JP5808598B2 - 木製部材の接合部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、高強力繊維線材を用いた木製部材の接合部構造に関する。
木材同士の接合部の補強として、炭素繊維線材を用いることが検討されている。例えば、特許文献1〜4には、接合する木材にそれぞれ所定方向に沿って延びる孔または溝が形成され、孔または溝の中に、接合する木材間に亘って延びるように炭素繊維線材を埋設し、孔または溝の中に接着剤を充填した木材同士の接合構造が記載されている。
特開2006−57247号公報 特開2006−9484号公報 特開2005−307466号公報 特開2004−44182号公報
ところが、炭素繊維線材は、引張強度の向上や曲げ強度の向上には効果を発揮するが、剪断力に対して弱いという性質がある。そのため、炭素繊維線材を木材の接合部に使用する場合、炭素繊維線材が剪断力を受けないような部位でしか使用することができないという制約がある。
このような問題は、炭素繊維糸だけに限らず、バサルト繊維糸などの高強力繊維と称される繊維を、繊維方向を合わせて束ねて高強力繊維束とし、この高強力繊維束の周囲面全体を他の繊維で覆って高強力繊維線材としても、同様である。従って、高強力繊維糸の優れた特徴を有効に活かすことができる技術が望まれている。
そこで、本発明においては、炭素繊維糸やバサルト繊維糸などにより形成された高強力繊維線材に加わる剪断力に関する問題を解決し、高強力繊維線材を木材等の木製部材の接合部に広く使用することが可能な木製部材の接合部構造を提供することを目的とする。
本発明の木製部材の接合部構造は、接合される木製部材のそれぞれに形成された所定方向に沿って延びる穴または溝と、穴または溝に埋設される高強力繊維線材と、高強力繊維線材の木製部材の接合部に位置する部位を覆う管材とを含むものである。本発明の木製部材の接合部構造によれば、木製部材の接合部において高強力繊維線材に加わる剪断力に対して、高強力繊維線材の接合部に位置する部材を覆う管材が対抗する。
ここで、管材は、金属製または強化樹脂製であることが望ましい。管材が金属製である場合、高強度の金属が剪断力に対して対抗するため、剪断力に対して非常に強くなる。一方、管材が強化樹脂製である場合、本発明の木製部材の接合部構造を採用した構造物を破棄する際に、木製部材とともに燃やすことが可能となる。
また、高強力繊維線材は、高強力繊維糸を、繊維方向を合わせ交絡させずに束ねた芯線と、芯線の周囲面を他の部材との固定用接着剤による接着面として露出させた状態で、芯線の周囲を巻き回して結束する拘束材とを備えたものであることが望ましい。
この高強力繊維線材では、芯線が、高強力繊維糸の繊維方向を合わせ交絡させずに束ねたものであるため、弱い部分となる高強力繊維糸同士の交絡点が存在しないので、高い耐力を発揮させることができる。また、拘束材が、芯線の周囲面を他の部材との固定用接着剤による接着面として露出させた状態で芯線の周囲を巻き回すことで芯線を結束しているので、露出した芯線の接着面を他の部材の接着面に固定用接着剤を介在させて接着させた状態とすることができる。従って、曲げるような力が加わったときに、拘束材だけが他の部材に接着した状態で芯線から剥離してしまったり、拘束材が芯線と接着した状態で他の部材から剥離してしまったりすることが軽減されるので、曲げに対する強度を向上させることができる。
また、拘束材は、高強力繊維糸以外の繊維であって、高強力繊維糸より耐剪断性の高い繊維により形成されたものであることが望ましい。これにより、拘束材を芯線の周囲に巻き回して芯線を結束させていても、高強力繊維糸より剪断力が高いので切れ難くなる。また、芯線自体がばらばらになることを防止することができる。なお、ここでいう拘束材に用いる高強力繊維糸以外の繊維とは、芯線で使用されている高強力繊維糸よりも耐剪断性の高いものであればよく、そのような性能のものであれば拘束材として高強力繊維糸を用いてもよい。
また、拘束材は、芯線を中心として、組紐状または編紐状に編まれたものとするのが望ましい。これにより、露出させた芯線の周囲面を接着面として確保した状態で、芯線に拘束材を巻き回して芯線を結束することが可能となる。
また、拘束材および芯線は、その周囲面を固化剤により硬化させたものであることが望ましい。これにより、芯線と共に拘束材が一体化するので、芯線自体がばらばらになってしまうことを、より一層防止することができる。また、高強力繊維線材全体の形状維持性が向上するため、高強力繊維線材を管材や穴に挿入する場合に、作業性を向上させることができる。
また、高強力繊維線材は、高強力繊維糸を、繊維方向を合わせ交絡させずに束ねた芯線の周囲面に、固化剤を含浸させて硬化させることで、高強力繊維糸を結束させ、芯線の周囲面を他の部材との固定用接着剤による接着面としたものであることが望ましい。
この高強力繊維線材では、芯線が、高強力繊維糸の繊維方向を合わせ交絡させずに束ねた高強力繊維束によるものであるため、弱い部分となる高強力繊維糸同士の交絡点が存在しないので、高い耐力を発揮させることができる。また、芯線の周囲面が固化剤を含浸させて硬化されており、芯線を結束する拘束材として別繊維などで被覆されていないので、芯線の周囲面を接着面として固定用接着剤を介在させて他の部材に接着させた状態とすることができる。従って、曲げるような力が加わったときに、拘束材が他の部材に接着した状態で芯線から剥離したり、拘束材が芯線と接着した状態で他の部材から剥離したりすることが軽減されるので、曲げに対する強度を向上させることができる。
また、固定用接着剤としては、レゾルシノール樹脂、フェノールレゾルシノール樹脂、フェノール樹脂、α−オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、水性高分子−イソシアネート系樹脂等が適宜使用できるが、レゾルシノール樹脂またはフェノール変性レゾルシノール樹脂を主成分としたものとするのが望ましい。レゾルシノール樹脂またはフェノール変性レゾルシノール樹脂は、木製部材および高強力繊維糸と親和性が高いので、より接着性を向上させることができる。
(1)接合される木製部材のそれぞれに形成された所定方向に沿って延びる穴または溝と、穴または溝に埋設される高強力繊維線材と、高強力繊維線材の木製部材の接合部に位置する部位を覆う管材とを含む木製部材の接合部構造により、木製部材の接合部において高強力繊維線材に加わる剪断力に対して、高強力繊維線材の接合部に位置する部材を覆う管材が対抗するため、剪断力が加わる部位であっても、高強力繊維線材を木製部材の接合部に広く使用することが可能となる。
(2)管材が金属製であることにより、高強度の金属が剪断力に対して対抗するため、剪断力に対して非常に強い木製部材の接合部構造が得られる。
(3)管材が強化樹脂製であることにより、本発明の木製部材の接合部構造を採用した構造物を破棄する際に、木製部材とともに燃やすことが可能となり、管材を分別することが不要となる。
(4)高強力繊維線材の芯線が木製部材に強固に接着することで、木製部材の接合部において高強力繊維糸の優れた引張強度を発揮させることができると共に、木製部材の曲げに対する強度を向上させることができる。
本発明の実施の形態における木製部材の接合部構造を示す斜視図である。 図1のA−A断面図である。 図2のB−B断面図である。 本発明の実施の形態1に係る高強力繊維線材を示す図である。 本発明の実施の形態1の高強力繊維線材の第1変形例を示す図である。 本発明の実施の形態1の高強力繊維線材の第2変形例を示す図である。 (A)〜(C)は図4〜図6に示す高強力繊維線材の芯線を結束材と共に固化剤により結束した状態を示す図である。 本発明の実施の形態2に係る高強力繊維線材を示す図である。 図4〜図8に示す高強力繊維線材の製造方法を説明するための図である。 本発明の紐状強化繊維複合体の模式図であり、(a)は外観図、(b)は断面図(芯線を構成する紐状炭素繊維束:7本)である。 本発明の紐状強化繊維複合体の芯線における紐状炭素繊維束の配置を表す図であり、該紐状炭素繊維束が、それぞれ(a)1本、(b)3本、(c)7本の例である。
図1は本発明の実施の形態における木製部材の接合部構造を示す斜視図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図である。
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態における木製部材の接合部構造は、木製部材としての柱10および梁11,12を高強力繊維線材30により接合するものである。梁10および梁11,12には、所定方向として梁11,12が延びる方向に沿って延びる穴20,21,22が連通するようにそれぞれ形成されている。
また、図3に示すように、梁11は、複数の木製のラミナ13を重ね合わせて接着剤(図示せず。)により貼り付けた集成材である。穴21は、貼り合わせる2枚のラミナ13の対向する面にそれぞれ形成された半円形断面の溝により形成されている。梁12についても梁11と同様の構成である。また、柱10についても同様であるが、柱10および梁11,12を無垢材とし、円形断面の穴20,21,22を穿孔した構成とすることも可能である。
また、穴20,21,22には、柱10および梁11,12のそれぞれの接合部に位置する部位を金属製の管材としての鋼管40により覆った高強力繊維線材30が埋設されている。高強力繊維線材30は鋼管40内に挿入され、固定用接着剤50により鋼管40に固着されている。また、穴20,21,22内には予め固定用接着剤51が充填され、鋼管40が固着された高強力繊維線材30が挿入されて、高強力繊維線材30は柱10および梁11,12と一体化される。あるいは、穴20,21,22内に予め固定用接着剤51を充填せずに、高強力繊維線材30の挿入後に、穴20,21,22内に固定用接着剤51を充填しても良い。
また、高強力繊維線材30と鋼管40との固着は、予め高強力繊維線材30を鋼管40内に挿入した後、固定用接着剤50を充填しても良いが、高強力繊維線材30を鋼管40に挿入した後、固定用接着剤50にて鋼管40に高強力繊維線材30を固着する前に、穴20,21,22に高強力繊維線材30を挿入し、その後、穴20,21,22に固定用接着剤51を充填しても良い。また、予め穴20,21,22に鋼管40を配置した後、穴20,21,22および鋼管40に予め固定用接着剤51を充填し、または充填せずに、穴20,21,22および鋼管40に高強力繊維線材30を挿入し、必要に応じて(特に、予め固定用接着剤51が充填されていない場合)、固定用接着剤51を穴20,21,22および鋼管40に充填しても良い。
なお、上記実施形態においては、柱10および梁11,12に穴20,21,22を形成した構成について説明したが、本発明の木製部材の接合部構造は穴に代えて溝を形成し、接合部に位置する部位を鋼管40により覆った高強力繊維線材30を埋設する構成とすることも可能である。また、鋼管40は、強化樹脂製の管材とすることも可能である。
次に、高強力繊維線材30の実施形態について、図4〜図11を参照して説明する。
(実施の形態1)
図4に示す高強力繊維線材1aは、芯線2と、拘束材3aとにより構成されている。
芯線2は、高強力繊維糸4を、繊維方向を合わせ交絡させずに束ねた高強力繊維束5により形成されている。
高強力繊維糸4は、スーパー繊維とも称される繊維が使用できる。高強力繊維糸4としては、例えば、炭素繊維、バサルト繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ポリビニルアルコール(PVA繊維)などが使用できる。
高強力繊維束5は、上記高強力繊維糸を単体で用いたり、複数を混合させたり、その他有機繊維からなる糸をその強度や曲げ性が損なわれない範囲で混合したりしたものでもよい。高強力繊維束5は、通常、高強力繊維糸4を数千本から数万本束ねてなる断面が円形状または扁平状の糸状体である。なお、この高強力繊維束5を構成する高強力繊維糸4は、特に、炭素繊維糸やバサルト繊維糸であれば、撚りがあると引張強度が低下するので、高強力繊維糸(フィラメント)に撚りを掛けず、また高強力繊維束全体にも撚りを掛けていないことで、実質的に無撚糸と同等の状態としたものである。撚りが掛かっていない高強力繊維糸や高強力繊維束を得るためには、紡糸の段階より高強力繊維糸に撚りが掛からないよう引き揃えたもの等を用いる。
なお、芯線2を構成する高強力繊維束5は、芯線2の周囲面が接着面として機能することを阻害しない程度にサイジング剤や集束剤を含浸させてもよい。
高強力繊維糸4が炭素繊維糸であれば、PAN系、ピッチ系のいずれの炭素繊維糸も使用できる。この中でも、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維糸が好ましい。
また、この炭素繊維糸を束ねた炭素繊維束は、炭素繊維メーカーから供給される炭素繊維糸6000本(6K)、12000本(12K)、24000本(24K)を、必要とされる強度に応じて1本、または複数本束ねたものを用いることができる。
拘束材3aは、芯線2の周囲面を他の部材との固定用接着剤50,51による接着面として露出させた状態で芯線2を周囲面から高強力繊維糸4がばらばらにならないように結束するものである。固定用接着剤50,51としては、レゾルシノール樹脂、フェノールレゾルシノール樹脂、フェノール樹脂、α−オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂や水性高分子−イソシアネート系樹脂等の公知の接着剤が使用できる。特に、木製部材と高強力繊維糸の両方に親和性が高いものが好ましく、高強力繊維糸として炭素繊維糸を用いる場合には、レジルシノール樹脂やフェノールレゾルシノール樹脂を好ましく用いることができる。
本実施の形態1では、芯線2の周囲面に、拘束材3aとなる繊維を巻き回して、目の粗い筒状の組紐(丸打)を組むことで、組紐状の拘束材3aを形成している。また、拘束材としては、図5に示すように、芯線2の周囲面に拘束材3bとなる繊維を巻き回して目の粗い筒状の丸編を編むことで、編紐状の拘束材3bとすることもできる。
拘束材3a,3bとしては、柔軟なものが好ましく、ポリエステル、ナイロン、ビニロン等の合成繊維や、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、絹、羊毛、麻、綿などの天然繊維が使用できる。
拘束材3aは、芯線2の長さ方向に対して0.5mm〜30cmのピッチで交差させるとよく、特に、1cmから10cmがより好ましい。
ここで、拘束材が芯線2を被覆する割合について説明する。
芯線2の被覆率は、高強力繊維線材の周囲面全体の面積に対する拘束材が占める面積の割合である。被覆率は、拘束材が芯線2の周囲面に一様に配置されたものであるときには、高強力繊維線材を側方から撮像し、撮像された画像から高強力繊維線材全体の面積と、拘束材が占める面積とを測定して、次式に従って演算することで算出することができる。
被覆率(%)=(拘束材が占める面積)/(高強力繊維線材全体の面積)×100
このように算出される被覆率は、少ない方が、固定用接着剤が芯線2の周囲面に接着して接着面として機能する面積が広くなるため望ましい。特に、高強力繊維線材1aを用いて木製部材同士の接着強度を向上させるとの観点からは70%以下である。より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下である。被覆率の下限は、芯線2を構成する高強力繊維糸4がばらばらにならず、紐状または棒状が維持できる最も低い値とすることができる。
この高強力繊維線材1aは、以下のようにして製造することができる。
必要本数の高強力繊維束5をクリールから引き出し、それらを束ねて芯線2とする。この芯線2を製紐機の中央に通す。そして、製紐機により芯線2の周囲面に拘束材3aにより目の粗い組物を形成する。そうすることで、組紐状の拘束材3aが芯線2の周囲面に形成されて、芯線2がばらばらにならないように結束され、長尺状の高強力繊維線材1aとなり、ドラムなどに巻き取ることができる。高強力繊維線材1aは柔軟な芯線2を拘束材3aで結束しただけなので、ドラム等に容易に巻き付けることができる。従って、移動や保管が容易である。
なお、拘束材を編紐状とするときには、芯線2を丸編機の中央に通して芯線2の周囲面に編物を形成することで、図5に示すような拘束材3bとすることが可能である。
また、高強力繊維線材は、拘束材を編紐状または組紐状とする以外に、高強力繊維糸4がばらばらにならないように結束できればよいので、図6に示すように、高強力繊維線材1cの芯線2を結束するための拘束材として、所定間隔ごとに配置されたゴム輪や拘束材3a,3bで挙げられている繊維等を所定間隔に配置した拘束材3cとすることもできる。
図4から図6に示す芯線2においては、サイジング剤や集束剤を含浸させて結束することの他に、図7(A)から同図(C)に示すように、高強力繊維糸4をより強固に結束するために、拘束材3a〜3cにより結束した芯線2に固化剤を含浸させ、拘束材3a〜3cと共に芯線2を硬化させることもできる。そうすることで、芯線2および拘束材3a〜3cを強固に一体化させ棒状体とすることができる。この場合には、高強力繊維線材1d〜1fを数cm〜数m程度の長さに切断した状態で移動、保管を行うことができる。芯線2を強固に一体化させた高強力繊維線材1d〜1fであれば、狭い溝に配置するときや奥行きの深い穴などに挿入するときなどに、型崩れしないため容易に配置することができる。
使用できる固化剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、可変性を持たせるためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。また、固定用接着剤50,51および高強力繊維糸と親和性の高い固化剤とすることが望ましい。
好適な具体例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン42等)、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、レゾルシノール樹脂などが挙げられるが、これに制限されない。
この中でも酸やアルカリに対する耐久性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、レゾルシノール樹脂が好適である。
芯線2への上述の樹脂のコートする方法は、スプレーや刷毛で高強力繊維に樹脂をコートするなど特に制限はないが、生産性の観点から、ディプ−ニップ法やさらにダイスを用いた図9に示すような装置を用いることができる。
樹脂として熱可塑性樹脂をコートする場合で説明すると、図9に示すような装置を用いた場合、クリール7aから供給された高強力繊維束(芯線2)を製紐機(図示せず)に通したり、丸編機(図示せず)に通したりして拘束材3を形成した後、溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させ、その後、必要に応じてマングルで絞り、余分な熱可塑性樹脂を取り除いてダイス7bで線径を整えたのちに必要に応じて加熱炉7cにより乾燥、硬化させることでコーティングを行う。そして、乾燥、硬化したものを裁断機7dに所定長さに切断すれば、切断した状態で移動、保管を行うことができる。
(実施の形態2)
図8に示す高強力繊維線材1gは、芯線2の周囲面を他の木製部材との固定用接着剤による接着面とするために、芯線2に固化剤を含浸させて高強力繊維糸4を結束したものである。なお、図8においては、図4と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
固化剤は、芯線2に含浸させて硬化させ、芯線2を構成する高強力繊維糸4が離散しないように拘束材として機能するものであれば使用することができる。また、固化剤は、高強力繊維糸4が離散しなければよいので、芯線2の中心に至るまで含浸させる必要はなく、表層が硬化する程度に芯線2に含浸させればよい。なお、固化剤を芯線2の中心に至るまで含浸させる必要はないが、芯線2の中心まで含浸させ、芯線2全体を硬化させてもよい。
使用できる固化剤としては、実施の形態1と同様に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、可変性を持たせるためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いることができる。また、固定用接着剤50,51および高強力繊維糸と親和性の高い固化剤とすることが望ましい。また、樹脂として熱可塑性樹脂をコートする場合では、実施の形態1と同様に、図9に示すような装置を用いることができる。
このように構成された高強力繊維線材1gは、固化剤により棒状体となるため、数cm〜数m程度の長さに切断した状態で移動、保管を行うことが容易にでき、狭い溝に配置するときや奥行きの深い穴などに挿入するときなど、型崩れしないため容易に配置することができる。
また、固化剤を、芯線2を結束する拘束材として機能させているため、図4〜図6に示す拘束材3a〜3cを省略することができる。
(実施の形態3)
また、高強力繊維線材30として、以下の炭素繊維線材を用いることも可能である。この炭素繊維線材は、図10に模式図を示すように、紐状炭素繊維束の芯線(好ましくは断面円形)からなる内層と、芯線の周囲に設けられた樹脂含む中間層と、中間層の周囲に設けられた編状筒紐からなる外層とを含んで構成された紐状強化繊維複合体であり、必要に応じて中間層と外層の間、あるいは外層の外側に他の層を有する複層構造であり、芯線である炭素繊維に由来する優れた引張強度や弾性係数等の機械的性能を保持しつつ、中間層や外層の存在により、剪断強度を有する。
なお、詳しくは後述するが、炭素繊維線材の好ましい態様の一つは、中間層が、樹脂および芯線と同軸方向に配置された複数の補強糸からなる紐状強化繊維複合体である。
中間層にこのように配置された補強糸を含むことにより、保管中や輸送中、取り扱い中や使用中に炭素繊維に横方向の力がかかったときに芯線に用いられている炭素繊維糸が折損したり、剪断したりすることを抑制することができる。
また、強度の観点から、炭素繊維線材の好ましい態様は、内層、中間層および外層が、中間層を構成する樹脂と同一の樹脂により接着されて一体化している紐状強化繊維複合体である。なお、中間層には上記補強糸が含まれていてもよい。
引張強度の高い内層と中間層および外層との接着性が不十分であると、内層である炭素繊維糸由来の引張強度が得られず、引張られた時に外層部分、あるいは外層および中間層が引きちぎられるおそれがある。また、中間層と外層又は内層と中間層の接着性が十分でない場合には、施工時等に中間層と外層又は外層のみが抜けてしまうことがある。
これに対し、炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体は、内層、中間層および外層が樹脂で一体化されるため、各層の接着性が向上し、上記問題が生じない。
特に内層、中間層および外層を一体化するために使用される樹脂が、中間層を構成する樹脂と同一の樹脂であるため、異種類の樹脂を使用したときに生じうる各層の接着性不足を回避できる。
なお、上記中間層を構成する樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用できるが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
この樹脂を熱可塑性樹脂とすることにより、熱を加えることにより可変性を有することによりドラムなどに巻いて保管、運搬が可能となる。
炭素繊維線材の紐状炭素繊維複合体の直径は、用途等に応じて任意であり、特に限定されるものではないが通常、1mmから150mm程度である。
また、炭素繊維線材の紐状炭素繊維複合体の長さも任意であり、用途等に応じ決定すればよいが、通常、数十cm〜数百m程度であるが、これ以上の長さであってもよい。
炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体は、棒状、曲線状などいろいろな形状を取ることができる。特に、中間層を構成する樹脂として熱可塑性樹脂を使用した場合(内層、中間層および外層を、中間層を構成する樹脂と同一の樹脂により接着されて一体化している場合含む)には、芯線を構成する紐状炭素繊維束が非常に高い引張強度を有し外層が適度な柔軟性を有し、その間に設けられる中間層が熱可塑性樹脂を含んで構成されるため、熱可塑性樹脂が軟化する温度に加熱することにより、変形することが可能であることから、棒状のみならず、曲線状、さらには糸巻等に巻き取った形状にすることができる。
そのため、保管移動の際には長尺の紐状強化繊維複合体を巻き取った形状とし、使用するときに加熱して必要な長さに引き出し、切断し、使用時には棒状の直線形状とすることもできる。
以下、炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体を構成する、芯線(内層)、中間層、外層についてそれぞれ説明する。
[芯線(内層)]
炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体の内層を構成する芯線は、1または複数の紐状炭素繊維束からなる。
この紐状炭素繊維束は、炭素繊維糸のみ、あるいは炭素繊維糸にガラス繊維、バサルト繊維、アラミド繊維、その他有機繊維からなる糸をその強度や曲げ性が損なわれない範囲で混合したものであり、通常、炭素繊維糸(フィラメント)を数千本から数百万本束ねてなる断面が円形の糸状体である。なお、この炭素繊維束を構成する炭素繊維糸は、撚りがあると剪断力および引張強度が低下するので撚りがかかっていない方が好ましい。すなわち、内層を構成する炭素繊維糸が引き揃えて構成されていることが好ましい。
また、紐状炭素繊維束として、撚紐状、組紐状、編紐状、織紐状、くけい紐状、束紐状、裁紐状、合成紐状などのいずれの形態の紐状炭素繊維束を用いることは可能である。一方で、紐状炭素繊維束に、上記炭素繊維糸やその他の糸からなる交絡点が存在する場合、その交絡点にて横方向のせん断力が炭素繊維糸にかかりやすく、炭素繊維糸が切断してしまい、紐状炭素繊維束の引張強度が低下するおそれがある。また、炭素繊維糸と同様に、紐状炭素繊維束は撚りがかかっていない方が好ましい。そのため、上記形態の中でも、紐状炭素繊維束として、撚りがなく、交絡点が生じないように炭素繊維糸を引きそろえたものが好ましい。
紐状炭素繊維束を構成する炭素繊維糸としては、PAN系、ピッチ系等のいずれの炭素繊維糸も使用できる。
なお、紐状炭素繊維束は、その炭素繊維糸がばらけることを防ぐために、接着力のある樹脂(サイジング剤や収束剤と呼ばれる)等で仮接着されていることが好ましい。サイジング剤や収束剤は、中間層を構成する樹脂と親和性が高いものを用いるとよい。
紐状炭素繊維束を構成する炭素繊維糸の平均径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性や加工性の観点から、通常、1〜20μmの範囲である。芯線に使用される紐状炭素繊維束において、その外径は使用される炭素繊維糸の太さ、本数によって決定され、通常、1mmから100mm程度である。
紐状炭素繊維束は、通常、炭素繊維糸12000本からなる12k、炭素繊維糸24000本からなる24kで出荷されることが多く、また、炭素繊維糸6000本からなるものや炭素繊維糸48000本以上からなるものもある。
炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体において、より太い芯線が必要な場合には、複数本の紐状炭素繊維束を束ねるように配置すればよく、特に断面が円形になるように配置することが好ましい。
芯線を構成する紐状炭素繊維束が、(a)1本、(b)3本、(c)7本の場合を図11に例示する。
ここで、芯線の直径dは、断面が円形の場合には、芯線を構成する紐状炭素繊維束の外周に接する仮想円の直径とし、(図11参照)、断面が円形でない場合は、その長径方向を、芯線の直径dとする。
なお、芯線を構成する紐状炭素繊維束の本数はこれに限定されず、その使用目的に合わせて適宜決定されるが、例えば、本実施形態の場合には、芯線の直径dは、1mmから100mm程度である。芯線の直径dは、ノギスで測定したり、断面を顕微鏡(電子顕微鏡含む)にて測定することができる。
また、複数の紐状炭素繊維束を使用する場合、各紐状炭素繊維束を構成する炭素繊維糸を収束させて一体化し、全体として1本の紐状炭素繊維束となるようにしてもよい。
紐状炭素繊維束の長さは、使用目的によって適宜決定され、通常、数十cmから数百m程度である。
ここで、芯線を構成する紐状炭素繊維束が、樹脂でコートされていることが好ましい。なお、芯線を構成する紐状炭素繊維束が、樹脂でコートされているとは、1の紐状炭素繊維束から芯線が構成されている場合は、当該紐状炭素繊維束が樹脂でコートされたものをいう。この場合、当該紐状炭素繊維束を構成する内部の炭素繊維糸も樹脂で接着し一体化していてもよい。
また、複数の紐状炭素繊維束から芯線が構成されている場合には、
(1)それぞれの紐状炭素繊維束が個別に樹脂でコートされているが、芯線全体としては樹脂で接着されておらず一体化していないもの、
(2)それぞれの紐状炭素繊維束が個別に樹脂でコートされていないが、芯線全体としては、樹脂で紐状炭素繊維束がコートされ接着し一体化しているもの、
(3)それぞれの紐状炭素繊維束が個別に樹脂でコートされ、かつ、芯線全体としても樹脂で接着され一体化しているもの
を含む。
該紐状炭素繊維束は、樹脂がコートされることにより、製造方法にもよるが芯線の表面にあらかじめ樹脂を存在させることによって、中間層との接着性が向上するため、紐状強化繊維複合体としての強度が向上する。
また、芯線として複数本の紐状炭素繊維束を芯線として使用した場合には、上記(2)、(3)のように樹脂によってそれぞれの紐状炭素繊維束が接着結合して一体化した芯線となることでより強度が向上する。
特に強度の観点からは、紐状炭素繊維束の内部にまで熱可塑性樹脂が含浸し、紐状炭素繊維束の内部の炭素繊維糸も樹脂で接着結合し一体化しているものが好ましい。
使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、可変性を持たせるためには、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
好適な具体例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン42等)、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂などを挙げるが、これに制限されない。
この中でも酸やアルカリに対する耐久性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂が好適である。
なお、紐状炭素繊維束のコートに使用される樹脂と、中間層を構成する樹脂は、それぞれが接着性を有するものであればよく同一である必要はないが、より接着力を向上させるためには同一の樹脂を用いることが好ましい。
紐状炭素繊維束への上述の樹脂のコートする方法は、スプレーや刷毛で炭素繊維に樹脂をコートするなど特に制限はないが、生産性の観点から、ディプ−ニップ法やさらにダイスを用いた図9に示すような装置を用いることができる。樹脂として熱可塑性樹脂をコートする場合では、実施の形態1と同様に、図9に示すような装置を用いることができる。
[中間層]
炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体の中間層は樹脂を含み、芯線(内層)と外層との間に設けられる。
炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体において、該中間層は、芯線と外層とが直接接触することを防ぎ、含まれる樹脂によって芯線と外層とを接着する。さらに、中間層を構成する樹脂を熱可塑性樹脂とした場合には、常温では硬質であるが、軟化する温度域にて適度な柔軟性を有すため、該熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱することにより、炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体は、様々な形状に曲げることができる。そのため、炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体は、棒状のみならず、曲線状、さらには糸巻に巻き取った状態にすることができる。
なお、炭素繊維線材の効果を損なわない範囲で、この中間層と外層との間に、別の層(例えば、接着層等)を設けても良い。
中間層に使用される樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、芯線を構成する紐状炭素繊維束や、外層を構成する編状筒紐との接合性が高いものが用いられる。特に、熱可塑性樹脂を使用する場合には、常温での硬化性、加熱時に柔軟性のバランスを考慮して適当なものが選択される。
好適な具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン42等)、ABS樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂などを挙げることができる。
この中でも酸やアルカリに対する耐久性の観点から、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂が好適である。
また、中間層に熱可塑性樹脂を使用する場合、用途および炭素繊維糸、下記の補強糸、外層を形成する材料の耐熱性を考慮し任意の熱可塑性樹脂を用いればよいが、軟化温度が50℃〜200℃程度の熱可塑性樹脂が施工性に優れるため好ましい。もちろん用途に応じて、軟化温度が200℃超である熱可塑性樹脂であってもよい。
なお、上述のように樹脂でコートした紐状炭素繊維束を芯線として用いる場合、芯線と中間層の接着性を高める観点からは、芯線のコートに用いる樹脂と、中間層に用いる樹脂とが同一であることが好ましい。
中間層は、軟化した際に充分な曲げ性を与え、かつ、芯線を構成する炭素繊維束を被覆できる厚みが必要である。使用目的や芯線の太さにもよるが、中間層の厚みは、好ましくは、0.05mm以上であり、より好ましくは0.1mm以上であり、さらに好ましくは0.5mm以上である。中間層の厚みの上限は特にないが、通常、30mm程度以下であるが、使用用途によってはこれ以上でもよい。
中間層の厚みは、紐状炭素繊維束の断面の内層と外層の間の距離を、ノギスで測定したり、顕微鏡(電子顕微鏡含む)で測定することができる。
なお、前記中間層には、補強糸を含むことが好ましい。中間層に、樹脂と共に補強糸を含むことにより、保管中や輸送中、取り扱い中や使用中に炭素繊維に横方向の力がかかったときに芯線に用いられている炭素繊維糸が折損したり、剪断したりすることを抑制することができる。
中間層に補強糸を配置する向きとしては、芯線と同軸方向に配置することが紐状炭素繊維束を剪断から保護し、また、製造工程の観点から好ましい。
また、紐状炭素繊維束を内層(芯線)とした炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体は、引張方向への強度に特に優れるものであるが、それ以外の強度を高める観点からは、芯線と直交方向に配置された補強糸を含む構成としてもよい。
また、芯線の周囲にスパイラル状に補強糸を巻き付けたり、芯線に対し、斜め方向に配置された補強糸を含む構成にしてもよい。
また、補強糸は、芯線の保護の観点より芯線の外周を覆うように配置されることが好ましい。特に、芯線の外周を隙間なく覆うように配置されていることが好ましい。
このように、中間層に補強糸を含むことにより、芯線に用いられている炭素繊維糸を保護し、炭素繊維糸の断線を防ぎ、また、中間層自体の強度も向上させ、ひいては、紐状強化繊維複合体全体の強度が向上する。
また、該補強糸を中心として厚みのある中間層を形成することができる。そのため、最終的に得られる紐状炭素繊維複合体として求められる直径に対し、芯線の直径が比較的大きい場合あるいは比較的小さい場合にも、それに対応して任意の厚みのある中間層を形成し、求められる太さの紐状炭素繊維複合体を供給することができる。したがって、必要な引張強度に応じた必要量の炭素繊維を用い、必要な太さの紐状強化繊維複合体を適切なコストで得ることができる。
上記補強糸としては、天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、バサルト繊維のいずれも使用できるが、通常、好ましくは合成繊維が使用される。合成繊維としては、ポリアミド(ナイロン、アラミド等)、ビニロン、ポリアクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、ポリアセタール等の繊維を使用することができ、これらは一種または2種以上を組み合わせてもよい。この中でも、靭性の観点からポリアミド、ポリアセタールが好ましく、特に芳香族ポリアミドであるアラミドが好ましい。コストおよび形態安定の観点からはポリエステル繊維が好ましい。
また、糸の形態としてはフィラメント糸、スパン糸、カバーリング糸のいずれでもよい。
なお、このような補強糸は、芯線を構成する炭素繊維より、高い剪断抵抗を有することから、補強糸を中間層内部に芯線と同軸方向に配置することで、芯線の紐状炭素繊維束を剪断から保護する効果がある。
なお、芯線の周囲に中間層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、芯線を構成する前記紐状炭素繊維束を、樹脂でコートする方法と同様にスプレーや刷毛などを用いて芯線の周囲に樹脂層を形成する方法、芯線の回りに樹脂のフィルムを巻き付ける方法が挙げられる。
また、この樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、生産性を高める観点からは、上述の芯線を構成する紐状炭素繊維束への熱可塑性樹脂のコートする方法と同様に、芯線を溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させる方法が挙げられる。
特に補強糸を含む中間層を、生産性よく形成するためには、紐状炭素繊維束や炭素繊維束の周囲に補強糸を配置させたものを、ディプ−ニップ法やさらにダイスを用いた図9に示すような装置を用い、芯線の周囲に熱可塑性樹脂を付与し、中間層を形成することが好ましい。この方法では、クリールから供給された紐状炭素繊維束や炭素繊維束の周囲に補強糸を配置させたものを、溶融あるいは溶媒に溶解した熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を含むエマルジョンに浸漬し通過させ、その後必要に応じマングルで絞り、余分な熱可塑性樹脂を取り除いてダイスで線径を整えたのちに必要に応じ乾燥、硬化させることで補強糸を含む中間層を得ることができる。
[外層]
炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体の外層は、編状筒紐からなり、外部から芯線である紐状炭素繊維束を保護する役割を有する。なお、「編状筒紐」とは、図10に示すように繊維を編み上げた編状構造又は組み上げた組紐構造を有する筒形体である。
上述のように炭素繊維は、引張強度は高いが、剪断強度はそれほど高くないため、芯線を構成する紐状炭素繊維束に外部から鋭利物が接触すると、その周囲に設けられた中間層を突き破り、炭素繊維糸が切断され、芯線の強度が低下するおそれがある。
ここで、強度の高い、編状筒紐からなる外層を設けることによって、内部の紐状炭素繊維束を鋭利物や応力から保護することができる。
なお、このような外層の役割を損なわない限り、外層の上に更なるコーティングなどを行ってもよい。例えば、意匠性を高めるために外層の外部を塗料などで着色したり、各種無機物、有機物でコーティングしてもよい。
なお、炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体の特徴の一つは、外層を編状筒紐としたことにある。炭素繊維線材の紐状強化繊維複合体の外層は、編状筒紐であることにより、フレキシビリティがあり、多少の応力に対して変形できることから、その応力を逃がすことができる。このように、編状筒紐では、紐状の形態を維持することができ、また、外層の厚みを外部から鋭利物や応力から十分保護できる厚みにしても、フレキシビリティを保つことができるという利点がある。
これに対し、外層を樹脂コーティングのみで形成した場合では、保護層としての役割と、フレキシビリティを両立することができない。
なお、外層に使用する繊維の密度を変えることにより、フレキシビリティと強度のバランスをとることができる。
さらに編状筒紐には、上述のように繊維を編み上げた筒状の編状構造(以下、「丸編」ともいう。)や、繊維を筒状に組み上げた組紐構造(以下、「丸打組物」ともいう)が挙がられるが、適度の固さ、フレキシビリティを有し、より優れた強度、形態安定を有することから組紐構造が好ましく用いられる。
また、組紐構造では、引き延ばされた際に、径が細くなるため、張力がかかるように製造すると外層とその内部に含まれる中間層および内層との密着性が高まるという点でもより好ましい。
外層の編状筒紐を構成する繊維としては、天然樹脂や合成樹脂からなる樹脂繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などを使用でき、これらを組み合わせても使用することができる。この中でも、通常、好ましくは、合成樹脂の繊維が用いられる。
外層を構成する繊維の好適な具体例としては、ポリアミド(ナイロン等)、ビニロン、ポリアクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル、アラミド、セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール等の繊維を挙げることができる。この中でも耐薬品性(特に耐アルカリ性)や可変性のバランスがよい、ビニロン、セルロース、ポリアミド、ポリアセタールが好ましく、ビニロンが特に好ましい。これらの繊維は、外層として充分な強度を有するのみならず、アルカリに対して強い耐性を有する。
また、紐状強化繊維複合体の製造工程や使用用途によって熱処理が施される場合には、外層の編状筒紐がポリエステル繊維からなると熱や水分による収縮や膨張などが発生し難く寸法安定性の観点より好ましい。
外層の編状筒紐の直径や長さ、厚みは、その使用目的に適宜決定することができ、内部の芯線や中間層にあわせての任意の太さ、長さとすることができる。
また、外層の編状筒紐を構成する繊維を、様々な色彩に着色して意匠性を高めることもできる。また、外層を着色することにより、外層、中間層および内層の種類等を判別できるようにしてもよい。
外層の編状筒紐の製造方法は、特に限定はないが、例えば、従来公知の製紐機、丸編機、また公知の靴下製造装置を一部改造して、編状筒紐製造装置に転用して作製することができる。
以下、外層としての編状筒紐を芯線および中間層の周囲に設ける方法について説明する。
外層を設ける方法は、特に限定されず、例えば、まず、内層(芯線)の周囲に中間層を形成し、次いで、その周囲に外層を組むあるいは編んでゆき外層を形成する方法;
まず、編状筒紐としての外層を形成し、この外層の中に、中間層が周囲に設けられた芯線を挿入する方法;
などが挙げられる。
なお、外層である編状筒紐と、樹脂との接着性が悪い場合には、中間層の上により接着性の高い接着層を設けてもよい。
また、中間層を構成する樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、編状筒紐の内部に中間層が周囲に設けられた芯線を入れた状態で加熱することにより、中間層を構成する熱可塑性樹脂を軟化させて外層となる編状筒紐と一体化させてもよい。
また、使用する外層である編状筒紐は、上述の中間層を構成する樹脂と同様の樹脂を用い、前記と同様な方法でコートされていてもよく、このような編状筒紐を用いることで、中間層との接着性が向上する。
[好適な態様の紐状強化繊維複合体の製造方法]
以下、炭素繊維線材の好ましい態様の紐状強化繊維複合体の製造方法を説明する。
炭素繊維線材の好ましい態様の一つは、樹脂および芯線と同軸方向に配置された複数の補強糸からなる中間層、編状筒紐からなる外層を有する紐状強化繊維複合体である。以下、その製造方法の例を説明する。
(1)1または複数の炭素繊維束からなる芯線の周囲を、中間層の一部となる補強糸にて、芯線の外周の全体を隙間なく覆う様に配置し、芯線の外周に配置された補強糸の周囲を製紐機を用い適当な繊維を組んで外層となる編状筒紐を形成し、次に、この芯線、補強糸および編状筒紐で構成される紐状物に樹脂をディップ−ニップ法により付与し、必要に応じ、ダイスを通し、必要に応じ、乾燥、熱処理、冷却等をおこない、樹脂を外層(編状筒紐)、中間層(補強糸)、内層(紐状炭素繊維束)に付与し、内層、中間層、外層を接着し、一体化し紐状強化繊維複合体を製造する。なお、樹脂に紐状物をディップした後、ニップせずにダイスに通し、余剰の樹脂を除去してもよい。
(2)1または複数の炭素繊維束からなる断面円形の芯線の周囲に、前記芯線を中心にして二重円状になるように、補強糸にて、芯線の外周の全体を隙間なく覆い、次に、熱可塑性樹脂をディップ−ニップ法により付与し、必要に応じ、ダイスを通し、乾燥、熱処理、冷却等をおこない、熱可塑性樹脂を内層、中間層にコートし、内層、中間層を接着し、一体化する。次に、この中間層の周囲に製紐機を用い外層となる繊維を組んでゆき、紐状強化繊維複合体を製造する。また、これを熱処理することにより、熱可塑性樹脂を軟化させ冷却することにより内層、中間層、外層を接着一体化することができる。なお、熱可塑性樹脂に芯線の外周を補強糸で覆った紐状物をディップした後、ニップせずにダイスに通し、余剰の樹脂を除去してもよい。
また、上記(1)、(2)の方法によれば、芯線が樹脂でコートされ、又、芯線をコートする樹脂と中間層を構成する樹脂とが同一であり、内層、中間層および外層が中間層を構成する樹脂と同一の樹脂により接着され一体化することを一度の樹脂付与工程で行うことができる。
また、炭素繊維線材の特に好ましい態様は、内層、中間層および外層が、中間層を構成する樹脂と同一の樹脂により接着されて一体化している紐状強化繊維複合体である。以下、その製造方法の例を説明する。
特に、内層、補強糸、外層を配置した紐状物に樹脂を付与し、内層、中間層、外層を形成すること、特に、同時にこれらの層を樹脂にて接着し、一体化することが、強度、生産性の観点から好ましい。
この際、樹脂が、内層まで浸透しやすくする観点から、外層の編状筒紐は、外層を形成する糸と糸の間に隙間を有しているものが好ましく、例えば、石目打にて打たれた組物がよい。
また、樹脂を付与する際の樹脂の状態は、溶融状態、溶媒に溶解された状態、樹脂を含むエマルジョン状態でいずれでもよいが、外層、中間層、内層を構成するそれぞれの繊維の内部にまで浸透しやすい粘度の低いものが好ましい。
その粘度は、50000mPa・s以下が好ましく、10000mPa・s以下がより好ましく、1000mPa・s以下が特に好ましい(測定方法:B型粘度計、ローターNo.4 12rpm)。下限は1mPa・s程度であり、好ましくは10mPa・s以上である。
粘度が50000mPa・sを上回ると樹脂が、外層、中間層、内層まで十分に浸透せず、強度が低下するおそれがある。また、1mPa・sを下回ると加工中に樹脂垂れが発生し、十分な量の樹脂を紐状強化繊維複合体に付与できず強度が低下するおそれがある。
なお、樹脂を、芯線である紐状炭素繊維束の内部にまで浸透させる観点からは、内層を構成する、紐状炭素繊維束は、樹脂で事前にコートされていないものを用いることが好ましい。なお、炭素繊維束の製造時に、炭素繊維糸のバラケを防ぐためにわずかに付与されるサイジング剤や収束剤と呼ばれるものは、炭素繊維線材の効果に影響を及ぼさないものが多く、このようなものであれば、当該製造方法においても紐状炭素繊維束にあらかじめ付与されていてもよい。好ましくは、サイジング剤や収束剤は、コートされる樹脂と親和性が高いものを用いるとよい。
なお、本発明の木製部材の接合部構造に用いる高強力繊維線材は、上記構造に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で他の構造のものであっても良い。
本発明の木製部材の接合部構造は、高強力繊維線材を用いて木製部材同士を接合する構造として有用である。
1a〜1g 高強力繊維線材
2 芯線
3a,3b,3c 拘束材
4 高強力繊維糸
5 高強力繊維束
7a クリール
7b ダイス
7c 加熱炉
7d 裁断機
10 柱
11,12 梁
13 ラミナ
20,21,22 穴
30 高強力繊維線材
40 鋼管
50,51 固定用接着剤

Claims (7)

  1. 接合される木製部材のそれぞれに形成された所定方向に沿って延びる穴または溝と、
    前記穴または溝に埋設される高強力繊維線材と、
    前記高強力繊維線材の前記木製部材の接合部に位置する部位を覆う管材と
    を含み、
    前記高強力繊維線材は、高強力繊維糸を束ねた芯線と、前記芯線の周囲を巻き回して結束する拘束材とを備えたものであり、
    前記拘束材は、前記芯線を中心として、組紐状または編紐状に編まれたものであり、
    前記穴または溝と、前記高強力繊維線材と、前記管材とが固定用接着剤により固着された木製部材の接合部構造。
  2. 前記芯線は、繊維方向を合わせ交絡させずに束ねたものである請求項1記載の木製部材の接合部構造。
  3. 前記拘束材は、前記芯線の周囲面を他の部材との固定用接着剤による接着面として露出させた状態で、前記芯線を結束したものである請求項1または2に記載の木製部材の接合部構造。
  4. 前記拘束材は、前記高強力繊維糸以外の繊維であって、前記高強力繊維糸より耐剪断性の高い繊維により形成されたものである請求項1から3のいずれか1項に記載の木製部材の接合部構造。
  5. 前記拘束材および前記芯線は、その周囲面を固化剤により硬化させたものである請求項から4のいずれか1項に記載の木製部材の接合部構造。
  6. 前記管材は、金属製または強化樹脂製である請求項1からのいずれか1項に記載の木製部材の接合部構造。
  7. 前記固定用接着剤は、レゾルシノール樹脂、フェノールレゾルシノール樹脂、フェノール樹脂、α−オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、水性高分子−イソシアネート系樹脂のいずかれを主成分としたものである請求項からのいずれか1項に記載の木製部材の接合部構造。
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