JP3272320B2 - 緊張定着構造及び緊張定着方法 - Google Patents

緊張定着構造及び緊張定着方法

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JP3272320B2
JP3272320B2 JP02670199A JP2670199A JP3272320B2 JP 3272320 B2 JP3272320 B2 JP 3272320B2 JP 02670199 A JP02670199 A JP 02670199A JP 2670199 A JP2670199 A JP 2670199A JP 3272320 B2 JP3272320 B2 JP 3272320B2
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香保里 松元
禎二 熊岡
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住友建設株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、プレストレスト
コンクリート部材等に用いられる緊張材の緊張定着構造
及び緊張定着方法に係り、特に緊張材としてカーボン繊
維、アラミド繊維、ガラス繊維等の非金属の連続繊維又
はこれらの連続繊維を束ねて合成樹脂で棒状又はストラ
ンド状に成形したFRP緊張材を用いるときの緊張定着
構造及び緊張定着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】コンクリートにプレストレスを導入する
ための緊張材としては、従来からPC鋼棒、PC鋼線又
はPC鋼より線が広く用いられている。これらの緊張材
の定着は一般に、PC鋼棒では端部にねじ山を形成し、
これにナットを螺合して、アンカープレートを介して定
着する。また、PC鋼線又はPC鋼より線ではくさびを
用いて端部を把持し、緊張力の導入及び定着が行われ
る。
【0003】これに対し、近年プレストレストコンクリ
ート用の緊張材として使用されるようになった非金属の
連続繊維又は連続繊維を合成樹脂でロッド状に形成した
FRP緊張材では、上記のような従来の定着構造をその
まま適用することは難しい。つまり、PC鋼棒のように
FRP緊張材に直接ねじ山を設けることはできないし、
くさびを用いて連続繊維又はFRP緊張材を強く把持す
ると、連続繊維は引張強度に比べてせん断強度が著しく
小さいために、定着部分で破断し易くなる。このため、
連続繊維やFRP緊張材の定着は、合成樹脂又はモルタ
ル等の付着力を利用したものが提案されており、例えば
図4に示すような構造がある。
【0004】この緊張定着構造では、FRP緊張材10
1の端部を鋼の筒状部材102に挿入し、これらの間に
無収縮モルタル又は合成繊維等を充填して硬化させ一体
化する。上記鋼の筒状部材102の外周面には、図4
(a)に示すように、ねじ山が形成されており、これに
ナット103を螺合し、アンカープレート104を介し
てコンクリート部材等に定着される。また、図4(b)
に示すように、上記筒状部材102の先端部の内側には
雌ねじが形成されており、緊張用ロッド105を挿入・
螺合し、この緊張用ロッド105を介してジャッキ10
6により緊張力を導入する。なお、上記筒状部材の外側
に筒状の緊張用部材を螺合し、これを介して緊張しても
よい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の緊張定着構造では、次のような問題点があ
る。緊張材の端部に設けられる緊張定着構造は、構造物
の完成までに撤去され、永久構造として用いられないも
のがある。特にFRP緊張材は周面に凹凸を設けるのが
容易であり、コンクリート又はグラウトとの付着力を大
きくすることができるので、いわゆるポストテンション
方式でも緊張材に張力を導入した後、グラウトによって
コンクリート構造体と一体化し、緊張定着部を撤去する
ことが行われる。つまり、シース内に挿通した緊張材に
張力を導入し、定着具によってコンクリート部材に一旦
定着した後、グラウトの充填を行い、硬化後に定着具を
撤去する。そうすると、緊張材とグラウトとの付着力に
より、緊張材の張力がコンクリートに伝達され、プレテ
ンション方式でプレストレスが導入された部材と同様の
メカニズムでコンクリートにプレストレスが導入される
ことになる。
【0006】このようにしてプレストレスが導入される
と、緊張材のコンクリート部材外に突き出した部分が切
除される。そして、図4に示す従来の定着構造では、緊
張及び定着のために緊張材101に固着された鋼の筒状
部材102も不要となる。このような筒状部材102
は、外周面に精密なねじ加工が施されており、製作費も
多く必要となるものであるが、合成樹脂又はモルタル等
で緊張材と強固に一体化されており、この筒状部材を再
利用することは難しい。このため、高価な筒状部材10
2を一回限りで廃棄することになり、プレストレス導入
のための費用が高くなるという問題がある。また、緊張
材を仮設材として用いる場合も同様に、緊張材そのもの
が撤去され、筒状部材は転用できず廃棄されることが多
い。
【0007】本願発明は、上記のような問題点に鑑みて
なされたものであり、その目的は、緊張材に張力を導入
し、定着を行うための緊張定着構造又は緊張定着方法に
おいて、精密な加工が施された部材の転用を可能とし、
プレストレスの導入のための費用を低減することであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するため
に、請求項1に記載の発明は、 非金属の連続繊維を主
材料とする緊張材の端部に筒状部材を外挿し、合成樹脂
又はモルタルで該緊張材と一体化して形成された付着定
着体と、 前記緊張材を囲むように設けられ、該緊張材
が抜け出さないように前記付着定着体と係止され、外周
面にねじ山が切られた緊張定着治具と、 該緊張定着治
具に螺合される定着ナットと、 該定着ナットの支圧面
が当接される定着プレートと、 該定着プレートと前記
緊張材の周囲にあるコンクリート部材との間に介挿さ
れ、前記緊張材の緊張力を前記定着プレートから前記コ
ンクリート部材に伝達するとともに、前記定着プレート
とコンクリート部材との間で前記緊張材を露出させる
圧ブロックと、 前記付着定着体が内側に挿入され、一
方の先端部が前記緊張定着治具に螺合されるとともに、
他方の端部は、前記緊張材に張力を導入するためのジャ
ッキに係止される緊張管と、を備えるものとする。
【0009】このような緊張定着構造では、緊張材の端
部に付着定着体が形成されており、これが緊張定着治具
に係止されて、緊張材が緊張定着治具から抜け出さな
い。そして、この緊張定着治具の外周面のねじ山に螺合
されたナットを介してコンクリート部材に緊張材の張力
が伝達されることになる。
【0010】また、緊張材に張力を導入するときには、
上記付着定着体の外径より内径が大きい緊張管を、上記
付着定着体の外側に装着し、一方の端部を緊張定着治具
と螺合する。そして他方の端部はジャッキに係止し、ジ
ャッキを作動させることによって緊張管及び緊張定着治
具を介して緊張材を引っ張る。これにより緊張材には張
力が導入され、伸びが生じて緊張材は周囲にあるコンク
リート部材から徐々に抜け出てくる。これにともなって
ナットを回転させ、このナットを締めてゆく。このよう
にして、緊張材には張力が導入され、ジャッキの作動を
停止させることにより、ナットが支圧ブロックを介して
コンクリート部材に係止されて緊張材の端部が定着され
る。
【0011】緊張材がコンクリート部材と一体化された
ときには、定着具が撤去される。このとき、緊張材がコ
ンクリート部材外に突き出し露出しているので、この部
分で緊張材を切断して定着具を撤去することができる。
そして、付着定着体を形成する筒状部材は、合成樹脂又
はモルタルで緊張材と一体化されており、分離すること
は難しいが、ねじ山が形成された緊張定着治具は付着定
着体に係止されているだけで、容易に取りはずすことが
でき、再利用が可能となる。
【0012】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
の緊張定着構造において、 前記緊張定着治具は、最小
内径が前記付着定着体の軸線と直角方向の最大寸法より
大きくなっており、 前記緊張材の周囲から装着し、前
記付着定着体を前記緊張定着治具に係止する係止金具を
有するものとする。
【0013】緊張材を囲むように設けられた緊張定着治
具が直接に付着定着体と係止されるためには、緊張定着
治具の内径よりも付着定着体の軸線と直角方向の最大寸
法が大きくなっている必要がある。そして、このように
付着定着体の寸法が緊張定着治具の内径より大きいと、
付着定着体を緊張材の端部に形成した後に緊張定着治具
を装着することができず、付着定着体の形成前に緊張材
に装着しておかなければならない。
【0014】しかし、請求項2に係る緊張定着構造で
は、緊張定着治具の最小内径は付着定着体の軸線と直角
方向の最大寸法より大きくなっているので、付着定着体
を緊張材の端部に形成した後にも、緊張定着治具の内側
に付着定着体を挿通し、この緊張定着治具を装着するこ
とができる。そして、係止金具を緊張定着治具と付着定
着体との間に介挿してこれらを係止することにより、請
求項1に記載の緊張定着構造と同様に緊張材の張力の導
入及び定着を行うことができる。
【0015】上記係止金具は、請求項3に記載のよう
に、リング状又は筒状の部材を軸線方向の切断面で複数
に分割したものとすることができる。
【0016】このような係止金具は、複数に分割されて
いるので、緊張定着治具に付着定着体及び緊張材の端部
を挿入した後に、緊張材の周囲で組み合わせ、付着定着
体と緊張定着治具の間に介挿することができる。そし
て、付着定着体は係止金具に係止され、この係止金具の
外径が緊張定着治具の最小内径より大きくなっているの
で、緊張定着治具に係止される。したがって、付着定着
体は緊張定着治具から抜け出さないように係止されるこ
とになる。
【0017】また、上記係止金具は、請求項4に記載の
ように、外径が変化する筒体を軸線方向の切断面によっ
て複数に分割したくさび状部材とし、緊張定着治具の内
側に貫入して係止されるものとすることができる。
【0018】このような係止金具でも複数に分割された
部材を緊張材の周囲で組み合わせ、付着定着体と緊張定
着治具の間に介挿してこれらを係止することができる。
【0019】請求項5に係る発明は、 非金属の連続繊
維を主材料とする緊張材の端部に筒状の付着定着体を外
挿し、合成樹脂又はモルタルで前記緊張材と一体化する
工程と、 前記緊張材を囲むように装着され、外周面に
ねじ山が切られた緊張定着治具を、該緊張材が抜け出さ
ないように前記付着定着体と係止させる工程と、 前記
緊張定着治具のねじ山に定着ナットを螺合するととも
に、内周面にねじ山が切られた緊張管の一端を、該緊張
定着治具に螺合する工程と、 前記定着ナットの支圧面
を定着プレートに当接させ、該定着プレートとコンクリ
ート部材との間に、緊張材が露出するように支圧ブロッ
クを介挿する工程と、 前記緊張管の他端をジャッキに
係止し、該ジャッキは、前記定着プレート及び支圧ブロ
ックを介して前記緊張材の周囲にあるコンクリート部材
に反力を負担させ、該緊張材に緊張力を導入する工程
と、 前記緊張材の端部がコンクリート部材外に突き出
した状態で前記定着ナットを締め込み、該定着ナットと
前記コンクリート部材との間に介挿された前記定着プレ
ート及び前記支圧ブロックを介して、該緊張材をコンク
リート部材に定着する工程と、 前記コンクリート部材
と前記緊張材との間にグラウトを注入し、硬化させて該
コンクリート部材と緊張材とを一体化する工程と、 前
記緊張材を、前記定着プレートと前記コンクリート部材
との間の露出している部分で切断する工程とを含むこと
を特徴とする緊張定着方法を提供する。
【0020】このような緊張定着方法では、緊張定着治
具を撤去したとき、筒状の付着定着体はモルタル等で緊
張材と一体化されており、分離することは難しいが、精
密なねじ加工が施された緊張定着治具は付着定着体に係
止されているだけなので、容易に取りはずすことができ
る。このため、緊張定着治具を再利用することができ
る。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本願に係る発明の実施の形
態を図に基づいて説明する。図1は、請求項1に記載の
発明の一実施形態である緊張定着構造を示す概略断面図
である。この緊張定着構造は、FRP緊張材1を用いて
コンクリート部材10にプレストレスを導入するもので
あり、図1(a)に示すように、FRP緊張材1の端部
に外挿される筒状部材をモルタル等で緊張材1と一体化
して形成した付着定着体2と、FRP緊張材1が挿通さ
れる円筒管からなり、端部に付着定着体2が係止される
緊張定着治具3とを備えている。この緊張定着治具3
は、内径が付着定着体2の外径より小さくなっており、
FRP緊張材1が抜け出さないように付着定着体2が端
部に係止されている。緊張定着治具3の外周面にはねじ
山が切られており、このねじ山には定着ナット4が螺合
されている。この定着ナット4は、支圧面が定着プレー
ト5に当接し、支圧ブロック9を介してコンクリート部
材10にFRP緊張材1の張力を伝達するようになって
いる。
【0022】上記FRP緊張材1は、カーボン繊維、ア
ラミド繊維、ガラス繊維等の非金属の連続繊維を束ねて
合成樹脂でストランド状又は棒状に成形したものであ
る。そして、周面に節状の凸部を設けることによって、
グラウトとの付着力が大きくなるようにされている。こ
のFRP緊張材1は、コンクリート部材に筒状のシース
を埋め込んでおくことによって形成されたダクト内に配
置され、緊張及び定着を行う端部がコンクリート部材外
に突き出している。上記のようなFRP緊張材1は、P
C鋼線などの金属材料に比べて軽量で、耐腐食性などに
優れているという利点を持つ。また、非磁性であり、磁
界を制御する必要がある構造物に使用することもでき
る。
【0023】上記付着定着体2は、金属製あるいはFR
P製の筒状部材をFRP緊張材1の端部に外挿し、これ
らの間にモルタル又は合成樹脂を充填したものであり、
硬化したモルタル等の付着力によって筒状部材とFRP
緊張材1とが強固に一体化され、大きな緊張力が作用し
たときにも筒状部材がFRP緊張材1から抜け落ちない
ようになっている。なお、この付着定着体2の筒状部材
には、ねじ加工が施されていない。
【0024】上記緊張定着治具3は、精密なねじ加工が
施された金属製の円筒管であり、FRP緊張材1とは一
体化せずに該緊張材1が内側に挿通され、付着定着体2
が抜け出さないように係止される。このとき、両者の接
触部分は支圧に充分耐えられる寸法となっている。緊張
定着治具には先付けタイプと後付けタイプとがあるが、
上記緊張定着治具3は先付けタイプであり、付着定着体
2の取り付け時にあらかじめFRP緊張材1に装着して
おく。したがって、このタイプの緊張定着治具は、現場
でFRP緊張材1に付着定着体2を取り付ける作業を順
次行う場合に有効である。
【0025】上記支圧ブロック9は、鋼の型材を補強し
たものであり、この支圧ブロック9を定着プレート5と
コンクリート部材10との間に介挿して、FRP緊張材
1に張力を導入する。
【0026】次に、上記緊張定着治具3を用いてFRP
緊張材1の緊張及び定着を行う方法について説明する。
図1(a)に示すように、付着定着体2が形成されたF
RP緊張材1の端部に、支圧ブロック9、定着プレート
5、ナット4、緊張定着治具3を装着した後、付着定着
体2の外側から緊張定着治具3の先端側に緊張管6を接
合する。この緊張管6は、内側に緊張定着治具3と螺合
される雌ねじが形成されており、緊張定着治具3の先端
部外側にねじ込むことによって容易に接合することがで
きる。さらに、この緊張管6は外周面にもねじ山が切ら
れている。
【0027】上記緊張管6の周囲には、センターホール
ジャッキ7を取り付け、先端部を定着プレート5に突き
当てるとともに、ナット8を緊張管6の後部外側に螺合
して該緊張管6をセンターホールジャッキ7に係止す
る。その後、センターホールジャッキ7を油圧等により
作動し、緊張管6および緊張定着治具3を介して付着定
着体2を引っ張る。これによりFRP緊張材1に張力が
導入され、伸びが生じてFRP緊張材1はコンクリート
部材10から徐々に抜け出てくる。これにともなって定
着ナット4のコンクリート部材側に隙間が生じ、定着ナ
ット4を定着プレート5と密着させるように締め込む。
このようにして、FRP緊張材1には張力が導入され、
センターホールジャッキによる引張力を緩めたときに
も、定着ナット4が定着プレート5、支圧ブロック9を
介してコンクリート部材10に係止され、FRP緊張材
1の端部が定着される。
【0028】緊張および定着が終了した後、コンクリー
ト部材10のダクト入口を粘土などの充填剤で塞ぎ、ダ
クト内部にチューブを差し込んでグラウトを注入し、F
RP緊張材1とコンクリート部材10とを一体化する。
グラウトが硬化した後、支圧ブロック9の間でFRP緊
張材1が露出している部分に、のこぎり等を差し入れて
FRP緊張材1を切断し、定着プレート5、定着ナット
4、緊張定着治具3等を撤去する。このとき、付着定着
体2の筒状部材はモルタル等でFRP緊張材1と一体化
されており、分離することは難しいが、精密なねじ加工
が施された緊張定着治具3は付着定着体2に係止されて
いるだけなので、容易に取りはずすことができる。この
ため、緊張定着治具3を再利用することができる。
【0029】図2(a)は、請求項2又は請求項3に記
載の発明の一実施形態である緊張定着構造を示す概略断
面図である。この緊張定着構造は、図1に示す緊張定着
構造で用いられた緊張定着治具3に代えて、付着定着体
12の外径よりも最小内径が大きくなるように形成され
た緊張定着治具13と、この緊張定着治具13の内側に
嵌め入れられ、付着定着体12を緊張定着治具13に係
止する係止金具17とを備えている。
【0030】上記緊張定着治具13は、図2(b)に示
すように、後端部付近に内側が張り出して内径が縮小さ
れた縮径部13aを有しており、緊張定着治具13内に
挿入された係止金具17がこの縮径部13aに係止され
るようになっている。また、この緊張定着治具13の内
周面と外周面にはねじ加工が施されている。上記係止金
具17は、内径が大きい部分と小さい部分とを有するリ
ング状部材を軸線方向の切断面で二つに分割したもので
あり、内径が大きい部分17aに付着定着体12が挿入
され、内径が小さい部分17bに付着定着体12の緊張
材と接合される側の端面が突き当って係止される。
【0031】このような緊張定着治具13は後付けタイ
プであり、内径が付着定着体12の外径より大きいの
で、FRP緊張材11に付着定着体12を取り付けた後
でも挿着することができる。このため、付着定着体12
を工場などで一括して製作し、現場で緊張定着治具13
を装着する場合に有効である。
【0032】次に、上記緊張定着治具13および係止金
具17を用いてFRP緊張材11の緊張及び定着を行う
工程について説明する。付着定着体12は工場などであ
らかじめFRP緊張材11に取り付けておく。施工現場
では、付着定着体12及びこれが取りつけられたFRP
緊張材11を緊張定着治具13の後方からを挿入する。
そして、二つに分割された係止金具17を付着定着体1
2の後方でFRP緊張材11の周囲に組み合わせ、付着
定着体12と緊張定着治具13の間に介挿する。これに
より、付着定着体12は係止金具17を介して緊張定着
治具13に係止される。
【0033】緊張定着治具13には、外周面に定着ナッ
ト14を螺合し、この定着ナット14の支圧面を定着プ
レート15に突き当てる。定着プレート15とコンクリ
ート部材20との間には支圧ブロック19を介挿してお
く。また、緊張定着治具13の後方の内側には、外周面
にねじが切られた緊張管16をねじ込んで接続する。こ
の緊張管16を、図1に示す実施形態と同様にセンター
ホールジャッキ(図示せず)に係止し、緊張管16およ
び緊張定着治具13を介して付着定着体12を牽引す
る。そして、定着ナット14を定着プレート15側に締
め込んで定着する。
【0034】緊張及び定着が終了した後、緊張材が挿通
されたシース内にグラウトを注入してFRP緊張材11
とをコンクリート部材20と一体化し、グラウトが硬化
した後、FRP緊張材11を切断し、定着具を撤去す
る。このような緊張定着構造においても、緊張定着治具
13の再利用が可能である。
【0035】図3(a)は、請求項2又は請求項4に記
載の発明の一実施形態である緊張定着構造を示す概略断
面図である。この緊張定着構造は、図1に示す緊張定着
構造で用いられた緊張定着治具3に代えて、付着定着体
22の外径よりも最小内径が大きく、コンクリート部材
30の方向に向かって内径が縮小される部分を備えた緊
張定着治具23と、外径が変化する筒体を二つに分割し
たくさび状の部材であって上記緊張定着治具23の内側
に嵌め入れられる係止金具27とを備えている。上記緊
張定着治具23は、図3(b)に示すように、内径が徐
々に縮小される部分23aと内径が変化しない部分23
bとを有し、内径が縮小される部分23aに、図3
(c)に示す係止金具27が嵌め入れられ、くさび作用
によって係止されるようになっている。また、緊張定着
治具23の外周面と、内周面の径が変化しない部分には
ねじ加工が施されており、内周面の雌ねじが設けられた
部分に緊張管26が螺合される。そして、緊張定着治具
23の外側には定着ナット24が螺合され、定着プレー
ト25に係止される。
【0036】このような緊張定着治具23も後付けタイ
プであり、図2に示す緊張定着治具と同様に、FRP緊
張材21に付着定着体22を取り付けた後でも装着する
ことができる。そして、二つに分割された係止金具27
をFRP緊張材21の周囲に組み合わせ、付着定着体2
2と緊張定着治具23の間に介挿して付着定着体22を
緊張定着治具23に係止し、緊張材への張力の導入及び
定着を行うことができる。また、緊張定着構造が不要に
なった場合には、緊張定着治具23を再利用することが
できる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本願に係る発明の
緊張定着構造では、コンクリート部材にプレストレスを
導入した後、精密なねじ加工が施された緊張定着治具を
回収して再利用することが可能であり、プレストレス導
入のためのコストを低減することができる。また付着定
着体と緊張定着治具との間に係止金具を用いることによ
って、付着定着体を緊張材に取り付けた後でも緊張定着
治具を装着することが可能となり、施工作業及び管理が
容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1に記載の発明の一実施形態である緊張
定着構造を示す概略断面図である。
【図2】請求項2又は請求項3に記載の発明の一実施形
態である緊張定着構造を示す概略断面図、及びこの緊張
定着構造で用いられる緊張定着治具、係止金具を示す側
面図、正面図である。
【図3】請求項2又は請求項4に記載の発明の一実施形
態である緊張定着構造を示す概略断面図、及びこの緊張
定着構造で用いられる緊張定着治具、係止金具を示す側
面図、正面図である。
【図4】従来の緊張定着構造を示す概略断面図、及び緊
張材を緊張する状態を示す図である。
【符号の説明】
1、11、21 FRP緊張材 2、12、22 付着定着体 3、13 23 緊張定着治具 4、14 24 定着ナット 5、15、25 定着プレート 6、16、26 緊張管 7 センターホールジャッキ 8 ナット 9、19、29 支圧ブロック 10、20、30 コンクリート部材 17、27 係止金具
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 熊岡 禎二 東京都新宿区荒木町13番地 ライベスト ビル 株式会社四谷エンジニアリング内 (56)参考文献 特開 平5−118100(JP,A) 特開 昭55−33916(JP,A) 特開 平9−13672(JP,A) 実開 昭53−99816(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E04C 5/00 - 5/20 E04G 21/12 104

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非金属の連続繊維を主材料とする緊張
    材の端部に筒状部材を外挿し、合成樹脂又はモルタルで
    該緊張材と一体化して形成された付着定着体と、 前記緊張材を囲むように設けられ、該緊張材が抜け出さ
    ないように前記付着定着体と係止され、外周面にねじ山
    が切られた緊張定着治具と、 該緊張定着治具に螺合される定着ナットと、該定着ナットの支圧面が当接される定着プレートと、 該定着プレート と前記緊張材の周囲にあるコンクリート
    部材との間に介挿され、前記緊張材の緊張力を前記定着
    プレートから前記コンクリート部材に伝達するととも
    に、前記定着プレートとコンクリート部材との間で前記
    緊張材を露出させる支圧ブロックと、 前記付着定着体が内側に挿入され、一方の先端部が前記
    緊張定着治具に螺合されるとともに、他方の端部は、前
    記緊張材に張力を導入するためのジャッキに係止される
    緊張管と、を備えることを特徴とする緊張定着構造。
  2. 【請求項2】 前記緊張定着治具は、最小内径が前記
    付着定着体の軸線と直角方向の最大寸法より大きくなっ
    ており、 前記緊張材の周囲から装着し、前記付着定着体を前記緊
    張定着治具に係止する係止金具を有することを特徴とす
    る請求項1に記載の緊張定着構造。
  3. 【請求項3】 前記係止金具は、リング状又は筒状の
    部材を軸線方向の切断面で複数に分割したものであり、
    該リング状又は筒状の部材の内径は、前記緊張材が挿通
    されるとともに前記付着定着体が係止される大きさに設
    定され、外径は、前記緊張定着治具の最小内径より大き
    く設定されていることを特徴とする請求項2に記載の緊
    張定着構造。
  4. 【請求項4】 前記係止金具は、外径が変化する筒体
    を軸線方向の切断面によって複数に分割したくさび状部
    材であり、 前記緊張定着治具の内側に貫入して係止されるものであ
    ることを特徴とする請求項2に記載の緊張定着構造。
  5. 【請求項5】 非金属の連続繊維を主材料とする緊張
    材の端部に筒状の付着定着体を外挿し、合成樹脂又はモ
    ルタルで前記緊張材と一体化する工程と、 前記緊張材を囲むように装着され、外周面にねじ山が切
    られた緊張定着治具を、該緊張材が抜け出さないように
    前記付着定着体と係止させる工程と、 前記緊張定着治具のねじ山に定着ナットを螺合するとと
    もに、内周面にねじ山が切られた緊張管の一端を、該緊
    張定着治具に螺合する工程と、前記定着ナットの支圧面を定着プレートに当接させ、該
    定着プレートとコンクリート部材との間に、緊張材が露
    出するように支圧ブロックを介挿する工程と、 前記 緊張管の他端をジャッキに係止し、該ジャッキは、
    前記定着プレート及び支圧ブロックを介して前記緊張材
    の周囲にあるコンクリート部材に反力を負担させ、該緊
    張材に緊張力を導入する工程と、 前記緊張材の端部がコンクリート部材外に突き出した状
    態で前記定着ナットを締め込み、該定着ナットと前記コ
    ンクリート部材との間に介挿された前記定着プレート及
    前記支圧ブロックを介して、該緊張材をコンクリート
    部材に定着する工程と、 前記コンクリート部材と前記緊張材との間にグラウトを
    注入し、硬化させて該コンクリート部材と緊張材とを一
    体化する工程と、 前記緊張材を、前記定着プレートと前記コンクリート部
    材との間の露出している部分で切断する工程とを含むこ
    とを特徴とする緊張定着方法。
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