JP6022186B2 - 筋材 - Google Patents

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Description

本発明は、高強力繊維線材を鉄筋等に代わる筋材としてコンクリート構造物等の被定着物に定着させて使用するための定着治具を用いた筋材に関する。
炭素繊維は引張強度や弾性係数等の機械的性能、酸やアルカリに対する耐食性に優れると共に、軽量であることから、自動車、航空機、電気・電子機器、玩具、家電製品などの様々な産業分野においても使用され、構造物用途への適用も試みられている。例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)をコンクリート構造物の補強用に使用した例が報告されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
従来、コンクリートの補強のため、コンクリート中に埋設される筋材として、金属製のいわゆる鉄筋が用いられているが、鉄筋は重量(比重)が大きいため、高層ビルなど単位面積当たりの重量負荷が大きくなる構造物に使用する場合、鉄筋自体の重量を保持できるよう設計する必要があり、設計上の制約やコスト高の一因となっている。また、従来の鉄筋は工場で製造された材料をそのまま建設現場まで輸送して施工することが多く、その形状やサイズに制約があり、長尺物の製造や輸送が難しく、また作業性も悪いといった問題がある。加工性・施工性については、現場で自由に曲げ加工等の加工が施せない点が使用上の大きな制約となっている。また、コンクリートの鉄筋に使用した場合、コンクリートに含まれる成分によって腐食するという問題もある。このような背景から、鉄筋の代替物が求められている。
また、炭素繊維自体を直接コンクリート中の鉄筋の代替として使用する試みも数多くなされてきたが、コンクリート構造物への使用があまり普及していない。これは、炭素繊維とコンクリートとの接着力がそれほど高くないため、炭素繊維の強度が十分に発揮されないことが挙げられる。また、炭素繊維は、コンクリート構造物以外の部材に対しても、充分な接着力を確保することが難しいとされており、その利用は限られている。
特開2007−332667号公報 特開2008−156836号公報
そこで、本発明においては、炭素繊維線材などの高強力繊維線材を鉄筋等に代わる筋材として使用することを可能にする定着治具を用いた筋材を提供することを目的とする。
本発明の筋材は、高強力繊維糸を含む芯線と、前記芯線の外周を覆う繊維を含む編状筒紐からなる筒形体とが、樹脂により一体化された高強力繊維線材と、高強力繊維線材の端部が挿入され、一体化される胴部を有する定着治具とを含むものである
この筋材では、高強力繊維線材の端部に一体化された定着治具の胴部が高強力繊維線材よりも大きな外形となるため、この筋材の定着治具をコンクリート構造物等の被定着物に埋設させると、この定着治具の胴部が被定着物中で物理的な抵抗力を生じるので、高強力繊維線材に掛かる引張力に抵抗し、高強力繊維線材が被定着物に定着される。また、この筋材を鉄骨や木材等の被定着物と組み合わせて使用する場合には、定着治具の胴部を鉄骨や木材等の被定着物に対して溶接やボルト留め等の任意の方法で容易かつ強固に定着することができる。
また、本発明の定着治具は、胴部よりも大きな外形に形成された凸部を有することが望ましい。これにより、上述のように高強力繊維線材よりも大きな外形の胴部がコンクリート構造物等の被定着物中で物理的な抵抗力を生じるだけでなく、さらにこの胴部よりも大きな外形に形成された凸部が被定着物中で物理的な抵抗力を生じるので、高強力繊維線材はさらに強固に被定着物に定着される。
ここで、凸部は、胴部の端部または外周部に設けられた板材であることが望ましい。これにより、板材が胴部の端部または外周部に設けられた簡単な構造により、胴部に対して胴部よりも大径な凸部を形成することができる。
また、胴部の内面には、凹凸を有することが望ましい。これにより、胴部の内面と高強力繊維線材との付着力を増し、高強力繊維線材を定着治具と強固に一体化することができる。
また、胴部は、側方にスリットを有し、締め付けにより内径が小さくなるものであることが望ましい。これにより、高強力繊維線材が挿入された胴部を締め付けることで、容易に胴部の内面と高強力繊維線材との付着力を増し、高強力繊維線材を定着治具と強固に一体化することができる。また、胴部は、外周にねじが形成され、このねじにナットを締め付けることにより、胴部の内径が小さくなるものとすることで、ナットを締め付けるだけで、容易に胴部の内面と高強力繊維線材との付着力を増し、高強力繊維線材を定着治具と強固に一体化することができる。
(1)高強力繊維線材の端部が挿入される胴部を有する定着治具により、高強力繊維線材の端部に一体化された胴部が高強力繊維線材よりも大きな外形の筋材が得られる。この筋材は、コンクリート構造物等の被定着物に埋設して使用する場合には、定着治具の胴部が被定着物中で物理的な抵抗力を生じ、高強力繊維線材に掛かる引張力に抵抗し、高強力繊維線材が被定着物に定着されるので、高強力繊維線材を鉄筋等に代わる筋材として使用することが可能となる。また、この筋材を鉄骨や木材等の被定着物と組み合わせて使用する場合には、定着治具の胴部を鉄骨や木材等の被定着物に対して溶接やボルト留め等の任意の方法で容易かつ強固に定着することができるので、高強力繊維線材を鉄筋等に代わる筋材として使用することが可能となる。
(2)胴部よりも大きな外形に形成された凸部を有することにより、この凸部がコンクリート構造物等の被定着物中でさらに大きな物理的な抵抗力を生じるので、高強力繊維線材はさらに強固に被定着物に定着される。
(3)凸部が、胴部の端部または外周部に設けられた板材であることにより、簡単な構造で、高強力繊維線材を被定着物に強固に定着させることが可能となる。
(4)胴部の内面に凹凸を有することにより、胴部の内面と高強力繊維線材との付着力を増して、高強力繊維線材を定着治具と強固に一体化し、高強力繊維線材を被定着物にさらに強固に定着させることが可能となる。
(5)胴部は、側方にスリットを有し、締め付けにより内径が小さくなるものであることにより、高強力繊維線材が挿入された胴部を締め付けることで、容易に胴部の内面と高強力繊維線材との付着力を増して、高強力繊維線材を定着治具と強固に一体化し、高強力繊維線材を被定着物にさらに強固に定着させることが可能となる。特に、胴部が、外周にねじが形成され、このねじにナットを締め付けることにより、胴部の内径が小さくなるものとすると、ナットを締め付けるだけで、容易に胴部の内面と高強力繊維線材との付着力を増して、高強力繊維線材を定着治具と強固に一体化し、高強力繊維線材を被定着物にさらに強固に定着させることが可能となる。
本発明の実施の形態における定着治具を用いた筋材の端部を示す斜視図である。 図1の筋材の使用状態を示す斜視図である。 本発明の別の実施形態を示す定着治具を用いた筋材の端部を示す斜視図である。 別のプレートを有する定着治具の例を示す斜視図である。 鋼管の別の実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)はさらに別の実施形態を示す右側面図、(d)、(e)、(f)はさらに別の実施形態を示す正面図である。 鋼管のさらに別の実施形態を示す右側面図である。 鋼管のさらに別の実施形態を示す断面図である。 鋼管のさらに別の実施形態を示す縦断面の端面図である。 鋼管のさらに別の実施形態を示す縦断面の端面図である。 鋼管のさらに別の実施形態を示す縦断面の端面図である。 鋼管のさらに別の実施形態を示す縦断面の端面図である。 図8(a),(b),(c)の鋼管内面の展開図である。 定着治具の胴部を一対の板材で構成した例を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のA矢視図、(c)はさらに別の例を示す図である。 本発明の紐状強化繊維複合体の模式図であり、(a)は外観図、(b)は断面図(芯線を構成する紐状炭素繊維束:7本)である。 本発明の紐状強化繊維複合体の芯線における紐状炭素繊維束の配置を表す図であり、該紐状炭素繊維束が、それぞれ(a)1本、(b)3本、(c)7本の例である。 樹脂コーティング装置の模式図である。 本発明の実施の形態2−1に係る高強力繊維線材の模式図である。 本発明の実施の形態2−1の高強力繊維線材の第1変形例を示す図である。 本発明の実施の形態2−1の高強力繊維線材の第2変形例を示す図である。 本発明の高強力繊維線材の製造方法を説明するための図である。 本発明の高強力繊維線材の別の製造方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態2−2に係る高強力繊維線材を示す模式図であり、(a)は側面一部拡大図、(b)は断面図(高強力繊維束:19本)である。 本発明の実施の形態2−3に係る高強力繊維線材を示す模式図であり、(a)は外観図、(b)は断面図(高強力繊維束:19本)である。 実施例2−1の高強力繊維線材の構成部材の写真であり、(a)は高強力繊維糸を束ねた芯線と拘束材とからなる高強力繊維束の拡大写真であり、(b)は(a)の高強力繊維束を40本引きそろえた束の外周に、繊維材料からなる筒状体を配置した状態(固化剤による一体化前)の写真である。 実施例2−2の高強力繊維線材の写真であり、(a)は高強力繊維糸を束ねた芯線と拘束材とからなる高強力繊維束の拡大写真であり、(b)は(a)の高強力繊維束を40本引きそろえた束の外周に、繊維材料からなる筒状体を配置した状態(固化剤による一体化前)の写真である。 実施例2−2の高強力繊維線材を定着治具に固定した状態を説明するため写真であり、(a)は高強力繊維線材末端の挿入前(高強力繊維束にばらしたもの)、(b)は高強力繊維線材末端の挿入後(固定後)の写真である。 実施例2−3の高強力繊維線材を定着治具に固定した状態を説明するため写真であり、高強力繊維線材末端の挿入前(高強力繊維束にばらしていないもの)の写真である。
以下、本発明に係る高強力繊維線材の実施形態について、図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。また、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態における定着治具を用いた筋材の端部を示す斜視図である。図1において、本発明の実施の形態における筋材1は、炭素繊維による構造用の線材料からなる高強力繊維線材としての炭素繊維線材2と、炭素繊維線材2の端部に一体化される定着治具3と、炭素繊維線材2と定着治具3とを一体化する接着剤や樹脂材等の固着材4とから構成される。なお、炭素繊維線材2の詳細については後述する。
定着治具3は、炭素繊維線材2の端部が挿入される胴部を構成する管材としての鋼管3aからなる。鋼管3aは円筒状の鋼製の管であり、その内径は炭素繊維線材2を挿入可能な程度に炭素繊維線材2の外径よりも大きい。もちろん、鋼管3aの外径は、炭素繊維線材2の外径よりも大きいものである。なお、鋼管3aは、FRPなどの合成樹脂の他、別の素材により形成することも可能である。要するに、定着治具3を炭素繊維線材2と強固に一体化することが可能な素材であれば良い。
固着材4としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、湿気硬化性樹脂、セメントなどを用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド、ウレタン樹脂などが挙げられる。
湿気硬化性樹脂としては、湿気でイソシアネート基が生成してくる樹脂であるウレタン樹脂、変性シリコーン樹脂などが挙げられる。
セメントとしては、石膏、生石灰、また、生石灰や珪酸塩を用いた高膨張圧が発揮できる材料などが挙げられる。
上記構成の定着治具3によれば、定着治具3の鋼管3a内に炭素繊維線材2の端部を挿入し、定着治具3の鋼管3a内と炭素繊維線材2との間に固着材4を充填して、定着治具3と炭素繊維線材2とを一体化させることにより、図1のように端部に定着治具3が一体化された筋材1が得られる。なお、定着治具3と炭素繊維線材2との一体化には固着材4を用いることが望ましいが、嵌め合い等により定着治具3を炭素繊維線材2と強固に一体化することができれば、固着材4を省略することも可能である。以下で説明する実施形態についても同様である。
図2は図1の筋材1の使用状態を示す斜視図である。図2に示すように、筋材1の端部の定着治具3をコンクリート構造物等の被定着物5中に埋設させると、定着治具3の鋼管3aが炭素繊維線材2よりも大きな外形となっているため、被定着物5中で物理的な抵抗力を生じ、炭素繊維線材2に掛かる引張力に抵抗する。すなわち、定着治具3により、炭素繊維線材2が被定着物5に定着されることになる。また、この筋材1を鉄骨や木材等の被定着物と組み合わせて使用する場合には、鋼管3aを鉄骨や木材等の被定着物に対して溶接やボルト留め等の任意の方法で容易かつ強固に定着することができるので、炭素繊維線材2を鉄筋等に代わる筋材1として使用することが可能となる。
図3は本発明の別の実施形態を示す斜視図である。図3に示す筋材1aでは、前述の定着治具3に代えて、炭素繊維線材2の端部が挿入される胴部を構成する鋼管6aと、鋼管6aの端部に設けられた円形のプレート6bとから構成される定着治具6を用いている。
鋼管6aは前述の鋼管3aと同様である。プレート6bは、鋼管6aよりも大径に形成され、鋼管6aの外周面から外側に突出した凸部を構成している。プレート6bは鋼製であり、鋼管6aに対して溶接されている。なお、鋼管6aおよびプレート6bは、FRPなどの別の素材により形成することも可能である。要するに、固着材4によって炭素繊維線材2と強固に一体化することが可能な素材であれば良い。
なお、プレート6bに代えて、図4に示すように鋼管6aの中途部に円形リング状のプレート6cを設けた構成とすることも可能である。あるいは、プレート6cを炭素繊維線材2の端部が挿入される側(図の左側)の端部に設けることも可能である。要するに、鋼管6aの端部または外周部にプレート6b,6cのような板材により、鋼管6aの外径よりも大きな外形の凸部が形成されていれば良い。また、図示しないが、プレート6b,6cの形状についても、円形以外に多角形その他の形を採用することが可能である。
上記構成の定着治具6によれば、定着治具6の鋼管6a内に炭素繊維線材2の端部を挿入し、定着治具6の鋼管6a内と炭素繊維線材2との間に固着材4を充填して、定着治具6と炭素繊維線材2とを一体化させることにより、図3および図4のように端部に定着治具3が一体化された筋材1aが得られる。この筋材1aの端部をコンクリート構造物等の被定着物中に埋設させると、炭素繊維線材2よりも大きな外形の鋼管6aだけでなく、プレート6b,6cもが被定着物中で物理的な抵抗力を生じ、炭素繊維線材2に掛かる引張力に抵抗する。したがって、炭素繊維線材2は定着治具5によってさらに強固に被定着物に定着される。
また、この定着治具6では、プレート6b,6cによって鋼管6aの端部または外周部に簡単な構造に凸部が形成されて、この凸部により上記コンクリート構造物等の被定着物中での物理的な抵抗力を生じさせており、炭素繊維線材2を被定着物に強固に定着させることが可能となる定着治具6を安価に提供することが可能となっている。
次に、上記鋼管3a,6aの別の実施形態について説明する。
図5は鋼管の別の実施形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は右側面図である。図5に示す鋼管7は、側方に一端部から他端部までスリット7aが形成されている。この鋼管7は、鋼管7の外径よりも内径が小さいリング等により外側から締め付けることで、スリット7aの幅の範囲内でその内径が小さくなるようになっている。なお、図示しないが、以下で説明する鋼管には、前述と同様にプレート6b,6c等により凸部を形成しても良い。
この鋼管7では、炭素繊維線材2が挿入され、固着材4が充填された鋼管7を締め付けることで、容易に鋼管7の内面と炭素繊維線材2および固着材4との付着力を増し、炭素繊維線材2と強固に一体化することができる。なお、鋼管7の締め付けは、例えば図4に示す円形リング状のプレート6cを兼用することも可能である。また、鋼管7を締め付ける場合、固着材4を省略しても鋼管7の内面と炭素繊維線材2との付着力を十分確保できることもある。
また、スリット7aに関しては、図5(c)の右側面図に示すように一端部まで到達しないスリット7bとすることも可能である。これにより、スリット7bが形成されていない部分に関しては、リング等の締め付けにより径が変化しないため、図3に示すように端部にプレート6b等を有する場合にプレート6bが変形することを防止することができる。なお、スリット7bの数については、図5(d)、(e)、(f)の正面図に示すように2本、3本、4本等と複数形成することも可能である。
また、図6は鋼管のさらに別の実施形態を示す右側面図である。図6に示す例では、図5(a)、(b)に示す鋼管7と同様に、側方に一端部から他端部までスリット8aが形成された鋼管8の外周の一部に、ねじ8bが形成されたものである。この鋼管8では、ねじ8bにナット(図示せず。)を締め付けることで、鋼管8の内径が小さくなるようになっている。
このような構成であっても、炭素繊維線材2が挿入され、固着材4が充填された鋼管8をナットにより締め付けるだけで、容易に鋼管8の内面と炭素繊維線材2および固着材4との付着力を増し、炭素繊維線材2と強固に一体化することができる。なお、ねじ8bは鋼管8の外周の全部に形成することも可能である。また、このねじ8bは、図5の(c)〜(f)に示す鋼管7にも同様に適用可能である。
また、図7は鋼管のさらに別の実施形態を示す断面図である。図7(a)に示す例では、鋼管9の炭素繊維線材2の端部が挿入される側(図の左側)の端部内面が曲面9aとなっている。これにより、この鋼管9に挿入されて固着材4により一体化された炭素繊維線材2に、この曲面9aが形成された端部から応力が集中することを防止することができ、炭素繊維線材2の破損を防止することが可能となる。
図7(b)に示す例は、鋼管10の内面に凹凸10aを有するものである。これにより、この鋼管10内に炭素繊維線材2が挿入され、固着材4により一体化されると、鋼管10の内面と炭素繊維線材2および固着材4との付着力が増し、炭素繊維線材2を鋼管10と強固に一体化することができる。したがって、この鋼管10を有する定着治具により、炭素繊維線材2を被定着物にさらに強固に定着させることが可能となる。なお、図7(b)の曲面9aは無くても良い。単に、普通の鋼管10内にねじ切りすることにより鋼管10の内面に凹凸10aを形成すれば、定着治具の製造が容易となり、かつ炭素繊維線材2を鋼管10と強固に一体化できるので好ましい。このことは、本明細書中で説明している他の例についても同様である。
図7(c)に示す例は、鋼管11の内径が、炭素繊維線材2の端部が挿入される側(図の左側)の端部から奥側(図の右側)に向かって細くなっているものである。なお、この鋼管11には、図5に示すようなスリット7a,7bが形成されているものとする。これにより、炭素繊維線材2は、内径が広い方(図の左側)から鋼管11内に挿入するので、挿入し易い。また、この鋼管11をリング等で内径が広い方(図の左側)を締め付けていくと、鋼管11の長さ方向(図の左右方向)の内径の差がなくなっていくので、炭素繊維線材2の全体に渡って大きな差がなく締め付け圧が加わるようになり、鋼管11の全体で炭素繊維線材2を固定することが可能となる。また、鋼管11内の炭素繊維線材2に部分的に強い剪断力が加わることを防止することができるので、炭素繊維線材2の破断を防止することもできる。
一方、図7(d)に示す例は、図7(c)と逆に、鋼管12の内径が、炭素繊維線材2の端部が挿入される側(図の左側)の端部から奥側(図の右側)に向かって広くなっているものである。この鋼管12にも、図5に示すようなスリット7a,7bが形成されているものとする。これにより、鋼管12をリング等で締め付けることにより、鋼管12内に内径が狭い方(図の左側)から挿入された炭素繊維線材2に、その接合部で特に強い締め付け力を加えることができるので、炭素繊維線材2が鋼管12内から抜けることを防止することができる。なお、スリット7a,7bがない場合であっても、炭素繊維線材2が固着材4によって一体化されると、炭素繊維線材2の挿入口側が狭いため、炭素繊維線材2は、より抜けにくくなる。また、炭素繊維線材2の破断については、後述の紐状強化繊維複合体を用いることで防止することが可能である。
また、図7(e)に示す例は、図7(d)に示すように、鋼管12の内径が、炭素繊維線材2の端部が挿入される側(図の左側)の端部から奥側(図の右側)に向かって広くなっているものである場合に、鋼管12の端部に設けた前述のプレート6bと同様のプレート13が、鋼管12の内側に向かう凸部13aを有するものである。これにより、炭素繊維線材2を内径が狭い方(図の左側)から鋼管12内に挿入し、このプレート13の凸部13aに突き刺すようにすると、炭素繊維線材2の外径が大きくなる。そして、固着材4によって一体化すると、鋼管12の入口が狭いため、炭素繊維線材2はより抜けにくくなる。
図8〜図11は鋼管のさらに別の実施形態を示す縦断面の端面図である。図8(a)に示す鋼管40は、図7(b)に示す鋼管10の凹凸10aに代えて、幅L1、高さH1の断面矩形状の凹部40aと、幅L2、高さH1の断面矩形状の凸部40bとからなる凹凸を有するものである。凹部40aおよび凸部40bは、図12(a)に示すように、内面にリング状に形成されている。なお、幅L1,L2および高さH1は任意であり、凹部40aおよび凸部40bの数も任意である。また、図8(b)に示す鋼管41も同様に、その内面の凹凸が、幅L1、高さH1の断面矩形状の凹部41aと、幅L2、高さH1の断面矩形状の凸部41bとからなる。但し、凹部41aおよび凸部41bは、図12(b)に示すように、交互に螺旋状に形成されている。なお、幅L1,L2、高さH1および螺旋の巻数は任意である。また、図8(c)に示す鋼管42は、図12(c)に示すように、幅L2×W2の島状の凸部42bが、幅L1×W1の間隔(凹部42a)をおいて千鳥配列されている。なお、幅L1,L2,W1,W2、高さH1および凸部42bの数は任意である。また、凸部42bは千鳥配列に限らず、任意に配列することが可能である。
また、図8の(d),(e),(f)にそれぞれ示す鋼管43,44,45は、それぞれ図8の(a),(b),(c)の凹部40a,41a,42aおよび凸部40b,41b,42bの断面形状を、台形状の凹部43a,44a,45aおよび凸部43b,44b,45bとしたものである。また、図9の(a),(b)に示す鋼管46,47は、それぞれ図8の(d),(f)の凸部43b,45bの断面形状を三角形状の凸部46b,47bとしたものである。凹部46a,47aの断面形状は凹部43a,45aと同様の台形状である。また、また、図9の(c),(d)に示す鋼管48,49は、それぞれ図8の(d),(f)の凸部43b,45bの断面形状を半円状の凸部48b,49bとしたものである。凹部48a,49aの断面形状は、台形の上底と下底の両端を結ぶ線分が円弧状となった略台形状である。このような胴部の内面に凹凸を有する鋼管40〜49内に炭素繊維線材2が挿入され、固着材4により一体化されると、鋼管40〜49の内面の凹凸と炭素繊維線材2および固着材4との付着力が増し、炭素繊維線材2を鋼管10と強固に一体化することができ、この鋼管10を有する定着治具により、炭素繊維線材2を被定着物にさらに強固に定着させることが可能となる。
図10の(a),(b)に示す鋼管50,51は、図7(d)に示す鋼管11と同様に、鋼管50,51の内径が、炭素繊維線材2の端部が挿入される側(図の左側)の端部から奥側(図の右側)に向かって広くなっているものである。それぞれの鋼管50,51の内面に形成される凹部50a,51aおよび凸部50b,51bは、それぞれ図8(a),(c)に示す凹部40a,42aおよび凸部40b,42bに準ずる。これらの鋼管50,51においては、炭素繊維線材2が固着材4によって一体化されると、炭素繊維線材2の挿入口側が狭いため、炭素繊維線材2は、より抜けにくくなる。なお、前述の図7(d)で説明したものと同様に、鋼管50,51をリング等で締め付けることにより、鋼管50,51内に内径が狭い方(図の左側)から挿入された炭素繊維線材2に、その接合部で特に強い締め付け力を加えて、炭素繊維線材2が鋼管50,51内から抜けることを防止することも可能である。
さらに、図10の(c),(d)に示す鋼管52,53は、それぞれ同図(a),(b)の凹部50a,51aおよび凸部50b,51bと同様の凹部52a,53aおよび凸部52b,53bを有するが、さらに鋼管52,53の外周が炭素繊維線材2の端部が挿入される側(図の左側)の端部から奥側(図の右側)に向かって太くなるテーパ状となっている。これらの鋼管52,53では上述の鋼管50,51の作用効果に加えて、鋼管52,53をリング等で外周が細い方(図の左側)から太い方(図の右側)に向かって締め付けていくと、鋼管52,53の長さ方向(図の左右方向)の内径の差がなくなっていくので、炭素繊維線材2の全体に渡って大きな差がなく締め付け圧が加わるようになり、鋼管52,53の全体で炭素繊維線材2を固定することが可能となる。また、鋼管52,53内の炭素繊維線材2に部分的に強い剪断力が加わることを防止することができるので、炭素繊維線材2の破断を防止することもできる。
また、図11に示す鋼管54,55,56は、それぞれ図8(a)、図10(a)および図10(c)に示す鋼管40,50,52の内面の凹凸を省略したものである。但し、炭素繊維線材2の端部が挿入される側(図の左側)の端部の内径を小さくしている。これらの鋼管54,55,56においても、鋼管54,55,56内に炭素繊維線材2を挿入して固着材4により一体化することが可能であり、炭素繊維線材2が固着材4によって一体化されると、炭素繊維線材2の挿入口側が狭いため、炭素繊維線材2は、より抜けにくくなる。
特に、鋼管55では、図10(a)に示す鋼管50と同様、内径が炭素繊維線材2の端部が挿入される側(図の左側)の端部から奥側(図の右側)に向かって広くなっているので、固着材4によって一体化された炭素繊維線材2はさらに抜けにくくなる。また、この鋼管55をリング等で内径が広い方(図の右側)を締め付けていくと、鋼管55の長さ方向(図の左右方向)の内径の差がなくなっていくので、炭素繊維線材2の全体に渡って大きな差がなく締め付け圧が加わるようになり、鋼管55の全体で炭素繊維線材2を固定することが可能となる。また、鋼管55内の炭素繊維線材2に部分的に強い剪断力が加わることを防止することができるので、炭素繊維線材2の破断を防止することもできる。
また、鋼管56では、鋼管55の作用効果に加えて、鋼管56をリング等で外周が細い方(図の左側)から太い方(図の右側)に向かって締め付けていくと、鋼管56の長さ方向(図の左右方向)の内径の差がなくなっていくので、炭素繊維線材2の全体に渡って大きな差がなく締め付け圧が加わるようになり、鋼管56の全体で炭素繊維線材2を固定することが可能となる。また、鋼管56内の炭素繊維線材2に部分的に強い剪断力が加わることを防止することができるので、炭素繊維線材2の破断を防止することもできる。
図13は定着治具の胴部を一対の板材で構成した例を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のA矢視図である。図13に示す例では、定着治具14の胴部15が炭素繊維線材2の端部を両側から挟み込む一対の板材15a,15bにより構成されている。一対の板材15a,15bには、炭素繊維線材2の端部の形状に合わせてそれぞれ凹部16a,16bが形成されている。
この定着治具14では、炭素繊維線材2の端部を一対の板材15a,15bの間の凹部16a,16bに挟み込んだ状態で、ボルト17aおよびナット17bにより締結することで、定着治具14が炭素繊維線材2の端部に一体化された筋材18が得られる。このような構成においても、筋材18の端部をコンクリート構造物等の被定着物中に埋設させると、炭素繊維線材2よりも大きな外形の胴部15が被定着物中で物理的な抵抗力を生じ、炭素繊維線材2に掛かる引張力に抵抗するので、炭素繊維線材2は定着治具14によって強固に被定着物に定着される。また、この筋材18を鉄骨や木材等の被定着物と組み合わせて使用する場合には、胴部15を鉄骨や木材等の被定着物に対して溶接やボルト留め等の任意の方法で容易かつ強固に定着することができるので、炭素繊維線材2を鉄筋等に代わる筋材18として使用することが可能となる。
なお、ボルト17aおよびナット17bの数は適宜変更することが可能である。また、図13(c)に示すように、炭素繊維線材2の端部を両側から挟み込む一対の板材19a,19bを、炭素繊維線材2を含めてボルト20aにより貫通させて、ナット20bにより締結する構成とすることも可能である。
次に、炭素繊維線材2について詳細に説明する。
上記実施形態における炭素繊維線材2は、図14に模式図を示すように、紐状炭素繊維束の芯線(好ましくは断面円形)からなる内層と、芯線の周囲に設けられた樹脂含む中間層と、中間層の周囲に設けられた編状筒紐からなる外層とを含んで構成された紐状強化繊維複合体であり、必要に応じて中間層と外層の間、あるいは外層の外側に他の層を有する複層構造であり、芯線である炭素繊維に由来する優れた引張強度や弾性係数等の機械的性能を保持しつつ、中間層や外層の存在により、剪断強度を有する。
なお、詳しくは後述するが、炭素繊維線材2の好ましい態様の一つは、中間層が、樹脂および芯線と同軸方向に配置された複数の補強糸からなる紐状強化繊維複合体である。
中間層にこのように配置された補強糸を含むことにより、保管中や輸送中、取り扱い中や使用中に炭素繊維に横方向の力がかかったときに芯線に用いられている炭素繊維糸が折損したり、剪断したりすることを抑制することができる。
また、強度の観点から、炭素繊維線材2の好ましい態様は、内層、中間層および外層が、中間層を構成する樹脂と同一の樹脂により接着されて一体化している紐状強化繊維複合体である。なお、中間層には上記補強糸が含まれていてもよい。
引張強度の高い内層と中間層および外層との接着性が不十分であると、内層である炭素繊維糸由来の引張強度が得られず、引張られた時に外層部分、あるいは外層および中間層が引きちぎられるおそれがある。また、中間層と外層又は内層と中間層の接着性が十分でない場合には、施工時等に中間層と外層又は外層のみが抜けてしまうことがある。
これに対し、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体は、内層、中間層および外層が樹脂で一体化されるため、各層の接着性が向上し、上記問題が生じない。
特に内層、中間層および外層を一体化するために使用される樹脂が、中間層を構成する樹脂と同一の樹脂であるため、異種類の樹脂を使用したときに生じうる各層の接着性不足を回避できる。
なお、上記中間層を構成する樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用できるが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
この樹脂を熱可塑性樹脂とすることにより、熱を加えることにより可変性を有することによりドラムなどに巻いて保管、運搬が可能となる。
炭素繊維線材2の紐状炭素繊維複合体の直径は、用途等に応じて任意であり、特に限定されるものではないが通常、1mmから150mm程度である。
また、炭素繊維線材2の紐状炭素繊維複合体の長さも任意であり、用途等に応じ決定すればよいが、通常、数十cm〜数百m程度であるが、これ以上の長さであってもよい。
炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体は、棒状、曲線状などいろいろな形状を取ることができる。特に、中間層を構成する樹脂として熱可塑性樹脂を使用した場合(内層、中間層および外層を中間層を構成する樹脂と同一の樹脂により接着されて一体化している場合含む)には、芯線を構成する紐状炭素繊維束が非常に高い引張強度を有し外層が適度な柔軟性を有し、その間に設けられる中間層が熱可塑性樹脂を含んで構成されるため、熱可塑性樹脂が軟化する温度に加熱することにより、変形することが可能であることから、棒状のみならず、曲線状、さらには糸巻等に巻き取った形状にすることができる。
そのため、保管移動の際には長尺の紐状強化繊維複合体を巻き取った形状とし、使用するときに加熱して必要な長さに引き出し、切断し、使用時には棒状の直線形状とすることもできる。
以下、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体を構成する、芯線(内層)、中間層、外層についてそれぞれ説明する。
[芯線(内層)]
炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体の内層を構成する芯線は、1または複数の紐状炭素繊維束からなる。
この紐状炭素繊維束は、炭素繊維糸のみ、あるいは炭素繊維糸にガラス繊維、玄武岩繊維、アラミド繊維、その他有機繊維からなる糸をその強度や曲げ性が損なわれない範囲で混合したものであり、通常、炭素繊維糸(フィラメント)を数千本から数百万本束ねてなる断面が円形の糸状体である。なお、この炭素繊維束を構成する炭素繊維糸は、撚りがあると剪断力および引張強度が低下するので撚りがかかっていない方が好ましい。すなわち、内層を構成する炭素繊維糸が引き揃えて構成されていることが好ましい。なお、本明細書中、撚りがないとは、10回/m未満程度の撚りのものをいう。より好ましくは、5回/m未満、さらに好ましくは、0回/mである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
また、紐状炭素繊維束として、撚紐状、組紐状、編紐状、織紐状、くけい紐状、束紐状、裁紐状、合成紐状などのいずれの形態の紐状炭素繊維束を用いることは可能である。一方で、紐状炭素繊維束に、上記炭素繊維糸やその他の糸からなる交絡点が存在する場合、その交絡点にて横方向のせん断力が炭素繊維糸にかかりやすく、炭素繊維糸が切断してしまい、紐状炭素繊維束の引張強度が低下するおそれがある。また、炭素繊維糸と同様に、紐状炭素繊維束は撚りがかかっていない方が好ましい。そのため、上記形態の中でも、紐状炭素繊維束として、撚りがなく、交絡点が生じないように炭素繊維糸を引きそろえたものが好ましい。
紐状炭素繊維束を構成する炭素繊維糸としては、PAN系、ピッチ系等のいずれの炭素繊維糸も使用できる。
なお、紐状炭素繊維束は、その炭素繊維糸がばらけることを防ぐために、接着力のある樹脂(サイジング剤や収束剤と呼ばれる)等で仮接着されていることが好ましい。サイジング剤や収束剤は、中間層を構成する樹脂と親和性が高いものを用いるとよい。
紐状炭素繊維束を構成する炭素繊維糸の平均径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性や加工性の観点から、通常、1〜20μmの範囲である。芯線に使用される紐状炭素繊維束において、その外径は使用される炭素繊維糸の太さ、本数によって決定され、通常、1mmから100mm程度である。
紐状炭素繊維束は、通常、炭素繊維糸12000本からなる12k、炭素繊維糸24000本からなる24kで出荷されることが多く、また、炭素繊維糸6000本からなるものや炭素繊維糸48000本以上からなるものもある。
炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体において、より太い芯線が必要な場合には、複数本の紐状炭素繊維束を束ねるように配置すればよく、特に断面が円形になるように配置することが好ましい。
芯線を構成する紐状炭素繊維束が、(a)1本、(b)3本、(c)7本の場合を図15に例示する。
ここで、芯線の直径dは、断面が円形の場合には、芯線を構成する紐状炭素繊維束の外周に接する仮想円の直径とし、(図15参照)、断面が円形でない場合は、その長径方向を、芯線の直径dとする。
なお、芯線を構成する紐状炭素繊維束の本数はこれに限定されず、その使用目的に合わせて適宜決定されるが、例えば、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体をコンクリート補強筋材やブレース材として使用する場合には、芯線の直径dは、1mmから100mm程度である。芯線の直径dは、ノギスで測定したり、断面を顕微鏡(電子顕微鏡含む)にて測定することができる。
また、複数の紐状炭素繊維束を使用する場合、各紐状炭素繊維束を構成する炭素繊維糸を収束させて一体化し、全体として1本の紐状炭素繊維束となるようにしてもよい。
紐状炭素繊維束の長さは、使用目的によって適宜決定され、通常、数十cmから数百m程度である。
ここで、芯線を構成する紐状炭素繊維束が、樹脂でコートされていることが好ましい。なお、芯線を構成する紐状炭素繊維束が、樹脂でコートされているとは、1の紐状炭素繊維束から芯線が構成されている場合は、当該紐状炭素繊維束が樹脂でコートされたものをいう。この場合、当該紐状炭素繊維束を構成する内部の炭素繊維糸も樹脂で接着し一体化していてもよい。
また、複数の紐状炭素繊維束から芯線が構成されている場合には、
(1)それぞれの紐状炭素繊維束が個別に樹脂でコートされているが、芯線全体としては樹脂で接着されておらず一体化していないもの、
(2)それぞれの紐状炭素繊維束が個別に樹脂でコートされていないが、芯線全体としては、樹脂で紐状炭素繊維束がコートされ接着し一体化しているもの、
(3)それぞれの紐状炭素繊維束が個別に樹脂でコートされ、かつ、芯線全体としても樹脂で接着され一体化しているもの
を含む。
該紐状炭素繊維束は、樹脂がコートされることにより、製造方法にもよるが芯線の表面にあらかじめ樹脂を存在させることによって、中間層との接着性が向上するため、紐状強化繊維複合体としての強度が向上する。
また、芯線として複数本の紐状炭素繊維束を芯線として使用した場合には、上記(2)、(3)のように樹脂によってそれぞれの紐状炭素繊維束が接着結合して一体化した芯線となることでより強度が向上する。
特に強度の観点からは、紐状炭素繊維束の内部にまで熱可塑性樹脂が含浸し、紐状炭素繊維束の内部の炭素繊維糸も樹脂で接着結合し一体化しているものが好ましい。
使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、可変性を持たせるためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
好適な具体例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン42等)、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂などを挙げるが、これに制限されない。
この中でも酸やアルカリに対する耐久性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂が好適である。
なお、紐状炭素繊維束のコートに使用される樹脂と、中間層を構成する樹脂は、それぞれが接着性を有するものであればよく同一である必要はないが、より接着力を向上させるためには同一の樹脂を用いることが好ましい。
紐状炭素繊維束への上述の樹脂のコートする方法は、スプレーや刷毛で炭素繊維に樹脂をコートするなど特に制限はないが、生産性の観点から、ディプ−ニップ法やさらにダイスを用いた図16に示すような装置を用いることができる。
樹脂として熱可塑性樹脂をコートする場合で説明すると、図16に示すような装置を用いた場合、クリールから供給された紐状炭素繊維束を、溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させ、その後必要に応じマングルで絞り、余分な熱可塑性樹脂を取り除いてダイスで線径を整えたのちに必要に応じ乾燥、硬化させることでコーティングを行うことができる。
[中間層]
炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体の中間層は樹脂を含み、芯線(内層)と外層との間に設けられる。
炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体において、該中間層は、芯線と外層とが直接接触することを防ぎ、含まれる樹脂によって芯線と外層とを接着する。さらに、中間層を構成する樹脂を熱可塑性樹脂とした場合には、常温では硬質であるが、軟化する温度域にて適度な柔軟性を有すため、該熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱することにより、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体は、様々な形状に曲げることができる。そのため、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体は、棒状のみならず、曲線状、さらには糸巻に巻き取った状態にすることができる。
なお、炭素繊維線材2の効果を損なわない範囲で、この中間層と外層との間に、別の層(例えば、接着層等)を設けても良い。
中間層に使用される樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、芯線を構成する紐状炭素繊維束や、外層を構成する編状筒紐との接合性が高いものが用いられる。特に、熱可塑性樹脂を使用する場合には、常温での硬化性、加熱時に柔軟性のバランスを考慮して適当なものが選択される。
好適な具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン42等)、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂などを挙げることができる。
この中でも酸やアルカリに対する耐久性の観点から、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂が好適である。
また、中間層に熱可塑性樹脂を使用する場合、用途および炭素繊維糸、下記の補強糸、外層を形成する材料の耐熱性を考慮し任意の熱可塑性樹脂を用いればよいが、軟化温度が50℃〜200℃程度の熱可塑性樹脂が施工性に優れるため好ましい。もちろん用途に応じて、軟化温度が200℃超である熱可塑性樹脂であってもよい。
なお、上述のように樹脂でコートした紐状炭素繊維束を芯線として用いる場合、芯線と中間層の接着性を高める観点からは、芯線のコートに用いる樹脂と、中間層に用いる樹脂とが同一であることが好ましい。
中間層は、軟化した際に充分な曲げ性を与え、かつ、芯線を構成する炭素繊維束を被覆できる厚みが必要である。使用目的や芯線の太さにもよるが、中間層の厚みは、好ましくは、0.05mm以上であり、より好ましくは0.1mm以上であり、さらに好ましくは0.5mm以上である。中間層の厚みの上限は特にないが、通常、30mm程度以下であるが、使用用途によってはこれ以上でもよい。
中間層の厚みは、紐状炭素繊維束の断面の内層と外層の間の距離を、ノギスで測定したり、顕微鏡(電子顕微鏡含む)で測定することができる。
なお、前記中間層には、補強糸を含むことが好ましい。中間層に、樹脂と共に補強糸を含むことにより、保管中や輸送中、取り扱い中や使用中に炭素繊維に横方向の力がかかったときに芯線に用いられている炭素繊維糸が折損したり、剪断したりすることを抑制することができる。
中間層に補強糸を配置する向きとしては、芯線と同軸方向に配置することが紐状炭素繊維束を剪断から保護し、また、製造工程の観点から好ましい。
また、紐状炭素繊維束を内層(芯線)とした炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体は、引張方向への強度に特に優れるものであるが、それ以外の強度を高める観点からは、芯線と直交方向に配置された補強糸を含む構成としてもよい。
また、芯線の周囲にスパイラル状に補強糸を巻き付けたり、芯線に対し、斜め方向に配置された補強糸を含む構成にしてもよい。
また、補強糸は、芯線の保護の観点より芯線の外周を覆うように配置されることが好ましい。特に、芯線の外周を隙間なく覆うように配置されていることが好ましい。
このように、中間層に補強糸を含むことにより、芯線に用いられている炭素繊維糸を保護し、炭素繊維糸の断線を防ぎ、また、中間層自体の強度も向上させ、ひいては、紐状強化繊維複合体全体の強度が向上する。
また、該補強糸を中心として厚みのある中間層を形成することができる。そのため、最終的に得られる紐状炭素繊維複合体として求められる直径に対し、芯線の直径が比較的大きい場合あるいは比較的小さい場合にも、それに対応して任意の厚みのある中間層を形成し、求められる太さの紐状炭素繊維複合体を供給することができる。したがって、必要な引張強度に応じた必要量の炭素繊維を用い、必要な太さの紐状強化繊維複合体を適切なコストで得ることができる。
上記補強糸としては、天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維のいずれも使用できるが、通常、好ましくは合成繊維が使用される。合成繊維としては、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ビニロン、ポリアクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、ポリアセタール等の繊維を使用することができ、これらは一種または2種以上を組み合わせてもよい。この中でも、靭性の観点からポリアミド、ポリアセタールが好ましく、特に芳香族ポリアミドであるアラミドが好ましい。コストおよび形態安定の観点からはポリエステル繊維が好ましい。
また、糸の形態としてはフィラメント糸、スパン糸、カバーリング糸のいずれでもよい。
なお、このような補強糸は、芯線を構成する炭素繊維より、高い剪断抵抗を有することから、補強糸を中間層内部に芯線と同軸方向に配置することで、芯線の紐状炭素繊維束を剪断から保護する効果がある。
なお、芯線の周囲に中間層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、芯線を構成する前記紐状炭素繊維束を、樹脂でコートする方法と同様にスプレーや刷毛などを用いて芯線の周囲に樹脂層を形成する方法、芯線の回りに樹脂のフィルムを巻き付ける方法が挙げられる。
また、この樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、生産性を高める観点からは、上述の芯線を構成する紐状炭素繊維束への熱可塑性樹脂のコートする方法と同様に、芯線を溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させる方法が挙げられる。
特に補強糸を含む中間層を、生産性よく形成するためには、紐状炭素繊維束や炭素繊維束の周囲に補強糸を配置させたものを、ディプ−ニップ法やさらにダイスを用いた図16に示すような装置を用い、芯線の周囲に熱可塑性樹脂を付与し、中間層を形成することが好ましい。この方法では、クリールから供給された紐状炭素繊維束や炭素繊維束の周囲に補強糸を配置させたものを、溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させ、その後必要に応じマングルで絞り、余分な熱可塑性樹脂を取り除いてダイスで線径を整えたのちに必要に応じ乾燥、硬化させることで補強糸を含む中間層を得ることができる。
[外層]
炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体の外層は、編状筒紐からなり、外部から芯線である紐状炭素繊維束を保護する役割を有する。なお、「編状筒紐」とは、図14に示すように繊維を編み上げた編状構造又は組み上げた組紐構造を有する筒形体である。
上述のように炭素繊維は、引張強度は高いが、剪断強度はそれほど高くないため、芯線を構成する紐状炭素繊維束に外部から鋭利物が接触すると、その周囲に設けられた中間層を突き破り、炭素繊維糸が切断され、芯線の強度が低下するおそれがある。
特にコンクリート中には、鋭利物となる砂利や破石などが多数存在するため、紐状炭素繊維束で構成される芯線のみ、若しくは、該芯線を上述の樹脂を含む中間層で被覆するのみでは、内部の紐状炭素繊維束を十分に保護することができず、紐状炭素繊維束の強度が低下して、コンクリートの強度を十分に向上させることができないおそれがある。
ここで、強度の高い、編状筒紐からなる外層を設けることによって、内部の紐状炭素繊維束を鋭利物や応力から保護することができる。
なお、このような外層の役割を損なわない限り、外層の上に更なるコーティングなどを行ってもよい。例えば、意匠性を高めるために外層の外部を塗料などで着色したり、各種無機物、有機物でコーティングしてもよい。
また、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体を、コンクリート補強材として用いる場合には、外層の編状筒紐は、その表面に凹凸を有するものがコンクリートの強度の向上により寄与するため、好ましい。また、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体を、ブレース材として用いる場合には、外層の編状筒紐は、その用いられる空間デザインに応じた編状構造あるいは組紐構造を有する編状筒紐を用いるとよい。
なお、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体の特徴の一つは、外層を編状筒紐としたことにある。炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体の外層は、編状筒紐であることにより、フレキシビリティがあり、多少の応力に対して変形できることから、その応力を逃がすことができる。このように、編状筒紐では、紐状の形態を維持することができ、また、外層の厚みを外部から鋭利物や応力から十分保護できる厚みにしても、フレキシビリティを保つことができるという利点がある。
これに対し、外層を樹脂コーティングのみで形成した場合では、保護層としての役割と、フレキシビリティを両立することができない。
なお、外層に使用する繊維の密度を変えることにより、フレキシビリティと強度のバランスをとることができる。
さらに編状筒紐には、上述のように繊維を編み上げた筒状の編状構造(以下、「丸編」ともいう。)や、繊維を筒状に組み上げた組紐構造(以下、「丸打組物」ともいう)が挙がられるが、適度の固さ、フレキシビリティを有し、より優れた強度、形態安定を有することから組紐構造が好ましく用いられる。
また、組紐構造では、引き延ばされた際に、径が細くなるため、張力がかかるように製造すると外層とその内部に含まれる中間層および内層との密着性が高まるという点でもより好ましい。
外層の編状筒紐を構成する繊維としては、天然樹脂や合成樹脂からなる樹脂繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維などを使用でき、これらを組み合わせても使用することができる。この中でも、通常、好ましくは、合成樹脂の繊維が用いられる。
外層を構成する繊維の好適な具体例としては、ポリアミド(ナイロン等)、ビニロン、ポリアクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル、アラミド、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール等の繊維を挙げることができる。この中でも耐薬品性(特に耐アルカリ性)や可変性のバランスがよい、ビニロン、セルロース、ポリアミド、ポリアセタールが好ましく、ビニロンが特に好ましい。これらの繊維は、外層として充分な強度を有するのみならず、アルカリに対して強い耐性を有する。
また、紐状強化繊維複合体の製造工程や使用用途によって熱処理が施される場合には、外層の編状筒紐がポリエステル繊維からなると熱や水分による収縮や膨張などが発生し難く寸法安定性の観点より好ましい。
外層の編状筒紐の直径や長さ、厚みは、その使用目的に適宜決定することができ、内部の芯線や中間層にあわせての任意の太さ、長さとすることができる。
また、外層の編状筒紐を構成する繊維を、様々な色彩に着色して意匠性を高めることもできる。また、外層を着色することにより、外層、中間層および内層の種類等を判別できるようにしてもよい。
外層の編状筒紐の製造方法は、特に限定はないが、例えば、従来公知の製紐機、丸編機、また公知の靴下製造装置を一部改造して、編状筒紐製造装置に転用して作製することができる。
以下、外層としての編状筒紐を芯線および中間層の周囲に設ける方法について説明する。
外層を設ける方法は、特に限定されず、例えば、まず、内層(芯線)の周囲に中間層を形成し、次いで、その周囲に外層を組むあるいは編んでゆき外層を形成する方法;
まず、編状筒紐としての外層を形成し、この外層の中に、中間層が周囲に設けられた芯線を挿入する方法;
などが挙げられる。
なお、外層である編状筒紐と、樹脂との接着性が悪い場合には、中間層の上により接着性の高い接着層を設けてもよい。
また、中間層を構成する樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、編状筒紐の内部に中間層が周囲に設けられた芯線を入れた状態で加熱することにより、中間層を構成する熱可塑性樹脂を軟化させて外層となる編状筒紐と一体化させてもよい。
また、使用する外層である編状筒紐は、上述の中間層を構成する樹脂と同様の樹脂を用い、前記と同様な方法でコートされていてもよく、このような編状筒紐を用いることで、中間層との接着性が向上する。
[好適な態様の紐状強化繊維複合体の製造方法]
以下、炭素繊維線材2の好ましい態様の紐状強化繊維複合体の製造方法を説明する。
炭素繊維線材2の好ましい態様の一つは、樹脂および芯線と同軸方向に配置された複数の補強糸からなる中間層、編状筒紐からなる外層を有する紐状強化繊維複合体である。以下、その製造方法の例を説明する。
(1)1または複数の炭素繊維束からなる芯線の周囲を、中間層の一部となる補強糸にて、芯線の外周の全体を隙間なく覆う様に配置し、芯線の外周に配置された補強糸の周囲を製紐機を用い適当な繊維を組んで外層となる編状筒紐を形成し、次に、この芯線、補強糸および編状筒紐で構成される紐状物に樹脂をディップ−ニップ法により付与し、必要に応じ、ダイスを通し、必要に応じ、乾燥、熱処理、冷却等をおこない、樹脂を外層(編状筒紐)、中間層(補強糸)、内層(紐状炭素繊維束)に付与し、内層、中間層、外層を接着し、一体化し紐状強化繊維複合体を製造する。なお、樹脂に紐状物をディップした後、ニップせずにダイスに通し、余剰の樹脂を除去してもよい。
(2)1または複数の炭素繊維束からなる断面円形の芯線の周囲に、前記芯線を中心にして二重円状になるように、補強糸にて、芯線の外周の全体を隙間なく覆い、次に、熱可塑性樹脂をディップ−ニップ法により付与し、必要に応じ、ダイスを通し、乾燥、熱処理、冷却等をおこない、熱可塑性樹脂を内層、中間層にコートし、内層、中間層を接着し、一体化する。次に、この中間層の周囲に製紐機を用い外層となる繊維を組んでゆき、紐状強化繊維複合体を製造する。また、これを熱処理することにより、熱可塑性樹脂を軟化させ冷却することにより内層、中間層、外層を接着一体化することができる。なお、熱可塑性樹脂に芯線の外周を補強糸で覆った紐状物をディップした後、ニップせずにダイスに通し、余剰の樹脂を除去してもよい。
また、上記(1)、(2)の方法によれば、芯線が樹脂でコートされ、又、芯線をコートする樹脂と中間層を構成する樹脂とが同一であり、内層、中間層および外層が中間層を構成する樹脂と同一の樹脂により接着され一体化することを一度の樹脂付与工程で行うことができる。
また、炭素繊維線材2の特に好ましい態様は、内層、中間層および外層が、中間層を構成する樹脂と同一の樹脂により接着されて一体化している紐状強化繊維複合体である。以下、その製造方法の例を説明する。
特に、内層、補強糸、外層を配置した紐状物に樹脂を付与し、内層、中間層、外層を形成すること、特に、同時にこれらの層を樹脂にて接着し、一体化することが、強度、生産性の観点から好ましい。
この際、樹脂が、内層まで浸透しやすくする観点から、外層の編状筒紐は、外層を形成する糸と糸の間に隙間を有しているものが好ましく、例えば、石目打にて打たれた組物がよい。
また、樹脂を付与する際の樹脂の状態は、溶融状態、溶媒に溶解された状態、樹脂を含むエマルジョン状態でいずれでもよいが、外層、中間層、内層を構成するそれぞれの繊維の内部にまで浸透しやすい粘度の低いものが好ましい。
その粘度は、50000mPa・s以下が好ましく、10000mPa・s以下がより好ましく、1000mPa・s以下が特に好ましい(測定方法:B型粘度計、ローターNo.4 12rpm)。下限は1mPa・s程度であり、好ましくは10mPa・s以上である。
粘度が50000mPa・sを上回ると樹脂が、外層、中間層、内層まで十分に浸透せず、強度が低下するおそれがある。また、1mPa・sを下回ると加工中に樹脂垂れが発生し、十分な量の樹脂を紐状強化繊維複合体に付与できず強度が低下するおそれがある。
なお、樹脂を、芯線である紐状炭素繊維束の内部にまで浸透させる観点からは、内層を構成する、紐状炭素繊維束は、樹脂で事前にコートされていないものを用いることが好ましい。なお、炭素繊維束の製造時に、炭素繊維糸のバラケを防ぐためにわずかに付与されるサイジング剤や収束剤と呼ばれるものは、炭素繊維線材2の効果に影響を及ぼさないものが多く、このようなものであれば、当該製造方法においても紐状炭素繊維束にあらかじめ付与されていてもよい。好ましくは、サイジング剤や収束剤は、コートされる樹脂と親和性が高いものを用いるとよい。
[複層構造紐状強化繊維複合体の用途]
炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体は、土木、建設、船舶、鉱業や漁業などのあらゆる産業分野へ適用することができ、その用途は限定されない。
使用用途の中でも、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体は、鉄筋にまけない、炭素繊維に由来する強度を有し、軽量でコンクリートとの整合性がよく、さらにコンクリート中のアルカリに対する耐性も高いため、コンクリートの筋材として使用すると、コンクリートの強度を向上することができ、筋材の腐食によるコンクリート構造物の強度劣化を回避することができる。そのため、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体は、磁性を帯びると問題がある精密機械を使用する建物や、塩害が起こりやすい環境、高層ビルなどメンテナンス費用がかかる場合など、鉄筋の使用が望ましくない用途に特に好適に使用できる。
また、コンクリート構造物は、コンクリートに含まれるアルカリ性のセメント水溶液が骨材(砂利や砂)の特定成分、鉄筋と反応し、異常膨張やそれに伴うひび割れなどを引き起こす、いわゆるアルカリ骨材反応がコンクリートが中性劣化の一因であるが、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体の外層は編状構造あるいは組紐構造を有する編状筒紐であるため、フレキシビリティがあり、このような現象に左右されることは無い。
また、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体は、鉄筋にまけない、炭素繊維に由来する優れた強度を有し、軽量であるため、鉄骨構造や鉄筋コンクリートや木造などの建物、橋等の橋梁などに用いられるブレース材、補強材(補強金具代替品を含む)として好ましく用いることができる。また、細いものであっても十分な強度を有しているため、デザイン性に優れた建築物を製造することも可能である。
特に、炭素繊維線材2の紐状強化繊維複合体において、中間層に熱可塑性樹脂を使用した場合には、熱を加えることにより可変性を有することによりドラムなどに巻いて保管、運搬が可能であり長尺のブレース材が供給できる。
なお、本発明の筋材に用いる炭素繊維線材は、上記炭素繊維線材2に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で他の構造のものであっても良い。
また、上記炭素繊維線材2に代えて、以下で説明する高強力繊維線材を用いることも可能である。
(実施の形態2−1)
図17に示す高強力繊維線材61aは、芯線62と、拘束材63aとからなる高強力繊維束65により構成されている。
芯線62は、高強力繊維糸64を、複数本(通常、数千本から数万本)束ねてなる断面が円形状または扁平状の糸状体である。
高強力繊維糸64は、スーパー繊維とも称される繊維が使用できる。高強力繊維糸64としては、例えば、炭素繊維、バサルト繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ポリビニルアルコール(PVA繊維)などが使用できる。
芯線62は、上記高強力繊維糸を1種類で用いたり、2種類以上を混合させたり、その他有機繊維からなる糸をその強度や曲げ性が損なわれない範囲で混合したりしたものでもよい。
なお、芯線62は、芯線62の周囲面が接着面として機能することを阻害しない程度にサイジング剤や集束剤を含浸させてもよい。
この芯線62を構成する高強力繊維糸64が、特に、炭素繊維糸やバサルト繊維糸であれば、撚りがあると引張強度が低下するので、高強力繊維糸(フィラメント)に撚りを掛けず、また高強力繊維束全体にも撚りを掛けていないことで、実質的に無撚糸と同等の状態としたものであることが好ましい。なお、芯線62を結束する拘束材63aには撚りが掛かっていても、掛かっていなくてもよい。
芯線62となる、撚りが掛かっていない高強力繊維糸の束を得るためには、紡糸の段階より高強力繊維糸に撚りが掛からないよう引き揃えたもの等を用いる。
芯線62を構成する高強力繊維糸64が炭素繊維糸であれば、PAN系、ピッチ系のいずれの炭素繊維糸も使用できる。この中でも、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維糸が好ましい。
また、この炭素繊維糸を束ねた炭素繊維束は、炭素繊維メーカーから供給される炭素繊維糸6000本(6K)、12000本(12K)、24000本(24K)等を、必要とされる強度に応じて1本、または複数本束ねたものを用いることができる。なお、炭素繊維束を複数本束ねる場合には、必要本数の高強力繊維糸64をクリールから引き出し、それらを束ねて芯線62とする。
拘束材63aは、芯線62を周囲面から高強力繊維糸64がばらばらにならないように結束するものである。
本実施形態においては、図17に示すように、拘束材63aとなる繊維を巻き回して、目の粗い筒状の組紐(丸打)を組むことで、組紐状の拘束材63aを形成しているが、拘束材の配置はこれに限定されない。
拘束材は、芯線62を構成する高強力繊維糸64がばらばらにならないように結束できればよいので、例えば、1本の拘束材を螺旋状に巻きつけて芯線を結束したり(図示せず)、図18に示すように、芯線62の周囲面に拘束材63bとなる繊維を巻き回して目の粗い筒状の丸編を編んだ編紐状の拘束材63bによって芯線62を結束したり、図19に示すように、高強力繊維線材61cの芯線62を結束するための拘束材として、拘束材63aで挙げられている繊維等を所定間隔に配置した拘束材63cによって芯線62を結束する形態であってもよい。
図17に示す拘束材63aを形成するためには、芯線62を製紐機の中央に通し、製紐機により芯線62の周囲面に拘束材63aにより目の粗い組物を形成すればよい。そうすることで、組紐状の拘束材63aが芯線62の周囲面に形成されて、芯線62がばらばらにならないように結束され、長尺状の高強力繊維線材61aとなり、ドラムなどに巻き取ることができる。高強力繊維線材61aは柔軟な芯線62を拘束材63aで結束しただけなので、ドラム等に容易に巻き付けることができる。従って、移動や保管が容易である。
拘束材としては、柔軟なものが好ましく、ポリエステル、ナイロン、ビニロン等の合成繊維や、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、絹、羊毛、麻、綿などの天然繊維が使用できる。
拘束材が、図17の組紐(丸打)である場合には、拘束材63aは、芯線62の長さ方向に対して0.5mm〜30cmのピッチで交差させるとよく、特に、0.1cm〜10cmがより好ましい。
なお、芯線62においては、サイジング剤や集束剤を含浸させて結束することの他に、高強力繊維糸64をより強固に結束するために、芯線62を構成する複数の高強力繊維糸64の少なくとも一部を固化剤によって結合させてもよい。
特に拘束材により結束した芯線に固化剤を含浸させ、拘束材と共に芯線を硬化させることが好ましい。そうすることで、芯線および拘束材を強固に一体化させ棒状体とすることができる。
この場合には、高強力繊維線材を数cm〜数m程度の長さに切断した状態で移動、保管を行うことができる。
芯線62を強固に一体化させた高強力繊維線材であれば、狭い溝に配置するときや奥行きの深い穴などに挿入するときなどに、型崩れしないため容易に配置することができる。
使用できる固化剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、可変性を持たせるためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。また、高強力繊維糸と親和性の高い固化剤とすることが望ましい。
好適な具体例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン42等)、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、レゾルシノール樹脂などが挙げられるが、これに制限されない。
この中でも酸やアルカリに対する耐久性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、レゾルシノール樹脂が好適である。
芯線62への上述の樹脂(固化剤)のコートする方法は、スプレーや刷毛で高強力繊維に樹脂をコートするなど特に制限はないが、生産性の観点から、ディプ−ニップ法やさらにダイスを用いた図20に示すような装置を用いることができる。
樹脂として熱可塑性樹脂をコートする場合で説明すると、図20に示すような装置を用いて実施形態2−1に係る高強力繊維束65を製造する場合、クリール67aから供給された高強力繊維糸からなる芯線62を製紐機(図示せず)に通したり、丸編機(図示せず)に通したりして拘束材を形成した後、溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させ、その後、必要に応じてマングルで絞り、余分な熱可塑性樹脂を取り除いてダイス67bで線径を整えたのちに必要に応じて加熱炉67cにより乾燥、硬化させることでコーティングを行う。そして、乾燥、硬化したものを裁断機67dに所定長さに切断すれば、切断した状態で移動、保管を行うことができる。また、切断せずにドラムに巻き取り、施工が決まった後、任意の長さに切断して用いることができる。
あるいは、図21に示すような装置を用いて高強力繊維束65を製造することも可能である。なお、図21においては、図20と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。図21に示す装置では、ドラム67eから供給された高強力繊維糸からなる芯線62を拘束材で拘束した高強力繊維束を形成して、溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させる際、ダイス67fによって絞ることにより、樹脂を内部まで含浸させる。また、加熱炉67cにより乾燥させる前に、予熱炉67gを通すことで、突沸を防止している。
なお、実施の形態2−1に係る高強力繊維線材61a〜61cにおいて、芯線62の表面は、拘束材63a〜93cによって完全に被覆されておらず、一部が被覆されず露出した状態である。
このように芯線62の表面を露出させることにより、芯線62への上述の樹脂のコートする際に樹脂が芯線62の内部に浸透しやすくなる結果、芯線62を構成する高強力繊維糸64同士の結合力を向上させることができる。
また、高強力繊維線材61a〜61cを他の部材と接合させる場合において、上記芯線62の露出面は、他部材と接着させるときの接着面としても機能する。
ここで、拘束材が芯線62を被覆する割合について説明する。
芯線62の被覆率は、高強力繊維線材の周囲面全体の面積に対する拘束材が占める面積の割合である。被覆率は、拘束材が芯線62の周囲面に一様に配置されたものであるときには、高強力繊維線材を側方から撮像し、撮像された画像から高強力繊維線材全体の面積と、拘束材が占める面積とを測定して、次式に従って演算することで算出することができる。

被覆率(%)=(拘束材が占める面積)/(高強力繊維線材全体の面積)×100
このように算出される被覆率は、少ない方が他部材と接着させる際に接着剤が芯線62の周囲面に接着して接着面として機能する面積が広くなるため望ましい。
特に、高強力繊維線材61aを用いて他部材との接着強度を向上させるとの観点からは70%以下である。より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下である。被覆率の下限は、芯線62を構成する高強力繊維糸64がばらばらにならず、紐状または棒状が維持できる最も低い値とすることができる。
(実施の形態2−2)
本発明の実施の形態2−2を図22に基づき説明する。なお、図22においては、図17〜図21と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
実施の形態2−2に係る高強力繊維線材61dの側面一部拡大図を図22(a)に、断面図を図22(b)に示す。
高強力繊維線材61dは、芯線62と拘束材63aとからなる高強力繊維束65を19本備えてなり、該19本の高強力繊維束65は引きそろえて束ねられ、それぞれの高強力繊維束65の間には、固化剤65aが充填されており、この固化剤65aによって一体化されている。
ここで、高強力繊維束65は、図17で示した上述の高強力繊維線材61aと同じ構成であるため、詳しい説明は省略する。また、本実施形態では、高強力繊維束65として高強力繊維線材61aと同じ構成のものを用いているが、これに限定されず、高強力繊維線材61b,61cと同様の構成の高強力繊維束を初めとして、他の形態の高強力繊維束を使用することもできる。
本実施形態における高強力繊維束65の本数は19本であるが、この本数は高強力繊維線材61dの目的とする性能(特に引張強度)、用途を勘案して決定される。
例えば、炭素繊維糸を24000本束ねたもの(24k)を芯線として用い、ブレースとして使用するための高強力繊維線材を得る場合には、高強力繊維束65の本数は2本〜500本程度であり、炭素繊維糸を12000本束ねたもの(12k)を芯線として用い、ワイヤーとして使用するための高強力繊維線材を得る場合には、2本〜1000本程度である。
使用できる固化剤65aとしては、実施の形態2−1と同様に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、可変性を持たせるためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いることができる。また、固化剤65aは、高強力繊維糸と親和性の高いことが好ましいことに加え、酸やアルカリに対する耐久性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、レゾルシノール樹脂が好適である。
複数本の高強力繊維束65を、固化剤65aによって一体化する方法は、特に限定はない。例えば、固化剤65aが熱可塑性樹脂の場合には、実施の形態2−1と同様に、図20や図21に示すような装置を用い、複数本の高強力繊維束65を引きそろえた状態で、溶融させた熱可塑性樹脂に含浸し、冷却すればよい。
また、固化剤65aは高強力繊維束65同士が一体化すればよく、固化剤65aを芯線62の中心に至るまで含浸させる必要はないが、芯線62の中心まで含浸させ、芯線62全体を硬化させてもよい。
(実施の形態2−3)
本発明の実施の形態2−3を図23に基づき説明する。なお、図23においては、図17〜図22と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
実施の形態2−3に係る高強力繊維線材61eの外観図を図23(a)、断面図を図23(b)に示す。
高強力繊維線材61eは、本発明の実施の形態2−2で説明した高強力繊維線材61dの外周を覆うように繊維材料からなる筒状体66を配置し、高強力繊維線材61dと筒状体66とを固化剤65aで一体化してなる複層構造の高強力繊維線材である。
なお、実施の形態2−3において、複層構造の高強力繊維線材61eの内層として高強力繊維線材61dを使用しているが、これに限定されず、本発明の実施の形態2−1,2−2に準ずる他の高強力繊維線材を用いることができる。
複層構造の高強力繊維線材61eにおける外層は、筒状体66からなり、外部から芯線である内層の高強力繊維線材61dを保護する役割を有する。図23に示すように筒状体66は、繊維材料を編み上げた編状構造又は組み上げた組紐構造を有する筒状体である。
高強力繊維線材61eは、固化剤65aにより棒状体となるため、数cm〜数m程度の長さに切断した状態で移動、保管を行うことが容易にでき、狭い溝に配置するときや奥行きの深い穴などに挿入するときなど、型崩れしないため容易に配置することができる。
高強力繊維線材61dをそのまま用いると、高強力繊維束65の露出面に外部から鋭利物が接触した場合に高強力繊維糸64が切断され、芯線の強度が低下するおそれがある。特に高強力繊維糸64として炭素繊維糸を用いた場合、炭素繊維糸は、引張強度は高いが、剪断強度はそれほど高くないため、この問題が生じやすい。
ここで、高強力繊維線材61eは、強度の高い筒状体66からなる外層を設けることによって、内部の高強力繊維線材61dを鋭利物や応力から保護することができる。
なお、このような外層の役割を損なわない限り、筒状体66の上に更なるコーティングなどを行ってもよい。例えば、意匠性を高めるために外層の外部を塗料などで着色したり、各種無機物、有機物でコーティングしてもよい。
また、高強力繊維線材61eをコンクリート補強材として用いる場合には、外層の筒状体66は、その表面に凹凸を有するものがコンクリートの強度の向上により寄与するため、好ましい。
このように、筒状体66では、紐状の形態を維持することができ、また、外層の厚みを外部から鋭利物や応力から十分保護できる厚みにしても、フレキシビリティを保つことができるという利点がある。
なお、外層に使用する繊維の密度を変えることにより、フレキシビリティと強度のバランスをとることができる。
さらに筒状体66には、上述のように繊維を編み上げた筒状の編状構造(以下、「丸編」ともいう。)や、繊維を筒状に組み上げた組紐構造(以下、「丸打組物」ともいう)が挙がられるが、適度の固さを有し、より優れた強度、形態安定を有することから組紐構造が好ましく用いられる。
また、組紐構造では、引き延ばされた際に、特に固化剤が固化する前に径が細くなるため、張力がかかるように製造すると外層である筒状体66とその内部に含まれる高強力繊維線材61dとの密着性が高まるという点でもより好ましい。
外層の筒状体66を構成する繊維としては、天然樹脂や合成樹脂からなる樹脂繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などを使用でき、これらを組み合わせても使用することができる。この中でも、通常、好ましくは、合成樹脂の繊維が用いられる。
外層を構成する繊維の好適な具体例としては、ポリアミド(ナイロン等)、ビニロン、ポリアクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル、アラミド、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール等の繊維を挙げることができる。この中でも耐薬品性(特に耐アルカリ性)や可変性のバランスがよい、ビニロン、セルロース、ポリアミド、ポリアセタールが好ましく、ビニロンが特に好ましい。これらの繊維は、外層として充分な強度を有するのみならず、アルカリなどに対する高い耐薬品性を有する。
また、高強力繊維線材61eの製造工程や使用用途によって熱処理が施される場合には、外層の筒状体66がポリエステル繊維からなると熱や水分による収縮や膨張などが発生し難く寸法安定性の観点より好ましい。
外層の筒状体66の直径や長さ、厚みは、その使用目的に適宜決定することができ、内部の芯線や拘束材にあわせての任意の太さ、長さとすることができる。
また、外層の編状筒紐を構成する繊維を、様々な色彩に着色して意匠性を高めることもできる。また、外層を着色することにより、外層、中間層および内層の種類等を判別できるようにしてもよい。
外層の筒状体66の製造方法は、特に限定はないが、例えば、従来公知の製紐機、丸編機、また公知の靴下製造装置を一部改造して、編状筒紐製造装置に転用して作製することができる。
以下、複層構造の高強力繊維線材61eの製造方法の一例について説明するが、ここで例示した方法に限定されない。
外層としての筒状体66を高強力繊維線材61dの周囲に設ける方法は、特に限定されず、例えば、まず、高強力繊維線材61dを配置し、次いで、その周囲に外層を組むあるいは編んでゆき外層を形成する方法;
まず、筒状体66としての外層を形成し、この外層の中に、高強力繊維線材61dを挿入する方法;
などが挙げられる。
内層となる高強力繊維線材61dの周囲に外層の筒状体66を仮固定したのちに、固化剤65aにより両者を一体化する。なお、固化剤65aとしては、上記実施形態2−1,2−2で説明したものと同様のものを用いることができる。なお、仮固定の方法としては、例えば、接着テープで固定する方法が挙げられる。また、仮固定は製造時の便宜上行うものであり、必ずしも行う必要はない。
一体化の方法は固化剤65aの種類によって適宜選択され、例えば、固化剤65aが熱可塑性樹脂の場合には、外層の筒状体66を仮固定した高強力繊維線材61dを溶融した熱可塑性樹脂に浸漬したのちに冷却することによって行えばよい。
また、高強力繊維線材61dの上に熱可塑性樹脂層を設けた後に、周囲に外層の筒状体66を形成し、その状態で加熱することにより、熱可塑性樹脂層を軟化させて外層となる筒状体66と一体化させてもよい。
また、使用する外層である筒状体66を、あらかじめ固化剤65aとなる熱可塑性樹脂でコートして、その後に高強力繊維線材61dを挿入して加熱してもよい。
なお、実施の形態2−3において、複層構造の高強力繊維線材61eの内層として、高強力繊維束65を固化剤65aで一体化した高強力繊維線材61dを使用し、その周囲に外層である筒状体66を配置して、高強力繊維線材61dと筒状体66とをさらに固化剤65aで一体化しているが、複層構造の高強力繊維線材はこれに限定されない。
例えば、他の実施形態として、複層構造の高強力繊維線材は、複数本の高強力繊維束65を引きそろえた状態とし、それを固化剤65aで一体化せずに、その周囲に外層である筒状体66を配置した紐状物を形成し、次いで、該紐状物を固化剤65aで一体化してもよい。固化剤65aが熱可塑性樹脂の場合には、溶融、あるいは適当な溶媒に溶解させた熱可塑性樹脂を含む溶液に前記紐状物を含浸させたのちに、形を整えたうえで適当な熱処理を行って製造することもできる。得られる複層構造の高強力繊維線材は、内層である複数本の高強力繊維束65と外層である筒状体66とが、同じ固化剤65aで同時に固化される。そのため、内層と外層の接着力がより高まった状態で一体化し、引張材など強い引張力がかかる用途に用いても内層と外層でのずれ(すべり)が生じにくいという利点がある。
なお、図16では炭素繊維束、図20および図21では高強力繊維束としての芯線62と拘束材63aとからなる高強力繊維束65を用いて説明を行っているが、これらに外層を形成した紐状物とした後、該紐状物をドラム等に巻き、図16、図20および図21に示すような装置を用いて、樹脂を付与し、高強力繊維線材を製造することも可能である。
[高強力繊維線材の用途]
上記高強力繊維線材は、土木、建設、船舶、鉱業や漁業などのあらゆる産業分野へ適用することができ、その用途は限定されない。
使用用途の中でも、この高強力繊維線材は、鉄筋にまけない、高強力繊維に由来する強度を有し、軽量でコンクリートとの整合性がよく、さらにコンクリート中のアルカリに対する耐性も高いため、コンクリートの筋材として使用すると、コンクリートの強度を向上することができ、筋材の腐食によるコンクリート構造物の強度劣化を回避することができる。そのため、この高強力繊維線材は、磁性を帯びると問題がある精密機械を使用する建物や、塩害が起こりやすい環境、高層ビルなどメンテナンス費用がかかる場合など、鉄筋の使用が望ましくない用途に特に好適に使用できる。
また、コンクリート構造物は、コンクリートに含まれるアルカリ性のセメント水溶液が骨材(砂利や砂)の特定成分、鉄筋と反応し、異常膨張やそれに伴うひび割れなどを引き起こす、いわゆるアルカリ骨材反応がコンクリートが中性劣化の一因であるが、本発明の高強力繊維線材は、外層を有する場合でも、編状構造あるいは組紐構造を有する筒状体であるため、フレキシビリティがあり、このような現象に左右されにくい。
また、この高強力繊維線材は、高強力繊維に由来する優れた強度を有し、軽量であるため、鉄骨構造や鉄筋コンクリートや木造などの建物、橋等の橋梁などに用いられるブレース材、補強材(補強金具代替品を含む)として好ましく用いることができる。また、細いものであっても十分な強度を有しているため、デザイン性に優れた建築物を製造することも可能である。
特に、この高強力繊維線材において、固化剤に熱可塑性樹脂を使用した場合には、熱を加えることにより可変性を有することによりドラムなどに撒いて保管、運搬が可能であり長尺のブレース材が供給できる。
また、この高強力繊維線材は、定着治具に強固に固定することが可能である。本発明の高強力繊維線材は、その末端を定着治具にて固定する際、高強力繊維束単位にばらして、使用することができるため、高強力繊維糸を破損させることなく、接着面積を広くすることができる。そのため、高強力繊維線材と定着治具部分の接着力を高めることができ、強固に高強力繊維線材と定着治具を結合することができる。なお、上記複層構造を有する高強力繊維線材の場合には、高強力繊維線材のうち、定着治具に挿入される部分の外層である筒状体の少なくとも一部を取り除き、末端部にて高強力繊維束からなる内層を露出させて使用してもよい。この場合、露出部分は、高強力繊維束単位にばらして使用してもよく、高強力繊維束単位にばらすことなく使用してもよい。
特に上記内層の露出部分を、高強力繊維束単位にばらさずに一体で用いた方が、内層の露出部分の固化剤を除去する必要もなく、定着治具への挿入も容易であり、さらには、定着治具との接着性に優れるため好ましい。従って、従来の高強力繊維線材と比較して、定着治具との接続が容易にでき、且つ、優れた強度を有する鉄筋体材料、コンクリート中の補強筋材、ブレース材などとして好適に用いることができる。
以下、実施例により炭素繊維線材2を更に詳細に説明するが、炭素繊維線材2は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例における紐状強化繊維複合体の直径(外径)および各層の厚みはノギスで測定した。
また、紐状強化繊維複合体の引張強度は、株式会社島津製作所製AUTO GRAPH TypeAG−1(250kN)を使用し、引張強度が10kNまでは1mm/min、10kN以上では5mm/minの条件で測定した。
(実施例1−1)
12Kの炭素繊維束(紐状炭素繊維束)を20本引きそろえ全体として1本の紐状炭素繊維束とし、これを芯線(内層)とした。次いで、芯線の周囲にポリエステルフィラメント(1100デシテックス)を5本合糸したものを補強糸として20本を芯線と同軸方向に配置し、芯線の周囲を隙間なく覆った。
次に補強糸の外周をビニロンスパン(10番手)を5本合糸したもの12本を用い、製紐機(24打機)を用い12石目打にて組み、補強糸の周囲に編状筒紐からなる外層を形成し紐状物を得た(50m)。
次に、この紐状物に対し、熱可塑性エポキシ樹脂(XNR6850A、ナガセケムテックス株式会社製)、硬化剤(XNH6850AY、ナガセケムテックス株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度66mPa・s、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にてディップ−ニップ法で付与し、ダイスを通し、断面を円形に整え、150℃にて10分間熱処理を行った後、冷却した。このようにして、紐状炭素繊維束を熱可塑性樹脂でコートし、かつ、補強糸を含む熱可塑性樹脂からなる中間層を形成し、内層、中間層、外層が熱可塑性樹脂で接着一体化された実施例1−1の紐状強化繊維複合体を得た。紐状強化繊維複合体は、外径6.6mm、外層の厚み0.4mm、中間層の厚み0.9mm、内層の直径4mmであった。また、紐状炭素繊維束は中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。実施例1−1の紐状強化繊維複合体の引張強度は27kNであり、12Kの炭素繊維束(紐状炭素繊維束)20本の引張強度の理論値と同等であった。
また、得られた紐状強化繊維複合体は100℃のまだ軟化している間に、ドラムに巻きつけることができた。
さらに、ドラムに巻きつけた紐状強化繊維複合体を熱風ファンを用い100℃程度に加熱しながら、引き出し、長さ150cmでカットし、コンクリート補強筋材として用いた。なお、中間層に用いる補強糸として、アルカリに弱いと思われるポリエステルフィラメントを用いているが、ポリエステルフィラメントが熱可塑性樹脂に覆われているためなんら問題はなかった。
(実施例1−2)
12Kの炭素繊維束(紐状炭素繊維束)を20本引きそろえ全体として1本の紐状炭素繊維束とし、これを芯線(内層)とした。次いで、芯線の周囲にポリエステルフィラメント(1100デシテックス)を5本合糸したものを補強糸として20本を芯線と同軸方向に配置し、芯線の周囲を隙間なく覆った。
次に補強糸の外周をポリエステルスパン(10番手)を5本合糸したもの12本を用い、製紐機(24打機)を用い12石目打にて組み、補強糸の周囲に編状筒紐からなる外層を形成し紐状物を得た(50m)。
次に、この紐状物に対し、熱可塑性エポキシ樹脂(XNR6850A、ナガセケムテックス株式会社製)、硬化剤(XNH6850AY、ナガセケムテックス株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度66mPa・s、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にてディップ法で付与し、ダイスを通し断面を円形に整えながら余剰の熱可塑性樹脂を除去した。次に、150℃にて10分間熱処理を行った後、冷却した。このようにして、紐状炭素繊維束を熱可塑性樹脂でコートし、かつ、補強糸を含む熱可塑性樹脂からなる中間層を形成し、内層、中間層、外層が熱可塑性樹脂で接着一体化された実施例1−2の紐状強化繊維複合体を得た。紐状強化繊維複合体は、外径6.6mm、外層の厚み0.4mm、中間層の厚み0.9mm、内層の直径4mmであった。また、紐状炭素繊維束は中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。実施例1−2の紐状強化繊維複合体の引張強度は27kNであり、12Kの炭素繊維束(紐状炭素繊維束)20本の引張強度の理論値と同等であった。
また、得られた紐状強化繊維複合体は100℃のまだ軟化している間に、ドラムに巻きつけることができた。
さらに、ドラムに巻きつけた紐状強化繊維複合体を熱風ファンを用い100℃程度に加熱しながら引き出し、長さ200cmでカットし、ブレース材として用いた。ブレース材は、十分な強度を有しつつ、鉄筋に比べ細くかつ組物のデザインもよく意匠性にも優れていた。
(実施例1−3)
12Kの炭素繊維束(紐状炭素繊維束)を20本引きそろえ全体として1本の紐状炭素繊維束とし、これを芯線(内層)とした。次いで、芯線の周囲にポリエステルフィラメント(1100デシテックス)を5本合糸したものを補強糸として20本を芯線と同軸方向に配置し、芯線の周囲を隙間なく覆った。
これに対し、熱可塑性エポキシ樹脂(XNR6850A、ナガセケムテックス株式会社製)、硬化剤(XNH6850AY、ナガセケムテックス株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度66mPa・s、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にて刷毛を用い付与し、手袋をした手でしごきながら余分な溶液を除去し、150℃にて10分間熱処理をおこない、冷却しながら断面を円形に整えた。このようにして、熱可塑性樹脂でコートされた紐状炭素繊維束からなる内層と補強糸を含有する熱可塑性樹脂を含む中間層を製造した(1.5m)。
次に補強糸の外周をビニロンフィラメント(1100デシテックス)を5本合糸したもの12本を用い、製紐機(24打機)を用い12石目打にて組み、補強糸の周囲に編状筒紐からなる外層を形成し、熱処理(150℃)をおこない、内層、中間層、外層を接着し、一体化した。
得られた実施例1−3の紐状強化繊維複合体は、外径6.6mm、外層の厚み0.4mm、中間層の厚み0.9mm、内層の直径4mmであった。また、紐状炭素繊維束は中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。
また、得られた紐状強化繊維複合体は100℃で軟化し、ドラムに巻きつけることができた。
さらに、ドラムに巻きつけた紐状強化繊維複合体を熱風ファンを用い100℃程度に加熱(100℃)しながら、引き出し、長さ150cmでカットし、コンクリート補強筋材として用いた。なお、中間層に用いる補強糸として、アルカリに弱いと思われるポリエステルフィラメントを用いているが、ポリエステルフィラメントが熱可塑性樹脂に覆われているためなんら問題はなかった。
(実施例1−4)
12Kの炭素繊維束(紐状炭素繊維束)を20本引きそろえ全体として1本の紐状炭素繊維束とし、これを芯線(内層)とした。次いで、芯線の周囲にポリエステルフィラメント(1100デシテックス)を5本合糸したものを補強糸として20本を芯線と同軸方向に配置し、芯線の周囲を隙間なく覆った。
次に補強糸の外周をビニロンスパン(10番手)を5本合糸したもの12本を用い、製紐機(24打機)を用い12石目打にて組み、補強糸の周囲に編状筒紐からなる外層を形成し紐状物を得た(50m)。
次いで、この紐状物を1.5mカットして得た棒状体を熱硬化性エポキシ樹脂(XNR3324、ナガセケムテックス株式会社製)、硬化剤(XNH3324、ナガセケムテックス株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度850mPa・s、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にてディップ−ニップ法で付与し、ダイスを通し断面を円形に整え、室温(20℃)で7日間静置することで樹脂を硬化させて実施例1−4の紐状強化繊維複合体を得た。実施例1−4の紐状強化繊維複合体は、紐状炭素繊維束を樹脂でコートし、かつ、補強糸を含む樹脂からなる中間層が形成され、内層、中間層および外層が樹脂で接着一体化しており、外径6.6mm、外層の厚み0.4mm、中間層の厚み0.9mm、内層の直径4mmであった。また、紐状炭素繊維束は中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。実施例1−4の紐状強化繊維複合体の引張強度は24kNであった。
(実施例1−5)
12Kの炭素繊維束(紐状炭素繊維束)を20本引きそろえ全体として1本の紐状炭素繊維束とし、これを芯線(内層)とした。次いで、芯線の周囲にポリエステルフィラメント(1100デシテックス)を5本合糸したものを補強糸として20本を芯線と同軸方向に配置し、芯線の周囲を隙間なく覆った。
次に補強糸の外周をポリエステルスパン(10番手)を5本合糸したもの12本を用い、製紐機(24打機)を用い12石目打にて組み、補強糸の周囲に編状筒紐からなる外層を形成し紐状物を得た(50m)。
次いで、この紐状物を2mカットして得た棒状体を熱硬化性エポキシ樹脂(XNR3311、ナガセケムテックス株式会社製)、硬化剤(XNH3311、ナガセケムテックス株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度850mPa・s、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にてディップ法で付与し、ダイスを通し断面を円形に整えながら余剰の樹脂を除去し、室温(20℃)で7日間静置することで樹脂を硬化させて実施例1−5の紐状強化繊維複合体を得た。実施例1−5の紐状強化繊維複合体は、紐状炭素繊維束を樹脂でコートし、かつ、補強糸を含む樹脂からなる中間層が形成され、内層、中間層および外層が樹脂で接着一体化しており、外径6.6mm、外層の厚み0.4mm、中間層の厚み0.9mm、内層の直径4mmであった。また、紐状炭素繊維束は中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。実施例1−5の紐状強化繊維複合体の引張強度は21kNであった。
次に、実施例により上記実施の形態2における高強力繊維線材を更に詳細に説明するが、高強力繊維線材は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例2−1)
糸状の拘束材として、ポリエステル繊維(500デシテックスのポリエステル繊維束1本と50デシテックスのポリエステル繊維束1本を引きそろえたもの)を用い、24Kの炭素繊維束からなる芯線の周りを螺旋状に巻き回し、該炭素繊維束からなる芯線を拘束して1本の高強力繊維束を得た。図24(a)に外観写真を示す。得られた高強力繊維束において、拘束材により拘束された炭素繊維束の表面は、ポリエステル繊維で被覆されている部分は少なく、炭素繊維束(芯線)多くの部分は露出していた。
次に、同様にして得た高強力繊維束を40本引きそろえ、1本の束とした。次いで、得られた高強力繊維束からなる束の外周を、ポリエステル繊維(1100デシテックス)を5本合撚したものを2本引きそろえた繊維を用い、製紐機(24打機)を用い、12×2打ちの石目打にて組み、筒状体からなる外層を形成し、紐状物を得た(50m)。図24(b)に得られた紐状物の外観写真を示す。
この紐状物の単位長さ当りの質量は94g/m、高強力繊維束からなる束(内層)の質量は74g/m、筒状体(外層)の質量は、20g/mであった。
次に、この紐状物に対し、固化剤として、熱可塑性エポキシ樹脂(XNR6850A、ナガセケムテック株式会社製)、硬化剤(XNR6850AY、ナガセケムテック株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度66mPa・S、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にてディップ−ニップ法で付与し、ダイスを通し、断面を円形に整え、150℃にて120分間熱処理を行った後、冷却した。このようにして、高強力繊維束からなる内層と筒状体からなる外層とが一体化された複層構造を有する実施例2−1の高強力繊維線材を得た。
得られた高強力繊維線材は、高強力繊維糸(炭素繊維糸)及び高強力繊維束及び高強力線材に撚りはあたえられていなかった。また、中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。
高強力繊維線材を30cmの長さにカットし、さらに、その両端の筒状体の部分を10cmカットし、拘束材で拘束された炭素繊維束40本を溶剤を使用して一束ずつにバラし茶筅状とした。次いで、高強力繊維線材の両端のそれぞれに、定着治具としてねじを切った鋼管(長さ120mm、内径23mm、外径31mm)を挿入し、接着剤(商品名:Wirelock resin(GB)、LOGICHEM社製)を用いて固定し、引張強度を測定した。実施例2−1の高強力繊維線材の引張強度は、111kNであり、24Kの炭素繊維束40本の引張強度の推定強度113kNと同等であった。
(実施例2−2)
拘束材として、ポリエステル繊維(50デシテックスのポリエステル繊維束)を2本用い、1本をS方向で螺旋状に巻き、他の1本をZ方向で螺旋状に巻くことにより24Kの炭素繊維束からなる芯線を拘束して1本の高強力繊維束を得た。図25(a)に外観写真を示す。得られた高強力繊維束において、拘束材により拘束された炭素繊維束の表面は、ポリエステル繊維で被覆されている部分は少なく、炭素繊維束(芯線)多くの部分は露出していた。
次に、同様にして得た高強力繊維束を40本引きそろえ、1本の束とした。次いで、得られた高強力繊維束からなる束の外周を、ポリエステル繊維(1100デシテックス)を5本合撚したものを2本引きそろえた繊維を用い、製紐機(24打機)を用い、12×2打ちの石目打にて組み、筒状体からなる外層を形成し、紐状物を得た(50m)。図25(b)に得られた紐状物の外観写真を示す。
この紐状物の単位長さ当りの質量は89g/m、高強力繊維束からなる束(内層)の質量は70g/m、筒状体66(外層)の質量は、19g/mであった。
次に、この紐状物に対し、固化剤として、熱可塑性エポキシ樹脂(XNR6850A、ナガセケムテック株式会社製)、硬化剤(XNR6850AY、ナガセケムテック株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度66mPa・S、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にてディップ−ニップ法で付与し、ダイスを通し、断面を円形に整え、150℃にて120分間熱処理を行った後、冷却した。このようにして、高強力繊維束からなる内層と筒状体からなる外層とが一体化された複層構造を有する実施例2−2の高強力繊維線材を得た。
得られた高強力繊維線材は、高強力繊維糸(炭素繊維糸)及び高強力繊維束及び高強力線材に撚りはあたえられていなかった。また、中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。
高強力繊維線材を30cmの長さにカットし、さらに、その両端の筒状体の部分を10cmカットし、拘束材で拘束された炭素繊維束40本を溶剤を使用して一束ずつにバラし茶筅状とした。図26(a)に外観写真を示す。高強力繊維線材の両端のそれぞれにねじを切った鋼管(長さ120mm、内径23mm、外径31mm)を挿入し、接着剤(商品名:Wirelock resin(GB)、LOGICHEM社製)を用いて固定し、引張強度を測定した。固定後の外観写真を図26(b)に示す。実施例2−2の高強力繊維線材の引張強度は、109kNであり、24Kの炭素繊維束40本の引張強度の推定強度113kNと同等であった。
(実施例2−3)
実施例2−2における高強力繊維束と同様にして得た高強力繊維束を20本引きそろえ、1本の束とした。次いで、得られた高強力繊維束からなる束の外周を、ポリエステル繊維(1100デシテックス)を5本合撚したものを2本引きそろえた繊維を用い、製紐機(24打機)を用い、12打ちの石目打にて組み、筒状体からなる外層を形成し、紐状物を得た(50m)。
この紐状物の単位長さ当りの質量は44g/m、高強力繊維束からなる束(内層)の質量は35g/m、筒状体66(外層)の質量は、9g/mであった。
次に、この紐状物に対し、固化剤として、熱可塑性エポキシ樹脂(XNR6850A、ナガセケムテック株式会社製)、硬化剤(XNR6850RIN−K、ナガセケムテック株式会社製)、有機溶媒(メチルエチルケトン)からなる溶液(粘度66mPa・S、B型粘度計、ローターNo.4、12rpm)を室温(20℃)にてディップ−ニップ法で付与し、ダイスを通し、断面を円形に整え、150℃にて20分間熱処理を行った後、冷却した。このようにして、高強力繊維束からなる内層と筒状体からなる外層とが一体化された複層構造を有する実施例2−3の高強力繊維線材を得た。
得られた高強力繊維線材は、高強力繊維糸(炭素繊維糸)及び高強力繊維束及び高強力線材に撚りはあたえられていなかった。また、中心部の炭素繊維糸も接着されていることが確認された。
高強力繊維線材を30cmの長さにカットし、さらに、その両端の筒状体の部分を12cmカットした。図27に外観写真を示す、なお、実施例2−2と異なり、高強力繊維線材両端の露出した拘束材で拘束された炭素繊維束20本は、茶筅状にバラすことなく一体のまま用いた。高強力繊維線材の両端のそれぞれにねじを切った鋼管(長さ120mm、内径14mm、外径20mm)を挿入し、接着剤(商品名:Wirelock resin(GB)、LOGICHEM社製)を用いて固定し、引張強度を測定した。実施例2−3の高強力繊維線材の引張強度は、72.9kNであり、24Kの炭素繊維束20本の引張強度の推定強度56.6kNを3割近く超えるものであった。
本発明の筋材は、炭素繊維線材などの高強力繊維線材を鉄筋等に代わる筋材として有用である。特に、本発明の筋材は、コンクリート構造物等の被定着物に使用する筋材として好適である。
1,18 筋材
2 炭素繊維線材
3,6,14 定着治具
3a,6a,7〜12,40〜56 鋼管
4 固着材
5 被定着物
6b,6c,13 プレート
7a,7b,8a スリット
8b ねじ
9a 曲面
10a 凹凸
13a 凸部
15a,15b,19a,19b 板材
16a,16b 凹部
61a〜61e 高強力繊維線材
62 芯線
63a,63b,63c 拘束材
64 高強力繊維糸
65 高強力繊維束
65a 固化剤
66 筒状体(外層)
67a クリール
67b ダイス
67c 加熱炉
67d 裁断機
67e ドラム
67f ダイス
67g 予熱炉

Claims (10)

  1. 高強力繊維糸を含む芯線と、前記芯線の外周を覆う繊維を含む編状筒紐からなる筒形体とが、樹脂により一体化された高強力繊維線材と、
    前記高強力繊維線材の端部が挿入され、一体化される胴部を有する定着治具
    を含む筋材
  2. 前記樹脂は、熱可塑性樹脂である請求項1記載の筋材。
  3. 前記熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂である請求項2記載の筋材。
  4. 前記編状筒紐からなる筒形体は、組紐構造である請求項1から3のいずれかに記載の筋材。
  5. 前記胴部よりも大きな外形に形成された凸部を有する請求項1から4のいずれかに記載の筋材
  6. 前記凸部は、前記胴部の端部または外周部に設けられた板材である請求項記載の筋材
  7. 前記胴部の内面に凹凸を有する請求項1からのいずれかに記載の筋材
  8. 前記胴部は、側方にスリットを有し、締め付けにより内径が小さくなるものである請求項1からのいずれかに記載の筋材
  9. 前記胴部は、外周にねじが形成され、このねじにナットを締め付けることにより、前記胴部の内径が小さくなるものである請求項記載の筋材
  10. 前記胴部は、管材、または、前記高強力繊維線材の端部を両側から挟み込む一対の板材である請求項1から9のいずれかに記載の筋材
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