JP7412139B2 - Pc鋼材の緊張力調整治具およびpc鋼材の緊張力調整方法 - Google Patents
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Description
ところで、PC構造物に圧縮力を付与するためのPC鋼材の緊張力には、PC構造物の種類およびPC鋼材の種類等により様々な大きさ(緊張荷重値)が存在することはいうまでもない。特に、小さな緊張力をPC鋼材に付与する場合、正確に緊張力をPC鋼材に付与する場合には、以下の課題が発生する。
くさび式定着具において、施工時に導入する緊張力が小さい場合にはくさび歯形の食い込みが浅いため、衝撃的な力に対して十分な定着性能を発揮できない可能性がある。
これに対して、低緊張力におけるくさび歯型の食い込みを深くするために、通常の張力(>低緊張力)で緊張した後に低緊張力にするために緊張材の伸び量を戻すためにくさびを外して伸び量を戻してしまうと、新たな位置において低張力で定着するために、結局はくさび歯型の食い込みが浅くなる。
緊張材を緊張機器により所定の引張力で引き込んでも,その緊張力をくさび式定着具に移行する過程で発生するくさびの食い込み量(セットロス)により緊張力が低減し、かつ、その食い込み量は緊張力、緊張材・定着具個体でもわずかに異なるために所定の引張力に調整することが難しい。
緊張材に導入された緊張力を開放(開放とは緊張力を0に調整することであるため緊張力の開放とは緊張力の調整に含まれるものである)するためには緊張材の余長を残す必要があり、供用時に定着部分が長くなる。また、くさび式定着具で緊張力を開放するためにはくさびを外すためにさらに緊張して伸ばす必要があるが、導入済みの緊張力が大きい場合はくさびを動かすだけの伸び量を確保できないために緊張力の開放ができない。
すなわち、本発明に係るPC鋼材の緊張力調整治具は、プレストレストPC構造物に圧縮力を付与しているPC鋼材の緊張力調整治具であって、前記PC鋼材の長手方向に垂直な面から見て2以上のウェッジ片に分割されたウェッジと、略中空円筒形状であって、内周面に前記ウェッジに組み合わせられるテーパー孔を備え、外周面に雄ねじが設けられたスリーブと、略円環形状であって、内周面に前記スリーブが備える雄ねじと螺合する雌ねじが設けられたリングナットと、前記テーパー孔が広がる方向の端部において前記スリーブに接合されるとともに、前記長手方向における前記スリーブとは反対側で油圧ジャッキに接続される接続用緊張材と接合される接続用カプラと、を含む。
また、本発明に係るPC鋼材の緊張力調整方法(緊張力減少)は、PC鋼材の余長の有無に応じて(施工時には余長部を切断するまでは余長があるがその後の施工時および供用時は余長がない)上述したPC鋼材の緊張力調整治具を用いた緊張力調整方法である。より詳しくは、本発明に係るPC鋼材の緊張力調整方法(緊張力減少)は、プレストレストPC構造物に圧縮力を付与しているPC鋼材についてリングナットおよび支圧板を用いて緊張力を調整する緊張力調整方法であって、前記PC鋼材の余長が存在する場合には油圧ジャッキに前記PC鋼材の端部が連結することができるように、前記PC鋼材の余長が存在しない場合には上述したいずれかの緊張力調整治具を介して前記PC鋼材の端部が油圧ジャッキに連結することができるように、準備する準備ステップと、前記支圧板に反力架台を当接させて前記反力架台に油圧ジャッキをセットして、前記PC鋼材の余長が存在する場合には前記PC鋼材の端部を前記反力架台を経由して前記油圧ジャッキに連結して、前記PC鋼材の余長が存在しない場合には前記PC鋼材の端部を前記緊張力調整治具を介して前記反力架台を経由して前記油圧ジャッキに連結するセットステップと、前記油圧ジャッキを用いて、前記支圧板から前記リングナットが予め定められた距離だけ離隔するまで、前記PC鋼材の緊張力を増加させる緊張力増加ステップと、前記支圧板から離隔した前記リングナットを緩めるリング緩めステップと、前記油圧ジャッキを用いて、予め定められた緊張力まで、前記PC鋼材の緊張力を減少させる緊張力低下ステップと、予め定められた緊張力まで前記PC鋼材の緊張力が減少すると、前記リングナットが前記支圧板に当接するまで前記リングナットを締め付けるリング締め付けステップと、前記油圧ジャッキによる緊張力を開放して、前記反力架台と前記油圧ジャッキとを取り外す取り外しステップと、を含む。
さらに、以下においては、おねじ、オネジ、雄ねじ、雄ネジ、外ねじ、外ネジを区別しないで記載するとともに、めねじ、メネジ、雌ねじ、雌ネジ、内ねじ、内ネジを区別しないで記載することがある。
発明が解決しようとする課題でも説明したように、本発明の適用が限定されるものではないが、本発明に係る緊張力調整治具および緊張力調整方法は、プレストレストコンクリート構造の中でコンクリートに埋設されない(後付けの)外ケーブルを用いた外ケーブル方式に好ましく適用される。このため、図1を参照して、プレストレストPC橋100の補強例をこの外ケーブル方式により施工する事例について説明する。図1(A)は補強対象のプレストレストPC橋100および外ケーブルである緊張材(PC鋼材300)を含む外ケーブル方式による補強方式を示す側面図、図1(B)はその正面図、図1(C)は図1(A)における1C部分の拡大側面図である。
本実施の形態に係る緊張力調整方法を説明する前に、この緊張力調整方法に使用される緊張力調整治具1000であって、この緊張力調整方法に合致させた特殊な構造を備えた緊張力調整治具1000について説明する。
図2(A)にこの緊張力調整治具1000についての全体側面図(組立図)を図2(B)に全体側面図(分解図)をそれぞれ示す。さらに、図3にこの緊張力調整治具1000を構成するスリーブ1100の六面図を、図4にこの緊張力調整治具1000を構成するウェッジ(くさび)1200の六面図を、図5にこの緊張力調整治具1000を構成するリングナット1300の六面図を、図6にこの緊張力調整治具1000を構成するウェッジ押さえ1400の六面図を、図7にこの緊張力調整治具1000を構成する接続用カプラ1500の六面図を、図8にこの緊張力調整治具1000を構成する接続用緊張材1600の二面図を、それぞれ示す。
・スリーブ1100
スリーブ1100は、略中空円筒形状であって(円筒直径の異なる)段付きの本体部1110を金属加工して、その内周面にウェッジ1200に組み合わせられるテーパー孔1120を備え、その外周面に雄ねじ1130が設けられ、テーパー孔1120が広がる方向の端部の内周面に雌ねじ1140が設けられている。
ウェッジ1200は、2分割されたウェッジ片1210から構成され、テーパーの向きを合わせた2つのウェッジ片1210の間にPC鋼材300をウェッジ1200の内周面に設けられた歯型1230に食い込ませるようにして、PC鋼材300が歯合されたウェッジ1200の外周面のテーパー面1220をスリーブ1100のテーパー孔1120に摩擦嵌合することにより、くさび効果によりPC鋼材300を保持する。
リングナット1300は、略円環形状の本体部1310を金属加工して、内周面にスリーブ1100が備える雄ねじ1130と螺合する雌ねじ1320が設けられている。さらに、てこの原理を利用して、このリングナット1300をPC鋼材300の軸心周りに容易に回転させるための棒体を螺合させるために、外周面に複数箇所(ここでは6箇所)の雌ねじ穴1330が設けられている。この雌ねじ穴1330に設けられた雌ねじに螺合する雄ねじをその一端部に備える棒体を螺合させて、その棒体の他端部を手で把持してリングナットを締めたり緩めたりする方向へリングナット1300を回転させることが容易になる。
このウェッジ押さえ1400は図2に示されていないように、この緊張力調整治具1000の必須構成ではない。後述する緊張力調整方法において緊張力の調整が完了した後に、調整後の緊張力が変化しないようにウェッジ1200の移動を制限するためにスリーブ1100に設けられる。不測の事態に備えて設けることが好ましいが、上述したように、この緊張力調整治具1000の必須構成ではない。
ち、スリーブ1100が備える雌ねじ1140にはウェッジ押さえ1400も接続用カプラ1500も螺合される必要がないために、スリーブ1100が備える雌ねじ1140は不要であって専用品ではない通常の定着具として販売されているスリーブであって構わないことになる。
接続用カプラ1500は、ほぼ同じ円筒直径の略中空円筒形状の本体部1510を金属加工して、その外周面にスリーブ1100が備える雌ねじ1140と螺合する雄ねじ1520を備え、内周面に接続用緊張材1600が備える雄ねじ1620と螺合する雌ねじ1530を備える。
接続用緊張材1600は、端部が処理されたPC鋼材であって、その端部には接続用カプラ1500が備える雌ねじ1530と螺合する雄ねじ1620を備える。上述したように接続用カプラ1500と接続用緊張材1600とを一体化等して接合しても構わないために限定されるものではないが、接続用緊張材1600が備える雄ねじ1620と接続用カプラ1500が備える雌ねじ1530とが螺合することにより接続用緊張材1600と接続用カプラ1500とが接合されている。
以上のような、本実施の形態に係る緊張力調整治具1000を用いる場合がある(PC鋼材300に余長がある場合の緊張力減少時には用いないでも構わない)PC鋼材の緊張力調整方法について、上述した図1~図8に、図9~図19を加えて説明する。なお、以下においては、第1の実施の形態に係る張力調整方法を図9~図12に示す手順11~手順18で説明して、第2の実施の形態に係る張力調整方法を図13~図16に示す手順21~手順28で説明して、第3の実施の形態に係る張力調整方法を図17~図19に示す手順31~手順36で説明する。ここで、第1の実施の形態に係る張力調整方法は、PC構造物の施工時であってPC鋼材300に余長がある(緊張力調整治具1000を用いない)場合の緊張力調整方法(緊張力減少)であって、第2の実施の形態に係る張力調整方法は、PC構造物の供用時であってPC鋼材300に余長がない(緊張力調整治具1000を用いる)場合の緊張力調整方法(緊張力減少)であって、第3の実施の形態に係る張力調整方法は、PC構造物の供用時であってPC鋼材300に余長がない(緊張力調整治具1000を用いる)場合の緊張力調整方法(緊張力増加)である。
<図9:手順11>
本実施の形態における図10に示す手順11の時点は、たとえば、特許文献1(特許第6131292号公報)の第0044段落の(6)後処理ステップにおける「次に、2次緊張ステップにおける緊張荷重を解放して、セット量補正治具100(本体部300、固定リング400および可動リング500)が取り付けられた油圧ジャッキ700を取り外す。」が完了した時点である。
なお、第1の実施の形態においては、スリーブとしてテーパー孔1120が広がる方向の端部の内周面に雌ねじ1140を備えるスリーブ1100を採用しているが、PC鋼材300の余長があるために接続用カプラ1500も螺合される必要がなく(準備ステップにおいて緊張力調整治具1000を準備する必要なく)、さらにウェッジ押さえ1400が不要な場合には雌ねじ1140にはウェッジ押さえ1400も接続用カプラ1500も
螺合される必要がないために、雌ねじ1140を備える専用品ではない通常の定着具として販売されているスリーブであって構わない(ただし、図13に示す手順28でウェッジ押さえ1400を使用しているので雌ねじ1140を備えるスリーブ1100を使用)。
支圧板(アンカープレート520と記載する場合がある)に反力架台600を当接させて反力架台600に油圧ジャッキ700をセットする。PC鋼材の余長が存在するために、PC鋼材300の端部を反力架台600を経由して油圧ジャッキ700に連結する。
このとき、油圧ジャッキ700は、緊張力の減少(開放を含む)時に戻るPC鋼材300の伸び量分だけピストンを出しておくことになる。
油圧ジャッキ700を用いて、支圧板(アンカープレート520)からリングナット1300が予め定められた距離だけ離隔するまで(すなわち、リングナット1300が支圧板(アンカープレート520)から浮くまで)、PC鋼材300の緊張力を増加させる。
このようにリングナット1300が支圧板(アンカープレート520)から浮いている状態のときには、油圧ジャッキ700がPC鋼材300の引張力を負担していることになる。
<図10:手順14:リング緩めステップ>
支圧板(アンカープレート520)から離隔した(浮いた)リングナット1300を緩める。なお、リングナット1300を緩める量(リングナット1300の回転量またはリングナット1300の移動量)は緊張力調整に必要な量に対応するものであって、緊張力を0にして完全に開放する場合にはリングナット1300をスリーブ1100から外してしまっても構わない(もはやリングナット1300を機能させる必要がない)。
油圧ジャッキ700を用いて(手順12で出しておいたピストンを戻して)、予め定められた緊張力まで、PC鋼材300の緊張力を減少させていく。このとき、緊張力減少に伴うPC鋼材300の伸びが図示したように戻り、スリーブ1100の一部が鋼管510の中に侵入している。なお、スリーブ1100の外径は鋼管510の内径よりも小さいので、鋼管510の中に侵入することができる。
<図11:手順16:リング締め付けステップ>
予め定められた緊張力までPC鋼材300の緊張力が減少すると、リングナット1300が支圧板(アンカープレート520)に当接するまでリングナット1300を回転させて締め付ける。
油圧ジャッキ700による緊張力を開放して、反力架台600と油圧ジャッキ700とを取り外す。リングナット1300が支圧板(アンカープレート520)に当接している状態で油圧ジャッキ700による緊張力を開放すると、リングナット1300がPC鋼材300の引張力を負担していることになる。さらに、ここで、PC鋼材300の余長を切断することもある。
<図12:手順18:後処理ステップ>
ウェッジ押さえ1400をスリーブ1100に取り付ける。このとき、スリーブ1100が備える雌ねじ1140とウェッジ押さえ1400が備える雄ねじ1430とを螺合させるようにねじ込む。ウェッジ1200におけるテーパー孔1120が広がる方向のウェッジ1200の端面1240がウェッジ押さえ1400のウェッジ側端面1420に当接されてウェッジ1200の移動が制限されることにより、手順11~手順17の緊張力調整(ここでは減少)方法において緊張力の調整(ここでは減少)が完了した後において、このウェッジ押さえ1400により減少された緊張力が変化しない状態を維持することができる。
・第2の実施の形態:余長なしで緊張力減少調整
本実施の形態における図13に示す手順21の時点は、第1の実施の形態における図1
2に示す手順18の時点である。
ウェッジ押さえ1400をスリーブ1100から外す。このとき、上述した手順18と逆手順であって、スリーブ1100が備える雌ねじ1140にウェッジ押さえ1400が備える雄ねじ1430が螺合している状態からウェッジ押さえ1400を回転させてスリーブ1100が備える雌ねじ1140にその雄ねじ1430がねじ込まれているウェッジ押さえ1400を取り外す。
<図13:手順22:準備ステップ>
ここでは、PC鋼材300の余長が存在しないために上述した緊張力調整治具1000を介してPC鋼材300の端部が油圧ジャッキ700に連結することができるように準備する。より具体的には、スリーブ1100が備える雌ねじ1140に接続用カプラ1500の雄ねじ1520を螺合させてスリーブ1100に接続用カプラ1500を接合して、接続用カプラ1500が備える雌ねじ1530に接続用緊張材1600が備える雄ねじ1620を螺合させて接続用カプラ1500に接続用緊張材1600を接合する。このとき、スリーブ1100、接続用カプラ1500および接続用緊張材1600の中で、外径はスリーブ1100が最も大きい。
支圧板(アンカープレート520)に反力架台600を当接させて反力架台600に油圧ジャッキ700をセットする。ここでは、PC鋼材300の余長が存在しないためにPC鋼材300の端部を緊張力調整治具1000を介して反力架台600を経由して油圧ジャッキ700に連結する。
このとき、油圧ジャッキ700は、緊張力の減少(開放を含む)時に戻るPC鋼材300の伸び量分だけピストンを出しておくことになる。
<図14:手順24:緊張力増加ステップ>
ここでは、上述した手順13と同じく、油圧ジャッキ700を用いて、支圧板(アンカープレート520)からリングナット1300が予め定められた距離だけ離隔するまで(すなわち、リングナット1300が支圧板(アンカープレート520)から浮くまで)、PC鋼材300の緊張力を増加させる。
このようにリングナット1300が支圧板(アンカープレート520)から浮いている状態のときには、油圧ジャッキ700がPC鋼材300の引張力を負担していることになる。
ここでは、上述した手順14と同じく、支圧板(アンカープレート520)から離隔した(浮いた)リングナット1300を緩める。なお、リングナット1300を緩める量(リングナット1300の回転量またはリングナット1300の移動量)は緊張力調整に必要な量に対応するものであって、緊張力を0にして完全に開放する場合にはリングナット1300をスリーブ1100から外してしまっても構わない(もはやリングナット1300を機能させる必要がない)。
<図15:手順26:緊張力低下ステップ>
油圧ジャッキ700を用いて(手順23で出しておいたピストンを戻して)、予め定められた緊張力まで、PC鋼材300の緊張力を減少させていく。このとき、緊張力減少に伴うPC鋼材300の伸びが図示したように戻り、スリーブ1100の一部が鋼管510の中に侵入している。なお、スリーブ1100、接続用カプラ1500および接続用緊張材1600の中で、外径はスリーブ1100が最も大きく、かつ、スリーブ1100の外径は鋼管510の内径よりも小さいので、スリーブ1100を含む緊張力調整治具1000が鋼管510の中に侵入することができる。
ここでは、上述した手順16と同じく、予め定められた緊張力までPC鋼材300の緊張力が減少すると、リングナット1300が支圧板(アンカープレート520)に当接するまでリングナット1300を回転させて締め付ける。
<図16:手順28:取り外しステップ>
油圧ジャッキ700による緊張力を開放して、反力架台600と油圧ジャッキ700と緊張力調整治具1000(接続用カプラ1500および接続用緊張材1600)とを取り外す。より具体的には、上述した手順22と逆に、接続用カプラ1500が備える雌ねじ1530と接続用緊張材1600が備える雄ねじ1620との螺合を開放させて接続用カプラ1500から接続用緊張材1600を取り外して、スリーブ1100が備える雌ねじ1140と接続用カプラ1500の雄ねじ1520との螺合を開放させてスリーブ1100から接続用カプラ1500を取り外す。リングナット1300が支圧板(アンカープレート520)に当接している状態で油圧ジャッキ700による緊張力を開放すると、リングナット1300がPC鋼材300の引張力を負担していることになる。さらに、ウェッジ押さえ1400をスリーブ1100の取り付ける。この手順28におけるウェッジ押さえ1400を取り付ける手順は上述した手順18と同じである。なお、緊張力を0にして完全に開放してPC鋼材300を撤去する場合にはウェッジ押さえ1400を取り付ける必要はない。
<図17:手順31>
本実施の形態における図17に示す手順31の時点は、第1の実施の形態における図12に示す手順18の時点である。
ウェッジ押さえ1400をスリーブ1100から外す。このとき、この手順31におけるウェッジ押さえ1400をスリーブ1100から外す手順は上述した手順21と同じである。
<図17:手順32:準備ステップ>
ここでは、上述した手順22と同じく、PC鋼材300の余長が存在しないために上述した緊張力調整治具1000を介してPC鋼材300の端部が油圧ジャッキ700に連結することができるように準備する。より具体的には、スリーブ1100が備える雌ねじ1140に接続用カプラ1500の雄ねじ1520を螺合させてスリーブ1100に接続用カプラ1500を接合して、接続用カプラ1500が備える雌ねじ1530に接続用緊張材1600が備える雄ねじ1620を螺合させて接続用カプラ1500に接続用緊張材1600を接合する。このとき、スリーブ1100、接続用カプラ1500および接続用緊張材1600の中で、外径はスリーブ1100が最も大きい。
上述した手順23と同じく、支圧板(アンカープレート520)に反力架台600を当接させて反力架台600に油圧ジャッキ700をセットする。ここでは、PC鋼材300の余長が存在しないためにPC鋼材300の端部を緊張力調整治具1000を介して反力架台600を経由して油圧ジャッキ700に連結する。
<図18:手順34:緊張力増加ステップ>
油圧ジャッキ700を用いて、予め定められた緊張力まで、PC鋼材300の緊張力を増加させる。このとき、リングナット1300が支圧板(アンカープレート520)から浮いている状態となり、油圧ジャッキ700がPC鋼材300の引張力を負担していることになる。
予め定められた緊張力までPC鋼材300の緊張力が増加して支圧板(アンカープレート520)からリングナット1300が離隔すると、リングナット1300が支圧板(アンカープレート520)に当接するまでリングナット1300を回転させて締め付ける。<図19:手順36:取り外しステップ>
油圧ジャッキ700による緊張力を開放して、反力架台600と油圧ジャッキ700と緊張力調整治具1000(接続用カプラ1500および接続用緊張材1600)とを取り外す。この手順36における反力架台600と油圧ジャッキ700と緊張力調整治具1000(接続用カプラ1500および接続用緊張材1600)とを取り外す手順は上述した手順28と同じである。。リングナット1300が支圧板(アンカープレート520)に当接している状態で油圧ジャッキ700による緊張力を開放すると、リングナット1300がPC鋼材300の引張力を負担していることになる。さらに、ウェッジ押さえ1400をスリーブ1100の取り付ける。この手順36におけるウェッジ押さえ1400を取り付ける手順は上述した手順18と同じである。
このようにして、本実施の形態に係る緊張力調整治具および/または緊張力調整方法によると、プレストレスをコンクリート躯体に導入する新設PC構造物またはプレストレスがコンクリート躯体に既に導入された既設PC構造物において、PC鋼材に付与されている緊張力を(0に開放することを含めて増加させることも減少させることも含めて)調整することのできる調整方法、および、この調整方法を実行するにあたり供用時にはPC鋼材の余長が(油圧ジャッキに連結するほどに長さが残ってい)ない場合であっても好ましくPC鋼材に付与される緊張力を調整することの調整治具を提供することができる。
200 定着部
300 PC鋼材(緊張材、外ケーブル)
400 偏向部
500 鋼管付きアンカープレート
600 反力架台(チェア)
700 油圧ジャッキ
1000 緊張力調整治具
1100 スリーブ
1200 ウェッジ
1300 リングナット
1400 ウェッジ押さえ
1500 接続用カプラ
1600 接続用緊張材
Claims (3)
- プレストレストPC構造物に圧縮力を付与しているPC鋼材の緊張力調整治具であって、
前記PC鋼材は、前記プレストレストPC構造物を貫通するように埋設された鋼管内に挿通され、コンクリートで埋設されていない、外ケーブル方式として採用され、
前記PC鋼材の長手方向に垂直な面から見て2以上のウェッジ片に分割されたウェッジと、
略中空円筒形状であって、内周面に前記ウェッジに組み合わせられるテーパー孔を備え、外周面に雄ねじが設けられたスリーブと、
略円環形状であって、内周面に前記スリーブが備える雄ねじと螺合する雌ねじが設けられたリングナットと、
前記テーパー孔が広がる方向の端部において前記スリーブに接合されるとともに、前記長手方向における前記スリーブとは反対側で油圧ジャッキに接続される接続用緊張材と接される接続用カプラと、を含み、
前記緊張力調整治具は、前記プレストレストPC構造物の端面において、前記PC鋼材が歯合された前記ウェッジの外周面のテーパー面が前記スリーブのテーパー孔に摩擦嵌合され、前記端面のアンカープレートに前記リングナット端面が当接されてセット量が補正された前記PC鋼材の緊張力を調整する治具であって、前記端面から前記プレストレストPC構造物の外部へ露出した前記スリーブに前記接続用カプラを接続して、前記PC鋼材の緊張力を調整し、
前記スリーブの外径、前記接続用カプラの外径および前記接続用緊張材の外径は前記スリーブの外径が最も大きく、かつ、前記スリーブの外径は前記鋼管の内径よりも小さく、前記スリーブを含む前記緊張力調整治具が前記鋼管の中で移動することができる、緊張力調整治具。 - プレストレストPC構造物に圧縮力を付与しているPC鋼材についてリングナットおよび支圧板を用いて緊張力を調整する緊張力調整方法であって、
請求項1に記載の緊張力調整治具を介して油圧ジャッキに前記PC鋼材の端部が連結することができるように準備する準備ステップと、
前記支圧板に反力架台を当接させて前記反力架台に油圧ジャッキをセットして、前記PC鋼材の端部を前記緊張力調整治具を介して前記反力架台を経由して前記油圧ジャッキに連結するセットステップと、
前記油圧ジャッキを用いて、前記緊張力調整治具が前記鋼管の中で移動することを許容して、前記支圧板から前記リングナットが予め定められた距離だけ離隔するまで、前記PC鋼材の緊張力を増加させる緊張力増加ステップと、
前記支圧板から離隔した前記リングナットを緩めるリング緩めステップと、
前記油圧ジャッキを用いて、前記緊張力調整治具が前記鋼管の中で移動することを許容して、予め定められた緊張力まで、前記PC鋼材の緊張力を減少させる緊張力低下ステップと、
予め定められた緊張力まで前記PC鋼材の緊張力が減少すると、前記リングナットが前記支圧板に当接するまで前記リングナットを締め付けるリング締め付けステップと、
前記油圧ジャッキによる緊張力を開放して、前記反力架台と前記油圧ジャッキとを取り外す取り外しステップと、を含む、緊張力調整方法。 - プレストレストPC構造物に圧縮力を付与しているPC鋼材についてリングナットおよび支圧板を用いて緊張力を調整する緊張力調整方法であって、
請求項1に記載の緊張力調整治具を介して油圧ジャッキに前記PC鋼材の端部が連結することができるように準備する準備ステップと、
前記支圧板に反力架台を当接させて前記反力架台に油圧ジャッキをセットして、前記PC鋼材の端部を前記緊張力調整治具を介して前記反力架台を経由して前記油圧ジャッキに連結するセットステップと、
前記油圧ジャッキを用いて、前記緊張力調整治具が前記鋼管の中で移動することを許容して、予め定められた緊張力まで前記PC鋼材の緊張力を増加させる緊張力増加ステップと、
予め定められた緊張力まで前記PC鋼材の緊張力が増加して前記支圧板から前記リングナットが離隔すると、前記リングナットが前記支圧板に当接するまで前記リングナットを締め付けるリング締め付けステップと、
前記油圧ジャッキによる緊張力を開放して、前記反力架台と前記油圧ジャッキとを取り外す取り外しステップと、を含む、緊張力調整方法。
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