実施するための形態について、以下に説明する。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
(1)本開示の一態様に係るコネクタは、長手方向の一方の端部である第1端部側が第1定着具に把持された第1PC鋼材の前記第1端部に、第2PC鋼材を接続するコネクタであって、
前記第1定着具を把持する第1貫通孔を備え、前記第1貫通孔の長さ方向に沿った外側面である第1外側面がテーパー形状を有する雄部材と、
前記雄部材を差し込む第2貫通孔を備えた雌部材と、を含み、
前記第2貫通孔は、前記雄部材を差し込む側の開口部である第1開口部と、前記第1開口部と反対側に位置する第2開口部とを備え、前記第2開口部側から、第1開口部側に向かって拡がるテーパー形状を有し、
前記雌部材は、前記第2貫通孔の長さ方向に沿った外側面である第2外側面に、溝部および山部から選択された1種以上を含む第1接続部材を備えることができる。
図1に示すように、長手方向の一方の端部である第1端部111側が第1定着具15に把持された既設の第1PC鋼材11の第1定着具15に、本開示のコネクタ10を設置する場合、まず雌部材17を設置する。具体的には、第1定着具15の少なくとも一部が、雌部材17の第2貫通孔171内に収容されるように雌部材17を設置する。この際、第2貫通孔171の第1開口部171A、すなわちサイズが大きい方の開口部が、第1PC鋼材11の第1端部111側に位置するように設置する。
次いで、雌部材17と、第1定着具15との間に、雄部材16を差し込むことができる。具体的には、図1に示したように、第1貫通孔161内に第1定着具15の少なくとも一部が収容されるように、雄部材16を、雌部材17の第2貫通孔171に差し込むことができる。雄部材16は、第1貫通孔161の長さ方向、すなわち図1中のX軸方向に沿った外側面である第1外側面162がテーパー形状を有している。このため、図1に示すように、雄部材16の外形のサイズが小さい第1端面16a側から、雌部材17の第2貫通孔171内に差し込むことができる。
雌部材17の第2貫通孔171は、コンクリート構造物12側に位置する第2開口部171B側から、雄部材16を差し込む第1開口部171A側に拡がるテーパー形状を有している。このため、雄部材16を、第1貫通孔161内に、第1定着具15の少なくとも一部が収容されるように、雌部材17の第2貫通孔171内に圧入することで、雄部材16が第1定着具15を締め付け、第1定着具15に、コネクタ10である、雄部材16、および雌部材17を固定できる。すなわち、雄部材16が、第1定着具15と、雌部材17との間に圧入されることで、楔として機能し、第1定着具15と、雌部材17とをつなぎ合わせることができる。
そして、雌部材17の第2貫通孔171の長さ方向に沿った外側面である第2外側面172には、溝部および山部から選択された1種以上を含む第1接続部材173が設けられている。
このため、第1定着具15の側面にねじが切っていなかったとしても、本開示のコネクタ10を、該第1定着具15に設置することで、第1接続部材173を用いて、既設の第1PC鋼材11の端部に、新たな第2PC鋼材の端部を接続することが可能になる。
第1PC鋼材や、第2PC鋼材は、コンクリート構造物にプレストレス、具体的には圧縮力を導入するプレストレス導入用のPC鋼材であり、複数本の素線を撚り合せたPC鋼撚り線や、PC鋼棒等を用いることができる。
(2) 前記第1接続部材が、ねじ山を備えていてもよい。
(3) カップラースリーブをさらに含み、
前記カップラースリーブは、一方の端部である第2端部に配置された、前記雌部材を差し込む第1凹部と、
前記第2端部と反対側に位置する第3端部に配置され、前記第2PC鋼材の長手方向の一方の端部である第4端部側を把持する第2PC鋼材把持部と、を備え、
前記第1凹部の内側面である第1内側面は、溝部および山部から選択された1種以上を含む第2接続部材を備えており、
前記第2接続部材は、前記第1接続部材と噛み合う形状を有していても良い。
(4) 前記第2PC鋼材把持部は、前記第3端部に配置された第2凹部と、前記第2凹部の内側面である第2内側面に設けられ、溝部および山部から選択された1種以上を含む第3接続部材と、を備えており、
前記第3接続部材は、前記第2PC鋼材の前記第4端部側を把持する第2定着具の、前記第2PC鋼材の長手方向に沿った外側面である第3外側面に形成された、溝部および山部から選択された1種以上を含む第4接続部材と噛み合う形状を有していてもよい。
(5) 前記第2PC鋼材把持部は、第3貫通孔を備えた壁部を含んでおり、
前記第3貫通孔の直径は、前記第2PC鋼材のコード径以上であり、かつ前記第1凹部に、前記第2PC鋼材の前記第4端部側を把持する第2定着具を収容した際に、前記第2定着具の前記壁部と対向する面の長辺の長さよりも短く、
前記壁部は、前記第1凹部の前記第3端部側の面を構成しても良い。
(6) 本開示の一態様に係るコネクタは、長手方向の一方の端部である第1端部側が第1定着具に把持された第1PC鋼材の前記第1端部に、第2PC鋼材を接続するコネクタであって、
前記第1定着具を把持する第1貫通孔を備え、前記第1貫通孔の長さ方向に沿った外側面である第1外側面がテーパー形状を有する雄部材と、
雌部材含有カップラースリーブと、を含み、
前記雌部材含有カップラースリーブは、
一方の端部である第2端部に配置された、第1凹部と、前記第1凹部内に配置され、前記雄部材を差し込む第2貫通孔を備えた雌部材部と、
前記第2端部と反対側に位置する第3端部に配置され、前記第2PC鋼材の長手方向の一方の端部である第4端部側を把持する第2PC鋼材把持部と、を含み、
前記第2貫通孔は、前記雄部材を差し込む側の開口部である第1開口部と、前記第1開口部と反対側に位置する第2開口部とを備え、前記第2開口部側から、第1開口部側に向かって拡がるテーパー形状を有することができる。
(7) 本開示の一態様に係るコネクタ接続構造は、長手方向の一方の端部である第1端部側が第1定着具に把持された第1PC鋼材の前記第1端部に、第2PC鋼材を接続したコネクタ接続構造であって、
前記第1PC鋼材と、
前記第1定着具を把持する第1貫通孔を備え、前記第1貫通孔の長さ方向に沿った外側面である第1外側面がテーパー形状を有する雄部材と、
前記雄部材を差し込む第2貫通孔を備えた雌部材と、
一方の端部である第2端部に配置された、前記雌部材を差し込む第1凹部、および前記第2端部と反対側に位置する第3端部に配置された第2PC鋼材把持部を備えたカップラースリーブと、
前記第2PC鋼材把持部により、長手方向の一方の端部である第4端部側が把持された第2PC鋼材と、を含み、
前記第2貫通孔は、前記雄部材を差し込む側の開口部である第1開口部と、前記第1開口部と反対側に位置する第2開口部とを備え、前記第2開口部側から、第1開口部側に向かって拡がるテーパー形状を有しており、
前記雌部材は、前記第2貫通孔の長さ方向に沿った外側面である第2外側面に、溝部および山部から選択された1種以上を含む第1接続部材を備え、
前記カップラースリーブは、前記第1凹部の内側面である第1内側面に、溝部および山部から選択された1種以上を含む第2接続部材を備えており、前記第2接続部材は、前記第1接続部材と噛み合う形状を有することができる。
(8)本開示の一態様に係るコネクタ接続構造の製造方法は、長手方向の一方の端部である第1端部側が第1定着具に把持された第1PC鋼材の前記第1端部に、第2PC鋼材を接続したコネクタ接続構造の製造方法であって、
第2開口部側から、第1開口部側に向かって拡がるテーパー形状を有する第2貫通孔を備えた雌部材の、前記第2貫通孔内に前記第1定着具の少なくとも一部が収容されるように、かつ前記第1開口部が、前記第1PC鋼材の前記第1端部側に位置するように、前記雌部材を設置する雌部材設置工程と、
第1貫通孔を備え、前記第1貫通孔の長さ方向に沿った外側面である第1外側面がテーパー形状を有する雄部材を、前記第1貫通孔内に前記第1定着具の少なくとも一部が収容されるように、前記雌部材の前記第2貫通孔に差し込む雄部材設置工程と、
一方の端部である第2端部に配置された第1凹部と、前記第2端部と反対側に位置する第3端部に配置された第2PC鋼材把持部と、を備えたカップラースリーブの、前記第1凹部に、前記雌部材を差し込むカップラースリーブ設置工程と、
前記第2PC鋼材把持部が、前記第2PC鋼材の長手方向の一方の端部である第4端部側を把持する第2PC鋼材設置工程と、を含み、
前記雌部材は、前記第2貫通孔の長さ方向に沿った外側面である第2外側面に、溝部および山部から選択された1種以上を含む第1接続部材を備え、
前記カップラースリーブは、前記第1凹部の内側面である第1内側面に、溝部および山部から選択された1種以上を含み、前記第1接続部材と噛み合う形状を有する第2接続部材を備え、
前記カップラースリーブ設置工程では、前記第1接続部材と、前記第2接続部材とを噛み合わせることで、前記第1凹部に、前記雌部材を差し込むことができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係るコネクタ、コネクタ接続構造、コネクタ接続構造の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
〔コネクタ〕
以下、本実施形態に係るコネクタについて図1~図8に基づき説明する。
本実施形態のコネクタは、長手方向の一方の端部である第1端部側が第1定着具に把持された第1PC鋼材の第1端部に、第2PC鋼材を接続するコネクタに関し、以下の部材を有することができる。
第1定着具を把持する第1貫通孔を備え、第1貫通孔の長さ方向に沿った外側面である第1外側面がテーパー形状を有する雄部材。
雄部材を差し込む第2貫通孔を備えた雌部材。
雌部材の上記第2貫通孔は、雄部材を差し込む側の開口部である第1開口部と、第1開口部と反対側に位置する第2開口部とを備え、第2開口部側から、第1開口部側に向かって拡がるテーパー形状を有することができる。
また、雌部材は、第2貫通孔の長さ方向に沿った外側面である第2外側面に、溝部および山部から選択された1種以上を含む第1接続部材を備えることができる。
図1は、本実施形態のコネクタの、第1PC鋼材の中心軸を通る面での断面図を模式的に示している。図2は、本実施形態のコネクタを、第1PC鋼材11の第1端部111側から、第1PC鋼材11の中心軸に沿って見た図であり、本実施形態のコネクタの上面図に当たる。
図1、図2中、第1PC鋼材11の長手方向をX軸とし、第1PC鋼材11の長手方向と直交する面をYZ平面としている。
本実施形態のコネクタを説明する前に、本実施形態のコネクタを適用する第1定着具、および第1定着具により把持されている第1PC鋼材について説明する。
(1)第1定着具、第1PC鋼材
図1に示すように、既設のPC鋼材である第1PC鋼材11は、コンクリート構造物12内部に埋設されている。第1PC鋼材11は、例えばシース13を介してコンクリート構造物12の中に配置することができ、第1PC鋼材11と、シース13との間にはグラウトを充填することもできる。
第1PC鋼材11は、コンクリート構造物12にプレストレス、具体的には圧縮力を導入するプレストレス導入用のPC鋼材であり、複数本の素線を撚り合せたPC鋼撚り線や、PC鋼棒等を用いることができる。上記PC鋼材、PC鋼撚り線、PC鋼棒のPCは、いずれもプレストレスト・コンクリートを意味している。
PC鋼材は、必要に応じてその表面をエポキシ樹脂等の樹脂により被覆しておくこともできる。
第1PC鋼材11の長手方向の一方の端部である第1端部111は、中央部に第1PC鋼材11を通す貫通孔が設けられた板状体である、支圧プレート14を介して、第1定着具15により把持されている。
支圧プレート14は、キャスティングプレートや、アンカープレートと呼ばれる場合もある。支圧プレート14は、厚みのある鋼片であり、第1PC鋼材11に導入された緊張力を支圧することができる。支圧プレート14は、図1に示すようにコンクリート構造物12の表面に配置することもでき、また部分的にコンクリート構造物12内に埋設しておくこともできる。
第1定着具15の構成は特に限定されないが、第1定着具15は、例えば第1メスコーン151と、第1オスコーン152とを有することができる。
第1メスコーン151の外形は特に限定されず、例えば円柱形状を有することができる。第1メスコーン151は、端部に面取り部等を有することもできるため、完全な円柱形状である必要はない。
第1メスコーン151は、中心軸に沿って、第1PC鋼材11、および第1オスコーン152を配置する第4貫通孔1511を有することができる。
第1メスコーン151が有する第4貫通孔1511は、図1に示すように、コンクリート構造物12側の一方の端部から、該一方の端部の反対側に位置する他方の端部に向かって径が拡がるテーパー形状の面を有することができる。
第1オスコーン152は、図2に示すように、第1PC鋼材11の第1端部111側から第1PC鋼材11の中心軸に沿って見た場合に、すなわち図中のX軸に沿って見た場合に、周方向に沿って分割された、複数のオスコーン分割片152A、152Bを有することができる。ここでは2つのオスコーン分割片に分割した例を示しているが、第1オスコーン152は、3つ以上のオスコーン分割片に分割することもできる。また、第1オスコーン152は分割せずに1つの部材から構成することもできる。そして、第1オスコーン152は、複数のオスコーン分割片152A、152Bを組み合わせた場合に、第1メスコーン151のテーパー形状の面を有する第4貫通孔1511に対応した外形を有し、例えば円錐台形状を有することができる。第1オスコーン152は、複数のオスコーン分割片152A、152Bを組み合わせた場合に、その中心軸に沿って第1PC鋼材11を通し、把持するための第5貫通孔1521を有することができる。
第5貫通孔1521の内面には、第1PC鋼材11を強固に把持するために凹凸を形成することもでき、例えば雌ねじ面を形成しておくこともできる。また、図2に示すように、オスコーン分割片152A、152Bには、第5貫通孔1521の長さ方向、すなわち図中のX軸方向に沿って、その一部にスリット153A、153Bを設けておくこともできる。
第1PC鋼材11を第1定着具15により固定する場合、図1、図2に示すように、第1PC鋼材11が第4貫通孔1511内を貫通するように第1メスコーン151を設置する。この際、コンクリート構造物12側に、第4貫通孔1511のサイズが小さい方の開口部が位置するように、第1メスコーン151を設置する。
そして、第1オスコーン152を、第5貫通孔1521内に第1PC鋼材11が位置するように、第1メスコーン151の第4貫通孔1511に設置する。第1オスコーン152は、第1メスコーン151の第4貫通孔1511に対応した外形を有し、例えば円錐台形状を有することができる。第1PC鋼材11に第1オスコーン152を設置する際、第1メスコーン151の第4貫通孔1511にあわせて、第1オスコーン152は、コンクリート構造物12側に、外形のサイズが小さい方の端部が位置するように配置することが好ましい。そして、第1オスコーン152を、第1メスコーン151の第4貫通孔1511に挿入し、第1PC鋼材11の長手方向の第1端部111と反対側に位置する図示しない端部を、図1中、X軸に沿って右側に引っ張り、第1PC鋼材11に緊張力を導入できる。
上述のように第1PC鋼材11に、第1メスコーン151、および第1オスコーン152を配置後、第1PC鋼材11に緊張力を導入することで、第1オスコーン152が、第1メスコーン151のテーパー形状の面を有する第4貫通孔1511内に圧入される。そして、第1オスコーン152に含まれるオスコーン分割片152A、152B間の距離が縮まり、第1オスコーン152が第1PC鋼材11を締め付け、固定できる。
オスコーン分割片152A、152Bが、スリット153A、153Bを有する場合、第1オスコーン152が第1メスコーン151の第4貫通孔1511に圧入される際に、オスコーン分割片152A、152Bは、スリット153A、153Bの間隔が狭まるように形状が変化する。このため、第1オスコーン152は、第1PC鋼材11をより強く把持することができる。
PC鋼材は、橋桁等のコンクリート構造物内に埋設されて使用される。コンクリート構造物に埋設されたPC鋼材に緊張力を導入することで、コンクリート構造物に圧縮力を加えてプレストレスト・コンクリートとし、コンクリート構造物に荷重が加わることで生じる引張応力の一部または全部を打消すことができる。コンクリート構造物をプレストレスト・コンクリートとすることで、該コンクリート構造物にひび割れが生じることを抑制できる。
例えば既に建設された橋桁の幅を拡張する場合、既に建設された橋桁部分に埋設されたPC鋼材の端部と、拡張部分に用いるPC鋼材の端部とを接続して、コネクタ接続構造とすることが好ましい。コネクタ接続構造とすることで、拡張部分に用いる新たなPC鋼材を固定するための部材を、例えば既に建設した橋桁の一部を取り壊す等して別途設ける必要がなくなるからである。
しかしながら、拡張することを前提にせず建築された橋桁等では、PC鋼材を把持する定着具の外周にねじ部が形成されておらず、コネクタ接続構造とすることができない場合があった。そこで、本発明の発明者らは、コンクリート構造物に埋設された既設のPC鋼材を把持する定着具の外周にねじ部が形成されていない場合であっても、新たなPC鋼材と接続可能とするコネクタについて鋭意検討を行った。
その結果、第1PC鋼材の第1端部側を把持する第1定着具に、本実施形態のコネクタを装着することで、第1定着具の側面にねじ部が形成されていなくても、拡張部分に用いる第2PC鋼材の端部とコネクタ接続構造を形成できることを見出した。
本実施形態のコネクタは、雄部材と、雌部材とを含むことができる。以下、本実施形態のコネクタの各部材について以下に説明する。
(2)雄部材
本実施形態のコネクタ10が含有する雄部材16は、第1定着具15を把持する第1貫通孔161を備え、第1貫通孔161の長さ方向、すなわち図中のX軸方向に沿った外側面である第1外側面162がテーパー形状を有することができる。
雄部材16は、図2に示すように、第1PC鋼材11の第1端部111側から、第1PC鋼材11の中心軸に沿って見た場合に、周方向に沿って分割された、複数の雄部材分割片16A、16B、16C、16Dを有することができる。ここでは4つの雄部材分割片に分割した例を示しているが、雄部材16は、2つ、3つ、または5つ以上の雄部材分割片に分割することもできる。また、雄部材は分割せず、1つの部材から構成することもできる。
雄部材16は、複数の雄部材分割片16A、16B、16C、16Dを組み合わせた場合に、その中心軸、すなわち図中のX軸に沿って、第1定着具15の少なくとも一部を収容し、把持するための第1貫通孔161を有している。第1貫通孔161の内面には、第1定着具15を強固に把持するために、凹凸を形成しておくことができ、例えば雌ねじ面を形成しておくこともできる。
第1貫通孔161のサイズは特に限定されず、第1定着具15を把持できるようにそのサイズを選択できる。JIS G 3536(2014)には19本の素線(PC鋼線)を撚り合せた、外径が21.8mmのPC鋼撚り線が規定されている。そして、係る外径が21.8mmのPC鋼撚り線の端部を把持するために、中心軸と垂直な断面の最大径が60mm以上70mm以下の円柱形状を有する定着具が一般的に用いられている。第1定着具15が上記定着具の場合、例えば、中心軸と垂直な断面の最大径が60mm以上70mm以下である、円柱形状の第1定着具15を収容できるように、第1貫通孔161のサイズを選択できる。
雄部材16は、複数の雄部材分割片16A、16B、16C、16Dを組み合わせた場合に、後述する雌部材17のテーパー形状の面を有する第2貫通孔171に対応した外形を有することができる。このため、第1貫通孔161の長さ方向、すなわち図中のX軸方向に沿った外側面である第1外側面162は、第1端面16a側から第2端面16b側に拡がるテーパー形状とすることができ、雄部材16は、例えば円錐台形状の外形を有することができる。
また、雄部材分割片16A、16B、16C、16Dには、第1貫通孔161の長さ方向に沿って、その一部にスリットを設けておくこともできる。
(3)雌部材
本実施形態のコネクタ10が有する雌部材17は、雄部材16を差し込む第2貫通孔171を備えることができる。なお、雄部材16は、既述の様に第1定着具15を把持している。このため、第2貫通孔171には、雄部材16に加えて、第1定着具15や、第1PC鋼材11も併せて差し込むことができる。
雌部材17の第2貫通孔171は、雄部材16を差し込む側の開口部である第1開口部171Aと、第1開口部171Aと反対側に位置する第2開口部171Bとを備えることができる。そして、第2貫通孔171は、第2開口部171B側から、第1開口部171A側に向かって拡がるテーパー形状を有することができる。
また、雌部材17は、第2貫通孔171の長さ方向に沿った外側面である第2外側面172に、溝部および山部から選択された1種以上を含む第1接続部材173を備えることができる。
第1定着具15に、本実施形態のコネクタ10を設置する場合、まず雌部材17を、第1定着具15の少なくとも一部が、雌部材17の第2貫通孔171内に収容されるように設置する。この際、第2貫通孔171の第1開口部171A、すなわちサイズが大きい方の開口部が第1PC鋼材11の第1端部111側に位置するように設置する。
次いで、雌部材17と、第1定着具15との間に、雄部材16を差し込むことができる。具体的には、図1に示したように、第1貫通孔161内に第1定着具15の少なくとも一部が収容されるように、雄部材16を、雌部材17の第2貫通孔171に差し込むことができる。
雄部材16は、第1貫通孔161の長さ方向、すなわち図1中のX軸方向に沿った外側面である第1外側面162がテーパー形状を有している。このため、図1に示すように、雄部材16の外形のサイズが小さい第1端面16a側から、雌部材17の第2貫通孔171内に差し込むことが好ましい。
雌部材17の第2貫通孔171は、コンクリート構造物12側に位置する第2開口部171B側から、雄部材16を差し込む第1開口部171A側に拡がるテーパー形状を有している。このため、第1貫通孔161内に、第1定着具15の少なくとも一部が収容されるように該雄部材16を、雌部材17の第2貫通孔171内に圧入することで、雄部材16に含まれる雄部材分割片16A、16B、16C、16D間の距離が縮まる。雄部材分割片16A、16B、16C、16D間の距離が縮まることで、雄部材16が第1定着具15を締め付け、第1定着具15に、コネクタ10である、雄部材16、および雌部材17を固定できる。すなわち、雄部材16が、第1定着具15と、雌部材17との間に圧入されることで、楔として機能し、第1定着具15と、雌部材17とをつなぎ合わせることができる。
第2貫通孔171のサイズは特に限定されず、例えば第1定着具15のサイズ等に応じて任意に選択することができる。既述のように、外径が21.8mmのPC鋼撚り線を把持する定着具として、例えば中心軸と垂直な断面の最大径が60mm以上70mm以下の、円柱形状を有する定着具が一般的に用いられている。第1定着具15として上記サイズの定着具を用いる場合、第2貫通孔171のサイズは、第1定着具15や、雄部材16を収容できるように選択でき、例えば最も径が小さくなる第2開口部171Bの直径は、65mm以上とすることができる。第1定着具15として上記サイズの定着具を用いる場合、第2貫通孔171が第1定着具15を収容し、かつ第2貫通孔171に雄部材16を圧入することで、雌部材17と第1定着具15とを強くつなぎ合わせられるように、第2開口部171Bの直径は、例えば65mm以上80mm以下とすることが好ましい。
そして、雌部材17の第2貫通孔171の長さ方向に沿った外側面である第2外側面172には、溝部および山部から選択された1種以上を含む第1接続部材173が設けられている。
このため、第1定着具15の側面にねじが切っていなかったとしても、本実施形態のコネクタ10を、該第1定着具15に設置することで、第1接続部材173を用いて、既設の第1PC鋼材11の端部に、新たな第2PC鋼材の端部を接続することが可能になる。
第1接続部材173の構成は特に限定されないが、溝部および山部から選択された1種以上を含むことができる。このような溝部および山部から選択された1種以上を含むことで、係る溝部や山部に対応した形状を有する他の部材と、係る溝部や山部により噛み合わせ、すなわち嵌合させ、強固に接続できる。このため、第1接続部材に接続した他の部材を介して、第2PC鋼材を接続することが可能になる。なお、溝部は凹部、山部は凸部と言い換えることもできる。
第1接続部材173は、例えばねじ山を備えることができる。第1接続部材173がねじ山を備えることにより、第1接続部材173が有するねじ山に対応したねじの溝が形成された他の部材を接続し、係る他の部材により雌部材17と、第2PC鋼材とを接続することが可能になる。第1接続部材173がねじ山を備え、該ねじを用いて他の部材と接続することで、容易に脱着することができながら、かつ強固に本実施形態のコネクタ10が有する雌部材17と、他の部材、例えば後述するカップラースリーブとを接続できる。
第1接続部材173がねじ山を備える場合、該ねじ山は、雌部材17の第2貫通孔171の長さ方向に沿って、すなわち図中のX軸方向に沿って、螺旋状に形成することができる。
図3に雌部材17の他の構成例の斜視図を示す。図3に示すように、雌部材17はねじ山によらない第1接続部材173を有することもでき、第1接続部材173は、溝部1731を備えることができる。
図3に示すように、溝部1731は第1溝部1731Aと、第2溝部1731Bとを有することができる。第1溝部1731Aは、第2貫通孔171の第1開口部171A側から、第2貫通孔171の長さ方向に沿って形成でき、例えば線形状の溝とすることができる。第2溝部1731Bは、雌部材17の外周に沿って第1溝部1731Aと隣り合うように、かつ第1溝部1731Aと接続するように構成できる。そして、第2溝部1731Bの、第2貫通孔171の第1開口部171A側に、溝部1731が形成されていない領域であり、溝部1731と比較して突出した部分である支持部1732が位置するように構成できる。この場合、溝部1731は、上面から見た場合に、図3に示すようなL字形状や、図3に示した場合よりも、第2溝部1731Bが第1開口部171A側に位置するT字形状の溝とすることができる。
ここで、雌部材と接続する他の部材である被接続部材が、上記溝部1731に対応した山部を備えているとする。そうすると、溝部1731を上記構成とすることで、上記被接続部材の山部を、第1溝部1731Aに、第1溝部1731Aの長さ方向に沿って挿入した後、被接続部材を雌部材17の周方向に回転させることで、被接続部材の山部を第2溝部1731Bに収容できる。第2溝部1731Bの第1開口部171A側には溝部1731が形成されていない支持部1732が配置されているため、支持部1732により、被接続部材の山部を支持し、第1溝部1731Aの長さ方向、すなわち第2貫通孔171の長さ方向に沿って被接続部材を抜けないように構成できる。
なお、図3では、第1溝部1731Aが直線形状の例を示しているが、第1溝部1731Aに他の被接続部材の山部を挿入し、第2溝部1731Bに誘導できるように形成されていればよく、曲線形状等であっても良い。
溝部1731は、複数設けることもでき、図3に示した雌部材17では、雌部材17の外周に沿って、2個設けた例を示しているが、雌部材17のサイズ等に応じて、3個以上設けることもできる。
図3に示した第1接続部材173を備えた雌部材17に、他の部材を固定した場合の断面図を図4に示す。図4中、雌部材については、図3におけるA-A´線での断面図に相当する。図4には、図1、図2を用いて説明した他の部材も併せて示しているが、紙幅の都合上、符号を一部省略している。
図4に示すように、他の部材である被接続部材18の山部181を、第1接続部材173の溝部1731、具体的には第2溝部1731Bに嵌め込むことで、第1接続部材173の溝部1731が形成されていない支持部1732により、山部181を介して被接続部材18を支持、固定できる。図3、図4を用いて説明した、溝部を備えた第1接続構造の場合、ねじ山を備えた第1接続構造とした場合よりも、被接続部材を雌部材に接続する際に、被接続部材を回転させる量を抑制でき、特に容易に被接続部材を脱着できる。
なお、ここでは第1接続部材173の構成例について、図3、図4を用いて示したが、係る形態に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
本実施形態のコネクタは、上記雄部材、雌部材以外に、任意の部材をさらに有することもできる。
(4)カップラースリーブ
本実施形態のコネクタは、例えば雌部材と、第2PC鋼材とを接続する部材である、カップラースリーブをさらに含むことができる。カップラースリーブについて、図5、図6を用いて説明する。図5、図6は、第1PC鋼材11の中心軸を通る面での断面図を示している。図5、図6中、第1PC鋼材11の長手方向をX軸とし、第1PC鋼材11の長手方向と直交する面をYZ平面としている。
なお、図5、図6中、既に説明した部材には同じ番号を付して説明を省略する。
カップラースリーブ31は、一方の端部である第2端部31Aに配置された、雌部材17を差し込む第1凹部32と、第2端部31Aと反対側に位置する第3端部31Bに配置され、第2PC鋼材21の長手方向の一方の端部である第4端部211側を把持する第2PC鋼材把持部33と、を備えることができる。
第1凹部32の内側面である第1内側面32Aは、溝部および山部から選択された1種以上を含む第2接続部材34を備えており、第2接続部材34は、第1接続部材173と噛み合う形状を有することができる。
カップラースリーブ31は、一方の端部である第2端部31Aに配置された第1凹部32の第2接続部材34により、第1PC鋼材11に設置した雌部材17を把持することができる。また、カップラースリーブ31は、第2端部31Aと反対側に位置する第3端部31Bに配置された第2PC鋼材把持部33により第2PC鋼材21の第4端部211側を把持することができる。これにより、カップラースリーブ31内部で、第1PC鋼材11の第1端部111と、第2PC鋼材21の第4端部211とが向かい合うようにして接続させることができる。すなわち、第1PC鋼材11と、第2PC鋼材21とを、その端部が対向するように配置、固定したコネクタ接続構造30とすることができる。
カップラースリーブ31が備える第1凹部32は、例えば雌部材17の少なくとも一部を収容できるように、そのサイズや、形状を選択することができる。既述の様に、雌部材17は、外形を円柱形状とすることができる。このため、第1凹部32は、雌部材17と同様に円柱形状の空間とすることができる。
図5に示すように、第1凹部32は、雌部材17の一部を収容する際、第1PC鋼材11や、第1定着具15、雄部材16の一部もあわせて収容できる。このため、第1凹部32は、上記部材も収容できるように、そのサイズや形状を選択することが好ましい。
第1凹部32を円柱形状とする場合、そのサイズは、上述のように雌部材17等に合わせて選択できる。既述のように、外径が21.8mmのPC鋼撚り線を把持する定着具として、例えば中心軸と垂直な断面の最大径が60mm以上70mm以下の、円柱形状を有する定着具が一般的に用いられている。そして、雌部材17は第1定着具15に対応した外径を有している。このため、第1定着具15や、雌部材17を確実に収容するため、第1凹部32の内径は、例えば100mm以上110mm以下とすることができる。
第1凹部32の内側面である第1内側面32Aには、溝部および山部から選択された1種以上を含む第2接続部材34を備えておくことができる。第1凹部32の第1内側面32Aとは、図5に示すように、第1凹部32に第1PC鋼材11を挿入、設置した場合に、第1PC鋼材11の長手方向に沿った内側面を意味する。第2接続部材34は、雌部材17の第2外側面172に配置した第1接続部材173と噛み合う形状、すなわち嵌合する形状を有している。このため、第1接続部材173と、第2接続部材34とが噛み合う、すなわち嵌合することで、カップラースリーブ31を、雌部材17に固定できる。
第2接続部材34は、第1接続部材173の溝部や山部に対応した溝部および山部から選択された1種以上を含むことができる。第1接続部材173が例えばねじ山を有する場合、第2接続部材34は、第1接続部材173のねじ山に対応した形状のねじ溝を有することができる。
第2接続部材34がねじ溝を有する場合、第2接続部材34のねじ溝は、第1凹部32の深さ方向、すなわち図5中のX軸方向に沿って螺旋状に形成することができる。
カップラースリーブ31は、第2端部31Aと反対側に位置する第3端部31Bに、第2PC鋼材21の端部を把持する第2PC鋼材把持部33を備えることができる。第2PC鋼材把持部33の構成は特に限定されず、カップラースリーブ31が、第2PC鋼材21の第4端部211側を把持できるように構成されていれば良い。
例えば、第2PC鋼材把持部33は、第3端部31Bに配置された第2凹部331を有することができる。そして、第2PC鋼材把持部33は、第2凹部331の内側面である第2内側面331Aに設けられた、溝部および山部から選択された1種以上を含む第3接続部材332を備えることができる。
第3接続部材332は、第2PC鋼材21の第4端部211側を把持する第2定着具25の、第2PC鋼材21の長手方向に沿った外側面である第3外側面25Aに形成された溝部および山部から選択された1種以上を含む第4接続部材253と噛み合う形状を有することができる。
第2凹部331の形状、サイズは特に限定されないが、第2定着具25の少なくとも一部を収容できるようにその形状、サイズを選択することが好ましい。第2定着具25は、後述するように例えば第2メスコーン251、および第2オスコーン252を有することができる。既述のように、外径が21.8mmのPC鋼撚り線を把持する定着具として、例えば中心軸と垂直な断面の最大径が60mm以上70mm以下の、円柱形状を有する定着具が一般的に用いられている。そして、第2定着具25として上記サイズの定着具を用いる場合、第2凹部331は、第2定着具25の少なくとも一部を収容できるように選択でき、例えば中心軸と垂直な断面の直径が60mmよりも長い円柱形状の空間とすることができる。特に、第2凹部331は、第2内側面331Aに第3接続部材332を有することから、中心軸と垂直な断面の最大径d331(図5を参照)は、例えば65mm以上80mm以下とすることが好ましい。
図5に示すように、第2凹部331は、第3端部31Bのうち、第1凹部32を設けた面と反対側に位置する面に設けることが好ましい。
第2凹部331は、図5に示すように、第1凹部32と連続した貫通孔とすることもできる。第2凹部331の第2内側面331Aとは、図5に示すように、第2凹部331に第2PC鋼材21を挿入、設置した場合に、第2PC鋼材21の長手方向に沿った内側面を意味する。第3接続部材332は、第2PC鋼材21の長手方向の一方の端部を把持する第2定着具25の、第2PC鋼材21の長手方向に沿った外側面である第3外側面25Aに形成された溝部および山部から選択された1種以上を含む第4接続部材253と噛み合う形状、すなわち嵌合する形状を有することができる。
第2PC鋼材21は、新たに設置するPC鋼材であるため、第2PC鋼材21の長手方向の一方の端部である第4端部211側を把持する第2定着具25の外側面である第3外側面25Aには、第4接続部材253を予め形成しておくことができる。
例えば第4接続部材253は、ねじ山を備えることができる。この場合、第3接続部材332は第4接続部材253のねじ山に対応したねじ溝を有することができる。第4接続部材253がねじ山を備える場合、例えば第2PC鋼材21の長手方向に沿って螺旋状に形成できる。また、第3接続部材332が、第4接続部材253のねじ山に対応したねじ溝を有する場合、カップラースリーブ31に収容する第2PC鋼材21の長手方向に沿って、螺旋状にねじ溝を形成できる。
第2接続部材34および第3接続部材332がねじ山もしくはねじ溝を備える場合、例えば第2接続部材34と、第3接続部材332とは逆方向のねじにすることもできる。
カップラースリーブ31に設けられた第2接続部材34と、第3接続部材332とを逆方向のねじとした場合、カップラースリーブ31を回転させることで、第1接続部材173と第2接続部材34との間、および第3接続部材332と第4接続部材253との間を、同時に嵌合させることができる。このため、雌部材17にカップラースリーブ31と、第2PC鋼材21とを同時に設置することが可能になり、作業効率を高めることができる。
第2接続部材34と、第3接続部材332とが逆方向のねじとは、例えば第2接続部材34を左ねじ、第3接続部材332を右ねじの様に構成することを意味する。第2接続部材34が左ねじの場合、嵌合する第1接続部材173も左ねじとなる。第3接続部材332が右ねじの場合、嵌合する第4接続部材253も右ねじとなる。
第4接続部材253は、ねじ山によらない構造を有することもでき、例えば図3を用いて説明した溝部1731を備えた第1接続部材173と同様の構成とすることもできる。溝部1731を備えた第1接続部材173については既に説明したため、ここでは説明を省略する。この場合、第3接続部材332は、第4接続部材の溝部に対応した山部を備えることになる。
なお、いずれの場合でも第3接続部材332、および第4接続部材253は、第2PC鋼材21の引張荷重に耐えられるように、その形状を選択することが好ましい。
第2定着具25は、第2メスコーン251、および第2オスコーン252を有することができ、第4接続部材253を有する点以外は、既述の第1メスコーン151、第1オスコーン152と同様に構成できるため、ここでは説明を省略する。
第2PC鋼材把持部33が、第2凹部331、および第3接続部材332を有することで、第3接続部材332により、第2PC鋼材21の第4端部211側を把持する第2定着具25に設けた第4接続部材253を把持できる。このため、第2PC鋼材把持部33により、第2定着具25を介して第2PC鋼材21の端部を容易に把持し、カップラースリーブ31内部で、第1PC鋼材11の第1端部111と、第2PC鋼材21の第4端部211とが向かい合うようにして接続できる。すなわち、第1PC鋼材11と、第2PC鋼材21とを、その端部が対向するように配置、固定したコネクタ接続構造30とすることができる。なお、コネクタ接続構造において、第1PC鋼材11の第1端部111と、第2PC鋼材21の第4端部211とは直接接するように配置することもできるが、両者は直接接している必要はなく、図5に示したように、両者の間に空間、すなわち隙間があっても良い。
第2PC鋼材把持部の構成は、図5に示した形態に限定されない。例えば図6に示したカップラースリーブ41のように構成することもできる。
この場合、第2PC鋼材把持部43は、第3貫通孔431を備えた壁部432を含むことができる。
第3貫通孔431の直径d431は、第2PC鋼材21のコード径d21以上であり、かつ第1凹部42に、第2PC鋼材21の第4端部211側を把持する第2定着具25を収容した際に、第2定着具25の壁部432と対向する面の長辺の長さL25よりも短くできる。壁部432は、第1凹部42の第3端部41B側の面を構成できる。
カップラースリーブ41においても、一方の端部である第2端部41Aに配置された、雌部材17を差し込む第1凹部42と、第2端部41Aと反対側に位置する第3端部41Bに配置され、第2PC鋼材21の端部を把持する第2PC鋼材把持部43と、を備えることができる。
第1凹部42の内側面である第1内側面42Aには、溝部および山部から選択された1種以上を含む第2接続部材44を備えており、第2接続部材44は、第1接続部材173と噛み合う形状、すなわち嵌合する形状を有することができる。第2接続部材44については、図5に示したカップラースリーブ31の場合と同様に構成できるため、ここでは説明を省略する。
カップラースリーブ41においては、第2PC鋼材把持部43として、第3貫通孔431を備えた壁部432を含むことができる。
第3貫通孔431は、カップラースリーブ41の第3端部41Bの外表面と、カップラースリーブ41内部とを貫通する貫通孔である。壁部432が第1凹部42の第3端部41B側の面を構成するため、第3貫通孔431は、第1凹部42と、カップラースリーブ41の第3端部41Bの外表面とを貫通する貫通孔ということもできる。
第3貫通孔431の直径d431は、第2PC鋼材21のコード径d21以上であることが好ましく、d21よりも長いことがより好ましい。第3貫通孔431の直径d431を、第2PC鋼材21のコード径以上とすることで、第3貫通孔431から第2PC鋼材21を引き出すことができる。
第2PC鋼材21のコード径とは、第2PC鋼材21の長手方向と垂直な面での、該PC鋼材の直径を意味する。
また、第3貫通孔431の直径d431は、第1凹部42に、第2PC鋼材21の第4端部211側を把持する第2定着具25を収容した際に、第2定着具25の壁部432と対向する面の長辺の長さL25(以下、「第2定着具25の長辺の長さ」と記載する)よりも短くすることができる。第3貫通孔431の直径d431を、第2定着具25の長辺の長さL25よりも短くすることで、壁部432の、第3貫通孔431を設けていない部分で第2定着具25を支持することができる。
なお、第2定着具25は第2メスコーン251を有することができ、例えば第1定着具15の第1メスコーン151と同様に外形を円柱形状とすることができる。このため、第2定着具25の長辺の長さとは、第1凹部42に、第2定着具25を収容した際に、第2定着具25の壁部432と対向する面の直径と言い換えることもできる。
第2PC鋼材21のコード径d21は、用いるPC鋼材により異なるため、特に限定されない。既述の様に、JIS G 3536(2014)には19本の素線(PC鋼線)を撚り合せた、外径が21.8mmのPC鋼撚り線が規定されている。そして、係る外径が21.8mmのPC鋼撚り線の端部を把持するために、中心軸と垂直な断面の最大径が60mm以上70mm以下の円柱形状を有する定着具が一般的に用いられている。
例えば第2PC鋼材21、および第2定着具25が上記サイズの場合、第3貫通孔431の直径は、21.8mm以上65mm未満とすることができる。ただし、耐久性を高める観点から、第3貫通孔431の直径d431は短い方が好ましく、また第3貫通孔431から第2PC鋼材21を容易に引き出せるように第3貫通孔431の直径d431は、第2PC鋼材21のコード径よりも長いことが好ましい。このため、第3貫通孔431の直径は、例えば、22mm以上60mm未満とすることが好ましく、22mm以上40mm以下とすることがより好ましい。
壁部432は、上述のように第1凹部42の第3端部41B側の面を構成することができ、第1凹部42内に、第2PC鋼材21の第2定着具25も収容できる。このため、第1凹部42は、第1定着具15、雄部材16、雌部材17に加えて、第2定着具25も収容できるようにそのサイズを選択することが好ましい。
第1凹部42は、第2定着具25も収容できるため、図6に示したように、雌部材17等を収容する第1領域421と、第2定着具25を収容する第2領域422とでサイズや形状が異なっていても良い。
既述の様に第2定着具25としては、例えば中心軸と垂直な断面の最大径が60mm以上70mm以下である、円柱形状を有する定着具を用いることができる。このため、第2領域422は、係る第2定着具25を収容できるように、中心軸と垂直な断面における最大径d422が65mm以上80mm以下の円柱形状の空間とすることもできる。
壁部432は、第2PC鋼材21の引張荷重に耐えられるように、その厚み等を選択することが好ましい。
このように、第2PC鋼材把持部43が、所定の第3貫通孔431を有する壁部432を有することで、係る壁部で、第2PC鋼材21の第2定着具25を容易に支持することができる。このため、カップラースリーブ41内部で、第1PC鋼材11の第1端部111と、第2PC鋼材21の第4端部211とが向かい合うようにして接続できる。すなわち、第1PC鋼材11と、第2PC鋼材21とを、その端部が対向するように配置、固定したコネクタ接続構造40とすることができる。
ここまで、本実施形態のコネクタが、雄部材、雌部材、場合によってはさらにカップラースリーブを有する場合を例に説明したが、係る形態に限定されない。例えば、上記雌部材、およびカップラースリーブに替えて、雌部材と、カップラースリーブとが一体となった雌部材含有カップラースリーブを用いることもできる。
雌部材含有カップラースリーブを含むコネクタの構成例について以下に説明する。
この場合も、本実施形態のコネクタは、長手方向の一方の端部である第1端部側が第1定着具に把持された第1PC鋼材の第1端部に、第2PC鋼材を接続するコネクタに関する。
そして、本実施形態のコネクタは、第1定着具を把持する第1貫通孔を備え、第1貫通孔の長さ方向に沿った外側面である第1外側面がテーパー形状を有する雄部材と、雌部材含有カップラースリーブと、を含むことができる。
雌部材含有カップラースリーブは、一方の端部である第2端部に配置された第1凹部と、第1凹部内に配置され、雄部材を差し込む第2貫通孔を備えた雌部材部と、第2端部と反対側に位置する第3端部に配置され、第2PC鋼材の長手方向の一方の端部である第4端部側を把持する第2PC鋼材把持部と、を含むことができる。第2貫通孔は、雄部材を差し込む側の開口部である第1開口部と、第1開口部と反対側に位置する第2開口部とを備え、第2開口部側から、第1開口部側に向かって拡がるテーパー形状を有することができる。
ここで説明するコネクタは、既述の様に例えば図5、図6における雌部材17と、カップラースリーブ31、またはカップラースリーブ41とが一体となり、雌部材含有カップラースリーブとしている点以外は図5、図6を用いて説明したコネクタと同様に構成できる。そして、雌部材含有カップラースリーブは、第1接続部材173、第2接続部材34を設けずに雌部材とカップラースリーブとを一体化している点以外は、図5、図6等を用いて説明した雌部材、カップラースリーブと同様の構成を有することができる。
なお、雌部材含有カップラースリーブが有する雌部材部は、図5、図6を用いて説明した雌部材17に相当し、第1凹部32(42)の、第2端部31A(41A)側の開口部を覆うように配置されている。そして、雌部材部が有する第2貫通孔171の第2開口部171Bが雌部材含有カップラースリーブの第2端部31A(41A)側に、第1開口部171Aが雌部材含有カップラースリーブの第3端部31B(41B)側に位置する。
雌部材含有カップラースリーブにおいて、第2PC鋼材把持部は、例えば図5、図6を用いて説明した場合と同様に構成できる。
このため、図5を用いて説明したように、雌部材含有カップラースリーブにおいて、第2PC鋼材把持部33は、第3端部31Bに配置された第2凹部331と、第2凹部331の内側面である第2内側面331Aに設けられ、溝部および山部から選択された1種以上を含む第3接続部材332と、を備えることもできる。この場合、第3接続部材332は、第2PC鋼材21の第4端部211側を把持する第2定着具25の、第2PC鋼材21の長手方向に沿った外側面である第3外側面25Aに形成された、溝部および山部から選択された1種以上を含む第4接続部材253と噛み合う形状を有することができる。
なお、雌部材含有カップラースリーブを設置後、雌部材部の第2貫通孔に雄部材を配置、圧入する作業を行い易いように、図5に示したように、第2凹部331は、第1凹部32と連続した貫通孔となっていることが好ましい。また、雌部材部の第2貫通孔に雄部材を配置、圧入する作業を行い易いように、第2凹部331の中心軸と垂直な断面の最大径d331等のサイズを選択することが好ましい。
また、図6を用いて説明したように、第2PC鋼材把持部43は、第3貫通孔431を備えた壁部432を含むこともできる。この場合、第3貫通孔431の直径d431は、第2PC鋼材21のコード径d21以上であり、かつ第1凹部42に、第2PC鋼材21の第4端部211側を把持する第2定着具25を収容した際に、第2定着具25の壁部432と対向する面の長辺の長さL25よりも短くできる。また、壁部432は、第1凹部42の第3端部41B側の面を構成できる。
なお、雌部材含有カップラースリーブを設置後、雌部材部の第2貫通孔に雄部材を配置、圧入する作業を行い易いように、第3貫通孔431の直径d431等のサイズを決めることが好ましい。
このように、雌部材と、カップラースリーブとが一体となった雌部材含有カップラースリーブとすることで、コネクタ接続構造を構成する部品の点数を少なくできる。このため、現場での施工を容易にし、コストを低減することができる。
雌部材含有カップラースリーブは、例えば、雌部材部と、カップラースリーブとを別途製造し、溶接等によって接合して製造することもできる。ただし、部材の強度を特に高める観点から、雌部材含有カップラースリーブは、雌部材部とカップラースリーブとが一体となるように製造することが好ましい。
本実施形態のコネクタは、さらに任意の部材を有することもできる。例えば、雄部材16の脱落を防止したり、雄部材16を雌部材17により強く圧入するため、雄部材16の第2端面16bに、第1PC鋼材11の長手方向に沿って、すなわち図5、図6中のX軸方向に沿って伸縮可能な第1弾性部材を配置することもできる。係る第1弾性部材は、上述のように一方の端部を雄部材16の第2端面16bに当て、図5に示したコネクタ接続構造30の場合、他方の端部を、例えば第1凹部32と、第2凹部331との境界の壁面32Bに当てることができる。図6に示したコネクタ接続構造40の場合、第1弾性部材の他方の端部は、例えば第1領域421と、第2領域422との境界の壁面42Bに当てることができる。第1弾性部材としては特に限定されないが、例えばばね、ゴム等から選択された1種以上を用いることができる。
具体的には、図5に示したコネクタ接続構造30の場合には、図7に示すように、第1弾性部材71の一方の端部である第5端部71Aを雄部材16の第2端面16bに当て、他方の端部である第6端部71Bを、例えば第1凹部32と、第2凹部331との境界の壁面32Bに当てることができる。ここでは図5に示したコネクタ接続構造30に、第1弾性部材71を設けた例のみを示したが、図6に示したコネクタ接続構造40に対しても同様に第1弾性部材を設けることができる。また、図7では、第1弾性部材71としてばねを用いた例を示したが、係る形態に限定されるものではない。
雄部材16を雌部材17により強く圧入するための手段は、上記第1弾性部材に限定されず、雄部材16の第2端面16bに接する板状体と、係る板状体を、雌部材17に固定するボルトとを有する押圧部材を用いることもできる。
具体的には、押圧部材を図5に示したコネクタ接続構造30に設ける場合、図8に示すように、押圧部材81は、板状体82と、該板状体を雌部材17に固定するボルト83とを有することができる。板状体82は、第1PC鋼材11や、第1オスコーン152等と干渉しないように、中心部に開口部821を備えた円板形状を有することができる。そして、板状体82の外周近傍には、周方向に沿って、複数の第1ボルト孔822を設けておくことができる。また、雌部材17は、板状体82に設けた複数の第1ボルト孔822に対応した位置に、第2ボルト孔84を有することができる。
そして、ボルト83により板状体82を、雌部材17に固定することで、雄部材16を雌部材17により強く圧入し、支持できる。ここでは図5に示したコネクタ接続構造30に、押圧部材81を設けた例のみを示したが、図6に示したコネクタ接続構造40に対しても同様に押圧部材を設けることができる。
なお、図7、図8には、図5を用いて説明した他の部材も併せて示しているが、紙幅の都合上、符号を一部省略している。
また、第1定着具15の第1オスコーン152や、第2定着具25の第2オスコーン252が脱落することを防止したり、各オスコーンを、メスコーンにより強く圧入するため、第1オスコーン152と、第2オスコーン252との間に、第2弾性部材を配置することもできる。第2弾性部材は、上記目的を達成するため、図5、図6中の第1PC鋼材11、第2PC鋼材21の長手方向、すなわちX軸方向に沿って伸縮可能な弾性部材とすることができる。第2弾性部材としては特に限定されないが、例えばばね、ゴム等から選択された1種以上を用いることができる。
具体的には、図5に示したコネクタ接続構造30の場合には、図7に示すように、第1オスコーン152と、第2オスコーン252との間に、第2弾性部材72を配置できる。図6に示したコネクタ接続構造40の場合についても、同様に第2弾性部材を配置することができる。
以上に説明した、本実施形態のコネクタに含まれる雄部材、雌部材や、カップラースリーブの材料は特に限定されず、要求される強度や、耐久性等に応じて任意に選択することができる。ただし、緊張力が導入されたPC鋼材を支持することから、本実施形態のコネクタの材料は、金属材料であることが好ましく、例えばクロムモリブデン鋼であることがより好ましい。
[コネクタ接続構造]
次に本実施形態のコネクタ接続構造について説明する。
本実施形態のコネクタ接続構造は、既述のコネクタと、第1PC鋼材と、第2PC鋼材とを有することができる。このため、コネクタにおいて既に説明した事項については説明を省略する。
本実施形態のコネクタ接続構造は、例えば図5に示したコネクタ接続構造30を有することができる。このため、図5を用いて説明する。
本実施形態のコネクタ接続構造30は、長手方向の一方の端部である第1端部111側が第1定着具15に把持された第1PC鋼材11の第1端部111に、第2PC鋼材21を接続した構造である。係るコネクタ接続構造30は、第1PC鋼材11と、雄部材16と、雌部材17と、カップラースリーブ31と、第2PC鋼材21とを含むことができる。
第1PC鋼材11は、長手方向の一方の端部である第1端部111側が第1定着具15に把持されている。
雄部材16は、第1定着具15を把持する第1貫通孔161を備え、第1貫通孔161の長さ方向に沿った外側面である第1外側面162がテーパー形状を有することができる。
雌部材17は、雄部材16を差し込む第2貫通孔171を備えることができる。
第2貫通孔171は、雄部材16を差し込む側の開口部である第1開口部171Aと、第1開口部171Aと反対側に位置する第2開口部171Bとを備えることができる。第2貫通孔171は、第2開口部171B側から、第1開口部171A側に向かって拡がるテーパー形状を有することができる。
雌部材17は、第2貫通孔171の長さ方向に沿った外側面である第2外側面172に、溝部および山部から選択された1種以上を含む第1接続部材173を備えることができる。
カップラースリーブ31は、一方の端部である第2端部31Aに配置された、雌部材17を差し込む第1凹部32、および第2端部31Aと反対側に位置する第3端部31Bに配置された第2PC鋼材把持部33を備えることができる。第1凹部32の内側面である第1内側面32Aに、溝部および山部から選択された1種以上を含む第2接続部材34を備えており、第2接続部材34は、第1接続部材173と噛み合う形状を有することができる。
そして、第2PC鋼材把持部33が、第2PC鋼材21の長手方向の一方の端部である第4端部側を把持することができる。
本実施形態のコネクタ接続構造30では、第1PC鋼材11の第1端部111側を把持する第1定着具15に、雄部材16、および雌部材17を設置することで、第1定着具15の外側面にねじが形成されていなかったとしても、コネクタ接続構造とすることができる。すなわち、第1PC鋼材11と、第2PC鋼材21とを、その端部が対向するように配置、固定したコネクタ接続構造30とすることができる。
なお、図5に示したカップラースリーブ31に替えて、図6に示したカップラースリーブ41を用いたコネクタ接続構造40とすることもできる。
カップラースリーブ41の詳細については説明したため、ここでは説明を省略する。
また、雌部材、およびカップラースリーブに替えて、雌部材とカップラースリーブとが一体となった雌部材含有カップラースリーブを用いたコネクタ接続構造とすることもできる。雌部材含有カップラースリーブについては既に説明したため、ここでは説明を省略する。
また、本実施形態のコネクタ接続構造は、既述の第1弾性部材や、第2弾性部材、押圧部材等の任意の部材をさらに備えることもできる。これらの部材についても既に説明したため、ここでは説明を省略する。
[コネクタ接続構造の製造方法]
本実施形態のコネクタ接続構造の製造方法について説明する。
本実施形態のコネクタ接続構造の製造方法は、長手方向の一方の端部である第1端部111側が第1定着具15に把持された第1PC鋼材11の第1端部111に、第2PC鋼材21を接続したコネクタ接続構造を製造できる。具体的には、既述のコネクタを用いて、既設の第1PC鋼材11の第1端部111と、新たに配置する第2PC鋼材21の第4端部とが向かい合うように配置したコネクタ接続構造を製造できる。このため既に説明した事項については説明を一部省略する。
本実施形態のコネクタ接続構造の製造方法は、例えば図9に示したフローチャートに従って実施することができ、以下の雌部材設置工程S1と、雄部材設置工程S2と、カップラースリーブ設置工程S3と、第2PC鋼材設置工程S4とを有することができる。
雌部材設置工程S1では、第2開口部171B側から、第1開口部171A側に向かって拡がるテーパー形状を有する第2貫通孔171を備えた雌部材17の、第2貫通孔171内に第1定着具15の少なくとも一部が収容されるように、かつ第1開口部171Aが、第1PC鋼材11の第1端部111側に位置するように、雌部材17を設置できる。
雌部材17は、第2貫通孔171の長さ方向に沿った外側面である第2外側面172に、溝部および山部から選択された1種以上を含む第1接続部材173を備えることができる。
雄部材設置工程S2では、雄部材16を、第1貫通孔161内に第1定着具15の少なくとも一部が収容されるように、雌部材17の第2貫通孔171に差し込むことができる。雄部材16は、既述の様に第1貫通孔161を備え、第1貫通孔161の長さ方向に沿った外側面である第1外側面162がテーパー形状を有することができる。
カップラースリーブ設置工程S3では、一方の端部である第2端部31Aに配置された第1凹部32と、第2端部31Aと反対側に位置する第3端部31Bに配置された第2PC鋼材把持部33と、を備えたカップラースリーブ31の、第1凹部32に雌部材17を差し込むことができる。
カップラースリーブ31は、第1凹部32の内側面である第1内側面32Aに、溝部および山部から選択された1種以上を含み、第1接続部材173と噛み合う形状を有する第2接続部材34を備えることができる。このため、カップラースリーブ設置工程S3では、第1接続部材173と、第2接続部材34とを噛み合わせることで、第1凹部32に、雌部材17を差し込むことができる。
第2PC鋼材設置工程S4では、カップラースリーブ31の第2PC鋼材把持部33が、第2PC鋼材21の長手方向の一方の端部である第4端部211側を把持できる。
以下、各工程について詳細に説明する。
(雌部材設置工程)
雌部材設置工程S1では、雌部材17の、第2貫通孔171内に、第1PC鋼材11の第1定着具15の少なくとも一部が収容されるように、かつ第1開口部171Aが、第1PC鋼材11の第1端部111側に位置するように、雌部材17を設置できる。なお、雌部材17は、第2開口部171Bがコンクリート構造物12と対向するように設置されることになる。これにより、第1定着具15の周囲に雌部材17が配置され、第2貫通孔171内に、第1定着具15の少なくとも一部が収容された状態にできる。
なお、雌部材設置工程S1を実施する前に第1定着具15の外表面に付着した異物等を除去しておくことが好ましい。
(雄部材設置工程)
雄部材設置工程S2では、雄部材16を、第1貫通孔161内に第1定着具15の少なくとも一部が収容されるように、雌部材17の第2貫通孔171に差し込むことができる。
第1貫通孔161内に、第1定着具15の少なくとも一部が収容されるように、雄部材16を、雌部材17の第2貫通孔171内に圧入することで、雄部材16が第1定着具15を締め付け、第1定着具15に、コネクタ10が含有する、雄部材16、および雌部材17を固定できる。すなわち、雄部材16が、第1定着具15と、雌部材17との間に圧入されることで、楔として機能し、第1定着具15と、雌部材17とをつなぎ合わせることができる。
カップラースリーブ設置工程S3と、第2PC鋼材設置工程S4とは、カップラースリーブの構造に応じて、順番を入れ替えて実施することもできる。ここではまず、図9に示したようにカップラースリーブ設置工程S3と、第2PC鋼材設置工程S4とをその順に実施する場合を例に説明する。
この場合、図5に示したカップラースリーブ31を用いることができる。
(カップラースリーブ設置工程)
カップラースリーブ設置工程S3では、カップラースリーブ31の第1凹部32の第1内側面32Aに配置された、第2接続部材34に、雌部材17の第1接続部材173を噛み合わせ、すなわち嵌合し、雌部材17を、第1凹部32に差し込むことができる。
この際、既述の第1弾性部材を、一方の端部が雄部材16の第2端面16bに、他方の端部が第1凹部32と、第2凹部331との境界の壁面32Bに当てるように配置することもできる。第1弾性部材を配置することで、特に雄部材16の脱落を防止したり、雄部材16を雌部材17により強く圧入することが可能になる。
(第2PC鋼材設置工程)
第2PC鋼材21は、長手方向の一方の端部である第4端部211側に第2定着具25が配置されている。また、カップラースリーブ31を用いる場合、第2定着具25は、例えば第2PC鋼材21の長手方向に沿った外側面である第3外側面25Aに形成された溝部および山部から選択された1種以上を含む第4接続部材253を有することができる。
そして、カップラースリーブ31の第2PC鋼材把持部33は、第3端部31Bに配置された第2凹部331と、第2凹部331の第2内側面331Aに設けられた、溝部および山部から選択された1種以上を含む第3接続部材332とを備えることができる。第3接続部材332は、第2PC鋼材21の長手方向の一方の端部を把持する第2定着具25の、第2PC鋼材21の長手方向に沿った外側面である第3外側面25Aに形成された溝部および山部から選択された1種以上を含む第4接続部材253と噛み合う形状、すなわち嵌合する形状を有することができる。
このため、第2PC鋼材設置工程S4では、第2定着具25の第4接続部材253を、カップラースリーブ31の第3接続部材332に噛み合させる、すなわち嵌合させることで、第2PC鋼材21を設置できる。
第2PC鋼材設置工程S4を実施する際、第1オスコーン152と、第2オスコーン252との間に、既述の第2弾性部材を配置することもできる。第2弾性部材を配置することで、特に第1定着具15の第1オスコーン152や、第2定着具25の第2オスコーン252が脱落することを防止したり、各オスコーンを、各メスコーンにより強く圧入することができる。
また、第2PC鋼材設置工程S4では、カップラースリーブ31に第2定着具25を設置する際、第2定着具25に予め第2PC鋼材21を設置していても良く、第2PC鋼材21を設置していなくても良い。
第2定着具25に第2PC鋼材21を予め設置していない場合、第2定着具25の第4接続部材253を、カップラースリーブ31の第2凹部331に設置した後、第2オスコーン252の貫通孔に、図5中X軸に沿って左側から第2PC鋼材21を挿入できる。第2オスコーン252の貫通孔に第2PC鋼材21を挿入後、第2PC鋼材21を、図5中X軸に沿って左側に引っ張ることで、第2オスコーン252が、第2メスコーン251の貫通孔内に圧入され、第2PC鋼材21の設置を完了させることができる。
上述のように第2定着具25をカップラースリーブ31に設置後、第2定着具25に第2PC鋼材21を設置する場合、第2オスコーン252が脱落することを防止し、第2オスコーン252を第2メスコーン251により強く圧入するため、既述の第2弾性部材を配置することが好ましい。具体的には、カップラースリーブ設置工程S3の後、第2定着具25を第2凹部331に設置する際に、第1オスコーン152と、第2オスコーン252との間に既述の第2弾性部材を挿入しておくことが好ましい。
以上の工程を実施することで、図5に示した、第1PC鋼材11と、第2PC鋼材21とを、その端部が対向するように配置、固定したコネクタ接続構造30を製造できる。
なお、カップラースリーブ31に設けられた第2接続部材34と、第3接続部材332とを逆方向のねじとした場合、カップラースリーブ31を回転させることで、第1接続部材173と第2接続部材34との間、および第3接続部材332と第4接続部材253との間を、同時に嵌合させることもできる。すなわち、カップラースリーブ設置工程S3と、第2PC鋼材設置工程S4とを同時に実施することができる。
第2接続部材34と、第3接続部材332とが逆方向のねじとは、例えば第2接続部材34を左ねじ、第3接続部材332を右ねじの様に構成することを意味する。第2接続部材34が左ねじの場合、嵌合する第1接続部材173も左ねじとなる。第3接続部材332が右ねじの場合、嵌合する第4接続部材253も右ねじとなる。
既述の様に、カップラースリーブとしては、図6に示したカップラースリーブ41を用いることもできる。この場合は、第2PC鋼材設置工程S4を実施してから、カップラースリーブ設置工程S3を実施できる。
カップラースリーブ41の第2PC鋼材把持部43は、直径d431が、第2PC鋼材21のコード径d21以上であり、かつ第1凹部42に、第2PC鋼材21の第4端部211側を把持する第2定着具25を収容した際に、第2定着具25の壁部432と対向する面の長辺の長さL25よりも短い第3貫通孔431を備えた壁部432を含むことができる。壁部432は、第1凹部42の第3端部41B側の面を構成することができる。
このため、カップラースリーブ41を用いる場合にはまず、カップラースリーブ41の第1凹部42内に第2定着具25を配置し、第3貫通孔431から第2PC鋼材21を引き出すことで、第2PC鋼材設置工程S4を実施できる。
第2PC鋼材設置工程S4を実施した後に、カップラースリーブ41の第1凹部42の第1内側面42Aに配置された、第2接続部材44に、雌部材17の第1接続部材173を噛み合わせ、すなわち嵌合させ、雌部材17を、第1凹部32に差し込むカップラースリーブ設置工程S3を実施できる。
なお、この場合も、第1オスコーン152と、第2オスコーン252との間に、既述の第2弾性部材を配置することもできる。第2弾性部材を配置することで、特に第1定着具15の第1オスコーン152や、第2定着具25の第2オスコーン252が脱落することを防止したり、各オスコーンを、各メスコーンにより強く圧入することができる。
以上の工程を実施することで、図6に示した、第1PC鋼材11と、第2PC鋼材21とを、その端部が対向するように配置、固定したコネクタ接続構造40を製造できる。
本実施形態のコネクタ接続構造の製造方法では、第1PC鋼材11の第1端部111側を把持する第1定着具15に、雄部材16、および雌部材17を設置することで、第1定着具15の外側面にねじが形成されていなかったとしても、コネクタ接続構造を製造することができる。
ここまで、雄部材、雌部材、カップラースリーブを用いた場合を例に説明したが、雌部材、およびカップラースリーブに替えて、既述の雌部材含有カップラースリーブを用いることもできる。
この場合、既述の雌部材設置工程に替えて雌部材含有カップラースリーブ設置工程を実施できる。
雌部材含有カップラースリーブ設置工程では、一方の端部である第2端部に、第2開口部側から、第1開口部側に向かって拡がるテーパー形状を有する第2貫通孔を備えた雌部材部を含む雌部材含有カップラースリーブの、第2貫通孔内に第1定着具の少なくとも一部が収容されるように雌部材含有カップラースリーブを設置できる。
そして、雄部材設置工程では、既述の雄部材を、第1貫通孔内に第1定着具の少なくとも一部が収容されるように、雌部材含有カップラースリーブの雌部材部の第2貫通孔に差し込むことができる。
なお、雌部材含有カップラースリーブを用いる場合には、雌部材含有カップラースリーブ設置工程を実施することで、あわせてカップラースリーブ部分を設置できるため、カップラースリーブ設置工程を省略できる。
次いで、雌部材含有カップラースリーブの第2PC鋼材把持部が、第2PC鋼材の長手方向の一方の端部である第4端部側を把持する第2PC鋼材設置工程を実施できる。
図5における雌部材17とカップラースリーブ31とが一体となった雌部材含有カップラースリーブを用いる場合、例えば以下のようにして第2PC鋼材設置工程を実施できる。
第2PC鋼材21は、長手方向の一方の端部である第4端部211側に第2定着具25が配置されている。図5における雌部材17とカップラースリーブ31とが一体となった雌部材含有カップラースリーブを用いる場合、第2定着具25は、例えば第2PC鋼材21の長手方向に沿った外側面である第3外側面25Aに形成された溝部および山部から選択された1種以上を含む第4接続部材253を有することができる。
そして、雌部材含有カップラースリーブの第2PC鋼材把持部33は、第3端部31Bに配置された第2凹部331と、第2凹部331の第2内側面331Aに設けられた、溝部および山部から選択された1種以上を含む第3接続部材332とを備えることができる。第3接続部材332は、上記第4接続部材253と噛み合う形状、すなわち嵌合する形状を有することができる。
このため、第2PC鋼材設置工程では、第2定着具25の第4接続部材253を、雌部材含有カップラースリーブの第3接続部材332に噛み合させる、すなわち嵌合させることで、第2PC鋼材21を設置できる。
図6における雌部材17とカップラースリーブ41とが一体となった雌部材含有カップラースリーブを用いる場合、例えば以下のようにして第2PC鋼材設置工程を実施できる。
まず、この場合には、既述の雌部材含有カップラースリーブ設置工程を行う際、第1凹部42内に、第2メスコーン251、第2オスコーン252を収容しておくことができる。
そして、第2PC鋼材設置工程ではまず、図6中X軸に沿って、左側から第3貫通孔431を介して、第2オスコーン252の貫通孔に第2PC鋼材21を挿入できる。第2オスコーン252の貫通孔に第2PC鋼材21を挿入後、第2PC鋼材21を、図6中X軸に沿って左側に引っ張ることで、第2オスコーン252が、第2メスコーン251の貫通孔内に圧入され、第2PC鋼材21の設置を完了させることができる。
なお、雌部材含有カップラースリーブを用いる場合でも、既述の第1弾性部材や、第2弾性部材、押圧部材等を必要に応じて配置することもできる。
雌部材含有カップラースリーブを用いる場合の本実施形態のコネクタ接続構造の製造方法においても、第1PC鋼材11の第1端部111側を把持する第1定着具15に、雄部材16、および雌部材含有カップラースリーブを設置することで、第1定着具15の外側面にねじが形成されていなかったとしても、コネクタ接続構造を製造できる。