明の実施の形態2に係る高強力繊維線材を図5に基づいて説明する。なお、図5においては、図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図5に示す高強力繊維線材1gは、芯線2の周囲面を他の木製部材との固定用接着剤による接着面とするために、芯線2に固化剤を含浸させて高強力繊維糸4を結束したものである。
また、固化剤を、芯線2を結束する拘束材として機能させているため、図1〜図3に示す拘束材3a〜3cを省略することができる。
(実施の形態3)
図1から図5に示す高強力繊維線材1a〜1gを補強材として用いてラミナを接合した集成材により形成した木製品を、図7から図11に基づいて説明する。図7および図8に示す集成材100は、略板状の木製部材である4本のラミナ100a〜100dの対向面を接着面として、接着面同士を貼り合わせて、厚みがあるが一枚の板状部材(柱状物)としたものである。ラミナ100a〜100dのうち、ラミナ100b(第1の木製部材)とラミナ100c(第2の木製部材)との間に、補強のための補強材1xが配置されている。
補強材1xは、図1から図5に示す高強力繊維線材1a〜1gのいずれかとすることができる。ラミナ100cには、補強材1xを配置するための溝100eが設けられている。
また、図9(B)では、溝100fを矩形状に形成することもできる。
更に、溝を三角形状や五角形以上の多角形状とすることもできる。溝の断面を正多角形状とするときには、補強材1xを配置しやすいように、正多角形の一辺または複数の辺を開放した形状とするのが望ましい。
まず、ステップS10での溝切削工程にて、ラミナ100cに溝100eを形成する。溝100eの溝幅は、この溝100eに配置される補強材1xの太さに対して幅広過ぎると、大量の固定用接着剤が必要となるため、補強材1xが挿入可能な幅とするのが望ましい。
次に、ステップS20での接着剤充填工程にて、溝100eに固定用接着剤を充填すると共に、溝100eが形成されているラミナ100cの溝形成面100gに固定用接着剤を刷毛やスプレー、シャワーなどにより塗布する。
また、ラミナ100aとラミナ100b、およびラミナ100cとラミナ100dのそれぞれの対向面のいずれか一面、または両面に固定用接着剤を塗布する。
この固定用接着剤は、前述のようにレゾルシノール樹脂、フェノールレゾルシノール樹脂、フェノール樹脂、α−オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂や水性高分子−イソシアネート系樹脂等の公知の接着剤が使用できる。特に、木製部材と高強力繊維糸の両方に親和性が高いものが好ましく、高強力繊維糸として炭素繊維糸を用いる場合には、レジルシノール樹脂やフェノールレゾルシノール樹脂を好ましく用いることができる。
次に、ステップS40での接合工程にて、ラミナ100aからラミナ100dの接着面同士を突き合わせ押圧して、ラミナ100aからラミナ100dを貼り合わせ接合することで、集成材100とすることができる。
このようにして、ラミナ100bとラミナ100cとの間に補強材1xを配置した状態で、段積みしたラミナ100a〜ラミナ100dを接合することができる。
従って、集成材100を曲げたときに、芯線2の接着面で十分な接着力を確保することができるので、拘束材3a〜3cだけがラミナ100cやラミナ100bに接着した状態で芯線2から剥離してしまうことや、拘束材3a〜3cがラミナ100,100bから剥離してしまうことが軽減される。よって、ラミナ100b,100cが芯線2から剥離し難くすることができるので、集成材の曲げに対する強度を向上させることができる。
また、高強力繊維線材1gとした補強材1xは、補強材1xの周囲面全体を接着面として固化剤、固定用接着剤を介してラミナ100cやラミナ100bに接着させた状態とすることができる。従って、集成材100を曲げたときに、芯線全体を被覆する別繊維が剥がれてしまうようなことを防止することができるので、集成材の曲げに対する強度を向上させることができる。
更に、高強力繊維線材1d〜1gは、芯線2が固化剤により硬質に一体化して棒状に形成されているため、高強力繊維線材1d〜1gを溝100eに容易に配置することができる。
まず、接着剤充填工程で溝100eに固定用接着剤を充填しておき、次の補強材配置工程で補強材1xを溝100eに配置し、そして、接合工程でラミナ100a〜100dのそれぞれの接着面となる対向面に固定用接着剤を塗布し、ラミナ100a〜100dを段積みして貼り合わせ集成材100とする。集成材の接合方法としては、このような手順としてもよい。
次に、図1から図5に示す高強力繊維線材1a〜1gを用いてラミナを接合した木製品を、図11に基づいて説明する。
図11に示す集成材101は、4本のラミナ100a〜100dのうち、ラミナ100aを第1の木製部材とし、ラミナ100bを第2の木製部材として、断面が矩形状の溝100fをラミナ100bに形成し、補強材1xを配置したものである。補強材1xが配置された位置が異なる以外は、実施の形態3にて説明した集成材100(図7から図9を参照)と同じであるため詳細な説明は省略する。
図11に示す集成材101を発明品として作製した。このときの補強材1xは図1に示す高強力繊維線材1aとした(図12参照)。
芯線2は、高強力繊維糸4として、12000本の炭素繊維糸が収束された12Kの炭素繊維束を30本引き揃えたもの(炭素繊維糸にも炭素繊維束にも実質的に撚りが掛かっていない)を使用した。また、拘束材3は、1000デシテックスのポリエステル繊維を製紐機により芯線2の周囲面に、芯線2の長さ方向に対して約2.7cmのピッチで巻き回したものとした。このときの被覆率は29%であった。
このような集成材101に対して、ラミナ100aの中央部に押圧力(図11においては矢印F1で示す)を加えて、曲げ強さ、ヤング係数(スパン1620mm、荷重点間距離360mm)を測定したところ、曲げ強さは68MPa、ヤング係数は8.5MPaであった。
また、測定後の発明品を観察したところ、割れた箇所は木の節がある部分であり、節のないラミナであれば更に高い曲げ強さおよびヤング係数が得られる可能性があることがわかった。また、測定後の従来品は2つに割れてしまったが、測定後の発明品は集成材が欠ける程度であった。
従って、ラミナ100aの中央部を押圧するときには、補強材1xをラミナ100aとラミナ100bとの間に位置させるより、溝を100dに形成して、補強材1xをラミナ100cとラミナ100dとの間に位置させる方が曲げ強さやヤング係数を向上させることができる。つまり、集成材に対して押圧力が加わる位置から遠い位置にあるラミナの間に補強材を配置する方が曲げ強さやヤング係数を向上させるという点では有利である。
次に、図1から図5に示す高強力繊維線材1a〜1gを用いて木製部材を接合した木製品を、図14から図16に基づいて説明する。
図14および図15に示す集成材105は、2本の長尺状の木製部材105a(第1の木製部材),木製部材105b(第2の木製部材)の端面を接着面として、接着面同士を貼り合わせ、一本の棒状部材としたものである。木製部材105aと木製部材105bとには、補強のための補強材1xが2本に跨るように配置されている。
補強材1xは、図1から図5に示す高強力繊維線材1a〜1gのいずれかとすることができる。補強材1xは、木製部材105aと木製部材105bとの軸線に沿って設けられた溝105cに配置されている。溝105cは、底面が円弧面に形成されている。
まず、ステップS50での溝切削工程にて、木製部材105aと木製部材105bとに、それぞれの軸線に沿って直線状の溝105cが連続するように切削する。このとき、溝105cの溝幅が、補強材1xの太さに対して幅広過ぎないように、補強材1xが挿入可能な幅となるようにする。また、溝105cの底面が円弧面となるように切削する。溝105cの底面を円弧面とすることで、補強材1xと底面との隙間がほぼ均等になるため、溝105cの内面と補強材1xの周囲とを均等に接着せることができるので、接着強度を向上させることができる。また、補強材1xと底面との隙間が少なくなるため、無駄となってしまう固定用接着剤を減らすことができる。
次に、ステップS70での接着剤充填工程にて、溝105cに固定用接着剤を充填する。木製部材105aと木製部材105bとが、ステップS60による接合工程にて端面同士が接着されているので、木製部材105aと木製部材105bとに跨るように形成された溝105cに、一度に固定用接着剤を充填することができる。
この固定用接着剤は、前述のようにレゾルシノール樹脂、フェノールレゾルシノール樹脂、フェノール樹脂、α−オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂や水性高分子−イソシアネート系樹脂等の公知の固定用接着剤が使用できる。特に、高強力繊維糸として炭素繊維糸を用いる場合には、木製部材と炭素繊維糸との両方に親和性が高いものが好ましく、レジルシノール樹脂やフェノールレゾルシノール樹脂を好ましく用いることができる。
1x 補強材
2 芯線
3a,3b,3c 拘束材
4 高強力繊維糸
5 高強力繊維束
7a クリール
7b ダイス
7c 加熱炉
7d 裁断機
100,101,102 集成材
100a〜100d ラミナ
100e,100f 溝
100g 溝形成面
105 集成材
105a,105b 木製部材
105c 溝
Claims (6)
- 第1の木製部材と第2の木製部材との接着面を突き合わせ、前記第1の木製部材と前記第2の木製部材とを固定用接着剤により接着する接合工程を備えた木製部材の接合方法において、
前記第1の木製部材と前記第2の木製部材との間に、炭素繊維を含む高強力繊維糸を束ねた高強力繊維束により形成された芯線と、前記芯線の周囲面が接着面として露出した状態で結束する拘束材とを備えた高強力繊維線材を介在させて接着するための溝に、固定用接着剤を充填する接着剤充填工程と、
前記接着剤充填工程にて固定用接着剤が充填された前記溝に前記高強力繊維線材を補強材として配置する補強材配置工程とを含むことを特徴とする木製部材の接合方法。 - 前記高強力繊維線材は、前記拘束材による前記芯線の被覆率が70%以下である請求項1記載の木製部材の接合方法。
- 前記接着剤充填工程では、前記第1の木製部材と前記第2の木製部材とのいずれか一方、または両方の接着面に沿った溝に、固定用接着剤を充填し、
前記接合工程では、前記第1の木製部材と前記第2の木製部材との接着面同士を突き合わせて押圧して、前記補強材配置工程にて配置された前記補強材を前記第1の木製部材と前記第2の木製部材とに接着する請求項1または2記載の木製部材の接合方法。 - 前記接着剤充填工程では、前記接合工程にて端面同士が接着された前記第1の木製部材と前記第2の木製部材とに跨る溝に固定用接着剤を充填する請求項1から3のいずれかの項に記載の木製部材の接合方法。
- 前記溝の底面を、断面が円弧状、矩形状に切削する請求項1から4のいずれかの項に記載の木製部材の接合方法。
- 前記固定用接着剤は、レゾルシノール樹脂、フェノールレゾルシノール樹脂、フェノール樹脂、α−オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、水性高分子−イソシアネート系樹脂のいずかれを主成分としたものである請求項1から5のいずれかの項に記載の木製部材の接合方法。
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